説明

車両用通信装置及びその受信方法

【課題】正規の信号として受信可能な状態であればノイズ設定数を小さい値にしても、受信失敗を繰り返すことなく1フレーム分のデータを受信でき、待機時消費電力を抑制すること。
【解決手段】車両用通信装置1は、間欠受信タイミングになると起動して送信信号の受信動作を開始し、受信開始時から受信信号に含まれたノイズをカウントし、フレームの始まりを示す起動信号を受信するとノイズカウント値をリセットし、リセット前にノイズカウント値が予め定めた設定値に到達した場合は当該受信動作を中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起動時にカウントされるノイズ数が所定値を越えるとデータ受信を停止する機能を備えた車両用通信装置及びその受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドア等のロック/アンロック等はイグニッションキーと共通の機械式のキーをドアのキーシリンダに挿入して行うものが一般的であったが、最近は機械式のキーをドアのキーシリンダに挿入することなく遠隔操作できるようにしたキーレスエントリシステムが普及している。また、キーレスエントリシステムに限らず、車両から離れた場所で携帯機のボタンを押すと、携帯機と車両側装置との間で通信を行い、車両側の情報を車両側装置から携帯機に送信して携帯機に表示できるようにした車両用通信システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
車両用通信システムでは、携帯機のロック釦を1回操作することで同一の送信信号(1フレーム)を複数回連続して送信している。1フレームは、起動信号(10パルス程度の矩形波)とデータ信号(携帯機のID番号、ロック/アンロック等の命令信号)とから構成しているものがある。車両側装置は、間欠受信動作しており、どのタイミングで受信した場合でも起動信号を受信できるように、間欠受信周期及び1回の受信動作時間が設定されている。そして、起動信号を受信すると継続動作状態となり、起動信号に続いて送信されるデータ信号を受信可能な状態となる。たとえば、起動信号を受信したら1フレームに相当する時間は起動状態となるようにタイマーで設定する。
【0004】
ところで、携帯機と車両側装置との間で無線通信を行う場合、所定量以上のノイズが混在すると、送信機からの送信信号を受信機において正しく受信できない可能性が高くなる。そこで、従来はデータ受信開始時からノイズ数をカウントして1回の受信動作時間でノイズカウント数が所定値を超えたら、その時点でデータ受信を停止して次回の間欠受信タイミングまでスリープ状態にしていた。
【0005】
図4を参照して従来のノイズ判定動作について説明する。
図4(a)は送信信号の最初の2フレームを示しており、同図(b)はFSK変調した送信データの具体例を示している。今、図4(b)に示すようにFSK変調した送信信号に対して、同図(c)に斜線で示すノイズが混在したものとする。最初のフレームには4つのノイズが混在し、次のフレームには4つのノイズが混在している。また、フレーム間には1つのノイズが存在している。
【0006】
受信側となる車両側装置において、1フレームでのノイズ混在数が6個を越えたら、即座に受信動作を停止して次の間欠受信動作までスリープ状態となるように設定されているとする。
【0007】
図4(d)に示すように、車両側装置は間欠受信タイミングが到来すると、スリープ状態から起動して受信信号があるか否か判断する。時刻t1のタイミングで起動した場合、最初のフレームの送信信号が受信されるので、そのまま受信動作を継続して起動信号が検出されるのを待つ。このとき、パルス幅などからノイズ検出を同時に行い、検出されるノイズ数をカウントしていく。図4(d)(e)に示すように、フレーム途中から受信動作を開始した場合は、当該フレームに混在するノイズをカウントすると共に、次のフレームの起動信号が検出された後も、1フレーム分のデータ信号を完全に受信するまで、引き続きノイズカウントを継続する。図4(e)に示す例では、2番目のフレームのデータ信号を受信している途中でノイズカウント数が設定値=6に達したために、受信動作を中止している。図4(d)に示す時刻t2のタイミングで起動した場合は、起動信号を検出してからデータ信号を全て受信するまでのノイズカウント数が5個であるので、そのまま受信動作を継続している。
【特許文献1】特開平4−315683号公報
【特許文献2】特開2004−107906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図4(c)に示すように、フレーム毎にみればノイズ数が設定値(6個)未満であるにも拘わらず、1フレーム分のデータを受信する前に受信動作を停止しているので、正規の信号として受信可能な状態であっても受信失敗を繰り返す可能性があった。この問題はノイズ数の設定値を小さくする程、顕著になる傾向がある一方、ノイズ数の設定値を大きくすれば、ノイズ数が設定値になるまで起動状態を維持するので、起動時間が長くなり、待機時消費電力が増大する問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、正規の信号として受信可能な状態であればノイズ設定数を小さい値にしても、受信失敗を繰り返すことなく1フレーム分のデータを受信でき、待機時消費電力を抑制可能な車両用通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用通信装置は、連続して送信された複数フレームの送信信号を間欠受信する車両用通信装置であって、間欠受信タイミングになると起動して前記送信信号の受信動作を開始し、受信開始時から受信信号に含まれたノイズをカウントし、フレームの始まりを示す信号を受信するとノイズカウント値をリセットし、リセット前にノイズカウント値が予め定めた設定値に到達した場合は当該受信動作を中止することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、受信開始時から受信信号に含まれたノイズをカウントし、フレームの始まりを示す信号を受信するとノイズカウント値をリセットするので、従来技術のように受信開始時からフレームが切り替わっても継続的にノイズカウント数を累積する場合に比べて、受信精度は維持したままで受信中止までのノイズカウント数を低減でき、車両用通信装置の起動時間を短くすることができる。
【0012】
上記車両用通信装置において、前記フレームは、フレーム先頭にフレームの始まりを示す起動信号が配置され、起動信号の後にデータ信号が配置された構成とすることができる。フレーム先頭に配置される起動信号を検出することで、ノイズリセットのタイミングを得ることができる。
【0013】
また本発明は、送信側装置から連続して送信された複数フレームの送信信号を受信側装置で間欠受信する車両用通信装置の受信方法であって、間欠受信タイミングになると前記送信信号の受信動作を開始し、受信開始時から受信信号に含まれたノイズをカウントし、フレームの始まりを示す信号を受信するとノイズカウント値をリセットし、リセット前にノイズカウント値が予め定めた設定値に到達した場合は当該受信動作を中止することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、受信開始時から受信信号に含まれたノイズをカウントし、フレームの始まりを示す信号を受信するとノイズカウント値をリセットするので、従来技術のように受信開始時からフレームが切り替わっても継続的にノイズカウント数を累積する場合に比べて、受信精度は維持したままで受信中止までのノイズカウント数を低減でき、車両用通信装置の起動時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、正規の信号として受信可能な状態であればノイズ設定数を小さい値にしても、受信失敗を繰り返すことなく1フレーム分のデータを受信でき、待機時消費電力を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態に係る車両用通信装置は、車両用通信システムにおいて携帯機との間で無線通信する車両側装置に備えられる。
図1は一実施の形態に係る車両用通信装置の全体構成図である。車両用通信装置1は、図示していない携帯機から無線送信された送信信号を受信するアンテナ2を備える。アンテナ2の出力端には帯域フィルタ3が接続されている。帯域フィルタ3は、車両用通信装置1と携帯機との間の無線通信で使用される帯域を通過帯域とし、それ以外を阻止帯域としたバンドパスフィルタで構成することができる。帯域フィルタ3の出力段には検波回路4が接続されている。検波回路4は帯域フィルタ3から出力される受信信号を検波し、検波データを受信信号としてメインCPU5へ出力する。メインCPU5は、携帯機との間で無線通信を開始する間欠受信タイミングまではスリープ状態(省電力の待機状態)となっており、間欠受信タイミングで自ら起動して受信信号があるか否かチェックする。間欠受信タイミングはタイマー6から与えられる時間情報を用いて管理する。メインCPU5は、間欠受信動作時に後述するノイズ判定を実行し、ノイズカウント数が設定値以上であれば受信動作を停止し、逆にノイズカウント数が設定値を超えずに1フレーム分の信号を受信できた場合はデータ信号に含まれたコマンドに基づいてドアロック機構7を制御する。なお、メインCPU5による制御対象はドアロック機構7に限定されるものではなく、エアコン装置、その他の機器も制御対象となる。図1には車両用通信装置1における受信回路を主に示しているが、携帯機と双方向通信を行う場合には、送信回路を備える。
【0017】
次に、以上のように構成された本実施の形態における間欠受信時のノイズカウント動作について説明する。
送信側装置となる携帯機は、ロック釦が押されると同一フレームの送信信号を連続して繰り返し送信する(本例では4回)。1フレームは、起動信号(10パルス程度の矩形波)とデータ信号(携帯機のID番号、ロック/アンロック等の命令信号)とから構成しているが、フレームの先頭部分に既知パターンの信号が配置されていればデータ構造は限定されない。
【0018】
図2を参照して間欠受信時におけるノイズカウント数のリセットタイミングについて説明する。
図2(a)は、前述した図4(a)と同様に、送信信号の最初の2フレームを示しており、同図(b)はFSK変調した送信データの具体例を示している。今、図2(b)に示すようにFSK変調した送信信号に対して、同図(c)に斜線で示すノイズが混在したものとする。最初のフレームには4つのノイズが混在し、次のフレームには4つのノイズが混在している。また、フレーム間には1つのノイズが存在している。すなわち、図4と同一の送信信号に対して同一のノイズが混在している場合を例示している。また、図2(d)に示す間欠受信タイミングでメインCPU5が起動される。どのタイミングで受信した場合でも起動信号を受信できるように、間欠受信周期及び1回の受信動作時間が設定されている。
【0019】
受信側となる車両側装置1において、メインCPU5は、ノイズ検出数が設定値=6個を越えたら、即座に受信動作を停止して次の間欠受信動作までスリープ状態となるように設定されている。また、メインCPU5は、ノイズカウント数が設定値を超えることなく、1フレーム分の信号(起動信号からデータ信号の最後まで)を完全に受信できた場合には、受信を終了する。
【0020】
今、車両側装置1のメインCPU5が、図2(d)に示すように、図4(d)と同じタイミングである、最初のフレームの途中の間欠受信タイミング(時刻t1)で起動したものとする。メインCPU5は、起動開始直後(時刻t1)からノイズのカウントを開始し、最初の起動信号(2番目のフレームの起動信号)を検出したところで、ノイズカウント数をリセットする。また、いずれのタイミングで起動したとしても、1フレーム分の信号を受信するまでに又は次のフレームのフレーム先頭の起動信号を受信するまでに、ノイズカウント数が設定値(=6)に到達すれば、その時点で受信動作を中止してスリープ状態に移行する。
【0021】
図2(e)に示すように、次フレームの起動信号を検出したところで、ノイズカウント数をリセットしたことにより、2番目のフレームのデータ信号の先頭付近ではノイズカウント数が0に戻る。2番目のフレームは1フレーム内で4つのノイズしか混在していないので、図2(f)に示すように当該フレームの最後まで受信してもノイズカウント数が3となり、設定値(=6個)を越えないこととなる。その結果、図2(g)に示すように受信継続することになる。図4に示す従来技術では2番目のフレーム受信の途中で受信失敗となっていたところを、本実施の形態ではフレームの最後まで受信して受信継続することができる。言い換えれば、図4に示す従来技術ではノイズカウント数に対する設定値をさらに大きくしなければ、1フレーム分の信号を受信できないが、本実施の形態では同じ受信精度を維持するのであれば、ノイズカウント数に対する設定値を相対的に小さくすることができ、その分だけ起動時間を短縮できる。たとえば、CPUの都合により、ノイズカウント数の設定値を大きくできない場合には、従来技術に比べて、受信成功の可能性を高くすることができる。
【0022】
図3はFSK変調された送信信号の検波データに表れるノイズを例示した波形図である。図3(a)はFSK変調された送信信号の波形図であり、同図(b)はノイズが混在した状態を示している。図3(b)に示すように、同位相のノイズが重畳した場合にはノイズパルスが追加されるが、逆位相のノイズが送信信号波形と重なった場合には打ち消されて波形が分割される。メインCPU5では検波データのパルス幅W1や、立下りから立ち上がりまでの間隔W2からノイズを検出している。なお、ノイズ検出の手法はパルス幅W1や、立下りから立ち上がりまでの間隔W2を検出するものに限定されない。
【0023】
このように本実施の形態によれば、車両側装置1において所定周期で間欠受信すると共に間欠受信により起動した場合は、起動開始直後からノイズカウントを開始し、最初の起動信号(次のフレームの起動信号)を検出したところで、ノイズカウント数をリセットするようにしたので、ノイズカウント数の設定値を小さい値にしても、受信失敗を繰り返すことなく1フレーム分のデータを受信でき、待機時消費電力を抑制することができる。
【0024】
また、以上の説明では、携帯機10から車両側装置1に対してFSK変調した送信信号を送信しているが、変調方式はASK変調などの他の変調方式を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用通信装置の全体構成図
【図2】上記一実施の形態においてノイズカウント数のリセットタイミングを示すタイミング図
【図3】ノイズ検出原理を説明するための波形図
【図4】従来のノイズ判定動作を説明するためのタイミング図
【符号の説明】
【0026】
1…車両用通信装置
2…アンテナ
3…帯域フィルタ
4…検波回路
5…メインCPU
6…タイマー
7…ドアロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して送信された複数フレームの送信信号を間欠受信する車両用通信装置であって、
間欠受信タイミングになると起動して前記送信信号の受信動作を開始し、受信開始時から受信信号に含まれたノイズをカウントし、フレームの始まりを示す信号を受信するとノイズカウント値をリセットし、リセット前にノイズカウント値が予め定めた設定値に到達した場合は当該受信動作を中止することを特徴とする車両用通信装置。
【請求項2】
前記フレームは、フレーム先頭にフレームの始まりを示す起動信号が配置され、起動信号の後にデータ信号が配置されたことを特徴とする請求項1記載の車両用通信装置。
【請求項3】
送信側装置から連続して送信された複数フレームの送信信号を受信側装置で間欠受信する車両用通信装置の受信方法であって、
間欠受信タイミングになると前記送信信号の受信動作を開始し、受信開始時から受信信号に含まれたノイズをカウントし、フレームの始まりを示す信号を受信するとノイズカウント値をリセットし、リセット前にノイズカウント値が予め定めた設定値に到達した場合は当該受信動作を中止することを特徴とする車両用通信装置の受信方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−114684(P2010−114684A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285814(P2008−285814)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】