説明

車両用電源装置の冷却構造

【課題】車両下部の空力性能の低下を招くことなしに、車両用電源装置を有利に保護しつつ、低いコストで冷却可能な車両用電源装置の冷却構造を提供する。
【解決手段】前側に空気取入口38が、後側に空気送出し口42が、それぞれ設けられた筒状の導風ダクト34を、車両10の床下の車両用電源装置16よりも前側に位置して、車両前後方向に延び、且つ空気送出し口42を車両用電源装置16の下側に開口させた状態で設置する一方、車両用電源装置16の下面を覆うカバー部材14,24を設け、更に、かかるカバー部材14,24の内側に、車両前後方向に延びる通風路58を、導風ダクト34の空気送出し口42に接続して形成し、走行風を、導風ダクト34を通じて通風路58内に導入して、車両用電源装置16の下面に沿って車両後方側に流通させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置の冷却構造に係り、特に、駆動源たる電動モータへの給電用として車両に搭載される車両用電源装置を冷却するための構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、駆動源として、電動モータのみを用いる電気車両(EV車)や燃料電池車両(FCV車)、或いは電動モータと内燃機関とを併用するハイブリッド車両(HV車)が注目されており、自動車等において実用化されている。それらの車両には、電動モータに電気エネルギーを供給するための二次電池や燃料電池、或いは蓄電器(キャパシタ)等を有する、所謂車両用電源装置が搭載されているが、二次電池や蓄電器は、充電時に温度が上昇し、燃料電池は、発電時に温度が上昇する。このため、そのような車両用電源装置を搭載する車両の多くには、車両用電源装置の冷却装置が設置されている。
【0003】
そして、従来では、例えば、特開2004−47426号公報(特許文献1)等に明らかにされるように、電動ファン等の冷却媒体供給装置から送風された冷却風等の冷却媒体を車両用電源装置に接触させることによって車両用電源装置を冷却するようにした構造が、車両用電源装置の冷却装置に広く採用されている。このような冷却装置による車両用電源装置の冷却によって、車両用電源装置の性能の向上や使用寿命の延命化が図られているのである。
【0004】
ところが、上記の如き構造を有する従来の車両用電源装置の冷却装置を車両に設置する場合には、冷却媒体を車両用電源装置に導く導風部材だけでなく、電動ファン等の冷却媒体供給装置、更には冷却媒体供給装置を作動させるための様々な周辺部品を車両に設置する必要がある。それ故、車両用電源装置の冷却のために、冷却媒体供給装置や周辺部品の設置コストが、多く掛かっていた。しかも、冷却媒体供給装置や周辺部品を設置した分だけ、車両の重量が不可避的に増大するため、とりわけ、ハイブリッド自動車等では、そのような車重の増大に伴う燃費の低下が懸念されるのである。
【0005】
かかる状況下、例えば、特開2006−92805号公報(特許文献2)には、車両の走行によって生ずる走行風を利用して、車両用電源装置の一種たる車両用電池を冷却するようにした車両用電池の冷却構造が開示されている。このような冷却構造によれば、冷却媒体供給装置やその周辺部品を省略することができる。それにより、冷却装置を用いる車両用電源装置の冷却構造に比して、車両用電源装置の冷却コストを有利に低減させることが可能となる。また、冷却媒体供給装置や周辺部品の設置による車重の増大、更にはそれに起因した問題の発生を効果的に解消することができるのである。
【0006】
しかしながら、走行風を利用する従来構造では、フロアパネルに対して、下方に向かって開口する凹部を形成し、この凹部内に、車両用電源装置(車両用電池)を、その下面が外部に露出されるように収容していた。このため、車両の走行中に、跳ね上げられた小石や飛散した泥水等が、剥き出しとなった車両用電源装置の下面に当たったり、掛かったりして、車両用電源装置が損傷したり、劣化したりする恐れがあった。
【0007】
なお、走行風を利用して、車両用電源装置を冷却しつつ、上記のような小石や泥水等による車両用電源装置の損傷や劣化を防止するには、アンダーカバーをフロアパネルの下側に隙間を開けて設置し、このアンダーカバーにて、車両用電源装置を覆って保護すると共に、アンダーカバーとフロアパネルとの間の隙間内に走行風を取り入れて流通させることにより、走行風を車両用電源装置に接触させて、車両用電源装置を冷却するように為すことが考えられる。
【0008】
ところが、単に、アンダーカバーをフロアパネルの下側に隙間を開けて設置しただけでは、それらアンダーカバーとフロアパネルとの間の隙間内に、走行風が無制限に取り入れられるようになる。そのため、上記した車両用電源装置の冷却構造を採用した場合、アンダーカバーをフロアパネルの隙間内に大量の走行風が取り入れられて、走行風の流通抵抗が増大し、それによって、車両下部の空力性能が低下(Cd値が増大)するといった問題が惹起されることが懸念されるのである。また、そのような車両下部の空力性能が低下によっても、ハイブリッド自動車等において燃費が低下する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−47426号公報
【特許文献2】特開2006−92805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、車両の床下に配置される車両用電源装置を冷却するための構造であって、車両下部の空力性能の低下を招くことなしに、車両の走行中に跳ね上げられる小石や泥水等から車両用電源装置を有利に保護しつつ、車両用電源装置を十分に低いコストで効果的に冷却し得るように改良された車両用電源装置の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明にあっては、上記の課題の解決のために、車両の床下に配置される、車両用電池と車両用蓄電器のうちの少なくとも何れか一方を有する車両用電源装置を冷却するための構造であって、車両前方側に向かって開口して、走行風を取り入れる空気取入口と、車両後方側に向かって開口して、該空気取入口から取り入れられた該走行風を車両後方側に送り出す空気送出し口とを有する筒状の導風ダクトを、車両の床下の前記車両用電源装置よりも前側に位置して、車両前後方向に延び、且つ該空気送出し口を該車両用電源装置の下側に開口させた状態で設置する一方、前記車両用電源装置の下側に、車幅方向において互いに間隔を隔てて対向位置して、車両前後方向に延びる二つの側壁部と、該車両用電源装置の下面と間隔を隔てて対向位置して、車両前後方向に延びる底壁部とを有して、該車両用電源装置の下面を覆うカバー部材を設けると共に、該カバー部材の内側に、該カバー部材の底壁部及び二つの側壁部と該車両用電源装置の下面にて囲繞されて、該車両用電源装置の下面に沿って車両前後方向に延びる通風路を、前記導風ダクトの前記空気送出し口に接続して形成し、走行風を、前記導風ダクトを通じて前記通風路内に導入して、前記車両用電源装置の下面に沿って車両後方側に流通させることにより、該車両用電源装置を走行風にて冷却するように構成したことを特徴とする車両用電源装置の冷却構造を、その要旨とするものである。
【0012】
なお、本発明の好ましい態様の一つによれば、前記車両用電源装置が、車両の床下に、車幅方向に並列して複数配置されており、前記導風ダクトが、車両前後方向に延びて、前側開口部が前記空気取入口とされた一つの本体筒部と、該本体筒部の後側に位置して、該本体筒部内に連通した状態で前後方向に延びる複数の分岐筒部とにて構成されると共に、該複数の分岐筒部が、該複数の車両用電源装置の下側にそれぞれ開口する後側開口部を有し、前記空気送出し口が、それら複数の分岐筒部の後側開口部にてそれぞれ構成される一方、該複数の車両用電源装置の下側に、それら各車両用電源装置の下面を覆う前記カバー部材がそれぞれ設けられて、それら複数のカバー部材の内側に、前記通風路が、該複数の分岐筒部の各空気送出し口に接続して、それぞれ形成されることとなる。
【発明の効果】
【0013】
すなわち、本発明に従う車両用電源装置の冷却構造にあっては、冷媒等を利用した特別な冷却機構を付加することなく、走行風を利用して、車両用電源装置を冷却することができる。そのため、車両用電源装置の冷却コストを効果的に低く抑えることができる。
【0014】
また、車両用電源装置を冷却するための走行風が、導風ダクトの空気取入口から取り入れられる。それ故、導風ダクトの空気取入口の大きさを調節することで、車両用電源装置を冷却するための走行風の量を必要な量に制限することができる。これによって、車両用電源装置の冷却用の走行風をアンダーカバーの内側に無制限に取り入れる場合とは異なって、導風ダクト内に大量の走行風が取り入れられて、走行風の流通抵抗が増大するようなことが効果的に防止され得る。
【0015】
さらに、車両用電源装置の下面が、カバー部材にて覆われているため、車両の走行中に、車両用電源装置の下面に対して、跳ね上げられた小石が当たったり、飛散した泥水が掛かったりすることが有利に回避され得る。
【0016】
しかも、そのようなカバー部材の内側に、カバー部材を構成する二つの側壁部及び底壁部と車両用電源装置の下面とにて囲繞されて、車両用電源装置の下面に沿って車両前後方向に延びる通風路が、導風ダクトの前記空気送出し口と接続されて形成されている。それ故、導風ダクト内に取り入れられた走行風を、車両用電源装置の下面と十分に且つ効率的に接触させつつ、かかる下面に沿って、車両後方側にスムーズに導くことができる。
【0017】
従って、本発明に従う車両用電源装置の冷却構造によれば、車両の床下に配置される車両用電源装置を、車両の走行中に跳ね上げられる小石や泥水等から有利に保護しつつ、車両下部の空力性能の低下、更にはそれによる燃費の低下の問題等を発生させることもなしに、極めて効率的且つ経済的に有利に冷却することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従う車両用電源装置の冷却構造の一例を採用した自動車の側面説明図である。
【図2】図1に示された自動車に装着されるアンダーカバーの上面説明図である。
【図3】図2のIII−III断面説明図である。
【図4】本発明に従う車両用電源装置の冷却構造の別の例を示す、図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0020】
先ず、図1には、本発明に従う車両用電源装置の冷却構造の一実施形態として、車両用の二次電池の冷却構造を採用した、電動モータとガソリンエンジン(共に図示せず)とを駆動源として有するハイブリッド自動車が、その側面形態において示されている。かかる図1から明らかなように、このハイブリッド自動車10(以下、単に、自動車10と言う)の下部には、車室の床面を形成するフロアパネル12が取り付けられ、また、その下方には、アンダーカバー14が、フロアパネル12の下面と所定距離を隔てて対向配置された状態で装着されている。更に、フロアパネル12とアンダーカバー14との間には、矩形の筐体からなる5個(図1には1個のみを示す)の電池パック16が、車幅方向に一定の間隔を隔てて並列的に配置されている(図2参照)。図示されてはいないものの、それら5個の電池パック16内には、それぞれ、車両用電源装置としての二次電池が、複数個ずつ、収容されている。また、それら各電池パック16は、その下面とアンダーカバー14の上面との間に、自動車10の前後方向に延びる所定の隙間を形成した状態で、例えば、アンダーカバー14上に取り付けられた補強ブレース(図示せず)等に固定されている。そして、かかる自動車10においては、走行風を利用して、5個の電池パック16内に収容された二次電池をそれぞれ冷却する冷却構造を実現する導風ユニット18が、アンダーカバー14上に配設されているのである。
【0021】
なお、以下からは、アンダーカバー14の自動車10への設置形態に基づいて、アンダーカバー14の長手方向(図1及び図3の左右方向で、図2の上下方向)を前後方向と言い、アンダーカバー14の幅方向(図1及び図3の紙面に垂直な方向で、図2の左右方向)を車幅方向又は左右方向と言い、アンダーカバー14の厚さ方向(図1及び図3の上下方向で、図2の紙面に垂直な方向)を上下方向と言う。
【0022】
より詳細には、図2及び図3に示されるように、導風ユニット18は、アンダーカバー14の前部に固定された前側部材20と、アンダーカバー14の後部に固定された後側部材22と、アンダーカバー14の前後方向の中間部に、前側部材20と後側部材22との間に挟まれて、配設された中間部材24とにて構成されている。
【0023】
導風ユニット18の前側部材20は、前後方向に延びる長手の平板からなる天板部26と、この天板部26の下面の幅方向両端にそれぞれ立設された側壁部28,28とを一体的に備えた、下方に向かって開口する縦断面コ字状のプレス成形品等からなっている。また、そのような前側部材20は、その前後方向長さが、アンダーカバー14の前端縁から、アンダーカバー14の上に、その上面と離間して固定された各電池パック16の前端面に対応位置するアンダーカバー14の前後方向の中間部までの距離と同一の寸法とされている。更に、その高さが、アンダーカバー14の上面から各電池パック16の下面までの高さと略同じ大きさとされている。
【0024】
そして、ここでは、前側部材20の前側部分と後側部分とが、それぞれ、幅広部30と、それよりも幅の狭い5個の分岐部32,32,32,32,32とされている。
【0025】
幅広部30は、前後方向に真っ直ぐに延びる長手矩形状の天板部26部位と、この天板部26部位から、その後側に一体で延びる、後端に向かうに従って徐々に拡幅する台形状の天板部26部位とを有している。そして、そのような天板部26部位の下面の幅方向両端縁に対して、2個の側壁部28,28が、それら幅方向両側端縁に沿って、前後方向に延びる状態で、一体的に立設されている。
【0026】
5個の分岐部32,32,32,32,32は、幅広部30の天板部26部位の後端から5個に分岐して前後方向に延びる5個の天板部26部位をそれぞれ有し、それら5個の天板部26部位のそれぞれの下面の幅方向両端に対して、2個の側壁部28,28が、一定の間隔を隔てて前後方向に延びるようにして、各々一体的に立設されている。
【0027】
そして、そのような構造を有する前側部材20が、アンダーカバー14の上面の前部の車幅方向中央部において、幅広部30の前端面をアンダーカバー14の前端面に対応させた位置で、幅広部30と分岐部32に一体形成された各側壁部28の下端面をアンダーカバー14の上面にそれぞれ重ね合わせて、前後方向に延びるように配置されている。また、そのような配置状態下で、各側壁部28が、例えば、アンダーカバー14に溶接されるか、或いは各側壁部28に設けられた、図示しないフランジ部をアンダーカバー14にボルト止めやねじ止めされている。これによって、前側部材20が、アンダーカバー14の上面の前部の幅方向中央部に、下方への開口部をアンダーカバー14にて閉塞させられた状態で、固定されている。
【0028】
かくして、ここでは、アンダーカバー14の上面の前部の幅方向中央部に、前側部材20の天板部26及び各側壁部28とアンダーカバー14の前部の幅方向中央部分とを、それぞれ筒壁部として形成された筒状の前側導風ダクト34が、前後方向に延びるように配設されているのである。
【0029】
そして、この前側導風ダクト34においては、その前側部分が、前側部材20の幅広部30と、かかる幅広部30の下側開口部を閉塞するアンダーカバー14部分とにて構成されて、前後方向に真っ直ぐに延びる本体筒部36とされている。また、そのような本体筒部36は、アンダーカバー14の前端において前方に開口する開口部を有しており、この前側開口部が、空気取入口38とされている。この空気取入口38は、後述するように、アンダーカバー14が自動車10の下部に装着された状態下で、走行風を、前方から本体筒部36内に取り入れるためのものである。
【0030】
一方、前側導風ダクト34の後側部分は、5個の分岐部32,32,32,32,32とそれら各分岐部32の下側開口部を閉塞するアンダーカバー14部分とにて構成された、互いに別個の5個の部分からなっている。そして、それら5個の後側部分が、前側導風ダクト34の本体筒部36の後側において、互いに独立して前後方向に延びる分岐筒部40,40,40,40,40とされている。それら各分岐筒部40は、それぞれの前側開口部において、本体筒部36内に連通している。また、各分岐筒部40の後側開口部は、外部に開口しており、そのような各分岐筒部40の後側開口部が、それぞれ、空気送出し口42とされている。これによって、空気取入口38を通じて本体筒部36内に取り入れられた走行風が、各分岐筒部40の空気送出し口42から後方側に向かって送り出されるようになっている。
【0031】
そして、ここでは、前記したように、前側部材20の前端縁が、アンダーカバー14の前端縁に対応位置させられている。また、前側部材20の前後方向長さが、アンダーカバー14の前端縁から、各電池パック16の前端の鉛直下方に位置するアンダーカバー14の前後方向の中間部までの距離と同一の寸法とされている。更に、前側部材20の高さが、アンダーカバー14の上面から各電池パック16の下面までの高さと略同一寸法とされている。これによって、各分岐筒部40の後端が、各電池パック16の前端の鉛直下方に位置するアンダーカバー14の前後方向の中間部に対応位置させられて、各分岐筒部40の空気送出し口42が、アンダーカバー14の上面上に所定距離を隔てて配置された各電池パック16の下側、つまり各電池パック16の下面とアンダーカバー14の上面との間の隙間に向かって開口している。
【0032】
そして、本実施形態においては、5個の分岐筒部40,40,40,40,40の各空気送出し口42の車幅方向の開口幅:W1 、W2 、W3 、W4 、W5 と開口面積とが、それぞれ、互いに同一の特定の大きさとされていると共に、本体筒部36の空気取入口38の開口面積も、各空気送出し口42の開口面積に応じた特別な大きさとされている。
【0033】
すなわち、ここでは、後述するように、5個の分岐筒部40,40,40,40,40の各空気送出し口42から送り出された走行風によって、5個の電池パック16,16,16,16,16が、更には、それらの内部に収容された二次電池が、それぞれ冷却されるようになっている。そこで、各空気送出し口42の開口幅:W1 、W2 、W3 、W4 、W5 と開口面積とが、各電池パック16内の二次電池を確実に冷却するのに必要な量だけの走行風を効率的に送り出し得る大きさに設定されている。また、本体筒部36の空気取入口38の開口面積が、5個の電池パック16,16,16,16,16内の二次電池を確実に冷却するのに必要な風量だけを本体筒部36内に取り入れ得る大きさに設定されている。
【0034】
具体的には、各空気送出し口42の車幅方向の開口幅:W1 、W2 、W3 、W4 、W5 が、各電池パック16の車幅方向の幅寸法と同じか又はそれよりも若干小さな寸法とされている。また、各空気送出し口42の開口面積は、例えば、様々な実験や試験により、或いは経験から設定された、電池パック16内の二次電池の冷却に必要な風量に基づいて、かかる設定風量を送り出すのに必要な最小限度の大きさ、或いは最小限度に近い大きさに設定されている。そして、本体筒部36の空気取入口38の開口面積は、5個の分岐筒部40,40,40,40,40の開口面積の総和と同一の大きさとされている。
【0035】
一方、導風ユニット18の後側部材22も、前側部材20と同様に、前後方向に延びる長手の平板からなる天板部44と、この天板部44の下面の幅方向両端にそれぞれ立設された側壁部46,46とを一体的に備えた、下方に向かって開口する縦断面コ字状のプレス成形品等からなっている。この後側部材22は、前後方向の中間部に、前側から後側に向かって幅が徐々に狭くなるように変化する部分が設けられて、後側部分が前側部分よりも狭幅とされている。また、その前後方向長さが、アンダーカバー14上に固定された各電池パック16の後端の鉛直下方に位置するアンダーカバー14の前後方向の中間部から、アンダーカバー14の後端縁までの距離と同一の寸法とされている。更に、後側部材22の高さが、アンダーカバー14の上面から各電池パック16の下面までの高さと略同じ寸法とされている。
【0036】
そして、そのような構造を有する後側部材22が、アンダーカバー14の上面の後部の車幅方向中央部において、電池パック16の前後方向長さと同一距離だけ、前側部材20の後端から後側に離間し、且つ後端縁をアンダーカバー14の後端縁に対応させた位置で、2個の側壁部46,46の下端面をアンダーカバー14の上面にそれぞれ重ね合わせて、前後方向に延びるように配置されている。また、そのような配置状態下で、各側壁部46が、例えば、アンダーカバー14に溶接されるか、或いは各側壁部46に設けられた、図示しないフランジ部をアンダーカバー14にボルト止めやねじ止めされている。これによって、後側部材22が、アンダーカバー14の上面の後部の幅方向中央部に、アンダーカバー14にて、下方への開口部を閉塞させられた状態で、固定されている。
【0037】
かくして、ここでは、アンダーカバー14の上面の後部の幅方向中央部に、後側部材22の天板部44及び2個の側壁部46,46とアンダーカバー14の後部の幅方向中央部分とを、それぞれ筒壁部として形成された筒状の後側導風ダクト50が、前後方向に延びるように配設されているのである。
【0038】
この後側導風ダクト50は、前方と後方に向かってそれぞれ開口する2個の開口部を有しており、それら2個の開口部のうちの前側開口部が空気導入口52とされている一方、後側開口部が空気排出口54とされている。
【0039】
そして、そのような後側導風ダクト50の空気導入口52は、車幅方向の開口幅:W6 が、アンダーカバー14に固定された5個の電池パック16の最も左側に位置するものの左側側面から最も右側に位置するものの右側側面までの距離と同じ寸法とされている。また、上記したように、後側部材22の高さが、アンダーカバー14の上面から各電池パック16の下面までの高さと略同一寸法とされている。これによって、空気導入口52が、アンダーカバー14の上面上に所定距離を隔てて配置された各電池パック16の下側、つまり、アンダーカバー14の上面と各電池パック16の下面との間の隙間に開口している。そして、前側導風ダクト34の各分岐筒部40の空気送出し口42から送り出されて、各電池パック16の下側を通過した走行風が、空気導入口52を通じて、後側導風ダクト50内に導入されるようになっている。
【0040】
一方、空気排出口54は、車幅方向の開口幅:W7 が、空気導入口52の車幅方向の開口幅:W6 よりも所定寸法だけ小さくされている。そして、上記したように、後側部材22の前後方向長さが、各電池パック16の後端の鉛直下方に位置するアンダーカバー14の前後方向の中間部からアンダーカバー14の後端縁までの距離と同一の寸法とされている。これによって、後側導風ダクト50の空気排出口54が、アンダーカバー14の後端において、後方に向かって開口している。そして、後側導風ダクト50内に導入された走行風が、アンダーカバー14の後端において、空気排出口54から外部に排出されるようになっている。
【0041】
導風ユニット18の中間部材24は、アンダーカバー14の上面の前後方向中間部に立設された複数(ここでは10個)の導風板56にて構成されている。それら複数の導風板56は、互いに同一の大きさを有する長手矩形の金属平板からなり、比較的に薄い肉厚と、各電池パック16の前後方向長さと略同じ長さと、アンダーカバー14の上面から各電池パック16の下面までの高さと略同じ高さとを有している。
【0042】
そして、そのような導風板56が、5個の電池パック16,16,16,16,16の下側に位置するアンダーカバー14の上面上に、電池パック16の幅寸法(車幅方向に対応した左右方向寸法)と略同一の距離を隔てて対向して対を為しつつ、電池パック16の左右の両側面に沿って、前後方向に真っ直ぐに延びるように配置されている。また、そのような配置状態下で、各電池パック16の下側に位置する複数対の導風板56が、前側及び後側部材20,22のアンダーカバー14への固定形態と同様な形態において、アンダーカバー14の上面に固定されている。
【0043】
これによって、アンダーカバー14の上面上に離間して固定された5個の電池パック16,16,16,16,16のそれぞれの下面が、それら各電池パック16の下側に対向位置して対を為す2個の導風板56,56と、各電池パック16の下面に対向位置するアンダーカバー14部分とにて覆われている。そうして、各電池パック16の下面が、外部に露呈しないようになっている。なお、各電池パック16の側面や上面は、フロアパネル12とアンダーカバー14との間の隙間の側方への開口部が自動車10のボデーにて塞がれていることによって、外部に露呈しないようになっている。
【0044】
すなわち、ここでは、複数の導風板56からなる中間部材24と、かかる中間部材24の対を為す導風板56,56同士の間に位置するアンダーカバー14部分とにて、各電池パック16の下面を覆うカバー部材が構成されている。また、そのようなカバー部材においては、対を為す導風板56,56にて、側壁部が構成されていると共に、それら対を為す導風板56,56同士の間に位置するアンダーカバー14部分にて、底壁部が構成されている。
【0045】
そして、本実施形態では、上記のように、複数の導風板56からなる中間部材24が、各電池パック16の下側のアンダーカバー14上に立設されていることによって、各電池パック16の下側に、前側導風ダクト34の各空気送出し口42から送り出された走行風が流通する通風路58が、それぞれ形成されている。
【0046】
すなわち、5個の電池パック16,16,16,16,16のそれぞれの下側には、互いに対向位置して、アンダーカバー14上に立設された2個の導風板56,56と、各電池パック16の下面と対向位置するアンダーカバー14部分と、それらによって覆われる電池パック16の下面とにて、上下左右の四方が取り囲まれてなる空間が形成されている。そして、それら5個の電池パック16,16,16,16,16のそれぞれの下側に形成された5個の空間が、各々、通風路58とされているのである。
【0047】
また、それら5個の通風路58,58,58,58,58は、各電池パック16の下面に沿って前後方向に延び出し、前側と後側とにおいて、それぞれ開口している。そして、5個の通風路58,58,58,58,58の各前側開口部が、前側導風ダクト34の5個の分岐筒部40,40,40,40,40の各空気送出し口42と、アンダーカバー14上の同一箇所に位置させられて、それら各空気送出し口42に対して、連通状態で接続されている。また、5個の通風路58,58,58,58,58の各後側開口部は、後側導風ダクト50の空気導入口52と、アンダーカバー14上で同一箇所に位置させられて、かかる空気導入口52に対して、連通状態で接続されている。これによって、前側導風ダクト34の各分岐筒部40の空気送出し口42から送り出された走行風が、通風路58内を流通して、後側導風ダクト50内に送り込まれるようになっている。
【0048】
そして、上記のようにして上面上に導風ユニット18が配設されたアンダーカバー14は、図1及び図3に示される如く、5個の電池パック16,16,16,16,16(図1及び図3には、1個のみを示す)をフロアパネル12の下側に位置させると共に、導風ユニット18をフロアパネル12との間に位置させた状態で、自動車10に装着されるようになっている。また、そのような装着状態下において、前側導風ダクト34の空気取入口38が、自動車10のフロントバンパ60に形成された、自動車10の前面において前方に向かって開口する開口部62に対応位置させられる一方、後側導風ダクト50の空気排出口54が、例えば、自動車10のリヤバンパ64に設けられた、自動車10の後面において後方に向かって開口する開口部66に対応位置させられている。
【0049】
かくして、本実施形態では、図2及び図3に矢印で示されるように、自動車10の走行時に生ずる走行風が、自動車10の前端において、フロントバンパ60の開口部62と前側導風ダクト34の空気取入口38から前側導風ダクト34の本体筒部36内に取り入れられるようになっている。また、かかる本体筒部36内に取り入れられた走行風が、5個の分岐筒部40,40,40,40,40を経て、それら各分岐筒部40の空気送出し口42から、5個の電池パック16,16,16,16,16のそれぞれの下側に設けられた各通風路58内に送り出される。そして、各通風路58内に送り出された走行風は、各電池パック16の下面に沿って、各通風路58内を後側に向かって流通する。このとき、走行風が、各電池パック16の下面に接触することで、各電池パック16とそれらの内部に収容された二次電池とが、走行風にて冷却される。その後、走行風が、各通風路58内から、空気導入口52を通じて、後側導風ダクト50内に導入され、後側導風ダクト50内を流通した後、自動車の後面において、空気排出口54から後方に向かって排出されるようになっている。
【0050】
このように、本実施形態においては、走行風を利用して、各電池パック16内の二次電池が冷却されるようになっている。それ故、冷却媒体を利用した特別な冷却装置を自動車に装着し、かかる冷却装置にて、二次電池を冷却する場合とは異なって、二次電池の冷却コストを有利に低減させることができる。しかも、冷却装置に組み込まれる、例えば電動ファンやそれを作動させるための周辺部品が省略される。そのため、そのような電動ファンや周辺部品の設置による自動車10の重量の増大が回避され、その結果、車重の増大による燃費の低下も未然に防止され得る。
【0051】
また、本実施形態では、空気取入口38と各空気送出し口42のそれぞれの車幅方向の開口幅や開口面積が可及的に小さくされて、電池パック16内の二次電池の冷却に必要な風量だけを空気取入口38から取り入れて、各通風路58内に供給し得るようになっている。これによって、空気取入口38から余分な量の走行風が取り入れられることで、走行風の流通抵抗が増大して、自動車10の下部の空力性能が低下(Cd値が増大)するようなことが、極めて効果的に防止され得る。また、そのような自動車10の下部の空力性能が低下に起因した燃費の低下も効果的に抑制され得る。
【0052】
さらに、各通風路58が、平板状の一対の導風板56,56と、それらの間に位置するアンダーカバー14部分と、電池パック16の下面とにて四方が囲まれて形成されている。それ故、そのような通風路58内に供給された走行風が、一対の導風板56,56の互いに対向面とアンダーカバー14の上面と電池パック16の下面とにて、後方に向かってスムーズに導かれるだけでなく、通風路58内から外部への走行風の漏出しも、有利に軽減され得る。しかも、分岐筒部40の空気送出し口42と、それに接続される通風路58の前側開口部とが、アンダーカバー14上の同一箇所に配置されている。このため、空気送出し口42から通風路58内に走行風が送り出される際に、走行風が、通風路58以外に漏れ出すことが有利に防止され得る。これによっても、走行風の流通抵抗が可及的に抑えられ得ると共に、走行風の効率的な有効利用が図られ、以て、自動車10の下部の空力性能が十分に確保され得ることとなる。
【0053】
また、本実施形態では、電池パック16(二次電池)の冷却に利用された走行風が、自動車10の後面において、後側導風ダクト50の空気排出口54から後方に向かって排出されるようになっている。それ故、例えば、走行風が下方に向かって排出される場合とは異なって、アンダーカバー14の下側の走行風の流れが、空気排出口54から排出される走行風によって乱されることがない。これによっても、自動車10の下部の空力性能が安定的に確保され得る。
【0054】
さらに、本実施形態では、各電池パック16の下面が、各電池パック16の下側において対向配置される一対の導風板56,56と、それらの間に位置するアンダーカバー14部分とにて覆われている。そのため、自動車10の走行中に、各電池パック16の下面に対して、跳ね上げられた小石が当たったり、飛散した泥水が掛かったりすることが有利に防止されて、そのような小石や泥水等による電池パック16、更にはその内部の二次電池の損傷や劣化の発生が、効果的に解消され得る。
【0055】
次に、図4には、本発明に従う車両用電源装置の冷却構造の別の実施形態として、二次電池と蓄電器とを有する車両用電源装置を冷却する構造が、示されている。かかる図4から明らかなように、本実施形態では、前記第一の実施形態において採用される導風ユニット18とは一部の構造が異なる導風ユニット68が、アンダーカバー14上に配設されることによって、二次電池を内蔵した電池パック16とキャパシタ(車両用蓄電器)70とを冷却する冷却構造が実現されている。なお、本実施形態に関しては、図1乃至図3に示される前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材や部位について、図1乃至図3と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0056】
すなわち、図4から明らかなように、ここでは、アンダーカバー14の前後方向中間部と、それに対向配置されたフロアパネル(図示せず)の前後方向中間部分との間に形成される隙間に、図示しない二次電池を内蔵した複数個(ここでは5個)の電池パック16が、車幅方向に一定の間隔を隔てて並列的に配置されている。また、かかるアンダーカバー14とフロアパネルの間の隙間には、複数個の電池パック16よりも後方側に離間した箇所に、キャパシタ70が、電池パック16と同数だけ、車幅方向に一定の間隔を隔てて並列的に位置し、且つ各電池パック16と前後方向に並んで位置するように、配置されている。それら複数個のキャパシタ70は、各電池パック16と同様な構造によって、アンダーカバー14に取り付けられている。
【0057】
そして、導風ユニット68は、電池パック16とキャパシタ70の配置部位よりも前側に位置するアンダーカバー14の前側部分、及びそれらよりも後側に位置するアンダーカバー14の後側部分にそれぞれ固定された前側部材20及び後側部材22と、電池パック16とキャパシタ70の配置部位に対応する、アンダーカバー14の前後方向の中間部分に固定された中間部材72とを有して、構成されている。この導風ユニット68の前側部材20及び後側部材22は、前記第一の実施形態における導風ユニット18の前側部材20及び後側部材22と同様な構造とされている。
【0058】
一方、導風ユニット68の中間部材72は、第一カバー部材73と第二カバー部材74と連通路形成部材75とにて構成されている。第一カバー部材73は、前記第一の実施形態における導風ユニット18の中間部材24と同様な構造を有して、各電池パック16の下方に設置されている。つまり、第一カバー部材73は、複数(ここでは10個)の第一導風板76を有している。そして、それら複数の第一導風板76が、各電池パック16の下側において、互いに対向しつつ、前後方向に延びるように配置されて、アンダーカバー14の上面上に立設されている。これにより、各電池パック16の下方に、それら各電池パック16の下面に沿って前後方向に延びる第一通風路78が、それぞれ形成されている。また、各電池パック16の下面が、各第一導風板76と、各電池パック16の下面に対向位置するアンダーカバー14部分とにて覆われている。
【0059】
第二カバー部材74は、第一カバー部材73と同一の基本構造を有して、各キャパシタ70の下方に設置されている。つまり、第二カバー部材74は、複数(ここでは10個)の第二導風板80を有している。そして、それら複数の第二導風板80が、各キャパシタ70の下側において、互いに対向しつつ、前後方向に延びるように配置されて、アンダーカバー14の上面上に立設されている。これにより、各キャパシタ70の下方に、それら各キャパシタ70の下面に沿って前後方向に延びる第二通風路82が、それぞれ形成されていると共に、各キャパシタ70の下面が、各第二導風板80と、各キャパシタ70の下面に対向位置するアンダーカバー14部分とにて覆われている。
【0060】
連通路形成部材75は、互いに対向配置された平板状の二つの側壁部と、それら二つの側壁部の上端部同士を相互に連結する天板部とを備えた複数(ここでは5個)のコ字状金具84を有している。それら各コ字状金具84は、その幅が、電池パック16やキャパシタ70の幅と略同一とされていると共に、その高さが、第一及び第二導風板76,80の高さと略同一とされている。また、各コ字状金具84の長さが、前後方向に離間して、直列配置された電池パック16とキャパシタ70との間の前後方向での距離と同一とされている。そして、そのような複数のコ字状金具84が、前後方向に直列配置された電池パック16とキャパシタ70との間にそれぞれ配置されて、アンダーカバー14に対して、各側壁部の下端面を重ね合わせて、下側開口部がアンダーカバー14にて塞がれた状態で固定されている。
【0061】
これにより、各コ字状金具84の内側空間が、各電池パック16の下側に形成された第一通風路78と、各キャパシタ70の下側に形成された第二通風路82とに、それぞれ連通している。そして、そのような各コ字状金具84の内側空間にて、第一及び第二通風路78,82にそれぞれ連通して前後方向に延びる連通路86が形成されている。
【0062】
かくして、本実施形態では、図4に矢印で示されるように、フロントバンパ60の開口部62と前側導風ダクト34の空気取入口38から前側導風ダクト34の本体筒部36内に取り入れられた走行風が、複数の分岐筒部40を経て、それら各分岐筒部40の空気送出し口42から、各電池パック16の下側に設けられた各第一通風路78内に送り出される。そして、各第一通風路78内に送り出された走行風は、各電池パック16の下面に沿って、各第一通風路78内を後側に向かって流通する。このとき、走行風が、各電池パック16の下面に接触することで、各電池パック16とそれらの内部に収容された二次電池とが、走行風にて冷却される。
【0063】
その後、走行風が、各第一通風路78内から、各連通路86を経て、各キャパシタ70の下側に設けられた各第二通風路82に送り出される。そして、各第二通風路82内に送り出された走行風は、各キャパシタ70の下面に沿って、各第二通風路82内を後側に向かって流通する。このとき、走行風が、各キャパシタ70の下面に接触することで、各キャパシタ70が、走行風にて冷却される。そして、各キャパシタ70の下面と接触した走行風が、空気導入口52を通じて、後側導風ダクト50内に導入され、後側導風ダクト50内を流通した後、自動車の後面において、空気排出口54から後方に向かって排出されるようになっている。
【0064】
このように、本実施形態においても、各電池パック16と各キャパシタ70のそれぞれの下方に設けられた第一通風路78と第二通風路82内に走行風が流通させられることにより、各電池パック16内の二次電池と各キャパシタ70とが冷却されるようになっている。また、それら各電池パック16と各キャパシタ70のそれぞれの下面が、アンダーカバー14と第一及び第二カバー部材73,74とにて覆われている。
【0065】
従って、本実施形態にあっては、自動車の床下に配置される電池パック16とキャパシタ70の両方を、走行中に跳ね上げられる小石や泥水等から有利に保護しつつ、自動車下部の空力性能の低下、更にはそれによる燃費の低下の問題等を発生させることもなしに、極めて効率的且つ経済的に有利に冷却することができるのである。
【0066】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0067】
例えば、冷却されるべき車両用電源装置は、駆動源としての電動モータに電気エネルギーを供給するため装置であれば、その構造が、特に限定されるものではない。従って、かかる車両用電源装置は、例えば、二次電池と燃料電池と蓄電器等のもののうちの何れか一種のものを有して構成されていても良く、或いはそれらのうちの何れか二種以上のものを有して構成されていても良い。後者の車両用電源装置としては、例えば、プラグインハイブリッド自動車に搭載される二次電池と蓄電器とを有する車両用電源装置や、燃料電池自動車に搭載される燃料電池と蓄電器とを有する車両用電源装置等がある。また、車両用電源装置が二次電池である場合には、必ずしも、かかる二次電池が電池パック内に収容されていなくとも良い。
【0068】
冷却されるべき車両用電源装置の個数は、前記第一及び第二の実施形態に例示されたものに、何等限定されるものではいことは勿論である。
【0069】
複数個の車両用電源装置が自動車10の床下に設置される場合には、それら複数の車両用電源装置の前側に、車両用電源装置の数と同数の前側導風ダクト34を配設して、それら複数の前側導風ダクト34のそれぞれの空気送出し口を、複数の車両用電源装置の下側のそれぞれに開口させるように配置しても良い。また、複数の車両用電源装置の前側に、車両用電源装置の数よりも少ない、複数の前側導風ダクト34を配設しても良い。なお、その場合には、それら複数の前側導風ダクト34のうちの少なくとも何れか1個が、本体筒部36と分岐筒部40とからなる構造とされる。
【0070】
さらに、前記第一及び第二の実施形態では、導風ダクトとしての前側導風ダクト34の筒壁部の一部と、カバー部材の底壁部とが、それぞれ、アンダーカバー14の一部分にて構成されていた。しかしながら、それら導風ダクトとカバー部材とを、アンダーカバー14とは別個の部材にて構成しても、何等差し支えない。導風ダクトやカバー部材をアンダーカバー14とは別個の部材にて構成する場合には、それら導風ダクトやカバー部材は、例えば、アンダーカバー14の上面上やフロアパネル12の下面等に固定されることとなる。
【0071】
後側導風ダクト50は、本発明において必須のものではない。しかしながら、後側導風ダクト50を車両用電源装置の後側に設置する場合には、複数の車両用電源装置の後側に、それぞれ1個ずつ、或いは車両用電源装置の数よりも少ない、複数の後側導風ダクト50を、各車両用電源装置の下側の通風路58に連通するように設置しても良い。なお、後者の場合には、複数の後側導風ダクト50のうちの少なくとも何れか1個が、複数の車両用電源装置の後側で、それら複数の車両用電源装置の下側に設けられた通風路58に連通して設置されることとなる。
【0072】
また、車両用電源装置の車両の床下への配設構造は、車両用電源装置の下側に通風路が形成可能とされておれば、例示されたものに何等限定されるものではない。例えば、アンダーカバー14に直接に取り付けたり、フロアカバー12に取り付けたりする構造も、採用可能である。
【0073】
加えて、前記実施形態では、本発明を、ハイブリッド自動車に搭載される、二次電池からなる車両用電源装置と、二次電池と蓄電器が組み合わされた車両用電源装置のそれぞれの冷却構造に適用した例が示されていたが、本発明は、電動モータのみを用いる電気自動車に搭載される二次電池や蓄電器を備えた車両用電源装置の冷却構造、燃料電池自動車に搭載される燃料電池や蓄電器を備えた車両用電源装置の冷却構造、或いは自動車以外のハイブリッド車両や電気車両、燃料電池車両に搭載される二次電池、燃料電池、蓄電器等を備えた車両用電源装置の冷却構造の何れに対しても有利に適用され得ることは勿論である。
【0074】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0075】
10 ハイブリッド自動車 12 フロアパネル
14 アンダーカバー 16 電池パック
18 導風ユニット 34 前側導風ダクト
36 本体筒部 38 空気取入口
40 分岐筒部 42 空気送出し口
50 後側導風ダクト 56 導風板
58 通風路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下に配置される、車両用電池と車両用蓄電器のうちの少なくとも何れか一方を有する車両用電源装置を冷却するための構造であって、
車両前方側に向かって開口して、走行風を取り入れる空気取入口と、車両後方側に向かって開口して、該空気取入口から取り入れられた該走行風を車両後方側に送り出す空気送出し口とを有する筒状の導風ダクトを、車両の床下の前記車両用電源装置よりも前側に位置して、車両前後方向に延び、且つ該空気送出し口を該車両用電源装置の下側に開口させた状態で設置する一方、
前記車両用電源装置の下側に、車幅方向において互いに間隔を隔てて対向位置して、車両前後方向に延びる二つの側壁部と、該車両用電源装置の下面と間隔を隔てて対向位置して、車両前後方向に延びる底壁部とを有して、該車両用電源装置の下面を覆うカバー部材を設けると共に、該カバー部材の内側に、該カバー部材の底壁部及び二つの側壁部と該車両用電源装置の下面にて囲繞されて、該車両用電源装置の下面に沿って車両前後方向に延びる通風路を、前記導風ダクトの前記空気送出し口に接続して形成し、
走行風を、前記導風ダクトを通じて前記通風路内に導入して、前記車両用電源装置の下面に沿って車両後方側に流通させることにより、該車両用電源装置を走行風にて冷却するように構成したことを特徴とする車両用電源装置の冷却構造。
【請求項2】
前記車両用電源装置が、車両の床下に、車幅方向に並列して複数配置されており、前記導風ダクトが、車両前後方向に延びて、前側開口部が前記空気取入口とされた一つの本体筒部と、該本体筒部の後側に位置して、該本体筒部内に連通した状態で前後方向に延びる複数の分岐筒部とにて構成されていると共に、該複数の分岐筒部が、該複数の車両用電源装置の下側にそれぞれ開口する後側開口部を有し、前記空気送出し口が、それら複数の分岐筒部の後側開口部にてそれぞれ構成されている一方、該複数の車両用電源装置の下側に、それら各車両用電源装置の下面を覆う前記カバー部材がそれぞれ設けられて、それら複数のカバー部材の内側に、前記通風路が、該複数の分岐筒部の各空気送出し口に接続して、それぞれ形成されている請求項1に記載の車両用電源装置の冷却構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−35323(P2013−35323A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170644(P2011−170644)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】