説明

車両用駆動装置、車両及び非接触充電システム

【課題】バッテリの充電に必要な充電器を別途設ける必要がなく、バッテリへの充電を安定して行う。
【解決手段】一対の直流ライン11,12間に、インバータ17と、インバータ17に供給する直流電圧を平滑する平滑回路16とが接続されている。平滑回路16は、直列接続された2つの容量部として例えば2つのコンデンサC11,C12を有する。交流電力が供給される一対の交流ライン13,14のうち一方の交流ライン13が、2つのコンデンサC11,C12間に接続され、他方の交流ライン14が、インバータ17のうちいずれか1つのアーム、例えばアーム21の2つのダイオードD11,D12間に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの充電を可能とする車両用駆動装置、車両用駆動装置を備えた車両及び非接触充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やエンジンを有するハイブリッド自動車では、モータを搭載すると共に、モータ駆動用にバッテリを搭載したものが普及している。モータを用いて走行する際には、バッテリからの直流電力をインバータによって交流電力に変換してモータに供給するようにしている。また、モータを発電機として作動させて、回生電力をバッテリに充電するようにしたものも知られている。
【0003】
電気自動車では、バッテリの充電残量がなくなると走行できないため、外部電源によりバッテリを充電する必要がある。また、近年、ハイブリッド自動車においても、モータ走行の割合を大きくすることが考えられており、外部電源によりバッテリを充電する必要がある。
【0004】
従って、従来、AC/DC変換回路、DC/AC変換回路、整流回路等を備えた専用の充電器を車両に搭載し、この充電器を車両用駆動装置に接続して外部電源によりバッテリを充電するようにしていた(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、充電器は重量及び体積が大きく、車両に充電器を設置するには広い設置スペースが必要であったため、このような充電器を搭載せずにバッテリの充電が可能なものが求められている。
【0006】
これに対し、外部電源が接続される交流ラインをモータのY結線の中点に接続し、モータの巻線をリアクトルとして使用することで、リアクトル、インバータのスイッチング素子、インバータのフリーホイールダイオードで昇圧チョッパを構成し、スイッチング素子をPWM制御してバッテリに供給する電圧及び電流を調整することで、バッテリを充電するようにしたものが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−57117号公報
【特許文献2】特開平8−126121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、モータの巻線の中点に交流ラインを接続した従来の構成では、モータの巻線をリアクトルとして使用しているため、モータの巻線がバッテリの充電に必要なインダクタンスを有しているとは限らず、別途リアクトルが必要になる場合もあり、重量やコストの削減効果が低かった。また、交流ラインを巻線の中点からモータ筐体の外部に引き出さなければならないため、モータに中点引出機構を設ける必要があり、モータの構造が複雑になり、コストアップとなっていた。
【0009】
更に、従来の構成では、バッテリの電圧が外部電源の電圧よりも高い場合は、スイッチング素子のスイッチング動作によって、リアクトルにエネルギーが蓄積されてバッテリ電圧よりも高い電圧に昇圧され、フリーホイールダイオードを通じて充電に必要な電力がバッテリに供給される。
【0010】
しかし、バッテリの電圧が外部電源の電圧よりも低い場合は、外部電源から供給された電圧を昇圧しなくてもフリーホイールダイオードが導通状態となるので、スイッチング素子により制御されていない非制御の電流が外部電源からダイオードを通じてバッテリに供給されることになる。そのため、過剰な電流がバッテリに供給されてバッテリの劣化が速まり、バッテリの寿命が短くなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、バッテリの充電に必要な充電器を別途設ける必要がなく、バッテリへの充電を安定して行うことが可能な車両用駆動装置、車両及び非接触充電システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の車両用駆動装置は、バッテリ(40)の両端子(40a,40b)に接続される一対の直流ライン(11,12)と、
交流電力が供給される一対の交流ライン(13,14)と、
ダイオードが逆並列接続された2つのスイッチング素子を直列接続してなるアームを複数有し、前記一対の直流ライン間に接続されたインバータ(17),(18,19)と、
前記一対の直流ライン間に接続され、前記インバータに供給する直流電圧を平滑する平滑回路(16)と、
前記インバータに接続された回転電機(MG),(MG1,MG2)と、を備え、
前記平滑回路(16)は、直列接続された2つの容量部(C11,C12)を有し、
前記一対の交流ラインのうち一方の交流ライン(13)が、前記2つの容量部(C11,C12)間に接続され、
前記一対の交流ラインのうち他方の交流ライン(14)が、前記インバータ(17),(18,19)のうちいずれか1つのアーム(21),(24)の2つのダイオード(D11,D12),(D21,D22)間に接続される、ことを特徴とする。
【0013】
また、前記バッテリ(40)の充電時に前記インバータ(17),(18,19)の各スイッチング素子(Tr11〜Tr16),(Tr21〜Tr26,Tr31〜Tr36)をオフにすることで、前記2つの容量部(C11,C12)と前記他方の交流ラインが接続されたアームの2つのダイオード(D11,D12),(D21,D22)とにより、前記一対の交流ラインに供給された交流電力を直流電力に変換して該直流電力を前記バッテリ(40)に供給する倍電圧整流回路(20),(20A)が形成される。
【0014】
また、前記インバータとして、複数のインバータ(18,19)を備えると共に、
前記回転電機として、前記複数のインバータ(18,19)のそれぞれに接続される複数の回転電機(MG1,MG2)を備え、
前記他方の交流ライン(14)が前記複数のインバータ(18,19)のうちいずれか1つのアーム(24)の2つのダイオード(D21,D22)間に接続され、
前記バッテリ(40)の充電時に前記複数のインバータ(18,19)の各スイッチング素子(Tr21〜Tr26,Tr31〜Tr36)をオフにすることで、前記倍電圧整流回路(20A)が形成される。
【0015】
また、前記回転電機が力行する際に前記バッテリから出力された直流電圧を昇圧して前記インバータに出力する昇圧チョッパとして機能するDC/DCコンバータ(15)を備え、
前記DC/DCコンバータ(15)が、前記倍電圧整流回路(20),(20A)から出力された直流電圧を降圧して前記バッテリ(40)に出力する降圧チョッパとして機能する。
【0016】
また、本発明の車両は、車両用駆動装置(10),(10A),(10B)と、
前記一対の直流ラインに接続されたバッテリ(40)と、
前記一対の交流ラインを外部電源に接続する接続端子(60)と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車両は、車両用駆動装置(10),(10A),(10B)と、
前記一対の直流ラインに接続されたバッテリ(40)と、
交流電力が供給される一次コイルと電磁結合し、前記一対の交流ラインに接続されて、前記一対の交流ラインに交流電力を出力する二次コイル(73)と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の非接触充電システムは、車両用駆動装置(10B)と、
外部電源の交流電力を高周波の交流電力に変換して出力する電源部(83)と、
前記電源部からの交流電力の入力を受ける一次コイル(85)と、
前記一次コイルと電磁結合し、前記一対の交流ラインに接続されて、前記一対の交流ラインに交流電力を出力する二次コイル(73)と、
前記一対の直流ラインに接続されたバッテリ(40)と、
前記バッテリの電圧及び前記バッテリの電池残量に基づき充電電流指令値を生成する指令部(75)と、
前記バッテリに供給される電流と前記充電電流指令値との差を補償するように前記電源部が出力する交流電圧を調整する電源制御部(84)と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の非接触充電システムは、車両用駆動装置(10),(10A)と、
外部電源の交流電力を高周波の交流電力に変換して出力する電源部(83)と、
前記電源部からの交流電力の入力を受ける一次コイル(85)と、
前記一次コイルと電磁結合し、前記一対の交流ラインに接続されて、前記一対の交流ラインに交流電力を出力する二次コイル(73)と、
前記一対の直流ラインに接続されたバッテリ(40)と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る本発明によると、バッテリの充電に必要な充電器を別途設けることなく、平滑回路の2つの容量部間に一方の交流ラインを接続し、インバータのうちいずれか1つのアームの2つのダイオード間に他方の交流ラインを接続する簡単な構成で、バッテリに充電することが可能となる。
【0022】
請求項2に係る本発明によると、平滑回路の2つの容量部とインバータのアームの2つのダイオードとで倍電圧整流回路を形成したので、非制御の電流がバッテリに流れ込むことがなく、安定してバッテリを充電することができる。
【0023】
請求項3に係る本発明によると、バッテリの充電に必要な充電器を別途設けることなく、平滑回路の2つの容量部間に一方の交流ラインを接続し、複数のインバータのうちいずれか1つのアームの2つのダイオード間に他方の交流ラインを接続する簡単な構成で、バッテリに充電することが可能となる。また、平滑回路の2つの容量部とインバータのアームの2つのダイオードとで倍電圧整流回路を形成したので、非制御の電流がバッテリに流れ込むことがなく、安定してバッテリを充電することができる。
【0024】
請求項4に係る本発明によると、回転電機が力行する際に使用するDC/DCコンバータが、バッテリに充電する直流電圧を降圧する降圧チョッパとして機能するので、別途、回路部品を追加することなく、バッテリに供給する電力を調整することができ、より安定してバッテリを充電することができる。
【0025】
請求項5に係る本発明によると、車両に車両用駆動装置の他に別途充電器を搭載する必要がなく、接続端子を外部電源に接続することで、安定してバッテリを充電することができる。
【0026】
請求項6に係る本発明によると、車両が車両用駆動装置の他に別途充電器を搭載する必要がなく、車両の二次コイルを一次コイルに電磁結合することで、非接触でバッテリを安定して充電することができる。
【0027】
請求項7に係る本発明によると、指令部及び電源制御部の動作により電源部から出力される電流及び電圧が調整されるので、バッテリに供給される電力が調整され、より安定してバッテリを充電することができる。
【0028】
請求項8に係る本発明によると、DC/DCコンバータによりバッテリに供給される電力が調整されるので、より安定してバッテリを充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両を示す模式図である。
【図2】倍電圧整流回路の回路構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る車両を示す模式図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る非接触充電システムを示す模式図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る非接触充電システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る車両用駆動装置を備えた車両について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る車両を示す模式図である。図1に示す本第1実施形態の車両1は、電気自動車又はハイブリッド車であり、車両用駆動装置10と、遮断回路30と、車両用駆動装置10に遮断回路30を介して接続されたバッテリ40と、遮断回路30に接続されたドライブ回路51と、車両用駆動装置10に接続されたドライブ回路52,53と、ドライブ回路51,53,53に接続された制御部56と、車両用駆動装置10を交流電源である外部電源90に接続するための接続端子であるインレット60と、バッテリ40の電圧を検出する電圧センサ71と、バッテリ40の電流を検出する電流センサ72と、を備えている。本第1実施形態では、充電ケーブル80で外部電源90とインレット60とを接続することにより、充電ケーブル80を介して外部電源90からの給電によりバッテリ40を充電するプラグインシステムが構成される。なお、外部電源90としては、商用電源のほか、太陽光発電設備等の自家発電設備が含まれる。
【0031】
車両用駆動装置10は、バッテリ40の両端子40a,40bに遮断回路30を介して接続される一対の直流ライン11,12と、インレット60に接続され、外部電源90から交流電力が供給される一対の交流ライン13,14と、一対の直流ライン11,12間に接続された平滑回路16と、一対の直流ライン11,12間に接続されたインバータ17と、インバータ17に接続された回転電機であるモータジェネレータMGと、を備えている。また、車両用駆動装置10は、一対の直流ライン11,12に設けられたDC/DCコンバータ15を備えている。
【0032】
バッテリ40は、充放電可能なリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池であり、正極端子40a及び負極端子40bを備えている。
【0033】
遮断回路30は、バッテリ40の正極端子40aに接続されたリレー31と、リレー31に並列接続された補助リレー32及び抵抗器33と、バッテリ40の負極端子40bに接続されたリレー34とからなり、各リレー31,32,34がドライブ回路51により開閉操作される。
【0034】
一対の直流ライン11,12のうち一方の直流ラインは、正極側の直流ライン11であり、他方の直流ラインは、負極側の直流ライン12である。
【0035】
DC/DCコンバータ15は、一対の直流ライン11,12間に接続されたコンデンサC1と、正極側の直流ライン11に設けられたリアクトルL1及びスイッチング素子としてのトランジスタTr1と、トランジスタTr1に逆並列接続されたダイオードD1と、リアクトルL1とトランジスタTr1との間の接続点と負極側の直流ライン12との間に接続されたトランジスタTr2と、トランジスタTr2に逆並列接続されたダイオードD2と、を有している。
【0036】
インバータ17は、上段のスイッチング素子としてのトランジスタと下段のスイッチング素子としてのトランジスタとを有するアームを複数備えており、本第1実施形態では、U相、V相、W相の3相、即ち3つのアーム21,22,23を備えている。
【0037】
U相のアーム21は、直列接続された2つのトランジスタTr11,Tr12と、トランジスタTr11,Tr12のそれぞれに逆接続された2つのダイオードD11,D12と、を有している。V相のアーム22は、直列接続された2つのトランジスタTr13,Tr14と、トランジスタTr13,Tr14のそれぞれに逆接続された2つのダイオードD13,D14と、を有している。W相のアーム23は、直列接続された2つのトランジスタTr15,Tr16と、トランジスタTr15,Tr16のそれぞれに逆接続された2つのダイオードD15,D16と、を有している。
【0038】
そして、各アーム21,22,23の上段のトランジスタTr11,Tr13,Tr15が正極側の直流ライン11に接続され、各アーム21,22,23の下段のトランジスタTr14,Tr16,Tr18が負極側の直流ライン12に接続されている。
【0039】
インバータ17のダイオードD11〜D16は、例えばモータジェネレータMGの逆起電力等によって生じた電流を還流させることで対応するトランジスタTr11〜Tr16を保護するフリーホイールダイオードとして機能する。
【0040】
なお、DC/DCコンバータ15及びインバータ17のスイッチング素子としてのトランジスタTr1,Tr2,Tr11〜Tr16は、本第1実施形態では、npn型のバイポーラトランジスタであるが、pnp型のバイポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ以外のトランジスタ(例えば、FET(field effect transistor)、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)、IGBT(insulated gate bipolar transistor))であってもよい。
【0041】
モータジェネレータMGは、Y結線されたU相、V相、W相の3相のステータコイルLu,Lv,Lwを有するステータStと、不図示のロータとを有している。また、モータジェネレータMGの3相のステータコイルLu,Lv,Lwのそれぞれは、各アーム21,22,23の2つのトランジスタ間に接続されている。具体的には、U相のステータコイルLuの一端がアーム21の2つのトランジスタTr11,Tr12間に接続され、V相のステータコイルLvの一端がアーム22の2つのトランジスタTr13,14間に接続され、W相のステータコイルLwの一端がアーム23の2つのトランジスタTr15,Tr16間に接続され、各ステータコイルLu,Lv,Lwの他端同士が接続されている。
【0042】
モータジェネレータMGは、力行時にインバータ17から受ける交流電力によって不図示のロータが回転し、車両1の不図示の駆動輪を駆動する電動機として動作する。また、モータジェネレータMGは、回生制動時に交流電力を発生させてインバータ17へ出力する発電機として動作する。
【0043】
制御部56は、ドライブ回路51を駆動して遮断回路30の各リレー31,32,34のオン/オフを制御すると共に、各ドライブ回路52,53を駆動してDC/DCコンバータ15及びインバータ17の各トランジスタTr1,Tr2,Tr11〜Tr16のオン/オフを制御するものである。具体的に説明すると、制御部56は、ドライブ回路52,53にPWM信号(通電タイミング信号)を出力する。ドライブ回路52,53は、制御部56から入力したPWM信号に基づき、トランジスタTr1,Tr2,Tr11〜Tr16をそれぞれオン/オフするための制御パルス(ベース信号)を発生して、トランジスタTr1,Tr2,Tr11〜Tr16のベースに出力する。
【0044】
トランジスタTr1,Tr2,Tr11〜Tr16は、ベースにハイレベルの電圧の制御パルスが印加されることによりエミッタ−コレクタ間が導通するオン状態となり、エミッタ−コレクタ間を電流が流れるようになっている。また、トランジスタTr1,Tr2,Tr11〜Tr16は、ベースに制御パルスが印加されない、即ちベースにおける電圧がローレベルの場合にエミッタ−コレクタ間が非導通となるオフ状態となる。
【0045】
平滑回路16は、DC/DCコンバータ15とインバータ17との間に配置されており、DC/DCコンバータ15又はインバータ17から出力された直流電圧を平滑するものである。平滑回路16は、直列接続された2つの容量部としてのコンデンサC11,C12を有している。つまり、一方の容量部は、1つのコンデンサC11からなり、他方の容量部は、1つのコンデンサC12からなる。コンデンサC11とコンデンサC12とは同一の公称容量値に設定されており、略同一の静電容量値に設定されている。
【0046】
なお、2つの容量部の静電容量値が略同一であればよく、各容量部が1つのコンデンサC11,C12からなるものに限らず、各容量部が複数のコンデンサを並列又は直列接続して形成したものであってもよい。
【0047】
本第1実施形態では、一対の交流ライン13,14のうち一方の交流ライン13の一端13aは、平滑回路16の2つのコンデンサC11,C12間に接続されている。他方の交流ライン14の一端14aは、インバータ17の3相(複数)のアーム21,22,23のうち、いずれか1つのアームの2つのダイオード間、本第1実施形態では、アーム21の2つのダイオードD11,D12間に接続されている。換言すると、交流ライン14は、アーム21の2つのトランジスタTr11,Tr12間に接続されている。一対の交流ライン13,14の他端13b,14bは、インレット60に接続されており、一対の交流ライン13,14には、インレット60から交流電力が供給されるよう構成されている。
【0048】
以上の構成で、まず、モータジェネレータMGが力行する場合について説明する。バッテリ40から出力された直流電圧は、DC/DCコンバータ15に印加される。制御部56は、DC/DCコンバータ15のトランジスタTr1をオフ状態にし、トランジスタTr2をPWM制御することでオン/オフを切り替える。これにより、DC/DCコンバータ15は、昇圧チョッパとして機能し、バッテリ40から出力された直流電圧を昇圧する。昇圧された直流電圧は、平滑回路16で平滑されてインバータ17に出力される。制御部56は、インバータ17が直流電力を3相の交流電力に変換するよう、インバータ17の各トランジスタTr11〜Tr16をPWM制御する。これにより、インバータ17が直流電力を3相の交流電力に変換してモータジェネレータMGに出力することで、モータジェネレータMGが力行し、不図示の駆動輪が駆動されて車両1が走行する。
【0049】
次に、モータジェネレータMGが回生する場合について説明する。回生制動時にモータジェネレータMGにて発電された3相の交流電力は、インバータ17に出力される。制御部56は、インバータ17が3相の交流電力を直流電力に変換するよう、インバータ17のトランジスタTr11〜Tr16をPWM制御する。これにより、インバータ17は3相の交流電力を直流電力に変換し、その変換した直流電力を直流ライン11,12に出力する。変換された直流電力は、平滑回路16を介してDC/DCコンバータ15へ出力される。制御部56は、DC/DCコンバータ15のトランジスタTr2をオフ状態にし、トランジスタTr1をPWM制御することでオン/オフを切り替える。これにより、DC/DCコンバータ15は、降圧チョッパとして機能し、降圧された直流電圧がバッテリ40に出力され、直流電力でバッテリ40が充電される。
【0050】
次に、外部電源90を用いてバッテリ40を充電する場合について説明する。バッテリ40の充電時には、車両1のインレット60に充電ケーブル80のコネクタ81が接続され、充電ケーブル80のプラグ82が外部電源90に接続される。これにより、一対の交流ライン13,14には、交流電力が供給される。
【0051】
このとき、制御部56がインバータ17の各トランジスタTr11〜Tr16をオフ状態に制御することで、平滑回路16の2つのコンデンサC11,C12と交流ライン14が接続されたアーム21の2つのダイオードD11,D12とにより、図2に示すような倍電圧整流回路20が形成される。なお、図2は、倍電圧整流回路20の回路構成を示す模式図であり、オフ状態のトランジスタTr11〜Tr16の図示を省略している。
【0052】
この倍電圧整流回路20は、一対の交流ライン13,14に供給された交流電力を直流電力に変換し、その変換した直流電力をDC/DCコンバータ15及び遮断回路30を介してバッテリ40に出力する。このとき、図1に示す制御部56は、DC/DCコンバータ15のトランジスタTr2をオフ状態にし、トランジスタTr1をPWM制御することでオン/オフを切り替える。これにより、DC/DCコンバータ15は、降圧チョッパとして機能し、降圧調整された直流電圧が出力され、直流電力によりバッテリ40が充電される。つまり、DC/DCコンバータ15は、バッテリ40に供給する直流電力(直流電圧及び直流電流)を調整する。
【0053】
詳述すると、制御部56は、電圧センサ71の電圧検出結果及び電流センサ72の電流検出結果に基づき、バッテリ40の電池残量(SOC)を算出し、この電池残量に応じて、DC/DCコンバータ15のトランジスタTr1のデューティ比を調整してバッテリ40に供給する直流電力を調整する充電制御を行う。例えば、制御部56は、電池残量が所定値よりも低い場合は、定電流制御を行うことで供給する電力を調整し、バッテリ40を充電する。また、制御部56は、電池残量が増加して所定値よりも高くなった場合は、定電圧制御を行うことで供給する電力を調整し、バッテリ40を充電する。つまり、充電初期では、定電流制御を行うことで充電電力を大きくして急速にバッテリ40を充電すると共に、充電終期では、定電圧制御を行うことで充電電力を小さくして過充電を防止している。
【0054】
以上、本第1実施形態によると、車両用駆動装置10の回路にバッテリ40の充電に必要な充電器を別途設けることなく、平滑回路16を構成するコンデンサを2つに分割して、2つのコンデンサC11,C12間に一方の交流ライン13を接続し、インバータ17のうちいずれか1つのアーム21の2つのダイオードD11,D12間に他方の交流ライン14を接続する簡単な構成で、バッテリ40に充電することが可能となる。また、平滑回路16の2つのコンデンサC11,C12とインバータ17のアーム21の2つのダイオードD11,D12とで倍電圧整流回路20(図2参照)を形成し、昇圧チョッパ15を降圧チョッパとして制御することにより、安定してバッテリ40を充電することができる。また、この倍電圧整流回路20が形成されることにより、バッテリ40に印加する入力電圧を高めることが可能となり、バッテリ電圧の対応上限を引き上げることができ、設計の自由度が向上する。
【0055】
また、モータジェネレータMGが力行する際に使用するDC/DCコンバータ15が、バッテリ40に充電する直流電圧を降圧する降圧チョッパとして機能するので、別途、回路部品を追加することなく、バッテリ40に供給する電力を調整することができ、より安定してバッテリ40を充電することができる。
【0056】
また、車両1に車両用駆動装置10の他に別途充電器を搭載する必要がなく、インレット60を外部電源90に接続することで、安定してバッテリ40を充電することができる。
【0057】
なお、本第1実施形態では、回転電機がモータジェネレータMGの場合について説明したが、回転電機が電動機専用のモータの場合であってもよい。
【0058】
また、本第1実施形態では、DC/DCコンバータ15を、倍電圧整流回路20が出力する直流電圧を降圧調整する降圧チョッパとして機能させる場合について説明したが、車両1の外部に一対の交流ライン13,14に供給する交流電流及び交流電圧を調整する機器があれば、DC/DCコンバータ15を降圧チョッパとして機能させなくてもよく、或いはDC/DCコンバータ15を省略してもよい。
【0059】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用駆動装置を備えた車両について説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る車両を示す模式図である。本第2実施形態の車両用駆動装置は、複数のインバータと、複数のインバータのそれぞれに接続される複数の回転電機とを備えているものであり、その他の構成については、上記第1実施形態と同様であるため、同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
図3に示すように、車両1Aは、電気自動車又はハイブリッド自動車であり、車両用駆動装置10Aと、遮断回路30と、車両用駆動装置10Aに遮断回路30を介して接続されたバッテリ40と、遮断回路30に接続されたドライブ回路51と、車両用駆動装置10Aに接続されたドライブ回路52,54,55と、ドライブ回路51,52,54,55に接続された制御部56と、車両用駆動装置10Aを交流電源である外部電源90に接続するための接続端子であるインレット60と、バッテリ40の電圧を検出する電圧センサ71と、バッテリ40の電流を検出する電流センサ72と、を備えている。本第2実施形態では、充電ケーブル80で外部電源90とインレット60とを接続することにより、充電ケーブル80を介して外部電源90からの給電によりバッテリ40を充電するプラグインシステムが構成される。
【0061】
車両用駆動装置10Aは、一対の直流ライン11,12と、一対の交流ライン13,14と、平滑回路16と、一対の直流ライン11,12間に接続された複数(本第2実施形態では2つ)のインバータ18,19と、複数のインバータ18,19に接続された複数(本第2実施形態では2つ)の回転電機であるモータジェネレータMG1,MG2と、を備えている。また、車両用駆動装置10Aは、一対の直流ライン11,12に設けられたDC/DCコンバータ15を備えている。
【0062】
2つのインバータ18,19のうち、一方を第1のインバータ18、他方を第2のインバータ19と称する。また、2つのモータジェネレータMG1,MG2のうち、一方(つまり、第1のインバータ18に接続されるモータジェネレータ)を第1のモータジェネレータMG1と称し、他方(つまり、第2のインバータ19に接続されるモータジェネレータ)を第2のモータジェネレータMG2と称する。
【0063】
第1のインバータ18は、上段のスイッチング素子としてのトランジスタと下段のスイッチング素子としてのトランジスタとを有するアームを複数備えており、本第2実施形態では、U相、V相、W相の3相、即ち3つのアーム24,25,26を備えている。
【0064】
U相のアーム24は、直列接続された2つのトランジスタTr21,Tr22と、トランジスタTr21,Tr22のそれぞれに逆接続された2つのダイオードD21,D22と、を有している。V相のアーム25は、直列接続された2つのトランジスタTr23,Tr24と、トランジスタTr23,Tr24のそれぞれに逆接続された2つのダイオードD23,D24と、を有している。W相のアーム26は、直列接続された2つのトランジスタTr25,Tr26と、トランジスタTr25,Tr26のそれぞれに逆接続された2つのダイオードD25,D26と、を有している。
【0065】
また、第2のインバータ19は、上段のスイッチング素子としてのトランジスタと下段のスイッチング素子としてのトランジスタとを有するアームを複数備えており、本第2実施形態では、U相、V相、W相の3相、即ち3つのアーム27,28,29を備えている。
【0066】
U相のアーム27は、直列接続された2つのトランジスタTr31,Tr32と、トランジスタTr31,Tr32のそれぞれに逆接続された2つのダイオードD31,D32と、を有している。V相のアーム28は、直列接続された2つのトランジスタTr33,Tr34と、トランジスタTr33,Tr34のそれぞれに逆接続された2つのダイオードD33,D34と、を有している。W相のアーム29は、直列接続された2つのトランジスタTr35,Tr36と、トランジスタTr35,Tr36のそれぞれに逆接続された2つのダイオードD35,D36と、を有している。
【0067】
そして、各インバータ18,19の各アーム24〜29の上段のトランジスタTr21,Tr23,Tr25,Tr31,Tr33,Tr35が正極側の直流ライン11に接続され、各アーム24〜29の下段のトランジスタTr22,Tr24,Tr26,Tr32,Tr34,Tr36が負極側の直流ライン12に接続されている。
【0068】
なお、DC/DCコンバータ15及び第1及び第2のインバータ18,19のスイッチング素子としてのトランジスタTr1,Tr2,Tr21〜Tr26,Tr31〜Tr36は、本第2実施形態では、npn型のバイポーラトランジスタであるが、pnp型のバイポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ以外のトランジスタ(例えば、FET、MOSFET、IGBT)であってもよい。
【0069】
第1のモータジェネレータMG1は、Y結線されたU相、V相、W相の3相のステータコイルLu1,Lv1,Lw1を有するステータSt1と、不図示のロータとを有している。また、第1のモータジェネレータMG1の3相のステータコイルLu1,Lv1,Lw1のそれぞれは、第1のインバータ18の各アーム24,25,26の2つのトランジスタ間に接続されている。
【0070】
また、第2のモータジェネレータMG2は、Y結線されたU相、V相、W相の3相のステータコイルLu2,Lv2,Lw2を有するステータSt2と、不図示のロータとを有している。また、第2のモータジェネレータMG2の3相のステータコイルLu2,Lv2,Lw2のそれぞれは、第2のインバータ19の各アーム27,28,29の2つのトランジスタ間に接続されている。
【0071】
第1のモータジェネレータMG1は、内燃機関である不図示のエンジンによって駆動される発電機として動作し、また、エンジン始動を行い得る電動機として動作する。第2のモータジェネレータMG2は、車両1Aの不図示の駆動輪を駆動する電動機として動作し、また、回生制動時に発電機として動作する。
【0072】
本第2実施形態では、一対の交流ライン13,14のうち一方の交流ライン13の一端13aは、平滑回路16の2つのコンデンサC11,C12間に接続されている。他方の交流ライン14の一端14aは、2つのインバータ18,19の3相(複数)のアーム24〜29のうち、いずれか1つのアームの2つのダイオード間、本第2実施形態では、アーム24の2つのダイオードD21,D22間に接続されている。換言すると、交流ライン14は、アーム24の2つのトランジスタTr21,Tr22間に接続されている。
【0073】
以上の構成で、本第2実施形態の車両1Aは、不図示のエンジン及び第2のモータジェネレータMG2のうち少なくとも一方からの駆動力により走行する。例えば、アクセル開度が小さい場合、車速が低い場合などには、第2のモータジェネレータMG2のみを駆動源として車両1Aが走行する。また、アクセル開度が大きい場合、車速が高い場合、バッテリ40の電池残量が小さい場合には、不図示のエンジンが駆動され、エンジンのみ、或いはエンジン及び第2のモータジェネレータMG2の両方を駆動源として車両1Aが走行する。
【0074】
まず、第1のモータジェネレータMG1が回生する場合について説明する。第1のモータジェネレータMG1は、不図示のエンジンからの回転力により3相の交流電力を発生し、その発生した交流電力を第1のインバータ18に出力する。制御部56は、第1のインバータ18が3相の交流電力を直流電力に変換するよう、第1のインバータ18のトランジスタTr21〜Tr26をPWM制御する。これにより、第1のインバータ18は3相の交流電力を直流電力に変換し、その変換した直流電力を直流ライン11,12に出力する。
【0075】
次に、第1のモータジェネレータMG1が力行する場合について説明する。制御部56は、第1のインバータ18が直流電力を3相の交流電力に変換するよう、第1のインバータ18の各トランジスタTr21〜Tr26をPWM制御する。これにより、第1のインバータ18は供給された直流電力を3相の交流電力に変換し、交流電力を第1のモータジェネレータMG1に出力する。第1のモータジェネレータMG1は、第1のインバータ18から受ける交流電力によって力行する。これにより、不図示のエンジンの始動が行われる。
【0076】
また、第2のモータジェネレータMG2が力行する場合について説明する。制御部56は、第2のインバータ19が直流電力を3相の交流電力に変換するよう、第2のインバータ19の各トランジスタTr31〜Tr36をPWM制御する。これにより、第2のインバータ19は直流電力を3相の交流電力に変換し、交流電力を第2のモータジェネレータMG2に出力する。第2のモータジェネレータMG2は、第2のインバータ19から受ける交流電力によって力行する。これにより、不図示の駆動輪が駆動され、車両1Aが走行する。
【0077】
次に、第2のモータジェネレータMG2が回生する場合について説明する。第2のモータジェネレータMG2は3相の交流電力を第2のインバータ19に出力する。制御部56は、第2のインバータ19が3相の交流電力を直流電力に変換するよう、第2のインバータ19のトランジスタTr31〜Tr36をPWM制御する。これにより、第2のインバータ19は3相の交流電力を直流電力に変換し、その変換した直流電力を直流ライン11,12に出力する。
【0078】
第1のモータジェネレータMG1及び/又は第2のモータジェネレータMG2の回生による発電電力をバッテリ40に充電する場合、第1のインバータ18及び/又は第2のインバータ19から出力された直流電力は、平滑回路16を介してDC/DCコンバータ15へ出力される。制御部56は、DC/DCコンバータ15のトランジスタTr2をオフ状態にし、トランジスタTr1をPWM制御することでオン/オフを切り替える。これにより、DC/DCコンバータ15は、降圧チョッパとして機能し、降圧された直流電圧がバッテリ40に出力され、直流電力でバッテリ40が充電される。
【0079】
また、第1のモータジェネレータMG1及び/又は第2のモータジェネレータMG2が力行する場合、バッテリ40から直流電圧がDC/DCコンバータ15に印加される。制御部56は、DC/DCコンバータ15のトランジスタTr1をオフ状態にし、トランジスタTr2をPWM制御することでオン/オフを切り替える。これにより、DC/DCコンバータ15は、昇圧チョッパとして機能し、バッテリ40から出力された直流電圧を昇圧する。昇圧された直流電圧は、平滑回路16で平滑される。そして、第1のインバータ18及び/又は第2のインバータ19がスイッチング動作することにより交流電力が第1のモータジェネレータMG1及び/又は第2のモータジェネレータMG2に供給される。
【0080】
次に、外部電源90を用いてバッテリ40を充電する場合、車両1Aのインレット60に充電ケーブル80のコネクタ81が接続され、充電ケーブル80のプラグ82が外部電源90に接続される。これにより、一対の交流ライン13,14には、交流電力が供給される。
【0081】
このとき、制御部56が第1及び第2のインバータ18,19の各トランジスタTr21〜Tr26,Tr31〜Tr36をオフ状態に制御することで、平滑回路16の2つのコンデンサC11,C12と交流ライン14が接続されたアーム24の2つのダイオードD21,D22とにより、倍電圧整流回路20Aが形成される。
【0082】
この倍電圧整流回路20Aは、一対の交流ライン13,14に供給された交流電力を直流電力に変換し、その変換した直流電力をDC/DCコンバータ15を介してバッテリ40に出力する。このとき、制御部56は、DC/DCコンバータ15のトランジスタTr2をオフ状態にし、トランジスタTr1をPWM制御することでオン/オフを切り替える。これにより、DC/DCコンバータ15は、降圧チョッパとして機能し、降圧調整された直流電圧が出力され、直流電力によりバッテリ40が充電される。つまり、DC/DCコンバータ15は、バッテリ40に供給する直流電力(直流電圧及び直流電流)を調整する。
【0083】
以上、本第2実施形態によると、車両用駆動装置10Aの回路にバッテリ40の充電に必要な充電器を別途設けることなく、平滑回路16を構成するコンデンサを2つに分割し、2つのコンデンサC11,C12間に一方の交流ライン13を接続し、第1及び第2のインバータ18,19のうちいずれか1つのアーム24の2つのダイオードD21,D22間に他方の交流ライン14を接続する簡単な構成で、バッテリ40に充電することが可能となる。また、平滑回路16の2つのコンデンサC11,C12とアーム24の2つのダイオードD21,D22とで倍電圧整流回路20Aを形成し、昇圧チョッパ15を降圧チョッパとして制御することにより、安定してバッテリ40を充電することができる。また、この倍電圧整流回路20Aが形成されることにより、バッテリ40に印加する入力電圧を高めることが可能となり、バッテリ電圧の対応上限を引き上げることができ、設計の自由度が向上する。
【0084】
また、モータジェネレータMG1,MG2が力行する際に使用するDC/DCコンバータ15が、バッテリ40に充電する直流電圧を降圧する降圧チョッパとして機能するので、別途、回路部品を追加することなく、バッテリ40に供給する電力を調整することができ、より安定してバッテリ40を充電することができる。
【0085】
また、車両1Aに車両用駆動装置10Aの他に別途充電器を搭載する必要がなく、インレット60を外部電源90に接続することで、安定してバッテリ40を充電することができる。
【0086】
なお、本第2実施形態では、回転電機がモータジェネレータMG1,MG2の場合について説明したが、回転電機が電動機専用のモータの場合であってもよい。また、第1のモータジェネレータMG1がエンジンを始動する電動機として動作すると共に、エンジンにより駆動される発電機として動作し、第2のモータジェネレータMG2が駆動輪を駆動する場合について説明したが、第1及び第2のモータジェネレータMG1,MG2が、車両の左右の前輪又は左右の後輪を各々駆動する場合であってもよい。また、車両用駆動装置が3つ以上のモータジェネレータを備えていてもよい。
【0087】
また、本第2実施形態では、DC/DCコンバータ15を用いて倍電圧整流回路20Aが出力する直流電圧を降圧調整する降圧チョッパとして機能させる場合について説明したが、車両1Aの外部に一対の交流ライン13,14に供給する交流電流及び交流電圧を調整する機器があれば、DC/DCコンバータ15を降圧チョッパとして機能させなくてもよく、或いはDC/DCコンバータ15を省略してもよい。
【0088】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図4は、本発明の第3実施形態に係る非接触充電システムを示す模式図である。上記第1実施形態では、プラグインシステムによりバッテリが外部電源により充電される場合について説明したが、本第3実施形態では、非接触充電システムによりバッテリが外部電源から充電される場合について説明する。なお、本第3実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0089】
図4に示す非接触充電システム100は、一次側非接触充電装置200及び二次側非接触充電装置300からなる。車両1Bは、電気自動車又はハイブリッド自動車であり、二次側非接触充電装置300を有している。
【0090】
一次側非接触充電装置200は、外部電源90の交流電力を高周波の交流電力に変換して出力する電源部83と、電源部83が出力する電力を制御する電源制御部としてのコントローラ84と、電源部83からの交流電力の入力を受ける一次コイル85と、一次コイル85に直列に接続された共振コンデンサ86と、を有している。
【0091】
二次側非接触充電装置300は、車両用駆動装置10Bと、遮断回路30と、車両用駆動装置10Bに遮断回路30を介して接続されたバッテリ40と、車両用駆動装置10Bの一対の交流ライン13,14に設けられたスイッチ回路61と、遮断回路30に接続されたドライブ回路51と、車両用駆動装置10Bに接続されたドライブ回路53と、スイッチ回路61に接続されたドライブ回路57と、ドライブ回路51,53,57に接続された制御部56と、バッテリ40の電圧を検出する電圧センサ71と、バッテリ40の電流を検出する電流センサ72と、一対の交流ライン13,14の他端13b,14bに接続された二次コイル73と、二次コイル73に並列に接続された共振コンデンサ74と、バッテリ40の充電状態を監視する指令部としてのBMS(Battery Management System)75と、を有している。
【0092】
車両用駆動装置10Bは、一対の直流ライン11,12と、一対の交流ライン13,14と、平滑回路16と、インバータ17と、モータジェネレータMGと、を有している。
【0093】
一次側非接触充電装置200は、駐車場に設置されている。車両1Bが駐車場に停車することで、一次側非接触充電装置200の一次コイル85と二次側非接触充電装置300の二次コイル73とが電磁結合するように構成されている。
【0094】
外部電源90によりバッテリ40を充電しない場合、制御部56は、スイッチ回路61が開成するようドライブ回路57を制御し、二次コイル73及び共振コンデンサ74を車両用駆動装置10Bから切り離す。
【0095】
バッテリ40を外部電源90により充電する際、電源部83が交流電力を一次コイル85に出力して、二次コイル73に交流電力を発生させ、一対の交流ライン13,14に交流電力を出力する。制御部56がインバータ17の各トランジスタTr11〜Tr16をオフ状態に制御することで、平滑回路16の2つのコンデンサC11,C12と交流ライン14が接続されたアーム21の2つのダイオードD11,D12とにより、倍電圧整流回路20が形成される。その際、制御部56は、スイッチ回路61が閉成するようドライブ回路57を制御する。この倍電圧整流回路20は、一対の交流ライン13,14に供給された交流電力を直流電力に変換し、その変換した直流電力をバッテリ40に出力する。
【0096】
二次側非接触充電装置300のBMS75は、電圧センサ71により検出されたバッテリ40の電圧及び電流センサ72により検出されたバッテリ40への電流に基づき、バッテリ40の電池残量(SOC)を算出する。そして、BMS75は、バッテリ40の電圧及びバッテリ40の電池残量に基づき、充電電流指令値を生成して、充電電流指令値を示すデータ信号をコントローラ84に送信すると共に、電流センサ72により検出されたバッテリ40への電流を示すデータ信号を一次側非接触充電装置200のコントローラ84に送信する。これらデータ信号を受信したコントローラ84は、バッテリ40に供給される電流と充電電流指令値との差を補償するように電源部83が出力する交流電圧を調整する。これにより、バッテリ40に供給される電流が充電電流指令値に近づけられ、バッテリ40への充電電力が調整される。
【0097】
以上、本第3実施形態によると、車両1Bが車両用駆動装置10Bの他に別途充電器を搭載する必要がなく、車両1Bの二次コイル73を一次コイル85に電磁結合することで、非接触でバッテリ40を安定して充電することができる。
【0098】
また、BMS75及びコントローラ84の動作により電源部83から出力される電流及び電圧が調整されるので、バッテリ40に供給される電力が調整され、より安定してバッテリ40を充電することができる。
【0099】
なお、本第3実施形態では、一次側非接触充電装置200の電源部83によりバッテリ40に供給する電力を調整したが、上記第1実施形態のように、DC/DCコンバータ15により電力を調整するようにしてもよい。
【0100】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図5は、本発明の第4実施形態に係る非接触充電システムを示す模式図である。上記第2実施形態では、プラグインシステムによりバッテリが外部電源により充電される場合について説明したが、本第4実施形態では、非接触充電システムによりバッテリが外部電源から充電される場合について説明する。また、本第4実施形態の車両用駆動装置は、複数のインバータと、複数のインバータのそれぞれに接続される複数の回転電機とを備えているものである。なお、本第3実施形態において、上記第2実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0101】
図5に示す非接触充電システム100Cは、一次側非接触充電装置200C及び二次側非接触充電装置300Cからなる。車両1Cは、電気自動車又はハイブリッド自動車であり、二次側非接触充電装置300Cを有している。
【0102】
一次側非接触充電装置200Cは、外部電源90の交流電力を高周波の交流電力に変換して出力する電源部83と、電源部83からの交流電力の入力を受ける一次コイル85と、一次コイル85に直列に接続された共振コンデンサ86と、を有している。
【0103】
二次側非接触充電装置300Cは、車両用駆動装置10Aと、遮断回路30と、車両用駆動装置10Aに遮断回路30を介して接続されたバッテリ40と、車両用駆動装置10Aの一対の交流ライン13,14に設けられたスイッチ回路61と、遮断回路30に接続されたドライブ回路51と、車両用駆動装置10Aに接続されたドライブ回路52,54,55と、スイッチ回路61に接続されたドライブ回路57と、ドライブ回路51,52,54,55,57に接続された制御部56と、バッテリ40の電圧を検出する電圧センサ71と、バッテリ40の電流を検出する電流センサ72と、一対の交流ライン13,14の他端13b,14bに接続された二次コイル73と、二次コイル73に並列に接続された共振コンデンサ74と、を有している。
【0104】
車両用駆動装置10Aは、一対の直流ライン11,12と、一対の交流ライン13,14と、DC/DCコンバータ15と、平滑回路16と、複数(本第4実施形態では2つ)のインバータ18,19と、複数のインバータ18,19に接続された複数(本第4実施形態では2つ)の回転電機であるモータジェネレータMG1,MG2と、を備えている。
【0105】
一次側非接触充電装置200Cは、駐車場に設置されている。車両1Cが駐車場に停車することで、一次側非接触充電装置200Cの一次コイル85と二次側非接触充電装置300Cの二次コイル73とが電磁結合するように構成されている。
【0106】
外部電源90によりバッテリ40を充電しない場合、制御部56は、スイッチ回路61が開成するようドライブ回路57を制御し、二次コイル73及び共振コンデンサ74を車両用駆動装置10Aから切り離す。
【0107】
バッテリ40を外部電源90により充電する際、電源部83が交流電力を一次コイル85に出力して、二次コイル73に交流電力を発生させ、一対の交流ライン13,14に交流電力を出力する。制御部56が第1及び第2のインバータ18,19の各トランジスタTr21〜Tr26,Tr31〜36をオフ状態に制御することで、平滑回路16の2つのコンデンサC1,C2と交流ライン14が接続されたアーム24の2つのダイオードD21,D22とにより、倍電圧整流回路20Aが形成される。その際、制御部56は、スイッチ回路61が閉成するようドライブ回路57を制御する。この倍電圧整流回路20Aは、一対の交流ライン13,14に供給された交流電力を直流電力に変換し、その変換した直流電力をDC/DCコンバータ15を介してバッテリ40に出力する。
【0108】
このとき、制御部56は、DC/DCコンバータ15のトランジスタTr2をオフ状態にし、トランジスタTr1をPWM制御することでオン/オフを切り替える。これにより、DC/DCコンバータ15は、降圧チョッパとして機能し、降圧調整された直流電圧が出力され、直流電力によりバッテリ40が充電される。つまり、DC/DCコンバータ15は、バッテリ40に供給する直流電力(直流電圧及び直流電流)を調整する。
【0109】
以上、本第4実施形態によると、車両1Cが車両用駆動装置10Aの他に別途充電器を搭載する必要がなく、車両1Cの二次コイル73を一次コイル85に電磁結合することで、非接触でバッテリ40を安定して充電することができる。
【0110】
また、モータジェネレータMG1,MG2が力行する際に使用するDC/DCコンバータ15が、バッテリ40に充電する直流電圧を降圧する降圧チョッパとして機能するので、別途、回路部品を追加することなく、バッテリ40に供給する電力を調整することができ、より安定してバッテリ40を充電することができる。
【0111】
なお、本第4実施形態では、回転電機がモータジェネレータMG1,MG2の場合について説明したが、回転電機が電動機専用のモータの場合であってもよい。また、第1のモータジェネレータMG1がエンジンを始動する電動機として動作すると共に、エンジンにより駆動される発電機として動作し、第2のモータジェネレータMG2が駆動輪を駆動する場合について説明したが、第1及び第2のモータジェネレータMG1,MG2が、車両の左右の前輪又は左右の後輪を各々駆動する場合であってもよい。また、車両用駆動装置が3つ以上のモータジェネレータを備えていてもよい。
【0112】
また、本第4実施形態では、DC/DCコンバータ15を用いて倍電圧整流回路20Aが出力する直流電圧を降圧調整する降圧チョッパとして機能させる場合について説明したが、車両1Cの外部に一対の交流ライン13,14に供給する交流電流及び交流電圧を調整する機器があれば、DC/DCコンバータ15を降圧チョッパとして機能させなくてもよく、或いはDC/DCコンバータ15を省略してもよい。
【0113】
以上、本発明は、上記第1〜第4実施形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0114】
1,1A,1B,1C 車両
10,10A,10B 車両用駆動装置
11,12 直流ライン
13,14 交流ライン
15 DC/DCコンバータ
16 平滑回路
17,18,19 インバータ
20,20A 倍電圧整流回路
40 バッテリ
60 接続端子(インレット)
73 二次コイル
75 指令部(BMS)
83 電源部
84 電源制御部(コントローラ)
85 一次コイル
90 外部電源
100,100C 非接触充電システム
C11,C12 容量部(コンデンサ)
D11〜D16,D21〜D26,D31〜D36 ダイオード
MG 回転電機(モータジェネレータ)
MG1,MG2 回転電機(モータジェネレータ)
Tr11〜Tr16,Tr21〜Tr26,Tr31〜Tr36 スイッチング素子(トランジスタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの両端子に接続される一対の直流ラインと、
交流電力が供給される一対の交流ラインと、
ダイオードが逆並列接続された2つのスイッチング素子を直列接続してなるアームを複数有し、前記一対の直流ライン間に接続されたインバータと、
前記一対の直流ライン間に接続され、前記インバータに供給する直流電圧を平滑する平滑回路と、
前記インバータに接続された回転電機と、を備え、
前記平滑回路は、直列接続された2つの容量部を有し、
前記一対の交流ラインのうち一方の交流ラインが、前記2つの容量部間に接続され、
前記一対の交流ラインのうち他方の交流ラインが、前記インバータのうちいずれか1つのアームの2つのダイオード間に接続される、
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記バッテリの充電時に前記インバータの各スイッチング素子をオフにすることで、前記2つの容量部と前記他方の交流ラインが接続されたアームの2つのダイオードとにより、前記一対の交流ラインに供給された交流電力を直流電力に変換して該直流電力を前記バッテリに供給する倍電圧整流回路が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記インバータとして、複数のインバータを備えると共に、
前記回転電機として、前記複数のインバータのそれぞれに接続される複数の回転電機を備え、
前記他方の交流ラインが前記複数のインバータのうちいずれか1つのアームの2つのダイオード間に接続され、
前記バッテリの充電時に前記複数のインバータの各スイッチング素子をオフにすることで、前記倍電圧整流回路が形成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記回転電機が力行する際に前記バッテリから出力された直流電圧を昇圧して前記インバータに出力する昇圧チョッパとして機能するDC/DCコンバータを備え、
前記DC/DCコンバータが、前記倍電圧整流回路から出力された直流電圧を降圧して前記バッテリに出力する降圧チョッパとして機能する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用駆動装置と、
前記一対の直流ラインに接続されたバッテリと、
前記一対の交流ラインを外部電源に接続する接続端子と、を備えた、
ことを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用駆動装置と、
前記一対の直流ラインに接続されたバッテリと、
交流電力が供給される一次コイルと電磁結合し、前記一対の交流ラインに接続されて、前記一対の交流ラインに交流電力を出力する二次コイルと、を備えた、
ことを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用駆動装置と、
外部電源の交流電力を高周波の交流電力に変換して出力する電源部と、
前記電源部からの交流電力の入力を受ける一次コイルと、
前記一次コイルと電磁結合し、前記一対の交流ラインに接続されて、前記一対の交流ラインに交流電力を出力する二次コイルと、
前記一対の直流ラインに接続されたバッテリと、
前記バッテリの電圧及び前記バッテリの電池残量に基づき充電電流指令値を生成する指令部と、
前記バッテリに供給される電流と前記充電電流指令値との差を補償するように前記電源部が出力する交流電圧を調整する電源制御部と、を備えた、
ことを特徴とする非接触充電システム。
【請求項8】
請求項4に記載の車両用駆動装置と、
外部電源の交流電力を高周波の交流電力に変換して出力する電源部と、
前記電源部からの交流電力の入力を受ける一次コイルと、
前記一次コイルと電磁結合し、前記一対の交流ラインに接続されて、前記一対の交流ラインに交流電力を出力する二次コイルと、
前記一対の直流ラインに接続されたバッテリと、を備えた、
ことを特徴とする非接触充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−115975(P2013−115975A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261614(P2011−261614)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(591206887)株式会社テクノバ (20)
【Fターム(参考)】