説明

車両用電源スイッチの操作判定装置

【課題】ユーザ個人個人の感覚にあったスイッチ操作による電源遷移を実現し、これにより、利便性を向上することが可能な車両用電源スイッチの操作判定装置を提供すること。
【解決手段】車両用電源スイッチの操作判定装置は、電源スイッチによるスイッチ操作に基づいて車両の電源遷移を行うべく、当該スイッチ操作の妥当性を判定する。そして、この操作判定装置は、電源スイッチの操作について、電源遷移の許容されるスイッチ操作を変更する機能を備える。例えば、ST状態への遷移の許容されるスイッチ操作として、5秒以内に1秒程度の短押し操作が3回といったものが規定され、この操作を行うことでエンジンが始動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源スイッチの操作判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般的な車両では、キーシリンダに差し込んだキーを回動することで、その回動量に応じてOFF位置からACC位置、さらにはON位置を経てST位置への操作が行われ、このST位置にてエンジンが始動される。そして、近年では、そうした回動操作に代えて、電源スイッチを押圧操作することで車両の電源遷移を行うワンプッシュ式のエンジン始動システムが提案されている。このシステムでは、従来のメカニカルキーに代えて、電気的な照合にかけられる電子キーが用いられるとともに、当該電子キーが車両に適合する正規の電子キーであると肯定判断されたことを条件にエンジンの始動が許容され、その許容状態、すなわち正規の電子キーを所持している状態で電源スイッチを操作するとエンジンが始動される。尚、このときの具体的な操作としては、ブレーキペダルを踏みながら電源スイッチを短押し操作することが一般的である。ちなみに、正規の電子キーを所持している状態でブレーキペダルを踏まずに電源スイッチを短押し操作すると、その操作の度に、OFF状態→ACC状態→ON状態→OFF状態→・・・といった順に電気系統の機能ポジションが切り換えられる。
【0003】
そして、上記ワンプッシュ式のエンジン始動システムに関連し、特許文献1には、電源スイッチの短押し操作に基づきエンジンを始動するとともに、長押し操作に基づきOFF状態及びACC状態及びON状態の間で機能ポジションを切り換える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−122058号公報(段落[0022]〜段落[0025]、[図2])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による技術も含め従来のものは、車両に対しデフォルトで設定された態様で電源スイッチを操作しなければならず、その操作態様をユーザ個人個人の感覚にあったものとすることができなかった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、ユーザ個人個人の感覚にあったスイッチ操作による電源遷移を実現し、これにより、利便性を向上することが可能な車両用電源スイッチの操作判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両用電源スイッチによるスイッチ操作に基づいて車両の電源遷移を行うべく、当該スイッチ操作の妥当性を判定する車両用電源スイッチの操作判定装置において、前記車両用電源スイッチの操作について、電源遷移の許容されるスイッチ操作を変更する変更手段を備えることをその要旨としている。
【0008】
同構成によると、変更手段を通じて、電源遷移が許容されるために必要なスイッチ操作を変更することが可能となる。このため、ユーザ個人個人の感覚にあったスイッチ操作による電源遷移を実現できるようになる。従って、利便性を向上することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用電源スイッチの操作判定装置において、電源遷移の許容されるスイッチ操作として、操作回数と操作時間との組み合わせによる基準スイッチ操作が規定され、その基準スイッチ操作にしたがうかたちで前記車両用電源スイッチが操作されたか否かを判定する操作判定手段と、前記操作判定手段により肯定判断されたことを条件に電源遷移を許容する電源制御手段とをさらに備えることをその要旨としている。
【0010】
同構成によると、操作回数と操作時間との組み合わせによる基準スイッチ操作にしたがうかたちで車両用電源スイッチを操作すれば、電源遷移が許容される。言い換えると、上記基準スイッチ操作とは異なる態様で電源スイッチを操作したとしても、電源遷移は許容されない。このため、基準スイッチ操作を簡単化すれば正規ユーザがこれを忘れてしまうといったようなことが起こり難く、また、操作性が向上するとともに、基準スイッチ操作を複雑化すれば第三者による電源遷移の可能性が抑制され、セキュリティ性が向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用電源スイッチの操作判定装置において、前記変更手段は、特定の車両操作が行われたことを契機として、電源遷移の許容されるスイッチ操作を変更する変更モードへ移行することをその要旨としている。
【0012】
同構成によると、変更モードへの移行に必要な特定の車両操作について、その操作態様を簡単化すれば正規ユーザによる変更が容易になるとともに、その操作態様を複雑化すれば第三者による変更が抑制され、セキュリティ性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザ個人個人の感覚にあったスイッチ操作による電源遷移を実現し、これにより、利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る車両用電源スイッチの操作判定装置について、その構成を示す説明図。
【図2】新たな基準スイッチ操作の一例を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を押圧操作によるスイッチ操作の妥当性を判定する車両用電源スイッチの操作判定装置に具体化した一実施形態について説明する。尚、本実施形態の操作判定装置は、所定の条件下で電源スイッチが押圧操作された場合にエンジンが始動される機能、すなわちプッシュスタート式のスマートイグニッション機能を有するスマートキーシステムが適用された車両に適用されている。
【0016】
まず上記スマートキーシステムについて説明する。スマートキーシステムは、車両ユーザが所持するスマートキーと、車両側に設けられるセキュリティ装置とを備えるとともに、両者間で双方向通信が可能となっている。この双方向通信では、車両側のセキュリティ装置からリクエスト信号と称される応答要求信号が送信されるとともに、この信号をスマートキーが受信すると、同信号に対する応答信号としてスマートキーからIDコード信号が送信される。このIDコード信号には、スマートキーに対し個別に設定されたIDコードが含まれるとともに、車両側において同信号が受信されると、この信号の発信源であるスマートキーが当該車両に適合する正規のスマートキーであるか否かの解析がIDコードの照合を通じて電気的に行われる。そして、正規のスマートキーであると肯定判断されると、このキーの所持者による乗車等を許容するべく、ドアロックの解錠やエンジンの始動を始めとする各種車両制御が許容され、これにより、車両ユーザに対する利便性の向上が図られる。
【0017】
尚、上記リクエスト信号は車外のドア近くの領域及び車内全域に選択的に送信される。そして、それらのうち、車外へのリクエスト信号に対するIDコード信号について、これが正規のキーによるものであると肯定判断された場合には、ドアロックの解錠が許容されるとともに、車内へのリクエスト信号に対するIDコード信号について、これが正規のキーによるものであると肯定判断された場合には、エンジンの始動が許容される。そして、前者態様によるドアロックの解錠はスマートエントリー機能と称され、また、後者態様によるエンジンの始動はスマートイグニッション機能と称される。
【0018】
そして、こうしたスマートキーシステムが有する上記二つの機能のうち、スマートイグニッション機能に関連し、上記IDコードの照合を通じて、正規のスマートキーが車内に存在する旨、肯定判断されると、エンジンの始動を含め車両の電気系統の機能ポジションについて、その切り換えが許容される。すなわち、正規のスマートキーが車内に存在することを条件に、車両搭載の電源スイッチを操作することで、車両の電源状態を遷移させることができるようになっている。本実施形態では、従来一般的な車両と同様、車両の電源状態として、車両電源の遮断されるOFF状態、車両搭載のアクセサリ機器に対する通電の行われるACC状態、車両搭載のイグニッション機器に対する通電の行われるON状態、車両搭載のエンジンを始動するST状態が設けられている。そして、その中から選択されるいずれかの電源状態への遷移が許容されるために必要なスイッチ操作について、それを任意に設定できるようにした点が、本実施形態に係る車両用電源スイッチの操作判定装置の特徴点となっている。
【0019】
図1に示すように、車両用電源スイッチの操作判定装置1は、電源遷移に先立って押圧操作される電源スイッチ2、及び、その電源スイッチ2によるスイッチ操作の妥当性を判定する制御装置3を備えている。そして、制御装置3は、デフォルト設定を含め現状の設定による基準スイッチ操作にしたがうかたちで電源スイッチ2が操作された場合に、そのスイッチ操作が妥当であると判定し、当該スイッチ操作に基づいて電源遷移を許容する通常モード、及び、基準スイッチ操作を変更可能な変更モードを有している。
【0020】
尚、上記デフォルト設定による基準スイッチ操作の態様は、従来一般的な車両と同様、上記OFF状態、ACC状態、ON状態、ST状態への遷移に全て共通のスイッチ操作として規定され、具体的には、1秒程度の短押し操作が1回といったものになっている。ちなみに、電源状態がOFF状態、ACC状態、ON状態のいずれかのとき、正規のスマートキーが車内に存在することを条件に、ブレーキペダルを踏みながら電源スイッチ2を短押し操作するとST状態に遷移する。一方、電源状態がOFF状態、ACC状態、ON状態のいずれかのとき、正規のスマートキーが車内に存在することを条件に、ブレーキペダルを踏まずに電源スイッチ2を短押し操作すると、その操作の度に、OFF状態→ACC状態→ON状態→OFF状態→・・・といった順に遷移する。
【0021】
そして、制御装置3は、上記通常モードにおいて、特定の車両操作が行われると、それを契機として、上記変更モードへ移行する。尚、図1による例では、近年の車両に標準装備されていることの多いナビゲーションシステムが備えるモニタ4が上記制御装置3に電気的に接続され、このモニタ4が有するタッチパネルの機能を用いてユーザが上記特定の車両操作を行った場合に、その操作が制御装置3で認識され、これが上記変更モードへの移行に反映されるようになっている。加えて、制御装置3は、上記通常モードから変更モードへ移行すると、この変更モードにおいて、モニタ4による上記タッチパネルの機能を用いてユーザが行う入力操作を監視する。そして、その入力操作により、電源遷移の許容されるスイッチ操作が上記デフォルト設定から変更されると、制御装置3は、その変更後のスイッチ操作を新たな基準スイッチ操作として更新するかたちで不揮発性のメモリ3aに記憶する。勿論、上記変更後の基準スイッチ操作からさらに新たな基準スイッチ操作に変更すること、さらにその先の変更についても可能である。
【0022】
尚、正規のスマートキーが車内に存在することを条件に、上記ナビゲーションシステムが起動され、そしてこれに伴い、モニタ4による基準スイッチ操作の変更が許容されるようになっている。すなわち、本実施形態では、基準スイッチ操作の変更が上記IDコードの照合と関わるかたちで許容され、したがって上記スマートキーシステムに供されるセキュリティ装置の構成要素であるスマートECU(Electronic Control Unit )或いは電源ECU等の総称である照合制御装置が上記制御装置3としての役割を担っている。
【0023】
ところで、図1による例では、ディーラーの所有する専用ツール5が必要に応じて上記制御装置3に電気的に接続され、この専用ツール5を用いてディーラーが上記特定の車両操作を行った場合に、その操作が制御装置3で認識され、これが上記変更モードへの移行に反映されるようになっている。そして、この場合の変更モードにおいて、ディーラーによる専用ツール5を用いた入力操作が行われることで、上記モニタ4による場合と同様、電源遷移の許容されるスイッチ操作が変更され、基準スイッチ操作が更新されるかたちでメモリ3aに記憶される。すなわち、本実施形態では、モニタ4を用いたユーザ自らによる変更作業、及び、専用ツール5を用いたディーラーによる変更作業を選択的に行えるようになっている。
【0024】
次に、車両用電源スイッチの操作判定装置1の作用について説明する。
車外のドア近くの領域にリクエスト信号が送信されている状態で、その領域に正規のスマートキーを所持するユーザが進入すると、スマートエントリー機能によりドアロックの解錠が許容され、このユーザによる乗車が許容される。そして、車内への進入後にドアが閉められると、今度は車内全域にリクエスト信号が送信されるとともに、このリクエスト信号に応答するかたちでユーザの所持するスマートキーからIDコード信号が送信され、IDコードの照合を経て、正規のスマートキーが車内に存在する旨、制御装置3で肯定判断される。その結果、メモリ3aに記憶されている最新の基準スイッチ操作にしたがうかたちで電源スイッチ2が操作されることを条件に、現在のOFF状態からACC状態、ON状態、或いはST状態への遷移が許容される。尚、ここではデフォルト設定による基準スイッチ操作がメモリ3aに記憶されるとともに、ブレーキペダルを踏みながら電源スイッチ2が短押し操作されることに基づき、車両の電源状態がOFF状態からST状態へ遷移され、スマートイグニッション機能によりエンジンが始動されたものとする。
【0025】
そして、エンジンの駆動状態において、車両搭載のアクセサリ機器及びイグニッション機器に対する通電の行われるON状態へ遷移されるとともに、このON状態において、ナビゲーションシステムが起動され、上記アクセサリ機器の一つであるモニタ4に対する通電が行われる。そして、そのモニタ4による基準スイッチ操作の変更に必要な操作が行われると、上記デフォルト設定による基準スイッチ操作から新たな基準スイッチ操作への変更がなされる。尚、ここでは図2に示す態様の新たな基準スイッチ操作への変更がなされ、この変更後の基準スイッチ操作がメモリ3aに記憶されるものとする。
【0026】
そして、この図2による例では、ACC状態への遷移の許容される新たな基準スイッチ操作として、1秒程度の短押し操作が1回といったものが規定されている。また、ON状態への遷移の許容される新たな基準スイッチ操作として、3秒以上の長押し操作が1回といったものが規定され、さらに、ST状態への遷移の許容される新たな基準スイッチ操作として、5秒以内に1秒程度の短押し操作が3回といったものが規定されている。このように本例では、電源スイッチ2の操作回数と操作時間との組み合わせによる新たな基準スイッチ操作への変更が可能であるとともに、その新たな基準スイッチ操作を電源状態毎に個別に変更可能となっている。尚、当該新たな基準スイッチ操作として、本例によるように電源状態毎に互いに異なるものが設定されてもよいし、一部共通のものが設定されてもよく、また、全て共通のものが設定されてもよい。
【0027】
そして以後、さらに新たな基準スイッチ操作への変更がなされるまでの期間に亘り、上記変更後の基準スイッチ操作にしたがうかたちのスイッチ操作が妥当であるとする判定が制御装置3によって行われる。すなわち、上記変更後において、降車等に伴って車両の電源状態がOFF状態へ遷移された後、次回の車両運転等に際し正規のスマートキーを所持するユーザが車内へ進入すると、上記と同様に、まずはこのときのOFF状態からACC状態、ON状態、或いはST状態への遷移が許容される。そして、このOFF状態でユーザ自らの感覚にあった基準スイッチ操作として予め設定した上記態様にしたがうかたちで電源スイッチ2を操作すると、そのスイッチ操作が妥当であるとする判定が制御装置3によって行われる。そして、こうした肯定判断が制御装置3によって行われると、同制御装置3によって、当該スイッチ操作に基づく電源遷移が行われる。具体的には、ブレーキペダルを踏みながら電源スイッチ2について5秒以内に1秒程度の短押し操作を3回行うと、車両の電源状態がOFF状態からST状態へ遷移され、スマートイグニッション機能によりエンジンが始動される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ナビゲーションシステムのモニタ4或いはディーラーの専用ツール5を通じて、電源遷移が許容されるために必要なスイッチ操作を変更することが可能となる。このため、ユーザ個人個人の感覚にあったスイッチ操作による電源遷移を実現できるようになる。従って、利便性を向上することができる。
【0029】
(2)操作回数と操作時間との組み合わせによる基準スイッチ操作にしたがうかたちで電源スイッチ2を操作すれば、電源遷移が許容される。言い換えると、上記基準スイッチ操作とは異なる態様で電源スイッチ2を操作したとしても、電源遷移は許容されない。このため、基準スイッチ操作を簡単化すれば正規ユーザがこれを忘れてしまうといったようなことが起こり難く、また、操作性が向上するとともに、基準スイッチ操作を複雑化すれば第三者による電源遷移の可能性が抑制され、セキュリティ性が向上する。
【0030】
(3)モニタ4或いは専用ツール5による特定の車両操作が行われたことを契機として、電源遷移の許容されるスイッチ操作を変更する変更モードへ制御装置3が移行される。すなわち、当該特定の車両操作のないまま変更モードへ移行されることはない。このため、変更モードへの移行に必要な特定の車両操作について、その操作態様を簡単化すれば正規ユーザによる変更が容易になるとともに、その操作態様を複雑化すれば第三者による変更が抑制され、セキュリティ性が向上する。
【0031】
(4)基準スイッチ操作を電源状態毎に個別に変更可能としているので、ユーザ個人個人の感覚にあったスイッチ操作を電源状態毎に設定することで、ユーザ自らの望むスイッチ操作が電源遷移に反映されるようになる。従って、利便性及びセキュリティ性を両立させることができる。
【0032】
(5)正規のスマートキーが存在する場合に限り基準スイッチ操作の変更が許容されるので、第三者による変更を回避できるようになる。
(6)本例のデフォルト設定に見られるように、従来一般的な車両では、ブレーキ操作を伴わずに電源スイッチ2が操作されると、その操作の度に、車両の電源状態がOFF状態→ACC状態→ON状態→OFF状態→・・・といった順に遷移される。すなわち、従来はOFF状態から直接ON状態へ遷移されるといったことが実現されていなかったが、本例によるところ、ON状態への遷移の許容される基準スイッチ操作を予め設定すれば、OFF状態から直接ON状態へ電源遷移させることができるようになり、従来との比較において、操作回数が一度分だけ減り操作性が向上する。
【0033】
(7)従来は、スマートキーの紛失時において、当該キーを取得した第三者がIDコードの照合を経ればエンジンが始動されることになるが、本例によると、正規ユーザが予め設定した態様のスイッチ操作を経る必要があるので、第三者によるエンジン始動の可能性を抑制することができる。
【0034】
(8)1台の車両を複数の人が共有するような場合でも、各ユーザが自らの感覚にあったスイッチ操作を予め設定すれば、各人がそれぞれ利便性の恩恵を受けられるようになる。すなわち、運転者が変更される場合に、先の運転者によるスイッチ操作が強要される訳ではなく、利便性が向上する。
【0035】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記実施形態では、新たな基準スイッチ操作について、電源スイッチ2の操作回数と操作時間との組み合わせによるものとしたが、操作時間のみによって規定されてもよい。例えば、電源スイッチ2が上記実施形態に倣って3秒以上といったようにX秒以上長押しされた場合に、電源遷移が許容されてもよい。或いは、許容範囲を伴うかたちでX秒に亘って長押しされた場合に、電源遷移が許容されてもよい。或いは、X1秒〜X2秒の範囲に含まれる時間に亘って長押しされた場合に、電源遷移が許容されてもよい。
【0036】
・上記別例に関連し、操作回数のみによって規定されてもよい。例えば、電源スイッチ2が上記実施形態に倣って5秒以内に3回といったように、ちょうどY回に亘って操作された場合に、電源遷移が許容されてもよい。或いは、Y回以上に亘って操作された場合に、電源遷移が許容されてもよい。或いは、Y1回〜Y2回の範囲に含まれる回数に亘って操作された場合に、電源遷移が許容されてもよい。尚、制御上、制限時間を伴って回数の規定されることが望ましい。
【0037】
・前記実施形態では、押圧操作される電源スイッチ2の搭載される車両を例示したが、ロータリ式の電源スイッチが搭載される場合には、所定回動位置に及ぶ回動操作が連続的に行われる時間或いは回数を含むかたちで基準スイッチ操作が設定されてもよい。尚、ロータリ式に代えてスライド式の電源スイッチが搭載される場合も同様である。
【0038】
・前記実施形態では、変更モードへの移行契機として、モニタ4或いは専用ツール5による操作を採用したが、車両搭載の既存スイッチ類が通常の操作とは異なる態様で特殊操作された場合に、それを変更モードへの移行契機としてもよい。例えば、単一のスイッチの短押し操作が上記通常の操作である場合、このスイッチが長押しされた場合に、これを特殊操作として規定し、この特殊操作が行われた場合に変更モードへ移行されるようにしてもよい。或いは、複数のスイッチが同時に操作されたことを特殊操作として規定し、これが行われた場合に変更モードへ移行されるようにしてもよい。尚、ドアの開閉動作に伴ってドアセンサでこれを検出可能である点を踏まえ、こうしたドア或いはトランク或いはウインドウガラス等の開閉体による開閉動作が予め定められた態様で行われた場合に、これを変更モードへの移行契機としてもよい。ここに上記既存スイッチ類や上記開閉体、さらには上記実施形態によるモニタ4は、車両搭載の既存操作手段に相当する。
【0039】
・上記別例に関連し、車両に新たな専用スイッチを設け、この専用スイッチが操作された場合に変更モードへ移行されるようにしてもよい。
・前記実施形態では、セキュリティ性を高めるべく、正規のスマートキーが車内に存在することを条件に、基準スイッチ操作の変更が許容されるようにしていたが、上記スマートキーのような電子キーに代えて、メカニカルキーが機械的に照合一致された場合に、基準スイッチ操作の変更が許容されてもよい。すなわち、キーシリンダに適合する正規のメカニカルキーの存在が肯定されたことを条件に、基準スイッチ操作の変更が許容されてもよい。
【0040】
・エンジン始動系の制御内容にもよるが、ST状態への遷移条件には、必ずしもブレーキ操作が含まれなくてもよい。尚、シフトレバーのポジションが上記ST状態を含め各電源状態への遷移条件に含まれてもよい。
【0041】
・スマートキーのIDコードと基準スイッチ操作とを関連付けするかたちで複数の基準スイッチ操作を同時にメモリ3aに記憶するようにしてもよい。このようにすれば、運転者の変更される度に、新たな運転者が基準スイッチ操作を設定し直すといった手間が省かれ、要するに変更の頻度が減るので、多くの人が車両を共有する場合に特に便利である。
【0042】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)遷移先の電源状態として、車両電源の遮断されるOFF状態、車両搭載のアクセサリ機器に対する通電の行われるACC状態、車両搭載のイグニッション機器に対する通電の行われるON状態、車両搭載のエンジンを始動するST状態が設けられるとともに、その中から選択されるいずれかの電源状態への遷移が許容されるために必要なスイッチ操作について、電源状態毎に個別に変更可能である請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用電源スイッチの操作判定装置。同構成によると、ユーザ個人個人の感覚にあったスイッチ操作を電源状態毎に設定することで、ユーザ自らの望むスイッチ操作が電源遷移に反映されるようになる。従って、利便性及びセキュリティ性を両立させることができる。尚、電源状態毎に互いに異なる態様のスイッチ操作が設定されてもよいし、一部共通のスイッチ操作が設定されてもよく、また、全て共通のスイッチ操作が設定されてもよい。
【0043】
(ロ)車両に適合する正規のキーの存在が肯定されたことを条件に、前記変更手段によるスイッチ操作の変更が許容される請求項1〜3、上記(イ)のいずれか一項に記載の車両用電源スイッチの操作判定装置。同構成によると、正規のキーが存在する場合に限り変更手段によるスイッチ操作の変更が許容されるので、第三者による変更を回避できるようになる。
【符号の説明】
【0044】
1…車両用電源スイッチの操作判定装置、2…電源スイッチ、3…制御装置(変更手段、操作判定手段、電源制御手段)、4…モニタ(変更手段)、5…専用ツール(変更手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電源スイッチによるスイッチ操作に基づいて車両の電源遷移を行うべく、当該スイッチ操作の妥当性を判定する車両用電源スイッチの操作判定装置において、
前記車両用電源スイッチの操作について、電源遷移の許容されるスイッチ操作を変更する変更手段を備える
ことを特徴とする車両用電源スイッチの操作判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電源スイッチの操作判定装置において、
電源遷移の許容されるスイッチ操作として、操作回数と操作時間との組み合わせによる基準スイッチ操作が規定され、その基準スイッチ操作にしたがうかたちで前記車両用電源スイッチが操作されたか否かを判定する操作判定手段と、
前記操作判定手段により肯定判断されたことを条件に電源遷移を許容する電源制御手段とをさらに備える
ことを特徴とする車両用電源スイッチの操作判定装置。
【請求項3】
前記変更手段は、特定の車両操作が行われたことを契機として、電源遷移の許容されるスイッチ操作を変更する変更モードへ移行する
請求項1又は2に記載の車両用電源スイッチの操作判定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−28229(P2013−28229A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164449(P2011−164449)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)