車両用開閉装置
【課題】開閉体に取付けられる樹脂製部材の取付強度を高めることができる技術を、提供すること。
【解決手段】樹脂製部材143と開閉体20との間に金属製の挟持部材154が介在し、樹脂製部材143にインサート成形されたナット149は、樹脂製部材143から挟持部材154へ向かって突出し、挟持部材154に接するための突出部153を有し、ナット149とボルト144とで、開閉体20に樹脂製部材143及びストライカ142が取付けられるとともに、このストライカ142と挟持部材154とによって開閉体20を挟持している。
【効果】ナット149の突出部153は、挟持部材154を開閉体20に押し付ける。挟持部材154とストライカ142とによって開閉体20を挟持することにより、開閉体20に樹脂製部材143及びストライカ142が取付けられる。
【解決手段】樹脂製部材143と開閉体20との間に金属製の挟持部材154が介在し、樹脂製部材143にインサート成形されたナット149は、樹脂製部材143から挟持部材154へ向かって突出し、挟持部材154に接するための突出部153を有し、ナット149とボルト144とで、開閉体20に樹脂製部材143及びストライカ142が取付けられるとともに、このストライカ142と挟持部材154とによって開閉体20を挟持している。
【効果】ナット149の突出部153は、挟持部材154を開閉体20に押し付ける。挟持部材154とストライカ142とによって開閉体20を挟持することにより、開閉体20に樹脂製部材143及びストライカ142が取付けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に形成されている開口部を開閉するための開閉体に、施錠用のストライカを備えた、車両用開閉装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両はバックドアやサイドドア等の開閉体に、ストライカ及び各種の樹脂製部材(ハンドル等の付属品)を備えている。このようなストライカと樹脂製部材の両方を備えた技術は、各種知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1で知られている車両用開閉装置は、バックドアに開閉可能な板状のハッチガラスを設け、このハッチガラスにストライカ及びハンドルを備えたというものである。ハンドルは、ハッチガラスの車外側の面に取付けられている。ストライカは、ハンドルに取付けられており、ハッチガラスの車内側の面に位置する。
【0004】
バックドアを閉じた状態で車両を走行させると、車体からラッチ機構を介してストライカに、振動などの各種の外力が作用する。このような外力は、ストライカからハンドルを介してハッチガラスに伝わる。このため、ハッチガラスに対するハンドルの取付強度を確保するには、ハッチガラスにハンドルを単に取付けるわけにはいかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−17295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、開閉体に取付けられる樹脂製部材の取付強度を高めることができる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体に形成されている開口部を開閉するための開閉体と、この開閉体の車外側の面に取付けられる樹脂製部材と、開閉体の車内側の面に取付けられてラッチ機構に係止することが可能なストライカと、を備えた車両用開閉装置において、
樹脂製部材とストライカとは、開閉体を挟んで互いに対向し合い、
樹脂製部材と開閉体との間に金属製の挟持部材が介在し、
樹脂製部材にナットがインサート成形され、
このナットは、挟持部材に接するための突出部を有し、
この突出部は、樹脂製部材から挟持部材へ向かって突出しており、
ナットと、車内側からストライカ及び開閉体を貫通してナットに締結されるボルトと、によって、開閉体に樹脂製部材及びストライカが取付けられるとともに、このストライカと挟持部材とによって開閉体を挟持していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、開閉体は、ガラス製又は樹脂製の透視可能なウインド部材であり、
このウインド部材は、カラーを嵌合するために貫通されたカラー嵌合孔を有し、
カラーは、ボルトを挿通するためのボルト挿通孔を有する筒体からなるとともに、挟持部材に当接していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、開閉体と挟持部材との間に介在する弾性部材を、更に備え、
弾性部材は、樹脂製部材に係止されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、カラーは、弾性部材よりも低い硬度の材料によって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、開閉体の車外側の面には樹脂製部材が配置され、開閉体の車内側の面にはストライカが配置されている。開閉体と樹脂製部材との間には、金属製の挟持部材が介在している。樹脂製部材にインサート成形されたナットは、挟持部材に接するように樹脂製部材から突出した突出部を有している。車内側からストライカ及び開閉体を貫通したボルトを、ナットに締結することにより、このナットの突出部は、挟持部材を開閉体に押し付ける。この結果、挟持部材とストライカとによって開閉体を挟持することにより、この開閉体に樹脂製部材及びストライカが取付けられる。
【0012】
このように、ナットの突出部が樹脂製部材から挟持部材へ向かって突出し、しかも、金属製の挟持部材とストライカとによって開閉体を挟持するので、開閉体に対して、樹脂製部材は直接に接することなく取付けられる。開閉体を閉じた状態で車両を走行させると、車体からラッチ機構を介してストライカに、振動などの各種の外力が作用する。この外力は、ストライカからボルト及びナットを介して、金属製の挟持部材に伝わり、挟持部材から周囲に分散される。このため、樹脂製部材には比較的小さい外力が伝わる。樹脂製部材の取付強度を高めることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、カラー嵌合孔にカラーが嵌合され、カラーは、ボルトを挿通するためのボルト挿通孔を有する。ボルトは、ボルト挿通孔を介してカラー嵌合孔に嵌合している。車体に加わる振動がボルトを介してウインド部材に加わることがある。ボルトをウインド部材に当接させないことで、ウインド部材に加わる負荷を軽減することができる。
加えて、カラーを挟持部材に当接させることで、カラーが倒れ込んでボルト挿通孔に荷重が加わることを抑制できる。
【0014】
請求項3に係る発明では、開閉体と挟持部材との間に介在する弾性部材を備えている。
弾性部材を備えていることで、開閉体に加わる負荷を軽減することができる。
加えて、弾性部材は、樹脂製部材に係止されている。弾性部材の位置ずれを防止すると共に、樹脂製部材のがたつきを防止することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、カラーは、弾性部材よりも低い硬度の材料によって構成されている。カラーに弾性部材よりも柔らかい素材を用いることで、カラー嵌合孔近傍に加わる荷重をより吸収することができる。強度の弱い、カラー嵌合孔近傍に加わる荷重をより吸収しやすくすることで、よりウインド部材の保護を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車両用開閉装置が搭載された車両を後方から見た斜視図である。
【図2】本発明に係るウインド部材、ヒンジ及びリアスポイラの分解斜視図である。
【図3】本発明に係るヒンジの分解斜視図である。
【図4】本発明に係る車両用ウインド開閉装置の要部を説明する分解斜視図である。
【図5】本発明に係るヒンジの取付け状態を説明する図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図5の8−8線断面図である。
【図9】図1の9−9線断面図である。
【図10】図1の10−10線断面図である。
【図11】本発明に係る把手、ウインド部材及びストライカの分解斜視図である。
【図12】図1の12−12線断面図である。
【図13】本発明に係る把手、ウインド部材及びストライカの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
なお、実施例に係る車両用開閉装置は、主に図1及び図10から図13までで説明する。
【実施例】
【0018】
実施例に係る車両用開閉装置が搭載された車両について、図1に基づき説明する。
図1は、車両を後方から見た状態で表している。
【0019】
図1に示すように、車両10の車体11の後部表面は、左右のリヤサイドパネル12,12と、ルーフパネル13とで構成される。
【0020】
リヤサイドパネル12,12の後端下部にそれぞれリヤコンビネーションランプ14,14が取付けられる。これらのリヤコンビネーションランプ14,14の下部にリヤバンパフェイス15が設けられる。
【0021】
車体の背面には、内外に貫通した開口部17が形成されている。
つまり、リヤサイドパネル12,12の後端とルーフパネル13の後端とで開口部17を形成し、この開口部17に対して開閉可能にウインド部材20が取付けられる。
ウインド部材20は、上部がリヤスポイラ21によって覆われ、下部には、開閉操作するための把手143が取付けられる。
【0022】
ウインド部材20は、車体11に対して上下方向に延びている、ガラス製又は樹脂製の透視可能な開閉体である。ウインド部材20の上部を覆うリヤスポイラ21は、ルーフパネル13の上部に流れる走行風の整流を目的として取付けられた外装部材である。
【0023】
ウインド部材20を閉じた際の衝撃を吸収するために、閉じた場合のウインド部材20に対向するように、複数(本実施例では4つ)のストッパ110が車体11に取付けられる。
【0024】
また、車体11に一端が取付けられ、他端がウインド部材20の右端に取付けられるオープンステー24が備えられている。このオープンステー24は、ウインド部材20が開いている場合に、開いた状態を保持するものである。
ウインド部材20を開閉可能に支持するための車両用ウインド開閉装置について、次図以降で詳細を説明する。
【0025】
図2はウインド部材20、ヒンジ25及びリヤスポイラ21の取付関係を説明する分解斜視図であり、図3はヒンジ25を説明する分解斜視図であり、図4は本発明に係る車両用ウインド開閉装置の要部を説明する分解斜視図である。
【0026】
図2から図4までに示すように、板状のウインド部材20をスイング可能に支持するために、ヒンジ25L,25R(Lは車幅方向左側を示す添え字、Rは車幅方向右側を示す添え字。以下同じ。)がウインド部材20に取付けられる。
【0027】
ヒンジ25L,25Rは、ウインド部材20の上端部26(上縁)とウインド部材20の車幅方向の端部27L、27R(側縁)とが交わる部位の近傍に設けられたヒンジ取付部材28L,28Rを介して、ウインド部材20に固定される。
【0028】
また、ヒンジ25L,25Rには、それぞれ、リヤスポイラ21を取付けるためのリヤスポイラ取付部31L,31Rが設けられる。これらのリヤスポイラ取付部31L,31Rに架け渡されるようにリヤスポイラ21は取付けられる。
【0029】
なお、一対のヒンジ25L,25Rは、互いに左右対称形に形成されているが、左右共に同様の構成からなる部材である。
図3及び図4では、車両を後方から見た場合の車幅方向左側のヒンジ25Lを示しているが、右側のヒンジ25Rも左側のヒンジ25Lと同様である。以下単に「ヒンジ25」等と記載する。
【0030】
図3及び図4に示すように、ヒンジ25は、ルーフパネル13に固定される車体側ヒンジ部32と、この車体側ヒンジ部32に支持されるヒンジ軸部材33と、このヒンジ軸部材33に支持されウインド部材20に取付けられるウインド側ヒンジ部34とからなる。
【0031】
車体側ヒンジ部32は、ルーフパネル13に当接される基部35と、この基部35の中央に設けられた第1のボルト37と、基部35の両側方から立上げられた立上げ部38,38と、これらの立上げ部38,38の上端近傍に開けられ、ヒンジ軸部材33が通される軸挿通穴39,39とからなる。
【0032】
ヒンジ軸部材33は、軸挿通穴39,39に通されるヒンジピン41と、このヒンジピン41の溝部41aに嵌め込まれ、ヒンジピン41が軸挿通穴39,39から抜けることを防止する抜け止め部材42とからなる。
【0033】
ウインド側ヒンジ部34は、略矩形状の本体部44の中央にビード部45が形成され、本体部44の側方に形成された補助ビード部46から、車幅方向外側に向かって延長部47が延びている。この延長部47にリヤスポイラ21を取付けるためのリヤスポイラ取付部31が設けられる。この延長部47の内、リヤスポイラ21が取付けられる面をリヤスポイラ取付面(外装部材取付面)48という。
【0034】
本体部44に形成されウインド部材20に取付けられるウインド部材取付面49は、リヤスポイラ取付面48の裏面51と略同一面上に、形成されている。ウインド部材取付面49は、ウインド部材20に沿って配置される。
本体部44の中央に亘って延びているビード部45には、リヤスポイラ取付部31と共にリヤスポイラ21に取付けられる補助取付部52が設けられる。
【0035】
本体部44(ウインド部材取付面49)に対し、リヤスポイラ取付部31(裏面51)が略同一平面上に設けられている。リヤスポイラ取付部31を本体部44と略同一平面上に設けることで、リヤスポイラ21をウインド部材20に近付けて設けることができる。リヤスポイラ21をウインド部材20に近付けることで、リヤスポイラ21、ウインド部材20及びウインド側ヒンジ部34を近付けて配置することができる。近付けて配置することで、さらにウインド部材20の撓みの発生を抑制することができる。
【0036】
特に、ウインド側ヒンジ部34が屈曲構造を備えている場合は、屈曲部で撓む可能性が高いので、略同一平面上に設けることでウインド側ヒンジ部34の撓みの影響を受け難くすることができる。
【0037】
ウインド側ヒンジ部34は、同一面上に設けられる本体部44及び延長部47に対して、補強部としてのビード部45、補助ビード部46及び折曲げ形状部58が凹凸状に形成されている。
【0038】
車体側ヒンジ部32にウインド側ヒンジ部34を軸支する軸支部53,53が本体部44から延びている。軸支部53,53には、ヒンジピン41を挿通するためのピン挿通穴54,54が開けられる。
【0039】
ビード部45の側方に開けられた2つの穴の内、延長部47側(車幅方向外側)に開けられた穴は、ウインド部材20にウインド側ヒンジ部34を固定するために設けられた固定点56である。
ビード部45の側方に開けられた2つの穴の内、固定点56とビード部45を挟むようにして開けられた穴(車幅方向内側)は、ウインド部材20にウインド側ヒンジ部34を固定するために設けられた補助固定点57である。
【0040】
ウインド側ヒンジ部34のビード部45に略直交する方向の縁に、ウインド部材20側に向かって折曲げられる折曲げ形状部58が、本体部44から延長部47に亘って形成されている。折曲げ形状部58が形成されることで、曲げ方向にかかる力に対してウインド側ヒンジ部34の強度を高めることができる。
【0041】
ウインド側ヒンジ部34は、ブッシュ59,59を介してヒンジ軸部材33に回転可能に支持される。
ブッシュ59,59は、小径部61,61と、この小径部61,61よりも外径の大きい大径部62,62とが一体的に形成されてなる。
【0042】
ウインド側ヒンジ部34のピン挿通穴54,54に小径部61,61が通され、小径部61,61よりも車体側ヒンジ部32の立上げ部38側に大径部62,62が位置する。大径部62,62が車体側ヒンジ部32とウインド側ヒンジ部34との間のスペーサの役割を果たすと共に、ピン挿通穴54,54に小径部61,61を通すことで、ウインド側ヒンジ部34を円滑にスイングさせることができる。
【0043】
車体側ヒンジ部32は、ルーフパネル13の端部に開けられた車体側ヒンジ固定穴63に第1のボルト37を上方から通し、この第1のボルト37に第1のナット64を下方から螺合させることで固定される。
【0044】
ウインド側ヒンジ部34は、第2のボルト66をヒンジ取付部材28及び固定点56に下方から通した上で第2のナット67を上方から螺合すると共に、第3のボルト68をヒンジ取付部材28及び補助固定点57に通した上で第3のナット69を螺合することでウインド部材20に固定される。
【0045】
加えてウインド側ヒンジ部34は、リヤスポイラ21に取付けられた第4のボルト71をリヤスポイラ取付部31に通した上で第4のナット72を螺合すると共に、リヤスポイラ21に取付けられた第5のボルト73を補助取付部52に通した上で第5のナット74を螺合することでリヤスポイラ21に固定される。
【0046】
車両用ウインド開閉装置30は、ヒンジ取付部材28が取付けられたウインド部材20と、リヤスポイラ取付部31を備えたヒンジ25と、外装部材としてのリヤスポイラ21とからなる。
ルーフパネル13及び車体側ヒンジ部32は、スイング不能であり、ウインド側ヒンジ部34、ウインド部材20及びリヤスポイラ21が、スイングする。
【0047】
リヤスポイラ取付部31とは別に補助取付部52を設け、リヤスポイラ取付部31と補助取付部52との間に、ウインド部材20に固定するための固定点56が設けられている。固定点56を挟むようにして、リヤスポイラ取付部31と補助取付部52とを設ける。リヤスポイラ取付部31と補助取付部52とで固定点56を挟むことで、ウインド部材20に対して、より強固にウインド側ヒンジ部34を取付けることができる。
【0048】
加えて、ウインド部材取付面49にビード部45を有している。ビード部45を有していることで、ウインド部材取付面49の剛性を高めることができる。
【0049】
さらに、補助取付部52は、ビード部45の部位に位置している。ビード部45に補助取付部52を設けることで、補助取付部52の強度を高めることができる。補助取付部52の強度を高めることで、リヤスポイラ21に対してより強固にウインド側ヒンジ部34を取付けることができる。
【0050】
加えて、ウインド部材取付面49は、固定点56と共にウインド側ヒンジ部34をウインド部材20に固定するための補助固定点57を有している。固定点56と補助固定点57との2点でウインド側ヒンジ部34をウインド部材20に対して取付けることで、ウインド側ヒンジ部34をウインド部材20に対して強固に固定することができる。
【0051】
さらに、固定点56と補助固定点57とでビード部45を挟んでいる。固定点56と補助固定点57とでビード部45を挟むため、固定点56と補助固定点57のそれぞれを強度の高いビード部45の近傍に設けることができる。強度の高いビード部45の近傍に固定点56と補助固定点57とを設けることで、さらに強度を高めることができる。
車両用ウインド開閉装置30について、組立てられた状態を次図以降で詳細に説明する。
【0052】
図5はウインド側ヒンジ部34を取付けたウインド部材20を車両後部から透視した図である。
ウインド部材20は、幅方向の端部27(側縁)と上端部26(上縁)とが交差する角部に、切り欠き形状を呈する切欠き部76を有する。切欠き部76は、ウインド部材20の幅方向中央側に向かって凹となる曲線状に形成される。
【0053】
一方、リヤサイドパネル12は、切欠き部76から離れるように曲げられた曲げ部77を有する。この曲げ部77と切欠き部76との間に形成される隙間78に向かって、ウインド側ヒンジ部34の延長部47が延ばされている。延長部47に設けられるリヤスポイラ取付部31は、端部27よりも車幅方向外側であって、上端部26よりも下方に位置する。
【0054】
曲げ部77と切欠き部76との間の隙間78に、リヤスポイラ取付部31が位置している。
鋼板等が用いられるリヤサイドパネル12は、任意の形状に形成することができる。一方、ガラス等が用いられるウインド部材20は、材料の性質上、全体をリヤサイドパネル12の形状に追従させることが困難である。ウインド部材20の切欠き部76近傍にリヤサイドパネル12の曲げ部77が位置する場合は、必然的に曲げ部77と切欠き部76との間に隙間78が形成される。必然的に形成された隙間78に向かって延長部47を延ばし、リヤスポイラ取付部31を設けることで、スペースの有効活用を図ることができる。
【0055】
さらに、図1及び図2も参照して以下のことがいえる。
リヤスポイラ取付部31は、ウインド部材20の幅方向の縁よりも外側に位置している。リヤスポイラ取付部31がウインド部材20の縁よりも外側に位置するため、リヤスポイラ21をウインド部材20の幅方向全体に亘って取付けることができる。幅方向全体に亘って取付けることで、ウインド部材20を幅方向全体で支持することができる。ウインド部材20の幅方向全体を支持することで、ウインド部材20の撓み量を少なくすることができる。
【0056】
撓み量を少なくすることで、オープンステー24をウインド部材20の両端に設ける必要がなくなる。オープンステー24を1つ取付ければ足りるため、部品点数を削減することができる。
【0057】
加えて、リヤスポイラ取付部31がウインド部材20の幅方向の縁よりも外側に位置しているため、リヤスポイラ21の取付作業時に、ウインド部材20の干渉を防ぐことができる。リヤスポイラ取付部31の取付けが容易であり、組立作業の短時間化を図ることができる。
【0058】
加えて、曲げ部77と切欠き部76との間の隙間78に、リヤスポイラ取付部31が位置することで、隙間78を覆うようにリヤスポイラ21を延ばすことができる。リヤスポイラ21で隙間78を覆うことで、高い外観性を保つことができる。
また、ウインド部材20とリヤサイドパネル12との間に形成され得る隙間78を気にする必要がなくなり、デザインの自由度が増す。
【0059】
ウインド部材20に外力(ウインド部材の自重や、片持ちステーからの荷重等)が加わった場合、ウインド側ヒンジ部34が車体側ヒンジ部32と軸支部53とウインド部材20の固定点56との間で撓む可能性があるが、リヤスポイラ取付部31をウインド部材20の上端部26よりも下方に位置させることで、ウインド側ヒンジ部34の撓みの影響を受けることなくリヤスポイラ31でウインド部材20の上端部26を支持することができる。
【0060】
第2のボルト66が通される固定点(図3、符号56)は、ビード部45の軸線45aと、この軸線45aに平行でリヤスポイラ取付部31の中心を通る取付部中心線31aとの間に位置する。
【0061】
また、リヤスポイラ取付部31は、軸支部53から固定点56に向かって延びている線53aよりも車幅方向外側に位置する。補助取付部52と固定点56との間でウインド側ヒンジ部34が撓む可能性がある部位から外れた位置にリヤスポイラ取付部31が位置する。
車両用ウインド開閉装置30について、次図以降でさらに詳細に説明する。
【0062】
図6はルーフパネル13、ヒンジ25、ウインド部材20及びリヤスポイラ21の取付状態を説明する断面図であり、図7はウインド側ヒンジ部34のウインド部材への取付構造を説明する断面図であり、図8はヒンジ25をウインド部材20に固定するためのヒンジ取付部材28の詳細を説明する断面図である。
【0063】
図6から図8までに示すように、ルーフパネル13は、ルーフパネルインナ13aにルーフパネルアウタ13bを重ね合わせて閉断面部81を形成すると共に、この閉断面部81から延ばされたルーフパネル延長部82が形成される。
【0064】
ルーフパネル延長部82を挟むようにして第1のボルト37が第1のナット64に嵌合される。第1のボルト37と第1のナット64とで、車体側ヒンジ部32はルーフパネル13に固定される。ルーフパネル延長部82の先端には、シール部材84が取付けられる。
【0065】
リヤスポイラ21は、リヤスポイラインナ21aにリヤスポイラアウタ21bを重ね合わせて閉断面形状を呈してなる。リヤスポイラインナ21aの先端部近傍に、穴部87が開けられる。穴部87に対向する部位に向かって、遮蔽板88が貼り合わされている。
【0066】
ウインド側ヒンジ部34は、第2のボルト66と第2のナット67及び、第3のボルト68と第3のナット69とでウインド部材20に固定される。車体11を側方から見た場合(図7参照)に、第2のボルト66の先端が穴部87に重なる。
【0067】
穴部87を開けることで、第2のボルト66に対して、リヤスポイラ21が干渉することを防ぐことができる。第2のボルト66が接触し得る部位にのみ穴部87を設けることで、リヤスポイラ21全体としてはウインド部材20に近付けて取付けることができる。リヤスポイラ21をウインド部材20の近くに設けることで高い外観性を得ることができる。
【0068】
このようにして取付けられる車両用ウインド開閉装置30は、第1のボルト37、第1のナット64及び車体側ヒンジ部32が、ルーフパネル13に固定されており、スイングしない。ウインド側ヒンジ部34、ウインド部材20及びリヤスポイラ21は、ヒンジピン41を中心にスイングする。
【0069】
穴部87に被せるようにして遮蔽板88が貼り合わされている。遮蔽板88が穴部87に被せられることで、ウインド部材20をスイングさせてウインド部材20を開いた状態にしても、リヤスポイラ21の内部をウインド部材20の下方側から覗くことができない。リヤスポイラ21をウインド部材20に近付けつつ、高い外観性を確保することができる。
【0070】
ウインド部材20が撓むことで、ヒンジ25のウインド部材20を支持する部位(図7、第3のボルト68参照)も、同じ方向へ撓もうとする。一方、リヤスポイラ21は、ウインド部材20が撓むことで、相対的にウインド部材20の撓みを防止する方向へ力を加える。ウインド部材20の撓みを防止する方向へ加わる力は、リヤスポイラ取付部(図6、補助取付部52参照)へ加わる。即ち、ウインド部材20が撓むことで、ヒンジ25にはウインド部材20が撓む方向と、撓むことを防ぐ方向の両方に負荷が加わる。ヒンジ25のウインド部材20への取付位置の近傍に、リヤスポイラ取付部及び補助取付部52を設けることで、ヒンジ25の曲げ方向へ加わる負荷を軽減することができる。
【0071】
ウインド部材20には、第2のボルト66及び第3のボルト68を通し、ウインド側ヒンジ部34(ヒンジ25)を固定するためのウインド側ヒンジ固定穴91,91が開けられる。ウインド側ヒンジ固定穴91,91に、衝撃を和らげるための第1のカラー92、92が挿入される。
【0072】
第1のカラー92は、軸方向の両端部に鍔を有する中空状の部材である。中空状の内周部には、第1のカラー92の軸93に向かって突出するカラー突起部94が形成される。
カラー突起部94は、内周部の一般面95から軸93に向かって徐々に近付くテーパ部96と、このテーパ部96の先端から軸93に平行に延びる平行部97と、この平行部97の先端から一般面95に向かって垂直に延びる垂直部98とからなる。
【0073】
ボルト66,68は、テーパ部96側から挿入される。ボルト66,68を挿入する際に、テーパ部96がガイドの役割を果たす。加えて、挿入後はボルト66,68が平行部97に接触する。ボルト66,68が平行部97に接触することで、ボルト66,68が位置決めされる。緩衝材としての第1のカラー92で、ボルト66,68を正確な取付位置にガイドすることができる。
【0074】
カラー突起部94の内径よりもボルト66,68の外径を大きくする。即ち、ラップ設定にすることで、ボルト66,68を第1のカラー92(カラー部材)で保持することができ、ウインド部材20とボルト66,68および第1のカラー92、緩衝板103等を一体化(ASSY化)できる。
【0075】
軸方向の両端部で周方向に向かって延ばされる2つの鍔は、図面上方の第1の鍔部101と、この第1の鍔部101よりも外径が小さい第2の鍔部102とからなる。第1のカラー92をウインド側ヒンジ固定穴91に挿入する場合は、第2の鍔部102から押し込むようにして挿入する。第2の鍔部102の外径を第1の鍔部101の外径よりも小さくすることで、挿入が容易になる。
【0076】
第2の鍔部102を囲うようにして、弾性を有する緩衝板103がウインド部材20の表面にさらに設けられる。これらの第2の鍔部102及び緩衝板103の両方に接触し、荷重を分散させる板部材104が設けられる。
【0077】
ウインド部材20(開閉体)を閉じた際に、ウインド部材20の過移動を防止するためのストッパ110について次図で詳細に説明する。
図9は、ストッパ110が備えられる車両用開閉体ストッパ装置100を説明する断面図である。
【0078】
図1及び図9に示すように、車両用開閉体ストッパ装置100は、リヤサイドパネル12のアウタパネル12aにボルト挿通孔113が開けられ、このボルト挿通孔113が開けられる部位に、被締結部材としての第6のナット114が溶接により固定される。アウタパネル12aの面の内、外観に表れる面を外面(図面上側の面)とした場合に、第6のナット114は、外面とは逆側の内面側に固定される。
【0079】
アウタパネル12aの外面に沿ってリヤコンビネーションランプ14のカバー部材14aが配置される。カバー部材14aの内、ボルト挿通孔113に重なる部位にボルトを通すための締結用貫通孔115が設けられる。
カバー部材14aは、樹脂製の部材であり、アウタパネル12aに沿って設けられる付属部材である。
【0080】
カバー部材14aの締結用貫通孔115にワッシャ117が配置される。ワッシャ117は、締結用貫通孔115の内周に沿って配置され先端がアウタパネル12aに接触する小径部118と、この小径部118に一体的に形成されカバー部材14aの表面に沿って周方向に延ばされる大径部119とからなる。即ち、ワッシャ117は、径が大きい平板状の大径部119と、この大径部119よりも径が小さい平板状の小径部118とが、2段に且つ一体に形成された段付きワッシャの構成である。
【0081】
大径部119のカバー部材14a側の面と逆側の面(図面上部)に接触するよう、2つのシム121,121が設けられる。これらのシム121,121は、C環形状を呈し、ストッパ110の取付高さhを調整するための部材である。
【0082】
これらのシム121,121、ワッシャ117及びアウタパネル12aを締結部材としての第6のボルト122で締め付け、締結する。
ストッパ110にインサート成形されてなる第6のボルト122は、第6のナット114に螺合されワッシャ117に挿通される一般部123と、この一般部123の端部に一体的に形成され一般部123よりも大きな径の頭部124と、この頭部124の上部であって頭部124よりも径を大きくすることでストッパ110からの抜けを防止する抜け防止部125とからなる。
【0083】
一般部123よりも頭部124を大きな径とすることで、頭部124と一般部123との境界に段差が形成される。第6のナット114に対向するように形成された段差を締結部材側対向面127という。
【0084】
このような第6のボルト122と共に成形されるストッパ110は、第6のボルト122の締め付け工具を挿入するための工具挿入穴128と、工具挿入穴128の上端と同一面上に形成されウインド部材20に当接する当接面129と、この当接面129の周方向端部から下方に向かって径を広げながら下げられる側面131と、この側面131の下端で第6のナット114に対向する底面132と、この底面132から下方に向かって延びシム121,121やワッシャ117を全周にわたって切れ目なく連続して囲う遮蔽壁133とからなる、弾性体の部材である。
【0085】
第6のボルト122は、頭部124の一部がストッパ110の底面132よりも下方に向かって突出する。頭部124が突出することで、締結部材側対向面127は、第6のナット114に向かって露出する。ストッパ110の遮蔽壁133は、締結部材側対向面127よりも下方に向かって延ばされ、締結部材側対向面127の周縁を全周にわたって囲っている。
【0086】
車両用開閉体ストッパ装置100は、車体11の一部であるアウタパネル12aと、このアウタパネル12aに溶接される被締結部材としての第6のナット114と、アウタパネル12aの外面に沿って設けられる付属部品としてのカバー部材14aと、カバー部材14aの内周及び外面に沿って設けられるワッシャ117と、このワッシャ117の外面側に設けられるシム121,121と、これらのシム121,121、ワッシャ117及びアウタパネル12aを一体的に締める締結部材としての第6のボルト122と、この第6のボルト122がインサート成形されるストッパ110とからなる。
【0087】
ストッパ110の取付作業は、第6のナット114が溶接されたアウタパネル12aの外面に、まずカバー部材14aを沿わせる。カバー部材14aを沿わせた後に、カバー部材14aの締結用貫通孔115にワッシャ117を挿入する。ワッシャ117を挿入した後、締結部材側対向面127がワッシャ117の外面側の面に接触するまで、第6のボルト122を前進させる。
【0088】
第6のボルト122を締結させた後に、カバー部材14aからストッパ110の当接面129までの高さを計測する。この高さが所定の高さhであれば、取付作業を終了する。
一方、取付高さが所定の高さよりも低い場合は、第6のボルト122を緩めて、締結部材側対向面127とワッシャ117との間に隙間を開ける。開けられた隙間にシム121を挿入する。シム121はC字形状を呈しており、第6のボルト122を第6のナット114から外さずとも挿入することができる。
【0089】
シム121を挿入したら、締結部材側対向面127がシム121の外面側の面に接触するまで、第6のボルト122を前進させる。締結後、カバー部材14aからストッパ110の当接面129までの高さを計測し、取付高さが所定の高さになるまでこの作業を繰り返す。
【0090】
車両用ウインド開閉装置100によれば、以下のことがいえる。
ストッパ110に設けられている第6のボルト122は、ストッパ110の底面132から露出し且つ第6のナット114に向いた、締結部材側対向面127を有している。これにより、間に弾性体からなるストッパ110を介在させることなく第6のボルト122を第6のナット114に締結させることができるので、より正確に高さの管理が行える。
【0091】
即ち、第6のボルト122は第6のナット114に締結するものであるから、弾性を有しているストッパ110に比べて極めて高剛性であり、通常の使用状態で変形することはない。このため、第6のボルト122は、車体11に安定した状態で取付けられる。この結果、弾性を有しているストッパ110を車体11に安定した状態で取付けることができるとともに、車体11に対するストッパ110の取付高さhを適切に設定する、つまり、取付高さhの管理を十分に行うことができる。
【0092】
さらに、ストッパ110の底面132から第6のナット114へ向かって延びた遮蔽壁133は、締結部材側対向面127の周縁を全周にわたって囲うように、環状に形成されている。さらに、遮蔽壁133は、締結部材側対向面127よりも第6のナット114側へ延びている。このため、ストッパ110を取付けるための取付面から、ストッパ110の底面132が多少離れている場合であっても、締結部材側対向面127及びその周囲を遮蔽壁133によって十分に囲うことができるので、車両の外観性を高めることができる。
【0093】
また、締結部材側対向面127と第6のナット114との間にシム121を適宜に介在させることによって、ストッパ110を取付けるための取付面に対し、ストッパ110の取付高さhを容易に且つ正確に調整することが可能である。特に、1つのウインド部材20に対して複数の車両用開閉体ストッパ装置100が位置している場合には、それぞれのストッパ110の取付高さhを、正確に調整する必要がある。
【0094】
これに対し、複数の車両用開閉体ストッパ装置100における、締結部材側対向面127と第6のナット114との間にシム121を適宜に介在させるだけの作業によって、ストッパ110の取付高さhを短時間に極めて容易に且つ正確に調整することができる。このため、調整作業の作業性が高まる。しかも、締結部材側対向面127に位置しているシム121を遮蔽壁133によって十分に囲うことができるので、車両の外観性を高めることができる。
【0095】
さらに、遮蔽壁133は、締結部材側対向面127を囲っている他に、ワッシャ117の周縁をも全周にわたって囲っている。ワッシャ117が遮蔽壁133で囲われているため、ストッパ110の当接面129側から第6のナット114を見た場合に、ワッシャ117が遮蔽壁133で隠され、外観が高まる。
【0096】
また、シム121を用いない場合やシム121の枚数が少ない場合には、遮蔽壁133がカバー部材14a近傍に位置する。遮蔽壁133がカバー部材14a近傍に位置することで、側方から覗いた場合にもワッシャ117を隠すことができ、さらに外観を高めることができる。
【0097】
加えて、ワッシャ117は、大径部119と小径部118とが、2段に且つ一体に形成された段付きワッシャの構成であり、大径部119は、樹脂製のカバー部材14aと締結部材側対向面127との間に位置し、小径部118は、締結用貫通孔115を貫通してアウタパネル12aの外面に接している。即ち、樹脂製のカバー部材14aは、ワッシャ117を介して第6のボルト122に締結される。第6のボルト122を直接当接させず、ワッシャ117で荷重を分散させることで、樹脂製のカバー部材14aに過度の負荷がかかることを防止できる。
【0098】
車両用開閉装置140について次図以降で詳細を説明する。
図10は車両を側方から見た状態の車両用開閉装置140の断面図であり、図11は車両用開閉装置140の組立作業を説明する斜視図であり、図12は車両を上方から下方に向かって見た場合の車両用開閉装置の断面図であり、図13は車両用開閉装置140の分解図である。
【0099】
図1及び図10から図13までに示すように、車両用開閉装置140は、想像線で示されるラッチ機構141にストライカ142が着脱自在に係止され、このストライカ142に対向する部位にウインド部材20を挟んで樹脂製の把手143が配置され、第7のボルト144、144によってストライカ142と把手143とが一体的に取付けられる。
【0100】
ウインド部材20は、車体11の開口部17(図1参照)に対して開閉可能に設けられる。ウインド部材20の開閉作業を行う際に作業者は、ウインド部材20の外面に取付けられた把手143に手を掛け、ウインド部材20をスイングさせる。
【0101】
ウインド部材20を開く方向にスイングさせる際に、把手143に指を架けやすいよう、把手143の底面には指架け凹部146(図10参照)が設けられる。
また、指架け凹部146の近傍から、ウインド部材20に向かって脚部147が延ばされる。この脚部147は把手143の全周にわたって設けられる。
【0102】
さらに把手143には、ウインド部材20に向かってピン部148(図12及び図13参照)が複数(例えば、3本)延ばされるとともに、把手143にインサート成形された第7のナット149,149を固定するナット固定部151,151が形成される。
【0103】
第7のナット149,149は、外面がナット固定部151,151で覆われる本体部152、152と、ナット固定部151,151からウインド部材20側に向かって突出すると共に、周方向にも突出する突出部153,153とからなる。突出部153,153は、第7のナット149,149の軸方向に延びる軸方向突出部153a,153aと、周方向に延びる周方向突出部153b,153bとからなる。
【0104】
少なくとも周方向突出部153b,153bに接触するよう、金属製の挟持部材154が設けられる。板状の挟持部材154には、軸方向突出部153a,153aが挿通されるナット挿通孔155,155が開けられると共に、把手143のピン部148が挿通されるピン挿通穴156が開けられる。
【0105】
挟持部材154の車内側の面に接するよう、ウインド部材20に開けられたカラー嵌合孔158,158に第2のカラー159,159が嵌合される。
第2のカラー159は、カラー嵌合孔158の縁に掛け止めるための鍔161,162を両端に有している、弾性を有した鍔付き筒体である。この鍔付き筒体は、第7のボルト144を挿通するためのボルト挿通孔163を有する。
【0106】
第2のカラー159の鍔161と共に、第1の弾性部材165が挟持部材154に接触する。
第1の弾性部材165は、把手143のピン部148が差し込まれるピン差込孔166と、第2のカラー159,159の鍔161,161を囲うよう開けられた孔部167、167とが備えられる。ピン部148が差し込まれることで、第1の弾性部材165は把手143に係止される。
【0107】
ウインド部材20の車内側の面には、第2のカラー159の鍔162が接触すると共に、第2の弾性部材169が接触する。
第2の弾性部材169には、鍔162を囲うように孔部171,171が開けられると共に、ストライカ142のベース板172の周縁を収納するよう、縁部に収納部173が設けられる。
【0108】
第2のカラー159は、弾性部材165,169よりも低い硬度の材料によって構成されている。第2のカラー159に弾性部材165,169よりも柔らかい素材を用いることで、カラー嵌合孔158近傍に加わる荷重をより吸収することができる。強度の弱い、カラー嵌合孔158近傍に加わる荷重をより吸収しやすくすることで、よりウインド部材20の保護を強化することができる。
【0109】
第2の弾性部材169にベース板172が収納されるストライカ142は、ベース板172の略中央部にラッチ機構141に向かって突出する凸部174が形成され、この凸部174の中央に、ラッチ機構141に係合されるストライカ部175が取付けられる。
ベース板172に、第7のボルト144を挿通するためのベース板孔部176が開けられる。
ストライカ142と把手143とを締結する第7のボルト144には、鍔付き六角ボルトが用いられ、ボルト鍔部177がベース板172の車内側の面に接触する。
【0110】
車両用開閉装置140を組立てるには、まず仮組を行い、3つの仮組体を得る。即ち、第2のカラー159をウインド部材20のカラー嵌合孔158に嵌合させた第1の仮組体181(図11参照)と、挟持部材154を把手143のピン部148及び第7のナット149の軸方向突出部153aに挿通させた上で、第1の弾性部材165をピン部148に係止させた第2の仮組体182と、ストライカ142のベース板172を第2の弾性部材169の収納部173に収納した第3の仮組体183を得る。
【0111】
仮組を行い、3つの部材を得たら、次に本組を行う。第1の仮組体181に第2の仮組体182を取付けるべく、第2のカラー159のボルト挿通孔163に、第7のナット149の軸方向突出部153aを挿入する。
【0112】
次に、ストライカ142のベース板172に設けられたベース板孔部176を、第2のカラー159のボルト挿通孔163に合わせた上で、第7のボルト144を第7のナット149に締結させることで、車両用開閉装置140は組立てられる。
【0113】
第1の弾性部材165を把手143に係止させ、ストライカ142のベース板172を第2の弾性部材169の収納部173に収納させておくことで、これらの部材の取付けが容易になる。取付けが容易であるため、車両用開閉装置140を短時間で組立てることができる。
【0114】
また、ウインド部材20の車外側の面には把手143が配置され、ウインド部材20の車内側の面にはストライカ142が配置されている。ウインド部材20と把手143との間には、金属製の挟持部材154が介在している。把手143にインサート成形された第7のナット149は、挟持部材154に接するように把手143から突出した突出部153を有している。車内側からストライカ142及びウインド部材20を貫通した第7のボルト144を、第7のナット149に締結することにより、この第7のナット149の突出部153は、挟持部材154をウインド部材20に押し付ける。この結果、挟持部材154とストライカ142とによってウインド部材20を挟持することにより、このウインド部材20に把手143及びストライカ142が取付けられる。
【0115】
このように、第7のナット149の突出部153が把手143から挟持部材154へ向かって突出し、しかも、金属製の挟持部材154とストライカ142とによってウインド部材20を挟持するので、ウインド部材20に対して、把手143は直接に接することなく取付けられる。ウインド部材20を閉じた状態で車両を走行させると、車体11からラッチ機構141を介してストライカ142に、振動などの各種の外力が作用する。この外力は、ストライカ142から第7のボルト144及び第7のナット149を介して、金属製の挟持部材154に伝わり、挟持部材154から周囲に分散される。このため、把手143には比較的小さい外力が伝わる。把手143の取付強度を高めることができる。
【0116】
さらに、カラー嵌合孔158に第2のカラー159が嵌合され、第2のカラー159は、第7のボルト144を挿通するためのボルト挿通孔163を有する。第7のボルト144は、ボルト挿通孔163を介してカラー嵌合孔158に嵌合している。車体11に加わる振動が第7のボルト144を介してウインド部材20に加わることがある。第7のボルト144をウインド部材20に当接させないことで、ウインド部材20に加わる負荷を軽減することができる。
加えて、第2のカラー159を挟持部材154に当接させることで、第2のカラー159が倒れ込んでボルト挿通孔163に荷重が加わることを抑制できる。
【0117】
加えて、ウインド部材20と挟持部材154との間に介在する第1の弾性部材165を備えている。
第1の弾性部材165を備えていることで、ウインド部材20に加わる負荷を軽減することができる。
加えて、第1の弾性部材165は、把手143に係止されている。第1の弾性部材165の位置ずれを防止すると共に、把手143のがたつきを防止することができる。
【0118】
尚、本発明に係る車両用開閉装置は、ガラス製の開閉体の他樹脂製の開閉体にも適用可能であり、これらのものに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の車両用開閉装置は、ガラス製ウインドガラスの開閉に好適な装置である。
【符号の説明】
【0120】
10…車両、11…車体、17…開口部、20…ウインド部材(開閉体)、140…車両用開閉装置、141…ラッチ機構、142…ストライカ、143…把手(樹脂製部材)、144…第7のボルト(ボルト)、149…第7のナット(ナット)、153…突出部、154…挟持部材、158…カラー嵌合孔、159…第2のカラー(カラー)、161、162…鍔、163…ボルト挿通孔、165…第1の弾性部材(弾性部材)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に形成されている開口部を開閉するための開閉体に、施錠用のストライカを備えた、車両用開閉装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両はバックドアやサイドドア等の開閉体に、ストライカ及び各種の樹脂製部材(ハンドル等の付属品)を備えている。このようなストライカと樹脂製部材の両方を備えた技術は、各種知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1で知られている車両用開閉装置は、バックドアに開閉可能な板状のハッチガラスを設け、このハッチガラスにストライカ及びハンドルを備えたというものである。ハンドルは、ハッチガラスの車外側の面に取付けられている。ストライカは、ハンドルに取付けられており、ハッチガラスの車内側の面に位置する。
【0004】
バックドアを閉じた状態で車両を走行させると、車体からラッチ機構を介してストライカに、振動などの各種の外力が作用する。このような外力は、ストライカからハンドルを介してハッチガラスに伝わる。このため、ハッチガラスに対するハンドルの取付強度を確保するには、ハッチガラスにハンドルを単に取付けるわけにはいかない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−17295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、開閉体に取付けられる樹脂製部材の取付強度を高めることができる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体に形成されている開口部を開閉するための開閉体と、この開閉体の車外側の面に取付けられる樹脂製部材と、開閉体の車内側の面に取付けられてラッチ機構に係止することが可能なストライカと、を備えた車両用開閉装置において、
樹脂製部材とストライカとは、開閉体を挟んで互いに対向し合い、
樹脂製部材と開閉体との間に金属製の挟持部材が介在し、
樹脂製部材にナットがインサート成形され、
このナットは、挟持部材に接するための突出部を有し、
この突出部は、樹脂製部材から挟持部材へ向かって突出しており、
ナットと、車内側からストライカ及び開閉体を貫通してナットに締結されるボルトと、によって、開閉体に樹脂製部材及びストライカが取付けられるとともに、このストライカと挟持部材とによって開閉体を挟持していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、開閉体は、ガラス製又は樹脂製の透視可能なウインド部材であり、
このウインド部材は、カラーを嵌合するために貫通されたカラー嵌合孔を有し、
カラーは、ボルトを挿通するためのボルト挿通孔を有する筒体からなるとともに、挟持部材に当接していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、開閉体と挟持部材との間に介在する弾性部材を、更に備え、
弾性部材は、樹脂製部材に係止されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、カラーは、弾性部材よりも低い硬度の材料によって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、開閉体の車外側の面には樹脂製部材が配置され、開閉体の車内側の面にはストライカが配置されている。開閉体と樹脂製部材との間には、金属製の挟持部材が介在している。樹脂製部材にインサート成形されたナットは、挟持部材に接するように樹脂製部材から突出した突出部を有している。車内側からストライカ及び開閉体を貫通したボルトを、ナットに締結することにより、このナットの突出部は、挟持部材を開閉体に押し付ける。この結果、挟持部材とストライカとによって開閉体を挟持することにより、この開閉体に樹脂製部材及びストライカが取付けられる。
【0012】
このように、ナットの突出部が樹脂製部材から挟持部材へ向かって突出し、しかも、金属製の挟持部材とストライカとによって開閉体を挟持するので、開閉体に対して、樹脂製部材は直接に接することなく取付けられる。開閉体を閉じた状態で車両を走行させると、車体からラッチ機構を介してストライカに、振動などの各種の外力が作用する。この外力は、ストライカからボルト及びナットを介して、金属製の挟持部材に伝わり、挟持部材から周囲に分散される。このため、樹脂製部材には比較的小さい外力が伝わる。樹脂製部材の取付強度を高めることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、カラー嵌合孔にカラーが嵌合され、カラーは、ボルトを挿通するためのボルト挿通孔を有する。ボルトは、ボルト挿通孔を介してカラー嵌合孔に嵌合している。車体に加わる振動がボルトを介してウインド部材に加わることがある。ボルトをウインド部材に当接させないことで、ウインド部材に加わる負荷を軽減することができる。
加えて、カラーを挟持部材に当接させることで、カラーが倒れ込んでボルト挿通孔に荷重が加わることを抑制できる。
【0014】
請求項3に係る発明では、開閉体と挟持部材との間に介在する弾性部材を備えている。
弾性部材を備えていることで、開閉体に加わる負荷を軽減することができる。
加えて、弾性部材は、樹脂製部材に係止されている。弾性部材の位置ずれを防止すると共に、樹脂製部材のがたつきを防止することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、カラーは、弾性部材よりも低い硬度の材料によって構成されている。カラーに弾性部材よりも柔らかい素材を用いることで、カラー嵌合孔近傍に加わる荷重をより吸収することができる。強度の弱い、カラー嵌合孔近傍に加わる荷重をより吸収しやすくすることで、よりウインド部材の保護を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車両用開閉装置が搭載された車両を後方から見た斜視図である。
【図2】本発明に係るウインド部材、ヒンジ及びリアスポイラの分解斜視図である。
【図3】本発明に係るヒンジの分解斜視図である。
【図4】本発明に係る車両用ウインド開閉装置の要部を説明する分解斜視図である。
【図5】本発明に係るヒンジの取付け状態を説明する図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図5の8−8線断面図である。
【図9】図1の9−9線断面図である。
【図10】図1の10−10線断面図である。
【図11】本発明に係る把手、ウインド部材及びストライカの分解斜視図である。
【図12】図1の12−12線断面図である。
【図13】本発明に係る把手、ウインド部材及びストライカの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
なお、実施例に係る車両用開閉装置は、主に図1及び図10から図13までで説明する。
【実施例】
【0018】
実施例に係る車両用開閉装置が搭載された車両について、図1に基づき説明する。
図1は、車両を後方から見た状態で表している。
【0019】
図1に示すように、車両10の車体11の後部表面は、左右のリヤサイドパネル12,12と、ルーフパネル13とで構成される。
【0020】
リヤサイドパネル12,12の後端下部にそれぞれリヤコンビネーションランプ14,14が取付けられる。これらのリヤコンビネーションランプ14,14の下部にリヤバンパフェイス15が設けられる。
【0021】
車体の背面には、内外に貫通した開口部17が形成されている。
つまり、リヤサイドパネル12,12の後端とルーフパネル13の後端とで開口部17を形成し、この開口部17に対して開閉可能にウインド部材20が取付けられる。
ウインド部材20は、上部がリヤスポイラ21によって覆われ、下部には、開閉操作するための把手143が取付けられる。
【0022】
ウインド部材20は、車体11に対して上下方向に延びている、ガラス製又は樹脂製の透視可能な開閉体である。ウインド部材20の上部を覆うリヤスポイラ21は、ルーフパネル13の上部に流れる走行風の整流を目的として取付けられた外装部材である。
【0023】
ウインド部材20を閉じた際の衝撃を吸収するために、閉じた場合のウインド部材20に対向するように、複数(本実施例では4つ)のストッパ110が車体11に取付けられる。
【0024】
また、車体11に一端が取付けられ、他端がウインド部材20の右端に取付けられるオープンステー24が備えられている。このオープンステー24は、ウインド部材20が開いている場合に、開いた状態を保持するものである。
ウインド部材20を開閉可能に支持するための車両用ウインド開閉装置について、次図以降で詳細を説明する。
【0025】
図2はウインド部材20、ヒンジ25及びリヤスポイラ21の取付関係を説明する分解斜視図であり、図3はヒンジ25を説明する分解斜視図であり、図4は本発明に係る車両用ウインド開閉装置の要部を説明する分解斜視図である。
【0026】
図2から図4までに示すように、板状のウインド部材20をスイング可能に支持するために、ヒンジ25L,25R(Lは車幅方向左側を示す添え字、Rは車幅方向右側を示す添え字。以下同じ。)がウインド部材20に取付けられる。
【0027】
ヒンジ25L,25Rは、ウインド部材20の上端部26(上縁)とウインド部材20の車幅方向の端部27L、27R(側縁)とが交わる部位の近傍に設けられたヒンジ取付部材28L,28Rを介して、ウインド部材20に固定される。
【0028】
また、ヒンジ25L,25Rには、それぞれ、リヤスポイラ21を取付けるためのリヤスポイラ取付部31L,31Rが設けられる。これらのリヤスポイラ取付部31L,31Rに架け渡されるようにリヤスポイラ21は取付けられる。
【0029】
なお、一対のヒンジ25L,25Rは、互いに左右対称形に形成されているが、左右共に同様の構成からなる部材である。
図3及び図4では、車両を後方から見た場合の車幅方向左側のヒンジ25Lを示しているが、右側のヒンジ25Rも左側のヒンジ25Lと同様である。以下単に「ヒンジ25」等と記載する。
【0030】
図3及び図4に示すように、ヒンジ25は、ルーフパネル13に固定される車体側ヒンジ部32と、この車体側ヒンジ部32に支持されるヒンジ軸部材33と、このヒンジ軸部材33に支持されウインド部材20に取付けられるウインド側ヒンジ部34とからなる。
【0031】
車体側ヒンジ部32は、ルーフパネル13に当接される基部35と、この基部35の中央に設けられた第1のボルト37と、基部35の両側方から立上げられた立上げ部38,38と、これらの立上げ部38,38の上端近傍に開けられ、ヒンジ軸部材33が通される軸挿通穴39,39とからなる。
【0032】
ヒンジ軸部材33は、軸挿通穴39,39に通されるヒンジピン41と、このヒンジピン41の溝部41aに嵌め込まれ、ヒンジピン41が軸挿通穴39,39から抜けることを防止する抜け止め部材42とからなる。
【0033】
ウインド側ヒンジ部34は、略矩形状の本体部44の中央にビード部45が形成され、本体部44の側方に形成された補助ビード部46から、車幅方向外側に向かって延長部47が延びている。この延長部47にリヤスポイラ21を取付けるためのリヤスポイラ取付部31が設けられる。この延長部47の内、リヤスポイラ21が取付けられる面をリヤスポイラ取付面(外装部材取付面)48という。
【0034】
本体部44に形成されウインド部材20に取付けられるウインド部材取付面49は、リヤスポイラ取付面48の裏面51と略同一面上に、形成されている。ウインド部材取付面49は、ウインド部材20に沿って配置される。
本体部44の中央に亘って延びているビード部45には、リヤスポイラ取付部31と共にリヤスポイラ21に取付けられる補助取付部52が設けられる。
【0035】
本体部44(ウインド部材取付面49)に対し、リヤスポイラ取付部31(裏面51)が略同一平面上に設けられている。リヤスポイラ取付部31を本体部44と略同一平面上に設けることで、リヤスポイラ21をウインド部材20に近付けて設けることができる。リヤスポイラ21をウインド部材20に近付けることで、リヤスポイラ21、ウインド部材20及びウインド側ヒンジ部34を近付けて配置することができる。近付けて配置することで、さらにウインド部材20の撓みの発生を抑制することができる。
【0036】
特に、ウインド側ヒンジ部34が屈曲構造を備えている場合は、屈曲部で撓む可能性が高いので、略同一平面上に設けることでウインド側ヒンジ部34の撓みの影響を受け難くすることができる。
【0037】
ウインド側ヒンジ部34は、同一面上に設けられる本体部44及び延長部47に対して、補強部としてのビード部45、補助ビード部46及び折曲げ形状部58が凹凸状に形成されている。
【0038】
車体側ヒンジ部32にウインド側ヒンジ部34を軸支する軸支部53,53が本体部44から延びている。軸支部53,53には、ヒンジピン41を挿通するためのピン挿通穴54,54が開けられる。
【0039】
ビード部45の側方に開けられた2つの穴の内、延長部47側(車幅方向外側)に開けられた穴は、ウインド部材20にウインド側ヒンジ部34を固定するために設けられた固定点56である。
ビード部45の側方に開けられた2つの穴の内、固定点56とビード部45を挟むようにして開けられた穴(車幅方向内側)は、ウインド部材20にウインド側ヒンジ部34を固定するために設けられた補助固定点57である。
【0040】
ウインド側ヒンジ部34のビード部45に略直交する方向の縁に、ウインド部材20側に向かって折曲げられる折曲げ形状部58が、本体部44から延長部47に亘って形成されている。折曲げ形状部58が形成されることで、曲げ方向にかかる力に対してウインド側ヒンジ部34の強度を高めることができる。
【0041】
ウインド側ヒンジ部34は、ブッシュ59,59を介してヒンジ軸部材33に回転可能に支持される。
ブッシュ59,59は、小径部61,61と、この小径部61,61よりも外径の大きい大径部62,62とが一体的に形成されてなる。
【0042】
ウインド側ヒンジ部34のピン挿通穴54,54に小径部61,61が通され、小径部61,61よりも車体側ヒンジ部32の立上げ部38側に大径部62,62が位置する。大径部62,62が車体側ヒンジ部32とウインド側ヒンジ部34との間のスペーサの役割を果たすと共に、ピン挿通穴54,54に小径部61,61を通すことで、ウインド側ヒンジ部34を円滑にスイングさせることができる。
【0043】
車体側ヒンジ部32は、ルーフパネル13の端部に開けられた車体側ヒンジ固定穴63に第1のボルト37を上方から通し、この第1のボルト37に第1のナット64を下方から螺合させることで固定される。
【0044】
ウインド側ヒンジ部34は、第2のボルト66をヒンジ取付部材28及び固定点56に下方から通した上で第2のナット67を上方から螺合すると共に、第3のボルト68をヒンジ取付部材28及び補助固定点57に通した上で第3のナット69を螺合することでウインド部材20に固定される。
【0045】
加えてウインド側ヒンジ部34は、リヤスポイラ21に取付けられた第4のボルト71をリヤスポイラ取付部31に通した上で第4のナット72を螺合すると共に、リヤスポイラ21に取付けられた第5のボルト73を補助取付部52に通した上で第5のナット74を螺合することでリヤスポイラ21に固定される。
【0046】
車両用ウインド開閉装置30は、ヒンジ取付部材28が取付けられたウインド部材20と、リヤスポイラ取付部31を備えたヒンジ25と、外装部材としてのリヤスポイラ21とからなる。
ルーフパネル13及び車体側ヒンジ部32は、スイング不能であり、ウインド側ヒンジ部34、ウインド部材20及びリヤスポイラ21が、スイングする。
【0047】
リヤスポイラ取付部31とは別に補助取付部52を設け、リヤスポイラ取付部31と補助取付部52との間に、ウインド部材20に固定するための固定点56が設けられている。固定点56を挟むようにして、リヤスポイラ取付部31と補助取付部52とを設ける。リヤスポイラ取付部31と補助取付部52とで固定点56を挟むことで、ウインド部材20に対して、より強固にウインド側ヒンジ部34を取付けることができる。
【0048】
加えて、ウインド部材取付面49にビード部45を有している。ビード部45を有していることで、ウインド部材取付面49の剛性を高めることができる。
【0049】
さらに、補助取付部52は、ビード部45の部位に位置している。ビード部45に補助取付部52を設けることで、補助取付部52の強度を高めることができる。補助取付部52の強度を高めることで、リヤスポイラ21に対してより強固にウインド側ヒンジ部34を取付けることができる。
【0050】
加えて、ウインド部材取付面49は、固定点56と共にウインド側ヒンジ部34をウインド部材20に固定するための補助固定点57を有している。固定点56と補助固定点57との2点でウインド側ヒンジ部34をウインド部材20に対して取付けることで、ウインド側ヒンジ部34をウインド部材20に対して強固に固定することができる。
【0051】
さらに、固定点56と補助固定点57とでビード部45を挟んでいる。固定点56と補助固定点57とでビード部45を挟むため、固定点56と補助固定点57のそれぞれを強度の高いビード部45の近傍に設けることができる。強度の高いビード部45の近傍に固定点56と補助固定点57とを設けることで、さらに強度を高めることができる。
車両用ウインド開閉装置30について、組立てられた状態を次図以降で詳細に説明する。
【0052】
図5はウインド側ヒンジ部34を取付けたウインド部材20を車両後部から透視した図である。
ウインド部材20は、幅方向の端部27(側縁)と上端部26(上縁)とが交差する角部に、切り欠き形状を呈する切欠き部76を有する。切欠き部76は、ウインド部材20の幅方向中央側に向かって凹となる曲線状に形成される。
【0053】
一方、リヤサイドパネル12は、切欠き部76から離れるように曲げられた曲げ部77を有する。この曲げ部77と切欠き部76との間に形成される隙間78に向かって、ウインド側ヒンジ部34の延長部47が延ばされている。延長部47に設けられるリヤスポイラ取付部31は、端部27よりも車幅方向外側であって、上端部26よりも下方に位置する。
【0054】
曲げ部77と切欠き部76との間の隙間78に、リヤスポイラ取付部31が位置している。
鋼板等が用いられるリヤサイドパネル12は、任意の形状に形成することができる。一方、ガラス等が用いられるウインド部材20は、材料の性質上、全体をリヤサイドパネル12の形状に追従させることが困難である。ウインド部材20の切欠き部76近傍にリヤサイドパネル12の曲げ部77が位置する場合は、必然的に曲げ部77と切欠き部76との間に隙間78が形成される。必然的に形成された隙間78に向かって延長部47を延ばし、リヤスポイラ取付部31を設けることで、スペースの有効活用を図ることができる。
【0055】
さらに、図1及び図2も参照して以下のことがいえる。
リヤスポイラ取付部31は、ウインド部材20の幅方向の縁よりも外側に位置している。リヤスポイラ取付部31がウインド部材20の縁よりも外側に位置するため、リヤスポイラ21をウインド部材20の幅方向全体に亘って取付けることができる。幅方向全体に亘って取付けることで、ウインド部材20を幅方向全体で支持することができる。ウインド部材20の幅方向全体を支持することで、ウインド部材20の撓み量を少なくすることができる。
【0056】
撓み量を少なくすることで、オープンステー24をウインド部材20の両端に設ける必要がなくなる。オープンステー24を1つ取付ければ足りるため、部品点数を削減することができる。
【0057】
加えて、リヤスポイラ取付部31がウインド部材20の幅方向の縁よりも外側に位置しているため、リヤスポイラ21の取付作業時に、ウインド部材20の干渉を防ぐことができる。リヤスポイラ取付部31の取付けが容易であり、組立作業の短時間化を図ることができる。
【0058】
加えて、曲げ部77と切欠き部76との間の隙間78に、リヤスポイラ取付部31が位置することで、隙間78を覆うようにリヤスポイラ21を延ばすことができる。リヤスポイラ21で隙間78を覆うことで、高い外観性を保つことができる。
また、ウインド部材20とリヤサイドパネル12との間に形成され得る隙間78を気にする必要がなくなり、デザインの自由度が増す。
【0059】
ウインド部材20に外力(ウインド部材の自重や、片持ちステーからの荷重等)が加わった場合、ウインド側ヒンジ部34が車体側ヒンジ部32と軸支部53とウインド部材20の固定点56との間で撓む可能性があるが、リヤスポイラ取付部31をウインド部材20の上端部26よりも下方に位置させることで、ウインド側ヒンジ部34の撓みの影響を受けることなくリヤスポイラ31でウインド部材20の上端部26を支持することができる。
【0060】
第2のボルト66が通される固定点(図3、符号56)は、ビード部45の軸線45aと、この軸線45aに平行でリヤスポイラ取付部31の中心を通る取付部中心線31aとの間に位置する。
【0061】
また、リヤスポイラ取付部31は、軸支部53から固定点56に向かって延びている線53aよりも車幅方向外側に位置する。補助取付部52と固定点56との間でウインド側ヒンジ部34が撓む可能性がある部位から外れた位置にリヤスポイラ取付部31が位置する。
車両用ウインド開閉装置30について、次図以降でさらに詳細に説明する。
【0062】
図6はルーフパネル13、ヒンジ25、ウインド部材20及びリヤスポイラ21の取付状態を説明する断面図であり、図7はウインド側ヒンジ部34のウインド部材への取付構造を説明する断面図であり、図8はヒンジ25をウインド部材20に固定するためのヒンジ取付部材28の詳細を説明する断面図である。
【0063】
図6から図8までに示すように、ルーフパネル13は、ルーフパネルインナ13aにルーフパネルアウタ13bを重ね合わせて閉断面部81を形成すると共に、この閉断面部81から延ばされたルーフパネル延長部82が形成される。
【0064】
ルーフパネル延長部82を挟むようにして第1のボルト37が第1のナット64に嵌合される。第1のボルト37と第1のナット64とで、車体側ヒンジ部32はルーフパネル13に固定される。ルーフパネル延長部82の先端には、シール部材84が取付けられる。
【0065】
リヤスポイラ21は、リヤスポイラインナ21aにリヤスポイラアウタ21bを重ね合わせて閉断面形状を呈してなる。リヤスポイラインナ21aの先端部近傍に、穴部87が開けられる。穴部87に対向する部位に向かって、遮蔽板88が貼り合わされている。
【0066】
ウインド側ヒンジ部34は、第2のボルト66と第2のナット67及び、第3のボルト68と第3のナット69とでウインド部材20に固定される。車体11を側方から見た場合(図7参照)に、第2のボルト66の先端が穴部87に重なる。
【0067】
穴部87を開けることで、第2のボルト66に対して、リヤスポイラ21が干渉することを防ぐことができる。第2のボルト66が接触し得る部位にのみ穴部87を設けることで、リヤスポイラ21全体としてはウインド部材20に近付けて取付けることができる。リヤスポイラ21をウインド部材20の近くに設けることで高い外観性を得ることができる。
【0068】
このようにして取付けられる車両用ウインド開閉装置30は、第1のボルト37、第1のナット64及び車体側ヒンジ部32が、ルーフパネル13に固定されており、スイングしない。ウインド側ヒンジ部34、ウインド部材20及びリヤスポイラ21は、ヒンジピン41を中心にスイングする。
【0069】
穴部87に被せるようにして遮蔽板88が貼り合わされている。遮蔽板88が穴部87に被せられることで、ウインド部材20をスイングさせてウインド部材20を開いた状態にしても、リヤスポイラ21の内部をウインド部材20の下方側から覗くことができない。リヤスポイラ21をウインド部材20に近付けつつ、高い外観性を確保することができる。
【0070】
ウインド部材20が撓むことで、ヒンジ25のウインド部材20を支持する部位(図7、第3のボルト68参照)も、同じ方向へ撓もうとする。一方、リヤスポイラ21は、ウインド部材20が撓むことで、相対的にウインド部材20の撓みを防止する方向へ力を加える。ウインド部材20の撓みを防止する方向へ加わる力は、リヤスポイラ取付部(図6、補助取付部52参照)へ加わる。即ち、ウインド部材20が撓むことで、ヒンジ25にはウインド部材20が撓む方向と、撓むことを防ぐ方向の両方に負荷が加わる。ヒンジ25のウインド部材20への取付位置の近傍に、リヤスポイラ取付部及び補助取付部52を設けることで、ヒンジ25の曲げ方向へ加わる負荷を軽減することができる。
【0071】
ウインド部材20には、第2のボルト66及び第3のボルト68を通し、ウインド側ヒンジ部34(ヒンジ25)を固定するためのウインド側ヒンジ固定穴91,91が開けられる。ウインド側ヒンジ固定穴91,91に、衝撃を和らげるための第1のカラー92、92が挿入される。
【0072】
第1のカラー92は、軸方向の両端部に鍔を有する中空状の部材である。中空状の内周部には、第1のカラー92の軸93に向かって突出するカラー突起部94が形成される。
カラー突起部94は、内周部の一般面95から軸93に向かって徐々に近付くテーパ部96と、このテーパ部96の先端から軸93に平行に延びる平行部97と、この平行部97の先端から一般面95に向かって垂直に延びる垂直部98とからなる。
【0073】
ボルト66,68は、テーパ部96側から挿入される。ボルト66,68を挿入する際に、テーパ部96がガイドの役割を果たす。加えて、挿入後はボルト66,68が平行部97に接触する。ボルト66,68が平行部97に接触することで、ボルト66,68が位置決めされる。緩衝材としての第1のカラー92で、ボルト66,68を正確な取付位置にガイドすることができる。
【0074】
カラー突起部94の内径よりもボルト66,68の外径を大きくする。即ち、ラップ設定にすることで、ボルト66,68を第1のカラー92(カラー部材)で保持することができ、ウインド部材20とボルト66,68および第1のカラー92、緩衝板103等を一体化(ASSY化)できる。
【0075】
軸方向の両端部で周方向に向かって延ばされる2つの鍔は、図面上方の第1の鍔部101と、この第1の鍔部101よりも外径が小さい第2の鍔部102とからなる。第1のカラー92をウインド側ヒンジ固定穴91に挿入する場合は、第2の鍔部102から押し込むようにして挿入する。第2の鍔部102の外径を第1の鍔部101の外径よりも小さくすることで、挿入が容易になる。
【0076】
第2の鍔部102を囲うようにして、弾性を有する緩衝板103がウインド部材20の表面にさらに設けられる。これらの第2の鍔部102及び緩衝板103の両方に接触し、荷重を分散させる板部材104が設けられる。
【0077】
ウインド部材20(開閉体)を閉じた際に、ウインド部材20の過移動を防止するためのストッパ110について次図で詳細に説明する。
図9は、ストッパ110が備えられる車両用開閉体ストッパ装置100を説明する断面図である。
【0078】
図1及び図9に示すように、車両用開閉体ストッパ装置100は、リヤサイドパネル12のアウタパネル12aにボルト挿通孔113が開けられ、このボルト挿通孔113が開けられる部位に、被締結部材としての第6のナット114が溶接により固定される。アウタパネル12aの面の内、外観に表れる面を外面(図面上側の面)とした場合に、第6のナット114は、外面とは逆側の内面側に固定される。
【0079】
アウタパネル12aの外面に沿ってリヤコンビネーションランプ14のカバー部材14aが配置される。カバー部材14aの内、ボルト挿通孔113に重なる部位にボルトを通すための締結用貫通孔115が設けられる。
カバー部材14aは、樹脂製の部材であり、アウタパネル12aに沿って設けられる付属部材である。
【0080】
カバー部材14aの締結用貫通孔115にワッシャ117が配置される。ワッシャ117は、締結用貫通孔115の内周に沿って配置され先端がアウタパネル12aに接触する小径部118と、この小径部118に一体的に形成されカバー部材14aの表面に沿って周方向に延ばされる大径部119とからなる。即ち、ワッシャ117は、径が大きい平板状の大径部119と、この大径部119よりも径が小さい平板状の小径部118とが、2段に且つ一体に形成された段付きワッシャの構成である。
【0081】
大径部119のカバー部材14a側の面と逆側の面(図面上部)に接触するよう、2つのシム121,121が設けられる。これらのシム121,121は、C環形状を呈し、ストッパ110の取付高さhを調整するための部材である。
【0082】
これらのシム121,121、ワッシャ117及びアウタパネル12aを締結部材としての第6のボルト122で締め付け、締結する。
ストッパ110にインサート成形されてなる第6のボルト122は、第6のナット114に螺合されワッシャ117に挿通される一般部123と、この一般部123の端部に一体的に形成され一般部123よりも大きな径の頭部124と、この頭部124の上部であって頭部124よりも径を大きくすることでストッパ110からの抜けを防止する抜け防止部125とからなる。
【0083】
一般部123よりも頭部124を大きな径とすることで、頭部124と一般部123との境界に段差が形成される。第6のナット114に対向するように形成された段差を締結部材側対向面127という。
【0084】
このような第6のボルト122と共に成形されるストッパ110は、第6のボルト122の締め付け工具を挿入するための工具挿入穴128と、工具挿入穴128の上端と同一面上に形成されウインド部材20に当接する当接面129と、この当接面129の周方向端部から下方に向かって径を広げながら下げられる側面131と、この側面131の下端で第6のナット114に対向する底面132と、この底面132から下方に向かって延びシム121,121やワッシャ117を全周にわたって切れ目なく連続して囲う遮蔽壁133とからなる、弾性体の部材である。
【0085】
第6のボルト122は、頭部124の一部がストッパ110の底面132よりも下方に向かって突出する。頭部124が突出することで、締結部材側対向面127は、第6のナット114に向かって露出する。ストッパ110の遮蔽壁133は、締結部材側対向面127よりも下方に向かって延ばされ、締結部材側対向面127の周縁を全周にわたって囲っている。
【0086】
車両用開閉体ストッパ装置100は、車体11の一部であるアウタパネル12aと、このアウタパネル12aに溶接される被締結部材としての第6のナット114と、アウタパネル12aの外面に沿って設けられる付属部品としてのカバー部材14aと、カバー部材14aの内周及び外面に沿って設けられるワッシャ117と、このワッシャ117の外面側に設けられるシム121,121と、これらのシム121,121、ワッシャ117及びアウタパネル12aを一体的に締める締結部材としての第6のボルト122と、この第6のボルト122がインサート成形されるストッパ110とからなる。
【0087】
ストッパ110の取付作業は、第6のナット114が溶接されたアウタパネル12aの外面に、まずカバー部材14aを沿わせる。カバー部材14aを沿わせた後に、カバー部材14aの締結用貫通孔115にワッシャ117を挿入する。ワッシャ117を挿入した後、締結部材側対向面127がワッシャ117の外面側の面に接触するまで、第6のボルト122を前進させる。
【0088】
第6のボルト122を締結させた後に、カバー部材14aからストッパ110の当接面129までの高さを計測する。この高さが所定の高さhであれば、取付作業を終了する。
一方、取付高さが所定の高さよりも低い場合は、第6のボルト122を緩めて、締結部材側対向面127とワッシャ117との間に隙間を開ける。開けられた隙間にシム121を挿入する。シム121はC字形状を呈しており、第6のボルト122を第6のナット114から外さずとも挿入することができる。
【0089】
シム121を挿入したら、締結部材側対向面127がシム121の外面側の面に接触するまで、第6のボルト122を前進させる。締結後、カバー部材14aからストッパ110の当接面129までの高さを計測し、取付高さが所定の高さになるまでこの作業を繰り返す。
【0090】
車両用ウインド開閉装置100によれば、以下のことがいえる。
ストッパ110に設けられている第6のボルト122は、ストッパ110の底面132から露出し且つ第6のナット114に向いた、締結部材側対向面127を有している。これにより、間に弾性体からなるストッパ110を介在させることなく第6のボルト122を第6のナット114に締結させることができるので、より正確に高さの管理が行える。
【0091】
即ち、第6のボルト122は第6のナット114に締結するものであるから、弾性を有しているストッパ110に比べて極めて高剛性であり、通常の使用状態で変形することはない。このため、第6のボルト122は、車体11に安定した状態で取付けられる。この結果、弾性を有しているストッパ110を車体11に安定した状態で取付けることができるとともに、車体11に対するストッパ110の取付高さhを適切に設定する、つまり、取付高さhの管理を十分に行うことができる。
【0092】
さらに、ストッパ110の底面132から第6のナット114へ向かって延びた遮蔽壁133は、締結部材側対向面127の周縁を全周にわたって囲うように、環状に形成されている。さらに、遮蔽壁133は、締結部材側対向面127よりも第6のナット114側へ延びている。このため、ストッパ110を取付けるための取付面から、ストッパ110の底面132が多少離れている場合であっても、締結部材側対向面127及びその周囲を遮蔽壁133によって十分に囲うことができるので、車両の外観性を高めることができる。
【0093】
また、締結部材側対向面127と第6のナット114との間にシム121を適宜に介在させることによって、ストッパ110を取付けるための取付面に対し、ストッパ110の取付高さhを容易に且つ正確に調整することが可能である。特に、1つのウインド部材20に対して複数の車両用開閉体ストッパ装置100が位置している場合には、それぞれのストッパ110の取付高さhを、正確に調整する必要がある。
【0094】
これに対し、複数の車両用開閉体ストッパ装置100における、締結部材側対向面127と第6のナット114との間にシム121を適宜に介在させるだけの作業によって、ストッパ110の取付高さhを短時間に極めて容易に且つ正確に調整することができる。このため、調整作業の作業性が高まる。しかも、締結部材側対向面127に位置しているシム121を遮蔽壁133によって十分に囲うことができるので、車両の外観性を高めることができる。
【0095】
さらに、遮蔽壁133は、締結部材側対向面127を囲っている他に、ワッシャ117の周縁をも全周にわたって囲っている。ワッシャ117が遮蔽壁133で囲われているため、ストッパ110の当接面129側から第6のナット114を見た場合に、ワッシャ117が遮蔽壁133で隠され、外観が高まる。
【0096】
また、シム121を用いない場合やシム121の枚数が少ない場合には、遮蔽壁133がカバー部材14a近傍に位置する。遮蔽壁133がカバー部材14a近傍に位置することで、側方から覗いた場合にもワッシャ117を隠すことができ、さらに外観を高めることができる。
【0097】
加えて、ワッシャ117は、大径部119と小径部118とが、2段に且つ一体に形成された段付きワッシャの構成であり、大径部119は、樹脂製のカバー部材14aと締結部材側対向面127との間に位置し、小径部118は、締結用貫通孔115を貫通してアウタパネル12aの外面に接している。即ち、樹脂製のカバー部材14aは、ワッシャ117を介して第6のボルト122に締結される。第6のボルト122を直接当接させず、ワッシャ117で荷重を分散させることで、樹脂製のカバー部材14aに過度の負荷がかかることを防止できる。
【0098】
車両用開閉装置140について次図以降で詳細を説明する。
図10は車両を側方から見た状態の車両用開閉装置140の断面図であり、図11は車両用開閉装置140の組立作業を説明する斜視図であり、図12は車両を上方から下方に向かって見た場合の車両用開閉装置の断面図であり、図13は車両用開閉装置140の分解図である。
【0099】
図1及び図10から図13までに示すように、車両用開閉装置140は、想像線で示されるラッチ機構141にストライカ142が着脱自在に係止され、このストライカ142に対向する部位にウインド部材20を挟んで樹脂製の把手143が配置され、第7のボルト144、144によってストライカ142と把手143とが一体的に取付けられる。
【0100】
ウインド部材20は、車体11の開口部17(図1参照)に対して開閉可能に設けられる。ウインド部材20の開閉作業を行う際に作業者は、ウインド部材20の外面に取付けられた把手143に手を掛け、ウインド部材20をスイングさせる。
【0101】
ウインド部材20を開く方向にスイングさせる際に、把手143に指を架けやすいよう、把手143の底面には指架け凹部146(図10参照)が設けられる。
また、指架け凹部146の近傍から、ウインド部材20に向かって脚部147が延ばされる。この脚部147は把手143の全周にわたって設けられる。
【0102】
さらに把手143には、ウインド部材20に向かってピン部148(図12及び図13参照)が複数(例えば、3本)延ばされるとともに、把手143にインサート成形された第7のナット149,149を固定するナット固定部151,151が形成される。
【0103】
第7のナット149,149は、外面がナット固定部151,151で覆われる本体部152、152と、ナット固定部151,151からウインド部材20側に向かって突出すると共に、周方向にも突出する突出部153,153とからなる。突出部153,153は、第7のナット149,149の軸方向に延びる軸方向突出部153a,153aと、周方向に延びる周方向突出部153b,153bとからなる。
【0104】
少なくとも周方向突出部153b,153bに接触するよう、金属製の挟持部材154が設けられる。板状の挟持部材154には、軸方向突出部153a,153aが挿通されるナット挿通孔155,155が開けられると共に、把手143のピン部148が挿通されるピン挿通穴156が開けられる。
【0105】
挟持部材154の車内側の面に接するよう、ウインド部材20に開けられたカラー嵌合孔158,158に第2のカラー159,159が嵌合される。
第2のカラー159は、カラー嵌合孔158の縁に掛け止めるための鍔161,162を両端に有している、弾性を有した鍔付き筒体である。この鍔付き筒体は、第7のボルト144を挿通するためのボルト挿通孔163を有する。
【0106】
第2のカラー159の鍔161と共に、第1の弾性部材165が挟持部材154に接触する。
第1の弾性部材165は、把手143のピン部148が差し込まれるピン差込孔166と、第2のカラー159,159の鍔161,161を囲うよう開けられた孔部167、167とが備えられる。ピン部148が差し込まれることで、第1の弾性部材165は把手143に係止される。
【0107】
ウインド部材20の車内側の面には、第2のカラー159の鍔162が接触すると共に、第2の弾性部材169が接触する。
第2の弾性部材169には、鍔162を囲うように孔部171,171が開けられると共に、ストライカ142のベース板172の周縁を収納するよう、縁部に収納部173が設けられる。
【0108】
第2のカラー159は、弾性部材165,169よりも低い硬度の材料によって構成されている。第2のカラー159に弾性部材165,169よりも柔らかい素材を用いることで、カラー嵌合孔158近傍に加わる荷重をより吸収することができる。強度の弱い、カラー嵌合孔158近傍に加わる荷重をより吸収しやすくすることで、よりウインド部材20の保護を強化することができる。
【0109】
第2の弾性部材169にベース板172が収納されるストライカ142は、ベース板172の略中央部にラッチ機構141に向かって突出する凸部174が形成され、この凸部174の中央に、ラッチ機構141に係合されるストライカ部175が取付けられる。
ベース板172に、第7のボルト144を挿通するためのベース板孔部176が開けられる。
ストライカ142と把手143とを締結する第7のボルト144には、鍔付き六角ボルトが用いられ、ボルト鍔部177がベース板172の車内側の面に接触する。
【0110】
車両用開閉装置140を組立てるには、まず仮組を行い、3つの仮組体を得る。即ち、第2のカラー159をウインド部材20のカラー嵌合孔158に嵌合させた第1の仮組体181(図11参照)と、挟持部材154を把手143のピン部148及び第7のナット149の軸方向突出部153aに挿通させた上で、第1の弾性部材165をピン部148に係止させた第2の仮組体182と、ストライカ142のベース板172を第2の弾性部材169の収納部173に収納した第3の仮組体183を得る。
【0111】
仮組を行い、3つの部材を得たら、次に本組を行う。第1の仮組体181に第2の仮組体182を取付けるべく、第2のカラー159のボルト挿通孔163に、第7のナット149の軸方向突出部153aを挿入する。
【0112】
次に、ストライカ142のベース板172に設けられたベース板孔部176を、第2のカラー159のボルト挿通孔163に合わせた上で、第7のボルト144を第7のナット149に締結させることで、車両用開閉装置140は組立てられる。
【0113】
第1の弾性部材165を把手143に係止させ、ストライカ142のベース板172を第2の弾性部材169の収納部173に収納させておくことで、これらの部材の取付けが容易になる。取付けが容易であるため、車両用開閉装置140を短時間で組立てることができる。
【0114】
また、ウインド部材20の車外側の面には把手143が配置され、ウインド部材20の車内側の面にはストライカ142が配置されている。ウインド部材20と把手143との間には、金属製の挟持部材154が介在している。把手143にインサート成形された第7のナット149は、挟持部材154に接するように把手143から突出した突出部153を有している。車内側からストライカ142及びウインド部材20を貫通した第7のボルト144を、第7のナット149に締結することにより、この第7のナット149の突出部153は、挟持部材154をウインド部材20に押し付ける。この結果、挟持部材154とストライカ142とによってウインド部材20を挟持することにより、このウインド部材20に把手143及びストライカ142が取付けられる。
【0115】
このように、第7のナット149の突出部153が把手143から挟持部材154へ向かって突出し、しかも、金属製の挟持部材154とストライカ142とによってウインド部材20を挟持するので、ウインド部材20に対して、把手143は直接に接することなく取付けられる。ウインド部材20を閉じた状態で車両を走行させると、車体11からラッチ機構141を介してストライカ142に、振動などの各種の外力が作用する。この外力は、ストライカ142から第7のボルト144及び第7のナット149を介して、金属製の挟持部材154に伝わり、挟持部材154から周囲に分散される。このため、把手143には比較的小さい外力が伝わる。把手143の取付強度を高めることができる。
【0116】
さらに、カラー嵌合孔158に第2のカラー159が嵌合され、第2のカラー159は、第7のボルト144を挿通するためのボルト挿通孔163を有する。第7のボルト144は、ボルト挿通孔163を介してカラー嵌合孔158に嵌合している。車体11に加わる振動が第7のボルト144を介してウインド部材20に加わることがある。第7のボルト144をウインド部材20に当接させないことで、ウインド部材20に加わる負荷を軽減することができる。
加えて、第2のカラー159を挟持部材154に当接させることで、第2のカラー159が倒れ込んでボルト挿通孔163に荷重が加わることを抑制できる。
【0117】
加えて、ウインド部材20と挟持部材154との間に介在する第1の弾性部材165を備えている。
第1の弾性部材165を備えていることで、ウインド部材20に加わる負荷を軽減することができる。
加えて、第1の弾性部材165は、把手143に係止されている。第1の弾性部材165の位置ずれを防止すると共に、把手143のがたつきを防止することができる。
【0118】
尚、本発明に係る車両用開閉装置は、ガラス製の開閉体の他樹脂製の開閉体にも適用可能であり、これらのものに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の車両用開閉装置は、ガラス製ウインドガラスの開閉に好適な装置である。
【符号の説明】
【0120】
10…車両、11…車体、17…開口部、20…ウインド部材(開閉体)、140…車両用開閉装置、141…ラッチ機構、142…ストライカ、143…把手(樹脂製部材)、144…第7のボルト(ボルト)、149…第7のナット(ナット)、153…突出部、154…挟持部材、158…カラー嵌合孔、159…第2のカラー(カラー)、161、162…鍔、163…ボルト挿通孔、165…第1の弾性部材(弾性部材)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成されている開口部を開閉するための開閉体と、この開閉体の車外側の面に取付けられる樹脂製部材と、前記開閉体の車内側の面に取付けられてラッチ機構に係止することが可能なストライカと、を備えた車両用開閉装置において、
前記樹脂製部材と前記ストライカとは、前記開閉体を挟んで互いに対向し合い、
前記樹脂製部材と前記開閉体との間に金属製の挟持部材が介在し、
前記樹脂製部材にナットがインサート成形され、
このナットは、前記挟持部材に接するための突出部を有し、
この突出部は、前記樹脂製部材から前記挟持部材へ向かって突出しており、
前記ナットと、車内側から前記ストライカ及び前記開閉体を貫通して前記ナットに締結されるボルトと、によって、前記開閉体に前記樹脂製部材及び前記ストライカが取付けられるとともに、このストライカと前記挟持部材とによって前記開閉体を挟持していることを特徴とする車両用開閉装置。
【請求項2】
前記開閉体は、ガラス製又は樹脂製の透視可能なウインド部材であり、
このウインド部材は、カラーを嵌合するために貫通されたカラー嵌合孔を有し、
前記カラーは、前記ボルトを挿通するためのボルト挿通孔を有する筒体からなるとともに、前記挟持部材に当接していることを特徴とする請求項1記載の車両用開閉装置。
【請求項3】
前記開閉体と前記挟持部材との間に介在する弾性部材を、更に備え、
前記弾性部材は、前記樹脂製部材に係止されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用開閉装置。
【請求項4】
前記カラーは、前記弾性部材よりも低い硬度の材料によって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の車両用開閉装置。
【請求項1】
車体に形成されている開口部を開閉するための開閉体と、この開閉体の車外側の面に取付けられる樹脂製部材と、前記開閉体の車内側の面に取付けられてラッチ機構に係止することが可能なストライカと、を備えた車両用開閉装置において、
前記樹脂製部材と前記ストライカとは、前記開閉体を挟んで互いに対向し合い、
前記樹脂製部材と前記開閉体との間に金属製の挟持部材が介在し、
前記樹脂製部材にナットがインサート成形され、
このナットは、前記挟持部材に接するための突出部を有し、
この突出部は、前記樹脂製部材から前記挟持部材へ向かって突出しており、
前記ナットと、車内側から前記ストライカ及び前記開閉体を貫通して前記ナットに締結されるボルトと、によって、前記開閉体に前記樹脂製部材及び前記ストライカが取付けられるとともに、このストライカと前記挟持部材とによって前記開閉体を挟持していることを特徴とする車両用開閉装置。
【請求項2】
前記開閉体は、ガラス製又は樹脂製の透視可能なウインド部材であり、
このウインド部材は、カラーを嵌合するために貫通されたカラー嵌合孔を有し、
前記カラーは、前記ボルトを挿通するためのボルト挿通孔を有する筒体からなるとともに、前記挟持部材に当接していることを特徴とする請求項1記載の車両用開閉装置。
【請求項3】
前記開閉体と前記挟持部材との間に介在する弾性部材を、更に備え、
前記弾性部材は、前記樹脂製部材に係止されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用開閉装置。
【請求項4】
前記カラーは、前記弾性部材よりも低い硬度の材料によって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の車両用開閉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−116228(P2012−116228A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265284(P2010−265284)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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