説明

車両用駆動車輪の駆動装置

【課題】駆動機構の出力軸10cを駆動車輪の回転軸32に等速自在継手Jを介して連結して、駆動機構の電動モータ10aを駆動することによって駆動車輪Wを回転駆動する駆動装置Dにおいて、駆動機構を構成する電動モータ10aからの駆動力を、大きなトルクの損失を及ぼすことなく駆動車輪Wに伝達させることを前提として、等速自在継手Jを構成する構成部材間でのフレッティング摩耗の発生を大幅に抑制して、等速自在継手Jの耐久性を向上させる。
【解決手段】駆動機構と駆動車輪Wに振動が発生しない通常の状態において、駆動機構の出力軸10cと駆動車輪Wの回転軸32間には所定のジョイント角θを設定して、振動発生時のボール53、ローラ63、スパイダ73の嵌合部での自由な動きを許容して、フレッティング摩耗の発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動車輪の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用駆動装置の一形式として、車両を構成する各車輪を個別的に駆動するための駆動装置がある。本発明においては、当該駆動装置を車両用駆動車輪の駆動装置と称する。しかして、車両用駆動車輪の駆動装置は、車体に組付けた懸架装置に支持機構を介して回転可能に支持された駆動車輪を駆動するための駆動装置であって、インホイールモータ駆動方式の駆動装置として知られている。当該形式の駆動装置は、電動モータを駆動源とする駆動機構であって、当該駆動機構は前記支持機構に支持された状態で、その出力軸を前記駆動車輪の回転軸に等速自在継手を介して連結されている。当該形式の駆動装置においては、車両に上下方向に揺動可能に支持されている駆動車輪は、駆動機構を構成する電動モータを駆動することにより回転駆動されて、車両を前進走行または後進走行させるものである(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2005−238935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、当該形式の駆動装置においては、等速自在継手を介して互いに連結している駆動機構の出力軸と駆動車輪の回転軸とは同軸的に連結する構成となっている。このため、このような連結構造を採る駆動装置においては、駆動機構を構成する電動モータの駆動力はトルクの損失が極めて少ない状態で駆動車輪の回転軸に伝達され、当該駆動車輪を効率よく駆動することができる。しかしながら、当該連結構造では、駆動機構の出力軸と駆動車輪の回転軸とが同軸的に連結していることから、車体側から伝達される振動は、当該連結構造を採る等速自在継手の結合部に垂直状態に作用することになる。
【0004】
このため、当該振動は、ボール型やトリポード型の等速自在継手にあっては、ボールやローラが嵌合する溝部の底部に対して垂直状態に作用し、結果的には、ボールやローラは溝部の底部にて挟持されて溝部内での自由な動きを規制された状態で振動を受けることになり、等速自在継手を構成する構成部材間にて微動摩耗、換言すれば、フレッティング摩耗が発生し、等速自在継手の耐久性に大きく影響を及ぼすことになる。また、フック式ユニバーサルジョイントである等速自在継手にあっては、当該振動は、スパイダの各脚部が嵌合する各ヨークの嵌合部位に対して垂直状態に作用し、結果的には、スパイダの各脚部は各嵌合部位内に押付けらて、嵌合部位内での自由な動きを規制された状態で振動を受けることになり、等速自在継手を構成する構成部材間にて微動摩耗、換言すれば、フレッティング摩耗が発生し、等速自在継手の耐久性に大きく影響を及ぼすことになる。
【0005】
従って、本発明の目的は、駆動機構を構成する電動モータからの駆動力を、大きなトルクの損失を及ぼすことなく駆動車輪に伝達させることを前提として、等速自在継手を構成する構成部材間でのフレッティング摩耗の発生を大幅に抑制して、等速自在継手の耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両用駆動車輪の駆動装置に関する。本発明が適用対象とする車両用駆動車輪の駆動装置は、車体に組付けた懸架装置に支持機構を介して回転可能に支持された駆動車輪を駆動する形式の駆動装置である。しかして、本発明に係る駆動装置は電動モータを駆動源とする駆動機構であって、前記支持機構に支持された状態で、前記駆動機構の出力軸が前記駆動車輪の回転軸に等速自在継手を介して連結されていて、前記駆動機構と前記駆動車輪に振動が発生しない通常の状態において、前記駆動機構の出力軸と前記駆動車輪の回転軸間には所定のジョイント角が設定されていて、当該ジョイント角は、採用する等速自在継手の形式に応じて0度を越えて15度までの範囲の所定の角度に設定されることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る車両用駆動車輪の駆動装置においては、前記駆動機構を前記電動モータの駆動速度を減速する減速機構を備える構成として、同減速機構の出力軸を前記駆動機構の出力軸として、同出力軸を前記駆動車輪の回転軸とは前記等速自在継手を介して連結するようにして、前記出力軸と前記回転軸との間に所定のジョイント角を設定するようにすることができる。
【0008】
また、本発明に係る車両用駆動車輪の駆動装置においては、前記等速自在継手としてボール型等速ジョイントまたは首振り式トリポード型等速ジョイントを採用する場合には、前記ジョイント角をを4度以上15度以下の範囲の所定の角度に設定し、前記等速自在継手としてスライド式トリポード型等速ジョイントを採用する場合には、前記ジョイント角を2度以上5度以下の範囲の所定の角度に設定し、前記等速自在継手としてフック式ユニバーサルジョイントを採用する場合には、前記ジョイント角を0度を超えて3度までの範囲の所定の角度に設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両用駆動車輪の駆動装置においては、駆動機構の出力軸と駆動車輪の回転軸とを連結する連結構造では、出力軸と回転軸間に所定のジョイント角を設定している。このため、車体側から伝達される振動は、当該連結構造を採る等速自在継手の溝部に嵌合するボールやローラ等には、溝部の底部に対しては斜め方向に作用し、ボールやローラ等は溝部内での自由な動きを許容された状態で振動を受けることになり、また、スパイダの各脚部には、各嵌合部位内に対しては斜め方向に作用し、スパイダは嵌合部位内での自由な動きを許容された状態で振動を受けることになる。このため、等速自在継手を構成する構成部材間での微動摩耗の発生、換言すれば、フレッティング摩耗の発生を大幅に抑制することができて、等速自在継手の耐久性を大きく向上させることができる。
【0010】
本発明に係る車両用駆動車輪の駆動装置においては、具体的には、駆動機構を、電動モータと電動モータの駆動速度を減速する減速機構を備える構成とすることができ、この場合には、同減速機構の出力軸を駆動車輪の回転軸と等速自在継手を介して連結して、回転軸との間に所定のジョイント角を設定するようにする。
【0011】
また、本発明に係る車両用駆動車輪の駆動装置においては、出力軸と回転軸間のジョイント角は、伝達トルクの損失の低減とフレッティング摩耗の低減との関係により設定されるが、形式を異にする等速自在継手においては、各形式の等速自在継手に対応して設定するのが好ましい。
【0012】
本発明に係る車両用駆動車輪の駆動装置において、前記等速自在継手としてボール型等速ジョイントまたは首振り式トルポード型等速ジョイントを採用する場合には、ジョイント角を4度以上15度以下の範囲の所定の角度に設定することが好ましい。当該形式の等速自在継手において、ジョイント角が4度未満である場合には、ボール等が狭い範囲で荷重変動しフレッティング摩耗が発生しやすく、ジョイント角が15度を超えるとボール等の荷重変動が大きくなって当該等速自在継手の寿命が低下する。
【0013】
また、本発明に係る車両用駆動車輪の駆動装置において、前記等速自在継手としてスライド式トリポード型等速ジョイントを採用する場合には、ジョイント角を2度以上5度以下の範囲の所定の角度に設定することが好ましい。当該形式の等速自在継手において、ジョイント角が2度未満であると、ローラが狭い範囲で荷重変動してフレッティング摩耗が発生しやすく、ジョイント角が5度を超えると、誘起スラスト力が大きくなる。
【0014】
また、本発明に係る車両用駆動車輪の駆動装置において、前記等速自在継手としてフック式ユニバーサルジョイントを採用する場合には、ジョイント角を0度を超えて3度までの範囲の所定の角度に設定することが好ましい。当該形式の等速自在継手において、ジョイント角をこれ以上大きく設定すると、トルク変動が発生することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、車体に組付けた懸架装置に支持機構を介して回転可能に支持された駆動車輪を駆動するための駆動装置であって、電動モータを駆動源とする駆動機構を備える形式の駆動装置である。図1には、本発明の一実施形態に係る車両用駆動車輪の駆動装置を示している。当該駆動装置Dは、インホイールモータ駆動方式の駆動装置であって、電動モータ10a、減速機構10b、および、出力軸10cを備え、車両の懸架装置Sを構成するアッパーアーム21およびロアアーム22にナックル23を介して支持された駆動車輪Wを回転駆動すべく機能する。
【0016】
駆動車輪Wは、ホイールディスク31の中央部に取付けられているホイールハブ32を備え、ホイールハブ32はハブベアリング33を介してナックル23に回転可能に支持されている。駆動車輪Wを支持するナックル23を構成するアーパーナックル部23aは、その先端部にて、ボールジョイント23a1を介してアッパーアーム21の先端部に連結されており、また、ロアナックル部23bは、その先端部にて、ボールジョイント23b1を介してロアアーム22の先端部に連結されている。
【0017】
なお、懸架装置Sを構成するアーパーアーム21およびロアアーム22の基端部は、車体の側部に上下動可能に連結されており、また、ロアアーム22の途中の部位には、上端部を車体側に連結されているショックアブソーバ24の下端部が回動可能に連結されている。これにより、駆動車輪Wは、懸架装置Sに対しては上下動可能に支持され、ナックル23に対しては回転可能に組付けられている。
【0018】
しかして、当該駆動装置Dにおいては、駆動機構を構成する電動モータ10a、減速機構10b、および出力軸10cは、ケース10d内に収納されているもので、当該駆動装置Dは、図1には模式的に示されている。当該駆動装置Dを構成する電動モータ10a、減速機構10b、および出力軸10cを収納しているケース10dは、その外周の上部にて、ナックル23のアッパーナックル部23aにダンパー23a2を介して支持され、また、その外周の下部にて、ナックル23のロアナックル部23bにダンパー23b2を介して支持されている。
【0019】
当該駆動装置Dを構成する電動モータ10aは従来公知のもので、ステータ11およびロータ12を備えている。ステータ11は、ステータコアにステータコイルを巻回してなるもので、ケース10dの内周に固定されている。ロータ12は、モータ出力軸13の外周に固定されて、ステータ11の内周側に同心的に配置されている。モータ出力軸13は、ケース10d内にて回転可能に支持されている。
【0020】
減速機構10bは、プラネタリギヤユニットを基本構成とする減速機構であって、サンギヤ軸、サンギヤ、ピニオンギヤ、プラネタリキャリアおよびリングギヤを備える従来公知のものである。当該減速機構10bにおいては、サンギヤ軸は、電動モータ10aのモータ出力軸13に連結されていて、ベアリングを介して、ケース10d内に回転可能に支持されている。出力軸10cは、減速機構10bの出力部材にトルク伝達可能に連結されて、電動モータ10aのモータ出力軸13と同軸上に位置して、ケース10dの中央部を貫通した状態で、ケース10dに回転可能に支持されている。
【0021】
駆動車輪Wのホイールディスク31に組付けられているホイールハブ32は、当該駆動車輪Wの回転軸を構成するもので、駆動装置Dを構成する出力軸10cはホイールハブ32に、ホイールハブ32の内孔内に配設されている等速自在継手Jを介して連結されている。ホイールハブ32は、当該駆動車輪Wの回転軸を構成することから、以下では、ホイールハブ32を、当該駆動車輪Wの回転軸32と称することがある。
【0022】
駆動装置Dの駆動機構を構成する出力軸10cと回転軸32(ホイールハブ)の当該連結構造では、出力軸10cと回転軸32間に所定のジョイント角θが設定されている。ジョイント角θとは、出力軸10dの軸線L1と回転軸32の軸線L2とがなす交差角度をいう。当該駆動装置Dでは、ジョイント角θは、0度を超えて15度以内の範囲において、採用する等速自在継手Jの形式に応じて所定の角度に設定される。なお、図1に示す符号41はホイールデスク31のリム上に組付けられているタイヤであり、符号42はキャリパ型ブレーキである。
【0023】
このように構成した当該駆動装置Dにおいては、車体に搭載されているスイッチング回路から電動モータ10aに電流を供給することにより電動モータ10aが駆動し、電動モータ10aの駆動力は減速機構10bにて減速された状態で出力軸10cに出力され、出力軸10cに等速自在継手Jを介して連結している駆動車輪Wの回転軸32(ホイールハブ)に伝達される。これにより、駆動車輪Wは駆動して、車両を走行させる。
【0024】
ところで、当該駆動装置Dにおいては、その出力軸10cと駆動車輪Wの回転軸32とを連結する連結構造では、出力軸10cと回転軸32間に所定のジョイント角θを設定している。このため、車体側から伝達される振動は、当該連結構造を採る等速自在継手Jを構成する構成部材間での微動摩耗の発生、換言すれば、フレッティング摩耗の発生を大幅に抑制することができ、等速自在継手Jの耐久性を大きく向上させることができる。
【0025】
当該等速自在継手Jがボール型等速ジョイント、首振り式トリポート型等速ジョイント、スライド式トリポード型等速ジョイントである場合には、車体側から伝達される振動は、当該連結構造を採る等速自在継手Jの溝部に嵌合するボールやローラ等には、溝部の底部に対しては斜め方向に作用し、ボールやローラ等は溝部内での自由な動きを許容された状態で振動を受けることになり、等速自在継手Jを構成する構成部材間での微動摩耗の発生、換言すれば、フレッティング摩耗の発生を大幅に抑制することができ、等速自在継手Jの耐久性を大きく向上させることができる。
【0026】
また、当該等速自在継手Jがフック式ユニバーサルジョイントである場合には、車体側から伝達される振動は、スパイダの各脚部には各嵌合部位内に対して斜め方向に作用し、スパイダは嵌合部位内での自由な動きを許容された状態で振動を受けることになって、等速自在継手Jを構成する構成部材間での微動摩耗の発生、換言すれば、フレッティング摩耗の発生を大幅に抑制することができ、等速自在継手の耐久性を大きく向上させることができる。
【0027】
当該駆動装置Dにおいては、出力軸10cと回転軸32を連結するために使用する等速自在継手Jとしては、ボール型等速ジョイント、スライド式トリポード型等速ジョイント、首振り式トリポード型等速ジョイント、フック式ジョイント等各種形式の等速自在継手を採用することができる。この場合には、出力軸10cと回転軸32間のジョイント角θは、採用する形式の等速自在継手に応じて、適切に設定することが好ましい。図2〜図7には、本発明に係る駆動装置Dで採用することができる等速自在継手を例示している。図2〜図4に示す等速自在継手50a,50b,50cは3種類のボール型等速ジョイントであり、また、図5および図6に示す等速自在継手60a,60bは2種類のトリポード型等速ジョントであり、また、図7に示す等速自在継手70はフック式ユニバーサルジョイントである。
【0028】
図2に示す等速自在継手であるアンダーカットフリー型等速ジョイント50a(UFJ)は、アウターレース51a、インナレース52a、ボール53a、および、ボール53aを保持するボールケージ54aを備えるもので、アウタレース51aはホイールハブである回転軸32の先端に固定され、インナレース52aは、駆動装置Dの出力軸10cの先端にトルク伝達可能に連結されて、出力軸10cと回転軸32を連結する。
【0029】
図3に示す等速自在継手であるツェッパ型等速ジョイント50b(BJ)は、アウターレース51b、インナレース52b、ボール53b、および、ボール53bを保持するボールケージ54bを備えるもので、アウタレース51bはホイールハブである回転軸32の先端に固定され、インナレース52bは、駆動装置Dの出力軸10cの先端にトルク伝達可能に連結されて、出力軸10cと回転軸32を連結する。
【0030】
図4に示す等速自在継手であるダブルオフセット型等速ジョイント50c(DOJ)は、アウターレース51c、インナレース52c、ボール53c、および、ボール53cを保持するボールケージ54cを備えるもので、アウタレース51cはホイールハブである回転軸32の先端に固定され、インナレース52cは、駆動装置Dの出力軸10cの先端にトルク伝達可能に連結されて、出力軸10cと回転軸32を連結する。
【0031】
かかる構成のアンダーカットフリー型等速ジョイント50a、ツェッパ型等速ジョイント50b、または、ダブルオフセット型等速ジョイント50cを採用する場合には、図1に示すジョイント角θを4度以上15度以下の範囲の所定の角度に設定することが好ましい。これらの等速自在継手において、ジョイント角θが4度未満である場合には、ボール等が狭い範囲で荷重変動しフレッティング摩耗が発生しやすく、ジョイント角θが15度を超えるとボール等の荷重変動が大きくなって当該等速自在継手の寿命が低下する。
【0032】
図5に示す等速自在継手であるスライド式トリポード型等速ジョイント60a(GI)は、アウタレース61a、トリポード62a、ローラ63aを備えるもので、アウタレース61aはホイールハブである回転軸32の先端に固定され、トリポード62aは、駆動装置Dの出力軸10cの先端にトルク伝達可能に連結されて、出力軸10cと回転軸32を連結する。
【0033】
図6に示す等速自在継手である首振り式トリポード型等速60b(GE)は、アウタレース61b、トリポード62b、ローラ63bを備えるもので、アウタレース61bはホイールハブである回転軸32の先端に固定され、トリポード62bは、駆動装置Dの出力軸10cの先端にトルク伝達可能に連結されて、出力軸10cと回転軸32を連結する。
【0034】
かかる構成のスライド式トリポード型等速ジョイント60a、または、首振り式トリポード型等速ジョイント60bを採用する場合には、図1に示すジョイント角θを2度以上5度以下の範囲の所定の角度に設定することが好ましい。これらの等速自在継手において、ジョイント角θが2度未満であると、ローラが狭い範囲で荷重変動してフレッティング摩耗が発生し、ジョイント角θが5度を超えると、誘起スラスト力が大きくなる。
【0035】
図7に示す等速自在継手であるフック式ユニバーサルジョイント70は、シャフトヨーク71と、ジョイントヨーク72と、スパイダ73を備えるもので、シャフトヨーク71は出力軸10cの先端に固定され、ジョイントヨーク72はホイールハブである回転軸32の先端に組付けられていて、スパイダ73は、その縦方向に延びる各脚部をシャフトヨーク71の各腕部に設けらている嵌合穴に回転自在に嵌合され、かつ、その横方向に延びる各脚部をジョイントヨーク72の各腕部に設けらている嵌合穴に回転自在に嵌合されて、出力軸10cと回転軸32を連結する。かかる構成のフック式ジョイント70を採用する場合には、図1に示すジョイント角θを0度を超えて3度までの範囲の所定の角度に設定するようにする。当該フック式ジョイント70において、ジョイント角θをこれ以上大きく設定すると、トルク変動が発生することになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る駆動装置を車両懸架装置に支持した状態を概略的に示す縦断側面である。
【図2】本発明に係る駆動装置の連結手段である等速自在継手として採用することができるアンダーカットフリー型等速ジョイントを示す縦断側面図である。
【図3】本発明に係る駆動装置の連結手段である等速自在継手として採用することができるツェッパ型等速ジョイントを示す縦断側面図である。
【図4】本発明に係る駆動装置の連結手段である等速自在継手として採用することができるダブルオフセット型等速ジョイントを示す縦断側面図である。
【図5】本発明に係る駆動装置の連結手段である等速自在継手として採用することができるスライド式トリポード型等速ジョイントを示す縦断側面図である。
【図6】本発明に係る駆動装置の連結手段である等速自在継手として採用することができる首振り式トリポード型等速ジョイントを示す縦断側面図である。
【図7】本発明に係る駆動装置の連結手段である等速自在継手として採用することができるフック式ユニバーサルジョイントを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
D…駆動装置、W…駆動車輪、S…懸架装置、J…等速自在継手、10a…電動モータ、10b…減速機構、10c…出力軸、10d…ケース、11…ステータ、12…ロータ、13…モータ出力軸、21…アッパーアーム、22…ロアアーム、23…ナックル、23a…アーパーナックル部、23b…ロアナックル部、23a1,23b1…ボールジョイント、23a2,23b2…ダンパー、24…ショックアブソーバ、31…ホイールディスク、32…ホイールハブ、33…ハブベアリング、41…タイヤ、42…ブレーク、50a…アンダーカットフリー型等速ジョイント、50b…ツェッパ型等速ジョイント、50c…ダブルオフセット型等速ジョイント、51a,51b,51c…アウターレース、52a,52b,52c…インナレース、53a,53b,53c…ボール、54a,54b,54c…ボールケージ、60a…スライド式トリポード型等速ジョイント、60b…首振り式トリポード型等速ジョイント、61a,61b…アウタレース、62a,62b…トリポード、63a,63b…ローラ、70…フック式ユニバーサルジョイント、71…シャフトヨーク、72…ジョイントヨーク、73…スパイダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に組付けた懸架装置に支持機構を介して回転可能に支持された駆動車輪を駆動するための駆動装置であり、当該駆動装置は電動モータを駆動源とする駆動機構であって、前記支持機構に支持された状態で、前記駆動機構の出力軸が前記駆動車輪の回転軸に等速自在継手を介して連結されていて、前記駆動機構と前記駆動車輪に振動が発生しない通常の状態において、前記駆動機構の出力軸と前記駆動車輪の回転軸間には所定のジョイント角が設定されていて、当該ジョイント角は、採用する等速自在継手の形式に応じて0度を越えて15度までの範囲の所定の角度に設定されることを特徴とする車両用駆動車輪の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用駆動車輪の駆動装置において、前記駆動機構は前記電動モータの駆動速度を減速する減速機構を備え、同減速機構の出力軸は前記駆動機構の出力軸を構成していて、前記駆動車輪の回転軸とは前記等速自在継手を介して連結されて、前記回転軸との間に所定のジョイント角が設定されていることを特徴とする車両用駆動車輪の駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用駆動車輪の駆動装置において、前記等速自在継手としてボール型等速ジョイントまたは首振り式トリポード型等速ジョイントを採用する場合には、前記ジョイント角を4度以上15度以下の範囲の所定の角度に設定することを特徴とする車両用駆動車輪の駆動装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両用駆動車輪の駆動装置において、前記等速自在継手としてスライド式トリポード型等速ジョイントを採用する場合には、前記ジョイント角を2度以上5度以下の範囲の所定の角度に設定することを特徴とする車両用駆動車輪の駆動装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の車両用駆動車輪の駆動装置において、前記等速自在継手としてフック式ユニバーサルジョイントを採用する場合には、前記ジョイント角を0度を超えて3度までの範囲の所定の角度に設定することを特徴とする車両用駆動車輪の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−279850(P2008−279850A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124507(P2007−124507)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】