説明

車両用駆動装置

【課題】車のホイールの内側にステータとロータとを設けてホイールを駆動する車両用駆動装置において、製造コストを増大させずに、ステータ全体を強力に冷却できるようにすること。
【解決手段】車両用駆動装置は、ステータコア20および中空のステータコイル30を有し、回転する車のホイール10の内側に配置されて電気的に磁力を発生するステータと、ホイール10と接続された永久磁石11を有し、ステータの磁力によってホイール10に回転力を与えるロータと、ステータコイル20の中空部位に流れる冷却媒体と、冷却媒体の放熱を行う第1のラジエータ部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車のホイールを駆動する車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車のホイール内に電動モータを設けたインホイールモータおよびその冷却構造について幾つかの提案がなされている。例えば、特許文献1では、インホイールモータのステータコイルを囲うケース内にオイルを入れてステータコイルを冷却する構成が提案されている。
【0003】
また、本願発明に関連する技術として、特許文献2には、電磁コイルの中空部に流体を流すことで、電磁コイルの冷却を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−086894号公報
【特許文献2】特開平10−022068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インホイールモータを冷却するために、ステータコイルをオイルに浸漬して冷却する構成を採用した場合、ステータコイルの周囲をシールされたケースで覆う必要が生じる。回転体を含む部分をシールされたケースで覆う構成を採用した場合、ケースに高い剛性および加工精度が要求されて、インホイールモータの製造コストが増大するという課題が生じる。
【0006】
また、特許文献2に開示の電磁コイルの冷却技術は、電磁コイルのみの冷却に主眼が置かれたものであり、インホイールモータのようにステータコイルおよびステータコアの両方を冷却する必要のある構成とは異なる。インホイールモータでは、強力な振動磁界によってステータコアが大きく発熱するため、ステータコイルの大きな冷却が必要であった。
【0007】
本発明の目的は、車のホイールの内側にステータとロータとを設けてホイールを駆動する車両用駆動装置において、製造コストを増大させずに、ステータ全体を大きく冷却できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両用駆動装置は、ステータコアおよび中空のステータコイルを有し、車のホイールの内側に配置されて電気的に磁力を発生するステータと、前記ホイールと接続された永久磁石を有し、前記ステータの磁力によって前記ホイールに回転力を与えるロータと、前記ステータコイルの中空部位に流れる冷却媒体と、前記冷却媒体の放熱を行う第1のラジエータ部と、を具備する構成を採る。
【0009】
本発明の一態様に係る車両用駆動装置は、前記ステータコイルの配線の横断面における前記ステータコアに接触する側が直線状である構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造コストを増大させずに、ステータを強力に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1の車両用駆動装置を示す構成図
【図2】本発明の実施の形態1の車両用駆動装置のホイールとステータの支持構造を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態1の車両用駆動装置のステータコイルの構造を示す一部破断の斜視図
【図4】本発明の実施の形態2の車両用駆動装置のステータコイルの構造を示す一部破断の斜視図
【図5】本発明の実施の形態3の車両用駆動装置のステータコイルの構造を示す一部破断の斜視図
【図6】本発明の実施の形態4の車両用駆動装置における追加構成を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の車両用駆動装置を示す構成図、図2は、車輪用駆動装置のホイールとステータの支持構造を示す斜視図である。
【0014】
実施の形態1の車両用駆動装置は、図1に示すように、ホイール10と、永久磁石11と、ステータコア20と、ステータコイル30Aと、ステータコイル30Aと一連にされた管体30と、モータ駆動装置40と、ラジエータ50と、から主に構成される。
【0015】
これらの構成のうち、永久磁石11、ステータコア20およびステータコイル30Aが電磁モータ(インホイールモータと呼ばれる)を構成する。また、ホイール10と永久磁石11が電磁モータのロータを構成し、ステータコア20とステータコイル30Aが電磁モータのステータを構成する。
【0016】
ホイール10は、例えば電気自動車の車輪であり、外周にタイヤがはめ込まれ、内周側にステータコア20を配置する空間が設けられている。図2に示すように、ホイール10は、フレーム13と、リング状のベアリング15とを介して車軸18に回転可能に支持されている。車軸18は、車体に対して非回転状態に固定される。
【0017】
永久磁石11は、ホイール10の内周面に固定され、所定角度ごとにS極とN極とが現われるように配置される。
【0018】
ステータコア20は、磁性体から構成される。ステータコア20は、端面が永久磁石11に対向して磁束を放出する複数の磁極部21を有し、ボディ部分にステータコイル30Aが巻回されている。ステータコイル30Aはステータコア20に強固に巻回され、それによりステータコア20とステータコイル30Aとの間の熱伝導性が高く維持される。ステータコア20は、磁極部21の端面が永久磁石11と僅かな隙間を開けて、図2に示すように、非回転の車軸18に非回転の状態で保持される。
【0019】
図3は、ステータコイル30Aの構造を示す一部破断の斜視図である。この図3は、ステータコイル30Aの配線を長手方向に沿った方向と長手方向に垂直な方向とに切断した状態を表わしている。
【0020】
ステータコイル30Aは、電流が流されてステータコア20に磁界を発生させるコイルである。また、ステータコイル30Aの配線は、図3に示すように、内部に空洞部33を有する管状の形態であり、この空洞部33に冷却媒体が流されてステータを冷却する。冷却媒体は、例えば冷却用オイルなどである。
【0021】
ステータコイル30Aの配線は、単純な導線と比較して配線一本の太さが大きくなるため、ステータコア20に巻きつける回数は多くできない。しかしながら、ステータコイル30Aに大電流を流すことでステータに必要量の磁束を発生させることができる。
【0022】
ステータコイル30Aの配線は、図3に示すように、外周を覆う例えば樹脂などの絶縁被膜31と、電気を流す金属管32と、金属管32の中空部分である空洞部33と、から主に構成される。金属管32は、例えば銅など高い熱伝導を有する材料により構成される。絶縁被膜31は、絶縁体であり且つ熱伝導の高い材料により構成される。
【0023】
管体30は、ステータコイル30Aの配線と同一の構成である。この管体30は、モータ駆動装置40とステータコイル30Aとを電気的に接続する配線として機能するとともに、ステータコイル30Aとラジエータ50とを接続して冷却媒体を送る配管として機能する。管体30は、図2に示すように、車軸18の中空部を介してホイール10の内側まで通される。
【0024】
モータ駆動装置40は、運転の操作に基づいてステータコイル30Aに電流を流してホイール10を回転駆動する。モータ駆動装置40の電極41a,41bは、導線によって管体30の金属管32に電気的に接続されている。この導線は、管体30の絶縁被膜31を破って内部の金属管32に接続される。
【0025】
なお、図1では、モータ駆動装置40からステータコイル30Aには2つの配線が接続されている。しかし、電磁モータを多相モータとする場合には、ステータコア20に複数のステータコイル30Aを巻回して、これら複数のステータコイル30Aにつながる3つ以上の管体30に、モータ駆動装置40から3つ以上の配線を接続する構成とすればよい。また、ステータコア20は、3つ以上の磁極部21を有する構成とすればよい。がそして、モータ駆動装置40が複数のステータコイル30Aの電流制御を行うことで、多相モータを駆動することができる。
【0026】
ラジエータ50は、ステータコイル30Aに流れる冷却媒体と外気との間で熱交換を行って冷却媒体の放熱を行う。ラジエータ50と管体30とは、両者間に電流が流れないように電気的に絶縁されて互いに接続される。このラジエータ50には、ポンプが設けられ、冷却媒体をステータコイル30Aとラジエータ50との間で循環させる。なお、ポンプは、ラジエータ50の外部に設けられていてもよい。
【0027】
実施の形態1の車両用駆動装置においては、モータ駆動装置40が運転操作に応じてステータコイル30Aに電流を流す。この電流により、ステータコイル30Aおよびステータコア20に磁束が発生して、永久磁石11およびホイール10に電磁力が及ぼされる。そして、この電磁力によってホイール10が回転する。ホイール10は、非回転の車軸18に支持されつつベアリング15を介して回転する。
【0028】
また、実施の形態1の車両用駆動装置においては、ラジエータ50で冷却された冷却媒体が管体30を介してステータコイル30Aの内部を流れる。従って、モータ駆動に伴ってステータコア20とステータコイル30Aとが発熱するが、ステータコイル30Aは冷却媒体により直接的に冷却される。さらに、ステータコア20にはステータコイル30Aが熱伝導の高い状態で接触しているので、ステータコア20はステータコイル30Aによって大きく冷却される。
【0029】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2の車両用駆動装置のステータコイルの構造を示す一部破断の斜視図である。
【0030】
実施の形態2の車両用駆動装置は、ステータコイル30Aを構成する管体30を、一方の面35を平たい形状としたものである。そして、この平たい面35がステータコア20に接するようにステータコア20に巻回されている。言い換えれば、管体30の横断面(長手方向に垂直な断面)において、ステータコア20に接する側(面35)が直線状にされている。
【0031】
このような構成により、ステータコア20とステータコイル30Aとの接触密度が増して、ステータコア20とステータコイル30Aとの熱伝導性をより高くすることができる。
【0032】
さらに、実施の形態2のステータコイル30Aを構成する管体30は、空洞部33のステータコア20側の内周面36が平たい形状にされている。言い換えれば、管体30の横断面における空洞部33のステータコア20側が直線状にされ、且つ、ステータコイル30Aの逆側よりもステータコイル30A側が広くされている。
【0033】
このような構成により、空洞部33を流れる冷却媒体は、ステータコア20に近い側で流量が大きくなり、ステータコア20の方をより集中的に冷却することができる。
【0034】
従って、実施の形態2の車両用駆動装置によれば、ステータコア20をより強力に冷却することができて、ステータ全体をより均等に冷却することができる。
【0035】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3の車両用駆動装置のステータコイルの構造を示す一部破断の斜視図である。
【0036】
実施の形態3の車両用駆動装置は、実施の形態2と同様に、ステータコイル30Bを構成する管体30の一方の面35が平たい形状にされている。さらに、この実施の形態3では、ステータコイル30Bを構成する管体30の空洞部33が断面矩形状にされて、ステータコア20側に偏心した配置にされている。
【0037】
このような構成により、空洞部33を流れる冷却媒体は、ステータコア20に近い側でより多く熱を吸収するので、ステータコア20の方をより集中的に冷却することができる。
【0038】
従って、実施の形態3の車両用駆動装置によれば、ステータコア20をより強力に冷却することができて、ステータ全体をより均等に冷却することができる。
【0039】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4の車両用駆動装置における追加構成を示した構成図である。図6においては、図1の管体30、ステータコイル30A、モータ駆動装置40およびラジエータ50が省略され、実施の形態4の追加構成が主に示されている。
【0040】
実施の形態4の車両用駆動装置は、実施の形態1と同様に、管体30、ステータコイル30A、モータ駆動装置40およびラジエータ(第1のラジエータ)50を備えている。さらに、実施の形態4の車両用駆動装置は、図6に示すように、管体60および第2のラジエータ70を備えている。
【0041】
管体60は、内部に冷却媒体(例えば冷却用オイル)を流すとともに、一部がステータコア20の内部に埋め込まれている。管体60とステータコア20とは高い熱伝導性を有して接触している。或いは、ステータコア20の内部にステータコア20内の多くの範囲に及ぶ経路で設けられた貫通孔に管体60が接続される構成としてもよい。
【0042】
第2のラジエータ70は、管体60に流れる冷却媒体と外気との間で熱交換を行って冷却媒体の放熱を行う。第2のラジエータ70には、ポンプが設けられ、冷却媒体を管体60と第2のラジエータ70との間で循環させる。なお、ポンプは、第2のラジエータ70の外部に設けられていてもよい。
【0043】
実施の形態4の車両用駆動装置によれば、ステータコイル30Aによるステータコア20の冷却に加えて、管体60によるステータコア20の直接的な冷却が行われて、ステータコア20の発熱をより抑えることができる。それにより、ステータ全体がより均等に冷却される。
【0044】
以上、本発明の各実施の形態について説明した。
【0045】
なお、各実施の形態では、ステータコイル30Aの配線とステータの外に伸びる管体30とが同一の構成であると説明した。しかしながら、両者の構造を異ならせて、ステータコイル30Aの部分は熱伝導性の高い構成とし、ステータの外に伸びる管体30の部分は熱伝導性の低い構成としてもよい。
【0046】
また、ステータコイル30Aの絶縁被膜31の材質および/または金属管32の材質は、ステータコア20に接する側とその逆側とで異ならせてもよい。具体的には、ステータコア20に接する側は熱伝導性の高い材質とし、その逆側は熱伝導性の低い材質としてもよい。
【0047】
また、各実施の形態では、車軸を管状にして、管体30が車軸の中を通されてステータコア20まで導かれる構成としたが、車軸に貫通孔を設けてこの貫通孔とステータコイル20とが接続されて冷却媒体が導かれる構成としてもよい。この場合、車軸内に導線を設け、モータ駆動装置はこの導線を介してステータコイル20へ電流を流す構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電気自動車の駆動装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
10 ホイール
11 永久磁石
20 ステータコア
21 磁極部
30 管体
30A ステータコイル
31 絶縁被膜
32 金属管
33 空洞部
40 モータ駆動装置
50 第1のラジエータ
60 管体
70 第2のラジエータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアおよび中空のステータコイルを有し、車のホイールの内側に配置されて電気的に磁力を発生するステータと、
前記ホイールと接続された永久磁石を有し、前記ステータの磁力によって前記ホイールに回転力を与えるロータと、
前記ステータコイルの中空部位に流れる冷却媒体と、
前記冷却媒体の放熱を行う第1のラジエータ部と、
を具備する車両用駆動装置。
【請求項2】
前記ステータコイルの配線の横断面における前記ステータコアに接触する側が直線状である
請求項1記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記ステータコイルの配線の横断面における前記中空部位の前記ステータコア側が前記ステータコアの接触面に沿って直線状である
請求項2記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記ステータコイルの前記中空部位が、前記ステータコア側に偏心している
請求項1記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記ステータコイルの前記中空部位が、前記ステータコア側が前記ステータコアの逆側よりも広く形成されている
請求項1記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記ステータコアの内部に通じるとともに冷却媒体が流れる冷却管と、
前記冷却管に流れる冷却媒体の放熱を行う第2のラジエータ部と、
をさらに具備する請求項1記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記ホイールを回転可能に支持するとともに前記ステータコアを非回転に支持する管状の車軸を、さらに具備し、
前記永久磁石は前記ホイールの内周面に固定され、
前記ステータコアは前記ホイールの前記永久磁石より中心よりに配置され、
前記ステータコイルの配線は前記車軸の中空部を通されて前記ステータコアに巻回されている
請求項1記載の車両用駆動装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90357(P2013−90357A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225863(P2011−225863)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】