説明

車両用通話装置、通話制御方法

【課題】停止の直後に発進する場合には通話制限を解除しない車両用通話装置を提供すること。また、通話制限を解除した後、発進の必要性があることをユーザに通知できる車両用通話装置及び通話制御方法を提供すること。
【解決手段】走行中は通話を制限すると共に、自車両50が停止している場合は通話制限を解除する車両用通話装置100において、前方の信号機11の現示情報及び信号が変わるまでの遷移残時間を受信する第1の受信手段26と、信号機11から自車両までの間の他車両の車両情報を受信する第2の受信手段21と、遷移残時間が閾値以上であって、現示情報が停止を示し、かつ、他車両の車両情報から他車両が停止していると判定される場合、通話制限を解除する通話制限制御手段44と、遷移残時間が所定以下となった場合、該遷移残時間をユーザに通知する通知手段43と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中は通話を制限すると共に、自車両が停止している場合は通話制限を解除する車両用通話装置及び通話制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPHS(以下、移動端末という)にはドライブモード(以下、公共モードという)と呼ばれる着信待ち状態が用意されており、ユーザが公共モードに設定しておくと着信があった場合にユーザがオフフックしなくても「運転中のため電話に出られません」等の音声メッセージを発信者に応答することができる。したがって、ユーザは例えば車両に乗車する際に移動端末を公共モードに切り替えておくことで、車両を運転している間に着信があっても電話に出る必要がなく、また、発信者も移動端末のユーザが電話に出られない状況であることを把握できる。
【0003】
そこで、ユーザが公共モードに切り替えなくても、車両に乗車している間は公共モードに切り替える技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、移動端末を収容部に装着することで公共モードに切り替える操作部が継続して押下される車載ホルダーが記載されている。
【0004】
しかしながら、車両に乗車していても車両が停止している間は車両を運転する必要はなくユーザがオフフックできる場合があるため、車両に乗車している間、常に、公共モードを保つことは制約が過大であるといえる。
【0005】
これに対し、車両が停止している間は公共モードを解除する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2には、エンジンのオン・オフを検出し、走行中であると判定された場合、電話がかかってきても電話がつながらないように設定する車載応答システムが記載されている。エンジンがオフであれば、公共モードが解除されるのでユーザは着信があった場合にオフフックすることができる。
【0006】
また、車両が一定時間以上、継続して停止していることを検出して、公共モードを解除する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3には、パーキング信号の検出又は予め定めた一定時間を超す停車の継続を検出すると、公共モードを解除する自動車車載用装置が記載されている。
【0007】
また、走行している道路の交差点間隔が狭い場合、自動応答により発信者に応答する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。特許文献4には、交差点間隔が短いと停止・発信を繰り返すことになり、着信への応答が困難であることを考慮して、交差点間隔が長い場合にハンズフリー通話を許可する車載電話システムが記載されている。
【特許文献1】特開2007−60383号公報
【特許文献2】特開2001−224067号公報
【特許文献3】特開2006−319727号公報
【特許文献4】特開2001−144850号公報
【特許文献5】特開2000−18059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載されているように、単に停止中であることを検出して公共モードを解除すると、オフフックしたがすぐに発車する必要が生じた場合、ユーザは応答が困難になるという問題がある。
【0009】
また、特許文献3記載に記載されているように、一定時間を基準に公共モードを解除する場合、一定時間を長くすると停止してから長時間経過しないと通話できないとことになり特許文献1と同様の不都合を生じさせ、一定時間が短いと特許文献2と同様の問題が生じる。例えば、信号待ちの場合、同じ信号であっても車両が停止している時間は交通状況によって変動するので、一定時間を固定とすると適切なタイミングで公共モードの解除・設定を切り替えることは困難である。
【0010】
また、特許文献4に記載されているように、交差点の間隔から公共モードに切り替える場合、交差点の間隔だけでは車両の停止時間が定まらないので、交差点の間隔から公共モードの解除、設定のタイミングを定めることは困難である。
【0011】
停止時間を予測する技術として、信号機が赤から青に切り替わるまでの信号待ち時間を車両に提供し、信号待ち時間が所定時間以上の場合にエンジンを停止するエンジンの自動停止装置が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、信号待ち時間が長い場合に公共モードを解除するだけでは、信号が青になっても通話に意識が集中しているユーザが発進する必要性に気づかないおそれがあるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑み、停止の直後に発進する場合には通話制限を解除しない車両用通話装置を提供することを目的とする。また、通話制限を解除した後、発進の必要性があることをユーザに通知できる車両用通話装置及び通話制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に、鑑み、本発明は、走行中は通話を制限すると共に、自車両が停止している場合は通話制限を解除する車両用通話装置において、前方の信号機の現示情報及び信号が変わるまでの遷移残時間を受信する第1の受信手段(例えば、狭域通信装置26)と、信号機から自車両までの間の他車両の車両情報を受信する第2の受信手段(例えば、広域通信装置21)と、遷移残時間が閾値以上であって、現示情報が停止を示し、かつ、他車両の車両情報から他車両が停止していると判定される場合、通話制限を解除する通話制限制御手段(例えば、公共モード設定・解除部44)と、遷移残時間が所定以下となった場合、該遷移残時間をユーザに通知する通知手段(例えば、状況通知部43)と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、遷移残時間が閾値以上であって、信号が赤で、かつ、他車両が停止している場合に公共モードを解除するので、オフフックしたがすぐに発車する状況が生じることがない。また、遷移残時間が所定以下となった場合、該遷移残時間をユーザに通知するので、通話に意識が集中しているユーザが発進する必要性に気づかなくなることを防止できる。
【0015】
また、本発明は、走行中は通話を制限すると共に自車両が停止している場合、通話制限を解除する車両用通話装置において、自車両前方の所定区間の他車両の車両情報を受信する第1の受信手段と、他車両の車両情報から他車両停止していると判定される場合、通話制限を解除する通話制限制御手段と、通話制限が解除された旨をユーザに通知する通知手段と、他車両の車両情報から一以上の他車両が発進したことを検出した場合、自車両が発進するまでの発進残時間を、発進した他車両に後続する所定台数の他車両の発進遅れ時間情報、及び、発進した他車両から自車両までの車両数、から算出する残時間算出部と、発進残時間が所定以下になった場合、通話制限制御手段は通話制限を再開し、通知手段は、通話が制限された旨をユーザに通知する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、他車両が停止している場合に公共モードを解除するので、オフフックしたがすぐに発車する状況が生じることがない。また、発進残時間を算出して、信号機がなくても発進残時間が所定以下になった場合にユーザに通知できるので、ユーザが発進する必要性に気づかなくなることを防止できる。
【0017】
また、本発明は、走行中は通話を制限すると共に自車両が停止している場合、通話制限を解除する車両用通話装置において、信号機から自車両までの間の他車両の車両情報を受信する第1の受信手段と、他車両の車両情報及び自車両の位置情報から、自車両が路肩に寄せて停止していることを検出し、かつ、自車両の前方の所定距離内に他車両が停止していないことを検出した場合、通話制限を解除する通話制限制御手段と、通話制限が解除された旨をユーザに通知する通知手段と、自車両が発進した場合、通話制限制御手段は通話制限を再開し、通知手段は、通話が制限された旨をユーザに通知する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ユーザが自分の意志で停止していることを検出し公共モードを解除するので、オフフックしたがすぐに発車する状況が生じることがない。また、自車両が発進した場合、公共モードに設定されユーザに通知するので、公共モードに設定されたことを把握できる。
【発明の効果】
【0019】
停止の直後に発進する場合には通話制限を解除しない車両用通話装置を提供することができる。通話制限を解除した後、発進の必要性があることをユーザに通知できる車両用通話装置及び通話制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら、実施例を挙げて説明する。
【0021】
車両を運転中は、携帯電話やPHS(以下、単に移動端末という)による通話が法令により禁止される場合があり、移動端末を手に持たないで通話できるハンズフリー装置が市販されている。ハンズフリー装置を車両に装着すれば、運転中でも運転者(移動端末のユーザでもあるので、以下、運転者と移動端末のユーザを区別せずにユーザという)が着信に応答することができる。しかしながら、移動端末を手に持たないハンズフリー通話でもユーザによってはこれを好まない場合がある。そこで、本実施形態の車両用情報端末では、
a)走行中ハンズフリー通話を許可する
b)走行中ハンズフリー通話を許可せず、停止中のみ通話(ハンズフリー通話及び移動端末の操作)を許可する
のいずれかをユーザが設定できるようになっており、以下の本実施形態ではb)のように設定した場合の制御について説明する。なお、通話が禁止される態様として移動端末では、公共モード(又はドライブモード)と称される移動端末による自動応答機能が備えられるので、以下では、通話の禁止を公共モードの設定、通話の許可を公共モードの解除、と称する。公共モードが解除された場合、ハンズフリー通話してもよく、移動端末を手にとって通話してもよいが、実際の通話の態様は各国又は自治体の法令に従うものとする。
【実施例1】
【0022】
図1は、本実施例の通話モード制御システム200の概略構成図の一例を示す。車両50は信号機11の赤信号より前方の車両14と共に停止している。信号機11の現示情報(赤、青、黄いずれの状態かを示す情報)は道路に沿って信号機11の手前に敷設された路側通信装置80から車両50に送信されている。また、路側通信装置80は信号機11から信号機11の表示サイクルを取得しており、信号機11の切り替わり、信号機11が赤状態を維持する時間(以下、赤状態維時間という)、青状態維持時間、黄状態維持時間、及び、次の表示に切り変わるまでの残り時間情報(以下、遷移残時間情報という)を車両50に配信する。
【0023】
サーバ60は、車両14、50から車速情報や位置情報等(以下、プローブ情報という)を収集して交通情報を生成し、定期的、不定期又は車両50からの要求に応じて交通情報を車両50に配信している。
【0024】
車両50はユーザが携帯する移動端末と共に車両用通話装置100を搭載しており、車両用通話装置100は、路側通信装置80やサーバ60のようなインフラから、交通情報(例えば、車両14の車速情報)を受信し車両14が全て停止していることを検出したら、公共モードを解除し、遷移残時間をユーザに通知する。したがって、現示情報と車両14の交通情報から車両50が信号待ちしていることを確実に検出でき、停止直後に発進する必要がある場合に公共モードを解除することを防止できる。
【0025】
また、遷移残時間が少なくなれば、車両用通話装置100は遷移残時間をユーザに通知する。また、前方の車両14が発信したことを検出した場合には、公共モードに設定すると共に、ユーザにその旨を通知する。したがって、信号機11が青信号に切り替わっても、通話しているユーザが気づかないということを防止し、前方の車両14に続いてユーザは速やかに発進することができる。
【0026】
図2は、通話モード制御システム200の機能ブロック図の一例を示す。図2に示すように、本実施例では移動端末70と車両用通話装置100とを別体に構成したが、車両用通話装置100の例えば広域通信装置21が通話機能を備えている場合等、車両用通話装置100が単体で通話機能を有する場合がある。この場合、移動端末70は必要なく、車両用通話装置100と移動端末70とが通信しなくてもよい。
【0027】
〔サーバ60〕
サーバ60は、CPU、ROM、RAM、不揮発メモリ及び入出力インターフェイスを備えたコンピュータを実体とし、CPUがプログラムを実行するか又はASIC((Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアにより実装される、交通情報送信部61及びネットワークインターフェイス63を有する。また、交通情報DB(Data Base)62に交通情報(例えば、位置情報、リンク旅行時間、車速情報、渋滞情報、等)が記憶されている。
【0028】
ネットワークインターフェイス63は、ネットワーク15を介して移動端末70の事業者の情報サーバから送信される通信データにプロトコル処理等を施して、車両14、50から送信されたプローブ情報を受信する。サーバ60はこのプローブ情報から、交通情報を生成し交通情報DB62に記憶する。そして、例えば、車両50からの要求に応じて交通情報送信部61は車両50を宛先にして交通情報を送信する。サーバ60が送信する交通情報は、例えば、車両50の周囲(例えば、半径500m)の車両14の位置情報及び車速情報である。
【0029】
この交通情報により、車両50の車両用通話装置100は、前方の車両14が全て停止しているか否かを判定する。また、いずれかの車両14が発進したことを検出する。
【0030】
〔路側通信装置80〕
路側通信装置80は、車両50の前方の信号機11と接続されており、信号機11の現示情報を送信する信号情報送信部81、及び、車両用通話装置100と通信する通信装置82を有する。信号情報送信部81は、定期的又は信号機11の表示の切り替わり時に、信号機11の現在の表示を示す現示情報を車両用通話装置100に送信する。また、信号機11の例えばタイマを参照し、次の表示に切り替わるまでの遷移残時間情報を所定時間毎(例えば5秒毎)に車両用通話装置100に送信する。本実施形態では、後どのくらい停止していられるかを検出するため、赤信号の遷移残時間情報を利用する。
【0031】
通信装置82は,現示情報及び遷移残時間情報を信号処理し、次いで例えばマンチェスタ方式で符号化しASK(振幅偏移変調)変調又はQPSK変調して、5.8GHz帯の搬送波に乗せて送信する。通信装置82は、路側通信装置80の前後の所定範囲のみが「通信領域の下限値」以上となる、狭域通信(DSRC(Dedicated Short Range Communication))を実現する。
【0032】
〔車両用通話装置100〕
車両用通話装置100はナビECU30により制御される。ナビECU30には、広域通信装置21、GPS受信機22、車速センサ23、ジャイロセンサ24、地図DB25、狭域通信装置26、BTモジュール27、入力部28、ディスプレイ29、スピーカ31及びマイク32が、CAN(controller area network)や専用線などを介して接続されている。
【0033】
広域通信装置21は、例えば移動端末70の基地局16や無線LANのアクセスポイントに接続して、サーバ60から送信された交通情報を受信する。サーバ60が送信する交通情報は、所定の通信プロトコル(例えば、TCP/IP)に基づきパケットに分割されているので、広域通信装置21はパケット番号に従いこれを組み立て交通情報を受信する。なお、プローブ情報の送信時には、サーバ60のIPアドレス、車両50のIPアドレス(実際には車両にIPアドレスは付与されていない)、データ長、プローブ情報、エラー訂正符号をフレームに格納してサーバ60に送信する。
【0034】
GPS受信機22は、例えばGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波の到達時間に基づき車両50の位置を検出する。ナビECU30は、この位置に車速センサ23により検出される走行距離をジャイロセンサ24により検出された方向に累積して、走行中の車両50の位置を高精度に推定する。
【0035】
地図DB25は、位置情報に対応づけて、実際の道路に対応するリンク及びリンク同士の交点を表すノードを対応づけた道路地図情報を記憶する。リンク情報を記憶するテーブルには、リンク長、幅員、接続ノード、接続方向等が含まれるため、地図DB25の道路地図情報から道路網を形成することができる。なお、この他、地図DB25には、リンク毎に自動車専用道路や一般道などの道路種別、及び、駐車場、飲食店、ガソリンリンスタンド、駅等の施設の位置情報が記憶されている。
【0036】
狭域通信装置26は、通信装置82から送信された搬送波に、帯域フィルタ、中間波の生成、増幅、ASK復調等を施して、現示情報及び遷移残時間情報を受信する。なお、狭域通信装置26は、通信装置82と同様の手順で車両50の情報を路側通信装置80に送信することができる。
【0037】
BTモジュール27は、Bluetooth(登録商標、以下、BTという)と呼ばれる通信規格に従い、移動端末70と通信する。なお、この通信方法は一形態に過ぎず、ZIGBEE(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)等の無線通信、又は、有線で接続してもよい。
【0038】
移動端末70は同様にBTモジュール27と通信するためのBTモジュール71を有する。BTモジュール27は、移動端末70に公共モードへの設定又は公共モードの解除を要求するモード設定情報を移動端末70に送信する。BTモジュール27、71は、ハンズフリー装置の一態様であって、車両用通話装置100と移動端末70を無線で接続する必要はなく、有線接続してもよい。車両用通話装置100と移動端末70が接続されていることで、運転者が発した音声はマイク32を介しBTモジュール27からBTモジュール71に送信され、以降は移動端末70を用いた通話と同様に基地局16と通信が制御される。また、移動端末70が受信した音声データはBTモジュール71からBTモジュール27に送信され、スピーカ31から出力される。
【0039】
BTモジュール27、71を用いた通信について簡単に説明する。BTモジュール27、71は、それぞれ物理層として無線通信を確立するRF部と、BTの仕様に応じた処理を行うBT部とを有する。RF部の接続方式としてBTでは、SCO(synchronous connection oriented:同期接続)接続とACL(Asynchronous Connectionless Link:非同期接続)とが定義されている。SCO接続はBTモジュール27と71との間に形成される回線接続タイプのポイント・ツー・ポイント・リンクであり、主に音声データの転送に使用される。ACL
接続は、BTモジュール間でパケット交換タイプの接続を行うリンクであり、主にデータ転送に使用される。
【0040】
BTモジュール27、71には固有のIDが与えられており、接続する場合にはこのIDにより通信相手を識別する。また、最初にBTモジュール27、71を接続する時はPINキー(暗証番号)の入力が必要であり、正しいPINキーを入力してペアリングが完了すると、移動端末70のBTモジュール71を起動した状態で両者が接近すると自動的に接続される。
【0041】
また、BTではマスターとスレーブの双方のBTモジュール27,71が同じプロファイルを備えることで相互の接続を確保している。例えば、プロファイルにはGAP(Generic Access Profile)、SAD(Service Discovery Application Profile)、SPP(Serial Port Profile)、HFP(Hands Free Profile)、OPP(Object Push Profile)、PBAP(Phone Book Access Profile)等が用意されている。このうち、HFPは離れた場所にあるBTモジュール27、71からの音声の入出力を規定し、ハンズフリー通話を可能とする。例えば、電話による通話という性質上、ATコマンドの取り扱い、電波の強さや発信者番号通知などの伝達、リダイヤルや電話帳機能の利用、エコーキャンセルなどを規定している。また、PBAPは移動端末70が記憶する電話帳の転送等の手順を定めるプロファイルで、自動的又はユーザの操作により車両用通話装置100に移動端末70の電話帳を転送することができる。
【0042】
入力部28は、キーボード、リモコン、音声入力装置、又は、ディスプレイ29に形成されたディスプレイ29の接触位置を検出するタッチパネルなど、ユーザが車両用通話装置100に操作情報を入力するためのユーザインターフェイスである。また、本実施形態では、着信に応答するためのオンフック/オフフックを操作するスイッチを備え、また、ディスプレイ29に表示された電話帳の通話相手をタッチパネルで選択することで、発呼することができる。
【0043】
ディスプレイ29は、液晶、有機EL及びヘッドアップディスプレイなどの表示手段であり、道路地図、電話帳、ナビの操作メニュー、テレビなどメディアソースの選択メニュー等を表示するために用いられる。また、スピーカ31は、目的地までの経路において右折や左折の手前で車両操作を促しユーザを目的地まで案内する音声メッセージを出力する。マイク32は、例えば、複数の無指向性マイクロホンが格子状に配列されたアレイマイクであって、例えば、Aピラー、天井部、センタークラスタ等に設けられている。
【0044】
〔移動端末70〕
移動端末70は、ユーザが乗車する際に携帯する通信装置であり、基地局16を介して他方のユーザと通話及びデータ通信が可能となっている。通話機能を備えていれば、PDA(Personal Data Assistant)、ノートパソコン等であってもよい。本実施例の移動端末70は、公共モードの設定及び解除をユーザが切り替えるモード切替ボタン72を有し、例えば長押しすることで公共モードの設定と解除が交互に切り替えられるようになっている。また、移動端末70は、車両用通話装置100から送信されるモード設定情報に基づき、公共モードの設定及び解除を切り替える。
【0045】
〔ナビECU30の機能ブロック〕
図3は、ナビECU30の機能ブロック図の一例を示す。ナビECU30はCPU、ROM、RAM、不揮発メモリ等を備えたコンピュータを実体とする。CPUによるプログラムの実行又はASIC等のハードウェアにより、停止判定部41、残時間判定部42、状況通知部43及び公共モード設定・解除部44が実現される。
【0046】
停止判定部41は、車両50が信号で停止しているか否かを判定する。停止判定部41は、狭域通信装置26が受信した現示情報から、前方の信号機11の表示が赤であることを検出する。また、赤信号であっても前方の車両14が移動している場合には車両50も移動する必要があるので、広域通信装置21が受信した交通情報から車両14が停止しているか否かを判定する。具体的には、信号機11の現示情報が赤であると検出した場合、停止判定部41はサーバ60に交通情報を要求する。交通情報は車両50の周辺の車両14の位置情報及び車速情報を含む。車両50の位置情報はGPS受信機22等から既知であり、信号機11の位置は例えば地図DB25に記憶されているので車両50にとって既知である。したがって、停止判定部41は、例えば、車両50が走行しているリンクであって、車両50と信号機11の間にある車両14を、サーバ60から受信した位置情報から特定する。そして、停止判定部41は特定した車両14の速度情報を参照し、それが所定以下であれば、車両50もしばらく停止する(以下、停止継続推定状態)と判定する。 残時間判定部42は、停止判定部41が停止継続推定状態であると判定すると、狭域通信装置26が受信した遷移残時間情報が所定以下になったか否かを判定する。例えば、遷移残時間が5〜10秒以下になると青信号に切り替わるまでの遷移残時間が所定以下になったと判定する。
【0047】
状況通知部43は、遷移残時間をユーザに通知する。遷移の態様は、遷移残時間の大小に関わらず通知する態様と、遷移残時間が所定以下になった場合に通知する態様がある。状況通知部43は、遷移残時間をディスプレイ29に表示し、また、スピーカ31から音声メッセージにより出力する。ユーザはディスプレイ29を見ていない場合が多いことを考えると、少なくとも音声メッセージにより出力することが好適である。これにより、ユーザは青信号に変わるため、車両50を発進させる必要があることを把握できる。また、公共モードが解除された場合、又は、公共モードに設定された場合、その旨をユーザに通知する。
【0048】
公共モード設定・解除部44は、停止判定部41により停止継続推定状態であると判定され、かつ、遷移残時間が閾値T以上の場合、公共モードを解除するよう要求するモード設定情報を移動端末70に送信する。閾値Tは固定値でもよいし、通話に要求される時間から定まる可変な値でもよい。固定値の場合、ユーザが設定した平均的な通話時間が閾値Tとなり、可変な値とする場合、例えば移動端末70の留守番電話に記憶された録音時間が閾値Tとなる。録音時間は、移動端末70から車両用通話装置100に送信される。
【0049】
また、遷移残時間が所定以下となった場合、公共モード設定・解除部44は公共モードに設定するよう要求するモード設定情報を移動端末70に送信する。したがって、モード設定情報により移動端末70を公共モードに設定/解除することができる。
【0050】
〔通話モード制御システム200の動作手順〕
図4は、車両用通話装置100が移動端末70の公共モードを解除及び設定する手順を示すフローチャート図である。図4のフローチャート図は、例えばイグニッションがオンの状態で、車速が所定以下になるとスタートする。なお、移動端末70は、ユーザの操作又は本実施形態の車両用通話装置100により予め公共モードに設定されている。
【0051】
走行中、狭域通信装置26は路側通信装置80の通信エリアを通過すると信号機11の現示情報を受信する(S10)。停止判定部41は、現示情報から前方の信号機11の表示が赤であるか否かを判定する(S20)。表示が赤でない場合(S20のNo)、車両50の車速が低下したのは信号待ちによるものではないと判定する(S30)。ステップS30では、公共モードは解除されない。
【0052】
信号機11の表示が赤の場合(S20のYes)、停止判定部41は広域通信装置21を用いてサーバ60に周辺の交通情報を要求する(S40)。停止判定部41は、交通情報から車両50と信号機11の間にある車両14の車速情報を抽出する。
【0053】
そして、車両50と信号機11の間にある全ての車両14が停止しているか否かを判定する(S50)。この停止とは、完全に車速がゼロでなくてもよく、停止していると見なせる車速(例えば、5km/h)以下であればよい。
【0054】
全ての車両14が停止していない場合(S50のNo)、信号機11の表示が赤であっても、車両50の車速が低下したのは信号待ちによるものではないと判定する(S30)。このような状況は、例えば、右折車両待ち、バス停や工事などによる車幅の減少により生じる。
【0055】
全ての車両14が停止している場合(S50のYes)、停止判定部41は停止継続推定状態であると判定する。そして、狭域通信装置26は路側通信装置80から送信される遷移残時間情報を受信する(S60)。これにより、最新の遷移残時間情報が得られる。なお、この最新の遷移残時間情報が閾値T以下の場合、すぐに発進することがあるので公共モードに切り替えない。
【0056】
公共モード設定・解除部44は、公共モードを解除するよう要求するモード設定情報をBTモジュール27から移動端末70に送信する(S70)。これにより、移動端末70の公共モードは解除され、着信が可能となる。
【0057】
また、状況通知部43は、ユーザに公共モードが解除された旨と遷移残時間情報を通知する。例えば、ディスプレイ29に「移動端末の公共モードが解除されました。信号が青に変わるまで残り○○秒です。」と表示され、スピーカ31から同様の音声メッセージが表示される。表示と音声による通知はいずれか一方でもよい。
【0058】
公共モードを解除すると、停止判定部41は、広域通信装置21を用いて、所定のサイクル時間毎にサーバ60から交通情報を受信する(S80)。そして、ステップ50と同様に、車両50と信号機11の間にある全ての車両14が停止しているか否かを判定する(S90)。
【0059】
全ての車両14が停止している場合(S90のNo)、残時間判定部42は残時間が所定以下になったか否かを判定する(S100)。全ての車両14が停止した状態で、かつ、遷移残時間が十分に残っている場合、ステップS80に戻りサーバ60から交通情報を受信し、同様の判定を繰り返す。すなわち、常に、前方の車両14が走行したか否かと、遷移残時間が所定時間以下になったか否かを繰り返し判定する。
【0060】
そして、車速情報や位置情報の変化から前方の車両14のいずれかが発進したことが検出された場合(S90のYes)、停止判定部41は停止継続推定状態の終了を検出し、公共モード設定・解除部44が公共モードを設定するよう要求するモード設定情報をBTモジュール27から移動端末70に送信する(S120)。また、状況通知部43は、例えば、ディスプレイ29に「移動端末が公共モードに設定されました。」と表示し、同様の音声メッセージをスピーカ31から出力して、ユーザに公共モードが設定された旨を通知する。表示と音声による通知はいずれか一方でもよい。
【0061】
また、残時間判定部42は遷移残時間が所定以下になったと判定した場合(S100のYes)、状況通知部43は、例えば、ディスプレイ29に「信号が青に変わるまで残り△△秒です。」と表示し、同様の音声メッセージをスピーカ31から出力して、ユーザに遷移残時間を通知する。表示と音声による通知はいずれか一方でもよい。これにより、ユーザは信号が青に変わるまでの時間を把握できる。
【0062】
ついで、公共モード設定・解除部44は公共モードを設定するよう要求するモード設定情報をBTモジュール27から移動端末70に送信し、ユーザにその旨を通知する(S120)。
【0063】
本実施例の通話モード制御システム200は、信号機11の現示情報と信号機11までの車両14が全て停止しているか否かの両方の情報から、車両50が信号待ちをしているか否かを判定し、遷移残時間が閾値T以上の場合に停止継続推定状態であることを検出するので、公共モードを解除した直後に車両50が発進せざるを得なくなる状況を回避できる。また、残遷移時間が所定以下になるとユーザに通知するので、青信号になっても会話に集中してユーザが気づかないという状況に陥ることを防止できる。
【実施例2】
【0064】
実施例1では、路側通信装置80と通信して信号待ち状態であることを検出し公共モードを解除したが、信号がない場所でも車両50が停止することがある。前方に信号がない場所でも車両50が停止した場合、公共モードを解除すれば着信が可能となりまた留守番電話に録音された音声を聞くことができるので操作性が向上する。本実施例では、前方に信号がなくても車両50が所定時間以上継続して停止する状態(例えば、渋滞)を検出して公共モードを解除する車両用通話装置100について説明する。
【0065】
図5(a)は、本実施例の通話モード制御システム200の概略構成図の一例を示す。なお、図5(a)において図1と同一構成部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図5(a)では、路側通信装置80及び信号機11がない。一方、車両14、50は工事の影響を受け停止している。
【0066】
図5(a)の状態で例えば車両14Bが待機車列から離脱した場合、図5(b)に示すように、後続の車両14C〜14Zは前方に詰めるが、最終的に車両14Zが発進するまでは、車両14Bに後続の車両が次々に発進遅れを示すので、車両14Bが離脱してから車両50が発進するまで待ち時間が必要となる。本実施例では、後続の車両14C等の発進遅れから車両50の待ち時間を予測し、この待ち時間をユーザに通知する(以下、発進残時間という)。また、発進残時間が少なくなれば、ユーザにその旨を通知する。
【0067】
前方の車両14が全て停止状態であることを検出するので、車両50が停止直後に発進する必要がある場合には公共モードを解除することを防止できる。また、信号機11がなくても車両用通話装置100はユーザに発進までの時間を通知でき、ユーザが通話に集中して発進の必要性に気づかないという状況に陥ることを防止できる。
【0068】
図6は、ナビECU30の機能ブロック部の一例を示す。なお、図6において図3と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図6では、残時間判定部42の替わりに残時間算出部45を有する点で異なる。残時間算出部45は、車両14Bが発進した後、後続の車両14の数台から発進遅れ時間を検出し、この発進遅れ時間と車両14から車両50までの車両数から発進残時間を算出する。なお、各車両14が発進したことはサーバ60から受信する車速情報(発進により所定以上となる)又は位置情報の変化から検出される。
【0069】
具体的には、例えば、車両14Cが発進した時刻が、車両14Bが発進してから3秒経過していた場合、この3秒が発進遅れ時間となる。同様に、車両14Dは車両14Bが発進してから7秒後に発進した場合、発進遅れ時間は4秒(7−3)となる。このように、車両14Bの後続の車両14C等、数台について発進遅れ時間を算出し、平均値(平均発進遅れ時間)を算出する。平均発進遅れ時間を、車両14Cから直前の車両14Zまでの車両数を乗じれば、車両50が発進するまでの発進残時間が得られる。なお、平均発進遅れ時間は後続の車両14になるほど徐々に大きくなることが多いので、平均発進遅れ時間を車両数に応じた定数で補正してもよい。
【0070】
なお、発進残時間は、車車間通信で受信した情報から算出することもできる。車両14Bが発進した際に後方の車両14Cに発進時刻情報を送信し、この発進時刻情報を次々に後方の車両14D等にリレー通信する。同様に、車両14Cが発進した際、車両14Cは発進時刻情報を送信し、この発進時刻情報を次々に後方の車両14D等にリレー通信する。これにより、車両50は前方の車両14の発進時刻の全て及びリレーした車両数を受信するので、車両14Bに後続の数台の車両14の発進時刻から平均発進遅れ時間を算出でき、リレーした車両数から発進遅れ時間を算出することができる。
【0071】
状況通知部43は、発進残時間をユーザに通知する。なお、停止中は常に発進残時間の算出を繰り返し、既に通知した発進残時間とずれが生じたら、算出し直した発進残時間をユーザに通知する。
【0072】
〔通話モード制御システム200の動作手順〕
図7は、車両用通話装置100が移動端末70の公共モードを解除及び設定する手順を示すフローチャート図である。図7のフローチャート図は、例えばイグニッションがオンの状態で、車速が所定以下になるとスタートする。なお、移動端末70は、ユーザの操作又は本実施形態の車両用通話装置100により予め公共モードに設定されている。
【0073】
車速が所定以下になると、停止判定部41は広域通信装置21を用いてサーバ60に周辺の交通情報を要求する(S210)。そして、停止判定部41は、交通情報から車両50の前方に存在する車両14の車速情報を抽出し、車両50の前方にある全ての車両14が停止しているか否かを判定する(S220)。ところで、信号機11がない場合、渋滞の起点が明らかでないので、車両50の前方の車両14とは例えば車両50から所定区間(例えば50〜100m)前方までの車両14である。また、この停止とは、完全に車速がゼロでなくてもよく、停止していると見なせる車速(例えば、5km/h)以下であればよい。
【0074】
前方の全ての車両14が停止していない場合(S220のNo)、車両50の車速が低下したのは渋滞状態によるものではないと判定する(S230)。ステップS230では、公共モードは解除されない。
【0075】
前方の全ての車両14が停止している場合(S220のYes)、停止判定部41は停止継続推定状態であると判定する。そして、公共モード設定・解除部44は、公共モードを解除するよう要求するモード設定情報をBTモジュール27から移動端末70に送信する(S240)。これにより、移動端末70の公共モードは解除され、着信が可能となる。また、状況通知部43は、ユーザに公共モードが解除された旨を通知する。例えば、ディスプレイ29に「移動端末の公共モードが解除されました。」と表示され、スピーカ31から同様の音声メッセージが表示される。表示と音声による通知はいずれか一方でもよい。
【0076】
ついで、停止判定部41は広域通信装置21を用いてサーバ60に周辺の交通情報を要求する(S250)。そして、停止判定部41は、交通情報から車両50の前方の車両14の車速情報を抽出し、車両50の前方の車両14が発進したか否かを判定する(S260)。いずれの車両14も発進しなければ、ステップS250とS260の判定を繰り返す。
【0077】
いずれかの車両14が発進した場合(S260のYes)、残時間算出部45は車両50が発進するまでの発進残時間を算出する(S270)。残時間算出部45は、発進した車両14Bに後続する数台の車両14C等のそれぞれの発進遅れ時間を算出しその平均値である平均発進遅れ時間と、車両14Bから車両50までの車両数とから発進残時間を算出する。
【0078】
そして、残時間算出部45は発進残時間が所定時間以下になったか否かを判定する(S280)。発進残時間が所定時間以下となれば(S280のYes)、状況通知部43は、例えば、ディスプレイ29に「自車両が発進するまで残り△△秒です。」と表示し、同様の音声メッセージをスピーカ31から出力して、ユーザに発進残時間を通知する(S290)。表示と音声による通知はいずれか一方でもよい。これにより、ユーザは発進までの時間を把握できる。
【0079】
また、公共モード設定・解除部44は公共モードを設定するよう要求するモード設定情報をBTモジュール27から移動端末70に送信し、ユーザにその旨を通知する(S300)。
【0080】
ステップS280に戻り、発進残時間が所定時間以下でない場合(S280のNo)、停止判定部41は広域通信装置21を用いてサーバ60に周辺の交通情報を要求し、すでに発進した車両14のうち最も車両50に近い車両14を基準に、発進残時間を再度、算出する(S310)。発進した車両数が多くなるほど発進残時間の誤差は大きくなるが、このように、後方の発進車両14を基準に再度、発進残時間を算出することで、精度を向上させることができる。
【0081】
そして、残時間算出部45は、すでにユーザに通知した発進残時間と、改めて算出した発進残時間とのずれが所定以上か否かを判定する(S320)。このずれが大きいと、実際よりも遅い方にずれた場合は発進の準備が不十分となるおそれがあり、早い方にずれた場合はユーザが発進準備してからなかなか前方の車両14Zが発進しないことになる。したがって、ずれの判定基準は、例えば、ユーザがこのような違和感を感じない数秒程度である。
【0082】
すでにユーザに通知した発進残時間と、改めて算出した発進残時間とのずれが所定以上の場合(S320のYes)、状況通知部43は、改めて算出した発進残時間をディスプレイ29に表示し、同様の音声メッセージをスピーカ31から出力する(S330)。
【0083】
そして、ステップS280に戻り、発進残時間が少なくなれば、発進残時間の通知(S290)、公共モードの設定、ユーザへのその旨の通知(S300)を実行する。
【0084】
本実施例の通話モード制御システム200は、渋滞している車両14が全て停止しているか否かから、車両50が信号待ちをしているか否かを判定するので、公共モードを解除した直後に車両50が発進せざるを得なくなる状況を回避できる。また、前方の車両14の発進を検出して算出した発進残時間をユーザに通知するので、会話に集中して発進すべき状況にユーザが気づかないという状況に陥ることを防止できる。また、常に、発進残時間を算出するので、正確な発進残時間を通知できる。
【実施例3】
【0085】
実施例1では信号待ち、実施例2では渋滞、による車両50の停止を検出し公共モードを解除したが、ユーザが自分の意志で停止した場合も自動的に公共モードが解除されたら車両用通話装置100の操作性を向上させることができる。本実施例では、このようなユーザの意志による停止を検出して公共モードを解除する車両用通話装置100について説明する。
【0086】
図8は、本実施例の通話モード制御システム200の概略構成図の一例を示す。なお、図8において図5と同一構成部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図8では、車両50は停止しているが、車両14は渋滞することなく走行している(渋滞していてもよい)。また、車両50は、車両14よりも路肩よりに停車し、車両50の前方に車両14が走行していることもない。このように左の路肩(左側通行の場合)に単独で停車する際は、左折待ちでもなく、ユーザが自らの意志で停止した場合と考えられる。
【0087】
本実施例の車両用通話装置100は、この左の路肩への退避と前方の車両14の有無により、ユーザの意志による停止を検出し、公共モードを解除する。なお、左の路肩への退避以外にも、例えば、車道以外の位置(例えば、駐車場、河川敷、自宅等)などに停車した場合も運転者の意志としてよい。
【0088】
図9は、本実施例のナビECU30の機能ブロック図を示す。なお、図9において、図6と同一構成部分には同一の符号を付しその説明は省略する。本実施例では発進残時間を算出しないので、図9の機能ブロック図は残時間算出部45を有さない。また、停止判定部41は、車両50が左の路肩に寄せて停止していること、かつ、車両50のすぐ前方に停止している車両14がないこと、を条件に車両50がユーザの意志で停止していると判定する。
【0089】
ユーザの意志で停止していると判定された場合、公共モード設定・解除部44は移動端末70を公共モードに設定し、状況通知部43は、その旨をユーザに通知する。
【0090】
〔通話モード制御システム200の動作手順〕
図10は、車両用通話装置100が移動端末70の公共モードを解除及び設定する手順を示すフローチャート図である。図10のフローチャート図は、例えばイグニッションがオンの状態で、車速が所定以下になるとスタートする。なお、移動端末70は、ユーザの操作又は本実施形態の車両用通話装置100により予め公共モードに設定されている。
【0091】
車速が所定以下になると、停止判定部41は広域通信装置21を用いてサーバ60に周辺の交通情報を要求する(S410)。そして、停止判定部41は、交通情報から車両50と同じ道路を走行している車両14の位置情報を抽出する。車両14が走行している場合があるが、この場合、交通情報を受信した時に同じ道路を走行している車両14を10台程度抽出すればよい。
【0092】
そして、停止判定部41は車両50と車両14の位置情報から車両50が左に寄せて停止しているか否かを判定する(S420)。停止判定部41は、複数の車両14の位置情報から同じ道路を走行している車両14を特定し、その車両14の位置情報を座標平面にプロットして直線近似する、そして、その近似直線と車両50の位置情報との乖離量(例えば、近似曲線までの距離)を算出し、乖離量が所定以上であれば、左の路肩によって停止していると判定する。道路の左側と右側のいずれに寄っているかは、車両50の進行方向から判定される。
【0093】
左に寄せて停止していないと判定された場合(S420のNo)、停止判定部41は、車両50が車道でない位置で停止しているか否かを判定する(S430)。車道でない位置とは、道路以外の位置であるので、地図DB25を参照することで容易に判定できる。
【0094】
車両50が車道でない位置で停止している場合(S430のNo)、信号待ちや渋滞で停止していると考えられるので、停止判定部41はユーザの意志による停止ではないと判定し、公共モード設定・解除部44は公共モードを解除しない(S440)。この場合、実施例1又は2の処理を適用して、信号待ち又は渋滞による停止を検出する。
【0095】
ステップS420に戻り、車両50が左に寄せて停止していると判定された場合(S420のYes)、又は、ステップS430に戻り、車道でない位置で停止していると判定された場合(S430のYes)、停止判定部41は車両50のすぐ前方に停止している車両14があるか否かを判定する(S450)。例えば、車両14のうち、車両50に近い数台の車両14の速度情報を抽出し、停止していない車両14を排除する。そして、停止している車両14の位置情報と車両50の位置情報を比較し、その中に車両50の進行方向のすぐ前方に車両14があるか否かを判定する。「すぐ前方」とは、例えば、縦列駐車した場合の間隔(例えば、2〜3m)以下である。これより間隔が小さい場合、渋滞のため前方に車両14が存在すると判定してよい。
【0096】
車両50のすぐ前方に停止している車両14がある場合(S450のNo)、停止判定部41は、左折待ちなどユーザの意志による停止ではないと判定し、公共モード設定・解除部44は公共モードを解除しない(S440)。
【0097】
車両50のすぐ前方に停止している車両14がない場合(S450のYes)、公共モード設定・解除部44は、公共モードを解除するよう要求するモード設定情報をBTモジュール27から移動端末70に送信する(S460)。これにより、移動端末70の公共モードは解除され、着信が可能となる。また、状況通知部43は、ユーザに公共モードが解除された旨を通知する。例えば、ディスプレイ29に「移動端末の公共モードが解除されました。」と表示され、スピーカ31から同様の音声メッセージが表示される。表示と音声による通知はいずれか一方でもよい。
【0098】
ついで、停止判定部41は、車速センサ23が検出する車速を参照し(S470)、車両50が発進したか否かを判定する(S480)。発進するまでは(S480のNO)、ユーザの意志で停止した状態であるので、公共モードは解除された状態となる。
【0099】
車両50が発進した場合(S480のYes)、公共モード設定・解除部44は公共モードを設定するよう要求するモード設定情報をBTモジュール27から移動端末70に送信し、ユーザにその旨を通知する(S490)。状況通知部43は、例えば、ディスプレイ29に「移動端末70を公共モードに設定しました。」と表示し、同様の音声メッセージをスピーカ31から出力して、ユーザに発進残時間を通知する。表示と音声による通知はいずれか一方でもよい。これにより、ユーザは公共モードが設定されたことを把握できる。
【0100】
本実施例によれば、走行中か否かだけでなく、ユーザの意志により車両50が停止していることを検出し、公共モードを解除することができるので、停止直後に発進するような場合には公共モードを解除することを防止できる。また、車両14の発進を検出すると、公共モードに設定してその旨をユーザに通知するので、公共モードに設定されたことをユーザが把握できる。また、ユーザの意志で停止していない場合でも、さらに実施例1及び実施例2の動作手順を適用することで、信号待ちや渋滞による停止及び発進までの時間を検出してユーザに通知するので、青信号に変わって発進する必要性に気づかないことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】通話モード制御システムの概略構成図の一例である(実施例1)。
【図2】通話モード制御システムの機能ブロック図の一例である。
【図3】ナビECUの機能ブロック図の一例である(実施例1)。
【図4】車両用通話装置が移動端末の公共モードを解除及び設定する手順を示すフローチャート図である(実施例1)。
【図5】通話モード制御システムの概略構成図の一例である(実施例2)。
【図6】ナビECUの機能ブロック部の一例である(実施例2)。
【図7】車両用通話装置が移動端末の公共モードを解除及び設定する手順を示すフローチャート図である(実施例2)。
【図8】の通話モード制御システムの概略構成図の一例である(実施例3)。
【図9】ナビECUの機能ブロック図の一例である(実施例3)。
【図10】車両用通話装置が移動端末の公共モードを解除及び設定する手順を示すフローチャート図である(実施例3)。
【符号の説明】
【0102】
11 信号機
14、50 車両
30 ナビECU
41 停止判定部
42 残時間判定部
43 状況通知部
44 公共モード設定・解除部
45 残時間算出部
60 サーバ
70 移動端末
80 路側通信装置






【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中は通話を制限すると共に、自車両が停止している場合は通話制限を解除する車両用通話装置において、
前方の信号機の現示情報及び信号が変わるまでの遷移残時間を受信する第1の受信手段と、
信号機から自車両までの間の他車両の車両情報を受信する第2の受信手段と、
前記遷移残時間が閾値以上であって、前記現示情報が停止を示し、かつ、他車両の車両情報から他車両が停止していると判定される場合、前記通話制限を解除する通話制限制御手段と、
前記遷移残時間が所定以下となった場合、該遷移残時間をユーザに通知する通知手段と、
を有することを特徴とする車両用通話装置。
【請求項2】
他車両の車両情報から一以上の他車両が発進したことを検出した場合、
前記通話制限制御手段は前記通話制限を再開し、前記通知手段は前記通話制限を再開した旨をユーザに通知する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用通話装置。
【請求項3】
前記遷移残時間が所定以下となった場合、該遷移残時間をユーザに通知した後、前記通話制限制御手段は前記通話制限を再開する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用通話装置。
【請求項4】
走行中は通話を制限すると共に自車両が停止している場合、通話制限を解除する車両用通話装置において、
自車両前方の所定区間の他車両の車両情報を受信する第1の受信手段と、
他車両の車両情報から他車両が停止していると判定される場合、前記通話制限を解除する通話制限制御手段と、
前記通話制限が解除された旨をユーザに通知する通知手段と、
他車両の車両情報から一以上の他車両が発進したことを検出した場合、自車両が発進するまでの発進残時間を、発進した他車両に後続する所定台数の他車両の発進遅れ時間情報、及び、発進した他車両から自車両までの車両数、から算出する残時間算出部と、
前記発進残時間が所定以下になった場合、前記通話制限制御手段は前記通話制限を再開し、前記通知手段は、通話が制限された旨をユーザに通知する、
ことを特徴とする車両用通話装置。
【請求項5】
前記発進残時間が所定以下になる前、前記残時間算出部は、発進した他車両のうち自車両に最も近い他車両に後続する所定台数の他車両の発進遅れ時間情報、及び、発進した他車両のうち自車両に最も近い他車両から自車両までの車両数、から、発進残時間を算出し、
前記通知手段は、再度計算した前記発進残時間をユーザに通知する、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用通話装置。
【請求項6】
前記残時間算出部は、前記第1の受信手段が受信する車両情報でなく、他車両が自車両に向けてリレー送信する他車両の位置情報から、他車両の発進遅れ時間情報、及び、発進した他車両から自車両までの車両数を求め、前記発進残時間を算出する、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用通話装置。
【請求項7】
走行中は通話を制限すると共に自車両が停止している場合、通話制限を解除する車両用通話装置において、
自車両の周辺の他車両の車両情報を受信する第1の受信手段と、
他車両の車両情報及び自車両の位置情報から、自車両が路肩に寄せて停止していることを検出し、かつ、自車両の前方の所定距離内に他車両が停止していないことを検出した場合、前記通話制限を解除する通話制限制御手段と、
前記通話制限が解除された旨をユーザに通知する通知手段と、
自車両が発進した場合、前記通話制限制御手段は前記通話制限を再開し、前記通知手段は、通話が制限された旨をユーザに通知する、
ことを特徴とする車両用通話装置。
【請求項8】
前記通話制限制御手段は、自車両が路肩に寄せて停止していることが検出されなくても、自車両が車道以外の場所で停止し、かつ、自車両の前方の所定距離内に他車両が停止していないことを検出した場合、前記通話制限を解除する、
ことを特徴とする請求項7記載の車両用通話装置。
【請求項9】
走行中は通話を制限すると共に、自車両が停止している場合は通話制限を解除する車両用通話装置の通話制御方法において、
第1の受信手段が、前方の信号機の現示情報及び信号が変わるまでの遷移残時間を受信するステップと、
第2の受信手段が、信号機から自車両までの間の他車両の車両情報を受信するステップと、
判定手段が、前記遷移残時間が閾値以上であって、前記現示情報が停止を示し、かつ、他車両の車両情報から他車両が停止していか否かを判定するステップと、
通話制限制御手段が、前記通話制限を解除するステップと、
前記遷移残時間が所定以下となった場合、通知手段が、該遷移残時間をユーザに通知するステップと、
を有することを特徴とする通話制御方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−206866(P2009−206866A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47324(P2008−47324)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】