説明

車両用電源装置

【課題】 構成部品に関する温度情報を基に、構成部品の実運用状態に対応付けて算出した余寿命に関する情報を外部に出力することが可能な車両用電源装置を提供する。
【解決手段】 車両用電源装置10は、温度条件によって寿命に関して影響を受ける構成部品と、構成部品に関する温度情報を検出するセンサ8、8Cと、制御部4と、を備えている。制御部4は、構成部品の実運用時間における温度情報の積算値を計算可能であり、構成部品における上記積算値に対する余寿命の変化を推定した推定余寿命情報を保持又は取得可能であり、上記推定余寿命情報を基に上記積算値から構成部品の余寿命を算出し、上記算出した余寿命の情報を外部に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用電源装置は、パンタグラフを介して架線から受け取った電力を、車両の照明装置、空調装置等の電動機(負荷)に供給するものである。上記車両用電源装置は、実運用時に温度変化による影響を受け、劣化が進み、余寿命が短くなる。このため、車両用電源装置は、設計時に装置内の構成部品の寿命を計算し、構成部品の交換周期を予め決めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−223904号公報
【特許文献2】特開2007−295703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した車両用電源装置においては、設計時の寿命計算が車両の実運用負荷と温度上昇と相違することがあるため、また、臨時運行等の影響もあり、予め決めた(推奨する)交換周期より早く構成部品が破損する場合があり、車両故障してしまう恐れがある。このため、温度条件によって寿命に大きく影響する構成部品の余寿命を算出できる車両用電源装置が求められている。また、余寿命を乗務員等に知らせるため、余寿命の情報を外部に出力することできる車両用電源装置が求められている。
【0005】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、構成部品に関する温度情報を基に、構成部品の実運用状態に対応付けて算出した余寿命に関する情報を外部に出力することが可能な車両用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る車両用電源装置は、
温度条件によって寿命に関して影響を受ける構成部品と、
前記構成部品に関する温度情報を検出するセンサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記構成部品の実運用時間における前記温度情報の積算値を計算可能であり、
前記構成部品における前記積算値に対する余寿命の変化を推定した推定余寿命情報を保持又は取得可能であり、
前記推定余寿命情報を基に前記積算値から前記構成部品の余寿命を算出し、
前記算出した余寿命の情報を外部に出力することを特徴としている。
【0007】
また、一実施形態に係る車両用電源装置は、
温度条件によって寿命に関して影響を受ける構成部品と、
前記構成部品に関する温度情報を検出するセンサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記構成部品の余寿命を推定した推定余寿命情報を保持又は取得可能であり、
1日毎に、(1)前記温度情報を基に、前記構成部品における、最初の実運用期間の第1温度上昇値と、前記構成部品の実運用が再開される2回目以降の実運用期間の第2温度上昇値と、前記構成部品の実運用が再開される回数と、を計測し、(2)前記推定余寿命情報を基に前記第1温度上昇値及び第2温度上昇値から前記構成部品の余寿命を算出し、(3)前記算出した余寿命を基に、前記第1温度上昇値、第2温度上昇値及び回数から余寿命消費割合を計算し、
日毎の前記余寿命消費割合を積算し、
前記積算した余寿命消費割合の情報を外部に出力することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る車両用電源装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、上記車両用電源装置の記憶部が保持又は取得可能である構成部品の推定余寿命情報を示す図であり、構成部品における積算値に対する推定余寿命の変化をグラフで示した図である。
【図3】図3は、上記車両用電源装置のアラーム検出部が保持又は取得可能である構成部品の推定余寿命に関して設定されたアラームレベルの情報を示す図であり、図2に示した推定余寿命曲線にアラームレベルを重ねて示す図である。
【図4】図4は、第2の実施形態に係る車両用電源装置のIGBTの余寿命消費割合を算出し、算出した余寿命消費割合に応じて処理する方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、第3の実施形態に係る車両用電源装置における、1日毎の、(1)IGBTにおける、最初の実運用期間の第1温度上昇値と、(2)IGBTの実運用が再開される2回目以降の実運用期間の第2温度上昇値と、(3)IGBTの実運用が再開される回数と、をグラフで示した図である。
【図6】図6は、第3の実施形態に係る車両用電源装置において、故障率10%における温度上昇値に対するIGBTの寿命サイクルの変化をグラフで示した図であり、推定余寿命線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係る車両用電源装置について詳細に説明する。車両用電源装置は、鉄道車両等の電気車の照明装置、空調装置等の負荷20(電動機)に電力を供給するものである。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る車両用電源装置を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、車両用電源装置10は、直流リアクトル11、インバータ部3と、交流リアクトル5と、トランス(絶縁トランス)6と、負荷接触器7と、センサとしての温度センサ8と、制御部4と、表示装置としてのモニタ9と、を備えている。
【0011】
インバータ部3は、複数のスイッチング素子としての複数のIGBT(絶縁ゲート型トランジスタ)3C等を有している。図示しないが、複数のIGBT3Cは、冷却器に取り付けられている。冷却器としては、複数のIGBT3Cが取り付けられ熱を伝導するアルミブロックと、アルミブロックに取付けられた複数のヒートパイプと、ヒートパイプに取付けられた複数の放熱フィンと、を有している。
【0012】
なお、全てを図示しないが、車両は、それぞれ車輪が設けられた一対の台車フレームと、台車フレームに空気ばねを介して支持された車体と、パンタグラフ2とを備えている。車輪は、レールに接触するため、地絡されている。モニタ9を除く車両用電源装置10は、車体の床下に設置されている。モニタ9は、運転室等、乗務員等が確認できる位置に設置されている。
【0013】
車両用電源装置10において、架線1より供給される直流電力は、パンタグラフ2を通じて直流リアクトル11に与えられ、インバータ部3、交流リアクトル5、トランス6及び負荷接触器7を経て負荷20に供給される。
【0014】
例えば、上記直流リアクトル11、IGBT3C、交流リアクトル5、トランス6、制御部4は、温度条件によって寿命に関して影響を受ける部品(以下、構成部品と称する)である。その他、図示しないが、電界コンデンサや変圧器も構成部品である。
【0015】
温度センサ8は、上記構成部品に関する温度情報を検出する。車両用電源装置10は複数の温度センサ8を有し、各温度センサ8は対応する構成部品の周囲の温度Tを検出している。上記温度センサ8の内、温度センサ8CはIGBT3Cの周囲の温度Tを検出するものであり、温度センサ8Cは、IGBT3Cが取り付けられた冷却器に取り付けられている。なお、車両用電源装置10が上記冷却器を複数有している場合、各冷却器に温度センサ8Cを取り付ければよい。温度センサ8は、検出した温度情報を制御部4に送っている。
【0016】
制御部4は、タイマ19と、余寿命算出部12と、記憶部18と、アラーム検出部14と、を有している。
タイマ19は、構成部品を実際に運用した日にち及び時間をカウントする。
【0017】
余寿命算出部12は、タイマ19でカウントした実運用時間、及び温度センサ8で検出した温度情報を基に、構成部品の実運用時間における温度情報の積算値(時間積算値)ΣTを計算可能である。
【0018】
記憶部18は、構成部品における積算値ΣTに対する余寿命の変化を推定した推定余寿命情報を保持又は取得可能である。
図2は、記憶部18が保持又は取得可能である構成部品の推定余寿命情報を示す図であり、構成部品における積算値ΣTに対する推定余寿命の変化をグラフで示した図である。
図1及び図2に示すように、例えば記憶部18は推定余寿命曲線13の情報を有している。推定余寿命曲線13から分かるように、構成部品の周囲が高温の状態で構成部品の実運用が続く程と、構成部品の余寿命が短くなると推定することができる。
【0019】
余寿命算出部12は、記憶部18での推定余寿命情報(推定余寿命曲線13の情報)を基に、積算値ΣTから構成部品の余寿命を算出(推定)する。余寿命算出部12は、算出(推定)した構成部品の余寿命の情報を外部に、ここではモニタ9に出力する。これにより、モニタ9は、構成部品の余寿命の情報を表示することが可能となり、乗務員等に構成部品の余寿命の情報を報知することができる。
【0020】
図3は、アラーム検出部14が保持又は取得可能である構成部品の推定余寿命に関して設定されたアラームレベル16の情報を示す図であり、図2に示した推定余寿命曲線13にアラームレベル16を重ねて示す図である。
【0021】
図1及び図3に示すように、アラーム検出部14は、構成部品の推定余寿命に関して設定されたアラームレベル16の情報を保持又は取得可能である。アラームレベル16は、例えば構成部品の点検や交換を必要とするレベルに設定されている。アラーム検出部14は、余寿命算出部12で算出(推定)した余寿命が、アラームレベル16(アラーム点17)に到達したとき以降、すなわちアラームレベル16を下回った場合に、アラーム情報を外部に、ここではモニタ9に出力する。
【0022】
これにより、モニタ9は、アラーム情報を表示することが可能となり、乗務員等にアラーム情報を報知することができる。アラーム情報は、オーディオにて報知してもよい。これにより、乗務員等に構成部品の点検や交換を促すことができる。
【0023】
上記のように構成された第1の実施形態に係る車両用電源装置10によれば、車両用電源装置10は、温度条件によって寿命に関して影響を受ける構成部品(IGBT3C等)と、構成部品に関する温度情報を検出する温度センサ8(8C)と、制御部4と、を備えている。
【0024】
制御部4は、構成部品の実運用時間における温度情報の積算値ΣTを計算可能であり、構成部品における積算値ΣTに対する余寿命の変化を推定した推定余寿命情報を保持又は取得可能である。制御部4は、推定余寿命情報を基に積算値ΣTから構成部品の余寿命を算出し、算出した余寿命の情報を外部(モニタ9等)に出力する。
【0025】
これにより、実際の運用状態にて構成部品の余寿命(劣化状況)を算出できるので、より正確に余寿命を推定することができる。また、算出した構成部品の余寿命が、アラームレベル16を下回らない場合でも、制御部4は、算出した構成部品の余寿命をモニタ9等に出力することができるため、例えば常時、余寿命をモニタ9等に出力することができる。
【0026】
上記したことから、構成部品に関する温度情報を基に、構成部品の実運用状態に対応付けて算出した余寿命の情報(余寿命に関する情報)を外部に出力することが可能な車両用電源装置10を得ることができる。
【0027】
次に、第2の実施形態に係る車両用電源装置について説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。特に、構成部品としてのIGBT3Cの熱疲労度計算に関して説明する。
【0028】
図1を参照すると、この実施形態に係る制御部4(記憶部18)は、IGBT3Cの余寿命を推定した推定余寿命情報を保持又は取得可能である。
制御部4は、1日毎に、次に挙げる(1)乃至(3)の処理を行う。
(1)まず、制御部4(余寿命算出部12)は、温度センサ8Cの温度情報を基に、IGBT3Cにおける、最初の実運用期間の第1温度上昇値と、IGBT3Cの実運用(往復運転等)が再開される2回目以降の実運用期間の第2温度上昇値と、IGBT3Cの実運用が再開される回数(サイクル)と、を計測する。
【0029】
(2)次いで、制御部4(余寿命算出部12)は、記憶部18での推定余寿命情報を基に第1温度上昇値及び第2温度上昇値からIGBT3Cの余寿命を算出する。
【0030】
(3)その後、制御部4(余寿命算出部12)は、算出した余寿命を基に、第1温度上昇値、第2温度上昇値及び回数から余寿命消費割合を計算する。
【0031】
また、制御部4(余寿命算出部12)は、日毎の余寿命消費割合を積算し、記憶部18等に記憶させる。そして、制御部4(余寿命算出部12)は、積算した余寿命消費割合の情報を外部に、ここではモニタ9に出力する。これにより、モニタ9は、IGBT3Cの余寿命消費割合の情報を表示することが可能となり、乗務員等にIGBT3Cの余寿命消費割合の情報を報知することができる。
【0032】
制御部4(アラーム検出部14)は、上記積算された余寿命消費割合に関して設定されたアラームレベルの情報を保持又は取得可能である。アラームレベルは、例えばIGBT3Cの交換を必要とするレベルに設定されている。
【0033】
制御部4(アラーム検出部14)は、余寿命算出部12で積算した余寿命消費割合がアラームレベルに到達したとき以降、すなわちアラームレベル以上となった場合に、アラーム情報を外部に、ここではモニタ9に出力する。
【0034】
図4は、車両用電源装置のIGBT3Cの余寿命消費割合を算出し、算出した余寿命消費割合に応じて処理する方法を説明するためのフローチャートである。
【0035】
次に、IGBT3Cの余寿命消費割合を算出し、算出した余寿命消費割合に応じて処理する方法について説明する。
【0036】
図1及び図4に示すように、上記方法がスタートすると、まず、ステップS1において、余寿命算出部12は、IGBT3Cにおいて、最初の実運用期間の第1温度上昇値と、IGBT3Cの実運用(往復運転等)が再開される2回目以降の実運用期間の第2温度上昇値と、IGBT3Cの実運用が再開される回数(サイクル)と、を計測する。
【0037】
次いで、余寿命算出部12は、ステップS2において、記憶部18での推定余寿命情報を基に第1温度上昇値及び第2温度上昇値からIGBT3Cの余寿命を算出し、続くステップS3において、算出した余寿命を基に、第1温度上昇値、第2温度上昇値及び回数から1日毎の余寿命消費割合を計算する。その後、ステップS4において、余寿命算出部12は、日毎の余寿命消費割合を積算し、記憶部18等に記憶させる。
【0038】
続いて、ステップS5において、アラーム検出部14は、余寿命算出部12で積算した余寿命消費割合がアラームレベル以上となったのかどうか、すなわち、アラームレベルに到達したとき以降であるのかどうか判断する。
【0039】
余寿命消費割合がアラームレベル以上となっていない場合(ステップS5)、ステップS6に移行し、余寿命算出部12は、余寿命消費割合の情報を外部に、ここではモニタ9に出力し、上記方法が終了する(エンド)。これにより、モニタ9は、IGBT3Cの余寿命消費割合の情報を表示することが可能となり、乗務員等にIGBT3Cの余寿命消費割合の情報を報知することができる。
【0040】
余寿命消費割合がアラームレベル以上となった場合(ステップS5)、ステップS7に移行し、余寿命算出部12は、アラーム情報を外部に、ここではモニタ9に出力、上記方法が終了する(エンド)。これにより、モニタ9は、アラーム情報を表示することが可能となり、乗務員等にIGBT3Cの交換などを促すことができる。
【0041】
上記のように構成された第2の実施形態に係る車両用電源装置10によれば、車両用電源装置10は、IGBT3Cと、IGBT3Cに関する温度情報を検出する温度センサ8Cと、制御部4と、を備えている。
【0042】
制御部4は、IGBT3Cの余寿命を推定した推定余寿命情報を保持又は取得可能である。制御部4は、1日毎に、(1)第1温度上昇値と、第2温度上昇値と、回数(サイクル)と、を計測し、(2)IGBT3Cの余寿命を算出し、(3)余寿命消費割合を計算する。さらに、制御部4は、日毎の余寿命消費割合を積算し、積算した余寿命消費割合の情報を外部(モニタ9等)に出力する。
【0043】
これにより、実際の運用状態にてIGBT3Cの余寿命(劣化状況)を算出できるので、より正確に余寿命を推定することができる。また、算出したIGBT3Cの余寿命消費割合が、アラームレベル以上となっていない場合でも、制御部4は、算出したIGBT3Cの余寿命消費割合をモニタ9等に出力することができるため、例えば常時、余寿命消費割合をモニタ9等に出力することができる。
【0044】
上記したことから、IGBT3Cに関する温度情報を基に、IGBT3Cの実運用状態に対応付けて算出した余寿命消費割合の情報(余寿命に関する情報)を外部に出力することが可能な車両用電源装置10を得ることができる。
【0045】
次に、第3の実施形態に係る車両用電源装置について説明する。なお、この実施形態において、上述した第2の実施形態に係る車両用電源装置の例について詳しく説明する。
【0046】
図5は、1日毎の、(1)IGBT3Cにおける、最初の実運用期間の第1温度上昇値ΔT1と、(2)IGBT3Cの実運用が再開される2回目以降の実運用期間の第2温度上昇値ΔT2と、(3)IGBT3Cの実運用が再開される回数(サイクル)と、をグラフで示した図である。図6は、故障率10%における温度上昇値に対するIGBT3Cの寿命サイクルの変化をグラフで示した図であり、推定余寿命線15を示す図である。
【0047】
図1、図5及び図6に示すように、第1温度上昇値ΔT1は、1日毎の、IGBT3Cにおける温度上昇値である。第2温度上昇値ΔT2は、IGBT3Cの実運用が再開される2回目以降の実運用期間(車両が路線を一往復する毎)のIGBT3Cの温度上昇値である。第2温度上昇値ΔT2では、IGBT3Cの実運用が再開されるまでの間の温度下降値と言うこともできる。記憶部18は、例えば推定余寿命線15を有している。
【0048】
余寿命算出部12が計測した第1温度上昇値ΔT1及び第2温度上昇値ΔT2と、推定余寿命線15と、を基にIGBT3Cの寿命サイクルを導くことができる。第1温度上昇値ΔT1をプロットすることにより寿命サイクルN1を導くことができ、第2温度上昇値ΔT2をプロットすることにより寿命サイクルN2を導くことができる(図6)。そして、IGBT3Cの余寿命を算出することができる(図4、ステップS2)。
【0049】
ΔT1 → N1
ΔT2 → N2
続いて、IGBT3Cにおける第1温度上昇(最初の実運用期間の温度上昇)が1日当たり繰り返される回数をn1、第2温度上昇(2回目以降の実運用期間の温度上昇)が1日当たり繰り返される回数をn2とする。
【0050】
ここで、日毎の副項番をdとする。実運用上、IGBT3Cの温度上昇値は毎日同じ値では無いため、次に示すようにΔT1、ΔT2、N1、N2、n1及びn2に副項番dを付ける。
【0051】
ΔT1 → ΔT1
ΔT2 → ΔT2
N1 → N1
N2 → N2
n1 → n1
n2 → n2
IGBT3Cにおける第1温度上昇は、1日に1回繰り返されるため、n1は次のようになる。
【0052】
n1=1回/1日=1
上記のことから、ΔT1の温度サイクルで1日に消費する寿命の割合ΔD1を次のように示すことができる。
【0053】
ΔD1=n1/N1=1/N1
次に、IGBT3Cにおける第2温度上昇は、1日にn2回繰り返されるため、ΔT2の温度サイクルで1日に消費する寿命の割合ΔD2を次のように示すことができる。
【0054】
ΔD2=n2/N2
よって、IGBT3Cが1日に消費する寿命の割合をΔDとすると、ΔDを次のように示すことができる。
【0055】
ΔD=ΔD1+ΔD2
上記のように、1日毎の余寿命消費割合を計算することができる(図4、ステップS3)。
【0056】
そして、日毎の余寿命消費割合を積算し(図4、ステップS4)、積算した余寿命消費割合(積算値)Dが1(100%)となった場合、寿命となる。
【0057】
D=ΔD+ΔD+ΔD+ … +ΔD=1(100%)
上記mはIGBT3Cの実運用日数であるため、IGBT3Cが実運用してからm日目に寿命となったことを示している。
【0058】
余寿命消費割合Dがアラームレベル以上となっていない場合、余寿命消費割合Dをモニタ9に表示する(図4、ステップS6)。
【0059】
余寿命消費割合Dがアラームレベル以上となった場合、例えばD=0.8(80%)に到達したとき以降、アラーム情報をモニタ9に表示する(図4、ステップS7)。これにより、余寿命消費割合Dが1(100%)に到達する前に、例えば、オーバーホールを推奨するアラームをモニタ9に表示することができる。
【0060】
上記のように構成された第3の実施形態に係る車両用電源装置10は、第2の実施形態に係る車両用電源装置の例について具現化するものであり、第2の実施形態に係る車両用電源装置と同様の効果を得ることができる。
【0061】
上記したことから、IGBT3Cに関する温度情報を基に、IGBT3Cの実運用状態に対応付けて算出した余寿命消費割合Dの情報(余寿命に関する情報)を外部に出力することが可能な車両用電源装置10を得ることができる。
【0062】
次に、第4の実施形態に係る車両用電源装置について説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第3の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。第3の実施形態ではIGBT3Cの余寿命消費割合Dを算出したが、この実施の形態ではIGBT3Cの余寿命日数をさらに算出するものである。
【0063】
ここで、IGBT3Cの1日当たりの余寿命消費割合の平均値をΔD´とすると、制御部4(余寿命算出部12)は、上記余寿命消費割合D及び実運用日数mの情報を基に、平均値ΔD´を算出することができる。
【0064】
ΔD´=D/m
そして、算出した平均値ΔD´を基に、IGBT3Cの寿命日数Lを算出することができる。
【0065】
L=1/ΔD´
これにより、算出したIGBT3Cの寿命日数Lと、IGBT3Cの実運用日数mと、を基に、IGBT3Cの余寿命日数Yを算出することができる。
【0066】
Y=L−m
余寿命算出部12は、算出(推定)したIGBT3Cの余寿命日数Yの情報を外部に、ここではモニタ9に出力する。これにより、モニタ9は、IGBT3Cの余寿命日数Yの情報を表示することが可能となり、乗務員等にIGBT3Cの余寿命日数Yの情報を報知することができる。
【0067】
上記のように構成された第4の実施形態に係る車両用電源装置10によれば、車両用電源装置10は、IGBT3Cと、IGBT3Cに関する温度情報を検出する温度センサ8Cと、制御部4と、を備えている。
【0068】
制御部4は、第3の実施形態において積算した余寿命消費割合Dの情報を基に、1日当たりの余寿命消費割合Dの平均値ΔD´を算出し、算出した平均値ΔD´を基に、IGBT3Cの寿命日数Lを算出する。制御部4は、寿命日数Lと、実運用日数mと、を基に、IGBT3Cの余寿命日数Yを算出する。さらに、制御部4は、余寿命日数Yの情報を外部(モニタ9等)に出力する。
【0069】
これにより、実際の運用状態にてIGBT3Cの余寿命日数Yを算出できるので、より正確に余寿命日数を推定することができる。このため、乗務員等は、IGBT3Cの余寿命消費割合Dの情報を報知される場合より明快に、IGBT3Cの余寿命に関して認識することができる。
【0070】
上記したことから、IGBT3Cに関する温度情報を基に、IGBT3Cの実運用状態に対応付けて算出した余寿命日数の情報(余寿命に関する情報)を外部に出力することが可能な車両用電源装置10を得ることができる。
【0071】
次に、第5の実施形態に係る車両用電源装置について説明する。なお、この実施形態において、他の構成は上述した第4の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0072】
第3及び第4の実施形態では、IGBT3Cの故障率が10%となる実運用日数を寿命日数Lとすることを前提としていた。すなわち、記憶部18が保持又は取得可能な推定余寿命情報(推定余寿命線15)は、特定の故障率として10%に対応付けた情報であった。
【0073】
この実施形態では、IGBT3Cの故障率がα%となる実運用日数を寿命日数Lとするものである(1%≦α%<10%)。このため、制御部4(余寿命算出部12)は、特定の故障率(10%)に対応した寿命日数Lを、他の故障率(α%)に対応した寿命日数に換算するものである。
【0074】
ここで、IGBT3Cの故障率が10%となる実運用日数である寿命日数をL10%、IGBT3Cの故障率がα%となる実運用日数である寿命日数をLα%とする。
【0075】
寿命日数(故障率10%):L10%
寿命日数(故障率α%) :Lα%
寿命日数L10%から、次の式により寿命日数Lα%の値を求めることができる。
【数1】

【0076】
但し、この式は、1%≦α%<10%である場合に適用されるものである。
【0077】
例えば、IGBT3Cの故障率が1%となる実運用日数である寿命日数L1%は、次の式に示すように求めることができる(α=1)。
【数2】

【0078】
制御部4(余寿命算出部12)は、換算した寿命日数Lα%を基に、IGBT3Cの余寿命日数Yα%を換算し、換算した余寿命日数Yα%の情報を外部に、ここではモニタ9に出力する。これにより、モニタ9は、α%故障率でのIGBT3Cの余寿命日数Yα%の情報を表示することが可能となり、乗務員等にIGBT3Cの余寿命日数Yα%の情報を報知することができる。
【0079】
上記のように構成された第5の実施形態に係る車両用電源装置10によれば、車両用電源装置10は、IGBT3Cと、IGBT3Cに関する温度情報を検出する温度センサ8Cと、制御部4と、を備えている。
【0080】
制御部4は、特定の故障率(10%)に対応した寿命日数L10%を、他の故障率(α%)に対応した寿命日数Lα%に換算し、換算した寿命日数Lα%を基に、IGBT3Cの余寿命日数Yα%を換算する。さらに、制御部4は、余寿命日数Yα%の情報を外部(モニタ9等)に出力する。
【0081】
IGBT3C等、車両故障が頻発する前にオーバーホールするためには、10%故障率での寿命(寿命日数)を算出したのでは、故障率が高く、運用の実態には合わないものである。そこで、10%故障率での寿命(寿命日数)を1%故障率での寿命(寿命日数)等に換算することにより、IGBT3Cを適切な時期にオーバーホールすることができる。これにより、車両(IGBT3C)の安全性を高めることができる。
【0082】
上記したことから、IGBT3Cに関する温度情報を基に、IGBT3Cの実運用状態に対応付けて算出(換算)した余寿命日数の情報(余寿命に関する情報)を外部に出力することが可能な車両用電源装置10を得ることができる。
【0083】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0084】
例えば、第2乃至第5の実施形態において、構成部品をIGBT3Cに限定して説明したが、構成部品はIGBT3Cに限定されるものではなく、種々変形可能であり、温度条件によって寿命に関して影響を受ける部品であれば適用可能である。モニタ9は、車両用電源装置10に設けられてなくともよく、この場合、車両用電源装置10とは別に車両に設けられていればよい。
この発明の車両用電源装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形可能であり、各種の車両用電源装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
3C…IGBT、4…制御部、5…交流リアクトル、6…トランス、8,8C…温度センサ、9…モニタ、10…車両用電源装置、11…直流リアクトル、12…余寿命算出部、14…アラーム検出部、18…記憶部、19…タイマ、13…推定余寿命曲線、15…推定余寿命線、16…アラームレベル、ΣT…積算値、ΔT1…第1温度上昇値、ΔT2…第2温度上昇値、n1,n2…回数、ΔD,ΔD1,ΔD2…割合、m…実運用日数、D…余寿命消費割合、ΔD´…平均値、L,L10%,Lα%…寿命日数、Y,Yα%…余寿命日数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度条件によって寿命に関して影響を受ける構成部品と、
前記構成部品に関する温度情報を検出するセンサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記構成部品の実運用時間における前記温度情報の積算値を計算可能であり、
前記構成部品における前記積算値に対する余寿命の変化を推定した推定余寿命情報を保持又は取得可能であり、
前記推定余寿命情報を基に前記積算値から前記構成部品の余寿命を算出し、
前記算出した余寿命の情報を外部に出力することを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
表示装置をさらに備え、
前記制御部は、前記算出した余寿命の情報を前記表示装置に出力することを特徴とする請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記構成部品の推定余寿命に関して設定されたアラームレベルの情報を保持又は取得可能であり、
前記算出した余寿命が前記アラームレベルに到達したとき以降、アラーム情報を前記表示装置に出力可能であることを特徴とする請求項2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
温度条件によって寿命に関して影響を受ける構成部品と、
前記構成部品に関する温度情報を検出するセンサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記構成部品の余寿命を推定した推定余寿命情報を保持又は取得可能であり、
1日毎に、(1)前記温度情報を基に、前記構成部品における、最初の実運用期間の第1温度上昇値と、前記構成部品の実運用が再開される2回目以降の実運用期間の第2温度上昇値と、前記構成部品の実運用が再開される回数と、を計測し、(2)前記推定余寿命情報を基に前記第1温度上昇値及び第2温度上昇値から前記構成部品の余寿命を算出し、(3)前記算出した余寿命を基に、前記第1温度上昇値、第2温度上昇値及び回数から余寿命消費割合を計算し、
日毎の前記余寿命消費割合を積算し、
前記積算した余寿命消費割合の情報を外部に出力することを特徴とする車両用電源装置。
【請求項5】
表示装置をさらに備え、
前記制御部は、前記積算した余寿命消費割合の情報を前記表示装置に出力することを特徴とする請求項4に記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記積算された余寿命消費割合に関して設定されたアラームレベルの情報を保持又は取得可能であり、
前記積算した余寿命消費割合が前記アラームレベルに到達したとき以降、アラーム情報を前記表示装置に出力可能であることを特徴とする請求項5に記載の車両用電源装置。
【請求項7】
表示装置をさらに備え、
前記制御部は、
前記積算した余寿命消費割合の情報を基に、前記構成部品の余寿命を算出し、
前記算出した余寿命の情報を前記表示装置に出力することを特徴とする請求項4に記載の車両用電源装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記積算した余寿命消費割合の情報を基に、1日当たりの余寿命消費割合の平均値を算出し、
前記算出した平均値を基に、前記構成部品の寿命日数を算出し、
前記算出した構成部品の寿命日数と、前記構成部品の実運用日数と、を基に、前記構成部品の余寿命日数を算出し、
前記算出した余寿命日数を前記表示装置に出力することを特徴とする請求項7に記載の車両用電源装置。
【請求項9】
前記推定余寿命情報は、特定の故障率に対応付けた情報であり、
前記制御部は、前記特定の故障率に対応した前記寿命日数を、他の故障率に対応した寿命日数に換算し、
前記換算した寿命日数を基に、前記構成部品の余寿命日数を換算し、
前記換算した余寿命日数を前記表示装置に出力することを特徴とする請求項8に記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−170267(P2012−170267A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30130(P2011−30130)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】