説明

車両用電池搭載構造

【課題】本発明は、後突時の骨格部材の変形に対するバッテリユニットの追従が抑制された車両用電池搭載構造を得ることを目的とする。
【解決手段】バッテリブラケット40の車体側固定部42Aには、ボルト48が貫通される貫通孔46が形成されている。この貫通孔46の前側縁部46Fには、脆弱部としての溝部52が形成されている。この溝部52によって、車体側固定部42Aにおける貫通孔46の車両前後方向の前側の部位が、車体側固定部42Aの他の部位と比較して脆弱(低剛性)になっている。これにより、貫通孔46の前側縁部46Fに形成された溝部52に対してボルト48から車両前後方向の前側へ所定値以上の荷重が入力されたときに、溝部52を起点として車体側固定部42Aが破断等し、センタクロスメンバ16の下壁部16Aとバッテリブラケット40の車体側固定部42Aとの結合が解除されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロアパネルの下にバッテリユニットが搭載された車両用バッテリユニットの取付構造が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示された車両用バッテリユニットの取付構造では、車体を構成するメインフレーム(フロントサイドメンバ)、リヤサイドメンバ、及びサイドシル等の骨格部材に対してバッテリユニットが車両上下方向の下側から取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−121483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された車両用バッテリユニットの取付構造では、車両後面衝突(以下、単に「後突」という)時にリヤサイドメンバが変形すると、当該リヤサイドメンバの変形にバッテリユニットが追従し、バッテリユニットが破損する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、後突時の骨格部材の変形に対するバッテリユニットの追従が抑制された車両用電池搭載構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用電池搭載構造は、車両前後方向に延びる前部と、前記前部の後端から車両前後方向の後側かつ車両上下方向の上側へ延びる傾斜部と、前記傾斜部の後端から車両前後方向の後側へ延びる後部とを有し、車両フロアを支持する第1骨格部材と、前記車両フロアの車両上下方向の下側に配置されたバッテリユニットと、前記バッテリユニットと前記傾斜部又は該傾斜部に結合された第2骨格部材とを連結する連結部と、前記連結部に設けられ、車両前後方向の前側へ所定値以上の荷重が入力されたときに、前記バッテリユニットと前記傾斜部又は前記第2骨格部材との連結を解除する脆弱部と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る車両用電池搭載構造によれば、後突時に、第1骨格部材の傾斜部又は当該傾斜部に結合された第2骨格部材(以下、「第1骨格部材の傾斜部等」と略す場合がある)を介して連結部に設けられた脆弱部に車両前後方向の前側へ所定値以上の荷重が入力されると、バッテリユニットと第1骨格部材の傾斜部等との連結が解除される。従って、第1骨格部材の傾斜部等の変形に対するバッテリユニットの追従が抑制される。
【0008】
更に、第1骨格部材の傾斜部は、当該第1骨格部材の前部の後端から車両前後方向の後側かつ車両上下方向の上側へ延びている。この傾斜部の後端からは、第1骨格部材の後部が車両前後方向の後側へ延びている。従って、第1骨格部材の後部に対して車両前後方向の前側へ荷重が入力されると、傾斜部がその前端に対して後端が車両上下方向の上側へ持ち上げられるように回転変形する。これにより、バッテリユニットと第1骨格部材の傾斜部等との連結が更に解除され易くなる。従って、第1骨格部材の傾斜部等の変形に対するバッテリユニットの追従が更に抑制される。
【0009】
請求項2に記載の車両用電池搭載構造は、請求項1に記載の車両用電池搭載構造において、車両幅方向の外側から見て、前記バッテリユニットの車両前後方向の後部が前記傾斜部の車両上下方向の下側に配置され、前記バッテリユニットの前記後部には、前記連結部としてのバッテリブラケットが設けられている。
【0010】
請求項2に係る車両用電池搭載構造によれば、バッテリユニットの車両前後方向の後部が、車両幅方向の外側から見て、第1骨格部材の傾斜部の車両上下方向の下側に配置されており、このバッテリユニットの後部と第1骨格部材の傾斜部等とがバッテリブラケットによって連結されている。従って、バッテリユニットの大型化(蓄電量の大容量化)を図りつつ、第1骨格部材の傾斜部等の変形に対するバッテリユニットの追従を抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両用電池搭載構造は、請求項2に記載の車両用電池搭載構造において、前記バッテリブラケットが、該バッテリブラケットと前記傾斜部又は前記第2骨格部材とを車両上下方向に結合する結合部材が貫通される貫通孔が形成された車体側固定部を有し、前記貫通孔の車両前後方向の前側の前側縁部に、前記脆弱部が形成されている。
【0012】
請求項3に係る車両用電池搭載構造によれば、後突時に第1骨格部材の後部に対して車両前後方向の前側へ荷重が入力されると、バッテリブラケットの車体側固定部に形成された貫通孔に貫通された結合部材が当該車体側固定部に対して車両前後方向の前側へ変位する。これにより、結合部材によって貫通孔の前側縁部に形成された脆弱部が車両前後方向の前側へ押圧される。このとき、脆弱部に入力された車両上下方向の前側への荷重が所定値以上になると、当該脆弱部を起点として車体側固定部が破断等する。これにより、貫通孔から結合部材が抜けると、第1骨格部材の傾斜部等と車体側固定部との結合が解除される。従って、第1骨格部材の傾斜部等の変形に対するバッテリユニットの追従が抑制される。
【0013】
請求項4に記載の車両用電池搭載構造は、請求項3に記載の車両用電池搭載構造において、前記バッテリブラケットが、前記バッテリユニットに結合されるバッテリ側固定部を有し、前記バッテリ側固定部には、該バッテリ側固定部と前記バッテリユニットとの結合強度を前記車体側固定部と前記傾斜部又は前記第2骨格部材との結合強度よりも高くする補強部が設けられている。
【0014】
請求項4に係る車両用電池搭載構造によれば、バッテリ側固定部に設けられた補強部によって、バッテリブラケットのバッテリ側固定部とバッテリユニットとの結合強度が、バッテリブラケットの車体側固定部と第1骨格部材の傾斜部等との結合強度よりも高くされている。
【0015】
ここで、後突時に車体側固定部と第1骨格部材の傾斜部等との結合よりも先に、バッテリ側固定部とバッテリユニットとの結合が解除されると、バッテリブラケットが第1骨格部材の傾斜部等の変形に追従し、バッテリユニットに接触する可能性がある。
【0016】
これに対して本発明では、バッテリ側固定部に設けられた補強部によって、バッテリブラケットのバッテリ側固定部とバッテリユニットとの結合強度を、バッテリブラケットの車体側固定部と第1骨格部材の傾斜部等との結合強度よりも高くすることにより、後突時にバッテリ側固定部とバッテリユニットとの結合よりも先に、車体側固定部と第1骨格部材の傾斜部等との結合が解除される。従って、バッテリユニットに対するバッテリブラケットの接触が抑制される。
【0017】
請求項5に記載の車両用電池搭載構造は、前記バッテリブラケットが、前記バッテリ側固定部から該バッテリ側固定部よりも車両上下方向の上側に配置された前記車体側固定部へ延びる側壁部を有し、前記補強部が、前記バッテリ側固定部と前記側壁部とにわたって設けられている。
【0018】
請求項5に係る車両用電池搭載構造によれば、バッテリブラケットのバッテリ側固定部と側壁部とにわたって補強部を設けたことにより、補強部によってバッテリ側固定部と側壁部とが結合されるため、バッテリ側固定部とバッテリユニットとの結合強度を効率的に高めることができる。
【0019】
請求項6に記載の車両用電池搭載構造は、請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の車両用電池搭載構造において、前記バッテリユニットが、電力を蓄電するバッテリモジュールと、車両幅方向の外側から見て、前記バッテリモジュールの車両前後方向の後側に配置され、車両幅方向に延びるバッテリリヤフレーム部とを有し、前記バッテリブラケットが、前記バッテリリヤフレーム部に設けられている。
【0020】
請求項6に係る車両用電池搭載構造によれば、車両幅方向の外側から見て、バッテリモジュールの車両前後方向の後側にバッテリリヤフレーム部を配置することにより、バッテリモジュールに対して車両前後方向の後側から衝突する衝突物がバッテリモジュールよりも先にバッテリリヤフレーム部に接触する。従って、バッテリモジュールの破損等が抑制される。
【0021】
請求項7に記載の車両用電池搭載構造は、請求項2〜請求項6の何れか1項に記載の車両用電池搭載構造において、前記第1骨格部材が、前記車両フロアの車両幅方向の両端部に沿って設けられた一対のリヤサイドメンバであり、前記第2骨格部材が、車両幅方向に延びると共に、一対の前記リヤサイドメンバの前記傾斜部同士を連結するクロスメンバであり、前記バッテリブラケットが、前記バッテリユニットと前記クロスメンバとを連結する。
【0022】
請求項7に係る車両用電池搭載構造によれば、一対のリヤサイドメンバの傾斜部同士を連結するクロスメンバとバッテリユニットとをバッテリブラケットによって連結することにより、リヤサイドメンバの傾斜部とバッテリユニットとをバッテリブラケットによって連結する構成と比較して、例えば、リヤサイドメンバの傾斜部に対するリヤサスペンション等の組み付けが容易となる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る車両用電池搭載構造によれば、後突時の骨格部材の変形に対するバッテリユニットの追従を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用電池搭載構造が適用された車両の車体後部構造を示す分解斜視図である。
【図2】(A)は図1に示されるバッテリブラケットを示す拡大斜視図であり、(B)は同バッテリブラケットを示す平面図である。
【図3】図1に示される車体後部構造を車両幅方向の外側(左側)から見た模式図である。
【図4】図3に示されるリヤサイドメンバの力学モデルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る車両用電池搭載構造について説明する。なお、各図において適宜示される矢印FRは車両前後方向の前側を示し、矢印UPは車両上下方向の上側を示し、矢印OUTは車両幅方向の外側を示している。
【0026】
図1には、本実施形態に車両用電池搭載構造10が適用された車両の車体後部構造12が、分解斜視図にて示されている。この車両は、例えば、図示しない電動機(モータ)を駆動源として走行する電気自動車、ガソリンハイブリッド車、燃料電池ハイブリッド車等であり、車両フロアを構成するフロアパネル13の車両上下方向の下側に電動機へ供給する電極を蓄電するバッテリユニット20が搭載されている。なお、図1には、フロアパネル13が部分的に二点鎖線で示されている。
【0027】
車体後部構造12は、第1骨格部材としての一対のリヤサイドメンバ14と、第2骨格部材(クロスメンバ)としてのセンタクロスメンバ16と、リヤクロスメンバ18とを備えている。一対のリヤサイドメンバ14は、車両幅方向に間隔を空けると共に車両前後方向を長手方向としてそれぞれ配置されており、車体側部における下部の骨格を構成している。これらのリヤサイドメンバ14は、車両上下方向の上側が開口された断面ハット形状に形成されている。
【0028】
各リヤサイドメンバ14は、その車両前後方向の前部14Fに対し、その車両前後方向の後部14Rが車両上下方向の上側かつ車両幅方向の内側へ位置されている。これらの前部14Fと後部14Rとは、傾斜部としてのキック部14Kによって繋がれている。このキック部14Kは、車両幅方向の外側から見て、前部14Fの後端から後部14Rの前端に向けて、車両前後方向の後側かつ車両上下方向の上側へ延びている。即ち、キック部14Kは、車両幅方向の外側から見て、前部14Fから後部14Rへ向うに従って車両上下方向の上側に位置するように傾斜されている。このように構成されたリヤサイドメンバ14の間に、フロアパネル13が渡されている。換言すると、一対のリヤサイドメンバ14は、フロアパネル13の車両幅方向の両端部に沿って設けられており、図示しないリヤサスペンション等に対してフロアパネル13を支持している。
【0029】
各リヤサイドメンバ14のキック部14Kは、車体下部の骨格を構成するセンタクロスメンバ16によって連結されている。センタクロスメンバ16は、車両上下方向の上側が開口された断面ハット形状に形成されており、一対のリヤサイドメンバ14のキック部14Kの間に車両幅方向を長手方向として配置されると共に、その長手方向の両端部が各キック部14Kに溶接等により結合されている。
【0030】
センタクロスメンバ16の車両前後方向の後側には、車体下部の骨格を構成するリヤクロスメンバ18が配置されている。リヤクロスメンバ18は、センタクロスメンバ16と同様に、車両上下方向の上側が開口された断面ハット形状に形成されており、一対のリヤサイドメンバ14の後部14Rの間に長手方向を車両幅方向に配置されると共に、その長手方向の両端部が各後部14Rに溶接等により結合されている。
【0031】
このように構成されたリヤサイドメンバ14及びセンタクロスメンバ16には、車両上下方向の下側からバッテリユニット20が取り付けられる。バッテリユニット20は、バッテリモジュール22と、バッテリモジュール22を支持するバッテリフレーム24とを備えている。バッテリモジュール22は、前述した図示しない電動機へ供給される電力を蓄電する蓄電池であり、その上部が一対のリヤサイドメンバ14の前部14Fの間に配置されるようになっている。なお、図1では、バッテリモジュール22の外形が二点鎖線で示されている。
【0032】
バッテリフレーム24は、バッテリモジュール22の車両幅方向の両側に配置され、車両前後方向に延びる一対のバッテリサイドフレーム部26と、バッテリモジュール22の車両前後方向の両側に配置され、車両幅方向に延びる一対のバッテリフロントフレーム(図示省略)及びバッテリリヤフレーム部28とを備え、全体として枠状に構成されている。また、バッテリフレーム24には、バッテリモジュール22を車両上下方向の下側から覆うバッテリロアカバー30が溶接等により取り付けられている。
【0033】
バッテリサイドフレーム部26は断面略矩形の筒状鋼材で形成されており、その上壁部におけるサイドフレーム取付部26Tにおいてリヤサイドメンバ14の前部14Fに車両上下方向の下側から取り付けられる。具体的には、サイドフレーム取付部26Tには、当該サイドフレーム取付部26Tから車両上下方向の上側へ突出するボルト32が設けられており、このボルト32及びナット34によってサイドフレーム取付部26Tがリヤサイドメンバ14の前部14Fにおける下壁部14F1に結合される。
【0034】
バッテリサイドフレーム部26の車両前後方向の後端部は、バッテリリヤフレーム部28によって車両幅方向に連結されている。バッテリリヤフレーム部28は断面略矩形の筒状鋼材で形成されており、車両上下方向の上側から見てバッテリモジュール22の車両前後方向の後側に配置されている。このバッテリリヤフレーム部28の長手方向の中間部における一対のリヤフレーム取付部28Tには、連結部としてのバッテリブラケット40がそれぞれ設けられている。これら一対のバッテリブラケット40を介してバッテリリヤフレーム部28がセンタクロスメンバ16に車両上下方向の下側から取り付けられるようになっている。
【0035】
図2(A)及び図2(B)に示されるように、バッテリブラケット40は、バッテリブラケット本体42と、一対のブラケットベース44とを備えている。バッテリブラケット本体42は、車両上下方向の下側が開口された断面略C字形状に形成されており、上壁を構成する車体側固定部42Aと、車体側固定部42Aの車両幅方向の両端部から車両上下方向の下側へ延出された一対の脚部42Bとを有している。これらの脚部42Bは車両幅方向に対向すると共に、車両上下方向の下側へ向うに従って互いに離間するように傾斜されている。
【0036】
車体側固定部42Aには、当該車体側固定部42Aを板厚方向に貫通する貫通孔46が形成されている。この貫通孔46には、図1に示されるように車体側固定部42Aの下面側から結合部材としてのボルト48が貫通可能になっており、このボルト48及びナット50によって車体側固定部42Aがセンタクロスメンバ16の下壁部16Aに結合されるようになっている。
【0037】
ここで、図2(B)に示されるように、貫通孔46の車両前後方向の前側の前側縁部46Fには、脆弱部としての溝部52が形成されている。この溝部52はU字形状とされ、前側縁部46Fから車体側固定部42Aの車両前後方向の前端42A1側へ延びて形成されている。この溝部52によって、車体側固定部42Aにおける前端42A1と貫通孔46の前側縁部46Fとの間の部位が、車体側固定部42Aの他の部位と比較して脆弱(低剛性)になっている。これにより、貫通孔46の前側縁部46Fに対してボルト48(図1参照)から車両前後方向の前側へ所定値以上の荷重が入力されたときに、車体側固定部42Aが溝部52を起点として破断し、又は溝部52が開いて貫通孔46が拡径することにより、車体側固定部42Aの下面に係合されたボルト48の頭部(図示省略)が貫通孔46から抜けるようになっている。
【0038】
バッテリブラケット本体42の車両幅方向の両側には、ブラケットベース44がそれぞれ設けられている。ブラケットベース44は、バッテリブラケット本体42の脚部42Bとリヤフレーム取付部28Tとに沿って断面略L字形状に屈曲されている。このブラケットベース44は、バッテリブラケット本体42の脚部42Bに溶接により結合された傾斜壁部44Aと、傾斜壁部44Aの下端部からバッテリブラケット本体42と反対側へ延出されたバッテリ側固定部44Bとを有している。なお、本実施形態では、バッテリブラケット本体42の脚部42Bとブラケットベース44の傾斜部44Aによって、バッテリ側固定部44Bから車体側固定部42Aへ延びるバッテリブラケット40の側壁部が構成されている。
【0039】
バッテリ側固定部44Bはリヤフレーム取付部28Tに重ねられており、車両前後方向に並んだ2つのボルト54及び2つナット(図示省略)によって当該リヤフレーム取付部28Tに結合されている。なお、リヤフレーム取付部28Tは、バッテリリヤフレーム部28の上壁部によって構成された前側取付部28T1と、前側取付部28T1から車両前後方向の後側へ延出された後側取付部28T2とを有して構成されており、各前側取付部28T1及び後側取付部28T2にバッテリ側固定部44Bがボルト54及びナットによって結合されている。
【0040】
また、各ブラケットベース44の傾斜壁部44A及びバッテリ側固定部44Bは、補強部としての一対のベースリインフォースメント(補強リブ)56によって補強されている。各ベースリインフォースメント56は、傾斜壁部44A及びバッテリ側固定部44Bの車両前後方向の両端部に沿って設けられている。つまり、一対のベースリインフォースメント56は、傾斜壁部44A及びバッテリ側固定部44Bにわたって設けられており、これらのベースリインフォースメント56によって傾斜壁部44Aとバッテリ側固定部44Bとが結合されている。これにより、ブラケットベース44のバッテリ側固定部44Bとリヤフレーム取付部28Tとの結合強度が、バッテリブラケット本体42の車体側固定部42Aとセンタクロスメンバ16の下壁部16A(図1参照)との結合強度よりも高くされている。
【0041】
次に、本実施形態に車両用電池搭載構造の作用について説明する。
【0042】
図3には、本実施形態に係る車体後部構造12を車両幅方向の外側(車体左側)から見た側面図が模式的に示されている。この図3に示されるように、後突時にリヤサイドメンバ14の後部14Rに対して車両前後方向の前側へ荷重Fが入力されると、リヤサイドメンバ14のキック部14Kに結合されたセンタクロスメンバ16が車両前後方向の前側へ変位する。これにより、センタクロスメンバ16の下壁部16Aとバッテリブラケット40の車体側固定部42Aとを結合するボルト48が、車体側固定部42Aに対して車両前後方向の前側へ変位し、当該車体側固定部42Aに形成された貫通孔46の前側縁部46F(図2(B)参照)を車両前後方向の前側へ押圧する。
【0043】
ここで、図2(B)に示されるように、車体側固定部42Aに形成された貫通孔46の前側縁部46Fには溝部52が形成されており、この溝部52によって車体側固定部42Aにおける前端42A1と貫通孔46の前側縁部46Fとの間の部位が、車体側固定部42Aの他の部位と比較して脆弱になっている。
【0044】
従って、後突時に貫通孔46の前側縁部46Fに形成された溝部52に対してボルト48から車両前後方向の前側へ所定値以上の荷重が入力されると、当該溝部52を起点として車体側固定部42Aが破断し、若しくは溝部52が開いて貫通孔46が拡径する。これにより、貫通孔46からボルト48の頭部(図示省略)が抜けると、センタクロスメンバ16の下壁部16Aとバッテリブラケット40の車体側固定部42Aとの結合が解除されるため、センタクロスメンバ16の車両前後方向の前側の変位に対するバッテリリヤフレーム部28の追従が抑制される。
【0045】
更に、図3に示されるように、センタクロスメンバ16は、一対のリヤサイドメンバ14のキック部14K同士を車両幅方向に連結している。このキック部14Kは、車両幅方向の外側から見て、リヤサイドメンバ14の前部14Fの後端から車両前後方向の後側かつ車両上下方向の上側へ延びている。従って、後突時にリヤサイドメンバ14の後部14Rに対して車両前後方向の前側へ荷重Fが入力されると、キック部14Kが、矢印Xで示されるように、その前端に対してその後端が車両上下方向の上側へ持ち上げられるように回転変形する。このキック部14Kの回転変形に伴って、当該キック部14Kに結合されたセンタクロスメンバ16も矢印X方向へ回転変位する。
【0046】
これにより、バッテリブラケット40の車体側固定部42Aに形成された貫通孔46の前側縁部46Fに対してボルト48から矢印X方向の荷重が入力される。即ち、ボルト48に対して、当該ボルト48を貫通孔46から車両前後方向の前側かつ車両上下方向の上側へ引き抜く方向へ荷重が作用する。従って、例えば、リヤサイドメンバ14の前部14Fにバッテリブラケット40を結合した構成と比較して、センタクロスメンバ16の下壁部16Aとバッテリブラケット40の車体側固定部42Aとの結合が解除され易くなる。
【0047】
更に、図4には、リヤサイドメンバ14の力学モデルが示されている。なお、図4に示される白三角はリヤサイドメンバ14の前部14Fとバッテリサイドフレーム部26と結合部(支持点P1)を示し、黒三角はセンタクロスメンバ16(図3参照)とバッテリリヤフレーム部28との結合部(支持点P2)を示している。
【0048】
この図4に示されるように、リヤサイドメンバ14の後部14Rに対して車両前後方向の前側へ荷重Fが入力されると、支持点P2には、キック部14Kの傾斜方向に沿って後部14Rへ向けた反力Rが発生する。この反力Rの鉛直成分R1は、センタクロスメンバ16(図3参照)に対して車両上下方向の上側へ作用するため、前述したセンタクロスメンバ16の回転変形(矢印X方向)が促進される。
【0049】
このように本実施形態に係る車両用電池搭載構造10によれば、後突時に貫通孔46の前側縁部46Fに形成された溝部52に対してボルト48から車両前後方向の前側へ所定値以上の荷重が入力されたときに、センタクロスメンバ16の下壁部16Aとバッテリブラケット40の車体側固定部42Aとの結合が解除されるため、後突時におけるセンタクロスメンバ16の車両前後方向の前側の変位に対するバッテリリヤフレーム部28の追従が抑制される。従って、バッテリユニット20の破損等が抑制される。
【0050】
また、本実施形態では、図2(A)に示されるように、バッテリブラケット40のバッテリ側固定部44Bが一対のベースリインフォースメント56によって補強されており、当該バッテリ側固定部44Bとリヤフレーム取付部28Tとの結合強度が、バッテリブラケット40の車体側固定部42Aとセンタクロスメンバ16の下壁部16A(図1参照)との結合強度よりも高くされている。
【0051】
ここで、バッテリブラケット40の車体側固定部42Aとセンタクロスメンバ16の下壁部16Aとの結合よりも先に、バッテリブラケット40のバッテリ側固定部44Bとリヤフレーム取付部28Tとの結合が解除されると、センタクロスメンバ16の変位に追従したバッテリブラケット40がバッテリモジュール22に接触する可能性がある。
【0052】
これに対して本実施形態では、前述したように、ベースリインフォースメント56によってバッテリブラケット40のバッテリ側固定部44Bが補強されており、当該バッテリ側固定部44Bとリヤフレーム取付部28Tとの結合強度が、バッテリブラケット40の車体側固定部42Aとセンタクロスメンバ16の下壁部16A(図1参照)との結合強度よりも高くされている。これにより、バッテリブラケット40のバッテリ側固定部44Bとリヤフレーム取付部28Tとの結合よりも先に、バッテリブラケット40の車体側固定部42Aとセンタクロスメンバ16の下壁部16Aとの結合が解除され易くなる。従って、バッテリモジュール22に対するバッテリブラケット40の接触が抑制される。
【0053】
更に、各ベースリインフォースメント56は、傾斜壁部44Aとバッテリ側固定部44Bとにわたって設けられている。ここで、リヤサイドメンバ14のキック部14Kが矢印X方向に回転変形したときに、バッテリブラケット40の脚部42B及び傾斜壁部44Aに対して車両上下方向の引張り荷重が作用する。この引張り荷重によって、傾斜壁部44Aとバッテリ側固定部44Bとの境界部がリヤフレーム取付部28Tから浮き上げられると、バッテリ側固定部44Bとリヤフレーム取付部28Tとの結合が解除され易くなる。これに対して本実施形態では、前述したように傾斜壁部44Aとバッテリ側固定部44Bとにわたって一対のベースリインフォースメント56を設け、これらのベースリインフォースメント56によって傾斜壁部44Aと車体側固定部42Aとを結合したことにより、前述した傾斜壁部44Aとバッテリ側固定部44Bとの境界部の浮き上がりが抑制される。従って、バッテリ側固定部44Bとバッテリユニットとの結合強度を効率的に高めることができる。
【0054】
更にまた、本実施形態では、図3に示されるように、バッテリユニット20の車両前後方向の後部を構成するバッテリリヤフレーム部28が、車両幅方向の外側から見て、リヤサイドメンバ14のキック部14の車両上下方向の下側に配置されている。従って、バッテリユニット20の大型化(蓄電量の大容量化)を図ることができる。
【0055】
しかも、車両上下方向の上側から見て、バッテリモジュール22の車両前後方向の後側にバッテリリヤフレーム部28を配置したことにより、バッテリモジュール22に対して車両前後方向の後側から衝突する衝突物が、バッテリモジュール22よりも先にバッテリリヤフレーム部28に接触する。従って、バッテリモジュール22の破損等が抑制される。更に、このバッテリリヤフレーム部28のリヤフレーム取付部28Tにバッテリブラケット40を設けたことにより、バッテリブラケット40によってバッテリモジュール22が車両前後方向の後側から覆われる。従って、前述したバッテリモジュール22に対する衝突物の衝突が更に抑制される。
【0056】
更にまた、本実施形態では、一対のリヤサイドメンバ14のキック部14K同士を連結するセンタクロスメンバ16の長手方向の中間部にバッテリブラケット40を連結したことにより、リヤサイドメンバ14のキック部14K周辺にバッテリブラケット40を連結する構成と比較して、例えば、リヤサイドメンバ14のキック部14K周辺に対するリヤサスペンション等の組み付けが容易となる。
【0057】
次に、上記実施形態に係る車両用電池搭載構造の変形例について説明する。
【0058】
上記実施形態では、バッテリブラケット40の車体側固定部42Aに形成された貫通孔46の前側縁部46Fに脆弱部としての溝部52を形成したが、この溝部52に替えて前側縁部46Fに脆弱部としてのスリットや切り欠きを形成しても良い。また、例えば、ブラケット本体42における一対の脚部42Bの上部に脆弱部としての溝部等をそれぞれ形成し、当該溝部等に車両前後方向の前側へ所定値以上の荷重が入力されたときに、これらの脚部42Bを破断させ、脚部42Bから車体側固定部42Aを分離させても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、バッテリユニット20のバッテリリヤフレーム部28とセンタクロスメンバ16とをバッテリブラケット40により連結したが、バッテリユニット20のバッテリリヤフレーム部28とリヤサイドメンバ14のキック部14Kとをバッテリブラケット40により連結しても良い。更に、上記実施形態に係る車両用電池搭載構造10は、リヤサイドメンバ14以外の骨格部材にも適用可能である。
【0060】
更に、バッテリブラケット40は、バッテリリヤフレーム部28に限らず、例えば、バッテリサイドフレーム部26の車両前後方向の後端側やバッテリユニット20を構成する他の部材に設けても良い。更に、バッテリブラケット40の形状は、上記したものに限らす、適宜変更可能である。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10 車両用電池搭載構造
13 フロアパネル(車両フロア)
14 リヤサイドメンバ(第1骨格部材)
14F 前部
14K キック部(傾斜部)
14R 後部
16 センタクロスメンバ(第2骨格部材、クロスメンバ)
20 バッテリユニット
22 バッテリモジュール
28 バッテリリヤフレーム部
40 バッテリブラケット(連結部)
42A 車体側固定部
42B 脚部(バッテリブラケットの側壁部)
44A 傾斜壁部(バッテリブラケットの側壁部)
44B バッテリ側固定部
46 貫通孔
46F 前側縁部
48 ボルト(結合部材)
52 溝部(脆弱部)
56 ベースリインフォースメント(補強部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる前部と、前記前部の後端から車両前後方向の後側かつ車両上下方向の上側へ延びる傾斜部と、前記傾斜部の後端から車両前後方向の後側へ延びる後部とを有し、車両フロアを支持する第1骨格部材と、
前記車両フロアの車両上下方向の下側に配置されたバッテリユニットと、
前記バッテリユニットと前記傾斜部又は該傾斜部に結合された第2骨格部材とを連結する連結部と、
前記連結部に設けられ、車両前後方向の前側へ所定値以上の荷重が入力されたときに、前記バッテリユニットと前記傾斜部又は前記第2骨格部材との連結を解除する脆弱部と、
を備える車両用電池搭載構造。
【請求項2】
車両幅方向の外側から見て、前記バッテリユニットの車両前後方向の後部が前記傾斜部の車両上下方向の下側に配置され、
前記バッテリユニットの前記後部には、前記連結部としてのバッテリブラケットが設けられている、
請求項1に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項3】
前記バッテリブラケットが、該バッテリブラケットと前記傾斜部又は前記第2骨格部材とを車両上下方向に結合する結合部材が貫通される貫通孔が形成された車体側固定部を有し、
前記貫通孔の車両前後方向の前側の前側縁部に、前記脆弱部が形成されている、
請求項2に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項4】
前記バッテリブラケットが、前記バッテリユニットに結合されるバッテリ側固定部を有し、
前記バッテリ側固定部には、該バッテリ側固定部と前記バッテリユニットとの結合強度を前記車体側固定部と前記傾斜部又は前記第2骨格部材との結合強度よりも高くする補強部が設けられている、
請求項3に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項5】
前記バッテリブラケットが、前記バッテリ側固定部から該バッテリ側固定部よりも車両上下方向の上側に配置された前記車体側固定部へ延びる側壁部を有し、
前記補強部が、前記バッテリ側固定部と前記側壁部とにわたって設けられている、
請求項4に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項6】
前記バッテリユニットが、電力を蓄電するバッテリモジュールと、車両上下方向の上側から見て、前記バッテリモジュールの車両前後方向の後側に配置され、車両幅方向に延びるバッテリリヤフレーム部とを有し、
前記バッテリブラケットが、前記バッテリリヤフレーム部に設けられている、
請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項7】
前記第1骨格部材が、前記車両フロアの車両幅方向の両端部に沿って設けられた一対のリヤサイドメンバであり、
前記第2骨格部材が、車両幅方向に延びると共に、一対の前記リヤサイドメンバの前記傾斜部同士を連結するクロスメンバであり、
前記バッテリブラケットが、前記バッテリユニットと前記クロスメンバとを連結する、
請求項2〜請求項6の何れか1項に記載の車両用電池搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107541(P2013−107541A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255320(P2011−255320)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】