車両用部材及びその製造方法

【課題】十分に優れた耐候性及び耐摩耗性を有する車両用部材を提供すること。
【解決手段】成形体1と、該成形体1の表面上に設けられ、活性エネルギー線硬化性組成物が硬化して形成される保護膜5と、を備える車両用部材10。活性エネルギー線硬化性組成物が、水酸基を有するアクリル系プレポリマーと、イソシアネート基を有するアクリルモノマー(a4)との反応により得ることのできる活性エネルギー線硬化性プレポリマー(A)、ベンゾトリアゾール基を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)、(A)成分及び(B)成分とは異なるその他の活性エネルギー線硬化性化合物(C)、並びに無機酸化物粒子(D)、を含有する。水酸基を有するアクリル系プレポリマーは、ピペリジニル基を有するアクリルモノマー(a1)及び水酸基を有するアクリルモノマー(a2)等をモノマー単位として含む共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の窓開口部には、ガラス板が窓材として配されている。近年、自動車等の車両の軽量化のために、窓材としてガラス板の代わりに透明樹脂板を用いることが提案されている。とりわけ芳香族ポリカーボネート系の透明樹脂板は、耐破壊性、透明性、軽量性、易加工性などに優れるので、車両用窓材として有望な材料である。
【0003】
車両は屋外に晒されるため、車両用窓材には耐候性が要求される。また、車両洗浄時に代表されるように、車両用窓材の表面には、種々の擦れ等の外力が加えられる。そのため、車両用窓材には高い耐摩耗性能が求められる。透明樹脂板は、ガラス板と比較すると表面の硬度が低いために、傷ついたり摩耗したりして透明性が損なわれやすい。このため、車両用窓材として透明樹脂板を用いるには限界があった。
【0004】
そのため、車両窓用として提案されている透明樹脂板の表面には、通常、耐候性及び耐摩耗性を有するハードコート層(保護膜)が積層されている(特許文献1〜4)。耐候性に優れるハードコート層形成用のコーティング剤も提案されている(特許文献5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−78515号公報
【特許文献2】特開2003−311908号公報
【特許文献3】特開2004−27110号公報
【特許文献4】特開2007−186573号公報
【特許文献5】特開2000−159828号公報
【特許文献6】特開2007−238823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、窓材等の車両用部材における耐候性及び耐摩耗性に関する要求レベルが高くなってきており、従来のコーティング組成物により形成された保護膜を有する車両用部材では、耐候性及び耐磨耗性が必ずしも十分でないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、十分に優れた耐候性及び耐摩耗性を有する車両用部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用部材は、成形体と、該成形体の表面上に設けられ、活性エネルギー線硬化性組成物が硬化して形成される保護膜と、を備える。上記活性エネルギー線硬化性組成物は、水酸基を有するアクリル系プレポリマーと、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基とを有するアクリルモノマー(a4)との反応により得ることのできる活性エネルギー線硬化性プレポリマー(A)、ベンゾトリアゾール基と(メタ)アクリロイル基とを有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)、(メタ)アクリロイル基を有し、(A)成分及び(B)成分とは異なるその他の活性エネルギー線硬化性化合物(C)、並びに無機酸化物粒子(D)を含有する。水酸基を有する上記アクリル系プレポリマーは、ピペリジニル基と(メタ)アクリロイル基とを有するアクリルモノマー(a1)、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有するアクリルモノマー(a2)、及びその他のモノマー(a3)をモノマー単位として含む共重合体である。
【0009】
上記本発明に係る車両用部材は、十分に優れた耐候性及び耐摩耗性を有する。
【0010】
活性エネルギー線硬化性プレポリマー(A)の数平均分子量は、3000〜100000であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性プレポリマー(A)の(メタ)アクリロイル基当量は250〜1600であることが好ましい。
【0011】
アクリルモノマー(a3)は、好ましくは、フッ素原子を含有する官能基を有する化合物を含む。この官能基は好ましくはパーフルオロアルキル基である。
【0012】
活性エネルギー線硬化性化合物(C)は、(メタ)アクリロイル基と−(CH25−で表される基とを有する化合物(C1)を含むことが好ましい。化合物(C1)は、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0013】
【化1】

【0014】
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよく、n、m、l、o、p及びqはn+m+l+o+p+q=1〜12を満たす整数を示す。n、m、l、o、p及びqはn+m+l+o+p+q=6〜12を満たす整数であることが好ましい。
【0015】
活性エネルギー線硬化性化合物(C)は、(メタ)アクリロイル基を有し−(CH25−で表される基を有しない化合物(C2)をさらに含むことが好ましい。化合物(C2)は、好ましくは、平均で2〜15個の(メタ)アクリロイル基と、ウレタン基とを有するウレタン化合物である。化合物(C2)の数平均分子量は500〜10000であることが好ましい。
【0016】
活性エネルギー線硬化性化合物(C)は、(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンオイル(C3)をさらに含むことが好ましい。
【0017】
無機酸化物粒子(D)は、SiO粒子であることが好ましい。
【0018】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量を基準として、(A)成分の割合が1〜50質量%、(B)成分の割合が1〜20質量%、(C)成分の割合が30〜95質量%であることが好ましい。
【0019】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量を基準として、(A)成分の割合が1〜50質量%、(B)成分の割合が1〜20質量%、(C1)成分の割合が5〜60質量%、(C2)成分の割合が20〜80質量%、(C3)成分の割合が0.01〜2質量%であることが好ましい。
【0020】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して、無機酸化物粒子(D)の量が0.1〜20重量部であることが好ましい。
【0021】
別の側面において、本発明は上記車両用部材の製造方法に関する。本発明に係る製造方法は、成形体の表面上に、上記活性エネルギー線硬化性組成物の膜を形成する工程と、形成された膜を、活性エネルギー線の照射により硬化して、硬化膜を形成させる工程と、を備える。
【0022】
本発明に係る製造方法によれば、十分に優れた耐候性及び耐磨耗性を有する車両用部材が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、十分に優れた耐候性及び耐摩耗性を有する車両用部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両用部材の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、「アクリロイルオキシ又はメタクリロイルオキシを意味する。
【0026】
本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性プレポリマー(A)と、ベンゾトリアゾール基を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)と、(A)成分及び(B)成分とは異なるその他の活性エネルギー線硬化性化合物(C)と、無機酸化物粒子(D)とを含有する。各成分の詳細について以下に説明する。
【0027】
プレポリマー(A)は、水酸基を有するアクリル系プレポリマーと、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基を有するアクリルモノマー(a4)との反応により得ることのできるものである。アクリル系ポリマーの水酸基とアクリルモノマー(a4)のイソシアネート基との反応により、プレポリマー(A)が生成する。
【0028】
プレポリマー(A)を得るために用いられる上記アクリル系プレポリマーは、ピペリジニル基と(メタ)アクリロイル基とを有するアクリルモノマー(a1)、及び水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有するアクリルモノマー(a2)をモノマー単位として含む共重合体である。
【0029】
プレポリマー(A)は、アクリルモノマー(a1)に由来するピペリジニル基と、アクリルモノマー(a4)に由来する(メタ)アクリロイル基とを有する。プレポリマー(A)に導入されたピペリジニル基の作用により、形成される硬化膜に特異的に優れた耐候性が付与される。硬化膜が紫外線に曝されると、硬化膜を構成する高分子鎖の化学結合が切断されてラジカルが生成する。生成したラジカルは、硬化膜中の化学結合の切断を促進する。プレポリマー(A)に導入されたピペリジニル基は、前記ラジカルと反応して、これを不活性化し、硬化膜中の化学結合の切断の進行を抑制すると考えられる。
【0030】
アクリルモノマー(a1)は、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及び4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンから選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0031】
アクリルモノマー(a2)により、アクリルモノマー(a4)との反応点として機能する水酸基が、アクリル系プレポリマーに導入される。アクリルモノマー(a2)は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(ヒドロキシ基二官能)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシスチレン、ヒドロキノンモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、および、これらをエチレンオキシド変性(EO変性)、プロピレンオキシド変性(PO変性)若しくはカプロラクトン変性(CL変性)した化合物等の単官能(メタ)アクリレート、並びに、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、および、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0032】
プレポリマー(A)を得るために用いられる上記アクリル系プレポリマーは、アクリルモノマー(a1)及びアクリルモノマー(a2)とは異なる、メタ(アクリロイル)基等のラジカル重合性官能基を有するその他のモノマー(a3)をモノマー単位としてさらに含んでいてもよい。モノマー(a3)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、スチレン及びメチルスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0033】
モノマー(a3)は、フッ素原子を含有する官能基を有する化合物を含むことが好ましい。これにより、硬化膜の耐候性を更に向上することができる。その理由は主として以下の2つであると考えられる。
(1)C−H結合よりも結合が強い、すなわち結合エネルギーが大きいC−F結合が組込まれることにより、硬化膜中の化学結合が切断されにくくなる。
(2)組成物の膜が硬化する際、プレポリマー(A)に導入されたフッ素原子を含有する官能基が、膜の表面及びその近傍に集まって分布し易いことから、プレポリマー(A)が有するピペリジニル基も膜表面及びその近傍に集中して存在し易くなる。その結果、硬化膜内部の劣化がより効果的に防止される。
【0034】
フッ素原子を含有する官能基は、例えば、フッ素置換されたアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり得る。係る官能基の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル基及びペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0035】
モノマー(a3)として用いられる、フッ素原子を含有する官能基を有する化合物は、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及び1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である。フッ素原子を含有する官能基及び水酸基の両方を有する化合物は、アクリルモノマー(a2)ではなく、モノマー(a3)に分類される。
【0036】
水酸基を有するアクリル系プレポリマーは、例えば、アクリルモノマー(a1)と、アクリルモノマー(a2)と、モノマー(a3)とをラジカル共重合する方法により得ることができる。
【0037】
共重合の際、モノマー(a1)、(a2)及び(a3)の合計量を基準として、アクリルモノマー(a1)の割合が10〜80質量%、アクリルモノマー(a2)の割合が10〜80質量%、モノマー(a3)の割合が0.1〜20質量%であることが好ましく、アクリルモノマー(a1)の割合が20〜70質量%、アクリルモノマー(a2)の割合が20〜70質量%、モノマー(a3)の割合が1〜15質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
アクリルモノマー(a1)の共重合比が80質量%を超えると、水酸基を有するアクリルモノマー(a2)の割合が相対的に少なくなる。その結果、プレポリマー(A)を得るためにイソシアネート基を有するアクリル系モノマー(a4)と反応するべき水酸基が少なくなり、プレポリマー(A)の(メタ)アクリロイル基当量が大きくなる。プレポリマー(A)の(メタ)アクリロイル基当量が大きくなると、硬化膜の耐摩耗性向上の効果が小さくなる傾向がある。一方、アクリルモノマー(a1)の共重合比が10質量%未満であると、プレポリマー(A)中のピペリジニル基の量が少なくなり、優れた耐候性が発現されるために必要とされるプレポリマー(A)の量が多くなる傾向がある。
【0039】
アクリルモノマー(a2)の共重合比が80質量%を超えると、ピペリジニル基を有するアクリルモノマー(a1)の共重合比が相対的に小さくなり、耐候性向上の効果が小さくなる傾向がある。一方、アクリルモノマー(a2)の共重合比が10質量%未満であると、プレポリマー(A)の(メタ)アクリロイル基当量が大きくなり、硬化膜の耐摩耗性向上の効果が低下する傾向がある。
【0040】
ラジカル共重合は、各モノマーと、重合開始剤とを含有する反応液中で行われる。重合開始剤は、モノマーに対する溶解性、重合温度、目的とする分子量等に応じて適宜選択される。重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、などのアゾ系開始剤、ポリジメチルシロキサンまたはポリエチレングリコール鎖を有するマクロアゾ開始剤、過酸化ジイソブチル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ベンゾイル、2−エチルヘキサン酸t−ブチル及び1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−2−メチルシクロヘキサン等の過酸化物が挙げられる。
【0041】
重合開始剤の量は、アクリルモノマー(a1)、アクリルモノマー(a2)及びモノマー(a3)の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましい。重合開始剤の量が0.1重量部未満であると、プレポリマー(A)の分子量が大きくなり、これを含有する組成物の粘度が高くなる。そうすると、組成物を塗料として使用する際、塗工への適性が低下するおそれがある。一方、重合開始剤の量が10重量部よりも多いと、得られるアクリル系プレポリマーの分子量が小さくなり、また、共重合反応の生成物において、水酸基を有しない成分の割合が多くなる。その結果、プレポリマー(A)とアクリルモノマー(a4)との反応性生物中に、(メタ)アクリロイル基を有しない成分が混入し易くなる。そうすると、組成物の硬化性が低下して、硬化膜の硬度等が低下する傾向がある。
【0042】
ラジカル共重合は無溶剤で行っても、溶剤中で行っても構わない。使用できる溶剤は、たとえば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸シクロヘキシル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、及びダイアセトンアルコールが挙げられる。
【0043】
ラジカル共重合時の温度は、溶剤の沸点や開始剤の組合せによって制限される場合もあるが、通常40〜150℃、好ましくは60〜100℃である。
【0044】
プレポリマー(A)を得るために用いられるアクリル系プレポリマーの水酸基価は、30〜300(mgKOH/g)であることが好ましく、70〜270(mgKOH/g)であることがより好ましい。この水酸基価が小さいと、プレポリマー(A)に導入される(メタ)アクリロイル基が少なくなる。すなわち、プレポリマー(A)の(メタ)アクリロイル基当量が大きくなる。そうすると、形成される硬化膜の耐摩耗性向上の効果が小さくなく傾向がある。一方、アクリル系プレポリマーの水酸基価が大きいと、ピペリジニル基を有するアクリルモノマー(a1)の共重合比が少なくなり、耐候性向上の効果が小さくなる傾向がある。
【0045】
プレポリマー(A)を得るために、水酸基を有するアクリル系プレポリマーと反応させるアクリルモノマー(a4)は、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート及び2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート等の単官能(メタ)アクリレート、並びに、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0046】
アクリル系プレポリマーとアクリルモノマー(a4)との反応の条件は、化合物の組合せに応じて適宜調整される。それぞれが有する二重結合が反応しないように、反応温度は好ましくは20〜110℃、より好ましくは50〜100℃である。
【0047】
二重結合が反応しないように、反応時に重合禁止剤が添加されていてもよい。重合禁止剤としては、たとえば、ヒドロキノン(HQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、t−ブチルカテコール(TBC、及び4−メトキシ−1−ナフトール等のフェノール若しくはナフトール誘導体、フェノチアジン誘導体、並びにニトロソアミン塩が挙げられる。また、反応系中に酸素または空気を吹き込むことでも同様の重合禁止効果が得られる。重合禁止剤が着色等の問題を引き起こす場合は、重合禁止剤は少量に抑え、酸素または空気を吹き込みながら反応を行う方が好ましい。
【0048】
プレポリマー(A)の数平均分子量は3000〜100000であることが好ましく、5000〜50000であることがより好ましい。数平均分子量が小さいプレポリマー(A)中には、(メタ)アクリロイル基を有しない成分が多く混入し易い。そうすると、活性エネルギー線硬化性組成物としての硬化性が低下し、硬化膜の硬度等が低下する傾向がある。一方、プレポリマー(A)の数平均分子量が過度に大きくなると、組成物の粘度が高くなりすぎて、組成物を塗料として使用する際の塗工適性が低下するおそれがある。なお、アクリルモノマー(a4)の分子量はプレポリマー(A)の数平均分子量にはほとんど影響を及ぼさない場合が多いため、プレポリマー(A)の前駆体というべき、水酸基を有するアクリル系プレポリマーの数平均分子量も、3000〜100000であることが好ましい。本明細書において、数平均分子量は、GPC測定によって求められる標準ポリスチレン換算の値である。
【0049】
プレポリマー(A)のピペリジニル基の官能基当量(ピペリジニル基当量)は、200〜7000であることが好ましく、300〜4000であることがより好ましい。また、プレポリマー(A)は、(メタ)アクリロイル基の官能基当量((メタ)アクリロイル基当量)は250〜1600であることが好ましく、300〜1000であることがより好ましい。ここでいう官能基当量とは、各官能基1モル当たりのプレポリマー(A)の質量(g)を意味する。
【0050】
活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、ベンゾトリアゾール基と(メタ)アクリロイル基とを有する。ベンゾトリアゾール基は、紫外線のエネルギーを熱エネルギーに変換し、硬化膜中の化学結合の切断を抑制する機能を担う。ベンゾトリアゾール基は、例えば下記化学式で表される1価の基である。
【0051】
【化2】

【0052】
化合物(B)は、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−(メタ)アクリロイルオキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−(メタ)アクリロイルオキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及び2−(2’−(メタ)アクリロイルオキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0053】
活性エネルギー線硬化性化合物(C)としては、(メタ)アクリロイル基を有する種々の化合物が用いられる。好ましくは、−(CH25−で表される基と、(メタ)アクリロイル基とを有する活性エネルギー線硬化性化合物(C1)が用いられる。−(CH25−で表される基は、好ましくは、カプロラクトンに由来する、下記化学式で表される2価の基として導入される。
【0054】
【化3】

【0055】
化合物(C1)は、既に挙げた一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。n、m、l、o、p及びqはn+m+l+o+p+q=1〜12を満たす整数を示す。n+m+l+o+p+qが1未満であると、長期の耐候性試験により塗膜が剥がれ落ちやすくなってしまう傾向がある。同様の観点から、n、m、l、o、p及びqはn+m+l+o+p+qは6以上であることが好ましい。一方、n+m+l+o+p+qが12を超えると、化合物(C1)中の(メタ)アクリロイル基の量が増加し、形成される硬化膜の耐摩耗性が低下し、硬化膜の硬度が保たれにくくなるという傾向がある。一般式(1)で表される化合物は、例えば、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンとの付加物に、(メタ)アクリル酸をさらに付加する方法により得ることができる。
【0056】
本実施形態に係る硬化性組成物は、化合物(C)として、−(CH25−で表される基を有しない活性エネルギー線硬化性化合物(C2)をさらに含有してもよい。
【0057】
化合物(C2)としては、数平均分子量が500〜10000のオリゴマーが好ましい。化合物(C2)は、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル化マレイン酸変性ポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種のオリゴマーであることが好ましい。これらの中でも、ポリウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0058】
上記オリゴマーの一分子あたりの(メタ)アクリロイル基の数は、平均で2〜15個であることが好ましく、4〜12個であることがさらに好ましい。(メタ)アクリロイル基の数が2個未満であると硬化膜の硬度が低下して、耐擦傷性が低下する傾向がある。(メタ)アクリロイル基の数が15個よりも多いと、硬化収縮が大きくなるために、硬化膜の歪みが大きくなる。歪が大きくなると、耐候性試験時の硬化膜のクラックや剥離が発生しやすくなる。クラックや剥離が発生すると、大きく外観が損なわれる。
【0059】
本実施形態に係る硬化性組成物は、化合物(C)として、(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンオイル(C3)をさらに含有してもよい。シリコーンオイル(C3)は、硬化膜の耐摩耗性の更なる向上に寄与する。商業的に入手可能なシリコーンオイル(C3)としては、例えば、X−22−164、X−22−164AS、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−164E、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2475及びX−22−2458(いずれも信越化学社製)が挙げられる。
【0060】
本実施形態に係る硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)、(B)及び(C)の合計量を基準として、(A)成分の割合が1〜50質量%、(B)成分の割合が1〜20質量%、(C)成分の割合が30〜95質量%であることが好ましく、(A)成分:(B)成分:(C)成分=2〜45:2〜15:40〜90(質量%)であることがより好ましい。
【0061】
(C)成分が化合物(C1)、(C2)及び(C3)を含む場合、硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)、(B)及び(C)の合計量を基準として、(A)成分の割合が1〜50質量%、(B)成分の割合が1〜20質量%、(C1)成分の割合が5〜60質量%、(C2)成分の割合が20〜80質量%、(C3)成分の割合が0.01〜2質量%であることが好ましく、(A)成分:(B)成分:(C1)成分:(C2)成分:(C3)成分=2〜45:2〜15:10〜50:30〜70:0.05〜1(質量%)であることがより好ましい。
【0062】
本実施形態に係る硬化性組成物は、無機酸化物粒子(D)をさらに含有することが硬化膜の高硬度化及び耐摩耗性向上の点から重要である。無機酸化物粒子(D)の量は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)、(B)及び(C)の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.5〜15重量部であることがより好ましい。
【0063】
無機酸化物粒子(D)としては、SiO粒子が好ましく、コロイダルシリカがより好ましい。具体的には、MEK−ST、IPA−ST、PGM−ST(全て日産化学(株)製オルガノシリカゾル)といった、アルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒に粒径が10〜100nm程度のコロイダルシリカを分散させたコロイド溶液が挙げられる。
【0064】
硬化性組成物の硬化に紫外線又は可視光を用いる場合は、本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)をさらに含有する。
【0065】
光重合開始剤の量は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)、(B)及び(C)の合計量100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0066】
光重合開始剤(光ラジカル発生剤)は、たとえば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタニウム及び1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン−2−O−ベンゾイルオキシムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0067】
硬化の際に活性エネルギー線に電子線を用いる場合は、上記のような光重合開始剤(光ラジカル発生剤)の添加は必ずしも必要ない。
【0068】
本実施形態に係る硬化性組成物は、さらに添加剤として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、染料、顔料、酸化防止剤、重合禁止剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤及び帯電防止剤等を含有していてもよい。硬化性組成物は溶剤を含有していてもよい。
【0069】
本実施形態に係る硬化性組成物は、車両用部材において、各種成形体の表面を被覆する保護膜としての硬化膜を形成するために用いることができる。図1は、保護膜としての硬化膜を備える車両用部材の一実施形態を示す断面図である。図1に示す車両用部材10は、板状の成形体1と、成形体1の表面上に設けられた保護膜(硬化膜)5とを備える。車両用部材10は、車両用窓材として特に好適に用いられる。硬化膜5の膜厚は、通常1〜50μm程度である。保護膜5は、成形体1の表面に直接接して形成されている。保護膜5と成形体1との間にプライマー層が設けられていてもよいが、保護膜5は成形体1との密着性に優れるため、プライマー層は必ずしも必要とされない。
【0070】
成形体1としては、例えば、ガラス、セラミック、ポリカーボネート、ポリエステル、ウレタン、アクリル、ポリアセテートセルロース、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、各種金属(ステンレス等)の成形体が挙げられる。特に、ガラスやセラミックに比べて耐候性に劣る樹脂成形体表面を被覆するために本実施形態に係る硬化性組成物を使用すると、耐候性を付与することができ、ガラス基材にはない樹脂成形体特有の軽さ、柔らかさなどの特徴を生かすことができる。成形体1がポリカーボネート樹脂成形体等の透明樹脂成形体であると、車両用部材1をガラス基材に代えて窓材として用いるのに特に有用である。
【0071】
成形体1は、フィルム、シート及び板のような平らな形状を有している。ただし、保護される成形体は、高さ又は厚みの大きな立体的な形状を有していてもよい。図1の車両用部材10のように、保護膜5は成形体1の片面のみに形成されていてもよいし、成形体1の両面に保護膜が形成されていてもよい。保護膜は、成形体表面の一部を被覆してもよいし、全表面を被覆してもよい。
【0072】
車両用部材5は、成形体1の表面上に、本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性組成物の膜を形成する工程と、形成された膜を、活性エネルギー線の照射により硬化して、保護膜5を形成させる工程とを備える方法により得ることができる。硬化性組成物の膜は、硬化性組成物を塗布することにより形成させることができる。硬化性組成物が溶剤を含有する場合、活性エネルギー線の照射に先立ち、成形体1に塗布された硬化性組成物から、加熱により溶剤が除去される。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の記載において、「部」、「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0074】
各製造例及び実施例中において示される略称及び製品名の内容は以下の通りである。
「LA87」:3−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2−メチル−1−プロペン−3−オン((株)ADEKA社製、アデカスタブLAシリーズ)
「FAMAC−4」:2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート(ユニマテック(株)社製)
「MMA」:メチルメタクリレート
「4HBA」:4−ヒドロキシブチルアクリレート
「カレンズAOI」:(昭和電工(株)製、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート)
「RUVA93」:2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)社製)
「DPCA60」:ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンとの付加物の(メタ)アクリレート化物(一般式(1)において、n+m+l+o+p+q=6である化合物)
「UA−1100H」:ウレタンオリゴマー(新中村化学(株)社製、Mn=764、官能基数=6)
「X−22−2458」:反応性変性シリコーンオイル(信越化学社製)
「PGM−ST」:コロイダルシリカ(日産化学(株)社製)
「イルガキュア184」:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製)
「AIBN」:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)
「EHQ」:ヒドロキノンモノメチルエーテル(和光純薬製)
「DBTDL」:ジブチル錫ジラウリレート(和光純薬製)
【0075】
(製造例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置及びガス導入管を備えた反応容器の反応槽に、シクロヘキサノン250部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら80℃で1時間攪拌した。滴下槽にモノマー(a1)としてLA87を100部、モノマー(a2)として4HBAを125部、モノマー(a3)としてMMA25部、AIBN7.5部、及びシクロヘキサノン80.9部を仕込み、滴下槽内を攪拌しながら2時間かけて反応槽に滴下した。滴下終了後、滴下槽をシクロヘキサノン34.7部で洗浄し、洗浄液を反応槽に入れた。さらに2時間反応させた後、AIBN2.5部をシクロヘキサノン22.5部に溶かした溶液を3等分し、30分おきに3回に分けて添加した。3回目の添加の1時間後に反応液を冷却して取り出し、水酸基を有するアクリル系プレポリマーのシクロヘキサノン溶液を得た。固形分は39.56%であった。プレポリマーの水酸基価は185(mgKOH/g)であった。
【0076】
上記のアクリル系プレポリマーのシクロヘキサノン溶液137.6部、重合禁止剤としてMEHQ0.05部、触媒としてDBTDL0.17部、及びシクロヘキサノン39.6部を反応槽に仕込み、ドライエアーを吹き込みながら60℃で1時間攪拌した。滴下槽にモノマー(a4)として、アクリル系プレポリマー中の水酸基1モルに対してイソシアネート基1モルに相当する量のカレンズAOIを入れ、1時間かけて反応槽に滴下した。滴下終了後、3時間後に反応液のIR測定を行ったところ、イソシアネート基に由来するピークが消失していたので、反応液を冷却して取り出した。固形分が41.53%の活性エネルギー線硬化性プレポリマーA1の溶液を得た。
【0077】
活性エネルギー線硬化性プレポリマーA1は、数平均分子量Mn:10000、ピペリジニル基当量:842、(メタ)アクリルロイル基当量:430であった。数平均分子量Mnは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)を使用し、ポリスチレン換算で求めた。
【0078】
(製造例2〜製造例3)、(比較製造例1〜2)
モノマー(a1)〜(a4)の種類や量を表1に示すように変更した以外は製造例1と同様にして活性エネルギー線硬化性プレポリマーA2〜A5の溶液を得た。
【0079】
【表1】

【0080】
(実施例1)
製造例1で得た活性エネルギー線硬化性プレポリマーA1の溶液(固形分10重量部を含む)、RUVA93:10重量部、DPCA60:40重量部、UA1100H:40重量部、PGM−ST:7.5重量部、及びイルガキュア184:3重量部を混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0081】
市販のポリカーボネート板(タキロン(株)製)に前記の活性エネルギー線硬化性組成物をバーコーターによって塗工した。塗膜を、熱風乾燥オーブンを用いて120℃で3分間の加熱により乾燥した。その後速やかにUV照射装置を用いたピーク照度750mW/cm、積算光量1000mJ/cmの条件のUV照射により塗膜を硬化して、膜厚約10μmの硬化膜を得た。硬化膜の耐摩耗性及び耐候性を後述する方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0082】
(実施例2〜8)、(比較例1〜6)
実施例1と同様にして表2〜4に示す処方に従って、活性エネルギー線硬化性組成物及び硬化物を得、同様にして評価した。
【0083】
1)耐摩耗性
ASTM D−1044に準じた方法により、硬化膜の耐摩耗性を評価した。具体的には、テーバー摩耗試験機(TABER社製)を用いて、摩耗輪(CS−10F)2輪使用、500g荷重にて500回転の磨耗試験を行い、試験前後のヘイズ変化(ΔH)を、ヘイズメーター(日本電色社製 NDH2000)を使用して測定した。ΔHが小さいものほど耐摩耗性が良好であると評価される。
【0084】
2)耐候性
JIS K5400に準じて、カーボンアーク式サンシャインウェザメーターにて5000時間の促進試験を行った。試験中に適宜硬化膜の状態を目視により観察し、割れおよび自然剥離が確認された時間をそれぞれ記録した。この時間が長いものほど、耐候性に優れる。硬化膜の耐候性を下記の基準により判定した。
AA:5000時間を超えても、割れと自然剥離のどちらも発生しなかった
A:割れおよび自然剥離の発生時間のうち短い方が、4000時間以上5000時間以下
B:割れおよび自然剥離の発生時間のうち短い方が、3000時間以上4000時間未満
C:割れおよび自然剥離の発生時間のうち短い方が、3000時間未満
【0085】
加えて、5000時間を越えても、割れも自然剥離もどちらも発生しなかった硬化膜を目視により観察し、表面汚染が無いものを「A」、表面汚染が有るものを「C」と判定した。
【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
表1〜3に示される結果から、本発明によれば、十分に優れた耐候性及び耐摩耗性を有する車両用部材が提供されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る車両用部材は、耐候性及び耐磨耗性に優れることから、自動車等の各種車両用窓材等として有用なものである。
【符号の説明】
【0091】
1…成形体、5…保護膜(硬化膜)、10…車両用部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体と、該成形体の表面上に設けられ、活性エネルギー線硬化性組成物が硬化して形成される保護膜と、を備える車両用部材であって、
前記活性エネルギー線硬化性組成物が、
水酸基を有するアクリル系プレポリマーと、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基とを有するアクリルモノマー(a4)との反応により得ることのできる活性エネルギー線硬化性プレポリマー(A)、
ベンゾトリアゾール基と(メタ)アクリロイル基とを有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)、
(メタ)アクリロイル基を有し、(A)成分及び(B)成分とは異なるその他の活性エネルギー線硬化性化合物(C)、並びに
無機酸化物粒子(D)、を含有し、
水酸基を有する前記アクリル系プレポリマーが、ピペリジニル基と(メタ)アクリロイル基とを有するアクリルモノマー(a1)、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有するアクリルモノマー(a2)、及びその他のモノマー(a3)をモノマー単位として含む共重合体である、
車両用部材。
【請求項2】
活性エネルギー線硬化性プレポリマー(A)の数平均分子量が3000〜100000である、請求項1に記載の車両用部材。
【請求項3】
活性エネルギー線硬化性プレポリマー(A)の(メタ)アクリロイル基当量が250〜1600である、請求項1又は2に記載の車両用部材。
【請求項4】
モノマー(a3)が、フッ素原子を含有する官能基を有する化合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用部材。
【請求項5】
フッ素原子を含有する前記官能基がパーフルオロアルキル基である、請求項4に記載の車両用部材。
【請求項6】
活性エネルギー線硬化性化合物(C)が、(メタ)アクリロイル基と−(CH25−で表される基とを有する化合物(C1)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用部材。
【請求項7】
(メタ)アクリロイル基と−(CH25−で表される基とを有する化合物(C1)が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項6に記載の車両用部材。
【化1】


[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよく、n、m、l、o、p及びqはn+m+l+o+p+q=1〜12を満たす整数を示す。]
【請求項8】
n、m、l、o、p及びqがn+m+l+o+p+q=6〜12を満たす整数である、請求項7に記載の活車両用部材。
【請求項9】
活性エネルギー線硬化性化合物(C)が、(メタ)アクリロイル基を有し−(CH25−で表される基を有しない化合物(C2)をさらに含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載の車両用部材。
【請求項10】
(メタ)アクリロイル基を有し−(CH25−で表される基を有しない化合物(C2)が、平均で2〜15個の(メタ)アクリロイル基と、ウレタン基とを有するウレタン化合物である、請求項9に記載の車両用部材。
【請求項11】
(メタ)アクリロイル基を有し−(CH25−で表される基を有しない化合物(C2)の数平均分子量が500〜10000である、請求項9又は10に記載の車両用部材。
【請求項12】
活性エネルギー線硬化性化合物(C)が、(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンオイル(C3)をさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の車両用部材。
【請求項13】
無機酸化物粒子(D)がSiO粒子である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の車両用部材。
【請求項14】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量を基準として、(A)成分の割合が1〜50質量%、(B)成分の割合が1〜20質量%、(C)成分の割合が30〜95質量%である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の車両用部材。
【請求項15】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量を基準として、(A)成分の割合が1〜50質量%、(B)成分の割合が1〜20質量%、(C1)成分の割合が5〜60質量%、(C2)成分の割合が20〜80質量%、(C3)成分の割合が0.01〜2質量%である、請求項12に記載の車両用部材。
【請求項16】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部に対して、無機酸化物粒子(D)の量が0.1〜20重量部である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の車両用部材。
【請求項17】
前記成形体の表面上に、前記活性エネルギー線硬化性組成物の膜を形成する工程と、
形成された前記膜を、活性エネルギー線の照射により硬化して、保護膜を形成させる工程と、
を備える、請求項1〜16のいずれか一項に記載の車両用部材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−189562(P2011−189562A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56047(P2010−56047)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】