説明

車両用開閉体の駆動装置

【課題】トランクリッドに挟み込みが発生したときであっても、トランク開口内に異物(雨、雪、ゴミ等)が容易に混入することがない車両用開閉体の駆動装置を提供すること。
【解決手段】車両ボディの開口部を開閉する開閉体;上記開閉体をハーフラッチ位置と全閉位置でそれぞれ保持するクローザ機構;上記クローザ機構を介して上記開閉体をハーフラッチ位置と全閉位置の間で駆動する駆動手段;上記駆動手段によって上記開閉体をハーフラッチ位置から全閉位置まで閉じるとき、上記開閉体と車両ボディに挟み込みが生じたことを検出する挟み込み検出手段;及び上記挟み込み検出手段により挟み込みが検出されたとき、上記駆動手段を逆転駆動して上記開閉体をハーフラッチ位置まで開き、上記クローザ機構によりハーフラッチ位置に保持した状態で、上記駆動手段を駆動停止する駆動制御手段;を有する車両用開閉体の駆動制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランクリッド、バックドア、スイングドア等の車両用開閉体を電動駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用開閉体の電動駆動装置として、例えば、車両ボディのトランク開口部を開閉するトランクリッドを、全開位置、ハーフラッチ位置及び全閉位置の間で開閉するパワートランクリッドが知られている。このパワートランクリッドは、トランクリッドと車両ボディの一方と他方に設けられたロック機構とストライカからなるクローザ機構により、ハーフラッチ位置と全閉位置でそれぞれ保持される。このクローザ機構は、トランクリッドを開閉するトランク駆動モータとは別個のクローザ駆動モータにより、ハーフラッチ位置と全閉位置の間で駆動される。
【0003】
このようなパワートランクリッドには、例えば、所定時間内にクローザ機構をハーフラッチ位置から全閉位置まで引き込めないときにはトランクリッドに挟み込みが発生したと判断し、クローザ機構を解除してトランクリッドを全開位置まで開く挟み込み防止機構を備えたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−285089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トランクリッドに挟み込みが発生するたびにクローザ機構を解除してトランクリッドを全開位置まで開くと、トランク開口内に異物(雨、雪、ゴミ等)が混入するおそれがある。この問題は、パワートランクリッドのみならず、バックドア、スイングドア等の他の車両用開閉体にも共通するものである。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、トランクリッドに挟み込みが発生したときであっても、トランク開口内に異物(雨、雪、ゴミ等)が容易に混入することがない車両用開閉体の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用開閉体の駆動装置は、車両ボディの開口部を開閉する開閉体;上記開閉体をハーフラッチ位置と全閉位置でそれぞれ保持するクローザ機構;上記クローザ機構を介して上記開閉体をハーフラッチ位置と全閉位置の間で駆動する駆動手段;上記駆動手段によって上記開閉体をハーフラッチ位置から全閉位置まで閉じるとき、上記開閉体と車両ボディに挟み込みが生じたことを検出する挟み込み検出手段;及び上記挟み込み検出手段により挟み込みが検出されたとき、上記駆動手段を逆転駆動して上記開閉体をハーフラッチ位置まで開き、上記クローザ機構によりハーフラッチ位置に保持した状態で、上記駆動手段を駆動停止する駆動制御手段;を有することを特徴とする。
【0008】
上記駆動制御手段は、上記挟み込み後、上記開閉体がハーフラッチ位置から全閉位置まで閉じられたことを検出した全閉検出信号を受けるまで、上記駆動手段を駆動停止することができる。
【0009】
上記駆動制御手段は、上記挟み込み後、上記開閉体をハーフラッチ位置から全開位置に向けて開く開指示信号を受けるまで、上記駆動手段を駆動停止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トランクリッドに挟み込みが発生したときであっても、トランク開口内に異物(雨、雪、ゴミ等)が容易に混入することがない車両用開閉体の駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のパワートランクリッドの全開位置における構成を示す斜視図である。
【図2】クローザ機構の動作説明図である。
【図3】本発明のパワートランクリッドの駆動装置を示す機能ブロック図である。
【図4】トランクリッドを全開位置から閉じていく際のモータ回転制御部による制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1ないし図4を用いて、本発明の車両用開閉体の駆動装置をパワートランクリッド1に適用した実施形態を説明する。パワートランクリッド1は、車両ボディ2のトランク開口部(開口部)3をトランクリッド(開閉体)4により開閉可能である。すなわち、トランクリッド4は、車両左右方向に設けた対をなすヒンジ部材5によって車両ボディ2に枢着されており、ヒンジ部材5の枢軸5aを中心に開閉自在になっている。車両ボディ2の開口部3の壁面とトランクリッド4のヒンジ部材5には、伸縮駆動ユニット6の一端と他端がそれぞれ枢着されている。伸縮駆動ユニット6は、トランク駆動モータM1を備えており、このトランク駆動モータM1の正逆回転に従い伸縮してトランクリッド4を開閉動作させる。車両ボディ2の開口部3の車両左右方向には、トランクリッド4のヒンジ部材5に対応させて、トランクリッド4の全開位置でヒンジ部材5と当接する対をなすストッパ部材7が設けられている。開口部3の縁部全周には、トランクリッド4の全閉位置で車両ボディ2とトランクリッド4の間で弾性変形して開口部3への水の浸入を防止するウェザーストリップ8が設けられている。
【0013】
トランクリッド4にはロック機構10が設けられ、車両ボディ2の開口部3の壁面にはストライカ20が設けられている。ロック機構10は、図2に示すように、回転軸部材11に結合されたフック12と、回転軸部材13を中心に回転自在なラチェット14を有している。フック12は、回転軸部材11に相対回転不能に嵌合する回動支持孔12aと、ストライカ保持溝12bと、フルラッチ係止部12cと、ハーフラッチ係止部12dを有している。フック12は、図示を省略したバネにより、図2の時計方向(ロック解除方向)に回動付勢されている。ラチェット14は、フック12のフルラッチ係止部12c及びハーフラッチ係止部12dと係脱可能なロック部14aを備えており、図示を省略したバネにより、図2の反時計方向(フック12と係合する方向)に回動付勢されている。以上のフック12、ラチェット14及びストライカ20は、トランクリッド4をハーフラッチ位置と全閉位置でそれぞれ保持するクローザ機構Cを構成する。
【0014】
クローザ駆動機構Cには、フック12を正逆に回転駆動するクローザ駆動モータM2(駆動手段)が設けられており、このクローザ駆動モータM2が正逆回転することにより、クローザ機構Cがハーフラッチ位置と全閉位置の間で駆動される。クローザ駆動モータM2は、所定のタイミングでラチェット14を回動させる。
【0015】
トランクリッド4が全閉位置にあるとき、クローザ機構Cは、ストライカ20とフック12のストライカ保持溝12bが係合するとともに、フック12のフルラッチ係止部12cとラチェット14のロック部14aが係合するフルラッチ状態にある。
クローザ駆動モータM2を回転させてトランクリッド4を全閉位置から開く場合、ラチェット14が図2の時計方向に回動し、フルラッチ係止部12cとロック部14aの係合が解除され、フック12はバネ(図示せず)の付勢力により若干時計方向に回動し、ロック部14aとハーフラッチ係止部12dが係合する。この位置がクローザ機構Cによるトランクリッド4のハーフラッチ位置(ハーフラッチ状態)である。
トランクリッド4をハーフラッチ位置から開く場合、ラチェット14が図2の時計方向に回動し、ロック部14aとハーフラッチ係止部12dの係合が解除され、フック12がバネ(図示せず)の付勢力によりさらに時計方向に回動し、ストライカ20は、フック12のストライカ保持溝12bから脱する。すなわち、クローザ機構Cが解除状態となる。
【0016】
クローザ機構Cの駆動動作、すなわちクローザ駆動モータM2の回転動作は、車両ボディ2の開口部3に設けられたモータ回転制御部(駆動制御手段)30によって制御される。
【0017】
図3は、モータ回転制御部30を中心にパワートランクリッド1の駆動装置を示した機能ブロック図である。受信部40は、キーと一体形成されたワイヤレスリモコン40aから無線送信されたトランク開閉操作信号を受信してモータ回転制御部30に送る。トランク開閉操作スイッチ部41は、車室内またはトランクリッド4に設けられ、該スイッチ部41の操作によってトランク開閉操作信号がモータ回転制御部30に送られる。
ハーフラッチ位置検出部42は、クローザ機構Cがハーフラッチ位置に到達したこと(ロック部14aとハーフラッチ係止部12dが係合したこと)を検出して、ハーフラッチ位置到達検出信号をモータ回転制御部30に送る。
挟み込み検出部43は、トランクリッド4を閉じるときにクローザ機構Cがハーフラッチ位置に到達すると、クローザ駆動モータM2の回転により発生するパルスを検出し、このパルス幅の変化に基づいてトランクリッド4に挟み込みが発生したことを検出する。そして、挟み込み検出部43は、挟み込み検出信号をモータ回転制御部30に送る。
全閉位置検出部44は、トランクリッド4を閉じるときにクローザ機構Cが全閉位置に到達したこと(ロック部14aとフルラッチ係止部12cが係合したこと)を検出して、全閉位置到達検出信号をモータ回転制御部30に送る。
【0018】
モータ回転制御部30は、受信部40又はトランク開閉操作スイッチ部41から受けたトランク開閉操作信号に基づいて、トランク駆動モータM1及びクローザ駆動モータM2の回転動作を制御して、トランクリッド4の開閉動作を制御する。
より具体的に、モータ回転制御部30は、トランクリッド4が全閉位置で、受信部40又はトランク開閉操作スイッチ部41からトランク開信号を受けたときは、クローザ駆動モータM2を回転させ、クローザ機構Cを全閉位置からハーフラッチ位置まで駆動する。これによりトランクリッド4がハーフラッチ位置まで開き、クローザ機構Cが解除状態となると、モータ回転制御部30は、クローザ駆動モータM2の回転を停止しトランク駆動モータM1を回転させて、トランクリッド4を全開位置まで開く。
【0019】
図4を用いて、トランクリッド4を全開位置から閉じていく際のモータ回転制御部30による制御について説明する。
【0020】
モータ回転制御部30は、トランクリッド4が全開位置で、受信部40又はトランク開閉操作スイッチ部41からトランク閉信号を受けたときは、トランク駆動モータM1を回転させてトランクリッド4をハーフラッチ位置まで閉じる。トランクリッド4がハーフラッチ位置まで閉じると、ハーフラッチ位置検出部42は、クローザ機構Cがハーフラッチ位置に到達したこと(ロック部14aとハーフラッチ係止部12dが係合したこと)を検出して、ハーフラッチ位置到達検出信号をモータ回転制御部30に送る。ハーフラッチ位置到達検出信号を受けたモータ回転制御部30は、トランク駆動モータM1の回転を停止しクローザ駆動モータM2を回転させて、クローザ機構Cをハーフラッチ位置から全閉位置に向けて駆動し始める(S1)。
【0021】
トランクリッド4に挟み込みが検出されずにクローザ機構Cが全閉位置に到達すると(S2;NO、S3;YES)、モータ回転制御部30は、クローザ駆動モータM2を僅かに逆転させてクローザ機構Cを正しい全閉位置にしてから(S4、S5;YES)、クローザ駆動モータM2の回転を完全に停止させる(S6)。ここで、クローザ機構Cの正しい全閉位置とは、ストライカ20とフック12のストライカ保持溝12bが係合するとともに、フック12のフルラッチ係止部12cとラチェット14のロック部14aが係合するフルラッチ状態を意味する(オープン待機位置)。
【0022】
一方、トランクリッド4に挟み込みが検出されると(S2;YES)、挟み込み検出部43は、挟み込み検出信号をモータ回転制御部30に送る。挟み込み検出信号を受けたモータ回転制御部30は、クローザ駆動モータM2を逆転駆動させて、クローザ機構Cをハーフラッチ位置まで駆動する(S7)。これにより、クローザ機構Cは、ラチェット14のロック部14aとフック12のハーフラッチ係止部12dが係合してハーフラッチ状態となり、正しいハーフラッチ位置(オープン待機位置)となる(S8;YES)。そして、モータ回転制御部30は、クローザ機構Cをハーフラッチ位置に保持した状態で、クローザ駆動モータM2の回転を完全に停止させる(S9)。
【0023】
モータ回転制御部30は、全閉位置検出部44から全閉位置到達検出信号を受けるまで、又は受信部40若しくはトランク開閉操作スイッチ部41からトランク開信号を受けるまで、クローザ駆動モータM2を駆動停止する(フェールモード)。
【0024】
以上のように、本実施の形態によれば、モータ回転制御部30が、挟み込み検出部43により挟み込みが検出されたとき、クローザ駆動モータM2を逆転駆動してクローザ機構C(トランクリッド4)をハーフラッチ位置まで駆動し、クローザ機構C(トランクリッド4)をハーフラッチ位置に保持した状態で、クローザ駆動モータM2を駆動停止するので、トランクリッド4が全開位置まで開くことはない。すなわち、トランクリッド4に挟み込みが発生したときであっても、トランク開口内に異物(雨、雪、ゴミ等)が容易に混入することがない。
【0025】
以上の実施の形態では、トランク駆動モータM1を用いてトランクリッド4を全開位置とハーフラッチ位置の間で駆動する場合を例示して説明したが、トランク駆動モータM1を用いずに、全開位置とハーフラッチ位置の間でトランクリッド4を手動で開閉する場合にも本発明は適用可能である。
【0026】
以上の実施の形態では、本発明の車両用開閉体の駆動装置をパワートランクリッド1に適用した場合を例示して説明したが、本発明の車両用開閉体の駆動装置は、バックドア、スイングドア等の他の開閉体にも適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 パワートランクリッド
2 車両ボディ
3 トランク開口部(開口部)
4 トランクリッド(開閉体)
5 ヒンジ部材
5a 枢軸
6 伸縮駆動ユニット
7 ストッパ部材
8 ウェザーストリップ
10 ロック機構
11 回転軸部材
12 フック
12a 回動支持孔
12b ストライカ保持溝
12c フルラッチ係止部
12d ハーフラッチ係止部
13 回転軸部材
14 ラチェット
14a ロック部
20 ストライカ
30 モータ回転制御部(駆動制御手段)
40 受信部
40a ワイヤレスリモコン
41 トランク開閉操作スイッチ部
42 ハーフラッチ位置検出部
43 挟み込み検出部
44 全閉位置検出部
C クローザ機構
M1 トランク駆動モータ
M2 クローザ駆動モータ(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディの開口部を開閉する開閉体;
上記開閉体をハーフラッチ位置と全閉位置でそれぞれ保持するクローザ機構;
上記クローザ機構を介して上記開閉体をハーフラッチ位置と全閉位置の間で駆動する駆動手段;
上記駆動手段によって上記開閉体をハーフラッチ位置から全閉位置まで閉じるとき、上記開閉体と車両ボディに挟み込みが生じたことを検出する挟み込み検出手段;及び
上記挟み込み検出手段により挟み込みが検出されたとき、上記駆動手段を逆転駆動して上記開閉体をハーフラッチ位置まで開き、上記クローザ機構によりハーフラッチ位置に保持した状態で、上記駆動手段を駆動停止する駆動制御手段;
を有することを特徴とする車両用開閉体の駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用開閉体の駆動制御装置において、
上記駆動制御手段は、上記挟み込み後、上記開閉体がハーフラッチ位置から全閉位置まで閉じられたことを検出した全閉検出信号を受けるまで、上記駆動手段を駆動停止する車両用開閉体の駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両用開閉体の駆動制御装置において、
上記駆動制御手段は、上記挟み込み後、上記開閉体をハーフラッチ位置から全開位置に向けて開く開指示信号を受けるまで、上記駆動手段を駆動停止する車両用開閉体の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−52472(P2011−52472A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203200(P2009−203200)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】