車両用電装機器冷却構造
【課題】インバータ等の車両に搭載され通電により発熱する電装機器を十分冷却可能であり、装置構成がシンプルな車両用電装機器冷却構造の提供を目的とした。
【解決手段】冷却構造10において、空調装置20は、空気流路30内に送風機22、及びエバポレータ24を配置したものとされている。また、空気流路30は、空気を吸入可能な第一吸入口32a、及び第二吸入口32bと、吸入した空気を車室内に排出する吹出口34とを有し、第一吸入口32aから吹出口34に至る第一通気系統40と、第二吸入口32bから吹出口34に至る第二通気系統42とを備えたものである。第一通気系統40と第二通気系統42とが、送風機22及びエバポレータ24よりも気流の流れ方向上流側に設けられた合流部46において合流している。また、合流部46よりも第二通気系統の上流側に、電装機器70が配置されている。
【解決手段】冷却構造10において、空調装置20は、空気流路30内に送風機22、及びエバポレータ24を配置したものとされている。また、空気流路30は、空気を吸入可能な第一吸入口32a、及び第二吸入口32bと、吸入した空気を車室内に排出する吹出口34とを有し、第一吸入口32aから吹出口34に至る第一通気系統40と、第二吸入口32bから吹出口34に至る第二通気系統42とを備えたものである。第一通気系統40と第二通気系統42とが、送風機22及びエバポレータ24よりも気流の流れ方向上流側に設けられた合流部46において合流している。また、合流部46よりも第二通気系統の上流側に、電装機器70が配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、通電により発熱する電装機器を冷却するための車両用電装機器冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され通電により発熱する電装機器を冷却するための構造として、下記特許文献1に開示されているインバータの冷却構造のようなものが提供されている。下記特許文献1のインバータの冷却構造は、簡素な構成で効率良くインバータを冷却できるようにすることを目的としたものであり、車両に設けられた空調装置用通路内に設置されたブロワよりも下流側であって、かつエバポレータよりも上流側の位置にインバータを配置した構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−101349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示されている従来技術においては、インバータの冷却構造の簡素化を図りつつ、インバータを高効率で冷却することを目的としたものであるものの、構成の簡素化が十分図られたものではない。すなわち、特許文献1の構成を採用した場合、空調装置が不使用状態である場合に、インバータの冷却により昇温した空気が車室内に排出されるのを防止するためには、ブロワとエバポレータとの間に開閉弁を設けざるを得ない。さらに、従来技術の構成を採用した場合には、開閉弁により遮断された空気流をブロワの上流側に戻すための吹出系統を別途設ける必要がある。このように、従来技術のインバータの冷却構造は、装置構成が十分簡素化されたものであるとは言えない。
【0005】
そこで、本発明は、インバータ等の車両に搭載され通電により発熱する電装機器を十分冷却可能であり、装置構成がシンプルな車両用電装機器冷却構造の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく提供される本発明は、車両に搭載され、通電により発熱する電装機器の冷却構造に関する。本発明の車両用電装機器冷却構造は、前記車両に空調装置が搭載されており、前記空調装置が、前記車両に形成された空気流路内に送風機、及びエバポレータを配置したものであり、前記空気流路が、空気を吸入可能な第一吸入口、及び第二吸入口と、吸入した空気を車室内に排出する吹出口を有し、前記第一吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る第一通気系統と、前記第二吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る第二通気系統とを備えたものであり、前記第一通気系統と前記第二通気系統とが、前記送風機及び前記エバポレータよりも気流の流れ方向上流側の合流部において合流しており、前記合流部よりも前記第二通気系統の上流側に前記電装機器が配置されていることを特徴としている。
【0007】
上述した第一通気系統は、一般的な空調装置が備える空気流路と同様に第一吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る流路を構成するものである。本発明の車両用電装機器冷却構造は、上述した第一通気系統に対し、電装機器を通過するように形成された第二通気系統を合流させることにより構成された極めてシンプルな構造とされている。また、送風機を作動させることにより、電装機器の冷却用に設けられた第二通気系統において気流を発生させることができ、十分な冷却効果が得られる。従って、本発明によれば、車両用電装機器冷却構造の装置構成をシンプルなものとしつつ、電装機器を十分冷却することが可能である。
【0008】
ここで、上述した従来技術のインバータの冷却構造においては、空調装置を使用していない場合に、循環流によりインバータを冷却することとしているため、インバータの空冷に用いた空気が車室側に吹き出され、室温が変化することを防止できると想定される。その反面、このような構成とした場合には、冷却に用いる空気の温度が徐々に上昇する傾向にあると想定される。従って、従来技術のインバータの冷却構造においては、インバータの冷却効率の低下が懸念される。また、従来技術においては、昇温した空気により十分な冷却効率を得るために、空調装置が停止状態にあるにもかかわらずブロア出力を向上させざるを得ず、この出力向上に起因するエネルギー効率の低下が懸念される。
【0009】
しかしながら、本発明の車両用電装機器冷却構造においては、第二通気系統がエバポレータよりも上流側に設けられた合流部において合流しているため、電装機器の空冷により温度上昇した空気をエバポレータにおいて車室内の温度変化させない温度に調整した上で排出させることが可能である。
【0010】
また、主として空調用の空気が流れる第一通気系統とは別に、主として電装機器の空冷用として使用される第二通気系統を設けている。このようにすることにより、電装機器の空冷のために必要最小限の空気を第二通気系統を通過させれば十分な冷却効果を得ることが可能となる。そのため、車室内の温度調整のために空調装置を使用していない状態(以下、「空調停止状態」とも称す)において、電装機器の冷却のために送風機の送風量を過度に大きくする必要がなく、その分だけエネルギー効率の低下を防止できる。また、電装機器の空冷に要する送風量を最小限に抑制できるため、空調停止状態において吹出口から排出される空気量を、乗員が気に留めない程度まで抑制することが可能である。
【0011】
ここで、上述した従来技術のインバータの冷却構造においては、インバータの冷却フィンがブロワに対して空気の流れ方向下流側に配置されている。そのため、従来技術の構成を採用した場合、インバータを冷却する必要性の有無にかかわらず、冷却フィンが設置された部分を空気が通過することになる。よって、従来技術のインバータの冷却構造においては、いかなる場合においても冷却フィンの分だけ通気抵抗が高くなる。従って、従来技術のインバータの冷却構造においては、通気抵抗の上昇分だけブロアの出力を向上させねばならず、エネルギー効率が低下してしまうという問題が存在する。
【0012】
かかる問題に対処すべく、本発明の車両用電装機器冷却構造は、前記合流部あるいは前記合流部よりも第二通気系統の上流側に、第二通気系統から前記送風機及び前記エバポレータ側への通気を阻害する弁あるいはシャッター等の気流調整手段を設けた構成とすることが望ましい。
【0013】
かかる構成とした場合、電装機器の冷却が不要な場合に気流調整手段により第二通気系統を閉状態とすることにより、第二通気系統を介する空気の流れを遮断し、電装機器を通過することによる通気抵抗の上昇を防止することができる。これにより、車両用電装機器冷却構造を搭載したことに伴う車両全体としてのエネルギー効率の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インバータ等の車両に搭載され通電により発熱する電装機器をエネルギー効率の低下を招くことなく十分冷却可能であり、装置構成がシンプルで低コストな車両用電装機器冷却構造の提供を目的とした。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用電装機器冷却構造の構造を示す模式図である。
【図2】図1に示す車両用電装機器冷却構造の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、本発明の一実施形態に係る車両用電装機器冷却構造10(以下、単に「冷却構造10」とも称す)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。車両用電装機器冷却構造10は、空調装置20を作動させることにより発生する気流により、車両に搭載され通電により発熱する電装機器70を空冷するものである。
【0017】
図1に示すように、空調装置20は、車両に形成された空気流路30内に送風機22、及びエバポレータ24を配置したものである。空気流路30内において、送風機22は、エバポレータ24に対して空気の流れ方向下流側に隣接する位置に設けられている。送風機22は、複数段階に分けて送風量を調整することができる。本実施形態では、送風停止状態(0速)の他、送風状態において1速〜5速の5段階に送風量を調整することができる。
【0018】
空気流路30は、空気を吸入するための吸入口32と、吸入した空気を車室内に排出するための吹出口34とを有する。本実施形態では、吸入口32及び吹出口34が複数設けられている。具体的には、吸入口32として、第一吸入口32aと第二吸入口32bとが設けられている。また、吹出口34として、第一吹出口34aと第二吹出口34bとが設けられている。
【0019】
また、空気流路30において送風機22及びエバポレータ24よりも上流側の部分は、第一通気系統40と第二通気系統42とによって構成されている。第一通気系統40は、上述した第一吸入口32aから送風機22及びエバポレータ24を通過して吹出口34に至る通気系統である。また、第二通気系統42は、第二吸入口32bから送風機22及びエバポレータ24を通過して吹出口34に至る通気系統である。
【0020】
第一通気系統40及び第二通気系統42は、送風機22及びエバポレータ24よりも空気流路30における気流の流れ方向上流側に位置する合流部46において合流するように形成されている。合流部46には、気流調整手段48が設けられている。気流調整手段48は、第一通気系統40及び第二通気系統42の開閉を行うための弁である。図1に実線で示すように、気流調整手段48を全閉状態にすると、第一通気系統40における通気が可能ではあるが、第二通気系統42における通気が遮断された状態になる。また、図1に二点鎖線で示すように気流調整手段48を全開状態にすると、第一通気系統40における通気が遮断され、第二通気系統42における通気が可能な状態になる。図1に一点鎖線で示すように気流調整手段48を半開状態(開度が50%の状態)にすると、第一通気系統40、及び第二通気系統42の双方において通気が可能な状態になる。
【0021】
また、エバポレータ24に対して上流側に隣接する位置には、整流板50が設けられている。整流板50は、第一通気系統40及び第二通気系統42を通過してきた空気を均一に混合し、整流するためのものである。整流板50は、通気孔を多数形成した板体によって形成されており、図示のように傾斜した状態で設置されている。
【0022】
空気流路30は、送風機22よりも下流側において複数形等の吹出系統に分かれている。本実施形態においては、送風機22の下流側に、第一吹出系統52及び第二吹出系統54の二系統からなる吹出系統が形成されている。第一吹出系統52は、車室内のインパネ(図示せず)に形成された第一吹出口34aに繋がる吹出系統である。また、第二吹出系統54は、図1に二点鎖線で示すように、車室内においてフロア面近傍に形成された第二吹出口34bに繋がる吹出系統である。
【0023】
空気流路30は、弁等の切替手段(以下、「吹出切替手段56」とも称す)により、送風機22から排出される空気の排出先を切り替えることができる。すなわち、吹出切替手段56を切り替え操作することにより、第一吹出系統52及び第二吹出系統54のいずれか一方を空気の吹出先として選択すること、及び第一吹出系統52及び第二吹出系統54の双方を空気の吹出先として選択することが可能である。
【0024】
電装機器70は、車両のブレーキ動作によって発生する熱エネルギーを電気エネルギーに変換して回収するために用いられる回生ユニットである。電装機器70は、インバータ72とキャパシタ74とをケース76内に内蔵させた構造とされている。電装機器70は、通電により発熱を伴うものであるため、適宜冷却する必要がある。本実施形態において、電装機器70は、空気流路30をなす第二通気系統42を流れる空気により、インバータ72及びキャパシタ74を空冷可能な構成とされている。
【0025】
具体的には、電装機器70は、空気流路30に設けられた合流部46よりも第二通気系統42の上流側に配置されている。ここで、略直方体状のケース76内において、インバータ72は、キャパシタ74よりも気流の流れ方向下流側になるように設置されている。すなわち、略直方体状のケース76を側面視した状態において、四隅をなす角部78a〜78dのうち、ケース76の底面側に位置する角部78aに第二吸入口32bをなす開口が形成されている。また、ケース76の天面側において角部78aに対して対角線上に位置する角部78bには、ケース76内に導入された空気を放出するための放出口80が形成されている。放出口80には、第二通気系統42をなす配管が接続されている。このような構成とすることにより、電装機器70の冷却用の空気を下方からから上方に向けて流し、電装機器70の冷却効率を向上させることができる。
【0026】
インバータ72は、ケース76内の天面側に設置されている。インバータ72は、放熱用のフィン82を下方に向けた状態で設置されている。上述した放出口80は、フィン82が設けられた部分と略同一の高さに形成されている。また、キャパシタ74は、インバータ72の下方側に配置されている。キャパシタ74は、ケース76内において所定の間隔毎に複数、並列に配置されている。これにより、隣接するキャパシタ74,72間をケース76の上下方向に連通した空気流路84が形成されている。
【0027】
また、ケース76内において、キャパシタ74の下方には第二吸入口32bから吸入された空気流を整流するための整流板86が設置されているまた、整流板86の下方には、エアチャンバ88が形成されている。整流板86は、ケース76に対して第二吸入口32bから導入された空気を整流するためのものである。整流板86は、通気孔を多数形成した板体によって形成されている。整流板86は、ケース76に対する空気導入口として機能する第二吸入口32b側(図中右側)を手前側とした場合に、奥側(図中左側)に向けて下り勾配となるように設置されている。すなわち、エアチャンバ88は、第二吸入口32b側から奥に向かうに連れて、その高さが低くなるように形成されている。
【0028】
また、電装機器70には、当該機器温度tを計測するための温度センサ90が設けられている。本実施形態においては、温度センサ90がインバータ72のフィン82に取り付けられている。
【0029】
冷却構造10は、制御装置100を備えている。制御装置100は、温度センサ90により計測される電装機器70の機器温度t、及び空調装置20の動作状況に基づき、冷却構造10をなす各部の動作を下記表1〜表3及び図2に示すフローチャートに則って制御する。以下、表1〜表3、及び図2に示すフローチャートを参照しつつ、冷却構造10の動作について詳細に説明する。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
制御装置100は、先ずステップ1において空調装置20による車室内の温度調整を行っている状態(以下、「空調運転状態」とも称す)であるのか否かを確認する。ステップ1において空調運転状態であると判断された場合には、制御フローがステップ2に進められ、空調運転状態でないと判断された場合には、制御フローがステップ10に進められる。
【0034】
制御フローがステップ2に進行した場合には、電装機器70の機器温度tが60度を超えているか否かが確認される。ここで、機器温度tが60度以下である場合には、電装機器70が低温であり、冷却の必要がない状況にある。そこで、この場合には、制御フローがステップ3及びステップ4に進められ、表1に則って各部の制御がなされる。具体的には、ステップ3において、気流調整手段48をなす弁が全閉状態とされ、第二通気系統34bにおける通気が停止状態とされる。また、ステップ4において、送風機22が停止状態とされる。この状態において、制御フローはステップ1に戻される。
【0035】
また、ステップ2において電装機器70の機器温度tが60度を超えていることが確認された場合には、制御フローがステップ5〜ステップ9に順次進められ、表2及び表3に則って各部の制御がなされる。具体的には、制御フローがステップ5に移行した場合には、機器温度tが60度より高温であり、電装機器70を冷却する必要がある。そこで、ステップ5においては、気流調整手段48が全開状態とされ、第二通気系統34bにおける通気が可能な状態とされる。また、ステップ6において、最も低い送風量(1速)の下、送風機22が駆動状態とされる。
【0036】
また、ステップ7においては、吹出切替手段56の切り替え操作により、第一吹出系統52が閉状態とされ、第二吹出系統54が開状態とされる。これにより、送風機22により発生する気流を第二吹出口34bを介して車室のフロア面近傍に排出させる状態(フロア側吹出設定)に設定された状態になる。従って、電装機器70の冷却のために第二通気系統34bを通過してきた空気は、第二吹出口34bから排出される。
【0037】
また、ステップ8においては、電装機器70の機器温度tが80度を超えているか否かが確認される。機器温度tが80度以下である場合には、上述したステップ1〜ステップ7に至る一連の制御フローが繰り返される。一方、機器温度tが80度を超えている場合には、エバポレータ24を作動させるためのコンプレッサ(図示せず)が駆動状態とされる。これにより、電装機器70の冷却のために第二通気系統34bを通過して昇温した空気が、車室内の温度に影響を与えない程度まで冷却され、第二吹出口34bから排出される。
【0038】
一方、上述したステップ1において空調運転状態である場合には、制御フローがステップ10に進行する。ステップ10においては、電装機器70の機器温度tが60度よりも高いか否かが確認される。機器温度tが60以下である場合場合には、ステップ11〜ステップ12及び表1に則って、冷却構造10の各部について動作制御がなされる。具体的には、機器温度tが60度以下である場合には、電装機器70を冷却する必要がない。そこで、ステップ10において気流調整手段48をなす弁が全閉状態とされ、第二通気系統42における通気が停止された状態とされる。また、ステップ12において、通常の空調運転、すなわち空調運転の運転設定にあわせて送風22の風速設定、エバポレータ24のオンオフ、及び吹出切替手段56の切り替えがなされる。
【0039】
また、ステップ10において電装機器70の機器温度tが60度よりも高温である場合には、電装機器70を冷却する必要がある。そこで、ステップ13において、気流調整手段48の開度が50%とされ、第一吹出系統52及び第二吹出系統54の双方から送風機22及びエバポレータ24に給気可能な状態とされる。また、ステップ14においては、第二吹出系統54に冷却用空気を通過させるための送風量を確保すべく、送風機22の出力が、空調運転を実施するために必要な出力よりも1段階(1速)分高く設定される。さらに、ステップ15においては、エバポレータ24を駆動させるためのコンプレッサのオンオフを空調運転を運転状況に応じて適宜切り替える制御がなされる。
【0040】
上述したようにして、ステップ15においてエバポレータ24の駆動制御がなされると、制御フローがステップ16に進められ、電装機器70の機器温度tが80度よりも高いか否かが確認される。ここで、機器温度tが80度以下である場合は、制御フローがステップ1に戻される。一方、機器温度tが80度よりも高い場合には、第二吹出系統54を通過してきた冷却用の空気が高温になっているものと想定される。そこで、この場合には、制御フローがステップ17に進められ、エバポレータ24を駆動させるためのコンプレッサが仮にオフ状態であっても、これを強制的にオン状態に切り替える制御がなされる。その後、制御フローがステップ1に戻される。
【0041】
上述したように、本実施形態の冷却構造10において採用されている第一通気系統40は、従来公知の空調装置が備える空気通路と同様に、主として空調運転のための空気が流れる系統である。本実施形態の冷却構造10は、第一通気系統40に対して、主として電装機器70を冷却するための空気が通過する第二通気系統42を合流させることにより構成された極めてシンプルな構造とされている。また、送風機22を作動させることにより、電装機器70の冷却用に設けられた第二通気系統42において気流を発生させ、電装機器70を十分冷却することができる。従って、冷却構造10は、装置構成が極めてシンプルでありつつ、電装機器70を十分冷却することが可能である。
【0042】
また、冷却構造10では、エバポレータ24よりも上流側に設けられた合流部46において第二通気系統42を合流させている。そのため、電装機器70の空冷により温度上昇した空気が、車室内の温度を変動させる可能性がある程度に昇温している場合に、エバポレータ24において温度調整した上で車室内に排出させることが可能である。
【0043】
また、冷却構造10においては、主として空調用の空気が流れる第一通気系統40に加え、主として電装機器70の空冷用の空気が流れる第二通気系統42が設けられている。これにより、電装機器70の空冷のために必要最小限の空気を第二通気系統42を通過させることで、十分な冷却効果を得ることが可能となる。従って、空調装置20が空調運転を行っていない状態(空調停止状態)において、送風機22の送風量を過度に大きくする必要がなく、その分だけエネルギー効率を改善することが可能である。また、電装機器70の空冷に要する送風量が最小限で済むため、空調停止状態において吹出口から排出される空気量を、乗員が気に留めない程度まで抑制することが可能である。
【0044】
また、冷却構造10では、合流部46に気流調整手段48を設け、この気流調整手段48を開閉することにより第二通気系統42から送風機22及びエバポレータ24側への通気状態を切り替えることが可能とされている。従って、電装機器70の冷却が不要な場合に、気流調整手段48を閉状態とし、第二通気系統42における空気の流れを遮断することにより、電装機器70による通気抵抗の上昇、及びエネルギー効率の低下を防止することができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、気流調整手段48を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、気流調整手段48を設けない構成としても良い。また、気流調整手段48として、全閉状態、全開状態、及び半開状態の三段階に開度調整可能な弁を採用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば無段階に開度調整可能な弁、あるいはシャッター等を気流調整手段48として使用することも可能である。
【0046】
また、本実施形態においては、気流調整手段48を第一通気系統40と第二通気系統42との合流部46に設置した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、合流部46よりも第二通気系統42の上流側に設けた構成としても良い。かかる構成とした場合についても、上述したものと同様の作用効果が得られる。
【0047】
本実施形態においては、電装機器70として回生ユニットを採用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、電装機器70は、通電により発熱を伴うものであればいかなるものであっても良く、例えばインバータ72単体、あるいはキャパシタ74単体であっても良く、リチウムイオン二次電池、あるいはニッケル水素二次電池等の二次電池等、いかなる電装機器であっても良い。
【0048】
また、冷却構造10においては、整流板50,86を設け、合流部46において合流した空気、あるいは第二吸入口32bから吸入した空気を整流可能な構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、整流板50,86のいずれか一方又は双方を設けない構成としても良い。また、整流板50,80には、メッシュ(網)、パンチングメタル、あるいは板体を切り起こしたもの等、適宜のものを採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、通電により発熱する電装機器を搭載した車両において利用可能であり、特に大電流が流れると想定される電気自動車、ハイブリッド型の自動車、燃料電池自動車等の車両において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 車両用電装機器冷却構造(冷却構造)
20 空調装置
22 送風機
24 エバポレータ
30 空気流路
32 吸入口
32a 第一吸入口
32b 第二吸入口
34 吹出口
40 第一通気系統
42 第二通気系統
46 合流部
48 気流調整手段
70 電装機器
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、通電により発熱する電装機器を冷却するための車両用電装機器冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され通電により発熱する電装機器を冷却するための構造として、下記特許文献1に開示されているインバータの冷却構造のようなものが提供されている。下記特許文献1のインバータの冷却構造は、簡素な構成で効率良くインバータを冷却できるようにすることを目的としたものであり、車両に設けられた空調装置用通路内に設置されたブロワよりも下流側であって、かつエバポレータよりも上流側の位置にインバータを配置した構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−101349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示されている従来技術においては、インバータの冷却構造の簡素化を図りつつ、インバータを高効率で冷却することを目的としたものであるものの、構成の簡素化が十分図られたものではない。すなわち、特許文献1の構成を採用した場合、空調装置が不使用状態である場合に、インバータの冷却により昇温した空気が車室内に排出されるのを防止するためには、ブロワとエバポレータとの間に開閉弁を設けざるを得ない。さらに、従来技術の構成を採用した場合には、開閉弁により遮断された空気流をブロワの上流側に戻すための吹出系統を別途設ける必要がある。このように、従来技術のインバータの冷却構造は、装置構成が十分簡素化されたものであるとは言えない。
【0005】
そこで、本発明は、インバータ等の車両に搭載され通電により発熱する電装機器を十分冷却可能であり、装置構成がシンプルな車両用電装機器冷却構造の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく提供される本発明は、車両に搭載され、通電により発熱する電装機器の冷却構造に関する。本発明の車両用電装機器冷却構造は、前記車両に空調装置が搭載されており、前記空調装置が、前記車両に形成された空気流路内に送風機、及びエバポレータを配置したものであり、前記空気流路が、空気を吸入可能な第一吸入口、及び第二吸入口と、吸入した空気を車室内に排出する吹出口を有し、前記第一吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る第一通気系統と、前記第二吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る第二通気系統とを備えたものであり、前記第一通気系統と前記第二通気系統とが、前記送風機及び前記エバポレータよりも気流の流れ方向上流側の合流部において合流しており、前記合流部よりも前記第二通気系統の上流側に前記電装機器が配置されていることを特徴としている。
【0007】
上述した第一通気系統は、一般的な空調装置が備える空気流路と同様に第一吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る流路を構成するものである。本発明の車両用電装機器冷却構造は、上述した第一通気系統に対し、電装機器を通過するように形成された第二通気系統を合流させることにより構成された極めてシンプルな構造とされている。また、送風機を作動させることにより、電装機器の冷却用に設けられた第二通気系統において気流を発生させることができ、十分な冷却効果が得られる。従って、本発明によれば、車両用電装機器冷却構造の装置構成をシンプルなものとしつつ、電装機器を十分冷却することが可能である。
【0008】
ここで、上述した従来技術のインバータの冷却構造においては、空調装置を使用していない場合に、循環流によりインバータを冷却することとしているため、インバータの空冷に用いた空気が車室側に吹き出され、室温が変化することを防止できると想定される。その反面、このような構成とした場合には、冷却に用いる空気の温度が徐々に上昇する傾向にあると想定される。従って、従来技術のインバータの冷却構造においては、インバータの冷却効率の低下が懸念される。また、従来技術においては、昇温した空気により十分な冷却効率を得るために、空調装置が停止状態にあるにもかかわらずブロア出力を向上させざるを得ず、この出力向上に起因するエネルギー効率の低下が懸念される。
【0009】
しかしながら、本発明の車両用電装機器冷却構造においては、第二通気系統がエバポレータよりも上流側に設けられた合流部において合流しているため、電装機器の空冷により温度上昇した空気をエバポレータにおいて車室内の温度変化させない温度に調整した上で排出させることが可能である。
【0010】
また、主として空調用の空気が流れる第一通気系統とは別に、主として電装機器の空冷用として使用される第二通気系統を設けている。このようにすることにより、電装機器の空冷のために必要最小限の空気を第二通気系統を通過させれば十分な冷却効果を得ることが可能となる。そのため、車室内の温度調整のために空調装置を使用していない状態(以下、「空調停止状態」とも称す)において、電装機器の冷却のために送風機の送風量を過度に大きくする必要がなく、その分だけエネルギー効率の低下を防止できる。また、電装機器の空冷に要する送風量を最小限に抑制できるため、空調停止状態において吹出口から排出される空気量を、乗員が気に留めない程度まで抑制することが可能である。
【0011】
ここで、上述した従来技術のインバータの冷却構造においては、インバータの冷却フィンがブロワに対して空気の流れ方向下流側に配置されている。そのため、従来技術の構成を採用した場合、インバータを冷却する必要性の有無にかかわらず、冷却フィンが設置された部分を空気が通過することになる。よって、従来技術のインバータの冷却構造においては、いかなる場合においても冷却フィンの分だけ通気抵抗が高くなる。従って、従来技術のインバータの冷却構造においては、通気抵抗の上昇分だけブロアの出力を向上させねばならず、エネルギー効率が低下してしまうという問題が存在する。
【0012】
かかる問題に対処すべく、本発明の車両用電装機器冷却構造は、前記合流部あるいは前記合流部よりも第二通気系統の上流側に、第二通気系統から前記送風機及び前記エバポレータ側への通気を阻害する弁あるいはシャッター等の気流調整手段を設けた構成とすることが望ましい。
【0013】
かかる構成とした場合、電装機器の冷却が不要な場合に気流調整手段により第二通気系統を閉状態とすることにより、第二通気系統を介する空気の流れを遮断し、電装機器を通過することによる通気抵抗の上昇を防止することができる。これにより、車両用電装機器冷却構造を搭載したことに伴う車両全体としてのエネルギー効率の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インバータ等の車両に搭載され通電により発熱する電装機器をエネルギー効率の低下を招くことなく十分冷却可能であり、装置構成がシンプルで低コストな車両用電装機器冷却構造の提供を目的とした。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用電装機器冷却構造の構造を示す模式図である。
【図2】図1に示す車両用電装機器冷却構造の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、本発明の一実施形態に係る車両用電装機器冷却構造10(以下、単に「冷却構造10」とも称す)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。車両用電装機器冷却構造10は、空調装置20を作動させることにより発生する気流により、車両に搭載され通電により発熱する電装機器70を空冷するものである。
【0017】
図1に示すように、空調装置20は、車両に形成された空気流路30内に送風機22、及びエバポレータ24を配置したものである。空気流路30内において、送風機22は、エバポレータ24に対して空気の流れ方向下流側に隣接する位置に設けられている。送風機22は、複数段階に分けて送風量を調整することができる。本実施形態では、送風停止状態(0速)の他、送風状態において1速〜5速の5段階に送風量を調整することができる。
【0018】
空気流路30は、空気を吸入するための吸入口32と、吸入した空気を車室内に排出するための吹出口34とを有する。本実施形態では、吸入口32及び吹出口34が複数設けられている。具体的には、吸入口32として、第一吸入口32aと第二吸入口32bとが設けられている。また、吹出口34として、第一吹出口34aと第二吹出口34bとが設けられている。
【0019】
また、空気流路30において送風機22及びエバポレータ24よりも上流側の部分は、第一通気系統40と第二通気系統42とによって構成されている。第一通気系統40は、上述した第一吸入口32aから送風機22及びエバポレータ24を通過して吹出口34に至る通気系統である。また、第二通気系統42は、第二吸入口32bから送風機22及びエバポレータ24を通過して吹出口34に至る通気系統である。
【0020】
第一通気系統40及び第二通気系統42は、送風機22及びエバポレータ24よりも空気流路30における気流の流れ方向上流側に位置する合流部46において合流するように形成されている。合流部46には、気流調整手段48が設けられている。気流調整手段48は、第一通気系統40及び第二通気系統42の開閉を行うための弁である。図1に実線で示すように、気流調整手段48を全閉状態にすると、第一通気系統40における通気が可能ではあるが、第二通気系統42における通気が遮断された状態になる。また、図1に二点鎖線で示すように気流調整手段48を全開状態にすると、第一通気系統40における通気が遮断され、第二通気系統42における通気が可能な状態になる。図1に一点鎖線で示すように気流調整手段48を半開状態(開度が50%の状態)にすると、第一通気系統40、及び第二通気系統42の双方において通気が可能な状態になる。
【0021】
また、エバポレータ24に対して上流側に隣接する位置には、整流板50が設けられている。整流板50は、第一通気系統40及び第二通気系統42を通過してきた空気を均一に混合し、整流するためのものである。整流板50は、通気孔を多数形成した板体によって形成されており、図示のように傾斜した状態で設置されている。
【0022】
空気流路30は、送風機22よりも下流側において複数形等の吹出系統に分かれている。本実施形態においては、送風機22の下流側に、第一吹出系統52及び第二吹出系統54の二系統からなる吹出系統が形成されている。第一吹出系統52は、車室内のインパネ(図示せず)に形成された第一吹出口34aに繋がる吹出系統である。また、第二吹出系統54は、図1に二点鎖線で示すように、車室内においてフロア面近傍に形成された第二吹出口34bに繋がる吹出系統である。
【0023】
空気流路30は、弁等の切替手段(以下、「吹出切替手段56」とも称す)により、送風機22から排出される空気の排出先を切り替えることができる。すなわち、吹出切替手段56を切り替え操作することにより、第一吹出系統52及び第二吹出系統54のいずれか一方を空気の吹出先として選択すること、及び第一吹出系統52及び第二吹出系統54の双方を空気の吹出先として選択することが可能である。
【0024】
電装機器70は、車両のブレーキ動作によって発生する熱エネルギーを電気エネルギーに変換して回収するために用いられる回生ユニットである。電装機器70は、インバータ72とキャパシタ74とをケース76内に内蔵させた構造とされている。電装機器70は、通電により発熱を伴うものであるため、適宜冷却する必要がある。本実施形態において、電装機器70は、空気流路30をなす第二通気系統42を流れる空気により、インバータ72及びキャパシタ74を空冷可能な構成とされている。
【0025】
具体的には、電装機器70は、空気流路30に設けられた合流部46よりも第二通気系統42の上流側に配置されている。ここで、略直方体状のケース76内において、インバータ72は、キャパシタ74よりも気流の流れ方向下流側になるように設置されている。すなわち、略直方体状のケース76を側面視した状態において、四隅をなす角部78a〜78dのうち、ケース76の底面側に位置する角部78aに第二吸入口32bをなす開口が形成されている。また、ケース76の天面側において角部78aに対して対角線上に位置する角部78bには、ケース76内に導入された空気を放出するための放出口80が形成されている。放出口80には、第二通気系統42をなす配管が接続されている。このような構成とすることにより、電装機器70の冷却用の空気を下方からから上方に向けて流し、電装機器70の冷却効率を向上させることができる。
【0026】
インバータ72は、ケース76内の天面側に設置されている。インバータ72は、放熱用のフィン82を下方に向けた状態で設置されている。上述した放出口80は、フィン82が設けられた部分と略同一の高さに形成されている。また、キャパシタ74は、インバータ72の下方側に配置されている。キャパシタ74は、ケース76内において所定の間隔毎に複数、並列に配置されている。これにより、隣接するキャパシタ74,72間をケース76の上下方向に連通した空気流路84が形成されている。
【0027】
また、ケース76内において、キャパシタ74の下方には第二吸入口32bから吸入された空気流を整流するための整流板86が設置されているまた、整流板86の下方には、エアチャンバ88が形成されている。整流板86は、ケース76に対して第二吸入口32bから導入された空気を整流するためのものである。整流板86は、通気孔を多数形成した板体によって形成されている。整流板86は、ケース76に対する空気導入口として機能する第二吸入口32b側(図中右側)を手前側とした場合に、奥側(図中左側)に向けて下り勾配となるように設置されている。すなわち、エアチャンバ88は、第二吸入口32b側から奥に向かうに連れて、その高さが低くなるように形成されている。
【0028】
また、電装機器70には、当該機器温度tを計測するための温度センサ90が設けられている。本実施形態においては、温度センサ90がインバータ72のフィン82に取り付けられている。
【0029】
冷却構造10は、制御装置100を備えている。制御装置100は、温度センサ90により計測される電装機器70の機器温度t、及び空調装置20の動作状況に基づき、冷却構造10をなす各部の動作を下記表1〜表3及び図2に示すフローチャートに則って制御する。以下、表1〜表3、及び図2に示すフローチャートを参照しつつ、冷却構造10の動作について詳細に説明する。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
制御装置100は、先ずステップ1において空調装置20による車室内の温度調整を行っている状態(以下、「空調運転状態」とも称す)であるのか否かを確認する。ステップ1において空調運転状態であると判断された場合には、制御フローがステップ2に進められ、空調運転状態でないと判断された場合には、制御フローがステップ10に進められる。
【0034】
制御フローがステップ2に進行した場合には、電装機器70の機器温度tが60度を超えているか否かが確認される。ここで、機器温度tが60度以下である場合には、電装機器70が低温であり、冷却の必要がない状況にある。そこで、この場合には、制御フローがステップ3及びステップ4に進められ、表1に則って各部の制御がなされる。具体的には、ステップ3において、気流調整手段48をなす弁が全閉状態とされ、第二通気系統34bにおける通気が停止状態とされる。また、ステップ4において、送風機22が停止状態とされる。この状態において、制御フローはステップ1に戻される。
【0035】
また、ステップ2において電装機器70の機器温度tが60度を超えていることが確認された場合には、制御フローがステップ5〜ステップ9に順次進められ、表2及び表3に則って各部の制御がなされる。具体的には、制御フローがステップ5に移行した場合には、機器温度tが60度より高温であり、電装機器70を冷却する必要がある。そこで、ステップ5においては、気流調整手段48が全開状態とされ、第二通気系統34bにおける通気が可能な状態とされる。また、ステップ6において、最も低い送風量(1速)の下、送風機22が駆動状態とされる。
【0036】
また、ステップ7においては、吹出切替手段56の切り替え操作により、第一吹出系統52が閉状態とされ、第二吹出系統54が開状態とされる。これにより、送風機22により発生する気流を第二吹出口34bを介して車室のフロア面近傍に排出させる状態(フロア側吹出設定)に設定された状態になる。従って、電装機器70の冷却のために第二通気系統34bを通過してきた空気は、第二吹出口34bから排出される。
【0037】
また、ステップ8においては、電装機器70の機器温度tが80度を超えているか否かが確認される。機器温度tが80度以下である場合には、上述したステップ1〜ステップ7に至る一連の制御フローが繰り返される。一方、機器温度tが80度を超えている場合には、エバポレータ24を作動させるためのコンプレッサ(図示せず)が駆動状態とされる。これにより、電装機器70の冷却のために第二通気系統34bを通過して昇温した空気が、車室内の温度に影響を与えない程度まで冷却され、第二吹出口34bから排出される。
【0038】
一方、上述したステップ1において空調運転状態である場合には、制御フローがステップ10に進行する。ステップ10においては、電装機器70の機器温度tが60度よりも高いか否かが確認される。機器温度tが60以下である場合場合には、ステップ11〜ステップ12及び表1に則って、冷却構造10の各部について動作制御がなされる。具体的には、機器温度tが60度以下である場合には、電装機器70を冷却する必要がない。そこで、ステップ10において気流調整手段48をなす弁が全閉状態とされ、第二通気系統42における通気が停止された状態とされる。また、ステップ12において、通常の空調運転、すなわち空調運転の運転設定にあわせて送風22の風速設定、エバポレータ24のオンオフ、及び吹出切替手段56の切り替えがなされる。
【0039】
また、ステップ10において電装機器70の機器温度tが60度よりも高温である場合には、電装機器70を冷却する必要がある。そこで、ステップ13において、気流調整手段48の開度が50%とされ、第一吹出系統52及び第二吹出系統54の双方から送風機22及びエバポレータ24に給気可能な状態とされる。また、ステップ14においては、第二吹出系統54に冷却用空気を通過させるための送風量を確保すべく、送風機22の出力が、空調運転を実施するために必要な出力よりも1段階(1速)分高く設定される。さらに、ステップ15においては、エバポレータ24を駆動させるためのコンプレッサのオンオフを空調運転を運転状況に応じて適宜切り替える制御がなされる。
【0040】
上述したようにして、ステップ15においてエバポレータ24の駆動制御がなされると、制御フローがステップ16に進められ、電装機器70の機器温度tが80度よりも高いか否かが確認される。ここで、機器温度tが80度以下である場合は、制御フローがステップ1に戻される。一方、機器温度tが80度よりも高い場合には、第二吹出系統54を通過してきた冷却用の空気が高温になっているものと想定される。そこで、この場合には、制御フローがステップ17に進められ、エバポレータ24を駆動させるためのコンプレッサが仮にオフ状態であっても、これを強制的にオン状態に切り替える制御がなされる。その後、制御フローがステップ1に戻される。
【0041】
上述したように、本実施形態の冷却構造10において採用されている第一通気系統40は、従来公知の空調装置が備える空気通路と同様に、主として空調運転のための空気が流れる系統である。本実施形態の冷却構造10は、第一通気系統40に対して、主として電装機器70を冷却するための空気が通過する第二通気系統42を合流させることにより構成された極めてシンプルな構造とされている。また、送風機22を作動させることにより、電装機器70の冷却用に設けられた第二通気系統42において気流を発生させ、電装機器70を十分冷却することができる。従って、冷却構造10は、装置構成が極めてシンプルでありつつ、電装機器70を十分冷却することが可能である。
【0042】
また、冷却構造10では、エバポレータ24よりも上流側に設けられた合流部46において第二通気系統42を合流させている。そのため、電装機器70の空冷により温度上昇した空気が、車室内の温度を変動させる可能性がある程度に昇温している場合に、エバポレータ24において温度調整した上で車室内に排出させることが可能である。
【0043】
また、冷却構造10においては、主として空調用の空気が流れる第一通気系統40に加え、主として電装機器70の空冷用の空気が流れる第二通気系統42が設けられている。これにより、電装機器70の空冷のために必要最小限の空気を第二通気系統42を通過させることで、十分な冷却効果を得ることが可能となる。従って、空調装置20が空調運転を行っていない状態(空調停止状態)において、送風機22の送風量を過度に大きくする必要がなく、その分だけエネルギー効率を改善することが可能である。また、電装機器70の空冷に要する送風量が最小限で済むため、空調停止状態において吹出口から排出される空気量を、乗員が気に留めない程度まで抑制することが可能である。
【0044】
また、冷却構造10では、合流部46に気流調整手段48を設け、この気流調整手段48を開閉することにより第二通気系統42から送風機22及びエバポレータ24側への通気状態を切り替えることが可能とされている。従って、電装機器70の冷却が不要な場合に、気流調整手段48を閉状態とし、第二通気系統42における空気の流れを遮断することにより、電装機器70による通気抵抗の上昇、及びエネルギー効率の低下を防止することができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、気流調整手段48を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、気流調整手段48を設けない構成としても良い。また、気流調整手段48として、全閉状態、全開状態、及び半開状態の三段階に開度調整可能な弁を採用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば無段階に開度調整可能な弁、あるいはシャッター等を気流調整手段48として使用することも可能である。
【0046】
また、本実施形態においては、気流調整手段48を第一通気系統40と第二通気系統42との合流部46に設置した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、合流部46よりも第二通気系統42の上流側に設けた構成としても良い。かかる構成とした場合についても、上述したものと同様の作用効果が得られる。
【0047】
本実施形態においては、電装機器70として回生ユニットを採用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、電装機器70は、通電により発熱を伴うものであればいかなるものであっても良く、例えばインバータ72単体、あるいはキャパシタ74単体であっても良く、リチウムイオン二次電池、あるいはニッケル水素二次電池等の二次電池等、いかなる電装機器であっても良い。
【0048】
また、冷却構造10においては、整流板50,86を設け、合流部46において合流した空気、あるいは第二吸入口32bから吸入した空気を整流可能な構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、整流板50,86のいずれか一方又は双方を設けない構成としても良い。また、整流板50,80には、メッシュ(網)、パンチングメタル、あるいは板体を切り起こしたもの等、適宜のものを採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、通電により発熱する電装機器を搭載した車両において利用可能であり、特に大電流が流れると想定される電気自動車、ハイブリッド型の自動車、燃料電池自動車等の車両において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 車両用電装機器冷却構造(冷却構造)
20 空調装置
22 送風機
24 エバポレータ
30 空気流路
32 吸入口
32a 第一吸入口
32b 第二吸入口
34 吹出口
40 第一通気系統
42 第二通気系統
46 合流部
48 気流調整手段
70 電装機器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、通電により発熱する電装機器の冷却構造であって、
前記車両に搭載された空調装置が、前記車両に形成された空気流路内に送風機、及びエバポレータを配置したものであり、
前記空気流路が、空気を吸入可能な第一吸入口、及び第二吸入口と、吸入した空気を車室内に排出する吹出口と、前記第一吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る第一通気系統と、前記第二吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る第二通気系統とを備えたものであり、
前記第一通気系統と前記第二通気系統とが、前記送風機及び前記エバポレータよりも気流の流れ方向上流側の合流部において合流しており、
前記合流部よりも前記第二通気系統の上流側に前記電装機器が配置されていることを特徴とする車両用電装機器冷却構造。
【請求項1】
車両に搭載され、通電により発熱する電装機器の冷却構造であって、
前記車両に搭載された空調装置が、前記車両に形成された空気流路内に送風機、及びエバポレータを配置したものであり、
前記空気流路が、空気を吸入可能な第一吸入口、及び第二吸入口と、吸入した空気を車室内に排出する吹出口と、前記第一吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る第一通気系統と、前記第二吸入口から送風機及びエバポレータを通過して吹出口に至る第二通気系統とを備えたものであり、
前記第一通気系統と前記第二通気系統とが、前記送風機及び前記エバポレータよりも気流の流れ方向上流側の合流部において合流しており、
前記合流部よりも前記第二通気系統の上流側に前記電装機器が配置されていることを特徴とする車両用電装機器冷却構造。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2013−112006(P2013−112006A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257022(P2011−257022)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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