説明

車両盗難防止構造

【課題】ドアロックモータと電気的に接続される実電線と、ダミー電線と、を備える構成の車両盗難防止構造であって、実電線が容易に特定されることを防止した構成を提供する。
【解決手段】車両盗難防止構造は、補機用電線50と、ダミー電線40と、盗難防止カバー20と、を備える。補機用電線50は、車両盗難防止用の補機30と電気的に接続される電線である。ダミー電線40は、少なくとも補機30と補機用電線50の接続箇所の近傍において当該補機用電線50に沿うように配置される。盗難防止カバー20は、接続箇所における補機用電線50及びダミー電線40を覆うように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両盗難防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用のドアロック装置であって、遠隔操作が可能な構成が知られている。このドアロック装置は、施錠機構を駆動するためのドアロックモータをドア側に備え、このドアロックモータを動作させるためのバッテリーと、スイッチと、を車体側に備えている。このスイッチは、ユーザが所持するキーが発した信号に応じて、ドアロックモータを回転させるか否か及び回転させるときの回転方向を決定する。この構成により、ユーザの意図に応じて、ドアをロックしたり、ロックを解除したりすることができる。
【0003】
しかし、この種のドアロック装置は、窃盗犯によって以下のようにして不正にロックが解除されることがある。即ち、窃盗犯は、初めにドアと車体の隙間に配置されたグロメット等を切り開く。そして、ロックを解除する方向にドアロックモータが回転するように、自身が所持するバッテリーとドアロックモータとを接続する。以上のようにして、ドアのロックが不正に解除される。
【0004】
特許文献1は、上記の手法による車両の盗難を防止するための車両盗難防止回路を開示する。この車両盗難防止回路は、ドアロックモータと車体側のバッテリーとを接続する電線に加え、この電線と同色のダミー電線を複数備える構成である。この構成により、ドアロックモータを動作させるための電線が窃盗犯によって特定されなくなるので(特定されるのに時間が掛かるので)、車両の盗難を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−216802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に示すようなダミー電線を用いる構成の車両盗難防止構造では、例えばグロメットを切り開いたときに、電線とドアロックモータとの接続部分を窃盗犯に見られてしまうことがある。この接続部分の例としては、電線の端部に取り付けられたコネクタと、ドアロックモータ側のコネクタと、の係合箇所等を挙げることができる。
【0007】
そのため、ドア側から車両側へ向かう複数の電線のうち、コネクタの係合部分等から延びている電線がドアロックモータを動作させるための電線であると窃盗犯に容易に特定されてしまう。この場合、車両の盗難を適切に防止することができない。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ドアロックモータと電気的に接続される実電線と、ダミー電線と、を備える構成の車両盗難防止構造であって、実電線が容易に特定されることを防止した構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の車両盗難防止構造が提供される。即ち、この車両盗難防止構造は、実電線と、ダミー電線と、カバーと、を備える。前記実電線は、車両盗難防止用の電装品と電気的に接続される電線である。前記ダミー電線は、少なくとも前記電装品と前記実電線の接続箇所の近傍において当該実電線に沿うように配置される。前記カバーは、前記接続箇所における前記実電線及び前記ダミー電線を覆うように配置される。
【0011】
これにより、実電線と電装品との接続箇所が外部から見えないので、電装品から出てくる電線(実電線及びダミー電線)の中から実電線が特定されることを防止できる。従って、車両盗難用の電装品を停止又は操作するまでに時間が掛かるため、窃盗犯の犯行意欲を減退させて、車両の盗難をより確実に防止できる。
【0012】
前記の車両盗難防止構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記実電線の端部に取り付けられた電線側コネクタと、前記電装品に取り付けられた電装品側コネクタと、を係合することで、前記実電線と前記電装品とが電気的に接続されている。前記カバーは、前記電線側コネクタと前記電装品側コネクタとの係合部分を覆うように配置される。
【0013】
これにより、コネクタ同士の係合部分が外部から見えないので、係合部分に繋がる電線(通常は実電線)が特定されることを防止できる。従って、窃盗犯が車両盗難用の電装品を停止又は操作するまでに時間が掛かるため、車両の盗難をより確実に防止できる。
【0014】
前記の車両盗難防止構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記実電線は、当該実電線の端部に取り付けられた電線側コネクタによって前記電装品と接続されている。前記電線側コネクタに形成された面であって、前記実電線が挿入される挿入孔が形成された面である電線挿入面を覆うように前記カバーが配置される。
【0015】
これにより、電線側コネクタの電線挿入面が外部から見えないので、コネクタに挿入される電線(通常は実電線)が特定されることを防止できる。従って、窃盗犯が車両盗難用の電装品を停止又は操作するまでに時間が掛かるため、車両の盗難をより確実に防止できる。
【0016】
前記の車両盗難防止構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記電装品は、車両に設けられたドアのロックを解除する操作が可能なロック解除操作部を備えている。前記カバーは、前記ロック解除操作部を覆うように、前記電装品に固定される。
【0017】
これにより、ロック解除操作部の存在を窃盗犯に気付かれないようにすることができる。また、窃盗犯がロック解除操作部を操作するためには、電装品に固定されているカバーを取り外す手間が必要となる。従って、ロック解除操作部を備える構成の電装品であっても、車両の盗難をより確実に防止できる。
【0018】
前記の車両盗難防止構造においては、前記カバーには、前記ダミー電線を保持するためのダミー電線保持部が形成されていることが好ましい。
【0019】
これにより、ダミー電線を保持する構成を電装品に設ける必要がないので、既存の電装品の形状を変えることなく車両盗難防止構造が実現できる。
【0020】
前記の車両盗難防止構造においては、前記カバーには、前記電装品に係合可能な係合部が形成されることが好ましい。
【0021】
これにより、ボルト等で固定する構成と比較して、カバーの取付作業を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る車両盗難防止構造を有するドアロック装置を模式的に示す説明図。
【図2】ドアロック部の斜視図。
【図3】ドアロック部の分解斜視図。
【図4】電線側コネクタと補機側コネクタとが係合される様子を示す拡大斜視図。
【図5】盗難防止カバーの構成を示す斜視図。
【図6】第2実施形態に係る車両盗難防止構造を有するドアロック部の斜視図。
【図7】ダミー電線の端部に取り付けられる接続端子の構成を示す斜視図。
【図8】盗難防止カバーの構成を示す斜視図。
【図9】ダミー電線保持部に形成された挿入孔を示す断面図。
【図10】ダミー電線の接続端子が挿入孔に挿入された様子を示す断面図。
【図11】第3実施形態に係る車両盗難防止構造を有するドアロック部の斜視図。
【図12】ドアロック部の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
初めに、図1を参照して、第1実施形態のドアロック装置1の概要について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両盗難防止構造を有するドアロック装置1を模式的に示す説明図である。
【0025】
本実施形態のドアロック装置1は、運転座席に座っているユーザの操作等に基づいて、車両のバックドアをロックしたり、このバックドアのロックを解除したりするための装置である。ドアロック装置1は、図1に示すように、施錠機構を駆動するためのドアロック部2と、ドアロック部2を駆動するための電力を供給する電力供給部3と、を備えている。また、ドアロック部2と電力供給部3とは補機用電線(実電線)50によって電気的に接続されている。
【0026】
ドアロック部2は、施錠機構を駆動するドアロックモータ31等が内蔵された補機(電装品)30等を備えている。一方、電力供給部3は、バッテリー11とスイッチ12とを備えている。バッテリー11は、ドアロックモータ31に電力を供給する。スイッチ12は、ユーザの操作等に応じて、ドアロックモータ31を回転させるか否か及び回転させるときの回転方向を決定する。
【0027】
この構成により、ユーザの操作に応じて、ドアロックモータ31を所定の向きに回転させて、車両のバックドアをロックしたり、このバックドアのロックを解除したりすることができる。
【0028】
また、ドアロック装置1は、補機用電線50に加えて、車両の盗難を防止するためのダミー電線40が配置される構成である。ダミー電線40は、少なくとも窃盗行為時に窃盗犯の手が届く範囲(窃盗行為時に見える範囲を含む)において補機用電線50に沿うように配置されている。ダミー電線40は、部品同士を電気的に接続していないが、通常の電線と同様に、導体及び絶縁被覆から構成されている。
【0029】
本実施形態では、補機用電線50と補機30との接続箇所を覆うように、図2等に示す盗難防止カバー(カバー)20が配置されている。これにより、補機用電線50と補機30との接続箇所が外部から見えないので、電力供給部3へ向かう電線70(補機用電線50及びダミー電線40)から補機用電線50が特定されることを防止できる。
【0030】
以下、ドアロック部2の構成、特に盗難防止カバー20の形状について、図2から図5までを参照して説明する。図2は、ドアロック部2の斜視図である。図3は、ドアロック部2の分解斜視図である。図4は、電線側コネクタ51と補機側コネクタ32とが係合される様子を示す拡大斜視図である。図5は、盗難防止カバー20の構成を示す斜視図である。
【0031】
図2及び図3に示すように、ドアロック部2は、主要な構成として、盗難防止カバー20と、補機30と、ダミー電線40と、補機用電線50と、を備えている。
【0032】
補機30は、前述のようにドアロックモータ31等が内蔵された電装品である。なお、補機30には、ドアロックモータ31以外にも、バックドアの開放時に警告音を発生させる図略のスピーカ等が内蔵されている。補機30は、図3及び図4(a)に示すように、補機用電線50を接続するための補機側コネクタ32を備えている。補機側コネクタ32には、図4(a)に示すように、コネクタ挿入孔32aと、コネクタ係合孔32bと、が形成されている。
【0033】
一方、補機用電線50のバックドア側の端部には、図3及び図4(a)に示すように、電線側コネクタ51が取り付けられている。電線側コネクタ51には、前記コネクタ係合孔32bと係合可能なコネクタ係合突起51aが形成されている。なお、電線側コネクタ51には、補機用電線50が挿入される挿入孔が形成された電線挿入面51bが形成されている。通常、ダミー電線にはコネクタが取り付けられないため、この電線挿入面51bの外観は、電線70から補機用電線50を特定するための手掛かりを窃盗犯に与えてしまう危険性がある。
【0034】
補機30と補機用電線50とを接続するときには、図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態になるように、電線側コネクタ51をコネクタ挿入孔32aに挿入する。このとき、コネクタ係合突起51aがコネクタ係合孔32bに入り込む。従って、補機用電線50が補機30から離れる向きに引っ張られた場合であっても、電線側コネクタ51が補機側コネクタ32から抜けることを防止できる。この電線側コネクタ51と補機側コネクタ32との係合箇所(図4(b)に示すコネクタ係合部)は、上記と同様に、電線70から補機用電線50を特定するためのヒントとなってしまう危険性がある。
【0035】
盗難防止カバー20は、図2及び図5等に示すように、ベース板25と、側面部24と、突出部(ダミー電線保持部)22と、係合部21と、から構成されている。なお、盗難防止カバー20を構成する各部は一体的に形成されている。ベース板25は、図4(b)に示すコネクタ係合部と向かい合うように、当該コネクタ係合部の一側(図2及び図3の上側)に配置される平板状の部材である。コネクタ係合部は、主にこのベース板25によって、外部から見えないように覆われている。
【0036】
側面部24は、ベース板25の縁部(詳細にはコネクタ係合部の周囲の縁部のみ)から前記一側の反対側(図2及び図3の下側)に向かって延びるように構成されている。この側面部24には、ダミー電線40及び補機用電線50を通すための切欠き部23が形成されている。前記電線挿入面51bは、主に側面部24(詳細には切欠き部23の近傍の側面部24)によって、外部から見えないように覆われている。
【0037】
突出部22は、ベース板25の上記切欠き部23に対応する箇所から突出するように構成されている。この突出部22は、ダミー電線40を取り付けるために用いられる。具体的には、初めに、ダミー電線40の一端と他端とを近づけるようにして、ダミー電線40を2つに折り曲げる。そして、ダミー電線40のループが形成されていない方の端部を突出部22に合わせた後に、図3に示すようにダミー電線固定テープ41を用いて固定する。ダミー電線40は、以上のようにして盗難防止カバー20に固定(保持)される。なお、図1に示すように、ダミー電線40のループ部分は窃盗犯の手(目)が届かない箇所に固定されるため、ループ部分に基づいてダミー電線40がダミーであることが見破られない構成となっている。
【0038】
係合部21は、ベース板25の略中央部から前記一側の反対側(図2及び図3の下側)に向かって延びた箇所に形成された1対の爪状の部材である。この係合部21は、補機側コネクタ32の外周部に係合可能に構成されている。
【0039】
次に、ドアロック部2の製造方法について説明する。ドアロック部2の製造時においては、盗難防止カバー20にダミー電線40を固定し、かつ、補機30に補機用電線50を接続した後に、補機30に盗難防止カバー20が取り付けられる。詳細には、初めに、ダミー電線40を突出部22に合わせた後に、ダミー電線固定テープ41を用いて盗難防止カバー20にダミー電線40を予め固定しておく(ダミー電線固定工程)。このダミー電線工程工程と並行して、コネクタ挿入孔32aに電線側コネクタ51を差し込んで、補機30と補機用電線50とを予め接続しておく(補機用電線接続工程)。その後、盗難防止カバー20の係合部21を補機側コネクタ32に合わせるようにして、補機30に盗難防止カバー20を取り付けるとともに、補機用電線50とダミー電線40とを電線連結テープ52によって束ねる(盗難防止カバー取付工程)。
【0040】
これにより、既存の工程(補機用電線接続工程)の内容を変更する必要がない。また、補機用電線接続工程中にダミー電線が邪魔になることを防止できる。
【0041】
次に、図6から図10までを参照して、第2実施形態を説明する。図6は、第2実施形態に係る車両盗難防止構造を有するドアロック部2の斜視図である。図7は、ダミー電線40の端部に取り付けられる接続端子42の構成を示す斜視図である。図8は、盗難防止カバー20の構成を示す斜視図である。なお、第2実施形態及び後述の第3実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0042】
本実施形態では、主としてダミー電線40の固定方法が上記第1実施形態と異なっている。具体的には、ダミー電線40の一端部に接続端子42が取り付けられ、この接続端子42を用いて、盗難防止カバー20に形成されたダミー電線用コネクタ(ダミー電線保持部)28にダミー電線40を固定する構成である。以下では、初めに、接続端子42の詳細な構成を説明し、その後、ダミー電線用コネクタ28の形状について説明する。なお、本実施形態では、図6に示すようにダミー電線40の一端部のみが盗難防止カバー20に固定される構成であるが、ダミー電線40の両端部に接続端子42を取り付けて、第1実施形態のようにダミー電線40の両端部が盗難防止カバー20に固定される構成であっても良い。また、第1実施形態において、ダミー電線40の一端部のみが盗難防止カバー20に固定される構成を採用することもできる。
【0043】
以下、接続端子42について説明する。図7に示すように、接続端子42は、インシュレーションバレル42aと、ワイヤバレル42bと、嵌合部42cと、を備えている。接続端子42は、1枚の銅板をプレスによって打抜き加工したあと適宜折り曲げて形成されている。なお、前述のように、ダミー電線40は、導体40aと、当該導体部を覆う絶縁被覆40bと、で構成される。
【0044】
図7に示すように、インシュレーションバレル42aは、ダミー電線40の絶縁被覆40bに対して圧着されている。これにより、接続端子42をダミー電線40に対して固定することができる。ワイヤバレル42bは、ダミー電線40の導体40aに対して圧着されている。なお、ダミー電線40には部品間を電気的に接続する機能が実質的に求められていないため、ワイヤバレル42bによる導体40aの圧着は省略しても良い。
【0045】
次に、盗難防止カバー20に形成されるダミー電線用コネクタ28について説明する。図8(a)に示すように、ダミー電線用コネクタ28は、係合部21とベース板25の間に形成されている。ダミー電線用コネクタ28には、図8(a)及び図8(a)のA−A断面矢視図である図9に示すように、複数の端子挿入孔28aがベース板25の表面に沿うように並べて形成されている。この端子挿入孔28aには、図8(b)に示すように、ダミー電線40が挿入される。
【0046】
また、図8(b)のB−B断面矢視図である図10に示すように、端子挿入孔28aの内壁(詳細にはベース板25上)には、端子係合凸部28bが形成されている。端子係合凸部28bは、ダミー電線40が挿入される側(図10の下側)において傾斜するように形成されるとともに、その反対側(図10の上側)においてベース板25に対して直角となるように形成されている。また、図10に示すように、接続端子42の嵌合部42cの一側(挿入時にベース板25と接触する側)の面には、端子係合孔42dが形成されている。
【0047】
この構成により、接続端子42を端子挿入孔28aに挿入していくことで、初めに、嵌合部42cの先端部が端子係合凸部28bの傾斜面に沿うように移動する。そして、接続端子42を更に挿入することで、端子係合孔42dが端子係合孔42dに入り込む。この状態(図10に示す状態)においては、ダミー電線40が挿入方向と反対方向に引っ張られた場合であっても、端子係合孔42dの縁と端子係合凸部28bとが干渉しているため、接続端子42が外れることがない。
【0048】
第2実施形態において、ダミー電線40は、以上のようにして盗難防止カバー20に固定される。このようにダミー電線40を固定することにより、仮に、盗難防止カバー20の一部(例えば側面部24)が破損してダミー電線用コネクタ28が露出した場合であっても、本実施形態のダミー電線40はコネクタ状の部材(ダミー電線用コネクタ28)に固定されているので、このダミー電線40がダミーであることを気付かせないことができる。
【0049】
次に、図11及び図12を参照して、第3実施形態を説明する。図11は、第3実施形態に係る車両盗難防止構造を有するドアロック部2の斜視図である。図12は、ドアロック部2の分解斜視図である。
【0050】
第3実施形態は、補機30の表面に、車両のバックドアのロックを解除するためのロック解除レバー(ロック解除操作部)38が配置された構成となっている。第3実施形態の補機30に上記第1実施形態又は第2実施形態の盗難防止カバー20を適用しても、ロック解除レバー38が露出してしまうため、窃盗犯によってロック解除レバー38が操作されて車両のロックが解除されてしまう。この点、本実施形態では、このロック解除レバー38を覆うようにベース板25を延出した延出部29が形成される構成であるため、ロック解除レバー38の存在を窃盗犯に気付かれないようにすることができる。
【0051】
また、本実施形態では、ベース板25に取付け孔25aが形成されるとともに、補機30に取付け孔30aが形成されている。そして、取付け孔25a及び取付け孔30aにボルト60を挿入することで、ベース板25が補機30に固定されている。これにより、窃盗犯が仮にロック解除レバー38の存在に気付いた場合であっても、即座にロック解除レバー38が操作されることを防止できる。
【0052】
以上に説明したように、上記実施形態の車両盗難防止構造は、補機用電線50と、ダミー電線40と、盗難防止カバー20と、を備える。補機用電線50は、車両盗難防止用の補機30と電気的に接続される。ダミー電線40は、少なくとも補機30と補機用電線50の接続箇所の近傍において当該補機用電線50に沿うように配置される。盗難防止カバー20は、前記接続箇所における補機用電線50及びダミー電線40を覆うように配置される。
【0053】
これにより、補機用電線50と補機30との接続箇所が外部から見えないので、補機30から出てくる電線70の中から補機用電線50が特定されることを防止できる。従って、車両盗難用の補機30を操作してドアを解除するまでに時間が掛かるため、窃盗犯の犯行意欲を減退させて、車両の盗難をより確実に防止できる。
【0054】
また、上記実施形態の車両盗難防止構造においては、補機用電線50の端部に取り付けられた電線側コネクタ51と、補機30に取り付けられた補機側コネクタ32と、を係合することで、補機用電線50と補機30とが電気的に接続されている。盗難防止カバー20は、電線側コネクタ51と補機側コネクタ32との係合部分(コネクタ係合部分)を覆うように配置される。
【0055】
これにより、コネクタ係合部分が外部から見えないので、係合部分に繋がる電線(即ち、補機用電線50)が特定されることを防止できる。従って、車両盗難用の補機30を操作してドアを解除するまでに時間が掛かるため、車両の盗難をより確実に防止できる。
【0056】
また、上記実施形態の車両盗難防止構造においては、電線側コネクタ51に形成された面であって、補機用電線50が挿入される挿入孔が形成された面である電線挿入面51bを覆うように盗難防止カバー20が配置される。
【0057】
これにより、電線側コネクタ51の電線挿入面51bが外部から見えないので、コネクタに挿入される電線(即ち、補機用電線50)が特定されることを防止できる。従って、車両盗難用の補機30を操作してドアを解除するまでに時間が掛かるため、車両の盗難をより確実に防止できる。
【0058】
また、第3実施形態の車両盗難防止構造においては、補機30は、車両に設けられたドアのロックの解除が可能なロック解除レバー38を備えている。盗難防止カバー20は、ロック解除レバー38を覆うように、補機30に固定される。
【0059】
これにより、ロック解除レバー38の存在を窃盗犯に気付かれないようにすることができる。また、窃盗犯がロック解除レバー38を操作するためには、補機30に固定されている盗難防止カバー20を取り外す手間が必要となる。従って、ロック解除レバー38を備える構成の補機30であっても、車両の盗難をより確実に防止できる。
【0060】
また、上記実施形態の車両盗難防止構造においては、盗難防止カバー20には、ダミー電線40を保持するための突出部22又はダミー電線用コネクタ28が形成されている。
【0061】
これにより、ダミー電線40を保持する構成を補機30に設ける必要がないので、既存の補機30の形状を変えることなく車両盗難防止構造が実現できる。
【0062】
また、第1実施形態及び第2実施形態の車両盗難防止構造においては、盗難防止カバー20には、補機30に係合可能な係合部21が形成される。
【0063】
これにより、ボルト等で固定する第3実施形態と比較して、盗難防止カバー20の取付作業を簡単にすることができる。
【0064】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0065】
上記実施形態で示したカバーの形状は一例であり、コネクタ係合部等を適切に覆うことが可能であれば任意の形状のカバーを用いることができる。
【0066】
第3実施形態におけるベース板25と補機30の固定方法は、ボルトに限られず、適宜の固定方法を用いることができる。
【0067】
ドアロック装置1は、車両のバックドアのロック及びその解除を操作するための構成であるが、車両の側面のドアのロック等を操作する構成にも本発明を適用することができる。
【0068】
本発明の構成は、ドアロック装置1だけでなく、車両の破損等を検出して盗難を知らせる盗難検出センサ等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ドアロック装置
2 ドアロック部
3 電力供給部
20 盗難防止カバー(カバー)
22 突出部(ダミー電線保持部)
28 ダミー電線用コネクタ(ダミー電線保持部)
30 補機(電装品)
31 ドアロックモータ
40 ダミー電線
50 補機用電線(実電線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両盗難防止用の電装品と電気的に接続される電線である実電線と、
少なくとも前記電装品と前記実電線の接続箇所の近傍において当該実電線に沿うように配置されるダミー電線と、
前記接続箇所における前記実電線及び前記ダミー電線を覆うように配置されるカバーと、
を備えることを特徴とする車両盗難防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両盗難防止構造であって、
前記実電線の端部に取り付けられた電線側コネクタと、前記電装品に取り付けられた電装品側コネクタと、を係合することで、前記実電線と前記電装品とが電気的に接続されており、
前記カバーは、前記電線側コネクタと前記電装品側コネクタとの係合部分を覆うように配置されることを特徴とする車両盗難防止構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両盗難防止構造であって、
前記実電線は、当該実電線の端部に取り付けられた電線側コネクタによって前記電装品と接続されており、
前記電線側コネクタに形成された面であって、前記実電線が挿入される挿入孔が形成された面である電線挿入面を覆うように前記カバーが配置されることを特徴とする車両盗難防止構造。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の車両盗難防止構造であって、
前記電装品は、車両に設けられたドアのロックを解除する操作が可能なロック解除操作部を備えており、
前記カバーは、前記ロック解除操作部を覆うように、前記電装品に固定されることを特徴とする車両盗難防止構造。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の車両盗難防止構造であって、
前記カバーには、前記ダミー電線を保持するためのダミー電線保持部が形成されていることを特徴とする車両盗難防止構造。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の車両盗難防止構造であって、
前記カバーには、前記電装品に係合可能な係合部が形成されることを特徴とする車両盗難防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−201345(P2012−201345A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70805(P2011−70805)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)