車両用避難誘導システム
【課題】乗員が災害に遭った際に、避難方法を案内するとともに、避難場所の適切な選択と他車の乗員の状況把握を可能にすることができる車両用避難誘導システムを提供する。
【解決手段】閉塞区間において発生した災害発生位置情報を外部から取得する災害発生位置情報取得手段と、閉塞区間内における自車位置を検出する自車位置検出手段と、避難設備情報記憶手段に記憶された避難設備情報と災害発生位置情報と自車位置の情報とに基づいて、自車の乗員を閉塞区間から避難誘導するための避難誘導情報を作成する避難誘導情報作成手段と、作成された避難誘導情報を出力する避難誘導情報出力手段と、を備えたことを特徴とする車両用避難誘導システムとして提供可能である。
【解決手段】閉塞区間において発生した災害発生位置情報を外部から取得する災害発生位置情報取得手段と、閉塞区間内における自車位置を検出する自車位置検出手段と、避難設備情報記憶手段に記憶された避難設備情報と災害発生位置情報と自車位置の情報とに基づいて、自車の乗員を閉塞区間から避難誘導するための避難誘導情報を作成する避難誘導情報作成手段と、作成された避難誘導情報を出力する避難誘導情報出力手段と、を備えたことを特徴とする車両用避難誘導システムとして提供可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両用避難誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
車両の走行に伴ってＧＰＳ（Global Positioning System：全地球測位システム）等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図と共に表示して、出発地から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する車載用ナビゲーション装置は、ユーザの効率的で安全な運転に貢献している。
【０００３】
車載用ナビゲーション装置には、経路案内の他に様々な機能が備えられており、例えば、車載用ナビゲーション装置に外部からの情報を車両内で搭乗者に報知する機能を含め、渋滞や交通規制区間に関する適切な情報を提供することにより、搭乗者が状況に応じた対応をとることができる車両用外部情報報知装置または車両用経路案内装置が考案されている（特許文献１参照）。
【０００４】
また、車両から取り外した状態でも使用可能なものが供されており、ナビゲーション装置として使用する場合と同様に、使用者が携帯した状態で目的地に経路案内することができ、車載用として好適に利用可能である上に、人用としても適当な機能を発揮させることができるナビゲーション装置が考案されている（特許文献２参照）。
【０００５】
また、出発地から目的地までの経路情報を分割して順次送信するようにして、表示器に経路表示がなされるまでの時間を短縮し、また、情報センターとの間のデータの送受のための通信費を低減することが可能なカーナビゲーションシステムが考案されている（特許文献３参照）。
【０００６】
【特許文献１】特許０３１０６７９２号公報
【特許文献２】特許０３５９４０１１号公報
【特許文献３】特開２００４−０２０５１７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
特許文献１の構成では、ナビゲーション装置の表示装置での案内であるため、トンネル内で災害にあった際に、降車前に案内した避難経路が適切でない状況に至った場合、他の避難経路を報知・誘導できないという問題がある。また、避難する場所についての混雑状況を加味できず、到達した避難口が混雑している場合の対応措置を報知できないため、迅速に避難できないこともあるという問題がある。さらに、複数台の車両で運行している際に災害に遭った場合、各車両にて避難方法や場所が異なるケースが考えられるが、この場合、お互いの安否を確認することができないという問題がある。
【０００８】
特許文献２の構成では、災害遭遇時に車両からナビゲーション装置を取り外すことは、迅速な避難の妨げになり好ましくない。
【０００９】
特許文献３の構成では、渋滞や事故の情報は伝達・報知されるが、代替経路の検索を行うのみで、災害発生地点からの避難誘導については言及されていない。
【００１０】
上記問題を背景として、本発明の課題は、乗員が災害に遭った際、冷静かつ沈着に行動できる避難方法・方向および経路・距離などを案内するとともに、避難場所の適切な選択と他車の乗員の状況把握を可能にすることができる車両用避難誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【００１１】
上記課題を解決するための車両用避難誘導システムは、ベース道路区間上に、その一部を切り出す形で車両の脱出分岐路を途中に有さない閉塞区間が定義されるとともに、当該閉塞区間に設けられた、該閉塞区間からの人の脱出は可能であって車両の脱出は不能な避難設備の、少なくとも閉塞区間上の位置情報を含む避難設備情報を記憶する避難設備情報記憶手段と、閉塞区間において発生した災害発生位置情報を外部から取得する災害発生位置情報取得手段と、閉塞区間内における自車位置を検出する自車位置検出手段と、避難設備情報記憶手段に記憶された避難設備情報と災害発生位置情報と自車位置の情報とに基づいて、自車の乗員を閉塞区間から避難誘導するための避難誘導情報を作成する避難誘導情報作成手段と、作成された避難誘導情報を出力する避難誘導情報出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【００１２】
ここで、前記閉塞区間は、トンネル、橋梁または高速道路上の道なり区間（インターチェンジ、ジャンクション、サービスエリア、パーキングエリアあるいは非常駐車帯などへの分岐路を含まない区間）として定められている。
【００１３】
上記構成によって、避難設備情報と災害発生位置情報と自車位置の情報とに基づいて常に最新かつ最善の避難誘導情報を作成・出力することができ、乗員を適切な避難設備に安全に誘導することが可能となる。従来技術のように、避難の際に車載用ナビゲーション装置を取り外す必要がないので、避難時間を短縮することが可能となる。また、降車前に案内した避難経路が適切でない状況に至った場合、他の避難経路を報知・誘導できないという問題は発生しない。
【００１４】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報作成手段は、避難設備情報記憶手段が記憶する避難設備のうち、自車の乗員に避難を推奨すべき推奨避難設備の情報を、災害発生位置情報と自車位置の情報とに基づいて決定する推奨避難設備決定手段を含み、避難誘導情報出力手段は、該推奨避難設備の情報を避難誘導情報として出力するように構成することもできる。
【００１５】
上記構成によって、自車からは近く災害発生位置からは離れた位置にある避難設備を推奨避難設備として決定し、避難誘導情報として出力することができるので、乗員をより安全な避難設備に誘導することが可能となる。
【００１６】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、閉塞区間内における自車の進行方向を検出する進行方向検出手段を備え、避難誘導情報作成手段は、災害発生位置と自車位置と自車の進行方向とに基づいて避難誘導情報を作成するように構成することもできる。
【００１７】
災害発生位置の手前で降車して避難する場合、後続車両があることを考えると、自車の後方に避難するよりも自車の進行方向に避難する方が、災害の状況を把握してその状況に応じた対処（避難等）方法を考えることができる。上記構成によって、乗員をより安全に推奨避難設備へ誘導することが可能となる。
【００１８】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報作成手段は、自車の進行方向において災害発生位置が自車よりも後方にあることを条件として、自車により進行方向へ走行継続し、閉塞区間の末端出口から脱出する旨の避難誘導情報を作成するように構成することもできる。
【００１９】
災害発生位置が自車よりも後方であれば、降車して避難するよりも災害発生位置からいち早く遠ざかった方が安全である。上記構成によって、乗員をより安全かつ適切に避難誘導することが可能となる。
【００２０】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、請求項２に記載の要件を備え、推奨避難設備決定手段は、閉塞区間上にて自車位置から災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備を推奨避難設備として決定するように構成することもできる。
【００２１】
災害発生位置の付近では二次災害が発生する可能性が少なからずある。また、いかに適切な避難設備でも到達するために災害発生位置を経由することは好ましくない。上記構成によって、災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備を推奨避難設備として決定することで、乗員をより安全かつ適切に避難誘導することが可能となる。
【００２２】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける推奨避難設備決定手段は、自車の進行方向において災害発生位置が自車よりも前方にある場合は、該自車よりも後方に存在する避難設備を推奨避難設備として決定し、同じく災害発生位置が自車よりも後方にある場合は、該自車よりも前方に存在する避難設備を推奨避難設備として決定するように構成することもできる。
【００２３】
上記構成によって、自車からは近く災害発生位置からは離れた位置（方向）にある避難設備を推奨避難設備として決定し、避難誘導情報として出力することができるので、乗員をより安全に避難誘導することが可能となる。
【００２４】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける推奨避難設備決定手段は、自車位置に近い避難設備ほど、推奨避難設備としての決定優先度を高く設定するように構成することもできる。
【００２５】
上記構成によって、乗員はより短い時間で避難することが可能となる。
【００２６】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、請求項５に記載の要件を備え、推奨避難設備決定手段は、閉塞区間上にて自車位置から災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備において、自車位置に近い避難設備ほど、推奨避難設備としての決定優先度を高く設定するように構成することもできる。
【００２７】
避難設備が自車位置に最も近くても、避難誘導経路が自車位置から災害発生位置を経由するのでは、最適な避難設備とはいえない。上記構成によって、「近くて安全に避難できる」避難設備を推奨避難設備として決定し、避難誘導情報として出力することができるので、乗員をより安全に避難誘導することが可能となる。
【００２８】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、各避難設備の混雑度情報を取得する混雑情報取得手段を有し、推奨避難設備決定手段は、混雑度の低い避難設備ほど推奨避難設備としての決定優先度を高く設定するように構成することもできる。
【００２９】
避難設備が最も近く、その避難誘導経路が自車位置から災害発生位置を経由しない場合でも、その避難設備が混雑していると、避難の開始から避難を完了するまで（避難設備に入ってしかるべき避難状態になるまで）に時間がかかってしまう。上記構成によって、混雑度の低い避難設備を推奨避難設備として決定し、避難誘導情報として出力することができるので、避難全体に要する時間を短縮することが可能となる。避難全体に要する時間が短縮されれば、避難時に危険な状況に遭遇する可能性も小さくなる。
【００３０】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報作成手段は、自車位置と推奨避難設備の位置情報とに基づいて、該自車位置から推奨避難設備に至る避難誘導経路の情報を作成する避難誘導経路情報作成手段を備え、避難誘導情報出力手段は、作成された避難誘導経路の情報を避難誘導情報として出力するように構成することもできる。
【００３１】
上記構成によって、推奨避難設備までの避難誘導経路情報が出力されるので、乗員はその避難誘導経路情報にしたがって避難することで、道に迷うことなく安全かつ迅速に推奨避難設備へ到達することができる。
【００３２】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、自車位置から推奨避難設備の位置情報とに基づいて該推奨避難設備までの避難距離を算出する避難距離算出手段を有し、避難誘導情報出力手段は、該避難距離の情報を避難誘導情報に含めて出力するように構成することもできる。
【００３３】
上記構成によって、避難距離から該推奨避難設備にどれくらいで到達できるかを推定することができるので、地理不案内な場所や視界の良くない場所においても冷静に避難することが可能となる。
【００３４】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、ベース道路区間において、自車位置と、その前方に存在する閉塞区間とを包含する広域エリアの災害発生位置情報を取得する広域災害情報取得手段を備え、避難誘導情報作成手段は、取得した災害位置が自車位置の前方の閉塞区間内に存在し、かつ自車位置から該閉塞区間までの間に広域避難設備がない場合、その直前の閉塞区間の避難設備への避難誘導情報を作成するように構成することもできる。
【００３５】
上記構成によって、災害が発生した閉塞区間に進入することなく、その手前の閉塞区間内の避難設備への避難誘導情報が作成・出力されるので、十分な余裕を持って避難を行うことができる。また、災害発生位置に接近して、その混乱や二次災害に巻き込まれることもない。
【００３６】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報出力手段は、避難誘導情報を自車内にて印刷出力する印刷手段であるように構成することもできる。
【００３７】
従来技術では、避難誘導情報は車載機器の表示器に表示されるので、乗員が降車したら避難誘導情報を見ることができないという問題点がある。また、車載用ナビゲーション装置が車両から取り外し可能な構成であっても、重量がありかさばるので、手回り品に加えて持ち歩くことは、避難する上では好ましくない。しかし、上記構成によって、避難誘導情報が印刷されたもの（紙等）を持ってその印刷内容（避難誘導情報）を確認しながら避難できるので、降車前に報知された避難誘導情報の記憶に頼って避難するよりも、より安全・確実に避難設備に到達することができる。
【００３８】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報出力手段は、自車の外部に避難誘導情報を無線送信する無線送信手段であるように構成することもできる。
【００３９】
上記構成によって、この避難誘導情報を受信した者は、当該避難誘導情報を送信した車両の乗員の避難状況あるいは避難先（避難設備）を把握することが可能となる。また、降車後に避難誘導情報の内容が更新された場合にも、その内容が出力されるので、当該車両の乗員がその避難誘導情報を受信できれば、常に最新の避難誘導情報を入手しながら、その時点で最も安全かつ到達可能な避難設備に避難することが可能となる。
【００４０】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける無線送信手段は、避難誘導情報を携帯通信端末に無線送信するものであるように構成することもできる。
【００４１】
携帯電話機やＰＤＡ（Personal Data Assistant：携帯情報端末）のような携帯通信端末は広く普及している。上記構成によって、乗員が降車後に避難誘導情報の内容が更新された場合にも、その内容が携帯通信端末に出力されるので、携帯通信端末の所持者（乗員）は、常に最新の避難誘導情報を入手しながら、その時点で最も安全かつ到達可能な避難設備に避難することが可能となる。
【００４２】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける無線送信手段は、避難誘導情報を予め登録された他車両に向けて無線送信するものであるように構成することもできる。
【００４３】
上記構成によって、複数の車両で走行している際に災害に遭遇した場合、各車両から避難誘導情報を受信することで、お互いの安否を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００４４】
以下、本発明の車両用避難誘導システムを、車載用ナビゲーション装置の一部として構成したものを、図面を参照しながら説明する。無論、車両用避難誘導システムを車載用ナビゲーション装置の一部ではなく独立した車載機器として構成してもよいし、他の車載機器の一部として構成してもよい。図１は車載用ナビゲーション装置（以下、ナビゲーション装置と略称）１００の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置１００は、位置検出器１，地図データ入力器６，操作スイッチ群７，リモートコントロール（以下リモコンと称する）センサ１１，音声案内などを行う音声合成回路２４，スピーカ１５，メモリ９，表示器１０，送受信機１３，ハードディスク装置（ＨＤＤ）２１，ＬＡＮ(Local Area Network) Ｉ／Ｆ（インターフェース）２６，これらの接続された制御回路８，リモコン端末１２等を備えている。
【００４５】
位置検出器１は、周知の地磁気センサ２，車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ３，車両の走行距離を検出する距離センサ４，および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するＧＰＳ受信機５を有している。これらのセンサ等２，３，４，５は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ例えば車速センサ２３等を用いてもよい。なお、位置検出器１が本発明の自車位置検出手段，進行方向検出手段に相当する。
【００４６】
操作スイッチ群７は、例えば表示器１０と一体になったタッチパネル２２もしくはメカニカルなスイッチが用いられる。タッチパネル２２は、表示器１０の画面上にガラス基盤と透明なフィルムにスペーサと呼ばれる隙間を介してＸ軸方向、Ｙ軸方向に電気回路が配線され、フィルム上をユーザがタッチすると、押された部分の配線がショートして電圧値が変わるため、これを２次元座標値（Ｘ，Ｙ）として検出する、いわゆる抵抗膜方式が広く用いられる。その他に、周知のいわゆる静電容量方式を用いてもよい。メカニカルスイッチの他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。また、表示器１０とその周辺を覆い意匠枠となるエスカッションに、操作スイッチ群７のうちのメカニカルスイッチを配置してもよい。
【００４７】
また、マイク３１および音声認識ユニット３０を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、マイク３１から入力された音声信号を、音声認識ユニット３０において周知の隠れマルコフモデル等の音声認識技術により処理を行い、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。これら操作スイッチ群７，リモコン端末１２，タッチパネル２２，およびマイク３１により、種々の指示を入力することが可能である。
【００４８】
送受信機１３は、例えば道路に沿って設けられた送信機（図示せず）から出力される光ビーコン、または電波ビーコンによってＶＩＣＳ（Vehicle Information and Communication System：道路交通情報通信システム）センタ１４から道路交通情報を受信、あるいはＦＭ多重放送を受信するための装置である。また、送受信機１３を用いてインターネット等の外部ネットワークに接続可能な構成としてもよい。なお、送受信機１３が本発明の広域災害情報取得手段に相当する。
【００４９】
また、ＥＴＣ車載器１７と通信することにより、ＥＴＣ車載器１７が路側器（図示せず）から受信した料金情報などをナビゲーション装置１００に取り込むことができる。また、ＥＴＣ車載器１７によって外部ネットワークと接続し、ＶＩＣＳセンタ１４等との通信を行う構成をとってもよい。
【００５０】
制御回路８は通常のコンピュータとして構成されており、周知のＣＰＵ８１，ＲＯＭ８２，ＲＡＭ８３，入出力回路であるＩ／Ｏ８４，Ａ／Ｄ変換部８６，描画部８７，時計ＩＣ８８，およびこれらの構成を接続するバスライン８５が備えられている。ＣＰＵ８１は、ＨＤＤ２１に記憶されたナビプログラム２１ｐおよびデータにより制御を行う。また、ＨＤＤ２１へのデータの読み書きの制御はＣＰＵ８１によって行なわれる。また、ＣＰＵ８１からＨＤＤ２１に対してデータの読み書きの制御ができなくなった場合のために、ＲＯＭ８２にナビゲーション装置１００として必要最低限の動作を行うためのプログラムを記憶しておいてもよい。なお、制御回路８が本発明の避難誘導情報作成手段，推奨避難設備決定手段，避難誘導経路情報作成手段，避難距離算出手段に相当する。
【００５１】
Ａ／Ｄ変換部８６は周知のＡ／Ｄ（アナログ／デジタル）変換回路を含み、例えば位置検出器１などから制御回路８に入力されるアナログデータをＣＰＵ８１で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【００５２】
描画部８７は、ＨＤＤ２１等に記憶された地図データ２１ｍ（後述），表示用のデータや表示色のデータから表示器１０に表示させるための表示画面データを生成する。
【００５３】
時計ＩＣ８８はリアルタイムクロックＩＣとも呼ばれ、ＣＰＵ８１からの要求に応じて時計・カレンダーのデータを送出あるいは設定するものである。ＣＰＵ８１は時計ＩＣ８８から日時情報を取得する。また、ＧＰＳ受信機５で受信したＧＰＳ信号に含まれる日時情報を用いてもよい。また、ＣＰＵ８１に含まれるリアルタイムカウンタを基にして日時情報を生成してもよい。
【００５４】
ＨＤＤ２１には、ナビプログラム２１ｐの他に位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む地図データベースである地図データ２１ｍが記憶される。地図データ２１ｍは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶するとともに、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標、距離、所要時間、道幅、車線数、制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点（分岐路）等を規定する情報であって、位置座標、右左折車線数、接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。なお、地図データ２１ｍが本発明の避難設備情報記憶手段に相当する。
【００５５】
また、ＨＤＤ２１には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができ、ユーザデータ２１ｕとして記憶される。また、ナビゲーション装置１００の動作に必要なデータや各種情報はデータベース２１ｄとしても記憶される。データベース２１ｄを本発明の避難設備情報記憶手段として用いてもよい。
【００５６】
ナビプログラム２１ｐ，地図データ２１ｍ，ユーザデータ２１ｕ，およびデータベース２１ｄは、地図データ入力器６を介して記憶媒体２０からそのデータの追加・更新を行うことが可能である。記憶媒体２０は、そのデータ量からＣＤ−ＲＯＭやＤＶＤを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。また、外部ネットワークを介してデータをダウンロードする構成を用いてもよい。
【００５７】
メモリ９はＥＥＰＲＯＭ（Electrically Erasable ＆ Programmable Read Only Memory：電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ）やフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、ナビゲーション装置１００の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、メモリ９は、ナビゲーション装置１００がオフ状態になっても記憶内容が保持されるようになっている。また、メモリ９の代わりにナビゲーション装置１００の動作に必要な情報およびデータをＨＤＤ２１に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置１００の動作に必要な情報およびデータをメモリ９とＨＤＤ２１に分けて記憶してもよい。
【００５８】
表示器１０は周知のカラー液晶表示器で構成され、ドット・マトリックスＬＣＤ（Liquid Crystal Display）およびＬＣＤ表示制御を行うための図示しないドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、画素毎にトランジスタを付けて目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができるアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路８から送られる表示指令および表示画面データに基づいて表示を行う。また、表示器１０として有機ＥＬ（ElectroLuminescence：電界発光）表示器，プラズマ表示器を用いてもよい。
【００５９】
スピーカ１５は周知の音声合成回路２４に接続され、ナビプログラム２１ｐの指令によってメモリ９あるいはＨＤＤ２１に記憶されるデジタル音声データが音声合成回路２４においてアナログ音声に変換されたものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき必要に応じて繋ぎ合わせる録音編集方式、文字入力情報からそれに対応する音声を合成するテキスト合成方式などがある。
【００６０】
車速センサ２３は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路８に送るものである。制御回路８では、その車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置から所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する
【００６１】
ＬＡＮ Ｉ／Ｆ２６は車内ＬＡＮ２７を介して他の車載機器やセンサとのデータの遣り取りを行うためのインターフェース回路である。また、ＬＡＮ Ｉ／Ｆ２６を介して車速センサ２３からのデータ取り込み、あるいはＥＴＣ車載器１７との接続を行ってもよい。
【００６２】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置１００は、制御回路８のＣＰＵ８１によりナビプログラム２１ｐが起動されると、ユーザが操作スイッチ群７，タッチパネル２２、リモコン端末１２の操作あるいはマイク３１からの音声入力によって、表示器１０上に表示されるメニュー（図示せず）から目的地経路を表示器１０に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【００６３】
すなわち、まず、ユーザは目的地を探索する。目的地の探索方法は、例えば、地図上の任意の地点を指定する方法、目的地の所在する地域から探索する方法，目的地の電話番号から探索する方法，五十音表から目的地の名称を入力して探索する方法，あるいはユーザがよく利用する施設としてメモリ９に記憶されているものから探索する方法などがある。目的地が設定されると、位置検出器１により車両の現在位置が求められ、該現在位置を出発地として目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示器１０上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、ユーザに適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示器１０およびスピーカ１５の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行う。
【００６４】
プリンタ１９は、周知のインクジェットプリンタ，レーザプリンタ，あるいは感熱プリンタとして構成される。制御回路８で作成された出力用データを、ナビプログラム２１ｐに含まれるプリンタドライバプログラムによって、出力用紙あるいは出力書式に応じた印刷用データに変換されて印刷される。なお、プリンタ１９が本発明の避難誘導情報出力手段，印刷手段に相当する。
【００６５】
通信ユニット２５は周知の無線通信機として構成され、制御回路８からの指令に基づき、本発明の携帯通信端末である携帯電話機１８等との間で無線通信を行うために用いられる。なお、通信ユニット２５が本発明の災害位置情報取得手段，混雑情報取得手段，避難誘導情報出力手段，無線送信手段に相当する。通信ユニット２５を本発明の広域災害情報取得手段として用いてもよい。逆に、送受信機１３を本発明の災害位置情報取得手段，混雑情報取得手段，避難誘導情報出力手段，無線送信手段として用いてもよい。また、携帯電話機１８が本発明の携帯通信端末に相当する。
【００６６】
図２を用いて避難誘導処理について説明する。なお、本処理はナビプログラム２１ｐに含まれ、ナビプログラム２１ｐの他の処理とともに繰り返し実行される。まず、自車位置と、その前方に存在する閉塞区間とを包含する広域エリアの災害発生位置情報である広域災害情報を取得する（Ｓ１）。広域災害情報は、例えばＶＩＣＳセンタ１４からを取得する方法、通信ユニット２５を介して外部ネットワークに接続してインターネットサーバ等から取得する方法のいずれを用いてもよい。
【００６７】
取得した広域災害情報に災害発生情報が含まれている場合（Ｓ２：Ｙｅｓ）、その災害発生位置情報を取得する（Ｓ３）。次いで、位置検出器１で検出される自車位置情報を取得する（Ｓ４）。次いで、地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶されている広域避難設備情報（図４参照，詳細は後述）を取得し（Ｓ５）、災害発生位置が自車位置の前方にあり、災害発生位置の手前に広域避難設備がある場合（Ｓ６：Ｙｅｓ）は、該広域避難設備へ誘導するように、表示器１０あるいはスピーカ１５によって報知を行う（Ｓ９）。図５に広域避難設備へ誘導する際の、表示器１０の表示画面の例を示す。
【００６８】
図４に広域避難設備情報の例を示す。広域避難設備情報には、広域避難設備とその位置情報とが含まれる。広域避難設備とは、例えば、インターチェンジ、ジャンクション、サービスエリア、パーキングエリアあるいは非常駐車帯などへの分岐路をいう。
【００６９】
一方、自車位置の前方に広域避難設備がない場合（Ｓ６：Ｎｏ）は、避難誘導情報を作成し（Ｓ７，詳細は後述）、作成された避難誘導情報を出力する（Ｓ８，詳細は後述）。
【００７０】
図３を用いて避難誘導処理の一例について説明する。自車位置はＰで示され図の上方（トンネル１１０）へ向けて走行中である。取得した広域災害情報には、自車の前方のトンネル１１０の内部（×印の位置）で災害が発生した旨の災害発生位置情報が含まれている。自車位置Ｐがインターチェンジ（ＩＣ）の手前であれば、このインターチェンジが広域避難設備となり、このインターチェンジから出るように報知される。
【００７１】
一方、自車位置Ｐがインターチェンジを通り過ぎている場合は、自車位置Ｐからトンネル（即ち閉塞区間２）の手前の区間（即ち閉塞区間１）における避難設備である、避難口１，避難口２，退避所のいずれかへ誘導するための避難誘導情報を作成して出力する（詳細は後述）。図６に地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶されている避難設備情報の例を示す。避難設備情報には、避難設備とその位置情報とが含まれる。
【００７２】
図７を用いて、図２のステップＳ７に相当する避難誘導情報作成処理について説明する。まず、災害発生位置，自車位置，自車の進行方向との関係を把握する（Ｓ２１）。災害発生位置が自車の進行方向の前方でない場合（Ｓ２２：Ｎｏ）、このまま走行して当該閉塞区間を通過する旨の避難誘導情報を作成する（Ｓ２３）。災害発生位置が自車の進行方向の前方である場合（Ｓ２２：Ｙｅｓ）でも対向車線の場合（Ｓ２４：Ｙｅｓ）も、同様にこのまま走行して当該閉塞区間を通過する旨の避難誘導情報を作成する（Ｓ２３）。進行方向は、ジャイロスコープ３により求めてもよいし、位置検出器１で検出される自車位置の履歴（変化）から求めてもよい。
【００７３】
一方、災害発生位置が自車線の前方である場合（Ｓ２２：Ｙｅｓ→Ｓ２４：Ｎｏ）、避難誘導経路の検索を行う（Ｓ２５，詳細は後述）。
【００７４】
図８を用いて、図７のステップＳ２５に相当する避難誘導経路検索処理について説明する。まず、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、「災害が発生しています。避難誘導経路を検索するので暫くお待ちください。」のような、避難誘導経路の検索を実施する旨の報知を行う（Ｓ４１）。次に、地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶されている、当該閉塞区間における避難設備情報を参照する（Ｓ４２）。
【００７５】
そして、当該閉塞区間における各避難設備と自車位置との距離（すなわち、避難距離）を算出する（Ｓ４３）。全ての避難設備についての避難距離の算出が終了したら、避難設備を避難距離の短い順にソートする（Ｓ４４）。
【００７６】
次に、災害発生位置情報に含まれる混雑度情報を取得し（Ｓ４５）、先に避難距離の短い順にソートを行った避難設備について、「避難距離が短い」かつ「混雑度が所定の閾値を下回る」条件で再ソートする（Ｓ４６）。つまり、避難設備は、「避難距離が短く混雑していない」，「避難距離は短くはないが混雑していない」，「避難距離は短いが混雑している」，「避難距離は短くなく混雑している」の順に並べ替えられる。このソート順により決定優先度が決められる。
【００７７】
混雑度を距離に換算して、距離換算分を算出された避難距離に加えた値によりソートを行ってもよい。
【００７８】
次に、これらの避難設備についての自車位置からの避難経路を検索する（Ｓ４７）。そして、検索された避難経路が災害発生位置から半径５０ｍ以内のような所定の範囲内を経由するかを判定する（Ｓ４８）。最後に、「混雑度が所定の閾値を下回り」，「災害発生位置から所定の範囲内を経由しない」避難設備の中で、「避難距離が短く混雑していない」ものが決定優先度が最も高くなり、その決定優先度が最も高い避難設備を推奨避難設備として決定する（Ｓ４９）。
【００７９】
取得した災害発生位置情報の内容が更新され、災害発生位置の範囲が拡がったり、避難設備の混雑度が変化した場合は、その都度、上記の処理で災害発生位置情報の内容に応じて推奨避難設備が決定される。
【００８０】
図９を用いて、図２のステップＳ８に相当する避難誘導情報出力処理について説明する。まず、地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶されている、避難誘導情報出力先（図２０参照，詳細は後述）を取得する（Ｓ６１）。
【００８１】
避難誘導情報出力先に携帯電話機１８や他の車両のような外部出力先が含まれている場合（Ｓ６２：Ｙｅｓ）、その出力先に対して、作成された避難誘導情報を出力（送信）（Ｓ６３）し、その結果を、例えば「避難誘導情報を○○（出力先）に送信しました。」のように、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、その結果を報知する（Ｓ６４）。
【００８２】
一方、外部出力先がない場合（Ｓ６２：Ｎｏ）、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、例えば「避難誘導情報の外部出力先はありません」のように、外部出力先がない旨を報知する（Ｓ６５）。避難誘導情報の出力先がプリンタ１９（印刷装置）である場合（Ｓ６６：Ｙｅｓ）、避難誘導情報を印刷し（Ｓ６７）、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、例えば「最寄りの避難誘導経路を印刷しました。この紙を持って直ちに避難して下さい」のように、その状況を報知する（Ｓ６８）。
【００８３】
外部出力先もなく（Ｓ６２：Ｎｏ）、避難誘導情報の出力先がプリンタ１９（印刷装置）でもない場合（Ｓ６６：Ｎｏ）、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、例えば「避難誘導情報を印刷できません。」のように、印刷設定が行われていない旨を報知する（Ｓ６８）。
【００８４】
図１０を用いて、避難誘導情報受信処理について説明する。他の車両からの避難誘導情報を受信したら（Ｓ８１）、その内容を逐次表示する（Ｓ８２）。避難誘導情報を複数受信した場合には、一つの避難誘導情報を所定のタイミングで順次切り替えて表示してもよいし、一括表示してもよい。
【００８５】
図１１〜図２２を用いて、上記で説明した避難誘導処理の具体例を説明する。図１１では、図３のトンネル１１０を閉塞区間の例として挙げる。トンネル１１０の上下線の入口近傍には、災害発生位置情報を含む情報を発信する情報発信装置１１１，１１２、災害発生位置情報を含む各種情報を表示する警告装置１１３，１１４が設置されている。
【００８６】
トンネル１１０の避難設備は避難口Ａ，Ｂ，Ｃ，Ｄの４箇所である。図１２に、地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶される避難設備情報の例を示す。図１２のように、避難設備情報には、走行方向毎に避難設備の位置が含まれている。閉塞区間がトンネルや橋梁の場合は、その出入口も避難設備と見なしてもよい。閉塞区間の形状も記憶してもよい。図１３は、図１２に対応するトンネル１１０における各避難設備の位置関係の詳細を示したものである。
【００８７】
図１４に、情報発信装置１１１，１１２から送信される災害発生位置情報の例を示す。災害発生位置情報には、災害発生位置（Ｑ：図１１参照），各避難設備の混雑度が含まれる。各避難設備の位置や使用可能状態を含めてもよい（災害の内容によっては、特定の避難設備が使用できない場合もあるため）。
【００８８】
車両Ｚでは、災害発生位置情報を受信すると、その内容から災害発生位置は自車の後方であるので（図７のステップＳ２２：Ｎｏ）、図１５のように表示器１０にこのまま走行する（閉塞区間の末端出口から脱出する）旨（避難誘導情報）を表示する（図７のステップＳ２３）。スピーカ１５から音声メッセージを送出してもよい。避難誘導情報に時計ＩＣ８８から取得した日時情報を含めてもよい。そして、この避難誘導情報を予め登録された出力先に送信する（図２のステップＳ８）。
【００８９】
車両Ｙの場合も、災害発生位置は自車の後方であるので、図１５のように表示器１０にこのまま走行する旨が表示される。車両Ｙの位置がトンネル１１０の入口であった場合、災害発生位置は自車の前方となるが（図７のステップＳ２２：Ｙｅｓ）、災害発生位置が対向車線であるため（図７のステップＳ２４：Ｙｅｓ）、同様にこのまま走行する旨が表示される。
【００９０】
車両Ｘおよび車両αでは、災害発生位置情報を受信すると、その内容と避難設備情報とから避難誘導経路を検索する（図７のステップＳ２５）。図１６に、車両Ｘからの避難距離により避難設備をソートして決定優先度を求めた例を示す。ここで、避難口Ｃ（避難距離２００ｍ）が避難口Ｂ（同４００ｍ）より下位にあるのは、避難口Ｃが対向車線にあって、災害の範囲が対向車線に及んでいないためである。このように、到達するには対向車線を横断する必要がある避難設備については、対向車線を横断するために要する時間等の要因を距離に換算して実際の距離に加算した上でソートしてもよいし、ソートの対象から除外してもよい。
【００９１】
図１７に、車両Ｘにおける混雑度を加味して避難設備をソートして決定優先度を求めた例を示す。図１７の例では、車両Ｘから最も近い避難口Ａが混雑しており、その混雑度が予め設定された閾値を上回る（例えば、避難口Ａを選択した場合の避難完了予想時間が避難口Ｂを選択した場合よりも長い）ので、避難口Ｂの決定優先度が最も高い。決定優先度の最も高い避難設備が推奨避難設備となる。
【００９２】
図１８，図１９に車両Ｘにおける避難誘導情報の表示例を示す。図１８の例は図１６の決定優先度に基づくもの、図１９の例は図１７の決定優先度に基づくものである。これらの表示が行われた際に、他車（例えば車両Ｚ，α）にも車両Ｘにおける避難誘導情報が送信される。また、図１８，図１９のように、上記で検索された避難誘導経路を合わせて表示してもよい（図５，図１５においても同様）。
【００９３】
車両αの場合は、トンネル１１０の入口も避難設備に含めてもよく、避難口Ｂが混雑していたり、避難口Ｂと災害発生位置との距離が小さい場合には、車両α後方のトンネル入口が推奨避難設備として決定され、車両αの後方のトンネル入口へ避難するように避難誘導情報が作成・出力される。
【００９４】
図２０にデータベース２１ｄに記憶される避難誘導情報の出力先の例を示す。各出力先のＩＤは機器ＩＤや電話番号である。避難誘導情報の出力先は、操作スイッチ群７，リモコン端末１２，タッチパネル２２，およびマイク３１によるユーザの所定の操作によって更新が可能である。出力先としては、プリンタ１９，乗員の所持する携帯電話機１８，他の車両（Ｚ，α）の車両用避難誘導システム（車載用ナビゲーション装置）等が含まれる。各出力先について避難誘導情報の他に避難誘導経路データも合わせて送信するかどうかを設定可能としてもよい。
【００９５】
プリンタ１９には、図１８，図１９のような、自車の車載用ナビゲーション装置１００で決定された避難誘導情報が出力される。このとき、「避難の際には本紙を忘れないで下さい」というメッセージを付記してもよい。また、他車から受信した避難誘導情報を出力してもよい。
【００９６】
携帯電話機１８には、図１８，図１９のような、自車の車載用ナビゲーション装置１００で決定された避難誘導情報が出力され、その内容が表示される。避難誘導情報は、車載用ナビゲーション装置１００から例えば電子メール形式で送信されるようにしてもよい。この場合、避難誘導経路のデータは添付ファイルとして送信してもよい。車載用ナビゲーション装置１００と携帯電話機１８との通信は、通常は中継局（基地局）を介して行われるが、閉塞区間には電波の届き難いトンネルも含まれるので、中継局を介さずに直接通信を行う構成としてもよい。
【００９７】
また、携帯電話機１８，プリンタ１９，あるいは表示器１０には、他車から受信した避難誘導情報も出力される。図２１，図２２にその表示例を示す。図２１は、車両Ｚあるいは車両αが、車両Ｘから避難誘導情報を受信した場合の表示例である。図２２は車両Ｘが他車（車両Ｚ，車両α）からそれぞれの車両で作成された避難誘導情報を受信した場合の表示例である。
【００９８】
災害発生位置情報の内容が更新され、災害発生位置の範囲が拡がったり、避難設備の混雑度が変化した場合は、その都度、上記の処理で災害発生位置情報の内容に応じて推奨避難設備が決定・出力されるので、乗員は降車後も常に最新の避難誘導情報を入手することができ、安全な避難設備に迅速に避難することができる。
【００９９】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【０１００】
【図１】車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図２】避難誘導処理を説明するフロー図。
【図３】避難誘導処理の概念を示す図。
【図４】広域避難設備情報の記憶内容の例を示す図。
【図５】広域避難設備へ誘導する際の表示画面の例を示す図。
【図６】避難設備情報の記憶内容の例を示す図。
【図７】避難誘導情報作成処理を説明するフロー図。
【図８】避難誘導経路検索処理を説明するフロー図。
【図９】避難誘導情報出力処理を説明するフロー図。
【図１０】避難誘導情報受信処理を説明するフロー図。
【図１１】トンネルを例に挙げた避難誘導を説明するための模式図。
【図１２】避難設備の記憶内容の例を示す図。
【図１３】トンネルにおける各避難設備の位置関係の詳細を示す図。
【図１４】災害発生位置情報の例を示す図。
【図１５】そのまま走行する場合の避難誘導情報の表示画面例を示す図。
【図１６】避難距離により避難設備をソートして決定優先度を求めた例を示す図。
【図１７】混雑度を加味して避難設備をソートして決定優先度を求めた例を示す図。
【図１８】避難誘導情報の表示例を示す図。
【図１９】避難誘導情報の表示の別例を示す図。
【図２０】避難誘導情報の出力先の記憶内容の例を示す図。
【図２１】他車に送信された避難誘導情報の例を示す図。
【図２２】他車に送信された避難誘導情報の別例を示す図。
【符号の説明】
【０１０１】
１ 位置検出器（自車位置検出手段，進行方向検出手段）
７ 操作スイッチ群
８ 制御回路（避難誘導情報作成手段，推奨避難設備決定手段，避難誘導経路情報作成手段，避難距離算出手段）
１０ 表示器
１２ リモコン端末
１３ 送受信機（広域災害情報取得手段）
１４ ＶＩＣＳセンタ
１５ スピーカ
１８ 携帯電話機（携帯通信端末）
１９ プリンタ（避難誘導情報出力手段，印刷手段）
２１ ハードディスク装置（ＨＤＤ）
２１ｄ データベース
２１ｍ 地図データ（避難設備情報記憶手段）
２２ タッチパネル
２５ 通信ユニット（災害位置情報取得手段，混雑情報取得手段，避難誘導情報出力手段，無線送信手段）
３１ マイク
１００ 車載用ナビゲーション装置
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両用避難誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
車両の走行に伴ってＧＰＳ（Global Positioning System：全地球測位システム）等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図と共に表示して、出発地から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する車載用ナビゲーション装置は、ユーザの効率的で安全な運転に貢献している。
【０００３】
車載用ナビゲーション装置には、経路案内の他に様々な機能が備えられており、例えば、車載用ナビゲーション装置に外部からの情報を車両内で搭乗者に報知する機能を含め、渋滞や交通規制区間に関する適切な情報を提供することにより、搭乗者が状況に応じた対応をとることができる車両用外部情報報知装置または車両用経路案内装置が考案されている（特許文献１参照）。
【０００４】
また、車両から取り外した状態でも使用可能なものが供されており、ナビゲーション装置として使用する場合と同様に、使用者が携帯した状態で目的地に経路案内することができ、車載用として好適に利用可能である上に、人用としても適当な機能を発揮させることができるナビゲーション装置が考案されている（特許文献２参照）。
【０００５】
また、出発地から目的地までの経路情報を分割して順次送信するようにして、表示器に経路表示がなされるまでの時間を短縮し、また、情報センターとの間のデータの送受のための通信費を低減することが可能なカーナビゲーションシステムが考案されている（特許文献３参照）。
【０００６】
【特許文献１】特許０３１０６７９２号公報
【特許文献２】特許０３５９４０１１号公報
【特許文献３】特開２００４−０２０５１７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
特許文献１の構成では、ナビゲーション装置の表示装置での案内であるため、トンネル内で災害にあった際に、降車前に案内した避難経路が適切でない状況に至った場合、他の避難経路を報知・誘導できないという問題がある。また、避難する場所についての混雑状況を加味できず、到達した避難口が混雑している場合の対応措置を報知できないため、迅速に避難できないこともあるという問題がある。さらに、複数台の車両で運行している際に災害に遭った場合、各車両にて避難方法や場所が異なるケースが考えられるが、この場合、お互いの安否を確認することができないという問題がある。
【０００８】
特許文献２の構成では、災害遭遇時に車両からナビゲーション装置を取り外すことは、迅速な避難の妨げになり好ましくない。
【０００９】
特許文献３の構成では、渋滞や事故の情報は伝達・報知されるが、代替経路の検索を行うのみで、災害発生地点からの避難誘導については言及されていない。
【００１０】
上記問題を背景として、本発明の課題は、乗員が災害に遭った際、冷静かつ沈着に行動できる避難方法・方向および経路・距離などを案内するとともに、避難場所の適切な選択と他車の乗員の状況把握を可能にすることができる車両用避難誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【００１１】
上記課題を解決するための車両用避難誘導システムは、ベース道路区間上に、その一部を切り出す形で車両の脱出分岐路を途中に有さない閉塞区間が定義されるとともに、当該閉塞区間に設けられた、該閉塞区間からの人の脱出は可能であって車両の脱出は不能な避難設備の、少なくとも閉塞区間上の位置情報を含む避難設備情報を記憶する避難設備情報記憶手段と、閉塞区間において発生した災害発生位置情報を外部から取得する災害発生位置情報取得手段と、閉塞区間内における自車位置を検出する自車位置検出手段と、避難設備情報記憶手段に記憶された避難設備情報と災害発生位置情報と自車位置の情報とに基づいて、自車の乗員を閉塞区間から避難誘導するための避難誘導情報を作成する避難誘導情報作成手段と、作成された避難誘導情報を出力する避難誘導情報出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【００１２】
ここで、前記閉塞区間は、トンネル、橋梁または高速道路上の道なり区間（インターチェンジ、ジャンクション、サービスエリア、パーキングエリアあるいは非常駐車帯などへの分岐路を含まない区間）として定められている。
【００１３】
上記構成によって、避難設備情報と災害発生位置情報と自車位置の情報とに基づいて常に最新かつ最善の避難誘導情報を作成・出力することができ、乗員を適切な避難設備に安全に誘導することが可能となる。従来技術のように、避難の際に車載用ナビゲーション装置を取り外す必要がないので、避難時間を短縮することが可能となる。また、降車前に案内した避難経路が適切でない状況に至った場合、他の避難経路を報知・誘導できないという問題は発生しない。
【００１４】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報作成手段は、避難設備情報記憶手段が記憶する避難設備のうち、自車の乗員に避難を推奨すべき推奨避難設備の情報を、災害発生位置情報と自車位置の情報とに基づいて決定する推奨避難設備決定手段を含み、避難誘導情報出力手段は、該推奨避難設備の情報を避難誘導情報として出力するように構成することもできる。
【００１５】
上記構成によって、自車からは近く災害発生位置からは離れた位置にある避難設備を推奨避難設備として決定し、避難誘導情報として出力することができるので、乗員をより安全な避難設備に誘導することが可能となる。
【００１６】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、閉塞区間内における自車の進行方向を検出する進行方向検出手段を備え、避難誘導情報作成手段は、災害発生位置と自車位置と自車の進行方向とに基づいて避難誘導情報を作成するように構成することもできる。
【００１７】
災害発生位置の手前で降車して避難する場合、後続車両があることを考えると、自車の後方に避難するよりも自車の進行方向に避難する方が、災害の状況を把握してその状況に応じた対処（避難等）方法を考えることができる。上記構成によって、乗員をより安全に推奨避難設備へ誘導することが可能となる。
【００１８】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報作成手段は、自車の進行方向において災害発生位置が自車よりも後方にあることを条件として、自車により進行方向へ走行継続し、閉塞区間の末端出口から脱出する旨の避難誘導情報を作成するように構成することもできる。
【００１９】
災害発生位置が自車よりも後方であれば、降車して避難するよりも災害発生位置からいち早く遠ざかった方が安全である。上記構成によって、乗員をより安全かつ適切に避難誘導することが可能となる。
【００２０】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、請求項２に記載の要件を備え、推奨避難設備決定手段は、閉塞区間上にて自車位置から災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備を推奨避難設備として決定するように構成することもできる。
【００２１】
災害発生位置の付近では二次災害が発生する可能性が少なからずある。また、いかに適切な避難設備でも到達するために災害発生位置を経由することは好ましくない。上記構成によって、災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備を推奨避難設備として決定することで、乗員をより安全かつ適切に避難誘導することが可能となる。
【００２２】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける推奨避難設備決定手段は、自車の進行方向において災害発生位置が自車よりも前方にある場合は、該自車よりも後方に存在する避難設備を推奨避難設備として決定し、同じく災害発生位置が自車よりも後方にある場合は、該自車よりも前方に存在する避難設備を推奨避難設備として決定するように構成することもできる。
【００２３】
上記構成によって、自車からは近く災害発生位置からは離れた位置（方向）にある避難設備を推奨避難設備として決定し、避難誘導情報として出力することができるので、乗員をより安全に避難誘導することが可能となる。
【００２４】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける推奨避難設備決定手段は、自車位置に近い避難設備ほど、推奨避難設備としての決定優先度を高く設定するように構成することもできる。
【００２５】
上記構成によって、乗員はより短い時間で避難することが可能となる。
【００２６】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、請求項５に記載の要件を備え、推奨避難設備決定手段は、閉塞区間上にて自車位置から災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備において、自車位置に近い避難設備ほど、推奨避難設備としての決定優先度を高く設定するように構成することもできる。
【００２７】
避難設備が自車位置に最も近くても、避難誘導経路が自車位置から災害発生位置を経由するのでは、最適な避難設備とはいえない。上記構成によって、「近くて安全に避難できる」避難設備を推奨避難設備として決定し、避難誘導情報として出力することができるので、乗員をより安全に避難誘導することが可能となる。
【００２８】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、各避難設備の混雑度情報を取得する混雑情報取得手段を有し、推奨避難設備決定手段は、混雑度の低い避難設備ほど推奨避難設備としての決定優先度を高く設定するように構成することもできる。
【００２９】
避難設備が最も近く、その避難誘導経路が自車位置から災害発生位置を経由しない場合でも、その避難設備が混雑していると、避難の開始から避難を完了するまで（避難設備に入ってしかるべき避難状態になるまで）に時間がかかってしまう。上記構成によって、混雑度の低い避難設備を推奨避難設備として決定し、避難誘導情報として出力することができるので、避難全体に要する時間を短縮することが可能となる。避難全体に要する時間が短縮されれば、避難時に危険な状況に遭遇する可能性も小さくなる。
【００３０】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報作成手段は、自車位置と推奨避難設備の位置情報とに基づいて、該自車位置から推奨避難設備に至る避難誘導経路の情報を作成する避難誘導経路情報作成手段を備え、避難誘導情報出力手段は、作成された避難誘導経路の情報を避難誘導情報として出力するように構成することもできる。
【００３１】
上記構成によって、推奨避難設備までの避難誘導経路情報が出力されるので、乗員はその避難誘導経路情報にしたがって避難することで、道に迷うことなく安全かつ迅速に推奨避難設備へ到達することができる。
【００３２】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、自車位置から推奨避難設備の位置情報とに基づいて該推奨避難設備までの避難距離を算出する避難距離算出手段を有し、避難誘導情報出力手段は、該避難距離の情報を避難誘導情報に含めて出力するように構成することもできる。
【００３３】
上記構成によって、避難距離から該推奨避難設備にどれくらいで到達できるかを推定することができるので、地理不案内な場所や視界の良くない場所においても冷静に避難することが可能となる。
【００３４】
また、本発明の車両用避難誘導システムは、ベース道路区間において、自車位置と、その前方に存在する閉塞区間とを包含する広域エリアの災害発生位置情報を取得する広域災害情報取得手段を備え、避難誘導情報作成手段は、取得した災害位置が自車位置の前方の閉塞区間内に存在し、かつ自車位置から該閉塞区間までの間に広域避難設備がない場合、その直前の閉塞区間の避難設備への避難誘導情報を作成するように構成することもできる。
【００３５】
上記構成によって、災害が発生した閉塞区間に進入することなく、その手前の閉塞区間内の避難設備への避難誘導情報が作成・出力されるので、十分な余裕を持って避難を行うことができる。また、災害発生位置に接近して、その混乱や二次災害に巻き込まれることもない。
【００３６】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報出力手段は、避難誘導情報を自車内にて印刷出力する印刷手段であるように構成することもできる。
【００３７】
従来技術では、避難誘導情報は車載機器の表示器に表示されるので、乗員が降車したら避難誘導情報を見ることができないという問題点がある。また、車載用ナビゲーション装置が車両から取り外し可能な構成であっても、重量がありかさばるので、手回り品に加えて持ち歩くことは、避難する上では好ましくない。しかし、上記構成によって、避難誘導情報が印刷されたもの（紙等）を持ってその印刷内容（避難誘導情報）を確認しながら避難できるので、降車前に報知された避難誘導情報の記憶に頼って避難するよりも、より安全・確実に避難設備に到達することができる。
【００３８】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける避難誘導情報出力手段は、自車の外部に避難誘導情報を無線送信する無線送信手段であるように構成することもできる。
【００３９】
上記構成によって、この避難誘導情報を受信した者は、当該避難誘導情報を送信した車両の乗員の避難状況あるいは避難先（避難設備）を把握することが可能となる。また、降車後に避難誘導情報の内容が更新された場合にも、その内容が出力されるので、当該車両の乗員がその避難誘導情報を受信できれば、常に最新の避難誘導情報を入手しながら、その時点で最も安全かつ到達可能な避難設備に避難することが可能となる。
【００４０】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける無線送信手段は、避難誘導情報を携帯通信端末に無線送信するものであるように構成することもできる。
【００４１】
携帯電話機やＰＤＡ（Personal Data Assistant：携帯情報端末）のような携帯通信端末は広く普及している。上記構成によって、乗員が降車後に避難誘導情報の内容が更新された場合にも、その内容が携帯通信端末に出力されるので、携帯通信端末の所持者（乗員）は、常に最新の避難誘導情報を入手しながら、その時点で最も安全かつ到達可能な避難設備に避難することが可能となる。
【００４２】
また、本発明の車両用避難誘導システムにおける無線送信手段は、避難誘導情報を予め登録された他車両に向けて無線送信するものであるように構成することもできる。
【００４３】
上記構成によって、複数の車両で走行している際に災害に遭遇した場合、各車両から避難誘導情報を受信することで、お互いの安否を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００４４】
以下、本発明の車両用避難誘導システムを、車載用ナビゲーション装置の一部として構成したものを、図面を参照しながら説明する。無論、車両用避難誘導システムを車載用ナビゲーション装置の一部ではなく独立した車載機器として構成してもよいし、他の車載機器の一部として構成してもよい。図１は車載用ナビゲーション装置（以下、ナビゲーション装置と略称）１００の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置１００は、位置検出器１，地図データ入力器６，操作スイッチ群７，リモートコントロール（以下リモコンと称する）センサ１１，音声案内などを行う音声合成回路２４，スピーカ１５，メモリ９，表示器１０，送受信機１３，ハードディスク装置（ＨＤＤ）２１，ＬＡＮ(Local Area Network) Ｉ／Ｆ（インターフェース）２６，これらの接続された制御回路８，リモコン端末１２等を備えている。
【００４５】
位置検出器１は、周知の地磁気センサ２，車両の回転角速度を検出するジャイロスコープ３，車両の走行距離を検出する距離センサ４，および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するＧＰＳ受信機５を有している。これらのセンサ等２，３，４，５は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ例えば車速センサ２３等を用いてもよい。なお、位置検出器１が本発明の自車位置検出手段，進行方向検出手段に相当する。
【００４６】
操作スイッチ群７は、例えば表示器１０と一体になったタッチパネル２２もしくはメカニカルなスイッチが用いられる。タッチパネル２２は、表示器１０の画面上にガラス基盤と透明なフィルムにスペーサと呼ばれる隙間を介してＸ軸方向、Ｙ軸方向に電気回路が配線され、フィルム上をユーザがタッチすると、押された部分の配線がショートして電圧値が変わるため、これを２次元座標値（Ｘ，Ｙ）として検出する、いわゆる抵抗膜方式が広く用いられる。その他に、周知のいわゆる静電容量方式を用いてもよい。メカニカルスイッチの他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。また、表示器１０とその周辺を覆い意匠枠となるエスカッションに、操作スイッチ群７のうちのメカニカルスイッチを配置してもよい。
【００４７】
また、マイク３１および音声認識ユニット３０を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、マイク３１から入力された音声信号を、音声認識ユニット３０において周知の隠れマルコフモデル等の音声認識技術により処理を行い、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。これら操作スイッチ群７，リモコン端末１２，タッチパネル２２，およびマイク３１により、種々の指示を入力することが可能である。
【００４８】
送受信機１３は、例えば道路に沿って設けられた送信機（図示せず）から出力される光ビーコン、または電波ビーコンによってＶＩＣＳ（Vehicle Information and Communication System：道路交通情報通信システム）センタ１４から道路交通情報を受信、あるいはＦＭ多重放送を受信するための装置である。また、送受信機１３を用いてインターネット等の外部ネットワークに接続可能な構成としてもよい。なお、送受信機１３が本発明の広域災害情報取得手段に相当する。
【００４９】
また、ＥＴＣ車載器１７と通信することにより、ＥＴＣ車載器１７が路側器（図示せず）から受信した料金情報などをナビゲーション装置１００に取り込むことができる。また、ＥＴＣ車載器１７によって外部ネットワークと接続し、ＶＩＣＳセンタ１４等との通信を行う構成をとってもよい。
【００５０】
制御回路８は通常のコンピュータとして構成されており、周知のＣＰＵ８１，ＲＯＭ８２，ＲＡＭ８３，入出力回路であるＩ／Ｏ８４，Ａ／Ｄ変換部８６，描画部８７，時計ＩＣ８８，およびこれらの構成を接続するバスライン８５が備えられている。ＣＰＵ８１は、ＨＤＤ２１に記憶されたナビプログラム２１ｐおよびデータにより制御を行う。また、ＨＤＤ２１へのデータの読み書きの制御はＣＰＵ８１によって行なわれる。また、ＣＰＵ８１からＨＤＤ２１に対してデータの読み書きの制御ができなくなった場合のために、ＲＯＭ８２にナビゲーション装置１００として必要最低限の動作を行うためのプログラムを記憶しておいてもよい。なお、制御回路８が本発明の避難誘導情報作成手段，推奨避難設備決定手段，避難誘導経路情報作成手段，避難距離算出手段に相当する。
【００５１】
Ａ／Ｄ変換部８６は周知のＡ／Ｄ（アナログ／デジタル）変換回路を含み、例えば位置検出器１などから制御回路８に入力されるアナログデータをＣＰＵ８１で演算可能なデジタルデータに変換するものである。
【００５２】
描画部８７は、ＨＤＤ２１等に記憶された地図データ２１ｍ（後述），表示用のデータや表示色のデータから表示器１０に表示させるための表示画面データを生成する。
【００５３】
時計ＩＣ８８はリアルタイムクロックＩＣとも呼ばれ、ＣＰＵ８１からの要求に応じて時計・カレンダーのデータを送出あるいは設定するものである。ＣＰＵ８１は時計ＩＣ８８から日時情報を取得する。また、ＧＰＳ受信機５で受信したＧＰＳ信号に含まれる日時情報を用いてもよい。また、ＣＰＵ８１に含まれるリアルタイムカウンタを基にして日時情報を生成してもよい。
【００５４】
ＨＤＤ２１には、ナビプログラム２１ｐの他に位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む地図データベースである地図データ２１ｍが記憶される。地図データ２１ｍは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶するとともに、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標、距離、所要時間、道幅、車線数、制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点（分岐路）等を規定する情報であって、位置座標、右左折車線数、接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。なお、地図データ２１ｍが本発明の避難設備情報記憶手段に相当する。
【００５５】
また、ＨＤＤ２１には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができ、ユーザデータ２１ｕとして記憶される。また、ナビゲーション装置１００の動作に必要なデータや各種情報はデータベース２１ｄとしても記憶される。データベース２１ｄを本発明の避難設備情報記憶手段として用いてもよい。
【００５６】
ナビプログラム２１ｐ，地図データ２１ｍ，ユーザデータ２１ｕ，およびデータベース２１ｄは、地図データ入力器６を介して記憶媒体２０からそのデータの追加・更新を行うことが可能である。記憶媒体２０は、そのデータ量からＣＤ−ＲＯＭやＤＶＤを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。また、外部ネットワークを介してデータをダウンロードする構成を用いてもよい。
【００５７】
メモリ９はＥＥＰＲＯＭ（Electrically Erasable ＆ Programmable Read Only Memory：電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ）やフラッシュメモリ等の書き換え可能なデバイスによって構成され、ナビゲーション装置１００の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、メモリ９は、ナビゲーション装置１００がオフ状態になっても記憶内容が保持されるようになっている。また、メモリ９の代わりにナビゲーション装置１００の動作に必要な情報およびデータをＨＤＤ２１に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置１００の動作に必要な情報およびデータをメモリ９とＨＤＤ２１に分けて記憶してもよい。
【００５８】
表示器１０は周知のカラー液晶表示器で構成され、ドット・マトリックスＬＣＤ（Liquid Crystal Display）およびＬＣＤ表示制御を行うための図示しないドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、画素毎にトランジスタを付けて目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができるアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、制御回路８から送られる表示指令および表示画面データに基づいて表示を行う。また、表示器１０として有機ＥＬ（ElectroLuminescence：電界発光）表示器，プラズマ表示器を用いてもよい。
【００５９】
スピーカ１５は周知の音声合成回路２４に接続され、ナビプログラム２１ｐの指令によってメモリ９あるいはＨＤＤ２１に記憶されるデジタル音声データが音声合成回路２４においてアナログ音声に変換されたものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき必要に応じて繋ぎ合わせる録音編集方式、文字入力情報からそれに対応する音声を合成するテキスト合成方式などがある。
【００６０】
車速センサ２３は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路８に送るものである。制御回路８では、その車輪の回転数を車両の速度に換算して、車両の現在位置から所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両の走行区間毎の平均車速を算出する
【００６１】
ＬＡＮ Ｉ／Ｆ２６は車内ＬＡＮ２７を介して他の車載機器やセンサとのデータの遣り取りを行うためのインターフェース回路である。また、ＬＡＮ Ｉ／Ｆ２６を介して車速センサ２３からのデータ取り込み、あるいはＥＴＣ車載器１７との接続を行ってもよい。
【００６２】
このような構成を持つことにより、ナビゲーション装置１００は、制御回路８のＣＰＵ８１によりナビプログラム２１ｐが起動されると、ユーザが操作スイッチ群７，タッチパネル２２、リモコン端末１２の操作あるいはマイク３１からの音声入力によって、表示器１０上に表示されるメニュー（図示せず）から目的地経路を表示器１０に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【００６３】
すなわち、まず、ユーザは目的地を探索する。目的地の探索方法は、例えば、地図上の任意の地点を指定する方法、目的地の所在する地域から探索する方法，目的地の電話番号から探索する方法，五十音表から目的地の名称を入力して探索する方法，あるいはユーザがよく利用する施設としてメモリ９に記憶されているものから探索する方法などがある。目的地が設定されると、位置検出器１により車両の現在位置が求められ、該現在位置を出発地として目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、表示器１０上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、ユーザに適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、表示器１０およびスピーカ１５の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行う。
【００６４】
プリンタ１９は、周知のインクジェットプリンタ，レーザプリンタ，あるいは感熱プリンタとして構成される。制御回路８で作成された出力用データを、ナビプログラム２１ｐに含まれるプリンタドライバプログラムによって、出力用紙あるいは出力書式に応じた印刷用データに変換されて印刷される。なお、プリンタ１９が本発明の避難誘導情報出力手段，印刷手段に相当する。
【００６５】
通信ユニット２５は周知の無線通信機として構成され、制御回路８からの指令に基づき、本発明の携帯通信端末である携帯電話機１８等との間で無線通信を行うために用いられる。なお、通信ユニット２５が本発明の災害位置情報取得手段，混雑情報取得手段，避難誘導情報出力手段，無線送信手段に相当する。通信ユニット２５を本発明の広域災害情報取得手段として用いてもよい。逆に、送受信機１３を本発明の災害位置情報取得手段，混雑情報取得手段，避難誘導情報出力手段，無線送信手段として用いてもよい。また、携帯電話機１８が本発明の携帯通信端末に相当する。
【００６６】
図２を用いて避難誘導処理について説明する。なお、本処理はナビプログラム２１ｐに含まれ、ナビプログラム２１ｐの他の処理とともに繰り返し実行される。まず、自車位置と、その前方に存在する閉塞区間とを包含する広域エリアの災害発生位置情報である広域災害情報を取得する（Ｓ１）。広域災害情報は、例えばＶＩＣＳセンタ１４からを取得する方法、通信ユニット２５を介して外部ネットワークに接続してインターネットサーバ等から取得する方法のいずれを用いてもよい。
【００６７】
取得した広域災害情報に災害発生情報が含まれている場合（Ｓ２：Ｙｅｓ）、その災害発生位置情報を取得する（Ｓ３）。次いで、位置検出器１で検出される自車位置情報を取得する（Ｓ４）。次いで、地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶されている広域避難設備情報（図４参照，詳細は後述）を取得し（Ｓ５）、災害発生位置が自車位置の前方にあり、災害発生位置の手前に広域避難設備がある場合（Ｓ６：Ｙｅｓ）は、該広域避難設備へ誘導するように、表示器１０あるいはスピーカ１５によって報知を行う（Ｓ９）。図５に広域避難設備へ誘導する際の、表示器１０の表示画面の例を示す。
【００６８】
図４に広域避難設備情報の例を示す。広域避難設備情報には、広域避難設備とその位置情報とが含まれる。広域避難設備とは、例えば、インターチェンジ、ジャンクション、サービスエリア、パーキングエリアあるいは非常駐車帯などへの分岐路をいう。
【００６９】
一方、自車位置の前方に広域避難設備がない場合（Ｓ６：Ｎｏ）は、避難誘導情報を作成し（Ｓ７，詳細は後述）、作成された避難誘導情報を出力する（Ｓ８，詳細は後述）。
【００７０】
図３を用いて避難誘導処理の一例について説明する。自車位置はＰで示され図の上方（トンネル１１０）へ向けて走行中である。取得した広域災害情報には、自車の前方のトンネル１１０の内部（×印の位置）で災害が発生した旨の災害発生位置情報が含まれている。自車位置Ｐがインターチェンジ（ＩＣ）の手前であれば、このインターチェンジが広域避難設備となり、このインターチェンジから出るように報知される。
【００７１】
一方、自車位置Ｐがインターチェンジを通り過ぎている場合は、自車位置Ｐからトンネル（即ち閉塞区間２）の手前の区間（即ち閉塞区間１）における避難設備である、避難口１，避難口２，退避所のいずれかへ誘導するための避難誘導情報を作成して出力する（詳細は後述）。図６に地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶されている避難設備情報の例を示す。避難設備情報には、避難設備とその位置情報とが含まれる。
【００７２】
図７を用いて、図２のステップＳ７に相当する避難誘導情報作成処理について説明する。まず、災害発生位置，自車位置，自車の進行方向との関係を把握する（Ｓ２１）。災害発生位置が自車の進行方向の前方でない場合（Ｓ２２：Ｎｏ）、このまま走行して当該閉塞区間を通過する旨の避難誘導情報を作成する（Ｓ２３）。災害発生位置が自車の進行方向の前方である場合（Ｓ２２：Ｙｅｓ）でも対向車線の場合（Ｓ２４：Ｙｅｓ）も、同様にこのまま走行して当該閉塞区間を通過する旨の避難誘導情報を作成する（Ｓ２３）。進行方向は、ジャイロスコープ３により求めてもよいし、位置検出器１で検出される自車位置の履歴（変化）から求めてもよい。
【００７３】
一方、災害発生位置が自車線の前方である場合（Ｓ２２：Ｙｅｓ→Ｓ２４：Ｎｏ）、避難誘導経路の検索を行う（Ｓ２５，詳細は後述）。
【００７４】
図８を用いて、図７のステップＳ２５に相当する避難誘導経路検索処理について説明する。まず、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、「災害が発生しています。避難誘導経路を検索するので暫くお待ちください。」のような、避難誘導経路の検索を実施する旨の報知を行う（Ｓ４１）。次に、地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶されている、当該閉塞区間における避難設備情報を参照する（Ｓ４２）。
【００７５】
そして、当該閉塞区間における各避難設備と自車位置との距離（すなわち、避難距離）を算出する（Ｓ４３）。全ての避難設備についての避難距離の算出が終了したら、避難設備を避難距離の短い順にソートする（Ｓ４４）。
【００７６】
次に、災害発生位置情報に含まれる混雑度情報を取得し（Ｓ４５）、先に避難距離の短い順にソートを行った避難設備について、「避難距離が短い」かつ「混雑度が所定の閾値を下回る」条件で再ソートする（Ｓ４６）。つまり、避難設備は、「避難距離が短く混雑していない」，「避難距離は短くはないが混雑していない」，「避難距離は短いが混雑している」，「避難距離は短くなく混雑している」の順に並べ替えられる。このソート順により決定優先度が決められる。
【００７７】
混雑度を距離に換算して、距離換算分を算出された避難距離に加えた値によりソートを行ってもよい。
【００７８】
次に、これらの避難設備についての自車位置からの避難経路を検索する（Ｓ４７）。そして、検索された避難経路が災害発生位置から半径５０ｍ以内のような所定の範囲内を経由するかを判定する（Ｓ４８）。最後に、「混雑度が所定の閾値を下回り」，「災害発生位置から所定の範囲内を経由しない」避難設備の中で、「避難距離が短く混雑していない」ものが決定優先度が最も高くなり、その決定優先度が最も高い避難設備を推奨避難設備として決定する（Ｓ４９）。
【００７９】
取得した災害発生位置情報の内容が更新され、災害発生位置の範囲が拡がったり、避難設備の混雑度が変化した場合は、その都度、上記の処理で災害発生位置情報の内容に応じて推奨避難設備が決定される。
【００８０】
図９を用いて、図２のステップＳ８に相当する避難誘導情報出力処理について説明する。まず、地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶されている、避難誘導情報出力先（図２０参照，詳細は後述）を取得する（Ｓ６１）。
【００８１】
避難誘導情報出力先に携帯電話機１８や他の車両のような外部出力先が含まれている場合（Ｓ６２：Ｙｅｓ）、その出力先に対して、作成された避難誘導情報を出力（送信）（Ｓ６３）し、その結果を、例えば「避難誘導情報を○○（出力先）に送信しました。」のように、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、その結果を報知する（Ｓ６４）。
【００８２】
一方、外部出力先がない場合（Ｓ６２：Ｎｏ）、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、例えば「避難誘導情報の外部出力先はありません」のように、外部出力先がない旨を報知する（Ｓ６５）。避難誘導情報の出力先がプリンタ１９（印刷装置）である場合（Ｓ６６：Ｙｅｓ）、避難誘導情報を印刷し（Ｓ６７）、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、例えば「最寄りの避難誘導経路を印刷しました。この紙を持って直ちに避難して下さい」のように、その状況を報知する（Ｓ６８）。
【００８３】
外部出力先もなく（Ｓ６２：Ｎｏ）、避難誘導情報の出力先がプリンタ１９（印刷装置）でもない場合（Ｓ６６：Ｎｏ）、表示器１０あるいはスピーカ１５によって、例えば「避難誘導情報を印刷できません。」のように、印刷設定が行われていない旨を報知する（Ｓ６８）。
【００８４】
図１０を用いて、避難誘導情報受信処理について説明する。他の車両からの避難誘導情報を受信したら（Ｓ８１）、その内容を逐次表示する（Ｓ８２）。避難誘導情報を複数受信した場合には、一つの避難誘導情報を所定のタイミングで順次切り替えて表示してもよいし、一括表示してもよい。
【００８５】
図１１〜図２２を用いて、上記で説明した避難誘導処理の具体例を説明する。図１１では、図３のトンネル１１０を閉塞区間の例として挙げる。トンネル１１０の上下線の入口近傍には、災害発生位置情報を含む情報を発信する情報発信装置１１１，１１２、災害発生位置情報を含む各種情報を表示する警告装置１１３，１１４が設置されている。
【００８６】
トンネル１１０の避難設備は避難口Ａ，Ｂ，Ｃ，Ｄの４箇所である。図１２に、地図データ２１ｍあるいはデータベース２１ｄに記憶される避難設備情報の例を示す。図１２のように、避難設備情報には、走行方向毎に避難設備の位置が含まれている。閉塞区間がトンネルや橋梁の場合は、その出入口も避難設備と見なしてもよい。閉塞区間の形状も記憶してもよい。図１３は、図１２に対応するトンネル１１０における各避難設備の位置関係の詳細を示したものである。
【００８７】
図１４に、情報発信装置１１１，１１２から送信される災害発生位置情報の例を示す。災害発生位置情報には、災害発生位置（Ｑ：図１１参照），各避難設備の混雑度が含まれる。各避難設備の位置や使用可能状態を含めてもよい（災害の内容によっては、特定の避難設備が使用できない場合もあるため）。
【００８８】
車両Ｚでは、災害発生位置情報を受信すると、その内容から災害発生位置は自車の後方であるので（図７のステップＳ２２：Ｎｏ）、図１５のように表示器１０にこのまま走行する（閉塞区間の末端出口から脱出する）旨（避難誘導情報）を表示する（図７のステップＳ２３）。スピーカ１５から音声メッセージを送出してもよい。避難誘導情報に時計ＩＣ８８から取得した日時情報を含めてもよい。そして、この避難誘導情報を予め登録された出力先に送信する（図２のステップＳ８）。
【００８９】
車両Ｙの場合も、災害発生位置は自車の後方であるので、図１５のように表示器１０にこのまま走行する旨が表示される。車両Ｙの位置がトンネル１１０の入口であった場合、災害発生位置は自車の前方となるが（図７のステップＳ２２：Ｙｅｓ）、災害発生位置が対向車線であるため（図７のステップＳ２４：Ｙｅｓ）、同様にこのまま走行する旨が表示される。
【００９０】
車両Ｘおよび車両αでは、災害発生位置情報を受信すると、その内容と避難設備情報とから避難誘導経路を検索する（図７のステップＳ２５）。図１６に、車両Ｘからの避難距離により避難設備をソートして決定優先度を求めた例を示す。ここで、避難口Ｃ（避難距離２００ｍ）が避難口Ｂ（同４００ｍ）より下位にあるのは、避難口Ｃが対向車線にあって、災害の範囲が対向車線に及んでいないためである。このように、到達するには対向車線を横断する必要がある避難設備については、対向車線を横断するために要する時間等の要因を距離に換算して実際の距離に加算した上でソートしてもよいし、ソートの対象から除外してもよい。
【００９１】
図１７に、車両Ｘにおける混雑度を加味して避難設備をソートして決定優先度を求めた例を示す。図１７の例では、車両Ｘから最も近い避難口Ａが混雑しており、その混雑度が予め設定された閾値を上回る（例えば、避難口Ａを選択した場合の避難完了予想時間が避難口Ｂを選択した場合よりも長い）ので、避難口Ｂの決定優先度が最も高い。決定優先度の最も高い避難設備が推奨避難設備となる。
【００９２】
図１８，図１９に車両Ｘにおける避難誘導情報の表示例を示す。図１８の例は図１６の決定優先度に基づくもの、図１９の例は図１７の決定優先度に基づくものである。これらの表示が行われた際に、他車（例えば車両Ｚ，α）にも車両Ｘにおける避難誘導情報が送信される。また、図１８，図１９のように、上記で検索された避難誘導経路を合わせて表示してもよい（図５，図１５においても同様）。
【００９３】
車両αの場合は、トンネル１１０の入口も避難設備に含めてもよく、避難口Ｂが混雑していたり、避難口Ｂと災害発生位置との距離が小さい場合には、車両α後方のトンネル入口が推奨避難設備として決定され、車両αの後方のトンネル入口へ避難するように避難誘導情報が作成・出力される。
【００９４】
図２０にデータベース２１ｄに記憶される避難誘導情報の出力先の例を示す。各出力先のＩＤは機器ＩＤや電話番号である。避難誘導情報の出力先は、操作スイッチ群７，リモコン端末１２，タッチパネル２２，およびマイク３１によるユーザの所定の操作によって更新が可能である。出力先としては、プリンタ１９，乗員の所持する携帯電話機１８，他の車両（Ｚ，α）の車両用避難誘導システム（車載用ナビゲーション装置）等が含まれる。各出力先について避難誘導情報の他に避難誘導経路データも合わせて送信するかどうかを設定可能としてもよい。
【００９５】
プリンタ１９には、図１８，図１９のような、自車の車載用ナビゲーション装置１００で決定された避難誘導情報が出力される。このとき、「避難の際には本紙を忘れないで下さい」というメッセージを付記してもよい。また、他車から受信した避難誘導情報を出力してもよい。
【００９６】
携帯電話機１８には、図１８，図１９のような、自車の車載用ナビゲーション装置１００で決定された避難誘導情報が出力され、その内容が表示される。避難誘導情報は、車載用ナビゲーション装置１００から例えば電子メール形式で送信されるようにしてもよい。この場合、避難誘導経路のデータは添付ファイルとして送信してもよい。車載用ナビゲーション装置１００と携帯電話機１８との通信は、通常は中継局（基地局）を介して行われるが、閉塞区間には電波の届き難いトンネルも含まれるので、中継局を介さずに直接通信を行う構成としてもよい。
【００９７】
また、携帯電話機１８，プリンタ１９，あるいは表示器１０には、他車から受信した避難誘導情報も出力される。図２１，図２２にその表示例を示す。図２１は、車両Ｚあるいは車両αが、車両Ｘから避難誘導情報を受信した場合の表示例である。図２２は車両Ｘが他車（車両Ｚ，車両α）からそれぞれの車両で作成された避難誘導情報を受信した場合の表示例である。
【００９８】
災害発生位置情報の内容が更新され、災害発生位置の範囲が拡がったり、避難設備の混雑度が変化した場合は、その都度、上記の処理で災害発生位置情報の内容に応じて推奨避難設備が決定・出力されるので、乗員は降車後も常に最新の避難誘導情報を入手することができ、安全な避難設備に迅速に避難することができる。
【００９９】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【０１００】
【図１】車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図２】避難誘導処理を説明するフロー図。
【図３】避難誘導処理の概念を示す図。
【図４】広域避難設備情報の記憶内容の例を示す図。
【図５】広域避難設備へ誘導する際の表示画面の例を示す図。
【図６】避難設備情報の記憶内容の例を示す図。
【図７】避難誘導情報作成処理を説明するフロー図。
【図８】避難誘導経路検索処理を説明するフロー図。
【図９】避難誘導情報出力処理を説明するフロー図。
【図１０】避難誘導情報受信処理を説明するフロー図。
【図１１】トンネルを例に挙げた避難誘導を説明するための模式図。
【図１２】避難設備の記憶内容の例を示す図。
【図１３】トンネルにおける各避難設備の位置関係の詳細を示す図。
【図１４】災害発生位置情報の例を示す図。
【図１５】そのまま走行する場合の避難誘導情報の表示画面例を示す図。
【図１６】避難距離により避難設備をソートして決定優先度を求めた例を示す図。
【図１７】混雑度を加味して避難設備をソートして決定優先度を求めた例を示す図。
【図１８】避難誘導情報の表示例を示す図。
【図１９】避難誘導情報の表示の別例を示す図。
【図２０】避難誘導情報の出力先の記憶内容の例を示す図。
【図２１】他車に送信された避難誘導情報の例を示す図。
【図２２】他車に送信された避難誘導情報の別例を示す図。
【符号の説明】
【０１０１】
１ 位置検出器（自車位置検出手段，進行方向検出手段）
７ 操作スイッチ群
８ 制御回路（避難誘導情報作成手段，推奨避難設備決定手段，避難誘導経路情報作成手段，避難距離算出手段）
１０ 表示器
１２ リモコン端末
１３ 送受信機（広域災害情報取得手段）
１４ ＶＩＣＳセンタ
１５ スピーカ
１８ 携帯電話機（携帯通信端末）
１９ プリンタ（避難誘導情報出力手段，印刷手段）
２１ ハードディスク装置（ＨＤＤ）
２１ｄ データベース
２１ｍ 地図データ（避難設備情報記憶手段）
２２ タッチパネル
２５ 通信ユニット（災害位置情報取得手段，混雑情報取得手段，避難誘導情報出力手段，無線送信手段）
３１ マイク
１００ 車載用ナビゲーション装置
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ベース道路区間上に、その一部を切り出す形で車両の脱出分岐路を途中に有さない閉塞区間が定義されるとともに、当該閉塞区間に設けられた、該閉塞区間からの人の脱出は可能であって車両の脱出は不能な避難設備の、少なくとも前記閉塞区間上の位置情報を含む避難設備情報を記憶する避難設備情報記憶手段と、
前記閉塞区間において発生した災害発生位置情報を外部から取得する災害発生位置情報取得手段と、
前記閉塞区間内における自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記避難設備情報記憶手段に記憶された前記避難設備情報と前記災害発生位置情報と前記自車位置の情報とに基づいて、前記自車の乗員を前記閉塞区間から避難誘導するための避難誘導情報を作成する避難誘導情報作成手段と、
作成された前記避難誘導情報を出力する避難誘導情報出力手段と、
を備えたことを特徴とする車両用避難誘導システム。
【請求項２】
前記避難誘導情報作成手段は、前記避難設備情報記憶手段が記憶する避難設備のうち、前記自車の乗員に避難を推奨すべき推奨避難設備の情報を、前記災害発生位置情報と前記自車位置の情報とに基づいて決定する推奨避難設備決定手段を含み、
前記避難誘導情報出力手段は、該推奨避難設備の情報を前記避難誘導情報として出力する請求項１に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項３】
前記閉塞区間内における前記自車の進行方向を検出する進行方向検出手段を備え、
前記避難誘導情報作成手段は、前記災害発生位置と前記自車位置と前記自車の進行方向とに基づいて前記避難誘導情報を作成する請求項１または２に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項４】
前記避難誘導情報作成手段は、前記自車の進行方向において前記災害発生位置が前記自車よりも後方にあることを条件として、前記自車により前記進行方向へ走行継続し、前記閉塞区間の末端出口から脱出する旨の避難誘導情報を作成する請求項３に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項５】
請求項２に記載の要件を備え、
前記推奨避難設備決定手段は、前記閉塞区間上にて前記自車位置から前記災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備を前記推奨避難設備として決定する請求項３に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項６】
前記推奨避難設備決定手段は、前記自車の進行方向において前記災害発生位置が前記自車よりも前方にある場合は、該自車よりも後方に存在する避難設備を前記推奨避難設備として決定し、同じく前記災害発生位置が前記自車よりも後方にある場合は、該自車よりも前方に存在する避難設備を前記推奨避難設備として決定する請求項５に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項７】
前記推奨避難設備決定手段は、前記自車位置に近い避難設備ほど、前記推奨避難設備としての決定優先度を高く設定する請求項２ないし６のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項８】
請求項５に記載の要件を備え、
前記推奨避難設備決定手段は、前記閉塞区間上にて前記自車位置から前記災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備において、前記自車位置に近い避難設備ほど、前記推奨避難設備としての決定優先度を高く設定する請求項７に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項９】
各前記避難設備の混雑度情報を取得する混雑情報取得手段を有し、
前記推奨避難設備決定手段は、混雑度の低い避難設備ほど前記推奨避難設備としての決定優先度を高く設定する請求項２ないし８のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１０】
前記避難誘導情報作成手段は、前記自車位置と前記推奨避難設備の位置情報とに基づいて、該自車位置から前記推奨避難設備に至る避難誘導経路の情報を作成する避難誘導経路情報作成手段を備え、
前記避難誘導情報出力手段は、作成された前記避難誘導経路の情報を前記避難誘導情報として出力する請求項２ないし９のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１１】
前記自車位置から前記推奨避難設備の位置情報とに基づいて該推奨避難設備までの避難距離を算出する避難距離算出手段を有し、前記避難誘導情報出力手段は、該避難距離の情報を前記避難誘導情報に含めて出力する請求項２ないし１０のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１２】
前記ベース道路区間において、自車位置と、その前方に存在する閉塞区間とを包含する広域エリアの災害発生位置情報を取得する広域災害情報取得手段を備え、
前記避難誘導情報作成手段は、取得した災害位置が前記自車位置の前方の閉塞区間内に存在し、かつ前記自車位置から該閉塞区間までの間に広域避難設備がない場合、その直前の閉塞区間の避難設備への避難誘導情報を作成する請求項２ないし１１のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１３】
前記避難誘導情報出力手段は、前記避難誘導情報を前記自車内にて印刷出力する印刷手段である請求項１ないし１２のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１４】
前記避難誘導情報出力手段は、前記自車の外部に前記避難誘導情報を無線送信する無線送信手段である請求項１ないし１３に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１５】
前記無線送信手段は、前記避難誘導情報を携帯通信端末に無線送信するものである請求項１４に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１６】
前記無線送信手段は、前記避難誘導情報を予め登録された他車両に向けて無線送信するものである請求項１４または１５に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１】
ベース道路区間上に、その一部を切り出す形で車両の脱出分岐路を途中に有さない閉塞区間が定義されるとともに、当該閉塞区間に設けられた、該閉塞区間からの人の脱出は可能であって車両の脱出は不能な避難設備の、少なくとも前記閉塞区間上の位置情報を含む避難設備情報を記憶する避難設備情報記憶手段と、
前記閉塞区間において発生した災害発生位置情報を外部から取得する災害発生位置情報取得手段と、
前記閉塞区間内における自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記避難設備情報記憶手段に記憶された前記避難設備情報と前記災害発生位置情報と前記自車位置の情報とに基づいて、前記自車の乗員を前記閉塞区間から避難誘導するための避難誘導情報を作成する避難誘導情報作成手段と、
作成された前記避難誘導情報を出力する避難誘導情報出力手段と、
を備えたことを特徴とする車両用避難誘導システム。
【請求項２】
前記避難誘導情報作成手段は、前記避難設備情報記憶手段が記憶する避難設備のうち、前記自車の乗員に避難を推奨すべき推奨避難設備の情報を、前記災害発生位置情報と前記自車位置の情報とに基づいて決定する推奨避難設備決定手段を含み、
前記避難誘導情報出力手段は、該推奨避難設備の情報を前記避難誘導情報として出力する請求項１に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項３】
前記閉塞区間内における前記自車の進行方向を検出する進行方向検出手段を備え、
前記避難誘導情報作成手段は、前記災害発生位置と前記自車位置と前記自車の進行方向とに基づいて前記避難誘導情報を作成する請求項１または２に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項４】
前記避難誘導情報作成手段は、前記自車の進行方向において前記災害発生位置が前記自車よりも後方にあることを条件として、前記自車により前記進行方向へ走行継続し、前記閉塞区間の末端出口から脱出する旨の避難誘導情報を作成する請求項３に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項５】
請求項２に記載の要件を備え、
前記推奨避難設備決定手段は、前記閉塞区間上にて前記自車位置から前記災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備を前記推奨避難設備として決定する請求項３に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項６】
前記推奨避難設備決定手段は、前記自車の進行方向において前記災害発生位置が前記自車よりも前方にある場合は、該自車よりも後方に存在する避難設備を前記推奨避難設備として決定し、同じく前記災害発生位置が前記自車よりも後方にある場合は、該自車よりも前方に存在する避難設備を前記推奨避難設備として決定する請求項５に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項７】
前記推奨避難設備決定手段は、前記自車位置に近い避難設備ほど、前記推奨避難設備としての決定優先度を高く設定する請求項２ないし６のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項８】
請求項５に記載の要件を備え、
前記推奨避難設備決定手段は、前記閉塞区間上にて前記自車位置から前記災害発生位置を経由せずに到達できる避難設備において、前記自車位置に近い避難設備ほど、前記推奨避難設備としての決定優先度を高く設定する請求項７に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項９】
各前記避難設備の混雑度情報を取得する混雑情報取得手段を有し、
前記推奨避難設備決定手段は、混雑度の低い避難設備ほど前記推奨避難設備としての決定優先度を高く設定する請求項２ないし８のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１０】
前記避難誘導情報作成手段は、前記自車位置と前記推奨避難設備の位置情報とに基づいて、該自車位置から前記推奨避難設備に至る避難誘導経路の情報を作成する避難誘導経路情報作成手段を備え、
前記避難誘導情報出力手段は、作成された前記避難誘導経路の情報を前記避難誘導情報として出力する請求項２ないし９のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１１】
前記自車位置から前記推奨避難設備の位置情報とに基づいて該推奨避難設備までの避難距離を算出する避難距離算出手段を有し、前記避難誘導情報出力手段は、該避難距離の情報を前記避難誘導情報に含めて出力する請求項２ないし１０のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１２】
前記ベース道路区間において、自車位置と、その前方に存在する閉塞区間とを包含する広域エリアの災害発生位置情報を取得する広域災害情報取得手段を備え、
前記避難誘導情報作成手段は、取得した災害位置が前記自車位置の前方の閉塞区間内に存在し、かつ前記自車位置から該閉塞区間までの間に広域避難設備がない場合、その直前の閉塞区間の避難設備への避難誘導情報を作成する請求項２ないし１１のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１３】
前記避難誘導情報出力手段は、前記避難誘導情報を前記自車内にて印刷出力する印刷手段である請求項１ないし１２のいずれか１項に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１４】
前記避難誘導情報出力手段は、前記自車の外部に前記避難誘導情報を無線送信する無線送信手段である請求項１ないし１３に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１５】
前記無線送信手段は、前記避難誘導情報を携帯通信端末に無線送信するものである請求項１４に記載の車両用避難誘導システム。
【請求項１６】
前記無線送信手段は、前記避難誘導情報を予め登録された他車両に向けて無線送信するものである請求項１４または１５に記載の車両用避難誘導システム。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２２】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２２】
【公開番号】特開２００８−２１０３０（Ｐ２００８−２１０３０Ａ）
【公開日】平成２０年１月３１日（２００８．１．３１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−１９０８２１（Ｐ２００６−１９０８２１）
【出願日】平成１８年７月１１日（２００６．７．１１）
【公序良俗違反の表示】
（特許庁注：以下のものは登録商標）
１．ＶＩＣＳ
【出願人】（０００００４２６０）株式会社デンソー (27,639)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１月３１日（２００８．１．３１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年７月１１日（２００６．７．１１）
【公序良俗違反の表示】
（特許庁注：以下のものは登録商標）
１．ＶＩＣＳ
【出願人】（０００００４２６０）株式会社デンソー (27,639)
【Ｆターム（参考）】
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