説明

車両用電気回路遮断装置

【課題】作業安全性を一層高めた車両用電気回路遮断装置を提供する。
【解決手段】サービスプラグ装置5は、ジャックハウジング11と、マルチラム端子12と、シャッター14と、プラグハウジング61と、プラグ側端子62と、連動ロック機構25と、を備える。ジャックハウジング11は車両側に取り付けられ、マルチラム端子12を備える。シャッター14は開閉可能に構成されており、マルチラム端子12を覆うようにジャックハウジング11に取り付けられる。プラグハウジング61は、ジャックハウジング11に着脱可能である。プラグ側端子62は、プラグハウジング61に取り付けられ、マルチラム端子12に対して電気的に接続可能である。連動ロック機構25は、ジャックハウジング11からのプラグハウジング61の取外しを、シャッター14が開かれた状態では阻止し、シャッター14が閉じられた状態では許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の電気回路を遮断/接続することができる電気回路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動用の大容量バッテリーを搭載する車両(例えば電気自動車)においては、高電圧の電気回路をメンテナンスする場合における安全性を確保するため、電源回路を開放する回路遮断装置(サービスプラグ装置)が備えられることがある。特許文献1及び2は、この種の回路遮断装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−287348号公報
【特許文献2】特開2002−343169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気自動車等においては、大電流に対応するために大型の端子を用いることがある。この大型端子としては、例えばベリリウム銅製の多面接触子を備えた構造の端子(いわゆるマルチラム端子)が考えられる。
【0005】
しかし、特許文献1及び2の構成では回路を開放させた状態で端子が露出することになる。上記のような大型端子を用いた場合、作業者の指が端子に触れる可能性も高くなり、この点で改善の余地が残されていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、作業安全性を一層高めた車両用電気回路遮断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の車両用電気回路遮断装置が提供される。即ち、この車両用電気回路遮断装置は、ジャックハウジングと、活電部と、シャッターと、プラグハウジングと、プラグ側端子と、連動ロック機構と、を備える。前記ジャックハウジングは、車両側に取り付けられる。前記活電部は、前記ジャックハウジングに備えられる。前記シャッターは、開閉可能に構成されるとともに、前記活電部を覆うように前記ジャックハウジングに取り付けられる。前記プラグハウジングは、前記ジャックハウジングに着脱可能である。前記プラグ側端子は、前記プラグハウジングに取り付けられ、前記活電部に対して電気的に接続可能である。前記連動ロック機構は、前記ジャックハウジングからの前記プラグハウジングの取外しを、前記シャッターが開かれた状態では阻止し、前記シャッターが閉じられた状態では許容する。
【0009】
これにより、車両側の活電部を保護するシャッターを閉じない限り、プラグハウジングをジャックハウジングから取り外すことができない構造が実現される。従って、一層の作業安全性を確保することができる。
【0010】
前記の車両用電気回路遮断装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記連動ロック機構は、ロック部材と、回転体と、を備える。前記ロック部材は、前記プラグハウジングが前記ジャックハウジングに対して所定の方向を向いているときは当該プラグハウジングの取外しを許容し、それ以外の方向を向いているときは取外しを阻止する。前記回転体は、前記プラグハウジングの回転に連動して回転することで、前記シャッターを開閉させる。取外しが前記ロック部材によって許容される方向に前記プラグハウジングを向けたとき、前記シャッターが閉じられている。
【0011】
これにより、シャッターを閉じた状態にしなければプラグハウジングをジャックハウジングから取り外せない構成を、ロック部材と回転体を用いた簡単な構成で実現することができる。
【0012】
前記の車両用電気回路遮断装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、装置のプラグ側にはハンドルが回転可能に取り付けられる。装置のジャック側には、前記プラグハウジングが前記ジャックハウジングに対して所定の第2方向を向いているときに前記ハンドルに連結/連結解除可能な連結部が設けられる。前記プラグハウジングが前記第2方向を向いているときは、前記シャッターが開かれており、この状態で前記連結部に連結した状態の前記ハンドルを回転させることにより、前記ジャックハウジングを前記プラグハウジングに対して抜差しすることができる。
【0013】
これにより、ハンドルを回転させる簡単な操作により、プラグハウジングのジャックハウジングに対する抜差しを行うことができる。また、この抜差し作業においてはシャッター14が開いた状態となることが確保されるため、シャッター14が抜差し作業の邪魔になることがない。この結果、作業性に優れた車両用電気回路遮断装置を提供することができる。
【0014】
前記の車両用電気回路遮断装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この車両用電気回路遮断装置は、前記プラグハウジング及び前記プラグ側端子を備えるプラグ部と、前記ジャックハウジング及び前記活電部を備えるジャック部と、の嵌合を検知する嵌合検知回路を備える。前記プラグ部は、前記プラグ部の前記ジャック部に対する抜差しのときに操作される伸縮可能かつ回転可能なハンドルを備える。前記ハンドルが倒されかつ縮められた状態になると、前記嵌合検知回路が嵌合を検知する。前記ハンドルが伸ばされた状態になると、前記嵌合検知回路が嵌合の解除を検知する。
【0015】
これにより、プラグ部のジャック部に対する抜差し操作に用いられるハンドルを利用して、嵌合/嵌合解除を適切に検知することができる。また、ハンドルが伸縮可能であるため、当該ハンドルを縮めたコンパクトな状態とすることで、例えば装置の輸送コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るサービスプラグ装置の全体的な構成を示す斜視図。
【図2】ジャック部の構成を示す分解斜視図。
【図3】プラグ部の構成を示す分解斜視図。
【図4】プラグ部の先端をジャック部に差し込んだ様子を示す斜視図。
【図5】図4の状態からプラグ部を回転させ、シャッターを開く様子を示す斜視図。
【図6】図5の状態から伸縮レバーを倒し、プラグ部をジャック部に押し込む様子を示す斜視図。
【図7】図6の状態から伸縮レバーを縮め、プラグ部の装着作業を完了した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るサービスプラグ装置5の全体的な構成を示す斜視図である。図2はジャック部1の構成を示す分解斜視図である。図3はプラグ部2の構成を示す分解斜視図である。
【0018】
図1に示すサービスプラグ装置(車両用電気回路遮断装置)5は、ジャック部1と、プラグ部2と、嵌合検出部3と、嵌合検知回路4と、を備える。
【0019】
なお、以下の説明では、図面に示すようにジャック部1が下、プラグ部2が上となるように配置した状態を前提にして、各構成部品の位置関係や動作の向きを説明することがある。この位置関係では、プラグ部2のジャック部1に対する抜差しは上下方向に行われることになる。しかしながら、サービスプラグ装置5の車両に対する取付け向きは任意であって、本明細書で開示される向きに限定されるものではない。
【0020】
ジャック部1は車両側の適宜の位置に取り付けられ、プラグ部2はジャック部1に対して着脱可能に構成されている。嵌合検出部3には図示しないスルー回路が設置されており、このスルー回路の導通/非導通を嵌合検知回路4(例えば車両のECU)が検出できるようになっている。この構成により、嵌合検知回路4は、プラグ部2がジャック部1に装着(嵌合)されたこと、及び装着が解除されたことを検知することができる。
【0021】
図2に示すように、ジャック部1は、ジャックハウジング11と、マルチラム端子(端子、活電部)12と、シールリング13と、シャッター14と、シャッターカバー15と、回転リング(回転体)16と、リングケース(ロック部材)17と、を備えている。
【0022】
ジャックハウジング11は、ハウジング本体21と、シャッター14を収容できるシャッター収容部22と、を一体的に備えている。ハウジング本体21は中空円柱状に形成されており、この内部に、2対(4つ)のマルチラム端子12が並べた状態で収容される。また、詳細は後述するが、ハウジング本体21の内部には、プラグ部2が備えるプラグハウジング61(図1を参照)を挿入することができる。
【0023】
図2に示す2対のマルチラム端子12は、車両側の図示しない電気回路(例えば、バッテリー)に電気的に接続されている。そして、車両の通常の使用時においては、ジャック部1にプラグ部2を装着することにより、対をなすマルチラム端子12同士が(後述のプラグ側端子62及びバスバー63によって)電気的に接続され、電気回路が閉じられて通電するようになっている。一方、車両をメンテナンスする場合等においては、ジャック部1からプラグ部2を取り外すことにより、車両の電気回路が開かれて遮断状態が実現される。
【0024】
ハウジング本体21の内壁面には、上下方向(ジャック部1に対するプラグ部2の抜差しに沿う方向。以下、単に「抜差し方向」と称することがある)に細長い1対のガイド溝43,43が形成される。これら1対のガイド溝43,43は、ハウジング本体21の軸を基準にして、互いに180°の角度をなすように配置される。このガイド溝43,43には、後述するプラグ部2が備える1対の差込凸部81,81(図1を参照。以下、プラグ部2の差込凸部81,81と簡単に称することがある)をそれぞれ差し込むことができる。
【0025】
図2に示すように、シャッター収容部22は矩形状に形成されており、ハウジング本体21の一側に接続されている。シャッター収容部22には、ハウジング本体21と接続する側と反対側を開放させた矩形状の浅い凹部が形成されている。この凹部の内部には、1対(2つ)のシャッター14,14がスライド可能に配置される。
【0026】
シャッター収容部22の底部中央には大きな貫通状の孔が形成されており、この孔を介して、ハウジング本体21の内部空間が開放されている。この孔は、後述のシャッター14により開閉することができる。
【0027】
シャッター収容部22には、プラグ部2側に突出するように1対の突起41,41が形成されている。この突起41,41は、シャッター収容部22の底部に形成された大きな孔を挟むようにして配置されている。それぞれの突起41には連結突起(連結部)42が形成されている。この連結突起42は、後述のプラグ部2が備える伸縮レバー(ハンドル)67に連結することができる。
【0028】
シールリング13は、ジャックハウジング11が備えるハウジング本体21の内部に配置されている。このシールリング13は、後述のプラグ部2が備えるプラグハウジング61の先端部をジャックハウジング11の内部に差し込んだときに当該プラグハウジング61に密着し、埃等の異物が侵入することを防止する。
【0029】
シャッター14,14は2つで1組とされ、それぞれが、ジャックハウジング11が備えるシャッター収容部22の内部に配置される。シャッター14,14は、シャッター収容部22の内部で、抜差し方向に垂直な向きに移動可能となっている。それぞれのシャッター14の上面(プラグ部2側を向く面)には細長いスライド溝44が形成されており、当該スライド溝44を介して、シャッター14が回転リング16に連結される。
【0030】
シャッターカバー15は、ジャックハウジング11が備えるシャッター収容部22の開放側を閉鎖するように、当該ジャックハウジング11に固定される。シャッターカバー15の中央部には、大きな円形の貫通孔45が形成されている。
【0031】
回転リング16は円環状の部材であって、貫通孔45の周囲を取り囲むように配置される。回転リング16の下面には1対のカム突起46,46が形成されており、このカム突起46が、シャッター14に形成される前記スライド溝44にそれぞれ挿入される。
【0032】
回転リング16の内周側には、1対の凹部47,47が形成されている。これら1対の凹部47,47は、回転リング16の軸を基準として、互いに180°の角度をなすように配置される。それぞれの凹部47,47には、プラグ部2の差込凸部81,81を差し込むことができる。
【0033】
リングケース17は円環状の部材であって、回転リング16と同様に、シャッターカバー15に形成された貫通孔45の周囲を取り囲むように配置される。リングケース17はシャッターカバー15に固定されており、当該リングケース17とシャッターカバー15との間に形成された円環状の空間に、回転リング16が回転可能に配置される。また、この円環状の空間は、プラグ部2の差込凸部81,81を差し込んで周方向に移動させることができるように構成されている。
【0034】
リングケース17の内周側には、1対の凹部48,48が形成されている。この凹部48は、プラグ部2の差込凸部81,81を通過させることができる。これら1対の凹部48,48は、リングケース17の中心を基準として、互いに180°の角度をなすように配置される。また、それぞれの凹部48,48は、ジャックハウジング11に形成された前記ガイド溝43,43とは、90°の角度でズレるように配置されている。
【0035】
なお、回転リング16が備える凹部47は、当該回転リング16の回転に伴って、その位置を所定の角度範囲内で移動させることができる。一方で、リングケース17はシャッターカバー15に固定されているので、凹部48を回転移動させることはできない。
【0036】
シャッターカバー15において形成される円形の貫通孔45の縁部には、図示しない回転規制部が形成されている。この回転規制部はストッパ部を備え、このストッパ部は、回転リング16が備える前記カム突起46に接触することで回転ストロークの端部を規定する。この結果、回転リング16の回転範囲が所定の角度範囲(本実施形態では、90°の範囲)に規制される。
【0037】
図3に示すように、プラグ部2は、プラグハウジング61と、プラグ側端子62と、バスバー63と、取付ボルト64と、シールリング65と、カバー66と、伸縮レバー67と、を備えている。
【0038】
プラグハウジング61はほぼ円柱状に形成されている。このプラグハウジング61の先端部は、ジャック部1が備えるリングケース17の内側、回転リング16の内側、シャッターカバー15が備える貫通孔45の内側、及び、ジャックハウジング11のハウジング本体21が備える内部空間に差込可能となっている。
【0039】
プラグハウジング61の先端部には、抜差し方向に垂直な向きに突出する1対の差込凸部81,81が形成されている。これらの差込凸部81,81は、プラグハウジング61の軸を基準にして、互いに180°の角度をなすように配置される。差込凸部81は、前述したとおり、リングケース17が有する凹部48、回転リング16が有する凹部47、リングケース17とシャッターカバー15との間に形成される円環状の空間、及び、ジャックハウジング11が有するガイド溝43に挿入することができる。
【0040】
プラグハウジング61は中空状に形成されており、その内部には2対(4つ)のプラグ側端子62が並べて配置される。それぞれの対をなすプラグ側端子62同士は、導電性のバスバー63が取付ボルト64で固定されることにより、互いに電気的に接続される。
【0041】
シールリング65は、プラグハウジング61の外周面に取り付けられる。このシールリング65は、プラグハウジング61にカバー66を取り付けたときに当該プラグハウジング61及びカバー66の両者に密着し、カバー66の内部に埃等が侵入するのを防止する。
【0042】
カバー66は、プラグ側端子62、バスバー63、及び取付ボルト64等を覆うようにして、プラグハウジング61に固定される。カバー66の両側には1対の支軸82,82が凸状に形成されており、この支軸82に前記伸縮レバー67が取り付けられる。
【0043】
伸縮レバー67は、根元側の第1レバー71と、先端側の第2レバー72と、を備える。
【0044】
第1レバー71は、平行に延びる1対の細長いアーム部材85,85と、これらのアーム部材85,85の一端を連結する連結部材86と、を備えている。それぞれのアーム部材85,85には支持孔87が形成されており、この支持孔87が、前述のカバー66が備える支軸82に取り付けられる。この結果、第1レバー71がカバー66に対して回転可能に取り付けられる。
【0045】
また、それぞれのアーム部材85,85には、若干湾曲状に形成された細長いカム溝88,88が形成されている。それぞれのカム溝88は一端側が開放されており、当該カム溝88に対し、ジャック部1のジャックハウジング11が備える連結突起42を差し込むことができる。
【0046】
第2レバー72も第1レバー71と同様に、平行に延びる1対の細長いアーム部材89,89と、これらのアーム部材89,89の一端を互いに連結する連結部材90と、を備えている。それぞれのアーム部材89,89は第1レバー71のアーム部材85,85に沿ってスライド可能に構成されており、この結果、第2レバー72を第1レバー71に対してスライドさせて、伸縮レバー67を伸縮させることができる。
【0047】
第2レバー72の連結部材90には、伸縮レバー67の根元側に向けて突出するブロック状の検出突起91が形成されている。第1レバー71には貫通孔92が形成されており、検出突起91は、この貫通孔92に挿入できるようになっている。また、検出突起91の突出方向先端側には窪み部93が形成されている。この窪み部93は、伸縮レバー67を特定の状態としたときに前記嵌合検出部3に被さって、嵌合検知回路4はこの状態を検出し得るようになっている(なお、この詳細は後述する)。
【0048】
図1に示すように、嵌合検出部3はブロック状に形成されており、車両側の適宜の位置に、具体的にはジャック部1のジャックハウジング11が備えるシャッター収容部22の近傍位置に設けられている。嵌合検出部3は、検出突起91に形成される窪み部93に挿入可能に構成されており、このように挿入された状態では、伸縮レバー67が動かないようにロックすることができる(図7を参照)。
【0049】
以上の構成において、ジャック部1には、当該ジャック部1に差し込まれたプラグ部2の向きとシャッター14の開閉とを連動させるとともに、プラグ部2の先端の抜差しを、当該プラグ部2が所定の向きに向いているときだけ許容し、それ以外のときは阻止する連動ロック機構25が備えられる。この連動ロック機構25は、プラグハウジング61の差込凸部81が所定の位置にあるときだけ抜差しが可能に構成されたリングケース17と、差込凸部81と一体的に回転可能であり、その回転がシャッター14の開閉と連動している回転リング16と、により構成される。
【0050】
次に、以上のように構成されたサービスプラグ装置5においてプラグ部2をジャック部1に装着する作業(嵌合作業)について、図4から図7を参照して説明する。図1及び図4から図7には、プラグ部2をジャック部1に装着して遮断状態から通電状態に切り換える作業が順を追って示されている。
【0051】
まず、プラグ部2がジャック部1から引き抜かれている遮断状態について、図1を参照して説明する。図1に示す状態では、ジャック部1において、回転リング16に形成されている凹部47が、リングケース17に形成された凹部48と一致した状態とされている。これに伴い、前記回転リング16に連動しているシャッター14,14は閉じた状態とされ、この結果、マルチラム端子12は露出しないようにシャッター14,14により覆われる。これにより、プラグ部2が取り外されている状態において、作業者が車両側のマルチラム端子12に手で触れることを防止できる。更に、プラグ部2において、伸縮レバー67は略起立した姿勢とされるとともに、若干伸びた状態とされている。
【0052】
上記した図1の状態から、作業者はプラグ部2の伸縮レバー67を手で持ち、プラグハウジング61の先端部を、ジャック部1が備えるリングケース17の内側に差し込む。なお、プラグハウジング61に形成されている差込凸部81の位置がリングケース17の凹部48に一致するように、プラグ部2が向く方向を所定の方向に予め合わせておく。
【0053】
図4は、プラグハウジング61の先端部がリングケース17の内部(回転リング16の内部、貫通孔45の内部)に挿入された状態を示している。差込凸部81は、リングケース17の凹部48を通過して、回転リング16の凹部47の内部に差し込まれた状態となっている。また、この状態では、ジャック部1の開放部分(シャッターカバー15の貫通孔45)が、プラグハウジング61の先端部によって閉鎖されている。
【0054】
この図4の状態から、作業者は伸縮レバー67を持った状態で、プラグ部2の全体をジャック部1に対して(上から見て時計回りに)90°回転させる。すると、プラグ部2の方向が変化するのに伴って、回転リング16が差込凸部81に押されることで回転するので、当該回転リング16にカム突起46及びスライド溝44を介して連結されたシャッター14,14が両開き状に開かれる。また、これと同時に、リングケース17とシャッターカバー15との間の円環状の空間を差込凸部81が周方向に移動し、この結果、差込凸部81の位置が凹部48と一致しなくなる。これは、プラグ部2の先端部がジャック部1から抜けないように連動ロック機構25によってロックされたことを意味する。
【0055】
図5には、プラグ部2が図4の状態から90°回転して所定の方向(第2方向)を向き、シャッター14,14が開かれて、マルチラム端子12の端部がプラグ部2に対して露出された状態が示されている。ただし、シャッターカバー15の開放部は前述のようにプラグハウジング61の先端部によって閉鎖されているので、マルチラム端子12が外部に直接露出することはない。
【0056】
なお、図5の状態では、上記したプラグ部2の90°の回転により、伸縮レバー67の向きも変化している。この結果、第1レバー71に形成されたカム溝88の端部が、ジャック部1が有する連結突起42に近接することになる。また、差込凸部81の位置が90°変化することで、当該差込凸部81は今度はガイド溝43に差込可能になる。
【0057】
次に、作業者は、プラグ部2の全体を若干ジャック部1側に押し込むようにして、連結突起42をカム溝88の一端に差し込む。こうして連結突起42をカム溝88に連結すると、次に作業者は、伸縮レバー67を一側(嵌合検出部3が配置されている側)に倒す。すると、カム溝88のカム作用によりプラグ部2の全体がジャック部1側に強く押し込まれるので、4つのプラグ側端子62がそれぞれマルチラム端子12に接続され、この結果、電気回路が閉じられて通電状態になる。
【0058】
なお、図5に示すように、伸縮レバー67は伸ばされた状態で倒される。従って、作業者は、伸びた状態の伸縮レバー67の先端側に力を加えることにより、梃子の原理を利用して、小さい操作力でスムーズに作業を行うことができる。
【0059】
図6には、伸縮レバー67をほぼ水平姿勢となるように倒した状態が示されている。なお、図6には示されていないが、この状態では、差込凸部81は上述のジャックハウジング11が有するガイド溝43(図5を参照)に差し込まれ、これによりプラグ部2の回転が規制される。また、伸縮レバー67が倒されたことにより、カム溝88は、連結突起42と連結された状態を保ちながら、抜差し方向に対して垂直に近い方向に向けられる。この結果、プラグ側端子62とマルチラム端子12との電気的接続が解除されないようにロックすることができる。
【0060】
次に、作業者は、第2レバー72を第1レバー71に近づく向きにスライドさせて、伸縮レバー67を縮めた状態とする。この結果、第2レバー72に形成された検出突起91が、第1レバー71の貫通孔92を通過して突出し、図7に示すように嵌合検出部3に被さる。これにより、嵌合検出部3のスルー回路に接続された嵌合検知回路4が、ジャック部1へのプラグ部2の装着(嵌合)を検出する。なお、嵌合検出部3は、検出突起91と嵌合することにより、伸縮レバー67が動かないように機械的にロックする。このように、伸縮レバー67は伸ばしたり縮めたりできるため、伸縮レバー67を縮めたコンパクトな状態とすることで、例えばサービスプラグ装置5の輸送コストを低減することができる。
【0061】
以上により、ジャック部1へのプラグ部2の装着作業が完了する。なお、ジャック部1からプラグ部2を取り外す場合には、上記と逆の作業を行えば良い。簡単に説明すると、まず作業者は、図7の状態から第2レバー72をスライドさせ、伸縮レバー67を伸ばした状態とする(図6)。これにより、嵌合検出部3が検出突起91から外れるので、嵌合検知回路4がジャック部1からのプラグ部2の取外し(嵌合解除)を検知するとともに、伸縮レバー67のロックが解除される。次に、作業者は、伸びた状態の伸縮レバー67を回転させてほぼ起立させた状態とする(図5)。これにより、プラグ部2がジャック部1から引き抜かれて、電気回路が開かれる。次に、プラグ部2を若干上側に引き抜き、連結突起42をカム溝88から抜くことで連結を解除した後、作業者は、プラグ部2を上から見て反時計回りに90°回転させることで、回転リング16を回転させ、シャッター14を閉じた状態にする(図4)。シャッター14が完全に閉じられた状態になると、図4に示すように差込凸部81の位置がリングケース17の凹部48に一致し、これにより連動ロック機構25のロックが解除される。作業者は、この状態で、プラグハウジング61の先端をジャックハウジング11から引き抜く(図1)。
【0062】
このように、本実施形態では、伸縮レバー67を伸ばすことで当該伸縮レバー67の機械的なロックを外し、更に嵌合検知回路4側に嵌合解除を検知させ、加えて、マルチラム端子12を保護するシャッター14が閉じられた状態でないと、プラグ部2をジャック部1から取り外すことができない構成になっている。また、シャッター14の開閉作業は、プラグ部2の先端部によってジャック部1の開放部を閉鎖した状態でないと行えないようになっている。従って、抜差し作業のどの時点においてもマルチラム端子12が外部に露出することがないため、作業者が誤ってマルチラム端子12に触れることを確実に防止することができる。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態のサービスプラグ装置5は、ジャックハウジング11と、マルチラム端子12と、シャッター14と、プラグハウジング61と、プラグ側端子62と、連動ロック機構25と、を備える。ジャックハウジング11は、車両側に取り付けられる。マルチラム端子12は、ジャックハウジング11に備えられる。シャッター14は開閉可能に構成され、マルチラム端子12を覆うようにジャックハウジング11に取り付けられる。プラグハウジング61は、ジャックハウジング11に着脱可能である。プラグ側端子62は、プラグハウジング61に取り付けられ、マルチラム端子12に対して電気的に接続可能である。連動ロック機構25は、ジャックハウジング11からのプラグハウジング61の取外しを、シャッター14が開かれた状態では阻止し、シャッター14が閉じられた状態では許容する。
【0064】
これにより、車両側のマルチラム端子12を保護するシャッター14を閉じない限り、プラグハウジング61をジャックハウジング11から引き抜くことができない構造が実現される。従って、一層の作業安全性を確保することができる。
【0065】
また、本実施形態のサービスプラグ装置5において、連動ロック機構25は、リングケース17と、回転リング16と、を備える。リングケース17は、プラグハウジング61がジャックハウジング11に対して所定の方向を向いているとき(図4)はプラグハウジング61の取外しを許容し、それ以外の方向を向いているとき(例えば図5〜図7)は取外しを阻止する。回転リング16は、プラグハウジング61の回転に連動して回転することで、シャッター14を開閉させる。取外しがリングケース17によって許容される方向にプラグハウジング61を向けたとき、図4に示すようにシャッター14が閉じられている。
【0066】
これにより、シャッター14を閉じた状態にしなければプラグハウジング61をジャックハウジング11から取り外せない構成を、リングケース17と回転リング16を用いた簡単な構成で実現することができる。
【0067】
また、本実施形態のサービスプラグ装置5において、プラグ部2が備えるカバー66には伸縮レバー67が回転可能に取り付けられる。ジャック部1が備えるジャックハウジング11には、プラグハウジング61がジャックハウジング11に対して所定の第2方向を向いているとき(図5)に伸縮レバー67に連結/連結解除可能な連結突起42が設けられる。プラグハウジング61が第2方向を向いているときは、シャッター14が開かれており、この状態で連結突起42に連結した状態の伸縮レバー67を回転させることにより、ジャックハウジング11をプラグハウジング61に対して抜差しできるように構成されている(図5、図6を参照)。
【0068】
これにより、伸縮レバー67を回転させる簡単な操作により、プラグハウジング61のジャックハウジング11に対する抜差しを行うことができる。また、この抜差し作業においてはシャッター14が開いた状態となることが確保されるため、シャッター14が抜差し作業の邪魔になることがない。この結果、作業性に優れたサービスプラグ装置5を提供することができる。
【0069】
また、本実施形態のサービスプラグ装置5は、プラグ部2とジャック部1との嵌合を検知する嵌合検知回路4を備える。プラグハウジング61には、プラグ部2のジャック部1に対する抜差しのときに操作される伸縮可能な伸縮レバー67が回転可能に取り付けられる。伸縮レバー67が倒されかつ縮められた状態になると(図7)、嵌合検知回路4が嵌合を検知する。伸縮レバー67が伸ばされた状態になると(図6)、嵌合検知回路4が嵌合の解除を検知する。
【0070】
これにより、プラグ部2のジャック部1に対する抜差し操作に用いられる伸縮レバー67を利用して、嵌合/嵌合解除を適切に検知することができる。また、伸縮レバー67が伸縮可能であるため、当該伸縮レバー67を縮めたコンパクトな状態とすることで、例えばサービスプラグ装置5の輸送コストを低減することができる。
【0071】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0072】
上記実施形態では、シャッター14は2つ備えられているが、1つだけとして片開き状に開閉する構成としても良い。
【0073】
上記実施形態では、プラグ部2を90°回転させることでシャッター14の開閉を行う構成であるが、それより小さい又は大きい角度で回転させるように構成しても良い。
【0074】
差込凸部81は、上記実施形態ではプラグハウジング61の先端部に2つ設けられているが、これを1つだけ設けるように変更しても良い。あるいは、2つ設けられている差込凸部81,81の角度間隔を180°と異ならせるようにして、プラグ部2が180°回転した状態ではジャック部1に差し込めないように構成しても良い。
【0075】
上記実施形態では、回転リング16とシャッター14とを連動させる構成は、カム突起46とスライド溝44の組み合わせにより実現されている。しかしながらこれに代えて、例えばラックピニオン機構によって回転リング16とシャッター14とを連動させるようにしても良い。
【0076】
連結突起42は、ジャックハウジング11に設けることに代えて、例えばシャッターカバー15に設けても良い。また、支軸82は、カバー66に設けることに代えて、例えばプラグハウジング61に設けても良い。
【0077】
上記実施形態ではマルチラム端子12が用いられているが、これに代えて他の形式の端子を採用しても良い。また、端子は2対備えることに限らず、1対、又は3対以上を備えるように変更しても良い。更には、通電が可能な導電体(活電部)であれば、端子以外の部材を配置しても良い。
【0078】
上記実施形態では、嵌合検出部3にスルー回路が設置され、この導通/非導通を嵌合検知回路4が検出することでプラグ部2とジャック部1との嵌合/嵌合解除を検出できるようになっている。しかしながらこれに代えて、例えば嵌合検出部3に適宜のセンサを備え、このセンサの状態を嵌合検知回路4が検知することで、嵌合/嵌合解除を検出するようにしても良い。このセンサとしては、例えばリミットスイッチや光センサ等、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ジャック部
2 プラグ部
4 嵌合検知回路
5 サービスプラグ装置
11 ジャックハウジング
12 マルチラム端子(活電部)
14 シャッター
16 回転リング(回転体)
17 リングケース(ロック部材)
25 連動ロック機構
42 連結突起(連結部)
61 プラグハウジング
62 プラグ側端子
67 伸縮レバー(ハンドル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側に取り付けられるジャックハウジングと、
前記ジャックハウジングが備える活電部と、
前記活電部を覆うように前記ジャックハウジングに取り付けられる開閉可能なシャッターと、
前記ジャックハウジングに着脱可能なプラグハウジングと、
前記プラグハウジングに取り付けられ、前記活電部に対して電気的に接続可能なプラグ側端子と、
前記ジャックハウジングからの前記プラグハウジングの取外しを、前記シャッターが開かれた状態では阻止し、前記シャッターが閉じられた状態では許容する連動ロック機構と、
を備えることを特徴とする車両用電気回路遮断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電気回路遮断装置であって、
前記連動ロック機構は、
前記プラグハウジングが前記ジャックハウジングに対して所定の方向を向いているときは当該プラグハウジングの取外しを許容し、それ以外の方向を向いているときは取外しを阻止するロック部材と、
前記プラグハウジングの回転に連動して回転することで、前記シャッターを開閉させる回転体と、
を備え、
取外しが前記ロック部材によって許容される方向に前記プラグハウジングを向けたとき、前記シャッターが閉じられていることを特徴とする車両用電気回路遮断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用電気回路遮断装置であって、
プラグ側にはハンドルが回転可能に取り付けられ、
ジャック側には、前記プラグハウジングが前記ジャックハウジングに対して所定の第2方向を向いているときに前記ハンドルに連結/連結解除可能な連結部が設けられ、
前記プラグハウジングが前記第2方向を向いているときは、前記シャッターが開かれており、この状態で前記連結部に連結した状態の前記ハンドルを回転させることにより、前記ジャックハウジングを前記プラグハウジングに対して抜差しできることを特徴とする車両用電気回路遮断装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の車両用電気回路遮断装置であって、
前記プラグハウジング及び前記プラグ側端子を備えるプラグ部と、前記ジャックハウジング及び前記活電部を備えるジャック部と、の嵌合を検知する嵌合検知回路を備え、
前記プラグ部は、前記プラグ部の前記ジャック部に対する抜差しのときに操作される伸縮可能かつ回転可能なハンドルを備え、
前記ハンドルが倒されかつ縮められた状態になると、前記嵌合検知回路が嵌合を検知し、
前記ハンドルが伸ばされた状態になると、前記嵌合検知回路が嵌合の解除を検知することを特徴とする車両用電気回路遮断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−58443(P2013−58443A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197240(P2011−197240)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)