説明

車両用進行方向表示装置

【課題】経験を必要とせずに所望の方向へ車両を進行し易くする。
【解決手段】車両10の進行方向を表示する車両用進行方向表示装置15において、車両10にポール17を立て、このポール17に車両10の進行方向を示す水平バー18を取付けた。運転者は、車両10の進行方向を示す水平バー18と、車両前方の景色とを見ながらステアリング操作を行うから、水平バー18によって車両10の進行方向を即座に把握することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用進行方向表示装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用進行方向表示装置として、車両のバンパに伸縮自在の電動コーナーポールを設けたもの(例えば、特許文献1参照。)、ハンドルの中央にハンドル回転角を示すハンドル回転角指示装置を設けたもの(例えば、特許文献2参照。)、表示部に車両の進行方向を矢印で表示するもの(例えば、特許文献3参照。)が知られている。
【特許文献1】特開平10−230780号公報
【特許文献2】特開2001−4400公報
【特許文献3】特開2005−56336公報
【0003】
特許文献1の図1、図2には、車両100のバンパ101に伸縮式のポール1が取付けられ、検出手段21〜27からの信号又はポール用手元スイッチ30からの情報に基づいてポール1が伸縮されることが記載されている。
【0004】
特許文献2の図4、図5には、ハンドル8の中央部にハンドル回転角指示装置9が取付けられ、ハンドル8の回転に伴ってハンドル回転角指示装置9に備える指針板4がハンドル回転角を指し示すことが記載されている。
【0005】
特許文献3の図10、図12(a)〜(c)には、表示部に、車両と、車両の進行方向を示す矢印とを表示することが記載され、また、表示部に、車両と、車両が進むべき進行方向を示す矢印と、ステアリングと、運転者が行うべきステアリングの操作方向を示す矢印とを表示することが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、運転者はポール1を目安にしてバンパ101の位置を知ることが可能であるが、ステアリングを切っている状態で車両の進行方向を知ることはできない。
特許文献2では、ハンドル回転角指示装置9によって、ハンドル8がどの程度切れているのかを知ることは可能であるが、実際に車両がどの方向に進むのかはハンドル回転角指示装置9の指示から予測することになり、精度良く車両進行方向を予測するにはある程度の経験を要する。
【0007】
特許文献3では、表示部に車両進行方向あるいは進むべき車両進行方向に関する情報が矢印やステアリングの回転角度で表示されるが、表示部と実際の車両前方の風景には視覚的に違いがあり、引用文献2と同様に、表示部の情報から精度良く車両進行方向を求めるにはある程度の経験が必要である。
【0008】
本発明の目的は、車両用進行方向表示装置を改良することで、あまり経験を必要とせずに所望の方向へ車両を進行し易くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車両の進行方向を表示する車両用進行方向表示装置において、車両にポールを立て、このポールに車両の進行方向を示す水平バーを取付けたことを特徴とする。
作用として、運転者は、車両の進行方向を示す水平バーと、車両前方の景色とを見ながらステアリング操作を行う。
【0010】
請求項2に係る発明は、水平バーを、ステアリングホイールの舵角に基づいて演算された車両進行方向に駆動制御することを特徴とする。
作用として、ステアリングホイールの舵角から操舵輪の切れ角を算出し、操舵輪の切れ角、操舵輪と水平バーの回転中心との位置関係から水平バーの方向を算出する。
【0011】
請求項3に係る発明は、水平バーが示す車両進行方向をメータパネル内の仮想バーで表示することを特徴とする。
作用として、車室外に配置された水平バーと、車室内に配置されたメータパネル内の仮想バーとを状況に応じて使い分けることが可能になる。例えば、昼間時、晴天時には水平バー、夜間時、雨天時にはメータパネル内の仮想バーで車両進行方向を確認する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、車両にポールを立て、このポールに車両の進行方向を示す水平バーを取付けたので、水平バーによって車両の進行方向を即座に把握することができ、所望の方向へ車両を進行し易くすることができる。また、車両発進前に車両が動き出す方向が解るため、車庫入れなどを容易に行うことができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、水平バーを、ステアリングホイールの舵角に基づいて演算された車両進行方向に駆動制御するので、ステアリングホイールの舵角から容易に水平バーの向きである車両進行方向を算出することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、水平バーが示す車両進行方向をメータパネル内の仮想バーで表示するので、水平バーとメータパネル内の仮想バーとを選択して使用することができ、例えば、昼間時、晴天時には水平バー、夜間時、雨天時にはメータパネル内の仮想バーというように、状況に応じて選択できるので、使い勝手を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る進行方向表示装置を備えた車両の前部斜視図であり、車両10は、前部下部にバンパの外側を覆うバンパカバー12を備え、このバンパカバー12の左コーナ部に、車両進行方向を指し示す車両進行方向表示装置15を構成する樹脂製のT字部材16が上方へ突出するように設けられた四輪車である。
【0016】
T字部材16は、鉛直方向に延びるポール17と、このポール17の上端に水平に取付けられた水平バー18とからなり、水平バー18は常時車両が進行する方向に向けられている。なお、21は左前輪である。
【0017】
図2は本発明に係る進行方向表示装置を示す構成図であり、車両進行方向表示装置15は、ステアリングホイール31の舵角(ハンドル角)を検出する舵角センサ32と、この舵角センサ32からの信号が入力される制御部33と、この制御部33からの信号により駆動されるサーボモータを内蔵したサーボ部34と、サーボモータの回転をT字部材16に伝える自在継手36と、T字部材16と、このT字部材16のポール17を回転自在に支持する支持部37とからなり、ステアリングホイール31の舵角に基づいて水平バー18の延びる方向、即ち車両10の進行方向が指し示される。
サーボ部34及び支持部37はバンパカバー12内のフレームに取付けられている。
【0018】
図3は本発明に係る車両進行表示装置での制御を行う進行方向表示制御装置のブロック図である。
T字部材16を車両進行方向に向けるための進行方向表示制御装置40は、舵角センサ32、制御部33、サーボモータ35からなる。
【0019】
舵角センサ32によりステアリングホイール31の舵角θが検出されると、舵角センサ32からの舵角信号SSに基づいて、制御部33は、舵角から左前輪21(図1参照)の直進位置からの切れ角αを算出し、この切れ角αを基にして水平バー18の方向(車両前後方向からの角度β)を算出する。
そして、制御部33は、サーボモータ35に駆動信号SDを送り、T字部材16を回転させ、算出された方向に水平バー18を向ける。
【0020】
このような水平バー18で車両進行方向が確認できることで、運転者は車両の進行方向を即座に把握することができるから、所望の方向へ車両を進行し易くすることができる。また、また、車両進行方向が指し示された水平バー18を車両の発進時や停止時に見たときに、運転者への車両進行に対する注意を促すことができる。
【0021】
図4は本発明に係る水平バーの方向を算出する要領を示す第1作用図(矢印(FRONT)は車両前方を表す。以下同じ。)である。
T字部材16をバンパカバーの左コーナ部に取付けた場合、左前輪21の直進状態からの切れ角をθL、左前輪21と右前輪22との中心間距離(トレッド)をW、T字部材のポール17と左前輪21の中心との車幅方向の距離をwL、左前輪21及び右前輪22と、左後輪23及び右後輪24との車軸中心間の水平距離(ホイールベース)をL、ポール17と左前輪21の中心との前後方向の距離をdLとすると、水平バーに相当する直線18Aの車両前方からの角度φLは、(1)式で表される。
即ち、左前輪21の切れ角θLから水平バーの角度、即ち、車両の進行方向である水平バーの延びる方向が求められる。
【0022】
図5は本発明に係る水平バーの方向を算出する要領を示す第2作用図である。
T字部材16をバンパカバーの右コーナ部に取付けた場合、右前輪22の直進状態からの切れ角をθR、T字部材16のポール17と右前輪22の中心との車幅方向の距離をwR、ポール17と右前輪22の中心との前後方向の距離をdRとすると、水平バーに相当する直線18Aの車両前方からの角度φRは、(2)式で表される。
即ち、右前輪22の切れ角θRから水平バーの角度、即ち、車両の進行方向である水平バーの延びる方向が求められる。
【0023】
図6は本発明に係る車両のメータパネルを示す正面図であり、メータパネル50は、車速を表示するスピードメータ51と、エンジン回転数を表示するタコメータ52と、これらのスピードメータ51及びタコメータ52の上方に配置されて車両進行方向表示装置15(図2参照)を構成する水平バーの方向を表示する進行方向表示部53とからなる。
【0024】
進行方向表示部53は、車両前部の輪郭として表示される輪郭表示部55と、左前輪21及び右前輪22の切れ角に一致するように左前輪21及び右前輪22として表示される左前輪表示部56及び右前輪表示部57と、輪郭表示部55の左コーナ部にポール17として表示されるポール表示部58と、ポール表示部58に重なるようにポール表示部58を中心として回転して水平バーの方向に一致するように表示される矢印付きバー61と、車両の前後及び左右を示す線分62,63とからなる。
【0025】
以上の図1及び図2で示したように、本発明は第1に、車両10の進行方向を表示する車両用進行方向表示装置15において、車両10にポール17を立て、このポール17に車両10の進行方向を示す水平バー18を取付けたことを特徴とする。
【0026】
これにより、水平バー18によって車両10の進行方向を即座に把握することができ、所望の方向へ車両10を進行し易くすることができる。また、車両進行方向が指し示された水平バー18を車両の発進時や停止時に見たときに、運転者への車両進行に対する注意を促すことができる。
【0027】
本発明は第2に、図3に示したように、水平バー18を、ステアリングホイール31の舵角θに基づいて演算された車両進行方向に駆動制御することを特徴とする。
これにより、ステアリングホイール31の舵角θから容易に水平バーの向き(角度β)である車両進行方向を算出することができ、運転者は車両進行方向を即座に把握することができる。
【0028】
本発明は第3に、図6に示したように、水平バー18(図1参照)が示す車両進行方向をメータパネル50内のバーとしての矢印付きバー61で表示することを特徴とする。
これにより、水平バー18とメータパネル50内の矢印付きバー61とを選択して使用することができ、例えば、昼間時、晴天時には水平バー18、夜間時、雨天時にはメータパネル50内の矢印付きバー61というように、状況に応じて選択できるので、使い勝手を向上させることができる。
【0029】
図7は本発明に係る車両進行方向表示装置の別実施形態を示す斜視図であり、車両進行方向表示装置70は、図2に示された車両進行方向表示装置15を車両10のインストルメントパネル71の内側に配置するとともに、インストメントパネル71の上部に、内側にミラー72を備える表示装置73を設けたものである。
【0030】
運転者は、表示装置73の窓部74を通してミラー72に映ったT字部材16の水平バー18の虚像を見て車両進行方向を把握することができる。水平バー18の虚像は、丁度、T字部材16をバンパカバーに設けたときと同様な方向に見えるため、その虚像を見たときに車両の進行方向を即座に把握することができる。
【0031】
尚、本実施形態では、図2に示したように、支持部37にT字部材16を回転自在に取付けたが、これに限らず、ポール内に回転軸を挿入し、回転軸の上端に水平バーを取付けて水平バーを回転させるようにしてもよい。
また、図4に示した(1)式、図5に示した(2)式については、車速が大きい場合には、(1)式、(2)式を基にスリップアングルを考慮した式としてもよい。
【0032】
更に、図7では、表示装置73でインストルメントパネル71内の車両進行方向表示装置15を確認できるようにしたが、これに限らず、インストルメントパネル71の上部若しくはインストルメントパネル71の内部に、T字部材16及びこのT字部材16を照らす照明装置が配置され、反射鏡、レンズ、コンバイナ(ホログラムやハーフミラー等からなる)等で構成されてT字部材16が実際の車両の前部コーナ部に位置するように虚像を見せるヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の車両用進行方向表示装置は、四輪車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る車両進行方向表示装置を備えた車両の前部斜視図である。
【図2】本発明に係る車両進行方向表示装置を示す構成図である。
【図3】本発明に係る車両進行表示装置での制御を行う進行方向表示制御装置のブロック図である。
【図4】本発明に係る水平バーの方向を算出する要領を示す第1作用図である。
【図5】本発明に係る水平バーの方向を算出する要領を示す第2作用図である。
【図6】本発明に係る車両のメータパネルを示す正面図である。
【図7】本発明に係る車両進行方向表示装置の別実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
10…車両、15…進行方向表示装置、17…ポール、18…水平バー、31…ステアリングホイール、50…メータパネル、61…仮想バー(矢印付きバー)、θ…舵角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向を表示する車両用進行方向表示装置において、
車両にポールを立て、このポールに車両の進行方向を示す水平バーを取付けたことを特徴とする車両用進行方向表示装置。
【請求項2】
前記水平バーは、ステアリングホイールの舵角に基づいて演算された車両進行方向に駆動制御されることを特徴とする請求項1記載の車両用進行方向表示装置。
【請求項3】
前記水平バーが示す車両進行方向をメータパネル内の仮想バーで表示することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用進行方向表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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