説明

車両用骨格部材の結合構造

【課題】各構成部材の接合部の変形を抑制することができる車両用骨格部材の結合構造を得る。
【解決手段】サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cの先端側に、ピラーインナパネル22のフランジ部22B、22C及びレールインナパネル26のフランジ部26B、26Cがインナ重なり部30を設けて配置され、長手方向に沿って連続溶接42〜48されることにより各部材が接合されている。サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cの根元側に、ピラーリインフォース24の端部24B、24C及びレールリインフォース28の端部28B、28Cがリインフォース重なり部32を設けて配置され、長手方向に沿って連続溶接34〜40されることにより各部材が接合されている。フランジ部20B、20Cの先端側及び根元側の一方の溶接が途切れても、先端側及び根元側の他方で連続溶接を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウタ部材とインナ部材とリインフォースとを溶接により結合した車両骨格部材の結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、センタピラーの上端部を構成する部材とルーフサイドレールを構成する部材とを連結すると共に、センタピラーの下端部を構成する部材とロッカを構成する部材とを連結した車体構造が開示されている。
【特許文献1】特開2001−199361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記先行技術による場合、各部材の連結部を溶接する際に、補強部材の配置等により各部材の板組みが変わる部位では、連続したレーザ溶接を行うことが難しく、スポット溶接や断続的なレーザ溶接を行っている。しかしながら、スポット溶接や断続的なレーザ溶接では、溶接されていない部分で接合部の口開きや断面崩れなどの変形が起こる可能性がある。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、各部材の接合部の変形を抑制することができる車両用骨格部材の結合構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係る車両骨格部材の結合構造は、長尺状に形成されて車両外側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出された溶接用のアウタ側接合部を備えたアウタ部材と、各々長尺状に形成されて車両内側に配置されると共に長手方向の端部で重なり合うインナ重なり部が形成されるように配置され、各々長手方向と交差する方向に延出されかつ前記アウタ側接合部と溶接されることで前記アウタ部材との間に閉断面部を形成するインナ側接合部を備えた複数のインナ部材と、長尺状に形成されて前記閉断面部の少なくとも内側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出された溶接用のリインフォース側接合部を備えたリインフォースと、を有し、前記アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所で前記インナ側接合部及び前記リインフォース側接合部の少なくとも一方と前記アウタ側接合部とが長手方向に沿って連続して溶接されていると共に、前記インナ重なり部では前記複数のインナ部材の継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明に係る車両用骨格部材の結合構造は、長尺状に形成されて車両外側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出された溶接用のアウタ側接合部を備えたアウタ部材と、長尺状に形成されて車両内側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出されかつ前記アウタ側接合部と溶接されることで前記アウタ部材との間に閉断面部を形成するインナ側接合部を備えたインナ部材と、各々長尺状に形成されて前記閉断面部の少なくとも内側に配置されると共に長手方向の端部で重なり合うリインフォース重なり部が形成されるように配置され、各々長手方向と交差する方向に延出された溶接用のリインフォース側接合部を備えた複数のリインフォースと、を有し、前記アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所で前記インナ側接合部及び前記リインフォース側接合部の少なくとも一方と前記アウタ側接合部とが長手方向に沿って連続して溶接されていると共に、前記リインフォース重なり部では前記複数のリインフォースの継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明に係る車両用骨格部材の結合構造は、長尺状に形成されて車両外側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出された溶接用のアウタ側接合部を備えたアウタ部材と、各々長尺状に形成されて車両内側に配置されると共に長手方向の端部で重なり合うインナ重なり部が形成されるように配置され、各々長手方向と交差する方向に延出されかつ前記アウタ側接合部と溶接されることで前記アウタ部材との間に閉断面部を形成するインナ側接合部を備えた複数のインナ部材と、各々長尺状に形成されて前記閉断面部の少なくとも内側に配置されると共に長手方向の端部で重なり合うリインフォース重なり部が形成されるように配置され、各々長手方向と交差する方向に延出された溶接用のリインフォース側接合部を備えた複数のリインフォースと、を有し、前記アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所で前記インナ側接合部及び前記リインフォース側接合部の少なくとも一方と前記アウタ側接合部とが長手方向に沿って連続して溶接されていると共に、前記インナ重なり部では前記複数のインナ部材の継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接され、かつ前記リインフォース重なり部では前記複数のリインフォースの継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1に記載の車両骨格部材の結合構造において、前記アウタ側接合部の根元側に前記リインフォース側接合部が溶接され、前記アウタ側接合部の先端側に前記インナ側接合部が前記複数のインナ部材の継ぎ目を除いて溶接されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項2に記載の車両骨格部材の結合構造において、前記アウタ側接合部の根元側に前記リインフォース側接合部が前記複数のリインフォースの継ぎ目を除いて溶接され、前記アウタ側接合部の先端側に前記インナ側接合部が溶接されていることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項3に記載の車両骨格部材の結合構造において、前記アウタ側接合部の根元側に前記リインフォース側接合部が前記複数のリインフォースの継ぎ目を除いて溶接され、前記アウタ側接合部の先端側に前記インナ側接合部が前記複数のインナ部材の継ぎ目を除いて溶接されていることを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載の車両骨格部材の結合構造において、前記複数のリインフォースの継ぎ目と前記複数のインナ部材の継ぎ目とが前記アウタ側接合部の長手方向に対して異なる位置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、複数のインナ部材が長手方向の端部で重なり合うインナ重なり部が形成されるように配置されており、アウタ部材のアウタ側接合部と複数のインナ部材のインナ側溶接部とを溶接して形成した閉断面部の少なくとも内側にリインフォースが配置されることによって、車両骨格部材が構成されている。そして、アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所でインナ側接合部及びリインフォース側接合部の少なくとも一方とアウタ側接合部とが長手方向に沿って連続して溶接されていると共に、インナ重なり部では複数のインナ部材の継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されている。すなわち、アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所で複数のインナ部材の継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されており、アウタ側接合部で長手方向に沿って1本の溶接を行う場合と比較して、アウタ側接合部におけるインナ側接合部及びリインフォースとの接合強度が上がる。このため、アウタ側接合部における複数のインナ部材の継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどを抑制し、断面耐力を効率よく活用して車両骨格部材の変形を抑制することができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、複数のリインフォースが長手方向の端部で重なり合うリインフォース重なり部が形成されるように配置されており、アウタ部材のアウタ側接合部とインナ部材のインナ側溶接部とを溶接して形成した閉断面部の少なくとも内側に複数のリインフォースが配置されることによって、車両骨格部材が構成されている。そして、アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所でインナ側接合部及びリインフォース側接合部の少なくとも一方とアウタ側接合部とが長手方向に沿って連続して溶接されていると共に、リインフォース重なり部では複数のリインフォースの継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されている。すなわち、アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所で複数のリインフォースの継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されており、アウタ側接合部で長手方向に沿って1本の溶接を行う場合と比較して、アウタ側接合部におけるインナ側接合部及びリインフォースとの接合強度が上がる。このため、アウタ側接合部における複数のリインフォースの継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどを抑制し、断面耐力を効率よく活用して車両骨格部材の変形を抑制することができる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、複数のインナ部材が長手方向の端部で重なり合うインナ重なり部が形成されるように配置されると共に、複数のリインフォースが長手方向の端部で重なり合うリインフォース重なり部が形成されるように配置されており、アウタ部材のアウタ側接合部と複数のインナ部材のインナ側溶接部とを溶接して形成した閉断面部の少なくとも内側に複数のリインフォースが配置されることによって、車両骨格部材が構成されている。そして、アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所でインナ側接合部及びリインフォース側接合部の少なくとも一方とアウタ側接合部とが長手方向に沿って連続して溶接されていると共に、インナ重なり部では複数のインナ部材の継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接され、リインフォース重なり部では複数のリインフォースの継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されている。すなわち、アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所で複数のインナ部材の継ぎ目と複数のリインフォースの継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されており、アウタ側接合部で長手方向に沿って1本の溶接を行う場合と比較して、アウタ側接合部におけるインナ側接合部及びリインフォースとの接合強度が上がる。このため、アウタ側接合部における複数のインナ部材の継ぎ目の部分と複数のリインフォースの継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどを抑制し、断面耐力を効率よく活用して車両骨格部材の変形を抑制することができる。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、アウタ側接合部の根元側にリインフォース側接合部が溶接され、アウタ側接合部の先端側にインナ側接合部が複数のインナ部材の継ぎ目を除いて溶接されているので、複数のインナ部材の継ぎ目で溶接が途切れても、複数のインナ部材のその他の部分でアウタ側接合部の先端側にインナ側接合部が連続して溶接され、アウタ側接合部の根元側にリインフォース側接合部が連続して溶接されている。すなわち、アウタ側接合部の長手方向で溶接が途切れる部位が複数のインナ部材の継ぎ目の部分のみとなり、その他の部位でアウタ側接合部の根元側と先端側に長手方向に連続して溶接されているので、アウタ側接合部におけるインナ側接合部及びリインフォースとの接合強度がより一層上がる。このため、アウタ側接合部における複数のインナ部材の継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどをより一層抑制することができる。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、アウタ側接合部の根元側にリインフォース側接合部が複数のリインフォースの継ぎ目を除いて溶接され、アウタ側接合部の先端側にインナ側接合部が溶接されているので、複数のリインフォースの継ぎ目で溶接が途切れても、複数のリインフォースのその他の部分でアウタ側接合部の根元側にリインフォース側接合部が連続して溶接され、アウタ側接合部の先端側にインナ側接合部が連続して溶接されている。すなわち、アウタ側接合部の長手方向で溶接が途切れる部位が複数のリインフォースの継ぎ目の部分のみとなり、その他の部位でアウタ側接合部の根元側と先端側に長手方向に連続して溶接されているので、アウタ側接合部におけるインナ側接合部及びリインフォースとの接合強度がより一層上がる。このため、アウタ側接合部における複数のリインフォースの継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどをより一層抑制することができる。
【0017】
請求項6記載の本発明によれば、アウタ側接合部の根元側にリインフォース側接合部が複数のリインフォースの継ぎ目を除いて溶接され、アウタ側接合部の先端側にインナ側接合部が複数のインナ部材の継ぎ目を除いて溶接されているので、複数のリインフォースの継ぎ目と複数のインナ部材の継ぎ目で溶接が途切れても、複数のリインフォースのその他の部分でアウタ側接合部の根元側にリインフォース側接合部が連続して溶接され、複数のインナ部材のその他の部分でアウタ側接合部の先端側にインナ側接合部が連続して溶接されている。すなわち、アウタ側接合部の長手方向で溶接が途切れる部位が複数のリインフォースの継ぎ目の部分と複数のインナ部材の継ぎ目の部分のみとなり、その他の部位でアウタ側接合部の根元側と先端側に長手方向に連続して溶接されているので、アウタ側接合部におけるインナ側接合部及びリインフォースとの接合強度がより一層上がる。このため、アウタ側接合部における複数のリインフォースの継ぎ目の部分と複数のインナ部材の継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどをより一層抑制することができる。
【0018】
請求項7記載の本発明によれば、複数のリインフォースの継ぎ目と複数のインナ部材の継ぎ目とがアウタ側接合部の長手方向に対して異なる位置に設けられているので、アウタ側接合部の先端側と根元側で溶接が途切れる部位が長手方向に対して異なる位置となる。このため、アウタ側接合部の先端側及び根元側の一方の溶接が途切れても、先端側及び根元側の他方で連続して溶接されているので、アウタ側接合部におけるインナ側接合部及びリインフォースとの接合強度がさらに効果的に上がる。従って、アウタ側接合部における複数のリインフォースの継ぎ目の部分と複数のインナ部材の継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどをさらに効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用骨格部材の結合構造は、アウタ側接合部における複数のインナ部材の継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどを抑制し、車両骨格部材の変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2記載の本発明に係る車両用骨格部材の結合構造は、アウタ側接合部における複数のリインフォースの継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどを抑制し、車両骨格部材の変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項3記載の本発明に係る車両用骨格部材の結合構造は、アウタ側接合部における複数のインナ部材の継ぎ目の部分と複数のリインフォースの継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどを抑制し、車両骨格部材の変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項4記載の本発明に係る車両用骨格部材の結合構造は、アウタ側接合部における複数のインナ部材の継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどをより一層抑制することができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項5記載の本発明に係る車両用骨格部材の結合構造は、アウタ側接合部における複数のリインフォースの継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどをより一層抑制することができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項6記載の本発明に係る車両用骨格部材の結合構造は、アウタ側接合部における複数のリインフォースの継ぎ目の部分と複数のインナ部材の継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどをより一層抑制することができるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項7記載の本発明に係る車両用骨格部材の結合構造は、アウタ側接合部における複数のリインフォースの継ぎ目の部分と複数のインナ部材の継ぎ目の部分の口開きや断面崩れなどをさらに効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
【0027】
以下、図1〜図8を用いて、本発明に係る車両用骨格部材の結合構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0028】
図1には、車両用骨格部材が配設された車両10の側部を車室内の方向から見た側面図が示されている。この図に示されるように、車両10のボデー本体11の両側部には、車両前後方向に沿って延在する車両用骨格部材としてのフロントピラー12が配設されており、フロントピラー12の車両後端部には、略車両前後方向に沿って延在する車両用骨格部材としてのルーフサイドレール14が配設されている(図1では車両10の側部の一方のみが図示されている)。フロントピラー12とルーフサイドレール14の車両前方側は、車両後方側に上り勾配となるように配置されており、ルーフサイドレール14の中間部は、車両前後方向に沿ってほぼ水平に配置されている。ルーフサイドレール14の中間部の車両下方側には、車両上下方向に沿って延在する車両用骨格部材としてのセンタピラー16が配設されている。ボデー本体11の両側部には、フロントピラー12と、ルーフサイドレール14と、センタピラー16等で囲まれた部分にフロントサイドドア開口部18が形成されており、フロントサイドドア開口部18には、図示しないフロントドアが開閉可能に設けられている。また、ボデー本体11の両側部のフロントピラー12の間には、図示しないウィンドウシールドガラスが配設されている。
【0029】
図2には、フロントピラー12及びルーフサイドレール14の側面図が示されており、図3には、フロントピラー12及びルーフサイドレール14の車両外側から見た分解側面図が示されている。また、図4には、フロントピラー12及びルーフサイドレール14を車両内側から見た状態の側面図が示されており、図5には、図4中のA−A線におけるフロントピラー12の縦断面図が示されている。また、図8には、フロントピラー12の一部を切断した斜視図が示されている。
【0030】
図2〜図5及び図8に示されるように、フロントピラー12は、車両外側に配置されるアウタ部材としてのサイドメンバアウタパネル(サイメンアウタ)20と、車両内側に配置されるインナ部材としてのピラーインナパネル22と、サイドメンバアウタパネル20とピラーインナパネル22とで構成された閉断面部内に配設される補強用のピラーリインフォース24と、を備えている。サイドメンバアウタパネル20は、その一部がルーフサイドレール14の車両外側に連続するように配設されており、ルーフサイドレール14のアウタ部材を構成している。
【0031】
ルーフサイドレール14は、前述のサイドメンバアウタパネル20と、車両内側に配置されるインナ部材としてのレールインナパネル26と、サイドメンバアウタパネル20とレールインナパネル26とで構成された閉断面部内に配設される補強用のレールリインフォース28と、を備えている。このような車両骨格部材は、適材適所の板厚や部品配置にするため、インナパネルがピラーインナパネル22とレールインナパネル26に長手方向に分割されると共に、リインフォースがピラーリインフォース24とレールリインフォース28に長手方向に分割されている。インナパネルやリインフォースを一体成形することは、鋼板のロール幅が小さいことから難しく、歩留まりにも不利であるからである。
【0032】
図5に示されるように、サイドメンバアウタパネル20は、長手方向と直交(交差)する方向における断面が車両上方側に突出するように略ハット状に形成されており、サイドメンバアウタパネル20の中間部には、車両上方側に突出した突出部20Aが形成されている。サイドメンバアウタパネル20の長手方向と直交する車両上下方向の両端部には、車両幅方向内側に延びたフランジ部20Bと、車両幅方向外側に斜め下方方向に延びたフランジ部20Cと、が形成されている。フランジ部20Bとフランジ部20Cとは、本発明の「アウタ側接合部」である。
【0033】
ピラーインナパネル22は、断面が車両内側に突出するように略L字状に形成されており、ピラーインナパネル22の中間部には、車両内側に突出した突出部22Aが形成されている。ピラーインナパネル22の長手方向と直交する車両上下方向の両端部には、車両幅方向内側に延びたフランジ部22Bと、車両幅方向外側に斜め下方方向に延びたフランジ部22Cと、が形成されている。フランジ部22Bとフランジ部22Cとは、本発明の「インナ側接合部」である。ピラーインナパネル22のフランジ部22Bとフランジ部22Cの長さは、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとフランジ部20Cの長さよりも短く形成されており、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの先端側にピラーインナパネル22のフランジ部22Bが面接触するように配置されると共に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側にピラーインナパネル22のフランジ部22Cが面接触するように配置されている。
【0034】
ピラーリインフォース24は、図5及び図8に準じた断面形状を有しており、サイドメンバアウタパネル20の突出部20Aの内側で車両外側に突出する突出部24Aを備えている。ピラーリインフォース24の長手方向と直交する車両上下方向における突出部24Aの両側には、車両幅方向内側に延びた端部24Bと、車両幅方向外側に斜め下方方向に延びた端部24Cと、が形成されている。端部24Bと端部24Cとは、本発明の「リインフォース側接合部」である。ピラーリインフォース24の長手方向と直交する方向の幅は、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの長手方向と直交する方向の幅よりも短く形成されており、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの根元側にピラーリインフォース24の端部24Bが面接触するように配置されると共に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側にピラーリインフォース24の端部24Cが面接触するように配置されている。図3に示されるように、ピラーリインフォース24の端部24Bと端部24Cの長手方向後端側には、凹状の切り欠き部24D、24Eが形成されている。
【0035】
図3及び図4に示されるように、レールインナパネル26は、車両内側に突出した突出部26Aと、長手方向と直交する車両上下方向における突出部26Aの一端部に車両幅方向内側に延びたフランジ部26Bと、長手方向と直交する車両上下方向における突出部26Aの他端部に車両幅方向外側に斜め下方方向に延びたフランジ部26Cと、を備えている。フランジ部26Bとフランジ部26Cとは、本発明の「インナ側接合部」である。そして、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの先端側にレールインナパネル26のフランジ部26Bが面接触するように配置されると共に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側にレールインナパネル26のフランジ部26Cが面接触するように配置されている。図3に示されるように、レールインナパネル26のフランジ部26Bとフランジ部26Cの長手方向前端側には、凹状の切り欠き部26D、26Eが形成されている。
【0036】
レールリインフォース28は、車両外側に突出した突出部28Aと、長手方向と直交する車両上下方向における突出部28Aの一端部に車両幅方向内側に延びた端部28Bと、長手方向と直交する車両上下方向における突出部28Aの他端部に車両幅方向外側に斜め下方方向に延びた端部28Cと、を備えている。端部28Bと端部28Cとは、本発明の「リインフォース側接合部」である。そして、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの根元側にレールリインフォース28の端部28Bが面接触するように配置されると共に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側にレールリインフォース28の端部28Cが面接触するように配置されている。図3に示されるように、レールリインフォース28の端部28Bと端部28Cの長手方向前端側には、凹状の切り欠き部28D、28Eが形成されている。
【0037】
図3に示されるように、車両外側からサイドメンバアウタパネル20、ピラーリインフォース24、レールリインフォース28、ピラーインナパネル22、レールインナパネル26の順番で、図3に示された配置を維持した状態で重ね合わされて接合される構成となっている。これによって、図4に示されるように、ピラーインナパネル22の長手方向後端部と、レールインナパネル26の長手方向前端部とが重ね合わされてインナ重なり部30が形成されている。また、ピラーリインフォース24の長手方向後端部と、レールリインフォース28の長手方向前端部とが重ね合わされてリインフォース重なり部32が形成されている。
【0038】
図6には、図4中のB−B線における断面図が示されており、図7には、図4中のC−C線における断面図が示されている。
【0039】
図4〜図6に示されるように、フロントピラー12では、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側にピラーリインフォース24の端部24Cが面接触状態で配置されており、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側に長手方向に沿って連続溶接34が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとピラーリインフォース24の端部24Cとが接合されている(図8参照)。ルーフサイドレール14では、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側にレールリインフォース28の端部28Cが面接触状態で配置されると共に、レールリインフォース28の端部28Cが車両内側に折り曲げられてピラーリインフォース24の端部24Cの表面に重ね合わされることにより、リインフォース重なり部32が形成されている。そして、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側に長手方向に沿って連続溶接36が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとレールリインフォース28の端部28Cとが接合されている。リインフォース重なり部32では、レールリインフォース28の端部28Cとピラーリインフォース24の端部24Cとの継ぎ目52A(リインフォース重なり部32の後端部)と、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとの連続溶接を行うことができず、溶接が途切れている。
【0040】
同様に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの根元側にピラーリインフォース24の端部24Bが面接触状態で配置され、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの根元側に長手方向に沿って連続溶接38が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとピラーリインフォース24の端部24Bとが接合されている(図8参照)。さらに、同様に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの根元側にレールリインフォース28の端部28Bが面接触状態で配置され、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの根元側に長手方向に沿って連続溶接40が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとレールリインフォース28の端部28Bとが接合されている。リインフォース重なり部32では、レールリインフォース28の端部28Bとピラーリインフォース24の端部24Bとの継ぎ目52A(リインフォース重なり部32の後端部)と、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとの連続溶接を行うことができず、溶接が途切れている。本実施形態では、連続溶接34〜40として、レーザ溶接が用いられている。なお、レーザ溶接に限らず、MIG溶接、アーク溶接等の片側溶接可能な溶接法を用いてもよい。
【0041】
図4、図5及び図7に示されるように、フロントピラー12では、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側にピラーインナパネル22のフランジ部22Cが面接触状態で配置されており、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側に長手方向に沿って連続溶接42が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとピラーインナパネル22のフランジ部22Cとが接合されている(図8参照)。ルーフサイドレール14では、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側にレールインナパネル26のフランジ部26Cが面接触状態で配置されると共に、レールインナパネル26のフランジ部26Cが車両内側に折り曲げられてピラーインナパネル22のフランジ部22Cの表面に重ね合わされることにより、インナ重なり部30が形成されている。そして、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側に長手方向に沿って連続溶接44が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとレールインナパネル26のフランジ部26Cとが接合されている。インナ重なり部30では、レールインナパネル26のフランジ部26Cとピラーインナパネル22のフランジ部22Cとの継ぎ目54A(インナ重なり部30の後端部)とサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとの連続溶接を行うことができず、溶接が途切れている。
【0042】
同様に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの先端側にピラーインナパネル22のフランジ部22Bが面接触状態で配置され、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの先端側に長手方向に沿って連続溶接46が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとピラーインナパネル22のフランジ部22Bとが接合されている(図8参照)。さらに、同様に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの先端側にレールインナパネル26のフランジ部26Bが面接触状態で配置され、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの先端側に長手方向に沿って連続溶接48が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとレールインナパネル26のフランジ部26Bとが接合されている。インナ重なり部30では、ピラーインナパネル22のフランジ部22Bとレールインナパネル26のフランジ部26Bとの継ぎ目54A(インナ重なり部30の後端部)と、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとの連続溶接を行うことができず、溶接が途切れている。
【0043】
このような車両骨格部材の結合構成では、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cの先端側と根元側の2箇所で長手方向に沿って連続溶接が施されていると共に、フランジ部20Cの先端側の連続溶接42、44と根元側の連続溶接34、36とがほぼ平行で、フランジ部20Bの先端側の連続溶接46、48と根元側の連続溶接38、40とがほぼ平行となっている。
【0044】
また、長手方向と直交する方向における断面視にて、リインフォース重なり部32におけるピラーリインフォース24とレールリインフォース28との継ぎ目52A(リインフォース重なり部32の後端部)では、連続溶接34、36を行うことができず、溶接が途切れているが、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側に連続溶接44が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側とレールインナパネル26のフランジ部26Cとが接合されている。また、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B側でも同様の構成となっている。
【0045】
また、長手方向と直交する方向における断面視にて、ピラーインナパネル22とレールインナパネル26との継ぎ目54A(インナ重なり部30の後端部)では、連続溶接42、44を行うことができず、溶接が途切れているが、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側に連続溶接34が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側とピラーリインフォース24の端部24Cとが接合されている。また、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B側でも同様の構成となっている。
【0046】
さらに、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cにおけるインナ重なり部30の継ぎ目54Aとリインフォース重なり部32の継ぎ目52Aが長手方向の異なる位置に設けられている。すなわち、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cにおけるインナ重なり部30の継ぎ目54Aの連続溶接が途切れる部分と、リインフォース重なり部32の継ぎ目52Aの連続溶接が途切れる部分が、サイドメンバアウタパネル20の長手方向の異なる部分に設定されている。
【0047】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
図4に示されるように、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cでは、それぞれ根元側と先端側の2箇所で、リインフォース重なり部32の継ぎ目52Aとインナ重なり部30の継ぎ目54Aを除いて長手方向に沿ってほぼ平行に連続溶接が施されているので、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cで長手方向に沿って1本の溶接を行う場合と比較して、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cと各部材との接合強度を上げることができる。
また、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側に連続溶接34が施されてピラーリインフォース24の端部24Cが接合されており、ピラーリインフォース24の端部24Cにレールリインフォース28の端部28Cがリインフォース重なり部32を設けて配置されると共に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側に連続溶接36が施されてレールリインフォース28の端部28Cが接合されている。その際、長手方向と直交する方向における断面視にて、リインフォース重なり部32におけるピラーリインフォース24とレールリインフォース28との継ぎ目52A(リインフォース重なり部32の後端部)では、連続溶接34、36を行うことができず、溶接が途切れているが、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側に連続溶接44が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側とレールインナパネル26のフランジ部26Cとが接合されている。すなわち、ピラーリインフォース24とレールリインフォース28との継ぎ目52A(リインフォース重なり部32の後端部)で連続溶接が途切れても、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側で長手方向に沿って連続溶接44が施されているので、リインフォース重なり部32とサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとの接合強度が高くなる。このため、リインフォース重なり部32とサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとの接合部分の口開きや断面崩れなどの変形を防止又は抑制することができ、断面耐力を効率よく活用してフロントピラー12及びルーフサイドレール14の折れなどの変形を抑制することができる。
【0049】
なお、リインフォース重なり部32におけるピラーリインフォース24の端部24Bとレールリインフォース28の端部28Bとの継ぎ目52A(リインフォース重なり部32の後端部)と、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとの接合部分においても、上記の同様の作用及び効果を有している。
【0050】
また、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側に連続溶接42が施されてピラーインナパネル22のフランジ部22Cが接合されており、また、ピラーインナパネル22のフランジ部22Cにレールインナパネル26のフランジ部26Cがインナ重なり部30を設けて配置されると共に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側に連続溶接44が施されてレールインナパネル26のフランジ部26Cが接合されている。その際、長手方向と直交する方向における断面視にて、ピラーインナパネル22とレールインナパネル26との継ぎ目54A(インナ重なり部30の後端部)では、連続溶接42、44を行うことができず、溶接が途切れているが、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側に連続溶接34が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側とピラーリインフォース24の端部24Cとが接合されている。すなわち、ピラーインナパネル22とレールインナパネル26との継ぎ目54A(インナ重なり部30の後端部)で連続溶接が途切れても、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの根元側で長手方向に沿って連続溶接34が施されているので、インナ重なり部30とサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとの接合強度が高くなる。このため、ピラーインナパネル22とレールインナパネル26との継ぎ目54A(インナ重なり部30の後端部)とサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとの接合部分の口開きや断面崩れなどの変形を防止又は抑制することができ、断面耐力を効率よく活用してフロントピラー12及びルーフサイドレール14の折れなどの変形を抑制することができる。
【0051】
従って、フロントピラー12及びルーフサイドレール14の変形を考慮して板厚が決定されている場合、上記のようにフロントピラー12及びルーフサイドレール14の変形を抑制できることにより、板厚を低減することができる。また、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの溶接部への応力集中を抑制することができ、フロントピラー12及びルーフサイドレール14の剛性を向上させることができる。
【0052】
なお、インナ重なり部30におけるピラーインナパネル22のフランジ部22Bとレールインナパネル26のフランジ部26Bとの継ぎ目54A(インナ重なり部30の後端部)と、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとの接合部分においても、上記の同様の作用及び効果を有している。
【0053】
さらに、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cにおけるインナ重なり部30の継ぎ目54Aとリインフォース重なり部32の継ぎ目52Aが長手方向の異なる位置に設けられており、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cにおけるインナ重なり部30の継ぎ目54Aの連続溶接が途切れる部分と、リインフォース重なり部32の継ぎ目52Aの連続溶接が途切れる部分が、サイドメンバアウタパネル20の長手方向の異なる部分に設定されている。これによって、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cの根元側で連続溶接が途切れる部分が1箇所のみで、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cの先端側で連続溶接が途切れる部分が長手方向の異なる部位で1箇所のみとなり、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cのその他の部分で長手方向に沿って連続溶接を行うことができる。従って、サイドメンバアウタパネル20の長手方向において、フランジ部20B、20Cの先端側及び根元側の一方で連続溶接が途切れても、フランジ部20B、20Cの先端側及び根元側の他方で連続溶接を行うことができ、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cとインナ重なり部30の継ぎ目54A及びリインフォース重なり部32の継ぎ目52Aとの接合部分の口開きや断面崩れなどの変形をより一層防止又は抑制することができる。このため、断面耐力を効率よく活用してフロントピラー12及びルーフサイドレール14の折れなどの変形をより一層抑制することができる。
【0054】
〔第2実施形態〕
【0055】
次に、図9及び図10を用いて、本発明に係る車両用骨格部材の結合構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0056】
図9及び図10に示されるように、車両60の側部では、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側より内方側にピラーインナパネル22のフランジ部22Cの先端側が配置されており、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cの先端側とピラーインナパネル22のフランジ部22Cとの接触面の縁部から連続溶接62が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Cとピラーインナパネル22のフランジ部22Cとが接合されている。また、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの先端側より内方側にピラーインナパネル22のフランジ部22Bの先端側が配置されており、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bの先端側とピラーインナパネル22のフランジ部22Bとの接触面の縁部から連続溶接64が施されてサイドメンバアウタパネル20のフランジ部20Bとピラーインナパネル22のフランジ部22Bとが接合されている。本実施形態では、連続溶接62、64としてレーザ溶接が用いられているが、レーザ溶接に限らず、MIG溶接、アーク溶接等を用いてもよい。
【0057】
なお、図示を省略するが、車両60では、図4に示す連続溶接44、48に代えて、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cの先端側とレールインナパネル26のフランジ部26Cとの接触面の縁部から同様の連続溶接が施されている。
【0058】
このような構成では、第1実施形態と同様に、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cとインナ重なり部の継ぎ目及びリインフォース重なり部の継ぎ目との接合部分の口開きや断面崩れなどの変形を防止又は抑制することができ、断面耐力を効率よく活用してフロントピラー12及びルーフサイドレール14の折れなどの変形を抑制することができる。さらに、図9に示されるように、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cの先端側より内方側にピラーインナパネル22のフランジ部22B、22Cの先端側が配置され、ピラーインナパネル22のフランジ部22B、22Cの縁部に沿ってレーザ溶接されるため、溶接位置のずれを抑制することができる。
【0059】
〔比較例〕
【0060】
次に、図11〜図14を用いて、車両用骨格部材の結合構造の第1比較例、第2比較例について説明する。
【0061】
図11には、車両100の側部に配置された第1比較例に係るフロントピラー102及びルーフサイドレール104が示されている。この図に示されるように、フロントピラー102は、サイメンアウタパネル106と、ピラーリインフォース108と、ピラーインナパネル110と、で構成されている。ルーフサイドレール104は、フロントピラー102から連続して形成されたサイメンアウタパネル106と、レールリインフォース112と、レールインナパネル114と、で構成されている。
【0062】
サイメンアウタパネル106は、長手方向と直交する方向の両側にフランジ部106A、106Bを備えている。ピラーリインフォース108は、長手方向と直交する方向の両側に端部108A、108Bを備えており、端部108A、108Bには凹状の切り欠き部108C、108Dが形成されている。ピラーインナパネル110は、長手方向と直交する方向の両側にフランジ部110A、110Bを備えている。レールリインフォース112は、長手方向と直交する方向の両側に端部112A、112Bを備えており、端部112A、112Bには凹状の切り欠き部112C、112Dが形成されている。レールインナパネル114は、長手方向と直交する方向の両側にフランジ部114A、114Bを備えており、フランジ部114A、114Bには凹状の切り欠き部114C、114Dが形成されている。
【0063】
サイメンアウタパネル106と、ピラーリインフォース108と、レールリインフォース112と、レールインナパネル114と、ピラーインナパネル110とは、車両外側からこの順番で重ね合わされた状態で接合されている(図11では車両内側から見た図が示されている)。レールインナパネル114の長手方向前端部と、ピラーインナパネル110の長手方向後端部とが重ね合わされてインナ重なり部116が形成されている。また、ピラーリインフォース108の長手方向後端部と、レールリインフォース112の長手方向前端部とが重ね合わされてリインフォース重なり部118が形成されている。サイメンアウタパネル106のフランジ部106A、106Bと各部材はスポット溶接により接合されているが、この構成については後述する。
【0064】
図12には、車両130の側部に配置された第2比較例に係るフロントピラー102及びルーフサイドレール104が示されている。また、図13には、図12中のD−D線における分解断面図が示されている。なお、第1比較例と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0065】
図12及び図13に示されるように、車両前方側では、サイメンアウタパネル106のフランジ部106Bと、ピラーリインフォース108の端部108Bと、ピラーインナパネル110のフランジ部110Bとが面接触状態で配置されており、これらがレーザ溶接132Aにより接合されている。レーザ溶接132Aの車両後方側では、サイメンアウタパネル106のフランジ部106Bと、レールインナパネル114のフランジ部114Bと、ピラーインナパネル110のフランジ部110Bとが面接触状態で配置されており、これらがレーザ溶接132Bにより接合されている。レーザ溶接132Bの車両後方側では、サイメンアウタパネル106のフランジ部106Bと、ピラーリインフォース108の端部108Bと、レールインナパネル114のフランジ部114Bとが面接触状態で配置されており、これらがレーザ溶接132Cにより接合されている。さらに車両後方側へ順に、サイメンアウタパネル106のフランジ部106Bと、ピラーリインフォース108の端部108Bと、レールリインフォース112の端部112Bとがレーザ溶接132Dにより接合され、サイメンアウタパネル106のフランジ部106Bと、ピラーリインフォース108の端部108Bと、レールインナパネル114のフランジ部114Bとがレーザ溶接132Eにより接合され、サイメンアウタパネル106のフランジ部106Bと、レールリインフォース112の端部112Bと、レールインナパネル114のフランジ部114Bとがレーザ溶接132Fにより接合されている。サイメンアウタパネル106のフランジ部106A側の溶接もほぼ同じ構成である。
【0066】
図12及び図13に示される構成では、サイメンアウタパネル106のフランジ部106A、106Bと各部材とが長手方向に沿って一本の断続的なレーザ溶接132A〜132Fにより接合されている。このため、図14に示されるように、サイメンアウタパネル106のフランジ部106A、106Bと各部材とのレーザ溶接132A〜132Fが施されていない部分で口開きや断面崩れが起こる場合がある。なお、図14では、サイメンアウタパネル106のフランジ部106A、106Bと各部材との接合部分の変形を分かりやすくするため、変形状態を模式的に現している。
【0067】
また、第1比較例の図11に示される構成では、レーザ溶接132A〜132Fに代えて、サイメンアウタパネル106のフランジ部106A、106Bと各部材とがスポット溶接120A〜120Fにより接合されている。この構成では、サイメンアウタパネル106のフランジ部106A、106Bと各部材とのスポット溶接120A〜120Fが施されていない部分で口開きや断面崩れが起こる場合がある。
【0068】
これに対して、第1及び第2実施形態では、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cの先端側と根元側で長手方向に沿ってほぼ平行に2本の連続溶接が施されており、また、先端側及び根元側の一方で連続溶接が途切れても、先端側及び根元側の他方で連続溶接が施されているので、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cとインナ重なり部30の継ぎ目54A及びリインフォース重なり部32の継ぎ目52Aとの接合部分の口開きや断面崩れを抑制することができる。また、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部20B、20Cとピラーインナパネル22など2枚の部材を連続溶接するため、第2比較例のように3枚の部材をレーザ溶接する場合と比較して、レーザ溶接を容易に行うことができ、品質の確保が容易となる。
【0069】
〔実施形態の補足説明〕
【0070】
(1)上述した第1実施形態及び第2実施形態では、車両外側から順に図3に示す構成でサイドメンバアウタパネル20と、ピラーリインフォース24と、レールリインフォース28と、ピラーインナパネル22と、レールインナパネル26が配置されていたが、各部材の板組みはこれに限定されず、他の構成でもよい。例えば、車両外側から順にサイドメンバアウタパネル20と、ピラーリインフォース24と、レールリインフォース28と、レールインナパネル26と、ピラーインナパネル22が配置される構成でもよい。
【0071】
(2)上述した第1実施形態及び第2実施形態では、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部の先端側と根元側で2枚の部材が連続溶接される構成であったが、これに限定されず、サイドメンバアウタパネル20のフランジ部の先端側及び根元側の少なくとも一方で3枚の部材が連続溶接される構成でもよい。
【0072】
(3)上述した第1実施形態及び第2実施形態では、2枚のインナパネルの長手方向端部にインナ重なり部30を設けると共に、2枚のリインフォースの長手方向端部にリインフォース重なり部32を設けた構成であったが、必ずしもインナパネルとリインフォースの両方に重なり部を設ける必要はなく、インナパネルとリインフォースの片方に重なり部を設ける構成でもよい。
【0073】
(4)上述した第1実施形態及び第2実施形態では、フロントピラー12とルーフサイドレール14との連結部に本発明の車両骨格部材の結合構造を適用したが、これに限定されず、他の車両骨格部材の連結部に本発明を適用してもよい。例えば、センタピラーの上端部とルーフサイドレール14との連結部、センタピラーの下端部とロッカとの連結部、ドアオープニング部のフランジ部における連結部に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1実施形態に係る車両骨格部材の結合構造を車両内側から見た状態で示す側面図である。
【図2】第1実施形態に係る車両骨格部材の結合構造の全体構成を示す側面図である。
【図3】図2に示す車両骨格部材の結合構造で用いられるフロントピラー及びルーフサイドレールを示す分解側面図である。
【図4】図2に示すフロントピラー及びルーフサイドレールを拡大した状態で示す部分側面図である。
【図5】図4中のA−A線における縦断面図である。
【図6】図4中のB−B線における断面図である。
【図7】図4中のC−C線における断面図である。
【図8】図2に示すフロントピラーを切断した状態で示す斜視図である。
【図9】第2実施形態に係る車両骨格部材の結合構造で用いられるフロントピラーを示す縦断面図である。
【図10】第2実施形態に係る車両骨格部材の結合構造で用いられるフロントピラーを切断した状態で示す斜視図である。
【図11】第1比較例に係るフロントピラー及びルーフサイドレールを拡大した状態で示す部分側面図である。
【図12】第2比較例に係るフロントピラー及びルーフサイドレールを拡大した状態で示す部分側面図である。
【図13】図12中のD−D線における分解断面図である。
【図14】第2比較例に係るフロントピラーの変形状態を模式的に示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 車両
11 ボデー本体
12 フロントピラー(車両骨格部材)
14 ルーフサイドレール(車両骨格部材)
20 サイドメンバアウタパネル(アウタ部材)
20B フランジ部(アウタ側接合部)
20C フランジ部(アウタ側接合部)
22 ピラーインナパネル(インナ部材)
22B フランジ部(インナ側接合部)
22C フランジ部(インナ側接合部)
24 ピラーリインフォース(リインフォース)
24B 端部(リインフォース側接合部)
24C 端部(リインフォース側接合部)
26 レールインナパネル(インナ部材)
26B フランジ部(インナ側接合部)
26C フランジ部(インナ側接合部)
28 レールリインフォース(リインフォース)
28B 端部(リインフォース側接合部)
28C 端部(リインフォース側接合部)
30 インナ重なり部
32 リインフォース重なり部
34、36、38、40、42、44、46、48 連続溶接
52A 継ぎ目
54A 継ぎ目
60 車両
62、64 連続溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状に形成されて車両外側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出された溶接用のアウタ側接合部を備えたアウタ部材と、
各々長尺状に形成されて車両内側に配置されると共に長手方向の端部で重なり合うインナ重なり部が形成されるように配置され、各々長手方向と交差する方向に延出されかつ前記アウタ側接合部と溶接されることで前記アウタ部材との間に閉断面部を形成するインナ側接合部を備えた複数のインナ部材と、
長尺状に形成されて前記閉断面部の少なくとも内側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出された溶接用のリインフォース側接合部を備えたリインフォースと、
を有し、
前記アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所で前記インナ側接合部及び前記リインフォース側接合部の少なくとも一方と前記アウタ側接合部とが長手方向に沿って連続して溶接されていると共に、前記インナ重なり部では前記複数のインナ部材の継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されていることを特徴とする車両骨格部材の結合構造。
【請求項2】
長尺状に形成されて車両外側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出された溶接用のアウタ側接合部を備えたアウタ部材と、
長尺状に形成されて車両内側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出されかつ前記アウタ側接合部と溶接されることで前記アウタ部材との間に閉断面部を形成するインナ側接合部を備えたインナ部材と、
各々長尺状に形成されて前記閉断面部の少なくとも内側に配置されると共に長手方向の端部で重なり合うリインフォース重なり部が形成されるように配置され、各々長手方向と交差する方向に延出された溶接用のリインフォース側接合部を備えた複数のリインフォースと、
を有し、
前記アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所で前記インナ側接合部及び前記リインフォース側接合部の少なくとも一方と前記アウタ側接合部とが長手方向に沿って連続して溶接されていると共に、前記リインフォース重なり部では前記複数のリインフォースの継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されていることを特徴とする車両骨格部材の結合構造。
【請求項3】
長尺状に形成されて車両外側に配置されると共に長手方向と交差する方向に延出された溶接用のアウタ側接合部を備えたアウタ部材と、
各々長尺状に形成されて車両内側に配置されると共に長手方向の端部で重なり合うインナ重なり部が形成されるように配置され、各々長手方向と交差する方向に延出されかつ前記アウタ側接合部と溶接されることで前記アウタ部材との間に閉断面部を形成するインナ側接合部を備えた複数のインナ部材と、
各々長尺状に形成されて前記閉断面部の少なくとも内側に配置されると共に長手方向の端部で重なり合うリインフォース重なり部が形成されるように配置され、各々長手方向と交差する方向に延出された溶接用のリインフォース側接合部を備えた複数のリインフォースと、
を有し、
前記アウタ側接合部の根元側と先端側の2箇所で前記インナ側接合部及び前記リインフォース側接合部の少なくとも一方と前記アウタ側接合部とが長手方向に沿って連続して溶接されていると共に、前記インナ重なり部では前記複数のインナ部材の継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接され、かつ前記リインフォース重なり部では前記複数のリインフォースの継ぎ目を除いて長手方向に連続して溶接されていることを特徴とする車両骨格部材の結合構造。
【請求項4】
前記アウタ側接合部の根元側に前記リインフォース側接合部が溶接され、
前記アウタ側接合部の先端側に前記インナ側接合部が前記複数のインナ部材の継ぎ目を除いて溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の車両骨格部材の結合構造。
【請求項5】
前記アウタ側接合部の根元側に前記リインフォース側接合部が前記複数のリインフォースの継ぎ目を除いて溶接され、
前記アウタ側接合部の先端側に前記インナ側接合部が溶接されていることを特徴とする請求項2に記載の車両骨格部材の結合構造。
【請求項6】
前記アウタ側接合部の根元側に前記リインフォース側接合部が前記複数のリインフォースの継ぎ目を除いて溶接され、
前記アウタ側接合部の先端側に前記インナ側接合部が前記複数のインナ部材の継ぎ目を除いて溶接されていることを特徴とする請求項3に記載の車両骨格部材の結合構造。
【請求項7】
前記複数のリインフォースの継ぎ目と前記複数のインナ部材の継ぎ目とが前記アウタ側接合部の長手方向に対して異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の車両骨格部材の結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−255800(P2009−255800A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108585(P2008−108585)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】