説明

車両用電源装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両用電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】通常の車両用電源装置は、バッテリ及び車両用電気負荷を直流低電圧(通常、DC12V)で駆動する。また、例えばデフロスタ(除霜用ヒータ)などのような負荷を直流高電圧(例えばDC150V)で駆動することにより、配線断面積の縮小、送電損失の低減を図る提案がある。このために、車両用交流発電機(以下、オルタネータという)から出力される三相交流電圧を三相変圧器で昇圧し、昇圧された交流高電圧を三相全波整流器で整流してこのような高電圧負荷に供給している。なお、三相全波整流器で整流する一つの理由は配線数を減らすためである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】更に近年、このような低電圧直流負荷及び直流高電圧負荷の他に、所定周波数の交流高電圧(例えば、商用交流電圧(AC100V、50/60HZ)で駆動される各種電気機器などを車両内で使用したいという要望が出てきた。しかしながら、このような要求を満足するには、オルタネータや昇圧トランスなどの増設が予想され、装置規模の増加が重大な問題となる。
【0004】本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、簡単な装置構成で、直流低電圧負荷、直流高電圧負荷、交流高電圧負荷を1個のオルタネータで駆動可能な車両用電源装置を提供することを、その目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の車両用電源装置は、車両用交流発電機から出力される三相交流低電圧を整流してバッテリを充電する第1の三相全波整流器と、前記三相交流低電圧を昇圧する三相変圧器と、該三相変圧器から出力される三相交流高電圧を整流する第2の三相全波整流器と、該第2の三相全波整流器から出力される直流高電圧を所定周波数の単相交流高電圧に変換する直交変換器と、前記第2の三相全波整流回路から出力される直流高電圧が第1のスイッチを通じて給電される直流高電圧負荷と、前記直交変換器から出力される交流高電圧が第2のスイッチを通じて給電される交流高電圧負荷と、電圧入力端に入力される入力電圧を所定の参照電圧に一致させるべく前記車両用交流発電機の励磁電流を制御する励磁電流制御回路と、アノード電極が前記第1のスイッチと前記直流高電圧負荷との接続点に接続され、カソード電極が前記励磁電流制御回路の前記電圧入力端に接続される第1のダイオードと、アノード電極が前記第2のスイッチと前記交流高電圧負荷との接続点に接続され、カソード電極が前記励磁電流制御回路の前記電圧入力端に接続される第2のダイオードとを備えることを特徴としている。
【0006】
【作用及び発明の効果】本発明の車両用電源装置は、三相変圧器で昇圧され第2の三相全波整流器で整流された直流高電圧を直交変換器に入力して、所定周波数、所定電圧の交流高電圧を得ている。したがって本発明によれば、バッテリ充電用の第1の三相全波整流器と、昇圧用の三相変圧器と、三相交流高電圧を整流する第2の三相全波整流器とを有し、直流低電圧と直流高電圧とを供給する車両用電源装置に、直交変換器を付設するだけで、所定周波数の交流高電圧の供給が可能となる。
【0007】更に、一般には車両用電源装置が駆動する直流高電圧負荷は、例えばデフロスタのように始動時などの特定の時間に短時間だけ使用されることが多く、常時使われるケースのほとんどなく、その結果、三相変圧器及び第2の三相全波整流器の稼働率は低い。本発明の装置では、三相変圧器及び第2の三相全波整流器が上記直流高電圧及び上記交流高電圧の両方を供給する構成となっているので、全体としての三変圧器及び第2の三相全波整流器の稼働率が向上する、なお、上記直流高電圧負荷と上記交流高電圧負荷との同時使用を手動あるいは制御回路により禁止すれば、三相変圧器及び第2の三相全波整流器の容量を縮小することもできる。
【0008】以上説明したように本発明の車両用電源装置によれば、簡単な装置構成により、直流低電圧負荷、直流高電圧負荷、交流高電圧負荷を駆動することができ、装置の小型化及び信頼性の向上にも役立つ。更に、本発明では、直交変換器の高位端電圧と直流高電圧負荷の高位端電圧とを高電圧仕様でも簡単かつローコストなダイオードオア回路で一本化して励磁電流制御回路に共通の単一配線で出力するので、交流高電圧負荷と直流高電圧負荷とをそれぞれ単独使用する場合のみならず、同時使用することもできる。
【0009】
【実施例】本発明の車両用電源装置の一実施例を第1図乃至第3図に示す。図中同一参照符号は同一部材を装わす。第1図において、1はステータ巻線1a、ロータ巻線1b、三相全波整流器1cを有する通常の車両用交流発電機であり、三相全波整流器1cは本発明でいう第1の三相全波整流器を構成している。2は電圧調整器、3はバッテリ、4は車両負荷(直流低電圧負荷)でこれらは通常の車両用電源装置の場合と同一の構成であり、詳細な装置構成及び作用効果の説明は省略する。
【0010】本実施例では、ステータ巻線1aは更に三相変圧器5の一次端子に接続され、三相変圧器5の二次端子は第2の三相全波整流器6の入力端に接続されている。第2の三相全波整流器6の低位出力端は接地され、その高位出力端60は平滑コンデンサ13を介して接地されている。また、高位出力端60はマグネットリレーの常開接点(第1のスイッチ)8を介して直流高電圧負荷7の一端に接続されている。ここでは、直流高電圧負荷7は車両のウインドシールドに蒸着された透明抵抗体からなる。
【0011】電圧調整器2のB端子はバッテリ3の出力端子に接続され、S端子は制御回路14の出力端子14cに接続され、F端子はロータ巻線1bに接続されてS端子検出電圧に応じてロータ巻線励磁電流を制御する。19は直流高電圧負荷7の動作、非動作を指示する直流高電圧負荷開閉スイッチであって、バッテリ3の出力端子と上記リレーの励磁コイル9とを接続している。
【0012】10は直交変換器(コンバータ)であって、その入力端の一端は交流高電圧負荷操作用のスイッチ(第2のスイッチ)12を介して第2の三相全波整流器6の高位出力端に接続されており、コンバータ10の一対の出力端間10a,10bには例えばテレビ等の交流高電圧負荷11が接続されている。また、コンバータ10の高位入力端及び直流高電圧負荷7の高位端はそれぞれダイオード(第1のダイオード、第2のダイオード)70、71のアノードに個別に接続され、両ダイオード70、71のカソードは一本の信号線を介して制御回路14の一方の入力端子14bに接続されている。制御回路14の他の一つの入力端子14aはバッテリ3の高位端に接続されている。なお、直流高電圧負荷7、励磁コイル9の各低位端及びコンバータ10の低位入力端は接地されている。
【0013】制御回路14は、電圧調整器2に供給する検出電圧Viを切替える切替え回路であって、その詳細を第2図の回路図を参照して以下に説明する。30、31、32、33及び34は比較器、35及び36はダイオード、37、38、39、40、41、42及び43は抵抗、2は電圧調整器で21及び22はトランジスタ、23はダイオード、24は抵抗、30a、31a、32a、33a、34aは各比較器の+入力端、30b、31b、32b、33b、34bは各比較器の−入力端である。
【0014】コンバータ10の詳細を第3図の回路図で説明する。50はベース信号供給回路であって、所定周期で発振するマルチバイブレータを内蔵している。51、52、53及び54はブリッジ構成されたパワートランジスタである。以下、本実施例の装置の作動を説明する。
【0015】スイッチ19をオンすると励磁コイル9が付勢されてリレー8が導通し、直流高電圧負荷7には三相変圧器5で昇圧され、三相全波整流器6で整流された直流高電圧が供給される。操作スイッチ12をオンすると、コンバータ10のベース信号供給回路50は、トランジスタ51と54、及び、トランジスタ52と53をペアにして、所定周期で交互にオン・オフさせる。この結果、コンバータ10の出力端子10a、10bを通じて交流高電圧負荷11に所定周波数の交流高電圧が印加される。なお、出力端子10a、10b間に高周波成分バイパス用のコンデンサを接続してもよい。また、トランジスタ51と54とを導通する期間T1、及び、トランジスタ52と53とを導通する期間T2を調整することにより、この交流高電圧の実効値を制御することができる。更に、上記所定周期の前半においてトランジスタ51と54との導通、遮断を高速に繰り返し、上記所定周期の後半においてトランジスタ52と53との導通、遮断を高速に繰り返し、上記コンデンサ(ローパスフィルタ)で高周波成分を除去することにより、良好に実効電圧値を制御することができる。
【0016】電圧調整器2及び制御回路14の作動を第2図を参照して説明する。ただし、各比較器30〜34の入力端子30b,31b,32b,33a,34bにはそれぞれ所定の大きさの参照電圧が印加されている。操作スイッチ12又はリレー8が投入されると、ダイオード70、71からなるオア回路を通じて直流高電圧VHが制御回路14の入力端子14bに供給される。入力端子14bが高電位になると、比較器33の移力はローレベルになり、比較器30の出力をダイオード35を介してローレベルに落とす。比較器30は、発電機1の出力電圧を所定値例えば14Vに設定するものである。すなわち、入力端子14bが高電位となると比較器30の出力が遮断されるので電圧調整器2は比較器34の出力で制御される。比較器34は直流高電圧VHが所定値(34bの電圧に等しい)になるように出力電圧を電圧調整器2の入力端子2aに供給する。
【0017】比較器31はバッテリ3が過充電になるのを防止するためのものであって、例えばバッテリ電圧が15Vに達すると比較器31はハイレベルの出力を発生してトランジスタ21をオンにする。比較器32はバッテリの低電圧を防止するためのものであって、例えばバッテリ電圧が13Vになると比較器32の出力はローレベルになってトランジスタ21を強制的にオフにし、発電機1を発電させる。ここで、抵抗40、41は比較器30〜32の+入力端子にバッテリ電圧を分圧して供給するための分圧回路である。抵抗37〜39は比較器30、31、34からトランジスタ21のベースに供給するベース電流を制限するためのベース電流制限抵抗である。
【0018】したがって、比較器30は、直流高電圧VHが比較器33に入力していない場合に電圧調整器2を制御する。比較器34は直流高電圧VHが自己に入力し、かつ、比較器32がハイレベルで比較器31がローレベルの場合に電圧調整器2を制御する。すなわち、第2の制御回路により、バッテリ電圧が所定の範囲内で、直流高電圧が所定値となる様に界磁電流Ifが制御される。
【0019】電圧調整器2は2段エミッタ接地増幅回路であって、初段のトランジスタ21の導通により出力段のトランジスタ22が遮断され、トランジスタ21の遮断によりトランジスタ22が導通される。以上説明した実施例において、直流高電圧の大きさを所定値に保つため、高電圧負荷使用時に制御回路14で電圧検出端子を14aから14bに切替えている。このようにすれば、バッテリ3の許容電圧変動の範囲内で直流高電圧の高精度の制御を簡単な回路で実現することができ、機関回転数の変化により電圧変動が大きい車両用電源装置において、特に好適である。
【0020】また、本実施例では、直流高電圧を所定レベルに維持することにより、この直流高電圧に対して実効値の大きさが一定の比率となるように交流高電圧の大きさを一定レベルに維持することができ、電圧調整が簡単になる。もちろん、直流高電圧負荷7の種類によっては、その実効値の大きさを一定レベルに制御しなくてもよく、交流高電圧負荷11を駆動する場合にだけ電圧調整を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両用電源装置の一例を示す回路図
【図2】制御回路14の等価回路図
【図3】コンバータ10のブロック回路図
【符号の説明】
1c――第1の三相全波整流器
5 ――三相変圧器
6 ――第2の三相全波整流器
10――コンバータ(直流変換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両用交流発電機から出力される三相交流低電圧を整流してバッテリを充電する第1の三相全波整流器と、前記三相交流低電圧を昇圧する三相変圧器と、該三相変圧器から出力される三相交流高電圧を整流する第2の三相全波整流器と、該第2の三相全波整流器から出力される直流高電圧を所定周波数の単相交流高電圧に変換する直交変換器と、前記第2の三相全波整流回路から出力される直流高電圧が第1のスイッチを通じて給電される直流高電圧負荷と、前記直交変換器から出力される交流高電圧が第2のスイッチを通じて給電される交流高電圧負荷と、電圧入力端に入力される入力電圧を所定の参照電圧に一致させるべく前記車両用交流発電機の励磁電流を制御する励磁電流制御回路と、アノード電極が前記第1のスイッチと前記直流高電圧負荷との接続点に接続され、カソード電極が前記励磁電流制御回路の前記電圧入力端に接続される第1のダイオードと、アノード電極が前記第2のスイッチと前記交流高電圧負荷との接続点に接続され、カソード電極が前記励磁電流制御回路の前記電圧入力端に接続される第2のダイオードと、を備えることを特徴とする車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3173011号(P3173011)
【登録日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【発行日】平成13年6月4日(2001.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−400864
【出願日】平成2年12月7日(1990.12.7)
【公開番号】特開平4−210740
【公開日】平成4年7月31日(1992.7.31)
【審査請求日】平成9年11月4日(1997.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【参考文献】
【文献】特開 平1−157238(JP,A)
【文献】特開 平1−224420(JP,A)
【文献】実開 昭55−178246(JP,U)