説明

車両用電源装置

【課題】エンジンの始動性を向上することができる車両用電源装置を提供する。
【解決手段】車両用電源装置は、蓄電手段、充電回路、放電回路、および監視制御手段を備える。蓄電手段は、車両のエンジンを始動する際に当該車両のスタータの動作を制御する始動制御手段にのみ電力を供給する。充電回路は、車両のバッテリに蓄電されている電力を蓄電手段に供給する。放電回路は、蓄電手段に蓄電されている電力を始動制御手段へ供給する。監視制御手段は、始動制御手段の動作状況に応じて、充電回路および放電回路を選択的に導通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンを始動するためのスタータが搭載されている。例えば、図5に示すように、車両は、バッテリ100、スタータ駆動ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)101、スタータリレー102、およびスタータ103が搭載されている。スタータ103は、スタータリレー102を介して、バッテリ100から駆動のための電力が供給される。スタータ駆動ECU101は、スタータリレー102のON/OFFを制御しており、スタータリレー102をONすることによってスタータ103を駆動させる。なお、スタータ駆動ECU101が動作するための電力も、バッテリ100から供給されている。
【0003】
ここで、スタータ103は、停止状態にあるエンジンを回転させて始動させる電動機であり、エンジンを回転させるために大きな起動電流を有する。したがって、スタータ103の駆動の際にバッテリ100の電圧降下が大きい場合、スタータ103の作動不良が生じることがあった。
【0004】
このようなスタータの作動不良を防止するために、様々なエンジン始動用電源装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献1で開示されたエンジン始動用電源装置は、エンジン始動の際のバッテリの電圧降下分を補うだけの容量を有するキャパシタを備えることによって、エンジンの始動性を向上させている。
【特許文献1】特開2003−148310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1で開示されたエンジン始動用電源装置は、バッテリの電圧降下分を補うものであっても、エンジン始動の際の電気負荷の電圧降下を補うことになるため、キャパシタの容量が比較的大きなものが必要となる。また、図5に示すバッテリ100の電圧降下によってスタータ駆動ECU101の作動が停止した場合、上記キャパシタが搭載されていてもエンジン始動が困難になることがある。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、エンジンの始動性を向上することができる車両用電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するために、本発明は、以下に示すような特徴を有している。
第1の発明は、車両用電源装置である。車両用電源装置は、蓄電手段、充電回路、放電回路、および監視制御手段を備える。蓄電手段は、車両のエンジンを始動する際に当該車両のスタータの動作を制御する始動制御手段にのみ電力を供給する。充電回路は、車両のバッテリに蓄電されている電力を蓄電手段に供給する。放電回路は、蓄電手段に蓄電されている電力を始動制御手段へ供給する。監視制御手段は、始動制御手段の動作状況に応じて、充電回路および放電回路を選択的に導通させる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、監視制御手段は、作動停止検出手段、充電手段、および放電手段を含む。作動停止検出手段は、車両のエンジン始動が失敗した場合、当該エンジン始動に伴って始動制御手段の作動停止が生じたかを検出する。充電手段は、作動停止検出手段が始動制御手段の作動停止を検出した場合、充電回路を導通させて車両のバッテリに蓄電されている電力を蓄電手段に供給する。放電手段は、エンジン始動の失敗の後、車両のエンジンを再始動する場合、放電回路を導通させて蓄電手段に蓄電されている電力を始動制御手段へ供給する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、作動停止検出手段は、車両のバッテリから始動制御手段に供給されている電力の電圧降下に応じて、始動制御手段の作動停止を検出する。
【0010】
第4の発明は、上記第2の発明において、充電回路は、第1リレーおよび第1ダイオードを含む。第1リレーは、車両のバッテリと接続され、監視制御手段の制御に応じて開閉する。第1ダイオードは、第1リレーの出力端と蓄電手段との間に接続され、第1リレーから蓄電手段への方向へのみ導通させる。放電回路は、第2ダイオードおよび第2リレーを含む。第2ダイオードは、車両のバッテリと始動制御手段との間に接続され、バッテリから始動制御手段への方向へのみ導通させる。第2リレーは、第1ダイオードのカソード側と第2ダイオードのカソード側との間に接続され、監視制御手段の制御に応じて開閉する。
【0011】
第5の発明は、上記第2の発明において、監視制御手段は、充電回路を導通させる場合、蓄電手段を充電中であることを示す情報を車両の車内に報知する。
【0012】
第6の発明は、上記第2の発明において、監視制御手段は、充電回路を導通させて蓄電手段への充電が完了した後、車両のエンジンが再始動可能であることを示す情報を車両の車内に報知する。
【0013】
第7の発明は、上記第6の発明において、監視制御手段は、充電手段が蓄電手段への電力供給を開始した後の時間経過または蓄電手段に蓄電された電力の電圧に基づいて、蓄電手段への充電が完了したことを判断する。
【0014】
第8の発明は、上記第1または第2の発明において、監視制御手段の最低作動電圧は、始動制御手段の最低作動電圧より低い。
【0015】
第9の発明は、上記第8の発明において、監視制御手段は、昇圧回路を含む。昇圧回路は、車両のバッテリから供給されるバッテリ電圧を昇圧する。監視制御手段は、昇圧回路で昇圧された電力で作動する。
【発明の効果】
【0016】
上記第1の発明によれば、始動制御手段の動作状況に応じて、専用の蓄電手段から始動制御手段へ電力供給することができるため、車両のエンジン始動性を向上させることができる。
【0017】
上記第2の発明によれば、エンジン始動の際の電圧降下等によって始動制御手段の作動が停止した場合、再始動時に蓄電手段から始動制御手段へ電力供給されるため、エンジン始動性を向上させることができる。例えば、エンジン始動の際の電圧降下によるスタータの駆動力の低下によってエンジン始動不良が発生するより先に、当該電圧降下による始動制御手段の作動停止が生じるような状況の場合、再始動時に蓄電手段に蓄電された電力を用いることによってエンジン始動が可能となる。さらに、始動制御手段の作動に必要な電力は、スタータの駆動に必要な電力と比較すると非常に小さいため、容量の小さな一般的なコンデンサで蓄電手段を構成することが可能となる。
【0018】
上記第3の発明によれば、エンジン始動の際のバッテリ電圧降下によって始動制御手段の作動停止を容易に検出することができる。
【0019】
上記第4の発明によれば、2つのリレーと2つのダイオードを接続することによって、監視制御手段が制御可能な充電回路および放電回路を構成することができる。
【0020】
上記第5の発明によれば、現在充電中のために再始動操作できない旨、およびバッテリ能力が低下していることを、運転者に報知することができる。
【0021】
上記第6の発明によれば、充電が完了して再始動操作が可能である旨、およびバッテリ能力が低下していることを、運転者に報知することができる。
【0022】
上記第7の発明によれば、蓄電手段への電力供給を開始した後の時間経過または蓄電手段に蓄電された電力の電圧を用いて、容易に当該蓄電手段への充電が完了したことを検知することができる。
【0023】
上記第8および上記第9の発明によれば、供給電力の電圧降下によって始動制御手段が作動停止するより先に、当該電圧降下によって監視制御手段が作動停止するような状況を避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る車両用電源装置を含む電力供給システムについて説明する。典型的には、当該電源装置は、電子キーの照合結果に基づいて、運転者がエンジンスイッチを押下することによってエンジンを始動/停止するシステムを搭載した車両に設置される。これらの車両のエンジンは、エンジン始動用の制御装置を介してスタータを駆動しており、当該制御装置は、運転者の操作によってエンジン始動/停止したり、車両の状態に応じて自動的に始動/停止したりする。なお、図1は、当該電源装置を含む電力供給システムの構成の一例を示す概略構成図である。
【0025】
図1において、当該電源装置を含む電力供給システムは、監視ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)1と、キャパシタ2と、第1リレー3と、第2リレー4、単方向素子(ダイオード)5および6と、スタータ駆動ECU7、スタータリレー8、スタータ9、バッテリ10、および表示部11を備えている。当該電力供給システムでは、バッテリ10に蓄電している電力が監視ECU1、スタータ駆動ECU7、およびスタータ9に供給される。
【0026】
バッテリ10は、オルタネータ(図示せず)が発電した電力を蓄電し、蓄電した電力を監視ECU1、スタータ駆動ECU7、およびスタータ9にそれぞれ供給する蓄電装置である。バッテリ10は、例えば約12Vを定格電圧とする鉛蓄電池が用いられるが、他の二次電池(例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池)が用いられてもかまわない。
【0027】
スタータ9は、停止状態にあるエンジンを回転させて始動させる電動機であり、例えば定格電圧が約12Vで動作する電気負荷である。スタータ9は、スタータリレー8を介して、バッテリ10の正極端子と接続される。したがって、スタータリレー8がONされた場合(すなわち、導通状態)、バッテリ10からの電力がスタータ9に供給される。なお、スタータリレー8は、スタータ9に内蔵されて構成されることもある。
【0028】
スタータ駆動ECU7は、車両の状態に応じて、当該車両のエンジンを始動する制御装置であり、エンジン始動に必要なECUの一例である。スタータ駆動ECU7は、車両のエンジンを始動する場合、スタータリレー8をONすることによって、スタータ9を駆動する。スタータ駆動ECU7は、バッテリ10から電力供給されて作動し、ダイオード6を介してバッテリ10の正極端子と接続されている。なお、ダイオード6は、バッテリ10の正極端子にアノード側が接続され、スタータ駆動ECU7にカソード側が接続される。
【0029】
キャパシタ2は、ダイオード5および第1リレー3を介して、一方側がバッテリ10の正極端子に接続され、他方側が接地される。なお、ダイオード5は、第1リレー3にアノード側が接続され、キャパシタ2にカソード側が接続される。したがって、第1リレー3がONされた場合(すなわち、導通状態)、バッテリ10からの電力がキャパシタ2に蓄電される。
【0030】
また、キャパシタ2の一方側は、第2リレー4を介して、ダイオード6のカソード側にも接続される。したがって、第2リレー4がONされた場合(すなわち、導通状態)、キャパシタ2に蓄電された電力がスタータ駆動ECU7へ供給される。
【0031】
表示部11は、車両の運転席に着席して当該車両を運転する運転者から視認可能な位置に設けられる表示装置である。例えば、表示部11は、運転席前面の計器盤(インストルメントパネル)に設けられたメータで構成される。典型的には、表示部11は、主要ないくつかの計器、表示灯、警告灯、および各種情報を表示するマルチインフォメーションディスプレイ等を1つのパネル内に組み合わせて配置したコンビネーションメータで構成される。なお、表示部11は、ハーフミラー(反射ガラス)を運転席前面のフロントガラスの一部に設け、当該ハーフミラーに情報等の虚像を蛍光表示するヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)、ナビゲーション装置や車載テレビモニター等の他の表示装置等で構成してもかまわない。
【0032】
監視ECU1は、エンジンの始動の際のスタータ駆動ECU7の状態を監視し、監視結果に基づいて第1リレー3および第2リレー4の動作を制御する。一例として、監視ECU1は、自機に入力するバッテリ電圧を監視して、当該バッテリ電圧がスタータ駆動ECU7の作動が停止する電圧(例えば、最低作動電圧)未満まで降下したことを検出したとき、スタータ駆動ECU7の作動が停止したと判断する。そして、監視ECU1は、エンジンの始動の際にスタータ駆動ECU7の作動が停止したとき、第1リレー3をONして、キャパシタ2への蓄電を開始する。そして、監視ECU1は、キャパシタ2への蓄電が完了したとき、第2リレー4をONして、キャパシタ2に蓄電された電力をスタータ駆動ECU7へ供給する。また、監視ECU1は、エンジンの始動の際にスタータ駆動ECU7の作動が停止したとき、現在の状況(チャージ中、チャージ完了等)を示す情報を表示部11に表示する。
【0033】
また、監視ECU1は、スタータ駆動ECU7の最低作動電圧より低い最低作動電圧を有している。一例として、監視ECU1は、その内部にバッテリ電圧を自機が作動可能とする電圧まで昇圧する回路を有しており、当該昇圧機能によって相対的に低い最低作動電圧を確保している。例えば、監視ECU1は、バッテリ電圧が約3V程度まで電圧降下した場合、当該バッテリ電圧を約5V程度まで昇圧して作動を可能にする。
【0034】
次に、図2〜図4を参照して、監視ECU1によって制御される電源装置の動作について説明する。なお、図2は、監視ECU1の動作の一例を示すフローチャートである。図3は、図2のステップS55で表示部11に表示されるメッセージ例を示す図である。図4は、図2のステップS58で表示部11に表示されるメッセージ例を示す図である。
【0035】
図2において、監視ECU1は、スタータ駆動ECU7がスタータ9を駆動するのを待つ(ステップS51)。そして、監視ECU1は、スタータ駆動ECU7がスタータ9を駆動した場合(ステップS51でYes)、次のステップS52に処理を進める。例えば、監視ECU1は、スタータ9を駆動していることを示すデータをスタータ駆動ECU7から取得することによって、上記ステップS51における判断を行う。
【0036】
ステップS52において、監視ECU1は、車両のエンジンが始動したか否かを判断する。そして、監視ECU1は、エンジンが始動していない場合、次のステップS53に処理を進める。一方、監視ECU1は、エンジンが始動した場合、当該フローチャートによる処理を終了する。
【0037】
ステップS53において、監視ECU1は、スタータ駆動ECU7の作動が停止(ECUリセット)したか否かを判断する。そして、監視ECU1は、スタータ駆動ECU7の作動が停止した場合、次のステップS54に処理を進める。一方、監視ECU1は、スタータ駆動ECU7の作動が停止していない場合、当該フローチャートによる処理を終了する。
【0038】
ステップS54において、監視ECU1は、第1リレー3をONする。これによって、バッテリ10からキャパシタ2までの充電回路が形成され、バッテリ10からの電力がキャパシタ2に蓄電される。そして、監視ECU1は、運転者が再始動操作を行わないように注意を促すメッセージを表示部11に表示して(ステップS55)、処理を次のステップに進める。
【0039】
例えば、上記ステップS55においては、図3に示すように、「チャージ中のため、再始動しないでください。」と記載された文字情報が表示部11のインフォメーションディスプレイ等に表示されて、運転者に当該文字情報が報知される。これによって、運転者は、現在チャージ中であり再始動できない状況であることを知ることができ、再始動操作を行わないように注意が促される。
【0040】
次に、監視ECU1は、キャパシタ2への蓄電が完了したか否かを判断する(ステップS56)。例えば、監視ECU1は、上記ステップS54の実行からの経過時間やキャパシタ2に蓄電された電力の電圧(以下、キャパシタ電圧と記載する)を用いて、キャパシタ2への蓄電量を推定する。そして、監視ECU1は、上記経過時間が所定の時間に到達したとき、またはキャパシタ電圧が所定の電圧に到達したとき、キャパシタ2への蓄電が完了したと判断して、次のステップS57に処理を進める。一方、監視ECU1は、上記経過時間が所定の時間に未到達のとき、またはキャパシタ電圧が所定の電圧未満のとき、キャパシタ2への蓄電が未完了であると判断して、上記ステップS55に戻って処理を繰り返す。
【0041】
ステップS57において、監視ECU1は、第1リレー3をOFFする。これによって、バッテリ10からキャパシタ2までの充電回路が切断され、バッテリ10からキャパシタ2への電力供給が遮断される。そして、監視ECU1は、運転者による再始動操作が可能であることを促すメッセージを表示部11に表示して(ステップS58)、処理を次のステップに進める。
【0042】
例えば、上記ステップS58においては、図4に示すように、「チャージが完了しましたので、再始動可能です。」と記載された文字情報が表示部11のインフォメーションディスプレイ等に表示されて、運転者に当該文字情報が報知される。これによって、運転者は、チャージ処理が終わって再始動可能な状況であることを知ることができ、再始動操作が促される。
【0043】
次に、スタータ駆動ECU7がスタータ9を駆動したか否かを判断する(ステップS59)。そして、監視ECU1は、スタータ駆動ECU7がスタータ9を駆動した場合、次のステップS60に処理を進める。一方、監視ECU1は、スタータ駆動ECU7がスタータ9を駆動していない場合、上記ステップS58に戻って処理を繰り返す。
【0044】
ステップS60において、監視ECU1は、第2リレー4をONして、処理を次のステップに進める。これによって、キャパシタ2からスタータ駆動ECU7までの放電回路が形成され、キャパシタ2に蓄電された電力がスタータ駆動ECU7へ供給される。つまり、スタータ駆動ECU7には、バッテリ10からの電力に加えて、キャパシタ2からの電力が供給されることになる。
【0045】
次に、監視ECU1は、車両のエンジンが始動したか否かを判断する(ステップS61)。そして、監視ECU1は、エンジンが始動していない場合、上記ステップS53に戻って処理を繰り返す。一方、監視ECU1は、エンジンが始動した場合、第2リレー4をOFFして(ステップS62)、当該フローチャートによる処理を終了する。このステップS62の処理によって、キャパシタ2からスタータ駆動ECU7までの放電回路が切断され、キャパシタ2からスタータ駆動ECU7への電力供給が遮断される。
【0046】
このように、当該実施形態に係る電源装置は、エンジン始動の際の電圧降下によってスタータ駆動ECU7の作動が停止した場合、再始動時にキャパシタ2からスタータ駆動ECU7へ電力供給されるため、エンジン始動性を向上させることができる。例えば、エンジン始動の際の電圧降下によるスタータ9の駆動力の低下によってエンジン始動不良が発生するより先に、当該電圧降下によるスタータ駆動ECU7の作動停止が生じるような状況の場合、再始動時にキャパシタ2に蓄電された電力を用いることによってエンジン始動が可能となる。また、エンジン始動不良の原因が電圧降下によるスタータ駆動ECU7の作動停止である場合、再始動を試みたときのみキャパシタ2の蓄電/放電を行ってその状況を表示部11に表示することによって、運転者にバッテリ能力が低下していることを報知することができる。さらに、スタータ駆動ECU7の作動に必要な電力は、数A(アンペア)程度であり、スタータ9の駆動に必要な数百A程度の電力と比較すると非常に小さい。したがって、容量の小さな一般的なコンデンサでキャパシタ2を構成することが可能となる。
【0047】
なお、上述した監視ECU1の動作では、運転者による再始動操作を前提としているために、運転者に対して再始動操作を行わないように注意を促すメッセージや再始動可能であることを示すメッセージを表示する例を示した。しかしながら、運転者の始動操作によらずにスタータ駆動ECU7が自動でエンジンを始動する場合、他のメッセージを表示部11に表示してもかまわない。例えば、上記ステップS55においては、「チャージ中のため、始動できない状況です。」のような文字情報を表示部11に表示する。また、上記ステップS58においては、「チャージが完了しましたので、再始動します。」のような文字情報を表示部11に表示する。このような文字情報を表示部11に表示することによって、自動始動の場合に現在の車両の状況を運転者に報知することができる。
【0048】
また、上述したスタータ駆動ECU7は、エンジンコントロールコンピュータの一機能として当該エンジンコントロールコンピュータに含まれる制御装置であってもかまわない。ここで、エンジンコントロールコンピュータとは、車両のエンジン制御を行う制御装置であり、例えば、エンジンの燃料噴射量や点火時期等を制御する電子制御装置(エンジンECU)である。この場合、監視ECU1がエンジン始動の際のエンジンコントロールコンピュータの作動停止を監視して、キャパシタ2からエンジンコントロールコンピュータへ電力供給するように接続すれば、上述した動作と同様に本発明を実現することが可能となる。
【0049】
また、エンジン起動信号がパワーソースコントロールコンピュータ(電源ECU)からエンジンコントロールコンピュータへ送信された後、当該エンジン起動信号に応じてエンジンコントロールコンピュータがスタータ9を駆動するシステムの場合、パワーソースコントロールコンピュータも上記監視対象および電力供給対象に加えてもかまわない。具体的には、エンジンコントロールコンピュータに加えて、パワーソースコントロールコンピュータの作動停止も監視ECU1が監視して、キャパシタ2からパワーソースコントロールコンピュータにも電力供給するように接続すればよい。このように、車両のエンジン始動に必要な制御装置の電圧降下による作動停止を監視して、キャパシタ2から当該制御装置に再始動時に電力供給するように接続すれば、上述した動作と同様に本発明を実現することが可能となる。
【0050】
また、上述した監視ECU1の動作では、運転者に対して再始動操作を行わないように注意を促すメッセージや再始動可能であることを示すメッセージを表示する例を示した。しかしながら、上記メッセージを音声等で運転者に報知してもかまわない。
【0051】
また、上述した各電圧等は、単なる一例に過ぎず他の電圧であっても、本発明を実現できることは言うまでもない。上述した説明では、定格電圧約12Vの電力供給を想定したが、例えば、大型車等で用いられている定格電圧約24Vの電力供給を行う電力供給システムであっても、同様に本発明を適用できることは言うまでもない。
【0052】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る車両用電源装置は、内燃機関の始動性を向上することができ、車両のエンジンを始動するための電源装置等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用電源装置を含む電力供給システムの構成の一例を示す概略構成図
【図2】図1の監視ECU1の動作の一例を示すフローチャート
【図3】図2のステップS55で表示部11に表示されるメッセージ例を示す図
【図4】図2のステップS58で表示部11に表示されるメッセージ例を示す図
【図5】従来の電力供給システムの構成の一例を示す概略構成図
【符号の説明】
【0055】
1…監視ECU
2…キャパシタ
3…第1リレー
4…第2リレー
5、6…ダイオード
7…スタータ駆動ECU
8…スタータリレー
9…スタータ
10…バッテリ
11…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンを始動する際に当該車両のスタータの動作を制御する始動制御手段にのみ電力を供給する蓄電手段と、
前記車両のバッテリに蓄電されている電力を前記蓄電手段に供給する充電回路と、
前記蓄電手段に蓄電されている電力を前記始動制御手段へ供給する放電回路と、
前記始動制御手段の動作状況に応じて、前記充電回路および前記放電回路を選択的に導通させる監視制御手段とを備える、車両用電源装置。
【請求項2】
前記監視制御手段は、
前記車両のエンジン始動が失敗した場合、当該エンジン始動に伴って前記始動制御手段の作動停止が生じたかを検出する作動停止検出手段と、
前記作動停止検出手段が前記始動制御手段の作動停止を検出した場合、前記充電回路を導通させて前記車両のバッテリに蓄電されている電力を前記蓄電手段に供給する充電手段と、
前記エンジン始動の失敗の後、前記車両のエンジンを再始動する場合、前記放電回路を導通させて前記蓄電手段に蓄電されている電力を前記始動制御手段へ供給する放電手段とを含む、請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記作動停止検出手段は、前記車両のバッテリから前記始動制御手段に供給されている電力の電圧降下に応じて、前記始動制御手段の作動停止を検出する、請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記充電回路は、
前記車両のバッテリと接続され、前記監視制御手段の制御に応じて開閉する第1リレーと、
前記第1リレーの出力端と前記蓄電手段との間に接続され、前記第1リレーから前記蓄電手段への方向へのみ導通させる第1ダイオードとを含み、
前記放電回路は、
前記車両のバッテリと前記始動制御手段との間に接続され、前記バッテリから前記始動制御手段への方向へのみ導通させる第2ダイオードと、
前記第1ダイオードのカソード側と前記第2ダイオードのカソード側との間に接続され、前記監視制御手段の制御に応じて開閉する第2リレーとを含む、請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記監視制御手段は、前記充電回路を導通させる場合、前記蓄電手段を充電中であることを示す情報を前記車両の車内に報知する、請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記監視制御手段は、前記充電回路を導通させて前記蓄電手段への充電が完了した後、前記車両のエンジンが再始動可能であることを示す情報を前記車両の車内に報知する、請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項7】
前記監視制御手段は、前記充電手段が前記蓄電手段への電力供給を開始した後の時間経過または前記蓄電手段に蓄電された電力の電圧に基づいて、前記蓄電手段への充電が完了したことを判断する、請求項6に記載の車両用電源装置。
【請求項8】
前記監視制御手段の最低作動電圧は、前記始動制御手段の最低作動電圧より低い、請求項1または2に記載の車両用電源装置。
【請求項9】
前記監視制御手段は、前記車両のバッテリから供給されるバッテリ電圧を昇圧する昇圧回路を含み、
前記監視制御手段は、前記昇圧回路で昇圧された電力で作動する、請求項8に記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228463(P2009−228463A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71796(P2008−71796)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】