説明

車両管理システム、車両管理センター、及び車載機

【課題】グリッドの消費電力を予測することのできる車両管理システム、この車両管理システムを構成する車両管理センター、及びこの車両管理システムを構成する車載機を提供する。
【解決手段】車載機10は、EV車両Cに搭載されて、当該EV車両Cの実充電状態に係る情報である実充電状態情報と、当該EV車両Cの現在地に係る情報である現在地情報と、当該EV車両Cの目的地に係る情報である目的地情報と、EV車両Cの目標充電状態に係る情報である目標充電状態情報を取得し、車両管理センター20に無線通信により送信する。そして、車両管理センター20は、これら受信した実充電状態情報及び目標充電状態情報とマルチモーダル経路情報とを各EV車両について管理し、マルチモーダル経路上の駐車場が位置する各グリッドにおける消費電力を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を管理する車両管理システム、この車両管理システムを構成する車両管理センター、及びこの車両管理システムを構成する車載機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この特許文献1に記載の技術では、例えば走行動力源として電動機を有する電動車両(すなわち、電気自動車、以下EV車両と記載)等が駐車場に設置された充電設備に接続されると、この接続されたEV車両とグリッド給電センターとの間でインターネット接続が確立される。そして、グリッド給電センターは、その確立されたインターネット接続を用いて、EV車両が充電設備に接続された駐車場が位置するグリッドにおける電力ニーズを把握し、その電力ニーズに適するようにグリッドに電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−512727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、グリッド給電センターは、EV車両が充電設備に接続され、その接続されたEV車両との間でインターネット接続が確立された後に、グリッドにおける電力ニーズをはじめて把握する。そのため、グリッドにおける電力ニーズを把握した時点ではグリッド給電センターによる給電準備が整っておらず、電力ニーズに適するようにグリッドに電力を供給することができない事態も生じ得る。
【0005】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであって、その目的は、グリッドの消費電力を予測することのできる車両管理システム、この車両管理システムを構成する車両管理センター、及びこの車両管理システムを構成する車載機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、走行動力源として電動機を有する電動車両の出発地に係る情報である出発地情報を取得する出発地情報取得手段と、電動車両の目的地に係る情報である目的地情報を取得する目的地情報取得手段と、出発地情報及び目的地情報に基づいて、電動車両と、当該電動車両を充電するための充電設備が設置された駐車場を有する公共交通機関とを併用した、出発地から目的地までの経路であるマルチモーダル経路を探索するマルチモーダル経路探索手段と、駐車場が含まれるグリッドにおける消費電力量を予測する消費電力量予測手段と、マルチモーダル経路情報に基づいて、消費電力量を消費するグリッドを予測するグリッド予測手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
マルチモーダル経路とは、電動車両と、当該電動車両を充電するための充電設備が設置された駐車場を有する公共交通機関(例えばバス、電車、飛行機等)とを併用した、目的地までの経路である。電動車両がマルチモーダル経路ではない通常の経路を利用する場合、電動車両の充電場所が位置するグリッドを予め把握することは難しい。しかしながら、電動車両がマルチモーダル経路を利用する場合、電動車両はマルチモーダル経路上の駐車場(バス停、駅、及び空港に併設された駐車場等)において充電されることが多い。
【0008】
車両管理システムとしての上記構成では、消費電力量予測手段によって、駐車場を含むグリッドにおける消費電力量が予測される。すなわち、どの程度の消費電力量となるか予め把握することができるようになる。また、上記構成では、グリッド予測手段によって、マルチモーダル経路情報に基づいて、消費電力量を消費するグリッドが予測される。すなわち、電動車両が充電される駐車場が含まれるグリッドを予め把握することができるようになる。上記車両管理システムによれば、このようにして、消費電力量予測情報及びグリッド情報、すなわち、グリッドにおける消費電力を予測することができるようになる。ちなみに、グリッドとは、グリッド給電センターから電力が供給される地域を複数の小区画に分割したもののうち各区画を意味する。
【0009】
上記請求項1に記載の発明には、例えば出発地から最寄の駐車場へのマルチモーダル経路を探索する等、電動車両の実充電状態をなんら考慮することなくマルチモーダル経路を探索する構成も含まれる。こうした構成を採用すると、電動車両の実充電状態によっては、探索された駐車場に到達することができないことも起こり得る。
【0010】
その点、請求項2に記載の発明では、電動車両の実充電状態に係る情報である実充電状態情報を取得する実充電状態情報取得手段を備え、マルチモーダル経路探索手段は、出発地情報及び目的地情報に加え、実充電状態情報にも基づいて、マルチモーダル経路を探索するとよい。これにより、実充電状態に応じたマルチモーダル経路を探索することができるようになる。
【0011】
また、上記請求項2に記載の発明には、例えば電動車両1台当たりの平均充電量等に基づいて、駐車場が含まれるグリッドにおける消費充電量を予測する構成が含まれる。こうした構成を採用すると、駐車場が含まれるグリッドにおける消費充電量を正確に予測することができないことも考えられる。
【0012】
その点、請求項3に記載の発明では、電動車両の目標充電状態に係る情報である目標充電状態情報を取得する目標充電状態情報取得手段を備え、消費電力量予測手段は、実充電状態情報及び目標充電状態情報に基づいて、駐車場が含まれるグリッドにおける消費電力量を予測するとよい。これにより、駐車場が含まれるグリッドにおける消費充電量をより正確に予測することができるようになる。
【0013】
上記請求項3に記載の構成において、請求項4に記載の発明では、目標充電状態情報取得手段は、目標充電状態情報をユーザ操作によって取得することを特徴とする。これにより、電動車両の目標充電状態をユーザが指定することができるようになる。なお、ユーザ操作によって入力することのできる目標充電状態として、「満充電状態」、「満充電の所定割合(例えば「80%」等)の状態」、及び「充電しない状態」等の状態を採用してもよい。
【0014】
上記請求項1〜4のいずれか一項に記載の構成においては、請求項5に記載の発明のように、出発地情報取得手段及び目的地情報取得手段は、電動車両に搭載された車載機に備えられており、マルチモーダル経路探索手段、消費電力量予測手段、及びグリッド予測手段は、車両管理センターに備えられているとよい。
【0015】
上記請求項1〜5のいずれかに記載の構成において、請求項6に記載の発明のように、消費電力量予測手段で予測されたグリッドにおける消費電力量に係る情報である消費電力量予測情報、及びグリッド予測手段で予測されたグリッドに係る情報であるグリッド情報を提供する予測情報提供手段を備えるとよい。これにより、消費電力量予測情報及びグリッド情報を車両管理システムの外部に提供することができるようになる。
【0016】
上記請求項6に記載の構成においては、請求項7に記載の発明のように、予測情報提供手段は、消費電力量予測情報及びグリッド情報を、各グリッドへの給電を管理するグリッド給電管理センターに提供することが望ましい。グリッド給電管理センター、すなわち電力会社は、車両管理センターから提供された消費電力量予測情報及びグリッド情報に基づいて、グリッド単位での給電計画を立て、その立てた給電計画に沿って各グリッドに給電することができるようになり、ひいては、より容易に、電力ニーズに適するように各グリッドに電力を供給することができるようになる。
【0017】
なお、車両管理センターとグリッド給電管理センターとは互いに異なる施設であってもよく、請求項8に記載の発明のように、車両管理センターは、各グリッドへの給電を管理するグリッド給電センターを兼ねる、すなわち車両管理センターとグリッド給電管理センターとは同一施設であってもよい。
【0018】
上記請求項7または8に記載の構成において、請求項9に記載の発明では、グリッド給電管理センターは、消費電力量予測情報及びグリッド情報に基づいて、グリッド単位での給電計画を立て、その立てた給電計画に沿って各グリッドに給電することを特徴とする。これにより、電力ニーズに適するように各グリッドに電力を供給することができるようになる。
【0019】
上記請求項1〜9のいずれかに記載の構成において、請求項10に記載の発明では、マルチモーダル経路探索手段は、予め定められた探索条件に基づいてマルチモーダル経路上の駐車場を探索する駐車場探索手段と、出発地から駐車場探索手段で探索された駐車場までの電動車両の経路を探索する電動車両経路探索手段とを有し、車両管理センターは、駐車場探索手段を有するとともに、車載機は、経路探索手段を有し、車両管理センターと電動車両との間の無線通信により、車両管理センターから電動車両へ、駐車場探索手段で探索された駐車場の情報である駐車場情報を送信することを特徴とする。
【0020】
上記請求項10に記載の発明によれば、駐車場探索手段で探索されたマルチモーダル経路上の駐車場の情報である駐車場情報を車両管理センターから電動車両へ送信すればよく、マルチモーダル経路情報全体を車両管理センターから電動車両へ送信する必要がなくなるため、通信量の低減を図ることができるようになる。
【0021】
また、上記請求項1〜10のいずれかに記載の構成において、請求項11に記載の発明のように、マルチモーダル経路探索手段は、電動車両に充電することなく出発地から到達することのできる駐車場を探索するとよい。電動車両を1回あるいは複数回充電して出発地から到達することのできる駐車場までの経路を探索するよりも処理が単純になるため、電動車両経路探索手段に係る処理負荷を低減することができるようになる。
【0022】
上記請求項1〜11のいずれかに記載の構成において、請求項12に記載の発明では、マルチモーダル経路探索手段によりマルチモーダル経路を再探索する必要の有無を判定する再探索要否判定手段を備え、マルチモーダル経路探索手段は、再探索要否判定手段によってマルチモーダル経路を再探索する必要があると判定された場合、マルチモーダル経路を再探索することを特徴とする。これにより、マルチモーダル経路を再探索する必要があると判定された場合に、マルチモーダル経路を再探索することができるようになる。
【0023】
上記請求項12に記載の構成において、請求項13に記載の発明のように、電動車両の実充電状態に係る情報である実充電状態情報を取得する実充電状態情報取得手段を備え、再探索要否判定手段は、電動車両の実充電状態における有意な低下の有無を判定し、有意な低下があると判定した場合に、マルチモーダル経路を再探索する必要があると判定するとよい。ここで、電動車両の実状態状態における有意な低下とは、例えば、車載エアコンや車載オーディオ等の車載機を使用することに起因して電動車両の充電量が著しく低減したり、マルチモーダル経路上の渋滞に起因して電動車両の充電量が著しく低下したりすることを意味する。
【0024】
上記請求項12または13に記載の構成において、請求項14に記載の発明のように、再探索要否判定手段は、マルチモーダル経路上の駐車場の満空状況に関する情報を取得し、駐車場が満車状況である場合に、マルチモーダル経路を再探索する必要があると判定するとよい。
【0025】
また、上記目的を達成するため、請求項15に記載の発明では、走行動力源として電動機を有する電動車両に搭載され、電動車両の出発地に係る情報である出発地情報を取得する出発地情報取得手段と、電動車両の目的地に係る情報である目的地情報を取得する目的地情報取得手段とを備える車載機との間で無線通信を行なう車両管理センターであって、車載機との間の無線通信によって取得した、出発地情報及び目的地情報に基づいて、電動車両と、当該電動車両を充電するための充電設備が設置された駐車場を有する公共交通機関とを併用した、出発地から目的地までの経路であるマルチモーダル経路を探索するマルチモーダル経路探索手段と、電動車両の目標充電状態に係る情報である目標充電状態情報を取得する目標充電状態情報取得手段から取得した目標充電状態情報とに基づいて、駐車場が含まれるグリッドにおける消費電力量を予測する消費電力量予測手段と、マルチモーダル経路情報に基づいて、消費電力量を消費するグリッドを予測するグリッド予測手段とを備えることを特徴とする。車両管理センターとしてのこのような構成によっても、先の請求項1に記載の車両管理システムと同様に、消費電力量予測情報及びグリッド情報、すなわち、グリッドにおける消費電力を予測することができるようになる。
【0026】
また、上記目的を達成するため、請求項16に記載の発明のように、走行動力源として電動機を有する電動車両に搭載され、電動車両の出発地に係る情報である出発地情報を取得する出発地情報取得手段と、電動車両の目的地に係る情報である目的地情報を取得する目的地情報取得手段とを備え、車両管理センターとの間で無線通信を行なうとよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】各グリッドへの給電を管理するグリッド給電センターを含め、本発明に係る車両管理システムの第1の実施の形態について、その全体構成を示す図である。
【図2】本発明に係る車両管理システムの第1の実施の形態を構成する車載機について、その構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る車両管理システムの第1の実施の形態を構成する車両管理センターについて、その構成例を示すブロック図である。
【図4】第1の実施の形態の車載機によって実行されるマルチモーダル経路案内処理について、その処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態の車両管理センターによって実行されるマルチモーダル経路探索処理について、その処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態の車両管理センターによって実行される充電量予測処理について、その処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態の車両管理センターが接続されたグリッド給電センターによって実行される給電処理について、その処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態の車両管理センターによって実行される充電量予測処理について、その処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態の車両管理センターが接続されたグリッド給電センターによって実行される給電処理について、その処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】第3の実施の形態の車両管理センターによって実行される充電量予測処理について、その処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態の車載機によって実行されるマルチモーダル経路案内処理について、その処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
本発明に係る車両管理システムの第1の実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0029】
図1〜図3に示されるように、本実施の形態の車両管理システム1は、走行動力源として電動機を有する電動車両(すなわち、電気自動車、以下EV車両とも記載)Cに搭載され、ナビゲーション装置として具体化された車載機10(図1では図示略)と、こうした車載機10を搭載した複数のEV車両Cを管理する車両管理センター20とを備えて構成されている。また、この車両管理システム1を構成する車両管理センター20は、各グリッドG1〜G3への給電を管理するグリッド給電管理センター30に接続されている。なお、各グリッドG1〜G3には、EV車両Cを充電するための充電設備が設置された駐車場であって、且つ、公共交通機関(本実施の形態では、電車の駅)に併設された駐車場であるEV駐車場がそれぞれ位置している。ちなみに、グリッドとは、グリッド給電センター30から電力が供給される地域を複数の小区画に分割したもののうち各区画を意味する。
【0030】
はじめに、図2を参照して、車載機10の構成及び機能について説明する。同図2に示されるように、車載機10は、車両側記憶部11、GPS受信部12、操作部13、車両側制御部14、車両側通信部15、音声出力部16、及び表示部17を備えて構成されており、EV車両Cの図示しない車載バッテリに接続された電流センサ18に接続されている。車両側制御部14は、公知のCPU及び内蔵メモリを有して構成されるコンピュータであり、そのCPUが、内蔵メモリに記憶されているプログラムを実行することによって各種機能を実現している。以下の説明では、便宜上、車両側制御部14は、現在地検出部141、実充電状態検出部142、通信制御部143、経路案内部144、地図画像描画部145、及び表示制御部146を有するものとして説明する。
【0031】
車両側記憶部11は、例えばハードディスクドライブ装置、DVD(digital versatile disc)装置、CD(compact disc)装置、フラッシュメモリ等によって構成されており、上記EV駐車場の位置情報及び道路データを含む地図情報、地図画像、並びに当該車載機10が搭載されたEV車両Cに固有の車両ID等が記憶されている。また、車両管理センター20から発せられた後述のマルチモーダル経路情報を当該車載機10が受信すると、車両側記憶部11には、このマルチモーダル経路情報が記憶される。
【0032】
GPS受信部12は、例えばGPSアンテナを有して構成されており、図示しない複数のGPS衛星から発せられるGPS信号を受信する。また、GPS受信部12は、車両側制御部14に接続されており、この受信したGPS信号を車両側制御部14に出力する。
【0033】
操作部13は、例えばタッチパネルや音声入力装置等の適宜の入力装置を有して構成されており、車両側制御部14に接続されている。当該車載機10のユーザは、上記適宜の入力装置を操作することにより、目的地の情報である目的地情報、EV車両Cの目標充電状態に係る情報である目標充電状態情報、経路探索の実行指示、及び経路案内の開始指示を車両側制御部14に入力することができる。また、操作部13が特許請求の範囲に記載の目標充電状態情報取得手段、出発地情報取得手段、及び目的地情報取得手段に相当する。
【0034】
現在地検出部141は、車両側記憶部11及びGPS受信部12に接続されており、GPS受信部12によって受信されるGPS信号を取得するとともに、車両側記憶部11に記憶されている地図情報を読み出し、これらGPS信号及び地図情報を利用してEV車両Cの現在地を逐次検出する。このEV車両Cの現在地の逐次検出においては、当該車載機10を搭載するEV車両Cの走行軌跡及び地図情報に基づいて周知のマップマッチングを実行することで、GPS信号に基づいて決定する現在地の誤差を逐次補正する。車載機10は、このようにして現在地情報を逐次取得する。また、現在地検出部141は、通信制御部143に接続されており、このようにして取得した現在地情報を通信制御部143に出力する。
【0035】
実充電状態検出部142は、上記電流センサ18に接続されており、車載バッテリの充放電量を積分し、満充電容量からその積分値を差し引いた値を満充電量で割ることにより、車載バッテリの充電率(以下、SOCと記載)を逐次算出する。実充電状態検出部142は、通信制御部143に接続されており、このように算出したSOCの情報であるSOC情報を通信制御部143に出力する。なお、本実施の形態では、満充電容量として定格容量を用いており、実充電状態検出部142及びSOC情報が特許請求の範囲に記載の実充電状態情報取得手段及び実充電状態情報にそれぞれ相当する。
【0036】
通信制御部143は、現在地検出部141、操作部13、実充電状態検出部142、及び、適宜のアンテナを有して構成された車両側通信部15に接続されている。
【0037】
通信制御部143は、現在地検出部141から現在地情報が入力される、操作部13によって目的地情報が入力される、実充電状態検出部142からSOC情報が入力される、操作部13によって経路探索の実行指示が入力される、操作部13によって経路案内の開始指示が入力される、あるいは、操作部13によって目標充電状態情報が入力されると、車両側記憶部11に記憶されている車両IDを読み出し、入力された各種情報にこの読み出した車両IDを付加して、車両側通信部15を用いて車両管理センター20に対して送信する。
【0038】
また、通信制御部143は、車両管理センター20から発せられた後述のマルチモーダル経路情報を車両側通信部15を用いて受信し、マルチモーダル経路情報を受信すると、この受信したマルチモーダル経路情報を車両側記憶部11に出力し記憶する。
【0039】
経路案内部144は、車両側記憶部11、操作部13、現在地検出部141、及び地図画像描画部145に接続されている。経路案内部144は、操作部13から経路案内の開始指示が入力されると、車両側記憶部11からマルチモーダル経路情報を読み出すとともに、その読み出したマルチモーダル経路情報及び現在地検出部141から入力された現在地情報を地図画像描画部145に出力する。また、経路案内部144は、例えばスピーカ等によって構成される音声出力部16に接続されており、操作部13から経路案内の開始指示が入力されると、音声出力部16から音声案内を出力してユーザにマルチモーダル経路を案内する。
【0040】
地図画像描画部145は、車両側記憶部11、経路案内部144、及び表示制御部146に接続されており、経路案内部144からマルチモーダル経路情報及び現在地情報が入力されると、車両側記憶部11から地図画像を読み出して、現在地及びマルチモーダル経路を含む平面視の地図画像である平面地図画像を描画するとともに、この描画した平面地図画像の情報である平面地図画像情報を表示制御部146に出力する。
【0041】
表示制御部146は、地図画像描画部145に接続されており、この地図画像描画部145から平面地図画像情報が入力されると、例えばLCD等によって構成された表示部17の表示領域に平面地図画像を表示する。
【0042】
以上のように構成されることで、車載機10は、現在地及び目的地までのマルチモーダル経路を含む平面地図画像を表示部17の表示領域に表示させながら、音声出力部16によって音声案内を行なうことができるようになる。
【0043】
次に、図3を参照して、車両管理センター20の構成及び機能について説明する。同図3に示されるように、車両管理センター20は、センター側記憶部21、センター側通信部22、及びセンター側制御部23を備えて構成されている。また、センター側制御部23は、公知のCPU及び内蔵メモリを有して構成されるコンピュータであり、そのCPUが内蔵メモリに記憶されているプログラムを実行することによって各種機能を実現している。
【0044】
センター側記憶部21は、例えば大規模なハードディスクドライブ装置等によって構成されている。このセンター側記憶部21には、上記EV駐車場の位置情報及び道路情報を含む地図情報、並びに公共交通機関の運賃情報が記憶されている。なお、本実施の形態では、EV車両Cと併用する公共交通機関として電車を採用したがこれに限らない。他に例えば、EV車両Cと併用する公共交通機関としてバスを採用してもよい。バスを採用した場合、センター側記憶部21には、バス停に併設されたEV駐車場の位置情報を含む地図情報及びバスの運賃情報が記憶されることになる。また、他に例えば、EV車両Cと併用する公共交通機関として飛行機を採用してもよい。飛行機を採用した場合、センター側記憶部21には、空港に併設されたEV駐車場の位置情報を含む地図情報と飛行機の運賃情報が記憶されることになる。
【0045】
センター側制御部23は、適宜のアンテナを有して構成されたセンター側通信部22に接続されており、このセンター側通信部22を用いて車載機10との間で無線通信を行う。なお、このセンター側制御部23が、特許請求の範囲に記載のマルチモーダル経路探索手段、駐車場探索手段、及び電動車両経路探索手段等に相当する。
【0046】
また、センター側制御部23は、センター側通信部22によって、現在地情報、目的地情報、目標充電状態情報、あるいは、SOC情報を受信すると、これら受信した情報をEV車両Cの車両IDの別にセンター側記憶部21に記憶する。車両管理センター20は、このようにして車載機10を搭載する複数のEV車両Cを管理する。
【0047】
また、センター側制御部23は、センター側通信部22によって、上記経路探索の実行指示を受信すると、現在地情報、目的地情報、及びSOC情報と、センター側記憶部21に記憶されている地図情報とに基づいて、EV車両C及び電車を併用した、現在地から目的地までの経路であるマルチモーダル経路の探索を実行する。
【0048】
マルチモーダル経路探索について詳しくは、センター側制御部23は、まず、EV駐車場の中から、車載バッテリを充電することなく現在の充電状態で現在地から到達することが可能であり、且つ、予め定められた探索条件(例えば、「目的地に到達するのに必要な電車の運賃が最も安い」等)に適う最適なEV駐車場を探索する。そして、センター側制御部23は、現在地からその最適なEV駐車場までの経路を探索する。このようにしてマルチモーダル経路を探索すると、センター側制御部23は、その探索したマルチモーダル経路の情報であるマルチモーダル経路情報をセンター側通信部22によってEV車両Cに送信する。
【0049】
なお、本実施の形態では、センター側制御部23は、上記経路探索の実行指示を受信したときにおけるEV車両Cの現在地を出発地としてマルチモーダル経路を探索するが、これに限らず、操作部13によって現在地とは異なる地点を出発地として設定可能とし、その設定された出発地から目的地までの経路であるマルチモーダル経路を探索することとしてもよい。換言すれば、出発地情報は現在地情報とは異なることとしてもよい。
【0050】
また、本実施の形態では、センター側制御部23は、予め定められた探索条件として、「目的地に到達するのに必要な電車の運賃が最も安い」ことを採用したが、この探索条件に限らない。他に例えば、「目的地に到達するのに必要な電車の乗り換え回数が最も少ないこと」、「目的地に到達するのに必要な時間が最も短いこと」、「EV駐車場にて車載バッテリを充電するに必要な充電費と目的地に到達するのに必要な電車の運賃との合計金額が最も少ないこと」等を探索条件として採用してもよい。また、操作部13によって探索条件を設定可能な構成としてもよく、車両管理センター20から車載機10へ、探索条件を問い合わせる構成としてもよい。
【0051】
また、センター側制御部23は、各電動車両Cのマルチモーダル経路情報及びSOC情報に基づいて、各EV駐車場における充電量を予測する。詳しくは、センター側制御部23は、「各EV車両Cが充電されるEV駐車場を含むグリッド(グリッド情報)」及び「各EV車両CがEV駐車場に到着する時刻」をマルチモーダル経路情報から、「各EV車両Cをユーザ操作によって入力された目標充電状態(例えば「充電率100%(すなわち、満充電)」)まで充電するのに必要な充電量」をSOC情報から、それぞれ予測する。センター側制御部23は、各EV車両Cの充電量の予測結果に基づいて、各EV駐車場における充電量を予測し、各EV駐車場における充電量の予測結果に基づいて、各グリッドにおける消費電力量を予測する。そして、センター側制御部23は、各グリッドにおける消費電力量の予測結果の情報である消費電力量予測情報をグリッド給電管理センター30に送信(提供)する。なお、センター側制御部23が特許請求の範囲に記載の消費電力量予測手段、グリッド予測手段、及び予測情報提供手段に相当する。
【0052】
なお、本実施の形態では、目標充電状態として「満充電状態」がユーザ操作によって操作部13に入力されたこととしたが、この他にも、「満充電の所定割合(例えば「80%」等)の状態」、や「充電しない状態」等を目標充電状態としてユーザ操作によって操作部13に入力することが可能である。また、車両管理センター20が車載機10に対しこうした目標充電状態を問い合わせてその入力を促すこととしてもよい。また、センター側制御部23は、特許請求の範囲に記載の消費電力予測手段に相当する。
【0053】
以上のように構成された車両管理システム1及びグリッド給電管理センター30の動作について、図4〜図6及び図7を用いてそれぞれ説明する。
【0054】
図4に、車載機10によって実行されるマルチモーダル経路案内処理S100について、その処理手順を示す。なお、車載機10は、目的地情報及び目標充電状態情報を車両管理センター20に既に送信しており、現在地情報及びSOC情報を車両管理センター20に逐次送信しているものとする。
【0055】
マルチモーダル経路案内処理S100を実行開始すると、車載機10は、まず、ステップS101の判断処理として、経路探索の実行指示が操作部13から入力されたか否かを判断する。ここで、経路探索の実行指示が入力されていない場合(ステップS101の判断処理で「No」)、車載機10は、ステップS101の判断処理を再度実行する一方、経路探索の実行指示が入力された場合(ステップS101の判断処理で「Yes」)、車載機10は、続くステップS103の処理へ移行する。ステップS103の処理へ移行すると、車載機10は、経路探索の実行指示を示す信号を車両管理センター20に送信し、続くステップS105の判断処理に移行する。
【0056】
ステップS105の判断処理に移行すると、車載機10は、車両管理センター20からマルチモーダル経路情報を受信したか否かを判断する。ここで、マルチモーダル経路情報を受信していない場合(ステップS105の判断処理で「No」)、車載機10は、ステップS105の判断処理を再度実行する一方、マルチモーダル経路情報を受信した場合(ステップS105の判断処理で「Yes」)、車載機10は、続くステップ107の判断処理に移行する。
【0057】
ステップS107の判断処理に移行すると、車載機10は、操作部13から経路案内の開始指示が入力されたか否かを判断する。ここで、経路案内の開始指示が入力されていない場合(ステップS107の判断処理で「No」)、車載機10は、ステップS107の判断処理を再度実行する一方、経路案内の開始指示が入力された場合(ステップS107の判断処理で「Yes」)、車載機10は、続くステップ109の処理に移行する。ステップS109の処理へ移行すると、車載機10は、マルチモーダル経路の経路案内を実行し、続くステップS111の判断処理に移行する。
【0058】
ステップS111の判断処理に移行すると、車載機10は、マルチモーダル経路上のEV駐車場に到達したか否かを判断する。ここで、到達したと判断しなかった場合(ステップS111の判断処理で「No」)、車載機10は、ステップS111の判断処理を再度実行する一方、到達したと判断した場合(ステップS111の判断処理で「Yes」)、車載機10は、このステップS100の処理をそのまま終了する。
【0059】
図5に、車両管理センター20によって実行されるマルチモーダル経路探索処理S200について、その処理手順を示す。なお、車両管理センター20は、車載機10から目的地情報及び目的充電状態情報を既に受信しており、車載機10から現在地情報及びSOC情報を逐次受信しているものとする。
【0060】
マルチモーダル経路探索処理S200を実行開始すると、車両管理センター20は、まず、ステップS201の判断処理として、経路探索の実行指示を示す信号をセンター側通信部22によって受信したか否かを判断する。ここで、経路案内の開始指示を示す信号を受信していない場合(ステップS201の判断処理で「No」)、車両管理センター20は、ステップS201の判断処理を再度実行する一方、経路探索の実行指示を示す信号を受信した場合(ステップS201の判断処理で「Yes」)、車両管理センター20は、続くステップS203の処理及びステップS205の処理へ移行する。
【0061】
車両管理センター20は、ステップS203の処理として、EV駐車場の中から、車載バッテリを充電することなく現在の充電状態で現在地から到達することが可能なEV駐車場を探索する。また、車両管理センター20は、続くステップS205の処理として、先のステップS203の処理において探索したEV駐車場の中から、予め定められた探索条件に適う最適なEV駐車場を探索する。そして、車両管理センター20は、続くステップS207の処理として、現在地から先のステップS205の処理で探索した最適なEV駐車場までの経路を探索する。
【0062】
このようにしてマルチモーダル経路を探索すると、センター側制御部23は、続くステップS209の処理として、その探索したマルチモーダル経路の情報であるマルチモーダル経路情報を車載機10に送信し、このステップ200の処理をそのまま終了する。
【0063】
図6に、車両管理センター20によって実行される充電量予測処理S210について、その処理手順を示す。なお、車両管理センター20は、上記マルチモーダル経路探索処理S200を既に実行し、当該車両管理センター20が管理する各EV車両Cについてマルチモーダル経路情報を既に取得しているものとする。
【0064】
充電量予測処理S210を実行開始すると、車両管理センター20は、まず、ステップS211の処理として、マルチモーダル経路情報、SOC情報、及び目標充電状態情報に基づいて、各EV車両Cの充電量を予測する。各EV車両Cの充電量を予測すると、車両管理センター20は、続くステップS213の処理として、この各EV車両Cの充電量の予測結果に基づいて、各EV駐車場における充電量を予測する。各EV駐車場における充電量を予測すると、車両管理センター20は、続くステップS215の処理として、この各EV駐車場の充電量の予測結果に基づいて、各グリッドにおける消費電力を予測する。各グリッドにおける消費電力を予測すると、車両管理センター20は、続くステップS217の処理として、この各グリッドにおける消費電力量の予測結果の情報である消費電力量予測情報をグリッド給電管理センター30に送信(提供)する。消費電力量予測情報をグリッド給電管理センター30に送信(提供)すると、車両管理センター20は、この充電量予測処理S210をそのまま終了する。
【0065】
図7に、グリッド給電管理センター30によって実行される給電処理S310について、その処理手順を示す。
【0066】
給電処理が実行開始されると、グリッド給電管理センター30は、ステップS311の判断処理として、車両管理センター20から消費電力予測情報を受信したか否か(すなわち、提供されたか否か)を判断する。ここで、消費電力予測情報を受信していない場合(ステップS311の判断処理で「No」)、グリッド給電管理センター30は、先のステップS311の判断処理を再度実行する一方、消費電力予測情報が提供された場合(ステップS311の判断処理で「Yes」)、グリッド給電管理センター30は、続くステップS313の処理に移行する。ステップS313の処理に移行すると、グリッド給電管理センター30は、車両管理センター20から提供された消費電力予測情報に基づいて、グリッド単位での給電計画を立て、続くステップS315の処理に移行する。ステップS315の処理に移行すると、グリッド給電管理センター30は、先のステップS313の処理において立てたグリッド単位での給電計画に沿って、各グリッドに給電する。各グリッドに給電すると、グリッド給電管理センター30は、この給電処理S310をそのまま終了する。
【0067】
以上説明した第1の実施の形態では、車載機10は、EV車両Cに搭載されて、当該EV車両Cの実充電状態に係る情報である実充電状態情報と、当該EV車両Cの現在地に係る情報である現在地情報と、当該EV車両Cの目的地に係る情報である目的地情報と、EV車両Cの目標充電状態に係る情報である目標充電状態情報を取得し、車両管理センター20に無線通信により送信する。そして、車両管理センター20は、これら受信した実充電状態情報及び目標充電状態情報とマルチモーダル経路情報とを各EV車両について管理し、マルチモーダル経路上の駐車場が位置する各グリッドにおける消費電力を予測することとした。また、車両管理センター20は、予測した消費電力に係る情報である消費電力予測情報を各グリッドへの給電を管理するグリッド給電管理センター30に提供することとした。これにより、背景技術の欄に記載した従来技術とは異なり、グリッドの消費電力を予測することができるようになり、ひいては、グリッド給電センターは給電準備を予め整えることができるようになる。
【0068】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る車両管理システムの第2の実施の形態について、図8及び図9を参照して説明する。なお、図8は、先の図6に対応する図であって、車両管理センター20によって実行される充電量予測処理S210aの処理手順を示すフローチャートである。また、図9は、先の図7に対応する図であって、グリッド給電管理センター30によって実行される給電処理S310aの処理手順を示すフローチャートである。
【0069】
図6と図8との比較、及び、図7と図9との比較から分かるように、第1の実施の形態では、車両管理センター20が「各グリッドにおける消費電力を予測する処理(ステップS215)」を実行するのに対し、第2の実施の形態では、グリッド給電管理センター30が「各グリッドにおける消費電力を予測する処理(ステップS319)」を実行する。
【0070】
具体的には、図8に示すように、車両管理センター20は、ステップS213の処理を終えると、続くステップS219の処理として、この各EV駐車場の充電量の予測結果の情報である充電量予測情報をグリッド給電管理センター30に送信(提供)する。充電量予測情報をグリッド給電管理センター30に送信(提供)すると、車両管理センター20は、この充電量予測処理S210をそのまま終了する。
【0071】
また、図9に示すように、グリッド給電管理センター30は、給電処理S310が実行開始されると、ステップS317の判断処理として、車両管理センター20から充電量予測情報が提供されたか否かを判断する。ここで、充電量予測情報が提供されていない場合(ステップS317の判断処理で「No」)、グリッド給電管理センター30は、先のステップS317の判断処理を再度実行する一方、充電量予測情報が提供された場合(ステップS317の判断処理で「Yes」)、グリッド給電管理センター30は、続くステップS319の処理に移行する。ステップS319の処理に移行すると、グリッド給電管理センター30は、車両管理センター20から提供された充電量予測情報に基づいて、各グリッドにおける消費電力を予測し、続くステップS313の処理に移行する。
【0072】
以上説明した第2の実施の形態によっても、上記第1の実施の形態に準じた効果を得ることができる。
【0073】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る車両管理システムの第3の実施の形態について、図10を参照して説明する。なお、図10は、先の図6及び図7、あるいは、先の図8及び図9にそれぞれ対応する図であって、車両管理センター20bによって実行される充電量予測処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0074】
図6及び図7と図10との比較、並びに、図8及び図9と図10との比較から分かるように、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、「給電計画を立てる処理(ステップS313)」及び「給電計画に沿って各グリッドに給電する処理(ステップS315)」をグリッド給電管理センター30が実行するのに対し、第3の実施の形態では、「給電計画を立てる処理(ステップS313)」及び「給電計画に沿って各グリッドに給電する処理(ステップS315)」を車両管理センター20が実行する。具体的には、車両管理センター20は、上記ステップS211、S213、S215の処理を実行した後、上記ステップS313、S315の処理を実行しており、各グリッドへの給電を管理するグリッド給電管理センター30を兼ねる。
【0075】
以上説明した第3の実施の形態によっても、上記第1の実施の形態及び上記第2の実施の形態に準じた効果を得ることができる。
【0076】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係る車両管理システムの第4の実施の形態について、図11を参照して説明する。なお、図11は、先の図4に対応する図であって、車載機10によって実行されるマルチモーダル経路案内処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0077】
図4と図11との比較から分かるように、第1〜第3の実施の形態では、車載機10は、マルチモーダル経路を再探索する必要の有無を判定しないが、第4の実施の形態では、車載機10は、マルチモーダル経路を再探索する必要の有無を判定し、必要があると判定した場合、マルチモーダル経路の再探索を実行する。
【0078】
具体的には、図11に示すように、車載機10は、ステップS109の処理を終えると、続くステップS113の判断処理として、マルチモーダル経路を再探索する必要の有無を判定する。ここで、車載機10は、再探索する必要があると判定した場合(ステップS113の判定処理で「Yes」)、先のステップS103の処理に移行する一方、再探索する必要がないと判定した場合(ステップS113の判定処理で「No」)、先のステップS111の判定処理に移行する。
【0079】
なお、本実施の形態では、車載機10は、例えば、車載エアコンや車載オーディオ等の車載機を使用することに起因してEV車両Cの充電量が著しく低減したり、マルチモーダル経路上の渋滞に起因してEV車両Cの充電量が著しく低減したりする等、EV車両Cの実充電状態に有意な低下があったか否かを判定することにより、マルチモーダル経路を再探索する必要があると判定する。詳しくは、車載機10は、車両管理センター20からマルチモーダル経路情報を受信すると、現在地からEV駐車場までのマルチモーダル経路について、単位移動距離当たりの充電量の平均低減量を予め算出する。また、車載機10は、現在地情報、地図情報、及びSOC情報に基づいて、単位移動距離当たりの充電量の実低減量を逐次算出する。そして、車載機は、逐次算出する実低減量が予め算出した平均低減量の所定割合(例えば「150[%]」等)以上である場合に、EV車両Cの充電量が著しく低減した、すなわちEV車両Cの実充電状態に有意な低下があったと判定し、マルチモーダル経路を再探索する必要があると判定する。
【0080】
また、本実施の形態では、図示を割愛するが、車両管理センター20は、EV駐車場に接続され、EV駐車場の満空状況に関する情報である満空状況情報を逐次取得する。そして、車両管理センター20は、無線通信を用いて満空状況情報をEV車両C(すなわち車載機10)に逐次送信する。そして、車載機10は、探索したEV駐車場が満車状況である旨を示す信号を受信するか否かを判定することにより、マルチモーダル経路を再探索する必要の有無を判断する。なお、車載機10が再探索要否判定手段に相当する。
【0081】
以上説明した第4の実施の形態によれば、マルチモーダル経路上のEV駐車場に到達することができないおそれがある場合に、マルチモーダル経路を再探索することができるようになる。
【0082】
なお、上記第4の実施の形態では、車載機10は、マルチモーダル経路を再探索する必要の有無を判定し、必要があると判定した場合に、マルチモーダル経路の再探索を実行することとしたが、車両管理センター20が、マルチモーダル経路を再探索する必要の有無を判定し、必要があると判定した場合に、マルチモーダル経路の再探索を実行することとしてもよい。具体的には次のように構成する。既述したように、車載機10は、現在地情報及びSOC情報を車両管理センター20に逐次(例えば「5分に1回」のタイミングや、SOCが満充電の「50[%]」以下」となったタイミング等)送信する。車両管理センター20は、現在地情報及びSOC情報を受信すると、探索したEV駐車場に到達可能か否かを判断する。到達することができないと判断した場合に、EV車両Cの充電量が著しく低減した、すなわちEV車両Cの実充電状態に有意な低下があったと判定し、マルチモーダル経路を再探索する必要があると判定する。また、車両管理センター20は、EV駐車場の満空状況に関する情報である満空状況情報を逐次取得する。そして、車両管理センター20は、探索したEV駐車場が満車状況である旨を示す信号を受信するか否かを判定することにより、マルチモーダル経路を再探索する必要の有無を判断する。これによっても、マルチモーダル経路上のEV駐車場に到達することができないおそれがある場合に、マルチモーダル経路を再探索することができるようになる。
【0083】
(他の実施の形態)
なお、本発明に係る車両管理システム、車両管理センター、及び車載機は、上記第1〜第4の実施の形態にて上記実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
【0084】
上記各実施の形態では、車両管理センター20は、EV駐車場の中から、車載バッテリを充電することなく現在の充電状態で現在地から到達することが可能であり、且つ、予め定められた探索条件に適う最適なEV駐車場を探索するとともに、現在地からその最適なEV駐車場までの経路を探索する。そして、車両管理センター20は、その探索したマルチモーダル経路の情報であるマルチモーダル経路情報をEV車両Cに搭載された車載機10に送信することとした。しかし、この構成に限らない。他に例えば、車両管理センター20は、EV駐車場の中から、車載バッテリを充電することなく現在の充電状態で現在地から到達することが可能であり、且つ、予め定められた探索条件に適う最適なEV駐車場を探索し、その探索したEV駐車場の情報である駐車場情報を当該車両管理センター20からEV車両Cへ送信する。そして、車載機10は、この受信した駐車場情報及び地図情報を用いて、現在地から目的地までの経路を探索することとしてもよい。これにより、車両管理センター20は、当該車両管理センター20からEV車両Cへ、駐車場情報を送信すればよく、マルチモーダル経路情報全体を送信する必要がなくなるため、通信量の低減を図ることができるようになる。
【0085】
また、上記各実施の形態では、操作部13によって目標充電状態情報を入力して車両側通信部15を用いて車両管理センター20へ送信し、車両管理センター20(詳しくは、センター側制御部23)は、この目標充電状態に基づいて、EV駐車場が含まれるグリッドにおける消費電力量を予測していたが、これに限らない。車両管理センター20は、例えばEV車両C1台当たりの平均充電量等をセンター側記憶部21に予め記憶しておき、この平均充電量に基づいて、EV駐車場が含まれるグリッドにおける消費電力量を予測してもよい。換言すれば、車両管理センター20は、目標充電状態情報を取得しなくても、EV駐車場が含まれるグリッドにおける消費電力量を予測することはできる。
【0086】
また、上記各実施の形態では、車両管理センター20(詳しくは、センター側制御部23)は、現在地情報(すなわち出発地情報)、目的地情報、及びSOC情報と、地図情報とに基づいてマルチモーダル経路を探索していたが、これに限らない。例えば出発地から最寄のEV駐車場へのマルチモーダル経路を探索する等、EV車両Cの実充電状態をなんら考慮することなくマルチモーダル経路を探索してもよい。換言すれば、車両管理センター20は、SOC情報を取得しなくても、マルチモーダル経路を探索することはできる。
【符号の説明】
【0087】
1…車両管理システム、10…車載機、11…車両側記憶部、12…GPS受信部、13…操作部、14…車両側制御部、141…現在地検出部、142…実充電状態検出部、143…通信制御部、144…経路案内部、145…地図画像描画部、146…表示制御部、15…車両側通信部、16…音声出力部、17…表示部、18…電流センサ、20…車両管理センター、21…センター側記憶部、22…センター側通信部、23…センター側制御部、30…グリッド給電管理センター、C…電気自動車(EV車両)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行動力源として電動機を有する電動車両の出発地に係る情報である出発地情報を取得する出発地情報取得手段と、
前記電動車両の目的地に係る情報である目的地情報を取得する目的地情報取得手段と、
前記出発地情報及び前記目的地情報に基づいて、前記電動車両と、当該電動車両を充電するための充電設備が設置された駐車場を有する公共交通機関とを併用した、前記出発地から前記目的地までの経路であるマルチモーダル経路を探索するマルチモーダル経路探索手段と、
前記駐車場が含まれるグリッドにおける消費電力量を予測する消費電力量予測手段と、
前記マルチモーダル経路情報に基づいて、前記消費電力量を消費するグリッドを予測するグリッド予測手段とを備えることを特徴とする車両管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両管理システムにおいて、
前記電動車両の実充電状態に係る情報である実充電状態情報を取得する実充電状態情報取得手段を備え、
前記マルチモーダル経路探索手段は、前記出発地情報及び前記目的地情報に加え、前記実充電状態情報にも基づいて、前記マルチモーダル経路を探索することを特徴とする車両管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両管理システムにおいて、
前記電動車両の目標充電状態に係る情報である目標充電状態情報を取得する目標充電状態情報取得手段を備え、
前記消費電力量予測手段は、前記実充電状態情報及び前記目標充電状態情報に基づいて、前記駐車場が含まれるグリッドにおける消費電力量を予測することを特徴とする車両管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両管理システムにおいて、
前記目標充電状態情報取得手段は、前記目標充電状態情報をユーザ操作によって取得することを特徴とする車両管理システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両管理システムにおいて、
前記出発地情報取得手段及び前記目的地情報取得手段は、前記電動車両に搭載された車載機に備えられており、
前記マルチモーダル経路探索手段、前記消費電力量予測手段、及び前記グリッド予測手段は、車両管理センターに備えられていることを特徴とする車両管理システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両管理システムにおいて、
前記消費電力量予測手段で予測された前記グリッドにおける消費電力量に係る情報である消費電力量予測情報、及び前記グリッド予測手段で予測されたグリッドに係る情報であるグリッド情報を提供する予測情報提供手段を備えることを特徴とする車両管理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車両管理システムにおいて、
前記予測情報提供手段は、前記消費電力量予測情報及び前記グリッド情報を、各グリッドへの給電を管理するグリッド給電管理センターに提供することを特徴とする車両管理システム。
【請求項8】
請求項5に記載の車両管理システムにおいて、
前記車両管理センターは、各グリッドへの給電を管理するグリッド給電管理センターを兼ねることを特徴とする車両管理システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の車両管理システムにおいて、
前記グリッド給電管理センターは、前記消費電力量予測情報及び前記グリッド情報に基づいて、グリッド単位での給電計画を立て、その立てた給電計画に沿って各グリッドに給電することを特徴とする車両管理システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両管理システムにおいて、
前記マルチモーダル経路探索手段は、予め定められた探索条件に基づいて前記マルチモーダル経路上の駐車場を探索する駐車場探索手段と、前記出発地から前記駐車場探索手段で探索された駐車場までの電動車両の経路を探索する電動車両経路探索手段とを有し、
前記車両管理センターは、前記駐車場探索手段を有するとともに、前記車載機は、前記経路探索手段を有し、
前記車両管理センターと前記電動車両との間の無線通信により、前記車両管理センターから前記電動車両へ、前記駐車場探索手段で探索された駐車場の情報である駐車場情報を送信することを特徴とする車両管理システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両管理システムにおいて、
前記マルチモーダル経路探索手段は、前記電動車両に充電することなく前記出発地から到達することのできる駐車場を探索することを特徴とする車両管理システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の車両管理システムにおいて、
前記マルチモーダル経路探索手段により前記マルチモーダル経路を再探索する必要の有無を判定する再探索要否判定手段を備え、
前記マルチモーダル経路探索手段は、前記再探索要否判定手段によって前記マルチモーダル経路を再探索する必要があると判定された場合、前記マルチモーダル経路を再探索することを特徴とする車両管理システム。
【請求項13】
請求項12に記載の車両管理システムにおいて、
前記電動車両の実充電状態に係る情報である実充電状態情報を取得する実充電状態情報取得手段を備え、
前記再探索要否判定手段は、前記電動車両の実充電状態における有意な低下の有無を判定し、有意な低下があると判定した場合に、前記マルチモーダル経路を再探索する必要があると判定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項14】
請求項12または13に記載の車両管理システムにおいて、
前記再探索要否判定手段は、前記マルチモーダル経路上の駐車場の満空状況に関する情報を取得し、前記駐車場が満車状況である場合に、前記マルチモーダル経路を再探索する必要があると判定することを特徴とする車両管理システム。
【請求項15】
走行動力源として電動機を有する電動車両に搭載され、前記電動車両の出発地に係る情報である出発地情報を取得する出発地情報取得手段と、前記電動車両の目的地に係る情報である目的地情報を取得する目的地情報取得手段とを備える車載機との間で無線通信を行なう車両管理センターであって、
前記車載機との間の無線通信によって取得した、前記出発地情報及び前記目的地情報に基づいて、前記電動車両と、当該電動車両を充電するための充電設備が設置された駐車場を有する公共交通機関とを併用した、前記出発地から前記目的地までの経路であるマルチモーダル経路を探索するマルチモーダル経路探索手段と、
前記電動車両の目標充電状態に係る情報である目標充電状態情報を取得する目標充電状態情報取得手段から取得した目標充電状態情報とに基づいて、前記駐車場が含まれるグリッドにおける消費電力量を予測する消費電力量予測手段と、
前記マルチモーダル経路情報に基づいて、前記消費電力量を消費するグリッドを予測するグリッド予測手段とを備えることを特徴とする車両管理センター。
【請求項16】
走行動力源として電動機を有する電動車両に搭載され、前記電動車両の出発地に係る情報である出発地情報を取得する出発地情報取得手段と、前記電動車両の目的地に係る情報である目的地情報を取得する目的地情報取得手段とを備え、車両管理センターとの間で無線通信を行なうことを特徴とする車載機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−107993(P2012−107993A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257180(P2010−257180)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】