説明

車両用非接触温度センサシステム、および車両用空調装置

【課題】IRセンサモジュール84が車両に搭載されていても、非接触温度センサ160A、160Bの温度バラツキを抑える。
【解決手段】 アコンECU8は、IRセンサモジュール84の非接触温度センサ160A、160Bにおいてそれぞれの共通領域検出センサ素子161a、161fの検出温度の温度差ΔTを算出し(ステップS101)、温度差ΔTに基づいて非接触温度センサ160A、160Bの間の温度バラツキを抑えるように非接触温度センサ160A、160Bの赤外線受光素子161a、161b、161c161d、161e、161fの各検出温度をそれぞれ補正する(ステップS104、S105)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用非接触温度センサシステム、およびこれを用いた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の被検温領域の表面温度を非接触でそれぞれ検出する複数のセンサ素子を有する1つの非接触温度センサを基板上に配置してなるセンサモジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、1つの非接触温度センサ(センサモジュール)毎に温度校正が実施されており、1つの非接触温度センサを構成する複数のセンサ素子の間の温度バラツキが1℃(絶対値精度±1℃)以内になるように設定されている。
【特許文献1】特開2001−349786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述のセンサモジュールを車両用空調装置に用いる際に、1つのセンサモジュールの被検温範囲を広くすることが望まれている。すなわち、非接触温度センサの検出範囲の広視野角化が求められている。
【0005】
これに対し、センサモジュールの広視野角化のために、1つのセンサモジュールにおいて2つの非接触温度センサを基板上に配置すると、非接触温度センサ毎に温度校正が実施されていても、一方の非接触温度センサのセンサ素子の検出温度と、他方の非接触温度センサのセンサ素子の検出温度との間の温度バラツキが2度以上に拡大してしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、車両搭載状態であっても、センサ素子間の検出温度のバラツキを補正可能に構成される車両用非接触温度センサシステム、および車両用空調装置提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内の複数の被検温領域の表面温度を非接触でそれぞれ検出する複数個のセンサ素子(161a〜161f)を有する非接触温度センサを複数個備え、
前記複数個の非接触温度センサは、それぞれの共通の被検温領域(E3)の表面温度を非接触で検出する共通領域検出センサ素子(161a、161f)を1つの前記センサ素子として備えていることを特徴とする。
【0008】
このように、複数個の非接触温度センサが1つの共通領域検出センサ素子(161a、161f)を備えることにより、非接触温度センサ毎の共通領域検出センサ素子の検出温度を用いて非接触温度センサの間の温度バラツキを求めることができる。したがって、車両に搭載した状態であっても、非接触温度センサの間のセンサ素子の検出温度のバラツキを抑えることが可能になる。
【0009】
具体的には、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の車両用非接触温度センサシステムにおいて、前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度を読み込む読み込み手段(S100)と、
前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度に基づいて、前記複数の非接触温度センサにおいてそれぞれの前記共通領域検出センサ素子の検出温度の温度差を算出する温度差算出手段(S101)と、
前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるように前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度をそれぞれ補正する検出温度補正手段(S105)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
具体的には、請求項3に記載の発明では、上記請求項1または2に記載の車両用非接触温度センサシステムにおいて、前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるための補正係数を前記非接触温度センサ毎に算出する係数算出手段(S104)を備え、
前記検出温度補正手段は、前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度に対して、前記非接触温度センサ毎の前記補正係数を乗算することにより、前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度をそれぞれ補正することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明では、上記請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用非接触温度センサシステムにおいて、前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っているか否かについて判定する第1の温度バラツキ判定手段(S103)を備えており、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っていると前記第1の温度バラツキ判定手段が判定したときには、前記検出温度補正手段は、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるように前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度をそれぞれ補正することを特徴とする。
【0012】
これにより、検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っているときに、複数の非接触温度センサの複数のセンサ素子の検出温度は、外乱の影響やセンサの故障等が無い信頼性が高い温度情報であると判定することができる。よって、信頼性の高い複数個の検出温度をそれぞれ補正するので、より精度の高い検出温度を求めることができる。
【0013】
具体的には、請求項5に記載の発明では、上記請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用非接触温度センサシステムにおいて、前記複数個のセンサ素子は、前記複数の被検温領域から入射される赤外線に基づいて、前記複数の被検温領域の表面温度を検出するものであり、
前記複数個の非接触温度センサは、前記複数個のセンサ素子を収納し、かつ前記複数の被検温領域から入射される赤外線を通過させる光入射口(164)を有するケーシング(164)をそれぞれ備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明では、車室内を空調する室内空調ユニット(5、6)と、
前記室内空調ユニットを制御する制御手段(S121〜S129)と、を備える車両用空調装置であって、
前記車室内の複数の被検温領域の表面温度を非接触でそれぞれ検出する複数個のセンサ素子(161a〜161f)を有する非接触温度センサを複数個備え、
前記複数個の非接触温度センサは、それぞれの共通の被検温領域(E3)の表面温度を非接触で検出する共通領域検出センサ素子(161a、161f)を1つの前記センサ素子として備えており、
前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度を読み込む読み込み手段(S100)と、
前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度に基づいて、前記複数の非接触温度センサにおいてそれぞれの前記共通領域検出センサ素子の検出温度の温度差(ΔT)を算出する温度差算出手段(S101)と、
前記温度差算出手段により算出された温度差と前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度とに基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるように前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度をそれぞれ補正する検出温度補正手段(S105)と、を備え、
前記制御手段は、前記検出温度補正手段により補正されたそれぞれの補正後検出温度を用いて、前記室内空調ユニットを制御することを特徴とする車両用空調装置である。
【0015】
このように、複数個の非接触温度センサが1つの共通領域検出センサ素子(161a、161f)を備えることにより、非接触温度センサ毎の共通領域検出センサ素子の検出温度を用いて非接触温度センサの間の温度バラツキを求めることができる。したがって、車両に搭載した状態であっても、非接触温度センサの間のセンサ素子の検出温度のバラツキを抑えることが可能になる。
【0016】
具体的には、請求項7に記載の発明では、上記請求項6に記載の車両用空調装置において、前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるための補正係数を前記非接触温度センサ毎に算出する係数算出手段(S104)を備え、
前記検出温度補正手段は、前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度に対して前記非接触温度センサ毎の前記補正係数を乗算することにより、前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度をそれぞれ補正することを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明では、上記請求項6または7に記載の車両用空調装置において、前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っているか否かについて判定する第1の温度バラツキ判定手段(S103)を備えており、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っていると前記第1の温度バラツキ判定手段が判定したときには、前記検出温度補正手段は、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるように前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度をそれぞれ補正して補正後検出温度を求めることを特徴とする。
【0018】
これにより、検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っているときに、複数の非接触温度センサの複数のセンサ素子の検出温度は、外乱の影響やセンサの故障等が無い信頼性が高い温度情報であると判定できる。よって、信頼性の高い複数個の検出温度をそれぞれ補正するので、より精度の高い検出温度を求めることができる。
【0019】
請求項9に記載の発明では、上記請求項8に記載の車両用空調装置において、前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第1の温度範囲よりも狭い第2の温度範囲内に入っているか否かについて判定する第2の温度バラツキ判定手段(S102)を備えており、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第2の温度範囲内に入っていると前記第2の温度バラツキ判定手段が判定したときには、前記制御手段は、前記それぞれの補正後検出温度に代えて、前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度を用いて、前記室内空調ユニットを制御する特徴とする。
【0020】
このように、複数の非接触温度センサの間において検出温度のバラツキが第2の温度範囲内に入っていると前記第2の温度バラツキ判定手段が判定したときには、複数の非接触温度センサの複数のセンサ素子の検出温度は、外乱の影響やセンサの故障等が無い信頼性がより一層高い温度情報であると判定できる。
【0021】
この場合、制御手段が室内空調ユニットを制御する際に、前記それぞれの補正後検出温度に代えて、読み込み手段により読み込まれた各検出温度を用いることもできる。
【0022】
具体的には、請求項10に記載の発明では、上記請求項9に記載の車両用空調装置において、前記読み込み手段は、前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度を繰り返し読み込むものであり、
前記読み込み手段が各検出温度を読み込む毎に、前記温度差算出手段は、前記それぞれの共通領域検出センサ素子の検出温度の温度差(ΔT)を算出するものであり、
前記温度差算出手段が前記温度差を算出する毎に、前記第2の温度バラツキ判定手段(S102)が前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第2の温度範囲内に入っているか否かについて判定するものであり、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第2の温度範囲から逸脱していると前記第2の温度バラツキ判定手段が判定する毎に前記第1の温度バラツキ判定手段が、前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っているか否かについて判定するものであり、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第1の温度範囲内に入っていると前記第1の温度バラツキ判定手段が判定する毎に、前記検出温度補正手段は、前記それぞれの補正後検出温度を算出するものであり、
前記検出温度補正手段が前記それぞれの補正後検出温度を算出する毎に、前記それぞれの補正後検出温度をそれぞれ室内温度情報として設定する第1の設定手段(S106)と、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第2の温度範囲内に入っていると前記第2の温度バラツキ判定手段が判定する毎に、
前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度をそれぞれ室内温度情報として設定する第2の設定手段(S107)と、
前記制御手段は、前記第1、第2の設定手段のうち一方で設定されたそれぞれの室内温度情報を用いて、前記室内空調ユニットを繰り返し制御するものであることを特徴とする。
【0023】
請求項11に記載の発明では、上記請求項10に記載の車両用空調装置において、前記温度差算出手段により複数回算出されたそれぞれの温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキが前記第1の温度範囲内を一時的に逸脱しているか否かを判定する一時的バラツキ判定手段(S108)を備えており、
前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキは前記第1の温度範囲内を一時的に逸脱していると前記一時的バラツキ判定手段が判定したときには、 今回前記制御手段は、前回に前記室内空調ユニットの制御で用いた室内温度情報を用いて、前記室内空調ユニットを制御することを特徴とする。
【0024】
これにより、複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキが一時的に逸脱していたときには、前回の室内空調ユニットの制御で用いた室内温度情報を用いて、室内空調ユニットを制御するので、室内空調ユニットにより車室内の空調状態が異常に制御されることを未然に防ぐことができる。
【0025】
請求項12に記載の発明では、上記請求項6ないし11のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、前記室内空調ユニットは、前記車室内の複数の空調ゾーンをそれぞれ独立に空調するものであり、
前記複数個の非接触温度センサの複数個のセンサ素子のうち前記それぞれの共通領域検出センサ素子(161a、161f)を除いた他の各センサ素子は、互いに異なる前記空調ゾーンの被検温領域の表面温度を非接触でそれぞれ検出するものであり、
前記制御手段は、前記空調ゾーン毎に対応した前記被検温領域の補正後検出温度を用いて前記複数の空調ゾーンをそれぞれ独立に空調するように前記室内空調ユニットを制御することを特徴とする。
【0026】
請求項13に記載の発明では、上記請求項6ないし12のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、前記複数個のセンサ素子は、前記複数の被検温領域から入射される赤外線に基づいて、前記複数の被検温領域の表面温度を検出するものであり、
前記複数個の非接触温度センサは、前記複数個のセンサ素子を収納し、かつ前記複数の被検温領域から入射される赤外線を通過させる光入射口(164)を有するケーシング(164)をそれぞれ備えていることを特徴とする。
【0027】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本実施形態における車両用空調装置の室内空調ユニット部の吹出口配置状態を示す平面概要図、図2は室内空調ユニット部および制御ブロックを含む全体構成図である。
【0029】
本実施形態は、車室1内の前後左右の計4つの空調ゾーン1a、1b、1c、1dをそれぞれ独立して空調制御する。図1、図2は右ハンドル車の場合を示しており、上記空調ゾーン1a〜1dをより具体的に説明すると、空調ゾーン1aは、前席空調ゾーンのうち右サイドウインドウ側、すなわち、運転席側に位置する。空調ゾーン1bは、前席空調ゾーンのうち左サイドウインドウ側、すなわち、助手席側に位置する。
【0030】
そして、空調ゾーン1cは、後席空調ゾーンのうち右側窓(サイドウインドウ)寄りに位置し、空調ゾーン1dは、後席空調ゾーンのうち左側窓(サイドウインドウ)寄りに位置する。以下では、前席側をFr、後席側をRr、運転席側をDr、助手席側をPaと表記し、これらを組み合わせることにより各空調ゾーンを表す。すなわち、空調ゾーン1a、1b、1c、1dおよびその空調ゾーンに着座する乗員は順に、FrDr、FrPa、Rrdr、RrPaと表記される。
【0031】
車両用空調装置の室内空調ユニット部はFr用空調ユニット5とRr用空調ユニット6とから構成されている。Fr用空調ユニット5は、Fr側左右の空調ゾーン1a、1bのそれぞれの空調状態(例えば、空気温度)を独立して調整するためのものであり、Rr用空調ユニット6は、Rr側左右の空調ゾーン1c、1dのそれぞれの空調状態を独立して調整するためのものである。
【0032】
Fr用空調ユニット5は、車室1内の最前部の計器盤7の内側に配置されており、Rr用空調ユニット6は、車室1内の最後方に配置されている。Fr用空調ユニット5は、車室1内のFr側に空気を送風するためのダクト50を備えている。このダクト50の最上流部には、車室1内から内気を導入するための内気導入口50aおよび車室外から外気を導入するための外気導入口50bが設けられている。
【0033】
さらに、ダクト50には、外気導入口50bおよび内気導入口50aを選択的に開閉する内外気切替ドア51が設けられており、この内外気切替ドア51には、駆動手段としてのサーボモータ510aが連結されている。
【0034】
また、ダクト50内のうち外気導入口50bおよび内気導入口50aの空気下流側には、車室1内に向けて吹き出される空気流を発生させる遠心式送風機52が設けられている。遠心式送風機52は、遠心式羽根車およびこの羽根車を回転させるブロワモータ52aにより構成されている。なお、図2において、この羽根車は図の簡略化のため軸流式羽根車を示しているが、実際は遠心式の羽根車が使用されている。
【0035】
さらに、ダクト50内にて遠心式送風機52の空気下流側には、空気を冷却する空気冷却手段としてのエバポレータ53が設けられており、さらに、このエバポレータ53の空気下流側には、空気加熱手段としてのヒータコア54が設けられている。
【0036】
そして、ダクト50内のうちエバポレータ53の空気下流側には仕切り板57が設けられており、この仕切り板57により、ダクト50内の空気通路を車両左右両側の2つの通路、すなわち、FrDr側通路50cとFrPa側通路50dとに仕切っている。
【0037】
FrDr側通路50cのうちヒータコア54の側方には、バイパス通路51aが形成されており、バイパス通路51aは、ヒータコア54に対して、エバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0038】
同様に、FrPa側通路50dのうちヒータコア54の側方には、バイパス通路51bが形成されており、バイパス通路51bは、ヒータコア54に対して、エバポレータ53により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0039】
FrDr側通路50cおよびFrPa側通路50dにおいてヒータコア54の空気上流側に、それぞれ、エアミックスドア55a、55bが独立に操作可能に設けられている。FrDr側のエアミックスドア55aは、その開度により、FrDr側通路50cを流通する冷風のうちヒータコア54を通る量(温風量)とバイパス通路51aを通る量(冷風量)との比を調整して、FrDr側の空調ゾーン1aへの吹出空気温度を調整する。
【0040】
同様に、FrPa側のエアミックスドア55bは、その開度により、FrPa側通路50dを流通する冷風のうちヒータコア54を通る量(温風量)とバイパス通路51bを通る量(冷風量)との比を調整して、FrPa側の空調ゾーン1bへの吹出空気温度を調整する。
【0041】
なお、Fr側左右のエアミックスドア55a、55bには、駆動手段としてのサーボモータ550a、550bがそれぞれ連結されており、エアミックスドア55a、55bの開度は、サーボモータ550a、550bによって、それぞれ独立に調整される。
【0042】
エバポレータ53は、図示しないコンプレッサ、凝縮器、受液器、減圧器とともに、周知の冷凍サイクルを構成している低圧側の冷却用熱交換器である。このエバポレータ53は、ダクト50内を流れる空気から低圧側冷媒が蒸発潜熱を吸熱して蒸発することにより、ダクト50内の空気を冷却する。なお、冷凍サイクルのコンプレッサは、車両エンジンに電磁クラッチ(図示しない)を介して連結され、電磁クラッチを断続制御することによって駆動停止制御される。
【0043】
ヒータコア54は、車両エンジンからの温水(エンジン冷却水)を熱源とする加熱用熱交換器であり、このヒータコア54は蒸発器53通過後の空気を加熱する。
【0044】
FrDr側通路50cおよびFrPa側通路50dのうちヒータコア54の空気下流側(最下流部)には、FrDr側フェイス吹出口2a、20aおよびFrPa側フェイス吹出口2b、20bが設けられている。
【0045】
FrDr側フェイス吹出口2a、20aは、FrDr側通路50cから運転席に着座するFrDr乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。また、FrPa側フェイス吹出口2b、20bは、FrPa側通路50dから助手席に着座するFrPa乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0046】
FrDr側通路50cおよびFrPa側通路50dのうちFrDr側フェイス吹出口2a、20aおよびFrPa側フェイス吹出口2b、20bの各空気上流部には、それぞれ、FrDr側フェイス吹出口2a、20aを開閉する吹出口切替ドア56aおよびFrPa側フェイス吹出口2b、20bを開閉する吹出口切替ドア56bが設けられている。これら吹出口切替ドア56aおよび56bは、それぞれ駆動手段としてのFrDr側のサーボモータ560a、およびFrPa側のサーボモータ560bによって、開閉駆動される。
【0047】
なお、FrDr側フェイス吹出口2a、20aとFrPa側フェイス吹出口2b、20bは、具体的には図1に示すようにそれぞれ、計器盤7の左右方向の中央部寄り部位に位置するセンターフェイス吹出口20a、20bと計器盤7の左右方向の両端部付近に位置するサイドフェイス吹出口2a、2bとに分けて配置される。
【0048】
Rr用空調ユニット6は、車室1内に送風するためのダクト60を備えている。このダクト60内の最上流部には、車室1内から内気導入口60aを通して内気のみを導入する内気導入ダクト60bが接続されている。
【0049】
内気導入ダクト60bの空気下流側には、車室1内に向けて吹き出される空気流を発生させる遠心式送風機62が設けられている。遠心式送風機62は、遠心式羽根車およびこの羽根車を回転させるブロワモータ62aにより構成されている。なお、この羽根車も図2において、上記と同様、図の簡略化のため軸流式羽根車を示しているが、実際は遠心式の羽根車が使用されている。
【0050】
さらに、ダクト60内において遠心式送風機62の空気下流側には、空気を冷却する空気冷却手段としてのエバポレータ63が設けられており、このエバポレータ63の空気下流側には、空気を加熱する空気加熱手段としてのヒータコア64が設けられている。
【0051】
そして、ダクト60内のうちエバポレータ63の下流部分には仕切り板67が設けられており、この仕切り板67により、ダクト60内の空気通路を車両左右両側の2つの通路、すなわち、RrDr側通路60cとRrPa側通路60dとに仕切っている。
【0052】
RrDr側通路60cのうちヒータコア64の側方には、バイパス通路61aが形成されており、バイパス通路61aは、ヒータコア64に対してエバポレータ63により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0053】
また、RrPa側通路60dのうちヒータコア64の側方には、バイパス通路61bが形成されており、バイパス通路61bは、ヒータコア64に対してエバポレータ63により冷却された冷風をバイパスさせる。
【0054】
RrDr側通路60cおよびRrPa側通路60dにおいてヒータコア64の空気上流側には、それぞれエアミックスドア65a、65bが独立に操作可能に設けられている。これらRrDr側およびRrPa側のエアミックスドア65a、65bには、駆動手段としてのサーボモータ650a、650bがそれぞれ連結されており、RrDr側およびRrPa側のエアミックスドア65a、65bの開度は、サーボモータ650a、650bによって、それぞれ独立に調整される。
【0055】
そして、RrDr側およびRrPa側のエアミックスドア65a、65bは、それぞれ、その開度により、RrDr側通路60cおよびRrPa側通路60dを流通する冷風のうちヒータコア64を通る量(温風量)とバイパス通路61aおよび61bとを通る量(冷風量)との比を調整して、RrDr側およびRrPa側の空調ゾーン1c、1dへの吹出空気温度を調整する。
【0056】
エバポレータ63は、上述した周知の冷凍サイクルにおいてFr側のエバポレータ53に対して並列的に配管結合される冷却用熱交換器である。また、ヒータコア64は、車両エンジンからの温水(エンジン冷却水)を熱源とする加熱用熱交換器であり、ヒータコア64は、温水回路においてFr側のヒータコア54に対し並列的に接続され、エバポレータ63通過後の空気を加熱する。
【0057】
ダクト60内のRrDr側通路60cのうちヒータコア64の空気下流側(最下流部)には、RdDr側フェイス吹出口2cが設けられている。RrDr側フェイス吹出口2cは、RrDr側通路60cから後席の左側(すなわち、RrDr側座席)に着座するRrDr乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0058】
また、ダクト60内のRrPa側通路60dのうちヒータコア64の空気下流側(最下流部)には、RrPa側フェイス吹出口2dが設けられている。RrPa側フェイス吹出口2dは、RrPa側通路60dから後席の左側(すなわち、RrPa側座席)に着座するRrPa乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0059】
ここで、RrDr側およびRrPa側の各フェイス吹出口2c、2dの空気上流部には、それぞれ吹出口切替ドア66a、66bが設けられ、各フェイス吹出口2c、2dを開閉するようになっている。この後席左右の吹出口切替ドア66a、66bは、駆動手段としてのサーボモータ660a、660bによって開閉駆動される。
【0060】
エアコンECU8の入力側には、外気温度センサ81、冷却水温度センサ82、日射センサ83、IRセンサモジュール84、および蒸発器温度センサ86、87が接続されている。
【0061】
外気温度センサ81は、車室外温度を検出しその検出温度に応じた外気温度信号TamをエアコンECU8に出力する。冷却水温度センサ82は、エンジンの冷却水(すなわち温水)の温度を検出しその検出温度に応じた冷却水温度信号TwをエアコンECU8に出力する。
【0062】
日射センサ83は、フロントウインドウの内側にて車両左右方向の略中央部分に配置された周知の2素子(2D)タイプの日射センサであり、車室内の運転席側空調ゾーン1aに入射される日射量と助手席側空調ゾーン1bに入射される日射量とを検出し、それら検出した各日射量に応じた日射量信号TsDrおよびTsPaをエアコンECU8に出力する。
【0063】
蒸発器温度センサ86は、エバポレータ53の吹出空気温度を検出しその検出温度に応じた蒸発器吹出温度信号TeFrをエアコンECU8に出力する。蒸発器温度センサ87は、エバポレータ63の吹出空気温度を検出しその検出温度に応じた蒸発器吹出温度信号TeRrをエアコンECU8に出力する。
【0064】
また、エアコンECU8には、空調ゾーン1a、1b、1c、1dのそれぞれの希望温度TsetFrDr、TsetFrPa、TsetRrDr、TsetRrPaが乗員により設定される温度設定スイッチ9、10、11、12が接続されている。
【0065】
なお、温度設定スイッチ9、10、11、12のそれぞれ近傍には、希望温度等の設定内容を表示する希望温度表示手段としてのディスプレイ9a、10a、11a、12aが備えられている。
【0066】
IRセンサモジュール84は、後述するように各空調ゾーン1a、1b、1c、1dのそれぞれの被検温領域の表面温度を検出する。このIRセンサモジュール84は、車室内天井付近で前方側に配置されている。IRセンサモジュール84の具体的な構成については後述する。
【0067】
エアコンECU8は、アナログ/デジタル変換器、マイクロコンピュータ等を有して構成される周知のものであり、日射センサ83、各温度センサ81、82、86、87、IRセンサモジュール84、および温度設定スイッチ9、10、11、12からそれぞれ出力される出力信号は、アナログ/デジタル変換器によりアナログ/デジタル変換されてマイクロコンピュータにそれぞれ入力されるように構成されている。
【0068】
マイクロコンピュータは、ROM、RAMなどのメモリ、およびCPU(中央演算装置)等から構成される周知のもので、イグニッションスイッチがオンされたときに、図示しないバッテリから電力供給される。
【0069】
次に、IRセンサモジュール84の構成について図3、図4を参照して説明する。図3にIRセンサモジュール84の上面図を示し、図4に図3のA−A断面図を示す。
【0070】
IRセンサモジュール84は、回路基板120、ヒートシンク130、コネクタ140、反射鏡150、および非接触型温度センサ160A、160Bから構成される。
【0071】
非接触型温度センサ160A、160Bは、回路基板120の表面上に並べられて搭載されている。非接触型温度センサ160Aは、車室内の車幅方向右側の検温対象物の表面温度を検出するのに用いられ、非接触型温度センサ160Bは、車室内の車幅方向左側の検温対象物の表面温度を検出するのに用いられる。非接触型温度センサ160Aは、缶部材162、および赤外線受光素子161a、161b、161cを備えている。
【0072】
缶部材162は、鉄等の金属材料からなりケーシングを構成しており、缶部材162の上段部には光入射口164が設けられており、光入射口164には集光レンズ163が填め込まれている。
【0073】
缶部材162は、集光レンズ163以外から赤外線受光素子161a、161b、161cに赤外線が入射されるのを遮蔽する。赤外線受光素子161a、161b、161cは、缶部材162の底面162x(ステム)に配置されて、それぞれ熱電対を有している。
【0074】
各熱電対は、ゼーベック効果により、互いに接合された温接点および冷接点の温度差に応じた起電力をそれぞれ出力するもので、温接点は集光レンズ163を介して入射された赤外線により発熱するようになっており、冷接点には集光レンズ163からの赤外線が入射されないようになっている。これにより、熱電対としては、検温対象物の表面温度と非接触型温度センサ160A自体の自己温度との温度差を検出信号として出力する。
【0075】
缶部材162内には、缶部材162の底面162x(ステム)の温度を非接触型温度センサ160A自体の自己温度(基準温度)として検出するサーミスタが配置されている。サーミスタは缶部材162の底面162xに配置されており、缶部材162と熱電対の冷接点とは温度的に等価になるように構成されている。これにより、サーミスタは、非接触型温度センサ160A自体の自己温度を検出信号として出力する。
【0076】
サーミスタの検出信号は、演算回路(図示省略)により熱電対の検出信号と加算されて、その加算信号が検温対象物の表面温度の検出温度として出力されることになる。
【0077】
非接触型温度センサ160Bは、非接触型温度センサ160Aと同様の構成で、非接触型温度センサ160Bには、赤外線受光素子161a、161b、161cに代えて赤外線受光素子161d、161e、161fが設けられており、非接触型温度センサ160Bの構成の説明は省略する。なお、赤外線受光素子161a、161b、161cおよび赤外線受光素子161d、161e、161fの被検温領域については後述する。
【0078】
ヒートシンク130は、小判型の扁平形状に形成されており、ヒートシンク130には、貫通孔部131A、131Bが設けられている。貫通孔部131A、131Bは、回路基板120の面方向に対して垂直方向に貫通しており、貫通孔部131A、131Bは、非接触型温度センサ160A、160Bをそれぞれ収納している。
【0079】
ヒートシンク130は、アルミニウム等の金属材料からなり、缶部材162の温度において雰囲気温度の影響を緩和するために設けられている。具体的には、ヒートシンク130自体の熱容量により、雰囲気温度が急激な温度変化しても、その温度変化の影響で缶部材162の温度が変化することを緩和する。
【0080】
これは、上述の如く、非接触型温度センサ160A自体の自己温度(基準温度)として検出するためにサーミスタ165が用いられているものの、サーミスタ165は、缶部材162の温度が変化してもそのセンサ出力には遅延が生じる。このため、サーミスタ165の出力が不安定になる。これに対して、ヒートシンク130の熱容量を用いて、缶部材162の温度が急激に変化することを抑制して、サーミスタ165の出力を安定化する。
【0081】
コネクタ140は、回路基板120の裏面に配置されて、非接触型温度センサ160A、160Bのセンサ出力を外部基板に出力するために用いられる。
【0082】
反射鏡150は、アルミニウム等の金属材料からなり、ヒートシンク130と一体成形されており、反射鏡150は、ヒートシンク130の貫通孔部131A、131Bの間に配置されている。反射鏡150は、ヒートシンク130側から図4中上方(回路基板120の面方向に対して垂直方向)に突出するように形成されている。
【0083】
反射鏡150のうち非接触型温度センサ160A側には、反射面51が形成されており、反射面151は、図4に示すように、回路基板120の面方向から視ると、非接触型温度センサ160Aの一部を覆うように傾斜して配置されている。反射面151は、図3に示すように、図3中紙面手前側(回路基板120の面方向に対する垂直方向)から視ると、斜め左下側に傾斜して(すなわち、非接触型温度センサ160A、160Bの並ぶ方向に対して傾斜して)配置されている。
【0084】
ここで、反射面151は、集光レンズ163が向けられた第1の方向と異なる方向(第2の方向)の検温対象物から入射される赤外線を非接触型温度センサ160Aの集光レンズ163に向けて反射する。これにより、非接触型温度センサ160Aの集光レンズ163には第1、第2の方向の検温対象物からの赤外線を入射されることになる。
【0085】
反射鏡150のうち非接触型温度センサ160B側には、反射面52が形成されており、反射面52は、図4に示すように、回路基板120の面方向から視ると、非接触型温度センサ160Bの一部を覆うように傾斜して配置されている。反射面52は、図3に示すように、図3中紙面手前側(回路基板120の面方向に対する垂直方向)から視ると、斜め右下側に傾斜して(すなわち、非接触型温度センサ160A、160Bの並ぶ方向に対して傾斜して)配置されている。
【0086】
ここで、反射面52は、集光レンズ163が向けられた第1の方向と異なる方向(第2の方向)の検温対象物から入射される赤外線を非接触型温度センサ160Bの集光レンズ163に向けて反射する。これにより、非接触型温度センサ160Bの集光レンズ163には第1、第2の方向の検温対象物からの赤外線を入射されることになる。
【0087】
次に、赤外線受光素子161a、161b…161fの被検温領域について図1、図4を参照して説明する。
【0088】
赤外線受光素子161aには、空調ゾーン1aの被検温領域E1から出射される赤外線が反射鏡150の反射面51による反射されて入射される。これにより、赤外線受光素子161aが空調ゾーン1aの乗員の表面温度を非接触で検出することができる。赤外線受光素子161bには、空調ゾーン1cの被検温領域E2から出射される赤外線が入射される。これにより、赤外線受光素子161bが空調ゾーン1cの乗員の表面温度を非接触で検出することができる。
【0089】
赤外線受光素子161cには、空調ゾーン1c、1dの中間部位の被検温領域E3(図1参照)から出射される赤外線が入射される。これにより、赤外線受光素子161bが空調ゾーン1c、1dの中間部位の表面温度を非接触で検出することができる。
【0090】
赤外線受光素子161dには、空調ゾーン1bの被検温領域E5から出射される赤外線が反射鏡150の反射面52による反射されて入射される。これにより、赤外線受光素子161dが空調ゾーン1bの乗員の表面温度を非接触で検出することができる。
【0091】
赤外線受光素子161eには、空調ゾーン1dの被検温領域E4から出射される赤外線が入射される。これにより、赤外線受光素子161eが空調ゾーン1dの乗員の表面温度を非接触で検出することができる。
【0092】
赤外線受光素子161fには、空調ゾーン1c、1dの中間部位の被検温領域E3(図1参照)から出射される赤外線が入射される。これにより、赤外線受光素子161fが空調ゾーン1c、1dの中間部位の表面温度を非接触で検出することができる。このことにより、赤外線受光素子161c、161eは、共通の被検温領域E3の表面温度を非接触で検出する共通領域検出センサ素子を構成することになる。
【0093】
なお、以下、被検温領域E1、E2、E3、E4、E5、E6の検出温度を明確に区別するために検出温度Da11、Da12、Da13、Da23、Da24、Da25とする。
【0094】
次に、上記の構成において本実施形態の作動を説明する。
【0095】
エアコンECU8は、電源が投入されると、図5、図6に示すフローチャートにしたがってメモリに記憶された制御プログラム(コンピュータプログラム)の実行をスタートする。制御プログラムは、前席空調処理、後席空調処理、および温度補正処理を時分割で実行されるものである。なお、以下に、前席空調処理および後席空調処理を分けて図7を参照して説明する。図5は、非接触検温処理を示すフローチャートであり、図6は空調処理を示すフローチャートである。
【0096】
<非接触検温処理>
非接触検温処理について説明する。非接触検温処理の実行は繰り返される。
【0097】
まず、ステップS100において、非接触型温度センサ160A、160Bの検出温度Da11〜Da25を読み込む。次のステップS101において、非接触型温度センサ160A、160Bの間の温度差ΔTを算出する。
【0098】
具体的には、赤外線受光素子161aにより検出された被検温領域E3(共通領域検出)の検出温度Da13と、赤外線受光素子161fにより検出された被検温領域E3(共通領域検出)の検出温度Da23との温度差ΔT(=|Da13−Da23|)を求める。
【0099】
次のステップS102において、非接触型温度センサ160A、160Bの間の温度バラツキが第1の温度範囲(具体的には1℃)未満であるか否かを判定する。
【0100】
具体的には温度差ΔTが第1の温度範囲(具体的には1℃)以上であるときにはNOと判定する。このとき、次のステップS103において、非接触型温度センサ160A、160Bの間の温度バラツキが第2の温度範囲(具体的には2℃)未満であるか否かを判定する。
【0101】
具体的には温度差ΔTが第2の温度範囲(具体的には2℃)未満であるときにはステップS103でYESと判定する。このとき、ステップS104において、補正係数(α1、α2)を非接触型温度センサ毎に求める。補正係数(α1、α2)は、非接触型温度センサ160A、160Bの間の温度バラツキを抑制するための係数である。
【0102】
α1={(Da13+Da23)/2}/Da13・・・(数式1)
α2={(Da13+Da23)/2}/Da23・・・(数式2)
次のステップS105において、補正係数(α1、α2)を用いて検出温度Da11、Da12…Da25を補正する。
【0103】
具体的には、非接触型温度センサ160Aの検出温度Da11、Da12、Da13にそれぞれ補正係数α1を乗算して補正後検出温度(α1・Da11)、(α1・Da12)、(α1・Da13)を求める。さらに、非接触型温度センサ160Bの検出温度Da23、Da24、Da25にそれぞれに補正係数α2を乗算して補正後検出温度(α2・Da23)、(α2・Da24)、(α2・Da25)を求める。
【0104】
次に、ステップ106において、補正後検出温度(α1・Da11)、(α1・Da12)のそれぞれを内気温度TaFr、TcFrとして設定する。加えて、補正後検出温度(α2・Da24)、(α2・Da25)のそれぞれを内気温度TbRr、TdRrとして設定する。すなわち、補正後検出温度(α1・Da11)、(α1・Da12)、(α2・Da24)、(α2・Da25)をそれぞれ空調ゾーン毎の室内温度情報として設定することになる。
【0105】
その後、ステップS100およびステップS101を経て、ステップS102において、非接触型温度センサ160A、160Bの間の温度差ΔTが第1の温度範囲(具体的には1℃)未満であるときにはYESと判定する。
【0106】
このとき、ステップS107に進んで、今回のステップS100で読み込まれた検出温度Da11、Da12、Da24、Da25を内気温度TaFr、TcFr、TbRr、TdRrとして設定する。すなわち、補正されてない検出温度Da11、Da12、Da24、Da25をそれぞれ空調ゾーン毎の室内温度情報として設定することになる。
【0107】
その後、ステップS103で非接触型温度センサ160A、160Bの間の温度バラツキが第2の温度範囲(具体的には2℃)未満であと判定する限り、ステップS100、ステップS101、S102、S103〜S106(或いはステップS107)を繰り返す。
【0108】
その後、ステップS103で温度差ΔTが第2の温度範囲(具体的には2℃)以上であるときには温度バラツキが大きいとしてNOと判定する。その後、ステップS107において、複数個の温度差ΔTを用いて温度バラツキが大きいことは一時的であるのか否かを判定する。
【0109】
非接触検温処理の実行回数をnとし、n回目の温度差ΔTをΔT(n)とし、n+1回目の温度差ΔT(n+1)とし、n+2回目の温度差ΔT(n+2)とし、n+3回目の温度差ΔT(n+3)としてとき、ΔT(n+1)が第2の温度範囲(具体的には2℃)以上であっても、ΔT(n)および温度差ΔT(n+2)がそれぞれ第2の温度範囲未満であるときには(すなわち、2回以上連続して温度差が第2の温度範囲を逸脱しない)ときには、温度バラツキが大きいことは一時的である(すなわち、検出温度が外乱の影響を受けている)としてYESと判定する。
【0110】
このとき、ステップ109において、前回のステップS170、S160のいずれか一方で設定した前回の内気温度TaFr、TcFr、TbRr、TdRr(すなわち、前回に設定された室内温度情報)を今回の内気温度TaFr、TcFr、TbRr、TdRr(すなわち、今回の室内温度情報)として設定する。
【0111】
一方、ステップS107において、2回以上連続して温度差が第2の温度範囲を逸脱する場合には、非接触型温度センサ160A、160Bが故障しているとして、NOと判定する。
【0112】
例えば、温度差ΔT(n)、温度差ΔT(n+1)および温度差ΔT(n+2)のうち温度差ΔT(n)および温度差ΔT(n+1)が第2の温度範囲から逸脱する場合には、非接触型温度センサ160A、160Bが故障していると判定し、温度差ΔT(n+1)および温度差ΔT(n+2)が第2の温度範囲から逸脱する場合には、非接触型温度センサ160A、160Bが故障していると判定する。この場合、非接触型温度センサ160A、160Bにより求められた室内温度情報{Da11〜Da25、(α1・Da11)〜(α2・Da25)}を後述する前席空調処理および後席空調処理で用いない。加えて、非接触型温度センサ160A、160Bが故障している旨をメモリに記憶させる。
【0113】
<前席空調処理>
次に、前席空調処理について説明する。FrDr側およびFrPa側はそれぞれで演算処理されるので、以下では、主としてFrDr側の空調ゾーン1aについて説明するものとし、FrPa側の空調ゾーン1bに関しては説明を簡略化する。
【0114】
まず、ステップS121で、温度設定スイッチ9、10から設定温度TsetFrDr、TsetFrPaを読み込む。さらに、ステップS122で、外気温度センサ81から外気温度Tamを読み込み、日射センサ83から日射量TsDr、TsPaを読み込む。
【0115】
次にステップS123で、設定温度TsetFrDr、外気温Tam、内気温度TaFr、日射量TsDrを数式3に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOFrDrを算出する。内気温度TaFrは、上述した非接触検温処理により演算された空調ゾーン1aの検温領域E1の表面温度に対応する温度である。
【0116】
この目標吹出温度TAOFrDrは、車両環境条件(空調熱負荷条件)の変動にかかわらず、FrDr側空調ゾーン1aの温度を設定温度TsetFrDrに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1aの空調負荷に相当する量である。
【0117】
TAOFrDr=KsetFr×TsetFrDr−KrFr×TaFr
−KamFr×Tam−KsFr×TsDr
+CFr・・・(数式3)
なお、KsetFr、KrFr、KamFr、KsFrは、それぞれ各のゲイン、CFrは定数である。
【0118】
同様に、外気温Tam、設定温度TsetFrPa、内気温度TbFr、日射量TsPaを数式4に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOFrPaを算出する。内気温度TbFrは、上述した非接触検温処理により演算された空調ゾーン1bの検温領域E5の表面温度に対応する温度である。
【0119】
この目標吹出温度TAOFrPaは、FrPa側空調ゾーン1bの温度を設定温度TsetFrPaに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1bの空調負荷に相当する量である。
【0120】
TAOFrPa=KsetFr×TsetFrPa−KrFr×TbFr
−KamFr×Tam−KsFr×TsPa
+CFr・・・(数式4)
なお、数式3と同様、KsetFr、KrFr、KamFr、KsFrは、それぞれ各のゲイン、CFrは定数である。
【0121】
次に、ステップS124で、TAOFrDrとTAOFrPaとの平均値(=(TAOFrDr+TAOFrPa)/2、以下、Fr用目標平均値という)に基づいて、内外気モードを決定する。
【0122】
次に、ステップS125で、吹出口モードをFr側空調ゾーン1a、1bに対して個別に決定する。TAOFrDrが上昇するにつれて、空調ゾーン1aの吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードと順次自動的に切り替える。また、TAOFrPaが上昇するにつれて、空調ゾーン1bの吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フット(FOOT)モードと順次自動的に切り替えるようになっている。
【0123】
次に、ステップS126で、上述のFr用目標平均値(目標吹出温度TAOFrDrとTAOFrPaとの平均値)に基づいて、送風機モータ52aに印加するブロワ電圧を決定する。
【0124】
次に、ステップS127にて、エアミックスドア55a、55bの目標開度θ1、θ2を次の数式3、4によって算出する。
【0125】
θ1={(TAOFrDr−TeFr)/(Tw−TeFr)}×100(%)・・・(数式5)
θ2={(TAOFrPa−TeFr)/(Tw−TeFr)}×100(%)・・・(数式6)
なお、数式5、6において、TeFrは蒸発器温度センサ86の蒸発器吹出温度、Twは冷却水温度センサ82の冷却水(温水)温度である。
【0126】
以上のように決定した内外気切替モード、目標開度θ1、θ2、吹出口モード、ブロワ電圧のそれぞれを示す各制御をサーボモータ510a、550a、550b、560a、560bおよび送風機モータ52a等に出力して内外気切替ドア51、エアミックスドア55a、55b、吹出口切替ドア56a、56b、送風機52等の各作動を制御する(ステップS128)。
【0127】
その後、ステップS129で一定期間経過すると、ステップS121の処理に戻り、上述の空調制御処理(ステップS121〜S129)が繰り返される。このような演算、処理の繰り返しによってFr側の各空調ゾーン1a、1bの空調が自動的に制御されることになる。
【0128】
<後席空調処理>
次に、後席空調処理について説明する。後席の空調処理においても、上記前席空調処理と同様、図6に示す制御ルーチンにより空調処理される。
【0129】
まず、ステップS121で、温度設定スイッチ11、12から設定温度TsetRrDr、TsetRrPaを読み込む。さらに、ステップS122で、外気温度センサ81から外気温度Tamを読み込み、日射センサ83から日射量TsDr、TsPaを読み込む。
【0130】
次にステップS123で、設定温度TsetRrDr、外気温Tam、内気温度TcRrを数式7に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAORrDrを算出する。内気温度TcRrは、上述した非接触検温処理により演算された空調ゾーン1cの検温領域E2の表面温度に対応する温度である。
【0131】
この目標吹出温度TAORrDrは、車両環境条件(空調熱負荷条件)の変動にかかわらず、RrDr側空調ゾーン1cの温度を設定温度TsetRrDrに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1cの空調負荷に相当する量である。
【0132】
TAORrDr=KsetRr×TsetRrDr−KrRr×TcRr
−KamRr×Tam−KsRr×TsDr
+CRr・・・(数式7)
なお、KsetRr、KrRr、KamRr、KsRrは、それぞれ各のゲイン、CRrは定数である。
【0133】
同様に、外気温Tam、設定温度TsetRrPa、内気温度TdRr、日射量TsPaを数式8に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAORrPaを算出する。内気温度TdRrは、上述した非接触検温処理により演算された空調ゾーン1dの検温領域E4の表面温度に対応する温度である。
【0134】
この目標吹出温度TAORrPaは、RrPa側空調ゾーン1dの温度を設定温度TsetRrPaに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1dの空調負荷に相当する量である。
【0135】
TAORrPa=KsetRr×TsetRrPa−KrRr×TrRr
−KamRr×Tam−KsRr×TsPa
+CRr・・・(数式8)
なお、数式7と同様、KsetRr、KrRr、KamRr、KsRrは、それぞれ各のゲイン、CRrは定数である。
【0136】
次に、内外気モードの決定処理(ステップS124)を実行せずに(これは、後席空調では外気モードが設定されていないため)、次のステップS125にて、吹出口モードの決定処理を実行する。
【0137】
本例では、TAORrDrが上昇するにつれて、RrDr側の空調ゾーン1cの吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードと順次自動的に切り替える。また、TAORrPaが上昇するにつれて、RrPa側の空調ゾーン1dの吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードと順次自動的に切り替えるようになっている。
【0138】
次に、ステップS126で、目標吹出温度TAORrDrとTAORrPaとの平均値(=(TAORrDr+TAORrPa)/2、以下、Rr用目標平均値という)に基づいて、送風機モータ62aに印加するブロワ電圧を決定する。このブロワ電圧としては、送風機62の風量を制御するためのもので、TAORrDr、TAORrPaの平均値に基づいて、予めROM内に記憶された周知の制御マップにしたがって決定されるものである。
【0139】
次に、ステップS127で、エアミックスドア65a、65bの目標開度θ3、θ4を次の数式7、数式8によって算出する。
【0140】
θ3={(TAORrDr−TeRr)/(Tw−TeRr)}×100(%)・・・ (数式9)
θ4={(TAORrPa−TeRr)/(Tw−TeRr)}×100(%)・・・ (数式10)
なお、数式9、数式10において、TeRrは蒸発器温度センサ87の蒸発器吹出温度、Twは冷却水温度センサ82の冷却水(温水)温度である。
【0141】
以上のように決定した目標開度θ3、θ4、吹出口モード、ブロワ電圧のそれぞれを示す各制御を、サーボモータ650a、650b、660a、660bおよび送風機モータ62a等に出力して、エアミックスドア65a、65b、吹出口切替ドア66a、66b、送風機62の作動を制御する(ステップS128)。
【0142】
その後、ステップS129で一定期間経過すると、ステップS121の処理に戻り、上述の空調制御処理(ステップS121〜S129)が繰り返される。このような演算、処理の繰り返しによってRr側の各空調ゾーン1c、1dの空調が自動的に制御されることになる。
【0143】
以上説明した本実施形態によれば、エアコンECU8は、IRセンサモジュール84の非接触温度センサ160A、160Bにおいてそれぞれの共通領域検出センサ素子161a、161fの検出温度の温度差ΔTを算出し、温度差ΔTに基づいて非接触温度センサ160A、160Bの間の温度バラツキを抑えるように非接触温度センサ160A、160Bの赤外線受光素子161a、161b、161c161d、161e、161fの各検出温度をそれぞれ補正する。
【0144】
これにより、IRセンサモジュール84(非接触温度センサ160A、160B)が車両に搭載されていても、非接触温度センサ160A、160Bの温度バラツキを抑えることができる。
【0145】
本実施形態では、エアコンECU8は、非接触温度センサ160A、160Bの間の温度バラツキが2℃内に入っているときには、非接触温度センサ160A、160Bの赤外線受光素子161a、161b…161fの各検出温度は、外乱の影響やセンサの故障等が無い信頼性が高い温度情報であると判定できる。よって、信頼性の高い複数個の検出温度をそれぞれ補正するので、より精度の高い検出温度を求めることができる。
【0146】
これに伴い、その判定時の検出温度を補正した補正後検出温度(α1・Da11)、(α1・Da12)…、(α2・Da25)を用いてFr用空調ユニット5およびRr用空調ユニット6をそれぞれ制御するので、車室内を良好な空調状態にすることができる。
【0147】
一方、非接触温度センサ160A、160Bの間の温度バラツキが2℃内に入っていないときには、外乱の影響やセンサの故障等により信頼性が低い温度情報であると判定できる。よって、その判定時の赤外線受光素子161a、161b…161fの各検出温度の補正は実施しなく、その判定時の各検出温度を空調ユニット5、6の制御に用いない。このため、車室内の空調状態が異常になることを未然に防ぐことができる。
【0148】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、IRセンサモジュール84(非接触型温度センサ160A、160B)を車両用空調装置に適用した例について説明したが、これに代えて、車両内の機器ならば車両用空調装置以外の他の機器にIRセンサモジュール84を適用してもよい。
【0149】
上述の実施形態では、IRセンサモジュール84としては、2つの非接触温度センサ160A、160Bを有して構成されるものを用いた例について説明したが、これに限らず、IRセンサモジュール84としては、3つ以上の非接触温度センサを有するものを用いてもよい。
【0150】
以下、上記実施形態と特許請求項の範囲の構成との対応関係について説明すると、S121〜S129の制御処理が制御手段に相当し、赤外線受光素子161a〜161fがセンサ素子に相当し、赤外線受光素子161a、161fが共通領域検出センサ素子に相当し、ステップS100の制御処理が読み込む読み込み手段に相当し、S101の制御処理が「共通領域検出センサ素子の検出温度の温度差(ΔT)を算出する温度差算出手段」に相当し、ステップS105の制御処理が「複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるように前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度をそれぞれ補正する検出温度補正手段」に相当し、ステップS104の制御処理が「複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるための補正係数を前記非接触温度センサ毎に算出する係数算出手段」に相当し、ステップS103が「複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っているか否かについて判定する第1の温度バラツキ判定手段」に相当し、ステップS102の制御処理が「複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第1の温度範囲よりも狭い第2の温度範囲内に入っているか否かについて判定する第2の温度バラツキ判定手段」に相当し、ステップS107の制御処理が、「温度差算出手段により複数回算出されたそれぞれの温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキは前記第1の温度範囲内を一時的に逸脱しているか否かを判定する一時的バラツキ判定手段」に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の一実施形態における車両用空調装置の室内空調ユニット部の吹出口配置状態を示す平面概要図である。
【図2】上記実施形態における室内空調ユニット部および制御ブロックを含む全体構成図である。
【図3】上記実施形態におけるIRセンサモジュールの上面図である。
【図4】図3中のA−A断面図である。
【図5】上記実施形態のエアコンECUによる非接触検温処理を示すフローチャートである。
【図6】上記実施形態のエアコンECUによる空調制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0152】
1a…FrDr側空調ゾーン、1b…DrPa側空調ゾーン、
1c…RrDr側空調ゾーン、1d…RrPa側空調ゾーン、
8…エアコンECU、84…IRセンサモジュール、
160A、160B…非接触型温度センサ、
161a、161b、161c、161d…161f…赤外線受光素子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の複数の被検温領域の表面温度を非接触でそれぞれ検出する複数個のセンサ素子(161a〜161f)を有する非接触温度センサを複数個備え、
前記複数個の非接触温度センサは、それぞれの共通の被検温領域(E3)の表面温度を非接触で検出する共通領域検出センサ素子(161a、161f)を1つの前記センサ素子として備えていることを特徴とする車両用非接触温度センサシステム。
【請求項2】
前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度を読み込む読み込み手段(S100)と、
前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度に基づいて、前記複数の非接触温度センサにおいてそれぞれの前記共通領域検出センサ素子の検出温度の温度差を算出する温度差算出手段(S101)と、
前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるように前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度をそれぞれ補正する検出温度補正手段(S105)と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用非接触温度センサシステム。
【請求項3】
前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるための補正係数を前記非接触温度センサ毎に算出する係数算出手段(S104)を備え、
前記検出温度補正手段は、前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度に対して、前記非接触温度センサ毎の前記補正係数を乗算することにより、前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度をそれぞれ補正することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用非接触温度センサシステム。
【請求項4】
前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っているか否かについて判定する第1の温度バラツキ判定手段(S103)を備えており、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っていると前記第1の温度バラツキ判定手段が判定したときには、前記検出温度補正手段は、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるように前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度をそれぞれ補正することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用非接触温度センサシステム。
【請求項5】
前記複数個のセンサ素子は、前記複数の被検温領域から入射される赤外線に基づいて、前記複数の被検温領域の表面温度を検出するものであり、
前記複数個の非接触温度センサは、前記複数個のセンサ素子を収納し、かつ前記複数の被検温領域から入射される赤外線を通過させる光入射口(164)を有するケーシング(164)をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用非接触温度センサシステム。
【請求項6】
車室内を空調する室内空調ユニット(5、6)と、
前記室内空調ユニットを制御する制御手段(S121〜S129)と、を備える車両用空調装置であって、
前記車室内の複数の被検温領域の表面温度を非接触でそれぞれ検出する複数個のセンサ素子(161a〜161f)を有する非接触温度センサを複数個備え、
前記複数個の非接触温度センサは、それぞれの共通の被検温領域(E3)の表面温度を非接触で検出する共通領域検出センサ素子(161a、161f)を1つの前記センサ素子として備えており、
前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度を読み込む読み込み手段(S100)と、
前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度に基づいて、前記複数の非接触温度センサにおいてそれぞれの前記共通領域検出センサ素子の検出温度の温度差(ΔT)を算出する温度差算出手段(S101)と、
前記温度差算出手段により算出された温度差と前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度とに基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるように前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度をそれぞれ補正する検出温度補正手段(S105)と、を備え、
前記制御手段は、前記検出温度補正手段により補正されたそれぞれの補正後検出温度を用いて、前記室内空調ユニットを制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるための補正係数を前記非接触温度センサ毎に算出する係数算出手段(S104)を備え、
前記検出温度補正手段は、前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度に対して前記非接触温度センサ毎の前記補正係数を乗算することにより、前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度をそれぞれ補正することを特徴とする請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記温度差算出手段により算出された温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っているか否かについて判定する第1の温度バラツキ判定手段(S103)を備えており、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っていると前記第1の温度バラツキ判定手段が判定したときには、前記検出温度補正手段は、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキを抑えるように前記複数の非接触温度センサの前記複数のセンサ素子の検出温度をそれぞれ補正して補正後検出温度を求めることを特徴とする請求項6または7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバ
ラツキが前記第1の温度範囲よりも狭い第2の温度範囲内に入っているか否かについて判定する第2の温度バラツキ判定手段(S102)を備えており、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第2の温度範囲内に入っていると前記第2の温度バラツキ判定手段が判定したときには、前記制御手段は、前記それぞれの補正後検出温度に代えて、前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度を用いて、前記室内空調ユニットを制御する特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記読み込み手段は、前記複数個の非接触温度センサの前記複数個のセンサ素子の各検出温度を繰り返し読み込むものであり、
前記読み込み手段が各検出温度を読み込む毎に、前記温度差算出手段は、前記それぞれの共通領域検出センサ素子の検出温度の温度差(ΔT)を算出するものであり、
前記温度差算出手段が前記温度差を算出する毎に、前記第2の温度バラツキ判定手段(S102)が前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第2の温度範囲内に入っているか否かについて判定するものであり、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第2の温度範囲から逸脱していると前記第2の温度バラツキ判定手段が判定する毎に前記第1の温度バラツキ判定手段が、前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが第1の温度範囲内に入っているか否かについて判定するものであり、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第1の温度範囲内に入っていると前記第1の温度バラツキ判定手段が判定する毎に、前記検出温度補正手段は、前記それぞれの補正後検出温度を算出するものであり、
前記検出温度補正手段が前記それぞれの補正後検出温度を算出する毎に、前記それぞれの補正後検出温度をそれぞれ室内温度情報として設定する第1の設定手段(S106)と、
前記複数の非接触温度センサの間において前記検出温度のバラツキが前記第2の温度範囲内に入っていると前記第2の温度バラツキ判定手段が判定する毎に、
前記読み込み手段により読み込まれた各検出温度をそれぞれ室内温度情報として設定する第2の設定手段(S107)と、
前記制御手段は、前記第1、第2の設定手段のうち一方で設定されたそれぞれの室内温度情報を用いて、前記室内空調ユニットを繰り返し制御するものであることを特徴とする請求項9に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記温度差算出手段により複数回算出されたそれぞれの温度差に基づいて、前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキが前記第1の温度範囲内を一時的に逸脱しているか否かを判定する一時的バラツキ判定手段(S108)を備えており、
前記複数の非接触温度センサの間の検出温度のバラツキは前記第1の温度範囲内を一時的に逸脱していると前記一時的バラツキ判定手段が判定したときには、 今回前記制御手段は、前回に前記室内空調ユニットの制御で用いた室内温度情報を用いて、前記室内空調ユニットを制御することを特徴とする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記室内空調ユニットは、前記車室内の複数の空調ゾーンをそれぞれ独立に空調するものであり、
前記複数個の非接触温度センサの複数個のセンサ素子のうち前記それぞれの共通領域検出センサ素子(161a、161f)を除いた他の各センサ素子は、互いに異なる前記空調ゾーンの被検温領域の表面温度を非接触でそれぞれ検出するものであり、
前記制御手段は、前記空調ゾーン毎に対応した前記被検温領域の補正後検出温度を用いて前記複数の空調ゾーンをそれぞれ独立に空調するように前記室内空調ユニットを制御することを特徴とする請求項6ないし11のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記複数個のセンサ素子は、前記複数の被検温領域から入射される赤外線に基づいて、前記複数の被検温領域の表面温度を検出するものであり、
前記複数個の非接触温度センサは、前記複数個のセンサ素子を収納し、かつ前記複数の被検温領域から入射される赤外線を通過させる光入射口(164)を有するケーシング(164)をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項6ないし12のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−35116(P2009−35116A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200828(P2007−200828)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】