説明

車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体

【課題】より正確な道路形状を頻度良く算出することができる車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体を提供する。
【解決手段】物体の相対速度及び自車速に基づいて移動物体か停止物体という認識種別を判定し、この認識種別の判定結果に基づいて、道路形状を認識するために有効な物体単位データを抽出する。また、抽出した物体単位データの中から、車幅方向の距離が最も自車側に位置する停止物体の横位置を抽出すると共に、車幅方向において最も自車側の停止物体の横位置から所定距離だけ離れた範囲内に位置し、かつ、自車からの直接の距離が最も小さい停止物体を起点に決定する。そして、接続条件として距離が単調増加であるデータ同士を起点から接続してグルーピングして路側物群のデータを形成し、その形成された路側物群のデータに基づき道路端を認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車が走行する道路を認識する方法が、例えば特許文献1で提案されている。具体的に、特許文献1では、セグメント化した計測データを角度順にソートし、セグメントの形状や移動物体の近傍という条件にて余分なデータを排除した上で、その道路形状認識に有効なセグメントを左角度方向から右角度方向及び右角度方向から左角度方向についてグルーピングし、さらに最遠セグメントについて疑わしいものは排除した上で得た路側物群(左)及び路側物群(右)に基づいて、道路端を認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3427809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、路側物をグループ化する基点が正しくない場合があり、路側物群のグループピングを精度良くできない場合がある。その結果、道路端をより正確に頻度良く算出できず、ひいてはより正確な道路形状を認識することが望まれる。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、より正確な道路形状を頻度良く算出することができる車両用道路形状認識方法及び装置、記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車幅方向の所定角度範囲内に渡り送信波を照射し、その反射波に基づいて車両周囲の道路形状を認識するにあたり、次のように認識を行う。つまり、反射波に基づいて、少なくとも物体までの距離を含む物体単位データを車幅方向角度に対応して取得すると共に、反射波に基づいて得た物体の相対速度及び自車速に基づいて移動物体か停止物体という認識種別を判定する。そして、この認識種別の判定結果に基づいて、道路形状を認識するために有効な物体単位データを抽出する。この後、抽出した物体単位データの中から、車幅方向の距離が最も自車側に位置する停止物体の横位置を抽出すると共に、車幅方向において最も自車側の停止物体の横位置から所定距離だけ離れた範囲内に位置し、かつ、自車からの直接の距離が最も小さい停止物体を起点に決定する。そして、左角度方向から右角度方向及び右角度方向から左角度方向の両方向についてそれぞれ、接続条件として距離が単調増加であるデータ同士を起点から接続してグルーピングして路側物群のデータを形成し、その形成された路側物群のデータに基づき道路端を認識する。
【0007】
これにより、車幅方向を基準とした角度が最も小さくさらに自車から離れた場所に位置する停止物体を起点とした群接続の開始を防止することができる。また、路側が二重に見えている場合に遠くの停止物体を起点とせずに内側の停止物体から優先的にグルーピングして路側物群を形成することができる。このため、道路端の認識の精度が向上し、ひいてはより正確な道路形状を頻度良く算出することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、路側物群のデータを形成する際、第1接続条件範囲(a)と、この第1接続条件範囲に含まれると共に範囲が当該第1接続条件範囲よりも小さい第2接続条件範囲(b)と、を設定し、起点を出発点として当該起点を基点とした第1接続条件範囲および第2接続条件範囲の両方に含まれる停止物体を起点に接続する。そして、この接続後の停止物体を次の基点として第1接続条件範囲および第2接続条件範囲の両方に含まれる停止物体を接続し、これを繰り返して停止物体をグルーピングすることにより路側物群のデータを形成する。
【0009】
このように、グルーピングの際には第1接続条件範囲および第2接続条件範囲を設定しているので、第1接続条件範囲に含まれたとしても第2接続条件範囲に含まれない停止物体は接続されない。このため、停止物体の角度順で比較することにより距離差は大きいが角度差が小さい停止物体が先に比較および接続されてしまうのを防ぐことができる。したがって、群接続をより実際の道路形状に近づけることができ、ひいては道路端認識の精度を向上させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、路側物群のデータに基づいて道路端を認識する際、路側物群のデータを複数形成した後、路側物群を通る円と車幅方向の軸との交点を複数の路側物群毎にそれぞれ求め、車幅方向において最も自車側の交点から所定の閾値だけ離れた範囲内に位置する交点に対応した路側物群のみを用いて道路端の認識を行う。
【0011】
これにより、車幅方向において自車から遠く離れた路側物群を道路端認識から対象外とすることができる。したがって、算出される平均の道路端は自車側の各路側部群を通るように認識されるので、道路端認識の精度を向上させることができる。
【0012】
一方、請求項4に記載の発明は請求項1に示した車両用道路形状認識方法を実現するための装置としての一例である。また、請求項5に記載の発明は請求項2に示した車両用道路形状認識方法を実現するための装置としての一例であり、請求項6に記載の発明は請求項3に示した車両用道路形状認識方法を実現するための装置としての一例である。これら車両用道路形状認識装置においても、上述したものと同様の効果を発揮できる。
【0013】
そして、請求項7に記載の発明のように、車両用道路形状認識装置の認識手段をコンピュータシステムにて実現する機能は、例えば、コンピュータシステム側で起動するプログラムとして備えることができる。このようなプログラムの場合、例えば、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータシステムにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として前記プログラムを記録しておき、このROMあるいはバックアップRAMをコンピュータシステムに組み込んで用いても良い。
【0014】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が適用された車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】道路形状認識処理の概要を示す説明図である。
【図3】(a)は計測データのセグメント化の内容を示す説明図であり、(b)はセグメントデータのグルーピング化の内容を示す説明図である。
【図4】起点の停止物体から順に停止物体を接続する内容を示す説明図である。
【図5】路側物群(左)における最遠セグメントへの対処を示す説明図である。
【図6】路側物群(左)と路側物群(右)の最遠セグメントが重複する場合の対処を示す説明図である。
【図7】道路端を線分の集合として認識する内容を示す説明図である。
【図8】(a)は全てのセグメントを用いて道路端を認識する内容を示す説明図であり、(b)は閾値以下のセグメントを用いて道路端を認識する内容を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
次に、本発明が適用された車両制御装置1について、図面と共に説明する。この車両制御装置1は、自動車に搭載され、警報すべき領域に障害物が所定の状況で存在する場合に警報を出力したり、前車(先行車両)に合わせて車速を制御したりする装置である。
【0017】
図1は、そのシステムブロック図である。車両制御装置1はコンピュータ3を中心に構成されている。コンピュータ3はマイクロコンピュータを主な構成として入出力インターフェース(I/O)および各種の駆動回路や検出回路を備えている。これらのハード構成は一般的なものであるので詳細な説明は省略する。
【0018】
コンピュータ3は、車両用障害物検出装置としての距離・角度測定器5、車速センサ7、ブレーキスイッチ9、スロットル開度センサ11から各々所定の検出データを入力している。またコンピュータ3は、警報音発生器13、距離表示器15、センサ異常表示器17、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21および自動変速機制御器23に所定の駆動信号を出力している。
【0019】
更にコンピュータ3は、警報音量を設定する警報音量設定器24、後述の警報判定処理における感度を設定する警報感度設定器25、クルーズコントロールスイッチ26、図示しないステアリングホイールの操作量を検出するステアリングセンサ27及びヨーレートセンサ28を備えている。またコンピュータ3は、電源スイッチ29を備え、その「オン」により、所定の処理を開始する。
【0020】
ここで、距離・角度測定器5は、送受信部5aおよび距離・角度演算部5bを備え、送受信部5aからは所定の光軸(中心軸)を中心にして車両前方へレーザ光を車幅方向の所定角度の範囲で不連続に掃引照射(スキャン)して出力し、かつ反射光を検出すると共に、距離・角度演算部5bにて反射光を捉えるまでの時間に基づき、前方の物体までの距離rを検出する装置である。なお、レーザ光を用いるものの他に、ミリ波等の電波や超音波等を用いるものであってもよいし、走査方法についても、送信部をスキャンさせるものに限られるものではなく、例えば受信部をスキャンするものであってもよい。
【0021】
コンピュータ3は、このように構成されていることにより、障害物が所定の警報領域に所定時間存在した場合等に警報する警報判定処理を実施している。障害物としては、自車の前方を走行する前車やまたは停止している前車あるいは路側にある物体(ガードレールや支柱物体等)等が該当する。また、コンピュータ3は、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21および自動変速機制御器23に駆動信号を出力することにより、前車の状況に合わせて車速を制御する、いわゆる車間制御も同時に実施している。
【0022】
続いてコンピュータ3の内部構成について制御ブロックとして説明する。距離・角度測定器5の距離・角度演算部5bから出力された距離rとスキャン角度θとのデータは、データのグルーピングブロック41に送られ、レーザレーダ中心を原点(0,0)とし、車幅方向をX軸、車両前方方向をZ軸とするXZ直交座標に変換された後、その変換後のデータをグルーピングしてセグメントを形成する。このセグメント化の様子は後述する。なお、データのグルーピングブロック41にてセグメント化された物体単位のデータは、物体認識ブロック43及び道路形状認識ブロック45へ出力される。
【0023】
物体認識ブロック43では、上記データのグルーピングブロック41から出力された上記物体の中心位置の時間的変化に基づいて、自車位置を基準とする前車等の障害物の相対速度(Vx,Vz)が求められる。さらに物体認識ブロック43では、車速センサ7の検出値に基づいて車速演算ブロック47から出力される車速(自車速)Vと上記求められた相対速度(Vx,Vz)とから物体が停止物体であるか移動物体であるかの認識種別が求められ、この認識種別と物体の中心位置とに基づいて自車両の走行に影響する物体が選択され、その距離が距離表示器15により表示される。なお、物体の大きさを示す(W,D)は、それぞれ(横幅,奥行き)である。
【0024】
この物体認識ブロック43にて求めたデータが異常な範囲の値かどうかがセンサ異常検出ブロック44にて検出され、異常な範囲の値である場合には、センサ異常表示器17にその旨の表示がなされる。一方、道路形状認識ブロック45では、グルーピングブロック41から出力された上記物体の中心位置のデータと、物体認識ブロック43にて求めたデータとに基づいて道路形状の認識を行う。この道路形状の認識処理の詳細は後述する。なお、道路形状認識ブロック45にて得られたデータは先行車判定ブロック53へ出力される。
【0025】
また、ステアリングセンサ27からの信号に基づいて操舵角演算ブロック49にて操舵角が求められ、ヨーレートセンサ28からの信号に基づいてヨーレート演算ブロック51にてヨーレートが演算される。カーブ半径(曲率半径)算出ブロック63では、車速演算ブロック47からの車速と操舵角演算ブロック49からの操舵角とヨーレート演算ブロック51からのヨーレートとに基づいて、カーブ半径(曲率半径)Rを算出する。先行車判定ブロック53では、このカーブ半径Rおよび物体認識ブロック43にて求められた認識種別、中心位置座標(X,Z)、物体の大きさ(W,D)、相対速度(Vx,Vz)及び道路形状認識ブロック45にて得られた道路形状データに基づいて先行車を選択し、その先行車に対する距離Zおよび相対速度Vzを求める。
【0026】
そして、車間制御部及び警報判定部ブロック55が、この先行車との距離Z、相対速度Vz、自車速Vn、先行車加速度、物体中心位置、物体幅、認識種別、クルーズコントロールスイッチ26の設定状態およびブレーキスイッチ9の踏み込み状態、スロットル開度センサ11からの開度および警報感度設定器25による感度設定値に基づいて、警報判定ならば警報するか否かを判定し、クルーズ判定ならば車速制御の内容を決定する。その結果、警報が必要ならば、警報発生信号を警報音発生器13に出力する。また、クルーズ判定ならば、自動変速機制御器23、ブレーキ駆動器19およびスロットル駆動器21に制御信号を出力して、必要な制御を実施する。そして、これらの制御実行時には、距離表示器15に対して必要な表示信号を出力して、状況をドライバーに告知している。
【0027】
次に、以上のように構成される車両制御装置1において実行される道路形状の認識にかかる動作について、図2のフローチャートに従って説明する。図2の最初のステップであるS1000では、距離・角度計測データの読み込みを行う。この処理は距離・角度測定器5にて実行されるのであるが、1スキャン分の距離・角度計測データを取り込む。このスキャン周期は100msecとし、100msec毎にデータを取り込むこととする。
【0028】
続くS2000では、停止物体のデータ(物体単位データ)のセグメント化を行う。このセグメント化はデータのグルーピングブロック41にて実行されるのであるが、上述したように、距離・角度計測データを極座標系からXZ直交座標系に変換し、その変換後のデータをグルーピングしてセグメント(路側物群)を形成する。
【0029】
具体的には、図3(a)の左側に示すように、セグメントである路側物群の生成の起点選択処理を行う。この起点選択処理は、角度順にソートした停止物体のうちのどの停止物体をセグメント形成の起点とするかを選択する処理である。
【0030】
具体的には、角度順にソートした後、左角度方向では、
(1)左側エリア内で自車に対して最も内側(自車側)の停止物体の横位置を抽出する
(2)横位置が(1)に近く、自車との直接の距離が最も小さい停止物体を起点とする
上記の条件(1)については、車幅方向の距離が最も自車側に位置する停止物体の横位置を抽出する。そして、条件(2)については、「自車との直接の距離」は、車幅方向における自車からの距離ではなく、自車から停止物体までの最短の距離である。
【0031】
一方、右角度方向は上記の逆の条件となる。すなわち、(1)では、右側エリア内で自車に対して最も内側の路側停止物群の横位置を抽出することとなる。
【0032】
図3(a)の左側に示すように、例えば自車の右角度方向においては、自車を中心にZ軸方向に対して6°の傾きよりも右側の範囲において、自車からX軸方向に1m〜8mの幅およびZ軸方向に自車から30mまでの距離の範囲に「0」番から「8」番までの停止物体が存在する。図3(a)の左側ではこの範囲を点ハッチングで示している。
【0033】
各停止物体のうち、「0」番の停止物体はX軸に対する角度が最も小さいが、X軸方向の距離が自車から最も離れている。また、「1」番から「8」番までの各停止物体は、X軸方向の距離が最も小さい「8」番の位置(X_min)から例えば2m離れた位置までの範囲内に存在している。
【0034】
このような状況を、上記の条件(1)および(2)に当てはめると、「8」番の停止物体のX軸方向における横位置(X_min)を抽出する(条件(1))。そして、横位置が「8」番に近く、さらに自車との距離が最も小さい「1」番の停止物体を起点に決定する(条件(2))。これにより、「0」番の停止物体のように自車から離れた場所からの群接続の開始を防止できる。また、路側が二重に見えている場合、内側の路側列から優先的にグルーピングすることができる。
【0035】
そして、上記のように決定した起点を出発点として路側物群(セグメント)を形成する。これについて、図4を参照して説明する。なお、図4では自車に対して右角度方向に位置する各停止物体の接続の例を示している。
【0036】
図4に示すように、自車に最も近い停止物体(図3(a)の左側の「1」)を起点として、接続条件範囲aと、この接続条件範囲aに含まれると共にaよりも範囲が小さい接続条件範囲bとの両方に含まれる停止物体を順に接続していく。すなわち、停止物体を角度順に比較し、接続条件範囲aを満たす停止物体が見つかった場合、さらに接続条件範囲bを満たす停止物体を検索し接続する。そして、接続後の停止物体を次の基点として接続条件範囲aおよび接続条件範囲bに含まれる停止物体を検索し接続する。このように、接続後の停止物体を基点として接続条件範囲aおよび接続条件範囲bに含まれる停止物体を順に検索し接続していく。
【0037】
図4では、接続条件範囲aに2つの停止物体が存在しているが、接続条件範囲bに含まれる停止物体が存在するので、この停止物体を接続する。これを繰り返すことにより、停止物体を次々に接続して路側物群を形成する。
【0038】
なお、図4では接続条件範囲bは接続条件範囲aのうちの左側(Z軸側)に位置しているが、これは接続条件範囲aに対する接続条件範囲bの位置の一例である。例えば、接続条件範囲bは接続条件範囲aの車幅方向(X軸方向)の中心に位置していても良い。このように、接続条件範囲bを接続条件範囲aのうちのどこに位置させるかについては適宜設定すれば良い。
【0039】
上記のようにして停止物体の点集合を一体化してセグメントデータを求める。このセグメントデータは、一体化された点集合を含むような大きさに設定された、X軸及びZ軸に平行な2辺を持つ長方形の領域であり、図3(a)の右側に示すように中心座標(X,Z)と大きさを示すための2辺のデータ(W,D)をデータ内容とする。なお、この領域の左右両端の座標もデータとして持っておく。
【0040】
続くS3000では物体認識を行う。この物体認識は物体認識ブロック43で実行され、その内容は上述した通りである。続くS4000以降の処理は、道路形状認識ブロック45にて実行される処理であり、S4000では、S2000で得られたセグメントの中心位置を極座標に変換して角度順にソートする。
【0041】
続くS5000では、S4100で得た角度に基づいて、左角度方向から右角度方向へと、条件に合うセグメントをグルーピングし、路側物群(左)を形成する。この様子を図3(b)も参照しながら説明する。本実施形態では、道路形状の認識を路側に設置されたデリニエータに基づいて行うため、まず、例えば余計な看板や車両などのデリニエータ以外のセグメントデータを排除するために、次の、いずれか一方の排除条件でも満たすセグメントを看板や車両などと判断して排除する。
【0042】
横幅Wが大のセグメント
排除条件:横幅W≧1.2m且つ縦横比D/W<5
認識種別が移動物体の近傍のセグメント
排除条件:中心間距離がΔX≦2m,ΔZ≦2m
次に、この排除条件を用いて排除した後に残ったセグメントに対して、左角度方向から右角度方向へと、距離Zが単調増加で且つ次の接続条件を満たすものを、満たすセグメントが存在する間、順に接続してグルーピングし、路側物群(左)を形成する。
【0043】
接続条件:中心間距離がΔX≦3.5m,ΔZ≦55m
そして、距離が減少した場合、あるいは距離は単調増加であっても上記接続条件を満たさない場合には、別の新たな路側物群(左)を形成していく。なお、ここでは、構成セグメントが1つの場合であっても路側物群(左)とするが、道路端の認識に際しては、構成セグメントが3つ以上の路側物群(左)のみを使用する。したがって、図3(b)に示す状況であれば、上記の排除条件にて排除した後に残ったデータをグルーピングした結果、No.1〜No.4の路側物群(左)が得られたが、構成セグメントが3つ以上の路側物群(左)はNo.1の場合だけであるので、この路側物群(左)No.1を道路端認識に用いる。
【0044】
続くS5100では、路側物群(左)(この場合は当然であるが路側物群(左)No.1を意味する)を構成するセグメントの中で、距離Zが最も大きい、つまり最遠セグメントについては、それが道路の左側のものか右側のものかを判断する。この判断の詳細は後述するが、道路右側のものであると判断した場合には、路側物群(左)から除外する。構成セグメント数が3つ以上の路側物群(左)で、道路右側のセグメントが混じっている例を図5(a)に示す。この図からも判るように、左角度方向から右角度方向へと距離が単調増加の間グルーピングしていくときには、最遠セグメントだけ本当に道路の左側か否かを判断すれば、ほとんどの場合は問題ない。最遠セグメントの一つ手前のセグメント(以下「第2最遠セグメント」と称す。)も右側である状況がほとんど想定できないからである。
【0045】
そこで、この最遠セグメントについて、次のような判断を行う。図5(b)に示すように、まず、最遠セグメントを除いた残りの構成セグメントを滑らかな曲線で結び、この曲線近傍に最遠セグメントが存在するか否かで判断する。曲線は、ここでは距離Zが最も小さい「最近セグメント」と第2最遠セグメントの2点を通り、X軸に直交する円を求める。X軸に直交するための中心がX軸上に存在し、円周上の2点が判っているので、円の方程式を導くことができる。
【0046】
そして、その円と最遠セグメントのX軸方向への距離ΔXが1.5m未満であれば道路左側のセグメントであると判断して路側物群(左)に含めたままにし、逆に距離ΔXが1.5以上の場合には、道路右側のセグメントであると判断して路側物群(左)から除外する。なお、最遠セグメントと円との最も近い距離、すなわち、最遠セグメントから円に下した垂線の長さで判断してもよいが、現実的には、上述したようにX軸方向への距離ΔXのみ考えれば特段問題はない。
【0047】
続くS6000,S6100では、S5000,S5100にて実行した内容を、左右逆にして実行する。つまり、S6000では、S4000で得た角度に基づいて、右角度方向から左角度方向へと条件に合うセグメントをグルーピングして路側物群(右)を形成する。余計な看板などを排除する条件は左の場合と同じである。そして、排除した後に残ったセグメントに対して、右角度方向から左角度方向へと、距離Zが単調増加で且つ接続条件を満たすものを順に接続してグルーピングし、路側物群(右)を形成する。接続条件も左の場合と同じであり、また構成セグメントが3つ以上の路側物群(右)のものだけを道路端認識に用いる点も同じである。
【0048】
また、S6100では、路側物群(右)中の最遠セグメントについては、左の場合と同様の手法で、道路の左側のものか右側のものかを判断し、左側のセグメントであれば路側物群(右)から除外する。このようにして、路側物群(左)と路側物群(右)とが得られたら、続くS7000では、路側物群(左)における最遠セグメントと路側物群(右)における最遠セグメントが同じ場合、つまり、図6(a)に示すように、1つの最遠セグメントが路側物群(左)にも属し、路側物群(右)にも属するという競合状態にある場合には、図6(b)に示すように、その最遠セグメントは排除する。もちろん、重複していない場合にはこのような処理は行わない。
【0049】
そして、S8000では、構成セグメントが3つ以上の路側物群(左)と路側物群(右)とに基づいて、道路の左右端をそれぞれ認識する。なお、本実施形態においては、図7に示すように、各路側物群の構成セグメント間を補間することで道路左右端を線分の集合として認識する。さらに、路側物群データ間の補間結果を利用し、X軸との交点を算出し、この交点までの間も補間することによって、自車位置近傍からの道路形状を線分の集合として認識するようにしている。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の車両制御装置1では、その道路形状認識処理において、抽出した停止物体のうち最も内側(自車側)の停止物体の横位置を抽出し、自車からこの横位置に近くさらに自車との直接の距離が最も小さい停止物体を起点とすることが特徴となっている。これにより、ソートの角度順に最も角度が小さく、自車から離れた場所に位置する停止物体を起点とした群接続の開始を防止することができる。また、路側が二重に見えている場合に内側の路側列から優先的にグルーピングを行うようにすることができる。このため、道路端の認識の精度が向上し、ひいてはより正確な道路形状を頻度良く算出することができる。
【0051】
また、上記のように決定した起点となる停止物体を出発点として接続条件範囲aおよびbに含まれる停止物体を接続することが特徴となっている。このように、狭い接続条件範囲bに含まれる停止物体を接続していくので、群接続をより実際の道路形状に近づけることができる。このため、道路端認識の精度を向上させることができる。また、停止物体の角度順で比較することにより距離差は大きいが角度差が小さい停止物体が先に比較および接続されてしまうのを防ぐことができる。もちろん、接続条件範囲を2つ設けて接続条件を二重化しているので、現行の性能は維持できる。
【0052】
そして、このように良好に認識された道路形状を用いて先行車を判定し、車間制御や車間警報を行うので、これらの制御が良好に実施されることとなる。
【0053】
なお、本実施形態においては、距離・角度測定器5がレーダ手段に相当し、コンピュータ3のデータのグルーピングブロック41、物体認識ブロック43及び道路形状認識ブロック45が認識手段に相当する。但し、その内のデータのグルーピングブロック41及び物体認識ブロック43が物体認識手段に相当し、道路形状認識ブロック45が有効データ抽出手段、起点選択手段、路側物群データ形成手段、道路端認識手段に相当する。
【0054】
また、接続条件範囲aが第1接続条件範囲に対応し、接続条件範囲bが第2接続条件範囲に対応する。
【0055】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、自車側のセグメント(停止物群)を優先的に用いてセグメントを接続し、これにより道路端テーブルを生成することが特徴となっている。
【0056】
例えば、全てのセグメントを用いて平均の道路端を求める場合、図8(a)に示すように道路端の平均が車幅方向(X軸方向)にばらついてしまう。そこで、本実施形態では、自車側(内側)のセグメントを用いてグルーピングを行う。なお、本実施形態に係るグルーピングは、第1実施形態のS5000およびS6000の処理に該当する。
【0057】
具体的には、図8(b)に示すように、各セグメントを通る円とX軸との交点をそれぞれ求め、最も内側の交点から所定の閾値だけ離れた範囲内に交点のあるセグメントのみを用いてグルーピングを行う。これにより、図8(b)においてX軸方向に自車から最も離れたセグメントはグルーピングの対象外となる。したがって、算出される平均の道路端は内側(自車側)の各セグメントを通るように認識される。
【0058】
以上のように、本実施形態では、より自車側(内側)で同じ曲線上にある路側物群を優先的にグルーピングに使っている。すなわち、自車側(内側)のセグメントを優先的に使用した道路端テーブルを生成しているので、車幅方向(X軸方向)にセグメントが複数存在して路側が二重に見えているとき等の状況においても道路端の認識の精度が向上する。したがって、より正確な道路形状を頻度良く算出することができる。
【0059】
(他の実施形態)
本発明は上記の実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る。例えば、下記の(1)〜(4)のように変更可能である。
【0060】
(1)例えば、上記実施形態では、S7000にて両路側物群に属する最遠セグメントについては除外したが、その重複した最遠セグメントについて、左右両方向の路側物群データのいずれにより属する可能性が高いかを判定し属する可能性が高い側の路側物群データに含めてもよい。このようにすれば、重複した最遠データもできるだけ生かすことができる。なお、判定に際しては、例えばS5100,S6100での手法を援用してもよい。すなわち、最遠セグメントの位置と、両路側物群に対応する各円とのX軸方向への距離ΔXの大小を判定し、距離ΔXが小さい方に含めるといったことである。なお、例えば両方の円の間には不感帯を設け、その不感帯を超えて近い方の路側物群に含めるようにしてもよい。
【0061】
(2)上記実施形態あるいは上記(1)の内容は、最遠データをなるべく生かそうという観点からの対処であったが、誤判定をなるべく回避するという観点であれば、S5100,S6100において最遠セグメントを無条件に除外することも考えられる。このようにすれば、その最遠データを用いることによる誤判定は確実に回避できる。
【0062】
(3)上記実施形態では、路側物群を構成するセグメント間を補間することで道路端を線分の集合として認識しているが、補間の方法としてはこれに限られることはなく、例えばセグメント間を曲線によって補間し、道路端を滑らかな曲線として認識してもよい。
【0063】
(4)上記実施例形態では「レーダ手段」としてレーザ光を用いた距離・角度測定器5を採用したが、ミリ波等を用いてもよいことは既に述べた。そして、例えばミリ波のFMCWレーダやドップラーレーダを用いた場合には、反射波(受信波)から先行車までの距離情報と先行車の相対速度情報が一度に得られるため、レーザ光を用いた場合のように、距離情報に基づいて相対速度を算出するという過程は不要となる。
【符号の説明】
【0064】
1 車両制御装置
3 コンピュータ
5 距離・角度測定器
41 グルーピングブロック
43 物体認識ブロック
45 道路形状認識ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向の所定角度範囲内に渡り送信波を照射し、その反射波に基づいて車両周囲の道路形状を認識する車両用道路形状認識方法であって、
前記反射波に基づいて、少なくとも物体までの距離を含む物体単位データを車幅方向角度に対応して取得し、
前記反射波に基づいて得た物体の相対速度及び自車速に基づいて移動物体か停止物体という認識種別を判定し、この認識種別の判定結果に基づいて、道路形状を認識するために有効な前記物体単位データを抽出し、
抽出した物体単位データの中から、前記車幅方向の距離が最も自車側に位置する停止物体の横位置を抽出すると共に、前記車幅方向において前記最も自車側の停止物体の横位置から所定距離だけ離れた範囲内に位置し、かつ、自車からの直接の距離が最も小さい停止物体を起点に決定し、
左角度方向から右角度方向及び右角度方向から左角度方向の両方向についてそれぞれ、接続条件として距離が単調増加であるデータ同士を前記起点から接続してグルーピングして路側物群のデータを形成し、その形成された路側物群のデータに基づき道路端を認識することを特徴とする車両用道路形状認識方法。
【請求項2】
前記路側物群のデータを形成する際には、第1接続条件範囲(a)と、この第1接続条件範囲に含まれると共に範囲が当該第1接続条件範囲よりも小さい第2接続条件範囲(b)と、を設定し、前記起点を出発点として当該起点を基点とした前記第1接続条件範囲および前記第2接続条件範囲の両方に含まれる停止物体を前記起点に接続し、この接続後の停止物体を次の基点として前記第1接続条件範囲および前記第2接続条件範囲の両方に含まれる停止物体を接続し、これを繰り返して停止物体をグルーピングすることにより前記路側物群のデータを形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用道路形状認識方法。
【請求項3】
前記路側物群のデータに基づいて前記道路端を認識する際には、前記路側物群のデータを複数形成した後、前記路側物群を通る円と前記車幅方向の軸との交点を前記複数の路側物群毎にそれぞれ求め、前記車幅方向において最も自車側の交点から所定の閾値だけ離れた範囲内に位置する交点に対応した路側物群のみを用いて前記道路端の認識を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用道路形状認識方法。
【請求項4】
車幅方向の所定角度範囲内に渡り送信波を照射し、その反射波に基づいて物体を検出するレーダ手段(5)と、
当該レーダ手段(5)による検出結果に基づき、車両前方の道路形状を認識する認識手段(41、43、45)と、を備えた車両用道路形状認識装置であって、
前記レーダ手段(5)は、前記反射波に基づいて、少なくとも物体までの距離を含む物体単位データを車幅方向角度に対応して取得し、
前記認識手段(41、43、45)は、
前記反射波に基づいて得た物体の相対速度及び自車速に基づいて移動物体か停止物体という認識種別を判定する物体認識手段(41、43)と、
当該物体認識手段(41、43)による認識結果に基づき、道路形状を認識するために有効な前記物体単位データを抽出する有効データ抽出手段(45)と、
前記有効データ抽出手段(45)で抽出された物体単位データの中から、前記車幅方向の距離が最も自車側に位置する停止物体の横位置を抽出すると共に、前記車幅方向において前記最も自車側の停止物体の横位置から所定距離だけ離れた範囲内に位置し、かつ、自車からの直接の距離が最も小さい停止物体を起点に決定する起点選択手段(45)と、
左角度方向から右角度方向及び右角度方向から左角度方向の両方向についてそれぞれ、接続条件として距離が単調増加であるデータ同士を前記起点選択手段(45)で決定された前記起点から接続してグルーピングして路側物群のデータを形成する路側物群データ形成手段(45)と、
前記路側物群データ形成手段(45)にて形成された前記両方向の路側物群のデータに基づき道路端を認識する道路端認識手段(41、43、45)と、を備えていることを特徴とする車両用道路形状認識装置。
【請求項5】
前記路側物群データ形成手段(45)は、第1接続条件範囲と、この第1接続条件範囲に含まれると共に範囲が当該第1接続条件範囲よりも小さい第2接続条件範囲と、を有し、前記起点選択手段(45)で決定された前記起点を出発点として当該起点を基点とした前記第1接続条件範囲および前記第2接続条件範囲の両方に含まれる停止物体を前記起点に接続し、この接続後の停止物体を次の基点として前記第1接続条件範囲および前記第2接続条件範囲の両方に含まれる停止物体を接続し、これを繰り返して停止物体をグルーピングすることにより前記路側物群のデータを形成することを特徴とする請求項4に記載の車両用道路形状認識装置。
【請求項6】
前記路側物群データ形成手段(45)は、前記路側物群のデータを複数形成し、
前記道路端認識手段(41、43、45)は、前記路側物群を通る円と前記車幅方向の軸との交点を前記複数の路側物群毎にそれぞれ求め、前記車幅方向において最も自車側の交点から所定の閾値だけ離れた範囲内に位置する交点に対応した路側物群のみを用いて前記道路端の認識を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の車両用道路形状認識装置。
【請求項7】
請求項4ないし6に記載の車両用道路形状認識装置の認識手段としてコンピュータシステムを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−242937(P2012−242937A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110224(P2011−110224)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】