説明

車両用駆動装置の構成方法

【課題】FF車用変速機の構成部品を用いることにより、FRハイブリッド車用の駆動装置を安価に提供することを課題とする。
【解決手段】プライマリシャフトに設けられたカウンタドライブギヤのエンジン側に変速機構を構成する第1構成部品が、該ギヤの反エンジン側に変速機構を構成する第2構成部品が配設されているFF車用変速機を用い、車両前後方向に延びてエンジンからの動力が入力されるインプットシャフト110上に、エンジン側から、前記FF車用変速機の第1構成部品43、モータ180、カウンタドライブギヤ111、及び前記FF車用変速機の第2構成部品41、42、44〜48を配置し、前記カウンタドライブギヤ111からカウンタシャフト170を介してアウトプットシャフト120に至る動力伝達経路を形成することにより、軸線が車両前後方向に延びるFRハイブリッド車用の駆動装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される駆動装置の構成方法に関し、車両用駆動装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
2輪駆動の車両は、主としてエンジンを車体前部に配置して前輪を駆動するフロントエンジン・フロンドドライブ車(以下、「FF車」という)と、エンジンを車体前部に配置して後輪を駆動するフロントエンジン・リアドライブ車(以下、「FR車」という)とに大別することができる。
【0003】
このうち、FF車は、エンジン及び変速機の軸線が車両幅方向に延びるように配置され、FR車はこれらの軸線が車両前後方向に延びるように配置されるのが通例で、前者は車内の居住性に優れ、後者はスポーティな走行性に優れるなど、それぞれの長所を備えているが、近年はFF車の比率が大きくなり、FR車の生産台数が減少する傾向にある。
【0004】
一方、近年、走行用駆動源としてエンジンとモータとを併用する所謂ハイブリッド車が実用化されているが、このハイブリッド車においても前記のFF車とFR車とが存在し、例えば特許文献1にはFRハイブリッド車に登載される駆動装置が記載されている。
【0005】
この特許文献1に記載の駆動装置は、エンジンの出力軸に直結されて車両後方に延びる入力軸と、該入力軸に同軸上に配置されて車両後方に延びる出力軸と、これらの軸上に配置されたモータを含む差動部及び自動変速部とを有し、前記エンジン及びモータからの駆動力が、前記出力軸から車体後部に配置された差動歯車装置及び左右に延びる車軸を介して左右の後輪に伝達されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−260491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述のように、FR車は生産台数が減少する傾向にあるので、その一部であるFRハイブリッド車はさらに生産台数が少なくなる。そのため、前記特許文献1に記載の駆動装置のようなFRハイブリッド車の駆動装置は量産効果が望めず、製造コストが高くつくという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、FRハイブリッド車の駆動装置の製造コストを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用駆動装置の構成方法は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、軸線が車両幅方向に延びるように配置されるFF車用の変速機の部品を用い、これにモータを加えて、軸線が車両前後方向に延びるように配置されるFRハイブリッド車用の駆動装置を構成する車両用駆動装置の構成方法であって、前記FF車用変速機として、エンジンの出力軸と同一軸線上に配置されるプライマリシャフトと、該シャフト上から動力を取り出すカウンタドライブギヤが設けられ、該ギヤのエンジン側に変速機構を構成する第1構成部品が、該ギヤの反エンジン側に変速機構を構成する第2構成部品が配設されているものを用い、車両前後方向に延びてエンジンからの動力が入力されるインプットシャフト上に、エンジン側から、前記FF車用変速機の第1構成部品、モータ、カウンタドライブギヤ、及び前記FF車用変速機の第2構成部品を配置することにより、軸線が車両前後方向に延びるFRハイブリッド車用の駆動装置を構成することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記FF車用変速機は、変速機構の構成部品として摩擦締結要素と遊星歯車機構とを含んでおり、このうち遊星歯車機構は前記第1構成部品には含まれず、第2構成部品にのみ含まれていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記FF車用変速機はトルクコンバータを含んでおり、このFF車用変速機のトルクコンバータを用いてFRハイブリッド車用の駆動装置を構成することを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記FF車用変速機として、プライマリシャフトに平行に配置され、前記カウンタドライブギヤと噛み合うカウンタドリブンギヤを有するセカンダリシャフトと、該セカンダリシャフト上に配置された第3構成部品とを有するものを用い、該第3構成部品を、前記インプットシャフトと同一軸線上の後方に配置することを特徴とする。
【0014】
そして、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記インプットシャフトと同一軸線上に車両後方に延びるアウトプットシャフトを配置すると共に、該インプットシャフト及びアウトプットシャフトに平行にカウンタシャフトを配置し、前記カウンタドライブギヤからカウンタシャフトを介してアウトプットシャフトに至る動力伝達経路を構成すると共に、前記カウンタシャフトの軸線を、インプットシャフト及びアウトプットシャフトの軸線に対し、当該駆動装置の車載時に排気管が配設される側方と反対側となる側方に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、FF車用の変速機の構成部品を用いてFRハイブリッド車用の駆動装置が構成されるので、FF式に比べて生産台数が少ないFR式のハイブリッド車用駆動装置の製造コストが低減されることになる。
【0017】
そして、特にこの発明によれば、ハイブリッド化に際して新たに追加されるモータを、FF車用変速機から転用する第1構成部品とカウンタドライブギヤとの間に配置するので、カウンタドライブギヤの配設位置が相対的に後方に位置することになる。したがって、このカウンタドライブギヤから取り出されて後輪に伝達される動力の伝達経路が、カウンタドライブギヤが前方に配置される場合に比べて短くなり、当該駆動装置の構成の簡素化や軽量化が図られる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によれば、変速機構の構成部品として摩擦締結要素と遊星歯車機構とが含まれている場合に、遊星歯車機構は第1構成部品には含まれないので、モータと共にカウンタドライブギヤの前方に配置される第1構成部品の構成が簡素となり、変速機構の構成部品とモータとがカウンタドライブギヤの前後にバランスよく配置されることになる。特に、遊星歯車機構が複数個備えられる場合に、これらがモータやカウンタドライブギヤを挟んで分散配置されることがなく、構造の複雑化が回避される。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、FF車用変速機におけるトルクコンバータをFRハイブリッド車用駆動装置において用いるので、該駆動装置の製造コストがさらに低減される。
【0020】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、前記FF車用変速機が、例えば副変速機構等を構成する第3構成部品を有する場合に、この第3構成部品もFRハイブリッド車用駆動装置に転用されることになり、FF車用変速機が備えていた機能を損なわず、しかも安価にFRハイブリッド車用駆動装置が構成される。
【0021】
そして、請求項5に記載の発明によれば、当該駆動装置が車載時にフロアパネルのトンネル部内に排気管と共に配設される場合に、良好な車載性が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態で用いるFF車用自動変速機の骨子図である。
【図2】同自動変速機の変速段ごとの摩擦要素締結表である。
【図3】同自動変速機の断面図である。
【図4】同自動変速機の主変速機構の拡大断面図である。
【図5】同じく副変速機構の拡大断面図である。
【図6】第1実施形態に係るFRハイブリッド車用駆動装置の骨子図である。
【図7】同駆動装置の外観側面図である。
【図8】同駆動装置の前部の断面図である。
【図9】同じく後部の断面図である。
【図10】同駆動装置の車載時の配置説明図である。
【図11】第2実施形態で用いるFF車用自動変速機の骨子図である。
【図12】同自動変速機の変速段ごとの摩擦要素締結表である。
【図13】第2実施形態に係るFRハイブリッド車用駆動装置の骨子図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態に係る駆動装置の構成方法で用いるFF車用自動変速機の構成を示す骨子図であって、この自動変速機1は、エンジンAの出力軸と同一軸線上に配置されたプライマリシャフト10と、該シャフト10に平行に配置されたセカンダリシャフト20とを有し、プライマリシャフト10上に、エンジンAの出力が入力されるトルクコンバータ30と、該トルクコンバータ30の出力が入力される主変速機構40とが配置され、セカンダリシャフト20上に、主変速機構40の出力が入力される副変速機構50が配置され、これらの構成要素が変速機ケース60に収納されている。そして、副変速機構50の出力が差動装置Bから左右に延びる車軸C、Cを介して左右の前輪に伝達されるようになっている。
【0025】
前記トルクコンバータ30は、エンジンAの出力軸に連結されたケース31内に固設されたポンプ32と、このポンプ32に対向するように配置されて作動油を介して駆動されるタービン33と、該ポンプ32とタービン33との間に介設されて変速機ケース60にワンウエイクラッチ34を介して支持されたステータ35と、ケース31とタービン33との間に設けられてエンジンAの出力軸とタービン33とを直結するロックアップクラッチ36とを有し、タービン33の回転が前記プライマリシャフト10を介して主変速機構40に入力されるようになっている。なお、トルクコンバータ30の反エンジン側には、前記ケース31を介してエンジンAに駆動されるオイルポンプ37が配置されている。
【0026】
前記主変速機構40は、第1、第2遊星歯車機構41、42を有し、これらの遊星歯車機構41、42は、いずれも、サンギヤ41a、42aと、リングギヤ41b、42bと、これらのギヤに噛合する複数のピニオンを支持するピニオンキャリヤ(以下、「キャリヤ」という)41c、42cとで構成されている。
【0027】
また、主変速機構40は、前記プライマリシャフト10と第1遊星歯車機構41のサンギヤ41aとの間に介設されたフォワードクラッチ43と、プライマリシャフト10と第2遊星歯車機構42のサンギヤ42aとの間に介設されたリバースクラッチ44と、プライマリシャフト10と第2遊星歯車機構42のキャリヤ42cとの間に介設された3−4クラッチ45と、変速機ケース60と第1遊星歯車機構41のリングギヤ41b及び第2遊星歯車機構42のキャリヤ42cとの間に並列に介設されたローリバースブレーキ46及びワンウエイクラッチ47と、変速機ケース60と第2遊星歯車機構42のサンギヤ42aとの間に介設された2−4ブレーキ48とを備えている。
【0028】
そして、第1遊星歯車機構41のキャリヤ41cと第2遊星歯車機構42のリングギヤ42bとが連結され、これらに主変速機構40から副変速機構50へ動力を出力するカウンタドライブギヤ11が連結されている。
【0029】
一方、副変速機構50は、前記主変速機構40の第1、第2遊星歯車機構41、42と同様、サンギヤ51a、リングギヤ51b及びキャリヤ51cを有する遊星歯車機構51と、該遊星歯車機構51のサンギヤ51aとキャリヤ51cとの間に介設された直結クラッチ52と、サンギヤ51aと変速機ケース60との間に並列に介設された減速ブレーキ53及びワンウエイクラッチ54とを有する。
【0030】
また、遊星歯車機構51のリングギヤ51bにカウンタドリブンギヤ21が連結され、該ギヤ21が前記カウンタドライブギヤ11に噛み合わされていることにより、プライマリシャフト10上の主変速機構40の出力が、遊星歯車機構51のリングギヤ51bから副変速機構50に入力されるようになっている。
【0031】
そして、遊星歯車機構51のキャリヤ51cがセカンダリシャフト20に連結されていると共に、該セカンダリシャフト20には出力ギヤ22が固設され、該出力ギヤ22が前記差動装置Bの入力ギヤDに噛み合わされ、副変速機構50の出力が差動装置Bに入力される。
【0032】
上記の構成により、この自動変速機1によれば、前進5速、後退1速の変速段が得られる。ここで、各変速段と各摩擦要素43〜46、48、52、53の締結、非締結の組み合わせとの関係をまとめると、図2に示すようになる。なお、ローリバースブレーキ46と減速ブレーキ53はエンジンブレーキを作動させる1速で締結され、エンジンブレーキの非作動時には、これらに並列のワンウェイクラッチ47、54がロックすることにより1速となる。
【0033】
次に、図3の断面図により、このFF車用自動変速機1の具体的構成を説明すると、まず、この変速機1のケース60は、トルクコンバータ収納部61、主変速機構収納部62、副変速機構収納部63、差動装置収納部64等で構成され、これらが結合されて全体が一体化されている。
【0034】
前記主変速機構収納部62の前端部(エンジン側の端部)には、トルクコンバータ収納空間と主変速機構収納空間とを仕切る前壁65が設けられており、該前壁65とその後面に取り付けられたポンプカバー66との間に、図1に示すオイルポンプ37が収納されている。
【0035】
また、主変速機構収納部62の後端部(反エンジン側の端部)には、該端部を閉塞するエンドカバー67が取り付けられていると共に、主変速機構収納部62の中間には、該収納部62内の空間を前後に仕切る中間壁62aが設けられている。そして、トルクコンバータ30から延びるプライマリシャフト10が、前記前壁65、ポンプカバー66及び中間壁部62aを貫通し、後端部がエンドカバー67に支持されている。
【0036】
プライマリシャフト10上に配置された主変速機構40の構成メンバーのうち、フォワードクラッチ43は、カウンタドライブギヤ11と共に前記前壁65と中間壁部62aとの間に配置され、第1、第2遊星歯車機構41、42、リバースクラッチ44、3−4クラッチ45、ローリバースブレーキ46、ワンウェイクラッチ47及び2−4ブレーキ48は、前記中間壁部62aとエンドカバー67との間に配置されている。
【0037】
また、副変速機構50が配置されたセカンダリシャフト20は、変速機ケース60構成する副変速機構収納部63の前壁部63aと後壁部63bとに前後両端部がそれぞれ支持されている。そして、前記プライマリシャフト10上のカウンタドライブギヤ11に噛み合うカウンタドリブンギヤ21の前壁部63a側に、差動装置Bへの出力ギヤ22とパーキング機構を構成するパーキングギヤ23とが配置されていると共に、カウンタドリブンギヤ21の後壁部63b側に、遊星歯車機構51、直結クラッチ52、減速ブレーキ53及びワンウェイクラッチ54が配置されている。
【0038】
ここで、、主変速機構40及び副変速機構50の構成をさらに詳しく説明すると、図4に示すように、主変速機構40におけフォワードクラッチ43は、前記プライマリシャフト10に結合されたドラム43aと、その内側に同心状に配置されたハブ43bと、該ドラム43aとハブ43bとの間に配置されてこれらに交互に係合された複数の摩擦板43cと、油圧の供給時にこれらの摩擦板43cを締結するピストン43d等で構成されている。
【0039】
そして、前記ハブ43bに設けられた後方へ延びるボス部43b’と、第1遊星歯車機構41のサンギヤ41aに設けられた前方へ延びるボス部41a’とが、主変速機構収納部62の中間壁部62aの貫通穴内でスプライン嵌合され、前記摩擦板43cの締結時に、プライマリシャフト10と第1遊星歯車機構41のサンギヤ41aとが連結されるようになっている。
【0040】
また、リバースクラッチ44は、前記プライマリシャフト10の後端部にスプライン嵌合されたハブ44aと、その外側に同心状に配置されたドラム44bと、該ハブ44aとドラム44bとの間に配置されてこれらに交互に係合された複数の摩擦板44cと、油圧の供給時にこれらの摩擦板44cを締結するピストン44d等で構成されている。
【0041】
そして、前記ドラム44bと第2遊星歯車機構42のサンギヤ42aとが結合され、前記摩擦板44cの締結時に、プライマリシャフト10と第2遊星歯車機構42のサンギヤ42aとが連結されるようになっている。
【0042】
また、3−4クラッチ45は、前記リバースクラッチ44のハブ44aと一体のドラム45aと、その内側に同心状に配置されたハブ45bと、該ドラム45aとハブ45bとの間に配置されてこれらに交互に係合された複数の摩擦板45cと、油圧の供給時にこれらの摩擦板45cを締結するピストン45d等で構成されている。
【0043】
そして、前記ハブ45bと第2遊星歯車機構42のキャリヤ42cとがスプライン嵌合され、前記摩擦板45cの締結時に、プライマリシャフト10と第2遊星歯車機構42のキャリヤ42cとが連結されるようになっている。
【0044】
さらに、ローリバースブレーキ46は、変速機ケース60の主変速機構収納部62の内周面と、第1遊星歯車機構41のリングギヤ41bの外周面との間に配置されてこれらに交互に係合された複数の摩擦板46aと、油圧の供給時にこれらの摩擦板46aを締結するピストン46b等で構成され、摩擦板46bの締結時に、第1遊星歯車機構41のリングギヤ41bと、これに連結された第2遊星歯車機構42のキャリヤ42cとが固定されるようになっている。
【0045】
また、前記主変速機構収納部62の中間壁部62aに設けられたボス部62a’と前記第1遊星歯車機構41のリングギヤ41bとの間にワンウェイクラッチ47が介設され、該第1遊星歯車機構41のリングギヤ41b及び第2遊星歯車機構42のキャリヤ42cの所定方向の回転を阻止するようになっている。
【0046】
一方、図5に示すように、副変速機構50におけ直結クラッチ52は、遊星歯車機構51のサンギヤ51aに結合されたドラム52aと、同じく遊星歯車機構51のキャリヤ51cに結合されたハブ52bと、該ドラム52aとハブ52bとの間に配置されてこれらに交互に係合された複数の摩擦板52cと、油圧の供給時にこれらの摩擦板52cを締結するピストン52d等で構成されている。
【0047】
そして、前記摩擦板52cの締結時に、遊星歯車機構51のサンギヤ51aとキャリヤ51cとが結合されることにより、該遊星歯車機構51の全体が一体回転し、カウンタドライブギヤ21からリングギヤ51bに入力される動力が、そのままセカンダリシャフト20に出力されるようになっている。
【0048】
また、減速ブレーキ53は、変速機ケース60の副変速機構収納部63の後面部63bの内周面と、遊星歯車機構51のサンギヤ51aに連結されたハブ53aとの間に配置されてこれらに交互に係合された複数の摩擦板53bと、油圧の供給時にこれらの摩擦板53bを締結するピストン53c等で構成され、摩擦板53bの締結時に、遊星歯車機構51のサンギヤ51aが固定されるようになっている。
【0049】
また、前記副変速機構収納部63の後面部63bに設けられたボス部63b’と前記ハブ53aとの間にワンウェイクラッチ54が介設され、遊星歯車機構51のサンギヤ51aの所定方向の回転を阻止するようになっている。
【0050】
次に、前記FF車用自動変速機1の構成部品を用いて構成されるFRハイブリッド車の駆動装置について説明する。
【0051】
図6は、この駆動装置の構成を示す骨子図であって、この駆動装置101は、軸線が車体前後方向に配置されエンジンA’の車両前後方向に延びる出力軸と同一軸線上に配置されたインプットシャフト110と、該シャフト110の後方に同一軸線上に配置されたアウトプットシャフト120と、これらのシャフト110、120に平行に配置されたカウンタシャフト170とを有する。
【0052】
前記インプットシャフト110上には、FF車用自動変速機1から転用されてエンジンA’の出力軸に連結されたトルクコンバータ30と、該トルクコンバータ30の出力が入力される主変速機構140と、モータ180とが配置され、アウトプットシャフト120上には、前記主変速機構140の出力がカウンタシャフト170を介して入力される副変速機構150が配置されており、これらの構成要素が変速機ケース160に収納されている。
【0053】
前記主変速機構140及び副変速機構150は、前述のFF車用自動変速機1の構成部品を用いて構成されている。
【0054】
つまり、主変速機構140は、FF車用自動変速機1のプライマリシャフト10に相当するインプットシャフト110上に、該変速機1の主変速機構40を構成していた第1、第2遊星歯車機構41、42を配置すると共に、該インプットシャフト110と第1遊星歯車機構41のサンギヤ41aとの間にフォワードクラッチ43を、インプットシャフト110と第2遊星歯車機構42のサンギヤ42aとの間にリバースクラッチ44を、インプットシャフト110と第2遊星歯車機構42のキャリヤ42cとの間に3−4クラッチ45をそれぞれ介設する。
【0055】
また、変速機ケース160と第1遊星歯車機構41のリングギヤ41b及び第2遊星歯車機構42のキャリヤ42cとの間にローリバースブレーキ46及びワンウエイクラッチ47を介設し、さらに、変速機ケース160と第2遊星歯車機構42のサンギヤ42aとの間に2−4ブレーキ48を介設した構成とされている。
【0056】
そして、第1遊星歯車機構41のキャリヤ41cと第2遊星歯車機構42のリングギヤ42bとが連結され、前記FF車用自動変速機1と同様、これらに主変速機構140から副変速機構150へ動力を出力するカウンタドライブギヤ111が連結されている。
【0057】
また、この駆動装置101においては、インプットシャフト110上において、主変速機構140における最も前方(エンジン側)に位置するフォワードクラッチ43が、その後方に配置されるカウンタドライブギヤ111及び主変速機構140を構成する他の構成部品から分離され、該フォワードクラッチ43とカウンタドライブギヤ111との間に設けられた空間に前記モータ180が配置されている。
【0058】
このモータ180は、変速機ケース160に固定されたステータ181と、その内側に配置されたロータ182とを有し、これらがインプットシャフト110上に同心状に配置されている。そして、ロータ182が前記カウンタドライブギヤ111に連結され、該モータ180の出力と主変速機構140の出力とがカウンタドライブギヤ111で合流するようになっている。
【0059】
一方、副変速機構150は、前記FF車用自動変速機1のセカンダリシャフト20に相当するアウトプットシャフト120上に、該変速機1の副変速機構50を構成していた遊星歯車機構51を配置すると共に、該遊星歯車機構51のサンギヤ51aとキャリヤ51cとの間に直結クラッチ52を介設し、サンギヤ51aと変速機ケース160との間に減速ブレーキ53及びワンウエイクラッチ54を並列に介設した構成とされている。また、遊星歯車機構51のリングギヤ51bにカウンタドリブンギヤ121が連結され、該遊星歯車機構51のキャリヤ51cがアウトプットシャフト120に連結されている。
【0060】
そして、前記インプットシャフト110上のカウンタドライブギヤ111がカウンタシャフト170の前端に設けられた第1ギヤ171に噛み合わされ、該カウンタシャフト170の後端に設けられた第2ギヤ172が前記アウトプットシャフト120上のカウンタドリブンギヤ121に噛み合わされている。
【0061】
これにより、インプットシャフト110上のカウンタドライブギヤ111で主変速機構140からの出力とモータ180からの出力とが合流し、この出力が該カウンタドライブギヤ111から第1ギヤ171、カウンタシャフト170、第2ギヤ172及びカウンタドリブンギヤ121を介して副変速機構150に入力されると共に、該副変速機構150の出力がアウトプットシャフト120に出力される。そして、この出力はプロペラシャフトE(図7、図9参照)を介して車両後部に配置された差動装置に伝達され、さらに該差動装置から左右に延びる車軸を介して左右の後輪に伝達されるようになっている。
【0062】
以上のように、この駆動装置101においては、主変速機構140を構成する第1、第2遊星歯車機構41、42、フォワードクラッチ43、リバースクラッチ44、3−4クラッチ45、ローリバースブレーキ46、ワンウェイクラッチ47及び2−4ブレーキ48は、基本的にFF車用自動変速機1のものが使用されており、また、副変速機構150を構成する遊星歯車機構51、直結クラッチ52、減速ブレーキ53及びワンウェイクラッチ54も、基本的にFF車用自動変速機1のものが使用されている。
【0063】
また、主変速機構140からの出力がカウンタドライブギヤ111、カウンタドリブンギヤ121を介して副変速機構150に入力される構成も、FF車用自動変速機1と同様であるから、この駆動装置101においても、図2に示す各摩擦要素の締結、非締結の組合せに従って、前進5速と後退速とが得られる。
【0064】
次に、このFRハイブリッド車用駆動装置101の具体的構造を説明すると、まず、該駆動装置101の変速機ケース160は、図7〜図9に示すように、トルクコンバータ収納部161と、主としてモータ180を収納するモータ収納部162と、主として主変速機構140を収納する主変速機構収納部163と、カウンタドリブンギヤ121及びパーキングギヤ123を収納するギヤ納部164と、副変速機構150を収納する副変速機構収納部165とで構成され、これらが直列に結合されて一体化されている。
【0065】
また、前記モータ収納部162の前端部(エンジン側の端部)には、該収納部162内の空間とトルクコンバータ収納空間とを仕切る前壁166が設けられており、該前壁166とその後面に取り付けられたポンプカバー167との間に、オイルポンプ137が収納されていると共に、前記ポンプカバーの後方に延びるボス部167aにフォワードクラッチ43が支持されている、
【0066】
なお、前記オイルポンプ137及びその前後の前壁166及びポンプカバー167についても、FF車用自動変速機1におけるオイルポンプ37、前壁66及びポンプカバー67を転用することが可能である。
【0067】
また、モータ収納部162内おける前記フォワードクラッチ43の配設位置の後方には仕切壁168が取り付けられ、該仕切壁168と、モータ収納部162の後部に設けられた後壁部162aとの間にモータ180が収納され、該仕切壁168及び後壁部162aに軸受191、192を介してロータ182の軸183が支持されている。
【0068】
さらに、該モータ収納部162における後壁部162aの後方にカウンタドライブギヤ111が収納されていると共に、その後方に連結された主変速機構収納部163に、前記フォワードクラッチ43を除く主変速機構150の構成部品、即ち、第1、第2遊星歯車機構41、42、リバースクラッチ44、3−4クラッチ45、ローリバースブレーキ46、ワンウェイクラッチ47及び2−4ブレーキ48が収納されている。
【0069】
そして、前記カウンタドライブギヤ111が、主変速機構収納部163の前端部に設けられた前壁部163aの貫通穴に軸受193を介して支持されていると共に、該前壁部163aに前記ローリバースブレーキ46とワンウェイクラッチ47とが支持されている。また、主変速機構140のリバースクラッチ44及び3−4クラッチ45は、主変速機構収納部163の後方に連結されたギヤ収納部164の前方に延びるボス部164aに支持されている。
【0070】
また、前記モータ収納部162の仕切壁168と後壁部162aに前後両端部をそれぞれ支持されたロータ軸183は中空とされ、その内側を、主変速機構収納部163に収納された第1遊星歯車機構41のサンギヤ41aに設けられた長いボス部41a’が前方へ挿通され、その前端部が仕切壁168の前方に配置されたフォワードクラッチ43のハブ43bに設けられた後方へ延びるボス部43b’とスプライン嵌合されており、これにより、前記FF車用自動変速機1と同様、ォワードクラッチ43のハブと第1遊星歯車機構41のサンギヤ41aとが連結されている。
【0071】
また、前記ロータ軸183の後端部にはスリーブ部材184の前部がスプライン嵌合されていると共に、該スリーブ部材184の後部に前記カウンタドライブギヤ111がスプライン嵌合され、これにより、ロータ182とカウンタドライブギヤ111とが連結され、モータ180の出力がカウンタドライブギヤ111に伝達されるようになっている。
【0072】
さらに、副変速機構収納部165内では、該収納部165の後壁に設けられた前方へ延びるボス部165aに副変速機構150を構成する直結クラッチ52、減速ブレーキ53及びワンウェイクラッチ54が支持されていると共に、このボス部165aを貫通してアウトプットシャフト120が後方に延び、プロペラシャフトEに連結されている。
【0073】
駆動装置101は、以上のような構成であるから、FF車用自動変速機1における主変速機構40をカウンタドライブギヤ11のエンジン側に配置された第1構成部品、即ちフォワードクラッチ43と、該ギヤ11の反エンジン側に配置された第2構成部品、即ち第1、第2遊星歯車機構41、42、リバースクラッチ44、3−4クラッチ45、ローリバースブレーキ46、ワンウェイクラッチ47及び2−4ブレーキ48とに分け、この第1、第2構成部品を、変速機ケース160内におけるモータ180の前方及び後方にそれぞれ配置して、前述のように組み付ければ、FRハイブリッド車用の駆動装置101が構成されることになる。
【0074】
その場合に、この駆動装置101においては、第1構成部品と第2構成部品とを仕切るカウンタドライブギヤ111をモータ180の後方に配置したから、該カウンタドライブギヤ111をモータ180の前方に配置する場合に比べて、前端に該カウンタドライブギヤ111に噛み合う第1ギヤ171を有するカウンタシャフト170が短くなっている。
【0075】
そして、主変速機構40の構成部品のうち、フォワードクラッチ43のみを第1構成部品とし、それ以外の遊星歯車機構41、42、摩擦締結要素及びワンウェイクラッチ44〜48を第2構成部品とし、構成が簡素な方の第1構成部品をモータ180と共にカウンタドライブギヤ111の前方に配置したので、これらの構成部品がカウンタドライブギヤ111の前後にバランスよく配置されることになる。特に、第1、第2遊星歯車機構41、42をモータ180やカウンタドライブギヤ111を挟んで前後に分散配置する場合に比較して、変速機構が簡素に構成される。
【0076】
さらに、カウンタシャフト170の前端がモータ180より後方に位置することにより、該モータ180の下方にスペースが生じるので、この駆動装置101においては、図8に示すように、このスペースを利用してコントロールバルブユニット195が配置されている。その場合、該コントロールバルブユニット195の下方に取り付けられるオイルパン196が、駆動装置101の最下部より下方へ突出することがない。
【0077】
また、図9に示すように、この駆動装置101においては、副変速機構収納部165の後下方のスペースに、副変速機構用コントロールバルブユニッ197及びその下方を覆うオイルパン198が配置されており、このオイルパン198も駆動装置101の最下部より下方へ突出することがない。
【0078】
また、図10に示すように、この駆動装置101においては、同一軸線上に位置するインプットシャフト110及びアウトプットシャフト120に対し、カウンタシャフト170を、車載時に排気管Fが位置する側方と反対側の側方の斜め下方に配置したから、車体フロアに設けられるトンネル部G内に該駆動装置101と排気管Fとが平行に配置される場合に、カウンタシャフト170の収納部と排気管Fとの干渉が回避され、限られたスペースのトンネル部G内の空間にこれらを良好に配置することが可能となる。
【0079】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0080】
まず、この実施形態に係るFRハイブリッド車用駆動装置301の構成に用いられるFF車用自動変速機201の構成を説明すると、図11に骨子図を示すように、この自動変速機201は、エンジンAの出力軸と同一軸線上に配置されたプライマリシャフト210と、該シャフト210に平行に配置されたセカンダリシャフト220とを有し、プライマリシャフト210上に、エンジンAの出力が入力されるトルクコンバータ230と、該トルクコンバータ230の出力が入力される変速機構240と、該変速機構240からの出力を取り出すカウンタドライブギヤ211が配置されている。
【0081】
また、セカンダリシャフト220には、前記カウンタドライブギヤ211に噛み合う第1ギヤ221と、差動装置Bの入力ギヤDに噛み合う第2ギヤ222ととが設けられ、これらの構成要素が変速機ケース260に収納されている。そして、変速機構240の出力が、セカンダリシャフト220、差動装置B及び車軸C、Cを介して左右の前輪に伝達されるようになっている。
【0082】
前記トルクコンバータ230は、第1実施形態で用いた自動変速機1のものと同一の構成であり、また、エンジンAによりトルクコンバータ230を介してオイルポンプ237が駆動される構成も同様である。
【0083】
一方、変速機構240は、第1、第2、第3遊星歯車機構241、242、243を有し、これらが変速機ケース260内における前記カウンタドライブギヤ211の反エンジン側において、エンジン側からこの順で配置されている。
【0084】
また、この変速機構240は、前記カウンタドライブギヤ211のトルクコンバータ側に、第1クラッチ251及び第2クラッチ252が配置されていると共に、カウンタドライブギヤ211の反エンジン側には、第1ブレーキ253、第2ブレーキ254及び第3ブレーキ255がエンジン側からこの順で配置されており、さらに、第1ブレーキ253に並列にワンウェイクラッチ256が配置されている。
【0085】
そして、前記プライマリシャフト210が第3遊星歯車機構243のサンギヤ243aに連結されていると共に、第1遊星歯車機構241のサンギヤ241aと第2遊星歯車機構242のサンギヤ242a、第1遊星歯車機構241のリングギヤ241bと第2遊星歯車機構242のキャリヤ242c、第2遊星歯車機構242のリングギヤ242bと第3遊星歯車機構243のキャリヤ243cとが、それぞれ連結されている。そして、第1遊星歯車機構241のキャリヤ241cに前記カウンタドライブギヤ211が連結されている。
【0086】
また、第1遊星歯車機構241のサンギヤ241a及び第2遊星歯車機構242のサンギヤ242aは、前記第1クラッチ251を介してプライマリシャフト210に連結されており、第1遊星歯車機構241のリングギヤ241b及び第2遊星歯車機構242のキャリヤ242cは、前記第2クラッチ252を介してプライマリシャフト210に連結されている。
【0087】
さらに、第1遊星歯車機構241のリングギヤ241b及び第2遊星歯車機構242のキャリヤ242cは、並列に配置された前記第1ブレーキ253及びワンウェイクラッチ256を介して変速機ケース260に連結されており、第2遊星歯車機構242のリングギヤ242b及び第3遊星歯車機構243のキャリヤ243cは、前記第2ブレーキ254を介して変速機ケース260に連結されており、さらに、第3遊星歯車機構243のリングギヤ243bは、前記第3ブレーキ255を介して変速機ケース260に連結されている。
【0088】
以上の構成により、この変速機構240によれば、第1、第2クラッチ251、252及び第1、第2、第3ブレーキ253、254、255の締結状態の組み合わせにより、前進6速と後退速とが得られるようになっており、その締結、非締結の組み合わせと変速段の関係は図12に示すとおりである。
【0089】
なお、第1ブレーキ253はエンジンブレーキを作動させる1速で締結され、エンジンブレーキの非作動時には、これに並列のワンウェイクラッチ256がロックすることにより1速となる。
【0090】
次に、このFF車用自動変速機201の構成部品を用いて構成されるFRハイブリッド車の駆動装置について説明する。
【0091】
図13に骨子図を示すように、この駆動装置301は、軸線が車体前後方向に配置されエンジンA’の車両前後方向に延びる出力軸と同一軸線上に配置されたインプットシャフト310と、該シャフト310の後方に同一軸線上に配置されたアウトプットシャフト320と、これらのシャフト310、320に平行に配置されたカウンタシャフト370とを有する。
【0092】
そして、前記インプットシャフト310上には、前記FF車用自動変速機201から転用されて、エンジンA’の出力軸に連結されたトルクコンバータ230と、該トルクコンバータ230の出力が入力される変速機構340と、モータ380とが配置され、これらの構成要素が変速機ケース360に収納されている。
【0093】
前記変速機構340は、前述のFF車用自動変速機201の構成部品を用いて構成されている。
【0094】
つまり、該変速機構340においては、前記自動変速機201のプライマリシャフト210に相当するインプットシャフト310上の最も前方(エンジン側)に、自動変速機201の変速機構240を構成していた第1クラッチ251及び第2クラッチ252が配置されていると共に、その後方にモータ380が配置され、さらに、その後方にカウンタドライブギヤ311が配置されている。また、該カウンタドライブギヤ311の後方に、第1、第2、第3遊星歯車機構241、242、243と、第1ブレーキ253、第2ブレーキ254及び第3ブレーキ255が配置されており、さらに、第1ブレーキ253に並列にワンウェイクラッチ256が配置されている。
【0095】
そして、前記FF車用自動変速機201と同様に、第1遊星歯車機構241のサンギヤ241aと第2遊星歯車機構242のサンギヤ242a、第1遊星歯車機構241のリングギヤ241bと第2遊星歯車機構242のキャリヤ242c、第2遊星歯車機構242のリングギヤ242bと第3遊星歯車機構243のキャリヤ243cが、それぞれ連結されていると共に、前記インプットシャフト310が第3遊星歯車機構243のサンギヤ243aに連結され、第1遊星歯車機構241のキャリヤ241cに前記カウンタドライブギヤ311が連結されている。
【0096】
また、第1遊星歯車機構241のサンギヤ241a及び第2遊星歯車機構242のサンギヤ242aは、前記第1クラッチ251を介して前記インプットシャフト310に連結されており、第1遊星歯車機構241のリングギヤ241b及び第2遊星歯車機構242のキャリヤ242cは、前記第2クラッチ252を介してインプットシャフト310に連結されている。
【0097】
さらに、第1遊星歯車機構241のリングギヤ241b及び第2遊星歯車機構242のキャリヤ242cは、並列に配置された前記第1ブレーキ253及びワンウェイクラッチ256を介して変速機ケース360に連結されており、第2遊星歯車機構242のリングギヤ242b及び第3遊星歯車機構243のキャリヤ243cは、前記第2ブレーキ254を介して変速機ケース360に連結されており、さらに、第3遊星歯車機構243のリングギヤ243bは、前記第3ブレーキ255を介して変速機ケース360に連結されている。
【0098】
そして、この駆動装置301においおては、インプットシャフト310上において、変速機構340における最も前方(エンジン側)に位置する第1、第2クラッチ251、252が、その後方に配置されるカウンタドライブギヤ311及び変速機構340を構成する他の構成部品から分離され、該1、第2クラッチ251、252とカウンタドライブギヤ311との間に設けられた空間に前記モータ380が配置されている。
【0099】
このモータ380は、変速機ケース360に固定されたステータ381と、その内側に配置されたロータ382とを有し、これらがインプットシャフト310上に同心状に配置されている。そして、ロータ382が前記カウンタドライブギヤ311に連結されている。
【0100】
そして、このカウンタドライブギヤ311がカウンタシャフト370の前端に設けられた第1ギヤ371に噛み合わされていると共に、該カウンタシャフト370の後端に設けられた第2ギヤ372が前記アウトプットシャフト320上のカウンタドリブンギヤ321に噛み合わされている。
【0101】
これにより、インプットシャフト310上のカウンタドライブギヤ311で変速機構340からの出力とモータ380からの出力とが合流し、該カウンタドライブギヤ311から第1ギヤ371、カウンタシャフト370、第2ギヤ372及びカウンタドリブンギヤ321を介してアウトプットシャフト320に出力される。そして、この出力はプロペラシャフトを介して車両後部に配置された差動装置に伝達され、さらに該差動装置から左右に延びる車軸を介して左右の後輪に伝達されるようになっている。
【0102】
この駆動装置301は、以上のように、変速機構340を構成する第1〜第3遊星歯車機構241〜243、第1、第2クラッチ251、252、第1〜第3ブレーキ253〜255、及びワンウェイクラッチ256として、FF車用自動変速機1のものが使用されているから、この駆動装置301においても、図12に示す各摩擦要素の締結、非締結の組合せに従って、前進6速と後退速とが得られる。
【0103】
そして、この実施形態に係るFRハイブリッド車用駆動装置301も、前記実施形態に係る駆動装置101と同様、FF車用自動変速機201における変速機構240の各構成部品を、カウンタドライブギヤ211のエンジン側に配置された第1構成部品、即ち第1、第2クラッチ251、252と、該ギヤ211の反エンジン側に配置された第2構成部品、即ち第1〜第3遊星歯車機構241〜243、第1〜第3ブレーキ253〜255及びワンウェイクラッチ256とに分け、この第1、第2構成部品を、変速機ケース360内におけるモータ380の前方及び後方にそれぞれ配置することにより構成されることになる。
【0104】
また、この駆動装置301においても、第1構成部品と第2構成部品とを仕切るカウンタドライブギヤ311をモータ380の後方に配置したから、該カウンタドライブギヤ311をモータ380の前方に配置する場合に比べてカウンタシャフト370が短くなる。
【0105】
また、変速機構の構成部品のうち、第1、第2クラッチ251、252のみを第1構成部品とし、それ以外の各摩擦締結要素253〜255、ワンウェイクラッチ256及び遊星歯車機構241〜243を第2構成部品とし、構成が簡素な方の第1構成部品をモータ380と共にカウンタドライブギヤ311の前方に配置したので、この駆動装置301においても各構成部品がカウンタドライブギヤ311の前後にバランスよく配置されると共に、第1〜第3遊星歯車機構241〜243をモータ380やカウンタドライブギヤ311を挟んで前後に分散配置する場合に比較して変速機構が簡素に構成される。
【0106】
さらに、カウンタシャフト370がモータ380より後方に位置することにより、該モータ380の下方にスペースが生じ、このスペースを利用してコントロールバルブユニットを配置することができる。
【0107】
また、以上の実施形態では、FF車用変速機及びその構成部品を用いて構成されるFRハイブリッド車用駆動装置はいずれも自動変速機であるが、シャフトの構成と、カウンタドライブギヤの前後に構成部品が配置される構成が前記実施形態と同様であれば、本発明は手動変速機や無段変速機などについても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明によれば、FF車用自動変速機の構成部品を用いることにより、FRハイブリッド車の駆動装置を低コストで提供することができるので、この種の車両の製造産業で好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1、201 FF車用自動変速機
10、210 プライマリシャフト
11、211 カウンタドライブギヤ
20、220 セカンダリシャフト
40、240 変速機構
50 副変速機構
101、301 FRハイブリッド車用駆動装置
110、310 インプットシャフト
120、320 アウトプットシャフト
140、340 変速機構
150 副変速機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線が車両幅方向に延びるように配置されるFF車用の変速機の部品を用い、これにモータを加えて、軸線が車両前後方向に延びるように配置されるFRハイブリッド車用の駆動装置を構成する車両用駆動装置の構成方法であって、前記FF車用変速機として、エンジンの出力軸と同一軸線上に配置されるプライマリシャフトと、該シャフト上から動力を取り出すカウンタドライブギヤが設けられ、該ギヤのエンジン側に変速機構を構成する第1構成部品が、該ギヤの反エンジン側に変速機構を構成する第2構成部品が配設されているものを用い、車両前後方向に延びてエンジンからの動力が入力されるインプットシャフト上に、エンジン側から、前記FF車用変速機の第1構成部品、モータ、カウンタドライブギヤ、及び前記FF車用変速機の第2構成部品を配置することにより、軸線が車両前後方向に延びるFRハイブリッド車用の駆動装置を構成することを特徴とする車両用駆動装置の構成方法。
【請求項2】
前記FF車用変速機は、変速機構の構成部品として摩擦締結要素と遊星歯車機構とを含んでおり、このうち遊星歯車機構は前記第1構成部品には含まれず、第2構成部品にのみ含まれていることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置の構成方法。
【請求項3】
前記FF車用変速機はトルクコンバータを含んでおり、このFF車用変速機のトルクコンバータを用いてFRハイブリッド車用の駆動装置を構成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用駆動装置の構成方法。
【請求項4】
前記FF車用変速機として、プライマリシャフトに平行に配置され、前記カウンタドライブギヤと噛み合うカウンタドリブンギヤを有するセカンダリシャフトと、該セカンダリシャフト上に配置された第3構成部品とを有するものを用い、該第3構成部品を、前記インプットシャフトと同一軸線上の後方に配置することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用駆動装置の構成方法。
【請求項5】
前記インプットシャフトと同一軸線上に車両後方に延びるアウトプットシャフトを配置すると共に、該インプットシャフト及びアウトプットシャフトに平行にカウンタシャフトを配置し、前記カウンタドライブギヤからカウンタシャフトを介してアウトプットシャフトに至る動力伝達経路を構成すると共に、前記カウンタシャフトの軸線を、インプットシャフト及びアウトプットシャフトの軸線に対し、当該駆動装置の車載時に排気管が配設される側方と反対側となる側方に配置することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用駆動装置の構成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−37296(P2011−37296A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183462(P2009−183462)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】