車両用開閉体のヒンジ構造
【課題】 開閉体を開放した際の外観を向上させるとともに、開口部への張り出しを減少させた車両用開閉体のヒンジ構造を提供する。
【解決手段】開閉体たるトランクリッド5を支持する長尺のヒンジ部材10が車体の開口部4に回動自在に設けられ、トランクリッド5の開閉動作に伴いヒンジ部材10が回動する車両用開閉体のヒンジ構造1であって、ヒンジ部材10の延在方向の断面は、開口部4のコーナー部4aの形状に倣って形成され、ヒンジ部材10は、コーナー部4a側に設けられるとともに、開口部4の内方側からヒンジ部材10に係合されるカバー部材30を有していることを特徴とする。
【解決手段】開閉体たるトランクリッド5を支持する長尺のヒンジ部材10が車体の開口部4に回動自在に設けられ、トランクリッド5の開閉動作に伴いヒンジ部材10が回動する車両用開閉体のヒンジ構造1であって、ヒンジ部材10の延在方向の断面は、開口部4のコーナー部4aの形状に倣って形成され、ヒンジ部材10は、コーナー部4a側に設けられるとともに、開口部4の内方側からヒンジ部材10に係合されるカバー部材30を有していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のドアやトランクリッド等の車両用開閉体を回動自在に車体に支持する車両用開閉体のヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の車両用開閉体のヒンジ構造の設置状態を示す図であり、開閉体を開放したときのトランクリッドのコーナー部の拡大斜視図である。図10は、従来の車両用開閉体のヒンジ構造の設置状態を示す図であり、開閉体を開放したときのトランクリッドのコーナー部の拡大斜視図である。図11は、従来の車両用開閉体のヒンジ構造を示す図であり、ハーネスを備えたヒンジ部材の要部拡大断面図である。
【0003】
従来、自動車の車体後部には、図9及び図10に示すように、荷物を収納するトランクルーム110が設けられている。トランクルーム110の開口部120は、トランクリッド等の開閉体によって開閉されて、荷物が積載されるようになっている。開閉体は、例えば、長尺のヒンジ部材210,310を介して車体100に回動自在に取り付けられている。一対のヒンジ部材210,310は、先端部側が開閉体の左右に固定され、基端部側がトランクルーム110の左右のコーナー部121を通って車体100に軸支されている。
【0004】
トランクルーム110の開口部120の周縁には、ゴム製のウェザーストリップ500が設けられている。ウェザーストリップ500が取り付けられた開口部120は、コーナー部121が円弧状に形成されている。また、車両のドアやトランクリッド等の開閉体には、ランプやロック装置等の各種装置を設置したものがある。それらの各種装置は、車体側に設置された電源等に接続するためのハーネスや、トランクリッドを開放させるためのワイヤ等の線状部材を設けたものがある。
【0005】
従来、開閉体の各種装置にハーネスやワイヤ等の線状部材を配線する際には、図9〜図11に示すように、ドアやトランクリッドのヒンジ機構を構成する長尺のヒンジ部材210,310,450に沿って、前記線状部材を配線することが行われている。
例えば、図9に示すヒンジ構造200では、断面ロ字状のヒンジ部材210の外側面にハーネス220,230を保持するためのクリップ240を設けて、そのクリップ240によってハーネス220,230をヒンジ部材210の外側面に取り付けている。
【0006】
また、図10に示すヒンジ構造300は、ヒンジ部材310内にハーネス320を収納できるように、ヒンジ部材310を断面U字状に形成して、ハーネス320をヒンジ部材310内に収納させてテープ330等で保持している。
【0007】
また、特許文献1には、図11に示すように、ハーネス430を収容する断面コ字状の長尺のプロテクタ本体410を、長尺のヒンジ部材450に沿って配置し、さらに、このプロテクタ本体410とヒンジ部材450の周囲を、断面コ字状のカバー部材470と蓋部材420とで覆ったヒンジ構造400が開示されている。なお、長尺のヒンジ部材450は、その延在方向に沿って凹溝451を有しており、この凹溝451の内部には他のハーネス440が収容されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−333723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図9に示すようなヒンジ構造200では、ヒンジ部材210の外側面にハーネス220,230を設置しているので、ハーネス220,230の設置分S200だけ余分にヒンジ部材210がトランクルーム110側へ張り出してしまうという問題点があった。
ヒンジ部材210のトランクルーム110への出っ張りを少なくするために、開口部120の車幅方向の縁に近付けてヒンジ部材210を配置した場合には、コーナー部121が円弧状に形成されているので、ヒンジ部材210から開口部120の前方向の縁までの距離L200が長くなって前方向の隙間が広がるという問題点があった。
また、このヒンジ構造200では、ハーネス220,230がヒンジ部材210の外側面に剥き出し状態で設置されているので、見映えも悪いという問題点があった。
【0010】
また、図10に示すようなヒンジ構造300では、断面U字状のヒンジ部材310がハーネス320を覆うカバーの役目をするので、ハーネス320が車両後方側から見えなくなるため、見映えが向上する。しかしながら、ハーネス320を収納しているので、ヒンジ部材310が大型化するという問題点があった。
また、ヒンジ部材310がコーナー部121の形状に追従した形状に形成されていないので、開口部120の前側の縁に接近させて配置すると、開口部120の前側の縁とヒンジ部材310との隙間L300が狭くなるものの、開口部120の側部側の縁とヒンジ部材310との隙間S300が広くなるという問題点があった。
このため、トランクルーム110は、ヒンジ部材310の大型化と隙間L300,S300の広がりとによって、ヒンジ部材310の基端部側が収納されるライニング130の出っ張りS400が大きくなり、荷物の収納容量が小さくなるという問題点があった。
【0011】
ドアやトランクルームの開口部120の構造においては、当該開口部120を広く利用するために、開口部120のコーナー部121にドアヒンジ構造200,300をなるべく近づけて配置することが望まれている。
しかし、図11に示すドアヒンジ構造400(特許文献1)では、ヒンジ部材470の断面が大型化するために開口部内に張り出し、開口部のスペースが減少してしまうという問題があった。
また、開口部のコーナー部は、多くの場合曲線状(円弧状)に形成されているが、従来のドアヒンジ構造400は、角張った形状に形成されているので、開口部のコーナー部にドアヒンジ構造400を近づけると、両者のクリアランスにばらつきが生じ、見栄えが悪くなるという問題があった。
【0012】
本発明は、かかる問題に鑑みて創案されたものであり、開閉体を開放した際の外観を向上させるとともに、開口部への張り出しを減少させた車両用開閉体のヒンジ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、開閉体を支持する長尺状のヒンジ部材が車体の開口部に回動自在に設けられ、前記開閉体の開閉動作に伴い前記ヒンジ部材が回動する車両用開閉体のヒンジ構造であって、前記ヒンジ部材の延在方向の断面は、前記開口部のコーナー部の形状に倣って形成され、前記ヒンジ部材は、前記コーナー部側に設けられるとともに、前記開口部の内方側から前記ヒンジ部材に係合されるカバー部材を有していることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、ヒンジ構造は、ヒンジ部材の延在方向の断面が、開口部のコーナー部の形状に倣って形成されているので、開口部のコーナー部とこのコーナー部に対向するヒンジ部材の対向面とのクリアランスが略一定になり、ドアヒンジ構造を全体的に(均一に)コーナー部へ近づけることができるため、開口部への張り出しを小さくできる。その結果、開口部のスペースを極力大きく確保して、荷物がヒンジ部材等に当接するのを抑制することができる。また、ヒンジ部材は、コーナー部側に寄せて設けられて、カバー部材が開口部の内方側からヒンジ部材に係合されるので、開閉体を開放した際に、ヒンジ部材の内方向側がカバー部材によって隠れるため、開閉体を開放した際の外観を向上させることができる。
【0015】
また、前記ヒンジ部材は、前記カバー部材が取り付けられるヒンジ本体と、一端が前記ヒンジ本体に固定され、他端が前記車体に回動自在に取り付けられるアーム部材と、を有しているのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、ヒンジ部材は、ヒンジ本体とアーム部材とを別体で構成することによって、ヒンジ本体の成形自由度を向上させて、コーナー部の形状に倣った形状への成形が容易となる。このようにヒンジ本体とアーム部材とが別体であることにより、例えば、アーム部材に駆動力を作用させる構成を用いることによって、開閉体を開閉する自動開閉装置に容易に適用させることができる。
【0017】
また、ヒンジ部材には、当該ヒンジ部材に沿って線状部材が配設され、前記線状部材は、樹脂材料からなる前記カバー部材に保持されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、強度を必要としないカバー部材は、成形性のよい樹脂材料で成形されているので、成形自由度を高めることができるため、当該カバー部材をヒンジ部材に係止させる係止手段を一体形成することが容易になる。カバー部材は、線状部材を保持する構成とした場合でも、極力コンパクトに成形できるため、開口部側への張り出しを極力抑制した状態に設けることができる。
【0019】
また、前記ヒンジ部材には、当該ヒンジ部材に沿って線状部材が配設され、前記線状部材は、金属材料からなる前記ヒンジ部材に保持されているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、開閉体を保持するために強度を必要とするヒンジ部材は、金属材料で構成されるので、開閉体を強固に保持することができる。また、車体に予め取り付けられたヒンジ部材に、予め線状部材を保持させることが可能となるので、カバー部材の取り付けを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、開閉体を開放した際の外観を向上させるとともに、開口部への張り出しを減少させた車両用開閉体のヒンジ構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態においては、自動車のトランクリッドに車両用開閉体のヒンジ構造(以下、単に「ヒンジ構造」という。)を適用した場合を例にとって説明する。なお、本実施形態において、方向を説明する場合は、自動車の前後左右上下を基準として説明する。
【0023】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について図1〜図3を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を有する自動車を後斜め上方から見た斜視図である。
図1に示すように、自動車2は、車体後部に荷物を収納するトランクルーム3と、トランクルーム3の開口部4を開閉するトランクリッド(開閉体)5と、このトランクリッド5を車体2aに回動自在に連結するヒンジ構造1とを有している。
本第1実施形態に係るヒンジ構造1は、車体2aに対して開閉体たるトランクリッド5を回動自在に支持する装置であり、トランクリッド5を軸支する長尺状のヒンジ部材10が車体2aの開口部4のコーナー部4aに近隣に配置されて、トランクリッド5の開閉動作に伴いヒンジ部材10が回動するようになっている(図2(a)参照)。ヒンジ構造1の一端側は、トランクリッド5の裏面に固定されており、ヒンジ構造1の他端側は、トランクルーム3の内部において車体2aに回動自在に軸支されている。また、ヒンジ構造1は、トランクリッド5の左右端部及び開口部4の左右のコーナー部4aの近傍に1つずつ配設されている。
【0024】
トランクルーム3は、トランクリッド5が開口部4の後側から上方向に開いて後開きすることによって、荷物の積み降ろしが可能となる荷物室である。
開口部4の周縁には、ゴム製のウェザーストリップ等のシール材Sが装着されて、トランクリッド5でその開口部4を閉塞した際に、トランクリッド5がシール材Sに押圧して密着し、トランクルーム3が密閉されるようになっている。
トランクリッド5は、例えば、圧延鋼板製の蓋体からなり、ナンバープレート2bと、このナンバープレート2bを照明するための照明灯装置(図示省略)と、ロック機構(図示省略)等が設けられている。
なお、左右のコーナー部4a(より詳しくは開口部4の前側の左右のコーナー部4a)は、曲線状(円弧状)に形成されている。左右のヒンジ構造1は、互いに対称な構造なので、以下の説明では左側に配置されたヒンジ構造1について、図2及び図3を参照しながら主に説明する。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組付後の(a)のA−A拡大断面図、(c)は組付後の(a)のB−B拡大断面図、(d)は組付後の(a)のD−D拡大断面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)はトランクリッドの開口部におけるヒンジ構造の設置状態を示す拡大断面図、(b)は(a)のE−E拡大断面図である。
【0026】
図2(a)に示すように、前記ヒンジ構造1は、主に、鉤状に形成された長尺のヒンジ部材10と、ヒンジ部材10に沿って配線された線状部材20と、線状部材20を保持するとともに、ヒンジ部材10に装着されてこのヒンジ部材10とで線状部材20を覆うカバー部材30と、から構成されている。
【0027】
図2(a)に示すように、ヒンジ部材10は、トランクリッド5を支持する金属製の長尺部材で形成されている(図1参照)。ヒンジ部材10は、コーナー部4a側から線状部材20を覆う外側カバー半体の機能を有する(図1及び図3(a)参照)。ヒンジ部材10は、カバー部材30が取り付けられるヒンジ本体12と、一端がヒンジ本体12に固定され、他端が車体2aに回動自在に取り付けられるアーム部材11と、カバー部材30をヒンジ本体12に取り付けるための複数(例えば、3つ)のカバー取付ブラケット14と、を有している。換言すれば、このヒンジ部材10は、一端側(基端部側)を車体2aに回動自在に軸支された四角筒状のアーム部材11と、このアーム部材11の他端側(先端部側)から後方に向かって湾曲して延出する断面略逆J字形状のヒンジ本体12と、を溶接等によって連設されるとともに、ヒンジ本体12のカバー部材30との対向面に複数のカバー取付ブラケット14を溶接等によって固定されている。
ヒンジ部材10の延在方向の断面は、開口部4のコーナー部4aの形状に倣って形成されている(図3(a)参照)。
【0028】
図2(a)に示すように、アーム部材11は、ヒンジ部材10において、車体2a側に軸支される部位であって、車体2a内に収納された状態に配置されている。アーム部材11の一端(基端)側には、車体2aに設置された回転軸Cを挿通するための貫通孔11aが形成されている。
ヒンジ本体12は、ヒンジ部材10において、トランクリッド5に取り付けられてトランクリッド5内に配置される部位と、トランクリッド5及び車体2aから露出した状態に配置されて、カバー部材30とで線状部材20を覆う筒体を形成する部位と、が形成される部分である。ヒンジ本体12は、回転軸Cを中心とする所定径の回動軌跡円に沿うように湾曲している湾曲部12aと、アーム部材11と反対側の端部(先端部)からトランクリッド5の裏面に沿って延出するトランクリッド取付部12bと、を有している(図1参照)。アーム部材11とヒンジ本体12の湾曲部12aの間の空間にトランクルーム3の開口部4の縁部が配置されることになる(図1及び図3(a)参照)。
湾曲部12aは、長手方向に垂直な断面形状も湾曲して形成されて、カバー部材30と対向する凹面12c内に、カバー取付ブラケット14が収納できるように空間が形成されている。その凹面12c内の長手方向の中央部及び両端部の三箇所には、カバー部材30を湾曲部12aに合致するように取り付けるためのカバー取付ブラケット14が設置されている。トランクリッド取付部12bは、トランクリッド5(図1参照)の裏面に例えば溶接ボルト(図示省略)で固定される。トランクリッド取付部12bには、その溶接ボルトを挿通するためのボルト挿通孔12dが上下方向に複数穿設されている。
【0029】
図2(a)に示すように、前記カバー取付ブラケット14は、カバー部材30をヒンジ部材10に保持させるための略長方形の金属製の薄板部材であり、ヒンジ本体12の凹面12c内にスポット溶接等によって固定される。カバー取付ブラケット14は、このカバー取付ブラケット14の中央部に形成された突条部14aと、この突条部14aの両側の四つ角近傍の低い位置に配置されて湾曲部12aに密着する溶接部Wと、突条部14aに穿設される第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cと、を有している。
図2(a)、(d)及び図3(a)に示すように、溶接部Wは、カバー取付ブラケット14と、ヒンジ本体12の凹面12cとが溶接される箇所である。溶接部Wは、ヒンジ本体12の長手方向から見て、カバー取付ブラケット14の先端側及び基端部側における一端部及び他端部が凹面12cに密着するように折曲形成されている。
突条部14aは、カバー取付ブラケット14の両端の溶接部W,W間に、この溶接部W,Wからカバー部材30側に向けて突出させて台形状に形成されている。この突条部14aと凹面12cとの間には、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cの先端の係止爪が配置される空間が形成されている(図3(b)参照)。
図2(a)に示すように、第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cは、後記する第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cが挿入されて係止される孔である。この第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cは、突条部14aの両端部の平らな箇所に穿設されている。
【0030】
図2(a)に示すように、線状部材20は、例えば、トランクリッド5に設けられたナンバープレート2bを照明するためのナンバープレート照明ランプ等(図示省略)に接続されるハーネス21や、トランクリッド5のロック機構(図示省略)に接続されるオープンケーブル22等から構成されている(図1参照)。線状部材20は、樹脂材料からなるカバー部材30の凹面30aに一体に突出形成された線状部材保持片30dによって保持されている。
図2(c)及び図3(a)に示すように、線状部材20は、ヒンジ部材10の回動軌跡に沿って形成されたヒンジ本体12の凹面12cに対向して配置されるカバー部材30の凹面30a内に収納されて配設されている。線状部材20は、一対の線状部材保持片30d,30d間に挿入されることによって、カバー部材30とヒンジ本体12とでなる筒体内に組み付けられている。
図2(d)に示すように、線状部材20は、カバー部材30とヒンジ本体12との間に介在されたときに、カバー取付ブラケット14の突条部14aの中央部分によって、ハーネス21及びオープンケーブル22が線状部材保持片30d,30d間から離脱しないように支持される(図2(c)参照)。
ハーネス21は、ランプに電気を供給するための電線であり、一端がランプ等に接続され、他端が点灯スイッチ(図示省略)を介在して電源に接続されている。
オープンケーブル22は、例えば運転席に設けられた開錠レバー(図示省略)の動作をトランクリッド5のロック機構に伝達するケーブルであり、開錠レバーを引くとトランクリッド5のロックが解除されるようになっている。
【0031】
図2(a)に示すように、カバー部材30は、ヒンジ部材10の湾曲部12aの凹面12cを覆う樹脂製の板状部材であり、開口部4の内方側からヒンジ部材10に係合されて線状部材20を覆う内側カバー半体としての機能を有する。カバー部材30は、開口部4のコーナー部4a側に配置されたヒンジ部材10の湾曲部12aに合致させて開口部4の内方側に配置されて、ヒンジ部材10とで線状部材20を挿通させる筒体を形成するように組み付けられる。
【0032】
図2(a)に示すように、カバー部材30は、ヒンジ部材10の湾曲部12aとトランクリッド取付部12bに沿って延在する金属製の薄板状部材である。カバー部材30は、断面視で略J字形状に形成されている(図2(b)〜(d)参照)。カバー部材30の凹面30aには、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cと、線状部材保持片30dと、第1支持片30e(図2(b)参照)と、第2支持片30fとがヒンジ本体12の凹面12cに向けて一体に突出形成されている。
図2(a)、(d)、図3(a)、(b)に示すように、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cは、先端部の外側に係止爪を有する突起である。第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cは、カバー取付ブラケット14の第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cの縁にいわゆるスナップフィットして係合される。なお、カバー部材30は、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cが第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cに挿入されて係止されることによって、ヒンジ部材10に取り付けられるようになっている。
図2(a)及び図3(b)に示すように、第1弾性係止片30bは、凹面30aの上端部の三個所に形成されている。第1弾性係止片30bは、先端内側に形成された係止爪がカバー取付ブラケット14の第1カバー取付孔14bに裏面側から挿入されて係止するようになっている。第2弾性係止片30cは、互いに間隔を隔てて立設された一対の突起からなり、第2カバー取付孔14cに挿入する際に、第2カバー取付孔14cの縁に傾斜面状の係止爪が押圧されて弾性変形し、係止爪が第2カバー取付孔14cを通過したときに復元するようになっている。
これにより、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cの係止爪が第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cの縁に係合し、ひいては、カバー部材30がヒンジ部材10にワンタッチで容易に組み付けられるようになっている。このため、ヒンジ部材10及び線状部材20は、カバー部材30によって隠蔽されて外部から見えなくなり、ヒンジ構造1の外観性を向上させることができる。さらに、カバー部材30は、ヒンジ部材10に固定する際に、ねじ等の締結部材や、締結部材を挿通するための貫通孔等が不要なため、トランクルーム3の開口部4の内方側の外表面を見映えのよい表面に仕上げることが可能となり、ヒンジ構造1の美観性を向上させることができる。
【0033】
図2(a)、(c)、図3(a)に示すように、線状部材保持片30d,30dは、互いに間隔を隔てて立設されて、線状部材20を抱持する係止爪を先端部内側に対向して配置した一対の突起であり、凹面30aの複数個所に形成されている。線状部材保持片30dには、この線状部材保持片30dを補強するための補強用リブが背面部に一体形成され、線状部材保持片30dの内面部に線状部材20を支持するためのリブが一体形成されている。線状部材保持片30d,30d間に線状部材20を嵌め入れると、係止爪がハーネス21に係止し、線状部材保持片30d,30d間から線状部材20が外れないようになっている。
【0034】
図2(a)、(b)、図3(a)に示すように、第1支持片30eは、ヒンジ本体12とカバー部材30とが係合した際に、ヒンジ本体12の凹面12cの上端部に当接して、両者がずれてがたつくのを防止するための突起である。第1支持片30eは、カバー部材30の凹面30aの上端からヒンジ本体12の厚さ分だけ中心線側に寄った位置に形成されている(図2(b)参照)。ヒンジ本体12とカバー部材30とは、両者を合致させると、第1支持片30eの先端部外側がヒンジ本体12の凹面12cに当接し、ヒンジ部材10にカバー部材30ががたつきなく係合するようになっている。
【0035】
図2(a)、(b)、図3(a)に示すように、第2支持片30fは、ヒンジ本体12とカバー部材30とが係合した際に、ヒンジ本体12の凹面12cの下端部に当接して、両者がずれてがたつくのを防止するための突起である。第2支持片30fは、カバー部材30の凹面30aの下端部内面からヒンジ本体12の厚さ分だけ中心線側に寄った位置からヒンジ本体12に向けて突設されている(図2(b)参照)。ヒンジ本体12とカバー部材30とは、両者を合致させると、第2支持片30fの先端部外側と、カバー部材30の下縁との間に、ヒンジ本体12の下縁部が挿入されて、ヒンジ部材10にカバー部材30ががたつきなく係合されるようになっている。
【0036】
つづいて、主に図2及び図3を参照して、本第1実施形態に係るヒンジ構造1の作用効果について説明する。
図3(a)に示すように、ヒンジ部材10の外周面のうち開口部4のコーナー部4aに対向する部分、すなわち、ヒンジ本体12の湾曲部12aの外周面は、開口部4のコーナー部4aに倣った形状に形成されている。換言すれば、ヒンジ部材10の外周面は、開口部4のコーナー部4aと略平行に形成されている。これにより、ヒンジ部材10の外周面とコーナー部4aとの間隔L1,L2が略一定になり、ヒンジ部材10をコーナー部4aに極力接近させて配置することができ、ヒンジ構造1がトランクルーム3の開口部4の内方へ張り出す量を減少させることができる。
これにより、トランクルーム3の左右のコーナー部4aに配置された左右のヒンジ構造1間の距離が広がり、トランクリッド5の支持スパンを大きくすることができるため、ヒンジ構造1によるトランクリッド5の保持力及び支持剛性を向上させることができる。
【0037】
また、カバー部材30は、線状部材保持片30dで凹面30a内に線状部材20を保持した状態で、ヒンジ部材10に組み付けられている。
すなわち、図11に示す従来のヒンジ構造400では、ヒンジ部材450にカバー部材470を組み付ける際に、プロテクタ本体410にハーネス430,440を装着させた後に、カバー部材470と蓋部材420とを係合させる必要があったが、本第1実施形態に係るヒンジ構造1では、線状部材20を係止したカバー部材30が単独でヒンジ部材10に保持されるので、カバー部材30の組み付け作業性を向上させることができる。
【0038】
また、図3(a)に示すように、ヒンジ部材10は、外側カバーとしてのヒンジ本体12と内側カバーとしてのカバー部材30とを組み合わせて形成した筒体の中空部内において、線状部材20やカバー部材30に比較して、コーナー部4aに近い位置に、すなわちコーナー部4a寄りに配置されている。
そのため、ヒンジ構造1のうちコーナー部4aから離れた部分を構成するカバー部材30の成形自由度が向上し、カバー部材30を開口部4の内方へ極力張り出さないように、断面視して扁平した形状にすることができるとともに、ヒンジ構造1の全体の断面形状を円弧状のコーナー部4aの外観形状に追従した形に形成できる。このため、ヒンジ構造1の見映えを向上させることができるとともに、ヒンジ構造1とコーナー部4aとの間隔L1,L2を狭くすることができる。
このように形成されたヒンジ構造1は、トランクルーム3の開口部4の内側方向にカバー部材30が配置されて、運転者等がトランクルーム3へ荷物を積み降ろしする際に、ヒンジ部材10がカバー部材30によって隠れるとともに、線状部材20がヒンジ部材10とカバー部材30とでなる筒体に内蔵されて見えなくなっている。このため、ヒンジ構造1の外観の向上、省スペース化、小型化及びトランクルーム3の拡大化を図ることができる。
ヒンジ構造1は、ヒンジ本体12及びカバー取付ブラケット14が金属板をプレス加工して形成され、ヒンジ本体12に取り付けられる略板状の樹脂部材によって形成されているので、ヒンジ構造1全体の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0039】
また、図3(a)に示すように、ハーネス21は、ヒンジ部材10の回動軌跡を含む面Y上に、ヒンジ部材10に隣接して配設されている。そのため、この面Yに直交する方向のカバー部材30の幅寸法を小さくすることができる。これにより、カバー部材30が開口部4の内方へ張り出すことを最小限にすることができ、荷物がヒンジ部材10に当接すること極力抑制することができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図4〜図5を参照して詳細に説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るヒンジ構造を示す分解斜視図である。図5は、本発明の第2実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)はトランクリッドの開口部におけるヒンジ部材の設置状態を示す拡大断面図、(b)はクリップの取り付け状態を示す拡大断面図である。
【0041】
図4に示すように、第2実施形態に係るヒンジ構造1Aは、ヒンジ部材40を備え、このヒンジ部材40に沿って線状部材20が配設され、その線状部材20が、ハーネスクリップ60によって金属材料からなるヒンジ部材40に保持される。ヒンジ構造1Aは、主に、ヒンジ部材40と、ヒンジ部材40内に配線された線状部材20と、この線状部材20を結束してヒンジ部材40に取り付けられるハーネスクリップ60と、ヒンジ部材40に合致してこのヒンジ部材40とで線状部材20を覆う筒体を形成する樹脂製のカバー部材50と、から構成されている。
【0042】
ヒンジ部材40は、第1実施形態のヒンジ部材10(図2(a)参照)と同様に、アーム部材41と、ヒンジ本体42と、カバー取付ブラケット44とを溶接してなる。
アーム部材41は、第1実施形態のアーム部材11(図2(a)参照)と略同一形状の筒体からなり、ヒンジ本体42の切欠部42dに挿入されて溶接されている。
ヒンジ本体42は、第1実施形態のヒンジ本体12(図2(a)参照)と略同様に、金属製板部材をプレス加工してなる。このヒンジ本体42は、回動軌跡円に沿って湾曲形成された湾曲部42aと、長手方向から見て全体がコーナー部4a(図5参照)に沿って略U字状に曲げて形成された凹面42cと、後記するトランクリッド取付部42bと、切欠部42dと、第2カバー取付孔42eと、を有している。ヒンジ本体42には、第1実施形態のカバー取付ブラケット14(図2(a)参照)と同様に、折曲形成されて凹面42cに溶接されるカバー取付ブラケット44が取り付けられている。その他、このヒンジ部材には、カバー取付ブラケット44に取り付けられるハーネスクリップ60と、ハーネスクリップ60によって凹面42c内に保持される線状部材20と、凹面42cを閉塞するようにヒンジ本体42に取り付けられるカバー部材50と、が取り付けられる。
湾曲部42a及びトランクリッド取付部42bは、カバー部材50側が開口した凹面42cが連続形成されて、線状部材20が収納できるように空間が形成されている。湾曲部42aの下面の複数個所には、一対の第2弾性係止片50cがスナップフィットされる第2カバー取付孔42eが複数穿設されている。
【0043】
カバー取付ブラケット44は、長方形の金属製板部材を折曲形成して、ヒンジ本体42の凹面42cの二箇所に溶接される。カバー取付ブラケット44は、このカバー取付ブラケット44の四隅に設けられて凹面42cに密着して溶接される溶接部Wと、線状部材20を支持する突条部44aと、この突条部14aの上下端部に穿設された第1カバー取付孔44bと、先端側の溶接部W,W間の中央に穿設されたクリップ取付孔44dと、を有している。
第1カバー取付孔44bは、第1弾性係止片50bを下方向から挿入するための孔である。
【0044】
ハーネスクリップ60は、前記バンド部60aと前記クリップ部60bとが一体形成された樹脂製のものからなり、線状部材20の2箇所にバンド部60aを巻き付けて固定される。2つのクリップ部60bは、それぞれ2つのカバー取付ブラケット44を介在してヒンジ本体42内に固定される。
【0045】
線状部材20のハーネス21及びオープンケーブル22は、ハーネスクリップ60に設けられたバンド部60aによって結束されている。ハーネスクリップ60のクリップ部60bは、カバー取付ブラケット44のクリップ取付孔44dに係合される。これにより、ハーネス21及びオープンケーブル22が、ヒンジ本体42の凹面42c内に保持される。
【0046】
カバー部材50は、第1実施形態のカバー部材30(図2(a)参照)と同様に、ヒンジ部材40の開口部4の内方側に配置されて、湾曲部42aの凹面42cを被せるようにして覆う断面視で略J字形状の樹脂製の板状部材である。カバー部材50の凹面50aには、複数の第1弾性係止片50bと、一対の第2弾性係止片50cと、複数の係合片50gと、がヒンジ本体42に向けて一体に突出形成されている。
第1弾性係止片50bは、カバー部材50の凹面50a内から上方向に向けて突設されて、先端部が第1カバー取付孔44bに挿入される。第2弾性係止片50cは、カバー部材50の凹面50a内の複数個所に配設されて、先端に係止爪を有する。
係合片50gは、ヒンジ本体42の下端部42fの先端が係合する部位であり、略V字状に形成された突起からなる。
これにより、カバー部材50は、第1弾性係止片50bがカバー取付ブラケット44の第1カバー取付孔44bに係合し、係合片50gがヒンジ本体42の下端部42fに係合するとともに、第2弾性係止片50cがヒンジ本体42の第2カバー取付孔42eに係合して、ひいては、カバー部材50がヒンジ部材40に下方向から組み付けられるようになっている。また、本第2実施形態では、線状部材20がヒンジ部材40に組み付けた後に、ヒンジ部材40にカバー部材50が組み付けられるので、カバー部材50の組み付け作業が容易である。その他、本第2実施形態も前記第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0047】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図6〜図8を参照して詳細に説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す分解斜視図である。図7は、本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す斜視図である。図8は、本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す断面図である。
【0048】
図6に示すように、第3実施形態に係るヒンジ構造1Bは、ヒンジ部材70に沿って線状部材20のハーネス21とオープンケーブル22とが間隔を隔てて別々に配設され、その線状部材20が、樹脂材料からなるカバー部材80に保持される。ヒンジ構造1Bは、主に、ヒンジ部材70と、ヒンジ部材70に沿って配線される線状部材20と、ヒンジ部材70に合致するように装着されて複数の線状部材20を別々に保持しながら覆う樹脂製のカバー部材80と、から構成されている。
【0049】
ヒンジ部材70は、第1実施形態のヒンジ部材10(図2(a)参照)と同様に、回転軸Cに軸支されるアーム部材71と、アーム部材71に連設されて湾曲部72a及びトランクリッド取付部72bを有するヒンジ本体72と、ヒンジ本体72の凹面72cに設けられた複数のカバー取付ブラケット74と、を溶接してなる。
ヒンジ部材70のアーム部材71及びヒンジ本体72は、第1実施形態(図2(a)参照)のアーム部材11及びヒンジ本体12と略同一形状のものからなり、互いに溶接して連設されている。つまり、アーム部材71は、角筒状の金属部材からなる。
ヒンジ本体72は、断面略逆J字形状にプレス加工された金属製板部材からなり、回動軌跡円に沿って形成された湾曲部72aと、全体がコーナー部4aに沿って略U字状に曲げて形成された凹面72cと、トランクリッド取付部72bと、が一体形成されている。ヒンジ本体72には、第1実施形態のカバー取付ブラケット14(図2(a)参照)と同様に、凹面72cに溶接されるカバー取付ブラケット74が備えられる。その他、ヒンジ本体72には、カバー部材80と、線状部材20とが取り付けられる。
【0050】
カバー取付ブラケット74は、長方形の金属製板部材を折曲形成して、ヒンジ本体72の凹面72cの三箇所に設置される。カバー取付ブラケット74には、溶接部Wと、窪面74aと、第1カバー取付孔74bと、第2カバー取付孔74cと、が形成されている。
溶接部Wは、カバー取付ブラケット74がヒンジ部材70にスポット溶接される箇所であり、カバー取付ブラケット74の四隅に設けられて凹面72cに密着するように配置される。窪面74aは、周囲より窪んで形成された部位であり、周囲を折曲させることでカバー取付ブラケット74を補強している。第1カバー取付孔74bは、第1弾性係止片80bの係止爪を係止させるための孔であり、窪面74aに隣設された突片に穿設されている(図8参照)。第2カバー取付孔74cは、窪面74aの中央部に穿設された孔であり、第2弾性係止片80cが係合される。
【0051】
線状部材20のハーネス21及びオープンケーブル22は、例えば、外面に保護テープが巻回された状態で、カバー部材80の凹面80aに一対に対向配置された線状部材保持片80d,80d間にそれぞれ係合されることによって、カバー部材80の凹面80a内に保持される。
【0052】
カバー部材80は、第1実施形態のカバー部材30(図2(a)参照)と同様に、ヒンジ部材70の開口部4の内方側に配置されて、湾曲部72aの凹面72cを被せるようにして覆う断面視で略J字形状の樹脂製の板状部材である。カバー部材80は、カバー取付ブラケット74の第1カバー取付孔74b及び第2カバー取付孔74cに第1弾性係止片80b及び第2弾性係止片80cをスナップフィットさせて係合させることでヒンジ部材70に取り付けられる。
カバー部材80の凹面80aには、カバー部材80をヒンジ部材70に取り付けるための複数の第1弾性係止片80b及び第2弾性係止片80cと、長手方向から凹面80aを見て中央部に突設された第2弾性係止片80cの両側に分けて設置されたぞれぞれの一対の線状部材保持片80dと、がヒンジ本体72に向けて一体に突出形成されている。
第1弾性係止片80bは、カバー部材80の凹面80a内からヒンジ本体72に向けて突設されて、先端に係止爪を有している。第1弾性係止片80bの係止爪は、カバー取付ブラケット74の外側から第1カバー取付孔74bに係止されることによって、カバー部材80の上側を保持している。
【0053】
これにより、カバー部材80は、第1弾性係止片80b及び第2弾性係止片80cがカバー取付ブラケット74の第1カバー取付孔74b及び第2カバー取付孔74cに係合して、カバー部材80がヒンジ部材70にワンタッチで組み付けられるようになっている。
このようにして筒状に組み付けられたヒンジ部材70及びカバー部材80は、図7に示すように、ヒンジ部材70をコーナー部4aの近くに寄せて配置させることができるとともに、カバー部材80を開口部4の内方へ極力張り出さないように、断面視して扁平な形状に形成できる。このため、ヒンジ構造1の全体の断面形状を円弧状のコーナー部4aの形状に追従した形に形成して、ヒンジ構造1とコーナー部4aとの間隔L3,L4を狭くすることができる。これに伴って、ヒンジ部材70の基端部側が挿入されるライニング3aの開口部4の内方への張り出し量を抑制してトランクルーム3の収納容量を大きくすることができる。
【0054】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明はかかる第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
例えば、本第1〜第3実施形態では、ヒンジ構造1,1A,1B内にナンバープレート照明ランプ用のハーネス21とオープンケーブル22を例に挙げて線状部材20を説明したが、これ以外に、トランクリッド5に設けたその他のランプ類や電気装置に接続されたハーネスや、リヤウインドウォッシャーホースなどでもよい。
【0056】
また、開閉体の一例としてトランクリッド5を例に挙げて本発明を説明したが、開閉体は、ヒンジ式のものであればよく、例えば、サイドドアや、バックドアや、ボンネット等であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を有する自動車を後斜め上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組付後の(a)のA−A拡大断面図、(c)は組付後の(a)のB−B拡大断面図、(d)は組付後の(a)のD−D拡大断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)はトランクリッドの開口部におけるヒンジ構造の設置状態を示す拡大断面図、(b)は(a)のE−E拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るヒンジ構造を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)はトランクリッドの開口部におけるヒンジ部材の設置状態を示す拡大断面図、(b)はクリップの取り付け状態を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す断面図である。
【図9】従来の車両用開閉体のヒンジ構造の設置状態を示す図であり、開閉体を開放したときのトランクリッドのコーナー部の拡大斜視図である。
【図10】従来の車両用開閉体のヒンジ構造の設置状態を示す図であり、開閉体を開放したときのトランクリッドのコーナー部の拡大斜視図である。
【図11】従来の車両用開閉体のヒンジ構造を示す図であり、ハーネスを備えたヒンジ部材の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B 車両用開閉体のヒンジ構造
2 自動車(車両)
2a 車体
4 開口部
4a コーナー部
5 トランクリッド(開閉体)
10,40,70 ヒンジ部材
11,41,71 アーム部材
12,42,72 ヒンジ本体
20 線状部材
30,50,80 カバー部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のドアやトランクリッド等の車両用開閉体を回動自在に車体に支持する車両用開閉体のヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の車両用開閉体のヒンジ構造の設置状態を示す図であり、開閉体を開放したときのトランクリッドのコーナー部の拡大斜視図である。図10は、従来の車両用開閉体のヒンジ構造の設置状態を示す図であり、開閉体を開放したときのトランクリッドのコーナー部の拡大斜視図である。図11は、従来の車両用開閉体のヒンジ構造を示す図であり、ハーネスを備えたヒンジ部材の要部拡大断面図である。
【0003】
従来、自動車の車体後部には、図9及び図10に示すように、荷物を収納するトランクルーム110が設けられている。トランクルーム110の開口部120は、トランクリッド等の開閉体によって開閉されて、荷物が積載されるようになっている。開閉体は、例えば、長尺のヒンジ部材210,310を介して車体100に回動自在に取り付けられている。一対のヒンジ部材210,310は、先端部側が開閉体の左右に固定され、基端部側がトランクルーム110の左右のコーナー部121を通って車体100に軸支されている。
【0004】
トランクルーム110の開口部120の周縁には、ゴム製のウェザーストリップ500が設けられている。ウェザーストリップ500が取り付けられた開口部120は、コーナー部121が円弧状に形成されている。また、車両のドアやトランクリッド等の開閉体には、ランプやロック装置等の各種装置を設置したものがある。それらの各種装置は、車体側に設置された電源等に接続するためのハーネスや、トランクリッドを開放させるためのワイヤ等の線状部材を設けたものがある。
【0005】
従来、開閉体の各種装置にハーネスやワイヤ等の線状部材を配線する際には、図9〜図11に示すように、ドアやトランクリッドのヒンジ機構を構成する長尺のヒンジ部材210,310,450に沿って、前記線状部材を配線することが行われている。
例えば、図9に示すヒンジ構造200では、断面ロ字状のヒンジ部材210の外側面にハーネス220,230を保持するためのクリップ240を設けて、そのクリップ240によってハーネス220,230をヒンジ部材210の外側面に取り付けている。
【0006】
また、図10に示すヒンジ構造300は、ヒンジ部材310内にハーネス320を収納できるように、ヒンジ部材310を断面U字状に形成して、ハーネス320をヒンジ部材310内に収納させてテープ330等で保持している。
【0007】
また、特許文献1には、図11に示すように、ハーネス430を収容する断面コ字状の長尺のプロテクタ本体410を、長尺のヒンジ部材450に沿って配置し、さらに、このプロテクタ本体410とヒンジ部材450の周囲を、断面コ字状のカバー部材470と蓋部材420とで覆ったヒンジ構造400が開示されている。なお、長尺のヒンジ部材450は、その延在方向に沿って凹溝451を有しており、この凹溝451の内部には他のハーネス440が収容されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−333723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図9に示すようなヒンジ構造200では、ヒンジ部材210の外側面にハーネス220,230を設置しているので、ハーネス220,230の設置分S200だけ余分にヒンジ部材210がトランクルーム110側へ張り出してしまうという問題点があった。
ヒンジ部材210のトランクルーム110への出っ張りを少なくするために、開口部120の車幅方向の縁に近付けてヒンジ部材210を配置した場合には、コーナー部121が円弧状に形成されているので、ヒンジ部材210から開口部120の前方向の縁までの距離L200が長くなって前方向の隙間が広がるという問題点があった。
また、このヒンジ構造200では、ハーネス220,230がヒンジ部材210の外側面に剥き出し状態で設置されているので、見映えも悪いという問題点があった。
【0010】
また、図10に示すようなヒンジ構造300では、断面U字状のヒンジ部材310がハーネス320を覆うカバーの役目をするので、ハーネス320が車両後方側から見えなくなるため、見映えが向上する。しかしながら、ハーネス320を収納しているので、ヒンジ部材310が大型化するという問題点があった。
また、ヒンジ部材310がコーナー部121の形状に追従した形状に形成されていないので、開口部120の前側の縁に接近させて配置すると、開口部120の前側の縁とヒンジ部材310との隙間L300が狭くなるものの、開口部120の側部側の縁とヒンジ部材310との隙間S300が広くなるという問題点があった。
このため、トランクルーム110は、ヒンジ部材310の大型化と隙間L300,S300の広がりとによって、ヒンジ部材310の基端部側が収納されるライニング130の出っ張りS400が大きくなり、荷物の収納容量が小さくなるという問題点があった。
【0011】
ドアやトランクルームの開口部120の構造においては、当該開口部120を広く利用するために、開口部120のコーナー部121にドアヒンジ構造200,300をなるべく近づけて配置することが望まれている。
しかし、図11に示すドアヒンジ構造400(特許文献1)では、ヒンジ部材470の断面が大型化するために開口部内に張り出し、開口部のスペースが減少してしまうという問題があった。
また、開口部のコーナー部は、多くの場合曲線状(円弧状)に形成されているが、従来のドアヒンジ構造400は、角張った形状に形成されているので、開口部のコーナー部にドアヒンジ構造400を近づけると、両者のクリアランスにばらつきが生じ、見栄えが悪くなるという問題があった。
【0012】
本発明は、かかる問題に鑑みて創案されたものであり、開閉体を開放した際の外観を向上させるとともに、開口部への張り出しを減少させた車両用開閉体のヒンジ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、開閉体を支持する長尺状のヒンジ部材が車体の開口部に回動自在に設けられ、前記開閉体の開閉動作に伴い前記ヒンジ部材が回動する車両用開閉体のヒンジ構造であって、前記ヒンジ部材の延在方向の断面は、前記開口部のコーナー部の形状に倣って形成され、前記ヒンジ部材は、前記コーナー部側に設けられるとともに、前記開口部の内方側から前記ヒンジ部材に係合されるカバー部材を有していることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、ヒンジ構造は、ヒンジ部材の延在方向の断面が、開口部のコーナー部の形状に倣って形成されているので、開口部のコーナー部とこのコーナー部に対向するヒンジ部材の対向面とのクリアランスが略一定になり、ドアヒンジ構造を全体的に(均一に)コーナー部へ近づけることができるため、開口部への張り出しを小さくできる。その結果、開口部のスペースを極力大きく確保して、荷物がヒンジ部材等に当接するのを抑制することができる。また、ヒンジ部材は、コーナー部側に寄せて設けられて、カバー部材が開口部の内方側からヒンジ部材に係合されるので、開閉体を開放した際に、ヒンジ部材の内方向側がカバー部材によって隠れるため、開閉体を開放した際の外観を向上させることができる。
【0015】
また、前記ヒンジ部材は、前記カバー部材が取り付けられるヒンジ本体と、一端が前記ヒンジ本体に固定され、他端が前記車体に回動自在に取り付けられるアーム部材と、を有しているのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、ヒンジ部材は、ヒンジ本体とアーム部材とを別体で構成することによって、ヒンジ本体の成形自由度を向上させて、コーナー部の形状に倣った形状への成形が容易となる。このようにヒンジ本体とアーム部材とが別体であることにより、例えば、アーム部材に駆動力を作用させる構成を用いることによって、開閉体を開閉する自動開閉装置に容易に適用させることができる。
【0017】
また、ヒンジ部材には、当該ヒンジ部材に沿って線状部材が配設され、前記線状部材は、樹脂材料からなる前記カバー部材に保持されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、強度を必要としないカバー部材は、成形性のよい樹脂材料で成形されているので、成形自由度を高めることができるため、当該カバー部材をヒンジ部材に係止させる係止手段を一体形成することが容易になる。カバー部材は、線状部材を保持する構成とした場合でも、極力コンパクトに成形できるため、開口部側への張り出しを極力抑制した状態に設けることができる。
【0019】
また、前記ヒンジ部材には、当該ヒンジ部材に沿って線状部材が配設され、前記線状部材は、金属材料からなる前記ヒンジ部材に保持されているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、開閉体を保持するために強度を必要とするヒンジ部材は、金属材料で構成されるので、開閉体を強固に保持することができる。また、車体に予め取り付けられたヒンジ部材に、予め線状部材を保持させることが可能となるので、カバー部材の取り付けを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、開閉体を開放した際の外観を向上させるとともに、開口部への張り出しを減少させた車両用開閉体のヒンジ構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態においては、自動車のトランクリッドに車両用開閉体のヒンジ構造(以下、単に「ヒンジ構造」という。)を適用した場合を例にとって説明する。なお、本実施形態において、方向を説明する場合は、自動車の前後左右上下を基準として説明する。
【0023】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について図1〜図3を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を有する自動車を後斜め上方から見た斜視図である。
図1に示すように、自動車2は、車体後部に荷物を収納するトランクルーム3と、トランクルーム3の開口部4を開閉するトランクリッド(開閉体)5と、このトランクリッド5を車体2aに回動自在に連結するヒンジ構造1とを有している。
本第1実施形態に係るヒンジ構造1は、車体2aに対して開閉体たるトランクリッド5を回動自在に支持する装置であり、トランクリッド5を軸支する長尺状のヒンジ部材10が車体2aの開口部4のコーナー部4aに近隣に配置されて、トランクリッド5の開閉動作に伴いヒンジ部材10が回動するようになっている(図2(a)参照)。ヒンジ構造1の一端側は、トランクリッド5の裏面に固定されており、ヒンジ構造1の他端側は、トランクルーム3の内部において車体2aに回動自在に軸支されている。また、ヒンジ構造1は、トランクリッド5の左右端部及び開口部4の左右のコーナー部4aの近傍に1つずつ配設されている。
【0024】
トランクルーム3は、トランクリッド5が開口部4の後側から上方向に開いて後開きすることによって、荷物の積み降ろしが可能となる荷物室である。
開口部4の周縁には、ゴム製のウェザーストリップ等のシール材Sが装着されて、トランクリッド5でその開口部4を閉塞した際に、トランクリッド5がシール材Sに押圧して密着し、トランクルーム3が密閉されるようになっている。
トランクリッド5は、例えば、圧延鋼板製の蓋体からなり、ナンバープレート2bと、このナンバープレート2bを照明するための照明灯装置(図示省略)と、ロック機構(図示省略)等が設けられている。
なお、左右のコーナー部4a(より詳しくは開口部4の前側の左右のコーナー部4a)は、曲線状(円弧状)に形成されている。左右のヒンジ構造1は、互いに対称な構造なので、以下の説明では左側に配置されたヒンジ構造1について、図2及び図3を参照しながら主に説明する。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組付後の(a)のA−A拡大断面図、(c)は組付後の(a)のB−B拡大断面図、(d)は組付後の(a)のD−D拡大断面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)はトランクリッドの開口部におけるヒンジ構造の設置状態を示す拡大断面図、(b)は(a)のE−E拡大断面図である。
【0026】
図2(a)に示すように、前記ヒンジ構造1は、主に、鉤状に形成された長尺のヒンジ部材10と、ヒンジ部材10に沿って配線された線状部材20と、線状部材20を保持するとともに、ヒンジ部材10に装着されてこのヒンジ部材10とで線状部材20を覆うカバー部材30と、から構成されている。
【0027】
図2(a)に示すように、ヒンジ部材10は、トランクリッド5を支持する金属製の長尺部材で形成されている(図1参照)。ヒンジ部材10は、コーナー部4a側から線状部材20を覆う外側カバー半体の機能を有する(図1及び図3(a)参照)。ヒンジ部材10は、カバー部材30が取り付けられるヒンジ本体12と、一端がヒンジ本体12に固定され、他端が車体2aに回動自在に取り付けられるアーム部材11と、カバー部材30をヒンジ本体12に取り付けるための複数(例えば、3つ)のカバー取付ブラケット14と、を有している。換言すれば、このヒンジ部材10は、一端側(基端部側)を車体2aに回動自在に軸支された四角筒状のアーム部材11と、このアーム部材11の他端側(先端部側)から後方に向かって湾曲して延出する断面略逆J字形状のヒンジ本体12と、を溶接等によって連設されるとともに、ヒンジ本体12のカバー部材30との対向面に複数のカバー取付ブラケット14を溶接等によって固定されている。
ヒンジ部材10の延在方向の断面は、開口部4のコーナー部4aの形状に倣って形成されている(図3(a)参照)。
【0028】
図2(a)に示すように、アーム部材11は、ヒンジ部材10において、車体2a側に軸支される部位であって、車体2a内に収納された状態に配置されている。アーム部材11の一端(基端)側には、車体2aに設置された回転軸Cを挿通するための貫通孔11aが形成されている。
ヒンジ本体12は、ヒンジ部材10において、トランクリッド5に取り付けられてトランクリッド5内に配置される部位と、トランクリッド5及び車体2aから露出した状態に配置されて、カバー部材30とで線状部材20を覆う筒体を形成する部位と、が形成される部分である。ヒンジ本体12は、回転軸Cを中心とする所定径の回動軌跡円に沿うように湾曲している湾曲部12aと、アーム部材11と反対側の端部(先端部)からトランクリッド5の裏面に沿って延出するトランクリッド取付部12bと、を有している(図1参照)。アーム部材11とヒンジ本体12の湾曲部12aの間の空間にトランクルーム3の開口部4の縁部が配置されることになる(図1及び図3(a)参照)。
湾曲部12aは、長手方向に垂直な断面形状も湾曲して形成されて、カバー部材30と対向する凹面12c内に、カバー取付ブラケット14が収納できるように空間が形成されている。その凹面12c内の長手方向の中央部及び両端部の三箇所には、カバー部材30を湾曲部12aに合致するように取り付けるためのカバー取付ブラケット14が設置されている。トランクリッド取付部12bは、トランクリッド5(図1参照)の裏面に例えば溶接ボルト(図示省略)で固定される。トランクリッド取付部12bには、その溶接ボルトを挿通するためのボルト挿通孔12dが上下方向に複数穿設されている。
【0029】
図2(a)に示すように、前記カバー取付ブラケット14は、カバー部材30をヒンジ部材10に保持させるための略長方形の金属製の薄板部材であり、ヒンジ本体12の凹面12c内にスポット溶接等によって固定される。カバー取付ブラケット14は、このカバー取付ブラケット14の中央部に形成された突条部14aと、この突条部14aの両側の四つ角近傍の低い位置に配置されて湾曲部12aに密着する溶接部Wと、突条部14aに穿設される第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cと、を有している。
図2(a)、(d)及び図3(a)に示すように、溶接部Wは、カバー取付ブラケット14と、ヒンジ本体12の凹面12cとが溶接される箇所である。溶接部Wは、ヒンジ本体12の長手方向から見て、カバー取付ブラケット14の先端側及び基端部側における一端部及び他端部が凹面12cに密着するように折曲形成されている。
突条部14aは、カバー取付ブラケット14の両端の溶接部W,W間に、この溶接部W,Wからカバー部材30側に向けて突出させて台形状に形成されている。この突条部14aと凹面12cとの間には、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cの先端の係止爪が配置される空間が形成されている(図3(b)参照)。
図2(a)に示すように、第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cは、後記する第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cが挿入されて係止される孔である。この第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cは、突条部14aの両端部の平らな箇所に穿設されている。
【0030】
図2(a)に示すように、線状部材20は、例えば、トランクリッド5に設けられたナンバープレート2bを照明するためのナンバープレート照明ランプ等(図示省略)に接続されるハーネス21や、トランクリッド5のロック機構(図示省略)に接続されるオープンケーブル22等から構成されている(図1参照)。線状部材20は、樹脂材料からなるカバー部材30の凹面30aに一体に突出形成された線状部材保持片30dによって保持されている。
図2(c)及び図3(a)に示すように、線状部材20は、ヒンジ部材10の回動軌跡に沿って形成されたヒンジ本体12の凹面12cに対向して配置されるカバー部材30の凹面30a内に収納されて配設されている。線状部材20は、一対の線状部材保持片30d,30d間に挿入されることによって、カバー部材30とヒンジ本体12とでなる筒体内に組み付けられている。
図2(d)に示すように、線状部材20は、カバー部材30とヒンジ本体12との間に介在されたときに、カバー取付ブラケット14の突条部14aの中央部分によって、ハーネス21及びオープンケーブル22が線状部材保持片30d,30d間から離脱しないように支持される(図2(c)参照)。
ハーネス21は、ランプに電気を供給するための電線であり、一端がランプ等に接続され、他端が点灯スイッチ(図示省略)を介在して電源に接続されている。
オープンケーブル22は、例えば運転席に設けられた開錠レバー(図示省略)の動作をトランクリッド5のロック機構に伝達するケーブルであり、開錠レバーを引くとトランクリッド5のロックが解除されるようになっている。
【0031】
図2(a)に示すように、カバー部材30は、ヒンジ部材10の湾曲部12aの凹面12cを覆う樹脂製の板状部材であり、開口部4の内方側からヒンジ部材10に係合されて線状部材20を覆う内側カバー半体としての機能を有する。カバー部材30は、開口部4のコーナー部4a側に配置されたヒンジ部材10の湾曲部12aに合致させて開口部4の内方側に配置されて、ヒンジ部材10とで線状部材20を挿通させる筒体を形成するように組み付けられる。
【0032】
図2(a)に示すように、カバー部材30は、ヒンジ部材10の湾曲部12aとトランクリッド取付部12bに沿って延在する金属製の薄板状部材である。カバー部材30は、断面視で略J字形状に形成されている(図2(b)〜(d)参照)。カバー部材30の凹面30aには、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cと、線状部材保持片30dと、第1支持片30e(図2(b)参照)と、第2支持片30fとがヒンジ本体12の凹面12cに向けて一体に突出形成されている。
図2(a)、(d)、図3(a)、(b)に示すように、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cは、先端部の外側に係止爪を有する突起である。第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cは、カバー取付ブラケット14の第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cの縁にいわゆるスナップフィットして係合される。なお、カバー部材30は、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cが第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cに挿入されて係止されることによって、ヒンジ部材10に取り付けられるようになっている。
図2(a)及び図3(b)に示すように、第1弾性係止片30bは、凹面30aの上端部の三個所に形成されている。第1弾性係止片30bは、先端内側に形成された係止爪がカバー取付ブラケット14の第1カバー取付孔14bに裏面側から挿入されて係止するようになっている。第2弾性係止片30cは、互いに間隔を隔てて立設された一対の突起からなり、第2カバー取付孔14cに挿入する際に、第2カバー取付孔14cの縁に傾斜面状の係止爪が押圧されて弾性変形し、係止爪が第2カバー取付孔14cを通過したときに復元するようになっている。
これにより、第1弾性係止片30b及び第2弾性係止片30cの係止爪が第1カバー取付孔14b及び第2カバー取付孔14cの縁に係合し、ひいては、カバー部材30がヒンジ部材10にワンタッチで容易に組み付けられるようになっている。このため、ヒンジ部材10及び線状部材20は、カバー部材30によって隠蔽されて外部から見えなくなり、ヒンジ構造1の外観性を向上させることができる。さらに、カバー部材30は、ヒンジ部材10に固定する際に、ねじ等の締結部材や、締結部材を挿通するための貫通孔等が不要なため、トランクルーム3の開口部4の内方側の外表面を見映えのよい表面に仕上げることが可能となり、ヒンジ構造1の美観性を向上させることができる。
【0033】
図2(a)、(c)、図3(a)に示すように、線状部材保持片30d,30dは、互いに間隔を隔てて立設されて、線状部材20を抱持する係止爪を先端部内側に対向して配置した一対の突起であり、凹面30aの複数個所に形成されている。線状部材保持片30dには、この線状部材保持片30dを補強するための補強用リブが背面部に一体形成され、線状部材保持片30dの内面部に線状部材20を支持するためのリブが一体形成されている。線状部材保持片30d,30d間に線状部材20を嵌め入れると、係止爪がハーネス21に係止し、線状部材保持片30d,30d間から線状部材20が外れないようになっている。
【0034】
図2(a)、(b)、図3(a)に示すように、第1支持片30eは、ヒンジ本体12とカバー部材30とが係合した際に、ヒンジ本体12の凹面12cの上端部に当接して、両者がずれてがたつくのを防止するための突起である。第1支持片30eは、カバー部材30の凹面30aの上端からヒンジ本体12の厚さ分だけ中心線側に寄った位置に形成されている(図2(b)参照)。ヒンジ本体12とカバー部材30とは、両者を合致させると、第1支持片30eの先端部外側がヒンジ本体12の凹面12cに当接し、ヒンジ部材10にカバー部材30ががたつきなく係合するようになっている。
【0035】
図2(a)、(b)、図3(a)に示すように、第2支持片30fは、ヒンジ本体12とカバー部材30とが係合した際に、ヒンジ本体12の凹面12cの下端部に当接して、両者がずれてがたつくのを防止するための突起である。第2支持片30fは、カバー部材30の凹面30aの下端部内面からヒンジ本体12の厚さ分だけ中心線側に寄った位置からヒンジ本体12に向けて突設されている(図2(b)参照)。ヒンジ本体12とカバー部材30とは、両者を合致させると、第2支持片30fの先端部外側と、カバー部材30の下縁との間に、ヒンジ本体12の下縁部が挿入されて、ヒンジ部材10にカバー部材30ががたつきなく係合されるようになっている。
【0036】
つづいて、主に図2及び図3を参照して、本第1実施形態に係るヒンジ構造1の作用効果について説明する。
図3(a)に示すように、ヒンジ部材10の外周面のうち開口部4のコーナー部4aに対向する部分、すなわち、ヒンジ本体12の湾曲部12aの外周面は、開口部4のコーナー部4aに倣った形状に形成されている。換言すれば、ヒンジ部材10の外周面は、開口部4のコーナー部4aと略平行に形成されている。これにより、ヒンジ部材10の外周面とコーナー部4aとの間隔L1,L2が略一定になり、ヒンジ部材10をコーナー部4aに極力接近させて配置することができ、ヒンジ構造1がトランクルーム3の開口部4の内方へ張り出す量を減少させることができる。
これにより、トランクルーム3の左右のコーナー部4aに配置された左右のヒンジ構造1間の距離が広がり、トランクリッド5の支持スパンを大きくすることができるため、ヒンジ構造1によるトランクリッド5の保持力及び支持剛性を向上させることができる。
【0037】
また、カバー部材30は、線状部材保持片30dで凹面30a内に線状部材20を保持した状態で、ヒンジ部材10に組み付けられている。
すなわち、図11に示す従来のヒンジ構造400では、ヒンジ部材450にカバー部材470を組み付ける際に、プロテクタ本体410にハーネス430,440を装着させた後に、カバー部材470と蓋部材420とを係合させる必要があったが、本第1実施形態に係るヒンジ構造1では、線状部材20を係止したカバー部材30が単独でヒンジ部材10に保持されるので、カバー部材30の組み付け作業性を向上させることができる。
【0038】
また、図3(a)に示すように、ヒンジ部材10は、外側カバーとしてのヒンジ本体12と内側カバーとしてのカバー部材30とを組み合わせて形成した筒体の中空部内において、線状部材20やカバー部材30に比較して、コーナー部4aに近い位置に、すなわちコーナー部4a寄りに配置されている。
そのため、ヒンジ構造1のうちコーナー部4aから離れた部分を構成するカバー部材30の成形自由度が向上し、カバー部材30を開口部4の内方へ極力張り出さないように、断面視して扁平した形状にすることができるとともに、ヒンジ構造1の全体の断面形状を円弧状のコーナー部4aの外観形状に追従した形に形成できる。このため、ヒンジ構造1の見映えを向上させることができるとともに、ヒンジ構造1とコーナー部4aとの間隔L1,L2を狭くすることができる。
このように形成されたヒンジ構造1は、トランクルーム3の開口部4の内側方向にカバー部材30が配置されて、運転者等がトランクルーム3へ荷物を積み降ろしする際に、ヒンジ部材10がカバー部材30によって隠れるとともに、線状部材20がヒンジ部材10とカバー部材30とでなる筒体に内蔵されて見えなくなっている。このため、ヒンジ構造1の外観の向上、省スペース化、小型化及びトランクルーム3の拡大化を図ることができる。
ヒンジ構造1は、ヒンジ本体12及びカバー取付ブラケット14が金属板をプレス加工して形成され、ヒンジ本体12に取り付けられる略板状の樹脂部材によって形成されているので、ヒンジ構造1全体の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0039】
また、図3(a)に示すように、ハーネス21は、ヒンジ部材10の回動軌跡を含む面Y上に、ヒンジ部材10に隣接して配設されている。そのため、この面Yに直交する方向のカバー部材30の幅寸法を小さくすることができる。これにより、カバー部材30が開口部4の内方へ張り出すことを最小限にすることができ、荷物がヒンジ部材10に当接すること極力抑制することができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図4〜図5を参照して詳細に説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るヒンジ構造を示す分解斜視図である。図5は、本発明の第2実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)はトランクリッドの開口部におけるヒンジ部材の設置状態を示す拡大断面図、(b)はクリップの取り付け状態を示す拡大断面図である。
【0041】
図4に示すように、第2実施形態に係るヒンジ構造1Aは、ヒンジ部材40を備え、このヒンジ部材40に沿って線状部材20が配設され、その線状部材20が、ハーネスクリップ60によって金属材料からなるヒンジ部材40に保持される。ヒンジ構造1Aは、主に、ヒンジ部材40と、ヒンジ部材40内に配線された線状部材20と、この線状部材20を結束してヒンジ部材40に取り付けられるハーネスクリップ60と、ヒンジ部材40に合致してこのヒンジ部材40とで線状部材20を覆う筒体を形成する樹脂製のカバー部材50と、から構成されている。
【0042】
ヒンジ部材40は、第1実施形態のヒンジ部材10(図2(a)参照)と同様に、アーム部材41と、ヒンジ本体42と、カバー取付ブラケット44とを溶接してなる。
アーム部材41は、第1実施形態のアーム部材11(図2(a)参照)と略同一形状の筒体からなり、ヒンジ本体42の切欠部42dに挿入されて溶接されている。
ヒンジ本体42は、第1実施形態のヒンジ本体12(図2(a)参照)と略同様に、金属製板部材をプレス加工してなる。このヒンジ本体42は、回動軌跡円に沿って湾曲形成された湾曲部42aと、長手方向から見て全体がコーナー部4a(図5参照)に沿って略U字状に曲げて形成された凹面42cと、後記するトランクリッド取付部42bと、切欠部42dと、第2カバー取付孔42eと、を有している。ヒンジ本体42には、第1実施形態のカバー取付ブラケット14(図2(a)参照)と同様に、折曲形成されて凹面42cに溶接されるカバー取付ブラケット44が取り付けられている。その他、このヒンジ部材には、カバー取付ブラケット44に取り付けられるハーネスクリップ60と、ハーネスクリップ60によって凹面42c内に保持される線状部材20と、凹面42cを閉塞するようにヒンジ本体42に取り付けられるカバー部材50と、が取り付けられる。
湾曲部42a及びトランクリッド取付部42bは、カバー部材50側が開口した凹面42cが連続形成されて、線状部材20が収納できるように空間が形成されている。湾曲部42aの下面の複数個所には、一対の第2弾性係止片50cがスナップフィットされる第2カバー取付孔42eが複数穿設されている。
【0043】
カバー取付ブラケット44は、長方形の金属製板部材を折曲形成して、ヒンジ本体42の凹面42cの二箇所に溶接される。カバー取付ブラケット44は、このカバー取付ブラケット44の四隅に設けられて凹面42cに密着して溶接される溶接部Wと、線状部材20を支持する突条部44aと、この突条部14aの上下端部に穿設された第1カバー取付孔44bと、先端側の溶接部W,W間の中央に穿設されたクリップ取付孔44dと、を有している。
第1カバー取付孔44bは、第1弾性係止片50bを下方向から挿入するための孔である。
【0044】
ハーネスクリップ60は、前記バンド部60aと前記クリップ部60bとが一体形成された樹脂製のものからなり、線状部材20の2箇所にバンド部60aを巻き付けて固定される。2つのクリップ部60bは、それぞれ2つのカバー取付ブラケット44を介在してヒンジ本体42内に固定される。
【0045】
線状部材20のハーネス21及びオープンケーブル22は、ハーネスクリップ60に設けられたバンド部60aによって結束されている。ハーネスクリップ60のクリップ部60bは、カバー取付ブラケット44のクリップ取付孔44dに係合される。これにより、ハーネス21及びオープンケーブル22が、ヒンジ本体42の凹面42c内に保持される。
【0046】
カバー部材50は、第1実施形態のカバー部材30(図2(a)参照)と同様に、ヒンジ部材40の開口部4の内方側に配置されて、湾曲部42aの凹面42cを被せるようにして覆う断面視で略J字形状の樹脂製の板状部材である。カバー部材50の凹面50aには、複数の第1弾性係止片50bと、一対の第2弾性係止片50cと、複数の係合片50gと、がヒンジ本体42に向けて一体に突出形成されている。
第1弾性係止片50bは、カバー部材50の凹面50a内から上方向に向けて突設されて、先端部が第1カバー取付孔44bに挿入される。第2弾性係止片50cは、カバー部材50の凹面50a内の複数個所に配設されて、先端に係止爪を有する。
係合片50gは、ヒンジ本体42の下端部42fの先端が係合する部位であり、略V字状に形成された突起からなる。
これにより、カバー部材50は、第1弾性係止片50bがカバー取付ブラケット44の第1カバー取付孔44bに係合し、係合片50gがヒンジ本体42の下端部42fに係合するとともに、第2弾性係止片50cがヒンジ本体42の第2カバー取付孔42eに係合して、ひいては、カバー部材50がヒンジ部材40に下方向から組み付けられるようになっている。また、本第2実施形態では、線状部材20がヒンジ部材40に組み付けた後に、ヒンジ部材40にカバー部材50が組み付けられるので、カバー部材50の組み付け作業が容易である。その他、本第2実施形態も前記第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0047】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図6〜図8を参照して詳細に説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す分解斜視図である。図7は、本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す斜視図である。図8は、本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す断面図である。
【0048】
図6に示すように、第3実施形態に係るヒンジ構造1Bは、ヒンジ部材70に沿って線状部材20のハーネス21とオープンケーブル22とが間隔を隔てて別々に配設され、その線状部材20が、樹脂材料からなるカバー部材80に保持される。ヒンジ構造1Bは、主に、ヒンジ部材70と、ヒンジ部材70に沿って配線される線状部材20と、ヒンジ部材70に合致するように装着されて複数の線状部材20を別々に保持しながら覆う樹脂製のカバー部材80と、から構成されている。
【0049】
ヒンジ部材70は、第1実施形態のヒンジ部材10(図2(a)参照)と同様に、回転軸Cに軸支されるアーム部材71と、アーム部材71に連設されて湾曲部72a及びトランクリッド取付部72bを有するヒンジ本体72と、ヒンジ本体72の凹面72cに設けられた複数のカバー取付ブラケット74と、を溶接してなる。
ヒンジ部材70のアーム部材71及びヒンジ本体72は、第1実施形態(図2(a)参照)のアーム部材11及びヒンジ本体12と略同一形状のものからなり、互いに溶接して連設されている。つまり、アーム部材71は、角筒状の金属部材からなる。
ヒンジ本体72は、断面略逆J字形状にプレス加工された金属製板部材からなり、回動軌跡円に沿って形成された湾曲部72aと、全体がコーナー部4aに沿って略U字状に曲げて形成された凹面72cと、トランクリッド取付部72bと、が一体形成されている。ヒンジ本体72には、第1実施形態のカバー取付ブラケット14(図2(a)参照)と同様に、凹面72cに溶接されるカバー取付ブラケット74が備えられる。その他、ヒンジ本体72には、カバー部材80と、線状部材20とが取り付けられる。
【0050】
カバー取付ブラケット74は、長方形の金属製板部材を折曲形成して、ヒンジ本体72の凹面72cの三箇所に設置される。カバー取付ブラケット74には、溶接部Wと、窪面74aと、第1カバー取付孔74bと、第2カバー取付孔74cと、が形成されている。
溶接部Wは、カバー取付ブラケット74がヒンジ部材70にスポット溶接される箇所であり、カバー取付ブラケット74の四隅に設けられて凹面72cに密着するように配置される。窪面74aは、周囲より窪んで形成された部位であり、周囲を折曲させることでカバー取付ブラケット74を補強している。第1カバー取付孔74bは、第1弾性係止片80bの係止爪を係止させるための孔であり、窪面74aに隣設された突片に穿設されている(図8参照)。第2カバー取付孔74cは、窪面74aの中央部に穿設された孔であり、第2弾性係止片80cが係合される。
【0051】
線状部材20のハーネス21及びオープンケーブル22は、例えば、外面に保護テープが巻回された状態で、カバー部材80の凹面80aに一対に対向配置された線状部材保持片80d,80d間にそれぞれ係合されることによって、カバー部材80の凹面80a内に保持される。
【0052】
カバー部材80は、第1実施形態のカバー部材30(図2(a)参照)と同様に、ヒンジ部材70の開口部4の内方側に配置されて、湾曲部72aの凹面72cを被せるようにして覆う断面視で略J字形状の樹脂製の板状部材である。カバー部材80は、カバー取付ブラケット74の第1カバー取付孔74b及び第2カバー取付孔74cに第1弾性係止片80b及び第2弾性係止片80cをスナップフィットさせて係合させることでヒンジ部材70に取り付けられる。
カバー部材80の凹面80aには、カバー部材80をヒンジ部材70に取り付けるための複数の第1弾性係止片80b及び第2弾性係止片80cと、長手方向から凹面80aを見て中央部に突設された第2弾性係止片80cの両側に分けて設置されたぞれぞれの一対の線状部材保持片80dと、がヒンジ本体72に向けて一体に突出形成されている。
第1弾性係止片80bは、カバー部材80の凹面80a内からヒンジ本体72に向けて突設されて、先端に係止爪を有している。第1弾性係止片80bの係止爪は、カバー取付ブラケット74の外側から第1カバー取付孔74bに係止されることによって、カバー部材80の上側を保持している。
【0053】
これにより、カバー部材80は、第1弾性係止片80b及び第2弾性係止片80cがカバー取付ブラケット74の第1カバー取付孔74b及び第2カバー取付孔74cに係合して、カバー部材80がヒンジ部材70にワンタッチで組み付けられるようになっている。
このようにして筒状に組み付けられたヒンジ部材70及びカバー部材80は、図7に示すように、ヒンジ部材70をコーナー部4aの近くに寄せて配置させることができるとともに、カバー部材80を開口部4の内方へ極力張り出さないように、断面視して扁平な形状に形成できる。このため、ヒンジ構造1の全体の断面形状を円弧状のコーナー部4aの形状に追従した形に形成して、ヒンジ構造1とコーナー部4aとの間隔L3,L4を狭くすることができる。これに伴って、ヒンジ部材70の基端部側が挿入されるライニング3aの開口部4の内方への張り出し量を抑制してトランクルーム3の収納容量を大きくすることができる。
【0054】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明はかかる第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
例えば、本第1〜第3実施形態では、ヒンジ構造1,1A,1B内にナンバープレート照明ランプ用のハーネス21とオープンケーブル22を例に挙げて線状部材20を説明したが、これ以外に、トランクリッド5に設けたその他のランプ類や電気装置に接続されたハーネスや、リヤウインドウォッシャーホースなどでもよい。
【0056】
また、開閉体の一例としてトランクリッド5を例に挙げて本発明を説明したが、開閉体は、ヒンジ式のものであればよく、例えば、サイドドアや、バックドアや、ボンネット等であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を有する自動車を後斜め上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組付後の(a)のA−A拡大断面図、(c)は組付後の(a)のB−B拡大断面図、(d)は組付後の(a)のD−D拡大断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)はトランクリッドの開口部におけるヒンジ構造の設置状態を示す拡大断面図、(b)は(a)のE−E拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るヒンジ構造を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るヒンジ構造を示す図であり、(a)はトランクリッドの開口部におけるヒンジ部材の設置状態を示す拡大断面図、(b)はクリップの取り付け状態を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るヒンジ構造を示す断面図である。
【図9】従来の車両用開閉体のヒンジ構造の設置状態を示す図であり、開閉体を開放したときのトランクリッドのコーナー部の拡大斜視図である。
【図10】従来の車両用開閉体のヒンジ構造の設置状態を示す図であり、開閉体を開放したときのトランクリッドのコーナー部の拡大斜視図である。
【図11】従来の車両用開閉体のヒンジ構造を示す図であり、ハーネスを備えたヒンジ部材の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B 車両用開閉体のヒンジ構造
2 自動車(車両)
2a 車体
4 開口部
4a コーナー部
5 トランクリッド(開閉体)
10,40,70 ヒンジ部材
11,41,71 アーム部材
12,42,72 ヒンジ本体
20 線状部材
30,50,80 カバー部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉体を支持する長尺状のヒンジ部材が車体の開口部に回動自在に設けられ、前記開閉体の開閉動作に伴い前記ヒンジ部材が回動する車両用開閉体のヒンジ構造であって、
前記ヒンジ部材の延在方向の断面は、前記開口部のコーナー部の形状に倣って形成され、
前記ヒンジ部材は、前記コーナー部側に設けられるとともに、前記開口部の内方側から前記ヒンジ部材に係合されるカバー部材を有していることを特徴とする車両用開閉体のヒンジ構造。
【請求項2】
前記ヒンジ部材は、前記カバー部材が取り付けられるヒンジ本体と、
一端が前記ヒンジ本体に固定され、他端が前記車体に回動自在に取り付けられるアーム部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用開閉体のヒンジ構造。
【請求項3】
前記ヒンジ部材には、当該ヒンジ部材に沿って線状部材が配設され、
前記線状部材は、樹脂材料からなる前記カバー部材に保持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用開閉体のヒンジ構造。
【請求項4】
前記ヒンジ部材には、当該ヒンジ部材に沿って線状部材が配設され、
前記線状部材は、金属材料からなる前記ヒンジ部材に保持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用開閉体のヒンジ構造。
【請求項1】
開閉体を支持する長尺状のヒンジ部材が車体の開口部に回動自在に設けられ、前記開閉体の開閉動作に伴い前記ヒンジ部材が回動する車両用開閉体のヒンジ構造であって、
前記ヒンジ部材の延在方向の断面は、前記開口部のコーナー部の形状に倣って形成され、
前記ヒンジ部材は、前記コーナー部側に設けられるとともに、前記開口部の内方側から前記ヒンジ部材に係合されるカバー部材を有していることを特徴とする車両用開閉体のヒンジ構造。
【請求項2】
前記ヒンジ部材は、前記カバー部材が取り付けられるヒンジ本体と、
一端が前記ヒンジ本体に固定され、他端が前記車体に回動自在に取り付けられるアーム部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用開閉体のヒンジ構造。
【請求項3】
前記ヒンジ部材には、当該ヒンジ部材に沿って線状部材が配設され、
前記線状部材は、樹脂材料からなる前記カバー部材に保持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用開閉体のヒンジ構造。
【請求項4】
前記ヒンジ部材には、当該ヒンジ部材に沿って線状部材が配設され、
前記線状部材は、金属材料からなる前記ヒンジ部材に保持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用開閉体のヒンジ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−179224(P2009−179224A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21224(P2008−21224)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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