説明

車両用電池の冷却装置

【課題】ウォーターポンプ内でのキャビテーション現象の発生を抑制することが可能な車両用電池の冷却装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド自動車等の車両100において、第1ウォーターポンプ30により、冷却水をバッテリ10とラジエータ20との間で循環させることによってバッテリ10を冷却する冷却装置1が備えられている。バッテリ10は、ラジエータ20よりも低い位置に配置され、第1ウォーターポンプ30は、バッテリ10と同等の高さ位置に配置されている。また、ラジエータ20は、車両100のグリル部80に配置され、バッテリ10および第1ウォーターポンプ30は、車両100のフロア下に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や、電気自動車等では、動力源としてのモータや、モータジェネレータなどに電力を供給する車両用電池が搭載されている。車両用電池には、例えば、電力の充放電が可能なバッテリが用いられる。バッテリは、電力を充放電する際に発熱する。そのため、発熱によりバッテリが高温になると、バッテリの性能低下や、劣化を生じる可能性があり、バッテリの蓄電可能容量が減少し、寿命が短くなることが懸念される。
【0003】
従来では、ウォーターポンプにより、冷却水をバッテリとラジエータとの間で循環させることによって、バッテリを効率的に冷却するようにした水冷式の冷却装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−352866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような水冷式の冷却装置では、例えば図6に示すように、バッテリ110→第1ウォーターポンプ130→ラジエータ120→第2ウォーターポンプ140(図7参照)→バッテリ110のような経路で冷却水が循環される。車両用電池としてのバッテリ110は、搭載スペースの制約上、例えば、車両のフロア下(フロアパネル160の下方)に配置される。この場合、図6に示すように、第1ウォーターポンプ130がバッテリ110よりも高い位置に配置されると、次のような問題が発生する可能性がある。
【0006】
すなわち、バッテリ110の冷却水排出口113から流出した冷却水の圧力(経路内圧力)が、第1ウォーターポンプ130の吸込口131に到達するまでに低下するため、第1ウォーターポンプ130内でキャビテーション現象が発生する可能性がある。この点について以下に詳しく説明する。
【0007】
バッテリ110は、例えば、バッテリケース111内に、積層され、互いに電気的に直列に接続された複数のバッテリセル(図示省略)を有する構成となっている。そして、バッテリケース111内の互いに隣接するバッテリセル間には、冷却水を流通させるための冷却水通路が形成されている。しかし、隣接するバッテリセルは、バッテリケース111内で僅かな隙間を隔てて配置されており、冷却水通路の断面積として僅かな断面積しか確保できないので、バッテリ110内の圧損は、ラジエータ120内の圧損よりも大きくなる。
【0008】
そして、例えば図7に示すように、バッテリ110の冷却水排出口113での冷却水の圧力P113は、バッテリ110の冷却水導入口(図示省略)での冷却水の圧力P112よりも低くなる。これに加え、第1ウォーターポンプ130がバッテリ110よりも高い位置に配置される場合、冷却水の圧力は、冷却水がバッテリ110の冷却水排出口113から第1ウォーターポンプ130の吸込口131に到達するまでに、冷却水の位置エネルギーが増大する分だけ低くなる。そして、バッテリ110の下流側に配置される第1ウォーターポンプ130の吸込口131での冷却水の圧力P131は、冷却装置の経路内での最低圧力となる可能性がある。図6、図7に示す例では、バッテリ110と第1ウォーターポンプ130との高低差ΔH1(図6)の位置エネルギーに相当する圧力ΔP1(図7)だけ、第1ウォーターポンプ130の吸込口131に到達する冷却水の圧力P131が低くなっている。
【0009】
そして、第1ウォーターポンプ130内に圧力の低下した冷却水が流入すると、第1ウォーターポンプ130のインペラ部付近でキャビテーション現象が発生する可能性がある。このため、バッテリ冷却系では、第1ウォーターポンプ130内のインペラ部でキャビテーション現象が発生しないように、第1ウォーターポンプ130の吐出量を設定する必要がある。
【0010】
本発明は、そのような問題点に鑑みてなされたものであり、ウォーターポンプ内でのキャビテーション現象の発生を抑制することが可能な車両用電池の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、ウォーターポンプにより、冷却水を車両用電池とラジエータとの間で循環させることによって前記車両用電池を冷却する車両用電池の冷却装置であって、前記車両用電池は、前記ラジエータよりも低い位置に配置され、前記ウォーターポンプは、前記車両用電池よりも低い位置または同等の高さ位置に配置されていることを特徴としている。
【0012】
ここで、ウォーターポンプを車両用電池と同等の高さ位置に配置する場合、鉛直方向において、ウォーターポンプの上端から下端までの範囲(領域)の少なくとも一部が、車両用電池の上端から下端までの範囲(領域)の一部と重なり合うように、車両用電池に対するウォーターポンプの高さ位置を設定すればよい。より好ましくは、鉛直方向において、ウォーターポンプの上端から下端までの範囲の全てが、車両用電池の上端から下端までの範囲内に含まれるように、車両用電池に対するウォーターポンプの高さ位置を設定すればよい。
【0013】
また、ウォーターポンプを車両用電池よりも低い位置に配置する場合、ウォーターポンプの上端が、車両用電池の下端よりも低くなるように、車両用電池に対するウォーターポンプの高さ位置を設定すればよい。
【0014】
一方、車両用電池を前記ラジエータよりも低い位置に配置する場合、車両用電池の下端が、少なくともラジエータの下端よりも低い位置に設けられるように、ラジエータに対する車両用電池の高さ位置を設定すればよい。
【0015】
上記構成によれば、ウォーターポンプが車両用電池よりも低い位置または同等の高さ位置に配置されているので、車両用電池の冷却水排出口から流出した冷却水の圧力が、ウォーターポンプの吸込口に到達するまでに低下することが抑制され、ウォーターポンプ内でキャビテーション現象が発生することを抑制できる。このようにウォーターポンプ内でキャビテーション現象を発生しにくくすることで、ウォーターポンプの吐出量を増加させることができる。したがって、上記構成によれば、冷却装置において、車両用電池の冷却効率を、従来の場合よりも向上させることができる。
【0016】
本発明において、前記ラジエータは、車両のグリル部に配置され、前記車両用電池およびウォーターポンプは、車両のフロア下に配置されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、車両走行時、グリル部から取り入れられる走行風によって、ラジエータ内の冷却水、言い換えれば、車両用電池との熱交換により温度上昇する冷却水を効率的に冷却できる。
【0018】
ここで、前記ウォーターポンプを、前記車両用電池の下流側で前記ラジエータの上流側に配置することが好ましい。この場合、第2のウォーターポンプを、前記車両用電池の上流側で前記ラジエータの下流側にさらに備える構成とすることが好ましい。
【0019】
本発明において、前記ウォーターポンプは、前記車両用電池のケースに収容されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、車両用電池のケースによってウォーターポンプが覆われるので、ウォーターポンプに対するチッピングや、泥かぶり、水かぶりなどを防ぐことができる。また、車両用電池の外側にウォーターポンプを設ける場合と比べて、ウォーターポンプの吸込口と車両用電池の冷却水排出口とを接続する冷却水循環通路を短縮または省略することができるので、冷却装置の全体を小型化でき、さらに、車両用電池およびウォーターポンプをフロア下に固定するためのブラケット等も小型化できる。
【0021】
本発明において、前記車両用電池は、例えば、電力を充放電可能なバッテリとすることが可能である。また、前記車両は、例えば、車両用電池から電力供給されるモータを動力源として備えるハイブリッド自動車または電動自動車とすることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両用電池の冷却装置によれば、ウォーターポンプが車両用電池よりも低い位置または同等の高さ位置に配置されているので、車両用電池の冷却水排出口から流出した冷却水の圧力が、ウォーターポンプの吸込口に到達するまでに低下することが抑制され、ウォーターポンプ内でキャビテーション現象が発生することを抑制できる。このようにウォーターポンプ内でキャビテーション現象を発生しにくくすることで、ウォーターポンプの吐出量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用電池の冷却装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】図1の冷却装置の車両用電池、ラジエータ、および第1ウォーターポンプの車両における配置の一例を示す側面図である。
【図3】車両用電池、第1ウォーターポンプ、およびフロアパネルを図2のX1−X1方向から見た図である。
【図4】図1の冷却装置における経路内の冷却水の圧力の変化を示す図である。
【図5】車両用電池のケース内に第1ウォーターポンプを収容させた変形例を示す側面図である。
【図6】従来の冷却装置の車両用電池、ラジエータ、およびウォーターポンプの車両における配置を示す図2対応図である。
【図7】従来の冷却装置における経路内の冷却水の圧力の変化を示す図4対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を具体化した実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
この実施形態では、本発明を、ハイブリッド自動車に搭載される車両用電池の冷却装置に適用した例について説明する。ハイブリッド自動車は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、車両用電池から電力供給されるモータとを、動力源として備える。なお、動力源としてモータのみを備える電気自動車に搭載される車両用電池の冷却装置にも、本発明は適用可能である。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用電池の冷却装置の一例を模式的に示す図である。図2は、図1の冷却装置の車両用電池、ラジエータ、および第1ウォーターポンプの車両における配置の一例を示す側面図である。図3は、車両用電池、第1ウォーターポンプ、およびフロアパネルを図2のX1−X1方向から見た図である。
【0027】
図1に示すように、車両用電池としてのバッテリ10の冷却装置(単に「冷却装置」とも言う)1は、ラジエータ20と、第1ウォーターポンプ30と、第2ウォーターポンプ40と、これら機器を接続する冷却水循環通路(冷却水配管)50とを備えている。この冷却装置1では、第1、第2ウォーターポンプ30、40により、冷却水がバッテリ10とラジエータ20との間で循環されることによって、バッテリ10の冷却が行われるようになっている。具体的には、冷却装置1において、冷却水は、バッテリ10→第1ウォーターポンプ30→ラジエータ20→第2ウォーターポンプ40→バッテリ10のような経路で循環される。
【0028】
バッテリ10は、例えば、バッテリケース11と、複数のバッテリセル(図示省略)とを有する構成となっている。バッテリケース11は、略直方体形状に形成されており、このバッテリケース11の内部に、複数のバッテリセルが収容されている。各バッテリセルは、略直方体形状で薄板形状に形成されている。複数のバッテリセルは、積層された状態でバッテリケース11の内部に配置されており、図示しないバスバー等によって互いに電気的に直列に接続されている。バッテリセルは、例えば、リチウムイオン電池から構成されている。なお、バッテリセルは、電力を充放電可能な二次電池であれば特に限定されず、例えば、ニッケル水素電池であってもよい。
【0029】
バッテリケース11の内部において、バッテリケース11とバッテリセルとの間、および、隣接するバッテリセル間には、冷却水が流通する冷却水通路14(図1に破線で示す)が形成されている。また、バッテリケース11には、バッテリケース11内に冷却水通路14に冷却水を導入するための冷却水導入口(入口)12と、バッテリケース11内の冷却水通路14から冷却水を排出するための冷却水排出口(出口)13とが形成されている。そして、バッテリケース11内の冷却水通路14に流通される冷却水によって、充放電に伴って温度上昇するバッテリ10が冷却されるようになっている。
【0030】
冷却水導入口12は、冷却水循環通路50を介して、バッテリ10の上流側に配置された第2ウォーターポンプ40の吐出口(出口)42に接続されている。冷却水排出口13は、冷却水循環通路50を介して、バッテリ10の下流側に配置された第1ウォーターポンプ30の吸込口(入口)31に接続されている。
【0031】
ラジエータ20は、例えば、ダウンフロータイプのものとされており、図2に示すように、アッパタンク21とロアタンク22との間にラジエータコア23を備えた構成とされている。入口側のアッパタンク21に流れ込んだ冷却水は、出口側のロアタンク22に向けてラジエータコア23の内部を流下する際に、外気(グリル部80から導入される走行風や冷却ファンの駆動による送風)との熱交換によって外気に放熱することにより、冷却されるようになっている。ラジエータ20のアッパタンク21は、冷却水循環通路50を介して、ラジエータ20の上流側に配置された第1ウォーターポンプ30の吐出口(出口)32に接続されている。ロアタンク22は、冷却水循環通路50を介して、ラジエータ20の下流側に配置された第2ウォーターポンプ40の吸込口(入口)41に接続されている。
【0032】
第1、第2ウォーターポンプ30、40は、ともに電動式のウォーターポンプとされている。各ウォーターポンプ30、40は、図示しない制御装置によって回転数がそれぞれ制御され、これにより、各ウォーターポンプ30、40の冷却水の吐出量(吐出圧)がそれぞれ可変制御されるようになっている。
【0033】
この実施形態では、図2に示すように、バッテリ10および第1ウォーターポンプ30は、車両100のフロア下、つまり、フロアパネル60の下方に配置されている。バッテリ10および第1ウォーターポンプ30は、図示しないブラケット等によってフロアパネル60に支持されている。バッテリ10は、第1ウォーターポンプ30の前方に配置されており、バッテリ10から第1ウォーターポンプ30までの冷却水循環通路50は、略水平に延びている。
【0034】
より具体的には、図3に示すように、バッテリ10(バッテリケース11)は、車両前後方向(図2の左右方向)から見ると、車幅方向(図3の左右方向)の中央部15が上方へ向けて突出された形状となっており、この中央部15が車両前後方向に延びている。フロアパネル60も同様に、車幅方向の中央部61が上方に向けて突出された形状となっており、この中央部61が車両前後方向に延びている。そして、フロアパネル60の中央部61の下方の空間(フロアトンネル)に、バッテリ10の中央部15が収容されている。また、第1ウォーターポンプ30は、バッテリ10の中央部15の前方に配置されている。この場合、バッテリ10の上端H11が、フロアパネル60の上端(中央部61の上端)H61よりも低い位置に配置されている。また、第1ウォーターポンプ30の上端H31も、フロアパネル60の上端H61よりも低い位置に配置されている。
【0035】
図2に示すように、ラジエータ20は、車両100のダッシュパネル70の前方に配置されており、車両100の最前端部のグリル部80に設けられている。そして、車両100の走行時、グリル部80から取り入れられる走行風によって、ラジエータ20のラジエータコア23内の冷却水、言い換えれば、バッテリ10との熱交換により温度上昇する冷却水が冷却されるようになっている。第1ウォーターポンプ30からラジエータ20のアッパタンク21までの冷却水循環通路50は、斜め上前方に向けて延びている。
【0036】
そして、この実施形態では、図2に示すように、バッテリ10がラジエータ20よりも低い位置に配置されている。具体的には、バッテリ10の上端H11が、ラジエータ20のロアタンク22の下端H22よりも低い位置に設けられている。
【0037】
また、この実施形態では、第1ウォーターポンプ30がバッテリ10と同等の高さ位置に配置されている。具体的には、鉛直方向(図2の上下方向)において、第1ウォーターポンプ30の上端H31から下端H32までの範囲(領域)A3の全てが、バッテリ10の上端H11から下端H12までの範囲(領域)A1内に含まれている。
【0038】
車両100において、冷却装置1のバッテリ10、ラジエータ20、および第1ウォーターポンプ30の高さ位置の関係が上記のように設定されているため、次のような効果が得られる。
【0039】
すなわち、第1ウォーターポンプ30がバッテリ10と同等の高さ位置に配置されているので、バッテリ10の冷却水排出口13から流出した冷却水の圧力(経路内圧力)が、第1ウォーターポンプ30の吸込口31に到達するまでに低下することが抑制され、第1ウォーターポンプ30内でキャビテーション現象が発生することを抑制できる。これにより、キャビテーション現象に起因する第1ウォーターポンプ30の吐出量の低減を抑制できる。この点について図4を参照して説明する。図4では、この実施形態の冷却装置1における経路内の冷却水の圧力の変化を実線L1で示し、従来の冷却装置(例えば、図6参照)における経路内の冷却水の圧力の変化(一部のみ示す)を破線L2で示している。なお、図4の破線L2で示す冷却水の圧力の変化は、図7の実線L3で示す冷却水の圧力の変化と同じになっている。
【0040】
図4に示すように、第1、第2ウォーターポンプ30、40により吐出された冷却水の圧力は、冷却装置1の経路内で、バッテリ10内の圧損、ラジエータ20内の圧損、冷却水循環通路50内の圧損等によって徐々に低下する。第1、第2ウォーターポンプ30、40は、冷却装置1において、経路内で低下する冷却水の圧力を上昇させる(補う)役割を果たしている。
【0041】
既に述べたように、バッテリ10内の圧損は、ラジエータ20内の圧損や、冷却水循環通路50内の圧損よりも大きく、バッテリ10の冷却水排出口13での冷却水の圧力P13は、冷却水導入口12での冷却水の圧力P12よりも低くなる。そして、バッテリ10の下流側に配置される第1ウォーターポンプ30の吸込口31での冷却水の圧力P31は、冷却装置1の経路内での最低圧力となる可能性がある。
【0042】
しかし、従来の冷却装置(図6参照)では、第1ウォーターポンプ130がバッテリ110よりも高い位置に配置されていた。このため、図4の破線L2で示すように、冷却水がバッテリ110の冷却水排出口113から第1ウォーターポンプ130の吸込口131に到達するまでに、冷却水の位置エネルギーが増大する分、冷却水の圧力がΔP1だけ低下していた。
【0043】
これに対し、この実施形態では、図2に示すように、第1ウォーターポンプ30がバッテリ10と同等の高さ位置に配置されている。このため、図4の実線L1で示すように、冷却装置1において、冷却水がバッテリ10の冷却水排出口13から第1ウォーターポンプ30の吸込口31に到達するまでに、冷却水の位置エネルギーは増大しないので、従来の冷却装置よりも、冷却水の圧力の低下が抑制される。
【0044】
したがって、この実施形態では、図4に示すように、冷却装置1の経路内での最低圧力、この場合、第1ウォーターポンプ30の吸込口31での冷却水の圧力P31を、従来の冷却装置よりもΔP1だけ高くすることができる。ここで、冷却装置1において、第1ウォーターポンプ30が、従来の冷却装置よりもΔH1(例えば図6参照)だけ低い位置に設けられているとすると、[ΔP1=ρgΔH1]の関係が成り立つ(ρは冷却水の密度、gは重力定数)。
【0045】
そして、この実施形態では、第1ウォーターポンプ30の吸込口31での冷却水の圧力P31が、従来の冷却装置よりもΔP1だけ上昇されるので、第1ウォーターポンプ30内でキャビテーション現象が発生することを抑制できる。このように第1ウォーターポンプ30内でキャビテーション現象を発生しにくくすることで、第1ウォーターポンプ30の吐出量を増加させることができる。その結果、この実施形態によれば、冷却装置1において、バッテリ10の冷却効率を、従来の冷却装置よりも向上させることができる。
【0046】
−他の実施形態−
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。
【0047】
上記実施形態では、バッテリ10の外側に第1ウォーターポンプ30を配置したが(図2参照)、これに限らず、第1ウォーターポンプ30をバッテリ10のバッテリケース11に内蔵する構成としてもよい。この変形例について、図5を参照して説明する。
【0048】
図5に示すように、第1ウォーターポンプ30は、バッテリ10のバッテリケース11の内部に収容されている。そして、第1ウォーターポンプ30の吸込口31が、バッテリケース11の内部に設けられた冷却水通路の排出部(図示省略)に接続されている。
【0049】
この変形例によれば、バッテリケース11によって第1ウォーターポンプ30が覆われるので、第1ウォーターポンプ30に対するチッピングや、泥かぶり、水かぶりなどを防ぐことができる。また、バッテリ10の外側に第1ウォーターポンプ30を設ける場合(図2参照)と比べて、第1ウォーターポンプ30の吸込口31と冷却水通路の排出部とを接続する冷却水循環通路50を短縮または省略することができるので、冷却装置1の全体を小型化でき、さらに、バッテリ10および第1ウォーターポンプ30をフロアパネル60に固定するためのブラケット等も小型化できる。
【0050】
上述した冷却装置1のバッテリ10、ラジエータ20、および第1ウォーターポンプ30の高さ位置の関係は一例であって、例えば、次のような変更が可能である。
【0051】
上記実施形態では、鉛直方向において、第1ウォーターポンプ30の上端H31から下端H32までの範囲A3全てが、バッテリ10の上端H11から下端H12までの範囲A1内に含まれている場合について説明した。しかし、これに限らず、第1ウォーターポンプ30の上端H31から下端H32までの範囲A3の少なくとも一部が、鉛直方向において、バッテリ10の上端H11から下端H12までの範囲A1の一部と重なり合っていれば、バッテリ10に対する第1ウォーターポンプ30の高さ位置を変更することが可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、第1ウォーターポンプ30がバッテリ10と同等の高さ位置に配置されている場合について説明したが、第1ウォーターポンプ30は、バッテリ10よりも低い位置に配置することも可能である。この場合、第1ウォーターポンプ30の上端H31が、バッテリ10の下端H12よりも低くなるように、バッテリ10に対する第1ウォーターポンプ30の高さ位置が設定される。
【0053】
なお、以上で述べたようなバッテリ10および第1ウォーターポンプ30の高さ位置の関係を満たしていれば、第1ウォーターポンプ30を車両100のフロア下以外の場所に配置してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、バッテリ10の上端H11が、ラジエータ20のロアタンク22の下端H22よりも低い位置に設けられた場合について説明した。しかし、これに限らず、バッテリ10の下端H12が、少なくとも、ラジエータ20のロアタンク22の下端H22よりも低い位置に設けられていれば、ラジエータ20に対するバッテリ10の高さ位置を変更することが可能である。
【0055】
図1に例示した冷却装置1や、上述したバッテリ10の構成は一例であって、それ以外の構成を採用してもよい。例えば、第2ウォーターポンプ40を省略して第1ウォーターポンプ30のみを冷却装置に設ける構成としてもよい。また、モータ、インバータ等を冷却する冷却水通路や、リザーバなどを冷却装置に設ける構成としてもよい。
【0056】
図3に例示したバッテリ10や、フロアパネル60の形状は一例であって、それ以外の形状を採用してもよい。また、バッテリ10、第1ウォーターポンプ30、およびフロアパネル60の高さ位置の関係は一例であって、それ以外の構成を採用してもよい。例えば、バッテリ10の上端H11や、第1ウォーターポンプ30の上端H31を、フロアパネル60の下端H62よりも低い位置に配置する構成としてもよい。
【0057】
なお、車両用電池は、上述したようなバッテリだけに限らず、燃料電池等であってもよい。すなわち、本発明は、車両用電池から電力供給されるモータを動力源として備える車両であれば、ハイブリッド自動車や、電気自動車だけに限らず、燃料電池自動車等にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車両用電池から電力供給されるモータを動力源として備える車両において、ウォーターポンプにより、冷却水を車両用電池とラジエータとの間で循環させることによって車両用電池を冷却する水冷式の冷却装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 冷却装置
10 バッテリ
20 ラジエータ
30 第1ウォーターポンプ
40 第2ウォーターポンプ
60 フロアパネル
100 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーターポンプにより、冷却水を車両用電池とラジエータとの間で循環させることによって前記車両用電池を冷却する車両用電池の冷却装置であって、
前記車両用電池は、前記ラジエータよりも低い位置に配置され、前記ウォーターポンプは、前記車両用電池よりも低い位置または同等の高さ位置に配置されていることを特徴とする車両用電池の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電池の冷却装置において、
前記ラジエータは、車両のグリル部に配置され、前記車両用電池およびウォーターポンプは、車両のフロア下に配置されていることを特徴とする車両用電池の冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用電池の冷却装置において、
前記ウォーターポンプは、前記車両用電池の下流側で前記ラジエータの上流側に配置されていることを特徴とする車両用電池の冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用電池の冷却装置において、
前記車両用電池の上流側で前記ラジエータの下流側には、第2のウォーターポンプがさらに備えられていることを特徴とする車両用電池の冷却装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の車両用電池の冷却装置において、
前記ウォーターポンプは、前記車両用電池のケースに収容されていることを特徴とする車両用電池の冷却装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両用電池の冷却装置において、
前記車両用電池は、電力を充放電可能なバッテリであることを特徴とする車両用電池の冷却装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両用電池の冷却装置において、
前記車両は、ハイブリッド自動車または電動自動車であって、前記車両用電池から電力供給されるモータを動力源として備えていることを特徴とする車両用電池の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107420(P2013−107420A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251777(P2011−251777)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】