説明

車両表示装置及び視線誘導装置

【課題】運転上の安全性を確保しつつ、運転者の注視を適切に案内する。
【解決手段】インストルメントディスプレイ2上に表示されている複数の画像のうち、特に運転者に対して安全上注視させるべき注視映像を選択し、運転者の視線を注視映像に誘導するようマーカ107を移動表示させる。計器画像101を基点として注視映像の表示領域までの移動ライン108に沿って、マーカ107が流れ星のように移動させて表示される。いずれの車両周囲映像103〜106が注視映像に選択された場合でも、上記移動ライン108は、運転状態にある運転者の集中視野21の周辺に位置する周辺視野22の範囲内に描画される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に設置される車両表示装置及び視線誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者に対し走行経路のナビゲーションを行うとき、当該走行経路の目印となる車外の標識・目標物等の視認対象物に対し運転者の視線を向けるように誘導する技術が既に公知である(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、室内空間のうち、上記視認対象物に対応した方向に誘導ビームを照射し、運転者の視線が当該誘導ビームの照射先を追うことで、ナビゲーション時に必要な上記視認対象物へ運転者の視線を誘導する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−53310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、自動車などの車両に設置したカメラに、運転者の死角となる方向の映像を撮像させ、その映像を表示して運転者に視認させるシステムが普及している。近年では、一台の車両に設置するカメラの台数が増加し、それに伴って視認させる映像の数も増加しているが、通常では一つの表示装置で複数の映像を必要に応じて切り替えて表示させていた。しかし、運転者が運転中のとっさの判断で視認が必要な映像(死角方向)を選択することは難しく、また切り替えて表示された映像の内容を具体的に把握するのに時間を要するため利用しにくい問題がある。そこで、一つの表示装置の表示領域内で常に複数の映像を同時に表示することが考えられるが、その場合には運転者がどの映像を注視すべきか混乱しやすい。そこで、上記従来技術を応用し、運転者がどの映像を注視すべきかを、車内におけるビーム光の照射により誘導することが考えられる。
【0005】
しかしながらこの場合、ビーム光の照射方向によっては、ビーム光やその反射光の軌跡が運転者の視界を遮り、運転を阻害するおそれがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、車両周囲の映像を所定の複数の方向でそれぞれ撮像する複数の撮像手段と、前記車両の運転席及び助手席の前方に設置されて、当該車両の動作状態を示す計器画像、及び、前記複数の撮像手段で撮像した複数の映像を、所定位置に配置された表示領域で同時に表示可能な第1表示手段と、前記複数の映像のうち前記車両の運転者に対して注視させる映像(以下、注視映像と称する)を選択する選択手段と、前記第1表示手段における所定の基点位置から、前記選択手段により選択された注視映像の表示領域へ向かって、運転者の視線を誘導するためのマーカを移動させて表示するように、前記第1表示手段を制御する第1マーカ表示制御手段と、を有する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、請求項6記載の発明は、車両の運転者の視線を誘導する視線誘導装置において、前記運転者に視認可能であって、異なる複数の方向のそれぞれで撮影された前記車両の周囲の映像を同時に表示可能な表示領域を有する第2表示手段と、前記運転者に対して聴取可能な音を出力する出力手段と、前記第2表示手段に表示された複数の映像のうち、前記運転者に対して注視させる映像(以下、注視映像と称する)の表示領域へ向かってマーカを移動させて表示するように、前記第2表示手段を制御する第2マーカ表示制御手段と、前記マーカの表示位置の移動に応じて音の定位を移動させるように、前記出力手段を制御する音出力制御手段と、を備え、前記音出力制御手段は、前記第2マーカ表示制御手段により前記マーカの表示位置が前記注視映像の表示領域に到達した以降も音の定位を移動させるように、前記出力手段を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の車両表示装置を構成するインストルメントディスプレイを自動車の運転席に設置した状態を示す図である。
【図2】車両表示装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図3】車両における4台のカメラの配置とそれらの撮影視野を示す平面図である。
【図4】運転室から見た車窓風景とそれに対応するインストルメントディスプレイの表示例を示す図である。
【図5】2車線の直進道路で車線変更する状況例を示す図、及び、図5(a)に対応するマーカの移動表示例を示す図である。
【図6】T字路で右折する状況例を示す図、及び、図6(a)に対応するマーカの移動表示例を示す図である。
【図7】CPUが実行する制御内容を表すフローチャートである。
【図8】街頭の交差点で右折する状況例を示す図、及び、図8(a)に対応するマーカの移動表示例を示す図である。
【図9】CPUが実行する制御内容を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の車両表示装置及び視線誘導装置を構成するインストルメントディスプレイを自動車の運転席に設置した状態を示す図である。
【0011】
この図1において、本実施形態は車両表示装置1(車両表示装置及び視線誘導装置に相当)を自動車等の車両に搭載する例を示しており、当該車両の運転席及び助手席の前方に、横幅一杯に延びた長尺型のインストルメントディスプレイ2(第1表示手段及び第2表示手段に相当)が設置されている。インストルメントディスプレイ2は、この例では全体が一つの液晶パネルで構成されており、全ての領域で所望の表示が可能となっている。図示する例では、当該インストルメントパネル2の表示画面全体の背景が黒色となっており、そのうち左側の運転席の前方に各種計器画像101とナビゲーション画像102が表示され、その他の表示領域には後述する複数の車両周囲映像103,104,105,106が所定の配置で表示される。また、この例では前側2座席の間の位置に、立体音再生スピーカ3(再生手段及び出力手段に相当)が設置されている。
【0012】
図2は、車両表示装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0013】
車両表示装置1は、CPU11、記憶装置12、ナビゲーション装置13、ウィンカースイッチ14、車載カメラ15〜18、グラフィックコントローラ19、インストルメントディスプレイ2、及び、立体音再生スピーカ3を有している。
【0014】
CPU11は、所定のプログラムの動作によって各種の演算を行うとともに、他の各部との間で情報の交換や各種の制御指示を出力することで、車両表示装置1全体を制御する機能を有する。また本実施形態において、CPU11は、後述するように、運転者に対して注視させるべき車両周囲映像を選択する機能を有する選択部(選択手段に相当)11aと、運転者の視線を誘導するためのマーカ(後述)を移動させて表示するためのマーカ表示制御部11b(第1マーカ表示制御手段及び第2マーカ表示手段に相当)と、上記マーカの移動表示に対応して立体音(後述)の定位を制御する立体音制御部11c(音出力制御部に相当)を備えている。
【0015】
記憶装置12は、ROM12a、RAM12b、及び記憶媒体12cを有する。ROM12aは、後述する各種の処理プログラムやその他必要な情報が予め書き込まれた情報記憶媒体である。RAM12bは、上記各種のプログラムを実行する上で必要な情報の書き込み及び読み出しが行われる情報記憶媒体である。記憶媒体12cは、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクなどの不揮発性の情報記憶媒体である。
【0016】
ナビゲーション装置13はナビゲーション手段に相当し、GPSセンサ(特に図示せず)を利用して車両の現在地の測位を行うとともに、予め記憶している地図情報に基づいて現在地から目的地までの経路探索及び経路誘導を行う機能を有する。またナビゲーション装置13は、上記測位結果や地図情報に基づく、道路の種別や周辺の状況等を含む道路関連情報を、CPU11に出力する。
【0017】
ウィンカースイッチ14は、ステアリングホイール4に設置した周知のウィンカーレバー(図示省略)が操作されることにより切り替えられるスイッチである。すなわち、ウィンカーレバーが左方向へ操作される(すなわち、予定進行方向が左方向である。以下同様)ことによりウィンカースイッチ14の「左」入力が行われ、ウィンカーレバーが右方向へ操作されることによりウィンカースイッチ14の「右」入力が行われる。なお、後述する図4等の各図では、上記ウィンカーレバーの操作に対応したウィンカースイッチ14の当該「左」又は「右」入力のみを、概念的に図示している。
【0018】
車載カメラ15,16,17,18は撮像手段に相当し、例えばCCD撮像素子などを利用して車両から見た周囲の映像を撮像する機能を有する。本実施形態の例では、4台の車載カメラ15〜18をそれぞれ所定の方向で撮像するよう設置している(後述の図3参照)。
【0019】
グラフィックコントローラ19は、CPU11の制御に基づき、ビデオRAM(図示せず)、上記ナビゲーション装置13、及び上記車載カメラ15〜18などから画像データを取得し、この画像データに基づく画像を上記インストルメントディスプレイ2に表示させる機能を有する。
【0020】
立体音再生スピーカ3は、公知の手法を用いてCPU11の立体音制御部11cにより音の定位が制御されることで、上記インストルメントディスプレイ2上に表示するマーカ(後述)の動的な移動位置を擬似的に立体的に運転者に示すような音を再生することができる。
【0021】
図3は、車両における4台のカメラ15,16,17,18の配置とそれらの撮影可能な視野を示す平面図である。
【0022】
この図3において、例えば各車載カメラ15〜18の視野方向は固定されており、左前方カメラ15は車両Vの前方斜め左側の車両周囲映像を、右前方カメラ16は車両Vの前方斜め右側の車両周囲映像を、左後方カメラ17は車両Vの後方斜め左側の車両周囲映像を、右後方カメラ18は車両Vの後方斜め右側の車両周囲映像を、それぞれ適切に撮像できる位置に設置されている。
【0023】
図4は、運転室から見た車窓風景及びこれに対応するインストルメントディスプレイ2の表示の一例を示す図である。なお、この図4においては、図示の煩雑を避けるために、インストルメントディスプレイ2の背景を白色として示している(以下の各図においても同様)。
【0024】
この図4に示す例において、インストルメントディスプレイ2の表示領域のうち、運転席の前方(ステアリングホイール4の前方)には、速度計やタコメータなどの動作状態を表示する上記計器画像101とともに、ナビゲーション装置13が出力する上記ナビゲーション画像102が並んで表示されている。そしてインストルメントディスプレイ2のおよそ中央位置には左前方映像103及び右前方映像104が表示されている。左側の左前方映像103は上記左前方カメラ15が撮像した車両周囲映像であり、右側の右前方映像104は上記右前方カメラ16が撮像した車両周囲映像である。また、インストルメントディスプレイ2の左端位置には、上記左後方カメラ17が撮像した車両周囲映像である左後方映像105が表示されている。また、インストルメントディスプレイ2の右端位置には上記右後方カメラ18が撮像した車両周囲映像である、右後方映像106が表示されている。なお、この図4を含み、各図において示す左前方映像103、右前方映像104、左後方映像105、及び右後方映像106は、説明の便宜上、映像内容の例を説明するために概念的に図示したものである。したがって、以下の各図において、各図に関連して説明する運転時の状況(車線変更、交差点での右折等)に対し、必ずしも一致した図示とはなっていない。実際には、左前方カメラ15、右前方カメラ16、左後方カメラ17、及び右後方カメラ18がそれぞれ撮影した、運転時の状況に応じた映像が表示される。
【0025】
インストルメントディスプレイ2は、これら計器画像101、ナビゲーション画像102、及び4つの車両周囲映像103〜106を、それぞれ表示内容に対応した自然な固定配置で同時に表示する。これにより、運転者は混乱することなく各画像を容易に区別して見分けることができる。そして、インストルメントディスプレイ2がこのように2座席(運転席及び助手席)分にわたる長尺型の形状となっているので、各画像を運転者が視認しやすい十分な大きさで表示することができる。
【0026】
そして、本実施形態では、インストルメントディスプレイ2上に表示されている上記複数の画像(映像)、すなわち左前方映像103、右前方映像104、左後方映像105、及び右後方映像106のうち、その時点での運転状況に応じ、特に運転者に対して安全上注視させるべき注視映像が選択される。この例では、街頭における四つ角の交差点の手前を走行している状態で、運転者がこの交差点を右折するようウィンカーレバーを操作した状況を示している。そして、この例では、ウィンカーレバーの右折操作に対応して、右前方映像104が選択される。この結果、運転者の視線をこの右前方映像104に誘導するよう、インストルメントディスプレイ2の上部に表示されるマーカ107が動的に移動して表示される。具体的には、CPU11の上記マーカ表示制御部11bの制御により、インストルメントディスプレイ2の上部に、計器画像101の位置(所定の基点位置に相当)を基点として、右前方映像104の表示領域まで繋いだ移動ライン108が表示される。そしてこの移動ライン108に沿って、基点位置である計器画像101から注視映像である右前方映像104の表示領域へ向かってマーカ107が流れ星のように移動させて表示される。なお、この例では、いずれの車両周囲映像103〜106が注視映像に選択された場合でも、上記移動ライン108は、通常の運転状態で運転者が集中して見る視野(以下、「集中視野」と称する)21の周辺に位置する、周辺視野22の範囲内に描画される。
【0027】
また、このとき立体音再生スピーカ3は、運転者に対して上記マーカ107の表示とその移動位置とをリアルタイムに示す報知音を立体音で再生する。図4に示す例では、計器画像101に相当する位置(例えば車両の幅方向左前方付近)から右前方映像104に相当する位置(例えば車両の幅方向真ん中やや右前方付近)まで動くような定位で、音が再生される。
【0028】
そして、上述した注視映像の選択は、ナビゲーション装置13からの上記道路関連情報に基づき、CPU11の選択部11aが実行する。これは、ウィンカーレバーが操作された際に当該車両Vが走行している道路の種別や周辺の状況等によって、適切に選択されるべき注視映像が異なるためである。以下、注視映像の選択例を順次説明する。
【0029】
<右後方映像が選択される例>
例えば、図5(a)に示す車両A(以下適宜、自車Aと称する)のように、高速道路などの片側複数車線の直進道路で前方車両Bを追い越すために車線を変更する場合、右後方から速い速度で接近する他の車両Cの有無を確認する必要がある。この際、ナビゲーション装置13は、自車Aが高速道路等の複数車線の道路を走行している(走行速度情報を含んでもよい)旨を含む、上記道路関連情報をCPU11に出力する。CPU11の選択部11aは、上記道路関連情報とウィンカーレバーの右方向への操作とに応じて、右後方映像106を注視映像として選択する。これにより、CPU11のマーカ表示制御部11bが、図5(b)に示すように、インストルメントディスプレイ2上で、計器画像101を基点として右端に配置された右後方映像106の表示領域まで、マーカ107を流れ星のように移動させて表示させる。
【0030】
<右前方映像が選択される例>
また、図6(a)に示す自車Aのように、T字路の交差点において直進道路側から右折進入する場合、進入方向である右前方の映像を注視する必要がある。特に図示するように、対向車線において、自車の右折を待つ停止車両Bの影で他の車両Cが追い抜こうとしていないかを特に確認する必要があり、この場合には運転者自身とは異なる視野で右前方カメラ16が撮像した右前方映像104を確認することは有用である。
【0031】
この際、ナビゲーション装置13は、自車Aが高速道路等の複数車線の道路の交差点に位置する(停止している旨の情報を含んでもよい)旨を含む、上記道路関連情報をCPU11に出力する。CPU11の選択部11aは、上記道路関連情報とウィンカーレバーの右方向への操作とに応じて、右前方映像104を注視映像として選択する。これにより、CPU11のマーカ表示制御部11bが、図6(b)に示すように、インストルメントディスプレイ2上で、計器画像101を基点として中央やや右側に配置された右前方映像104の表示領域まで、マーカ107を流れ星のように移動させて表示させる。
【0032】
<左後方映像が選択される例>
詳細な図示は省略するが、前述の図5(a)と同様、高速道路などの片側複数車線の直進道路で、追い越し車線を走行して前方車両を追い越した後、上記追い越した車両の前方に割り込むように走行車線に戻る場合がある。この場合、走行車線に戻る前に、追い越し車線を走行している状態において、左後方において走行車線を走行中の当該追い越した車両が十分に離れたかどうかを確認する必要がある。この際、ナビゲーション装置13は、自車が高速道路等の複数車線の道路を走行している(走行速度情報を含んでもよい)旨を含む、上記道路関連情報をCPU11に出力する。CPU11の選択部11aは、上記道路関連情報とウィンカーレバーの左方向への操作とに応じて、左後方映像105を注視映像として選択する。これにより、CPU11のマーカ表示制御部11bが、インストルメントディスプレイ2上で、計器画像101を基点として左端に配置された左後方映像105の表示領域まで、マーカ107を流れ星のように移動させて表示させる。
【0033】
<左前方映像が選択される例>
詳細な図示は省略するが、前述の図6(a)と同様、交差点において左折進入する場合には、進入方向である左前方の映像を注視する必要がある。この際、ナビゲーション装置13は、自車が道路の交差点に位置する(停止している旨の情報を含んでもよい)旨を含む、上記道路関連情報をCPU11に出力する。CPU11の選択部11aは、上記道路関連情報とウィンカーレバーの左方向への操作とに応じて、左前方映像103を注視映像として選択する。これにより、CPU11のマーカ表示制御部11bが、インストルメントディスプレイ2上で、計器画像101を基点として中央やや左側に配置された左前方映像103の表示領域まで、マーカ107を流れ星のように移動させて表示させる。
【0034】
図7は、以上説明した動作態様を実現するために、CPU11が実行する制御内容を表すフローチャートである。
【0035】
図7において、まずステップS10において、ウィンカー操作がされたかどうかを判定する。ウィンカー操作がされたらステップS10の判定が満たされ、ステップS20に移る。
【0036】
ステップS20では、ナビゲーション装置13からの上記道路関連情報に基づき、現在の自車の走行位置が、片側複数車線の道路であるかどうかを判定する。図5(a)や図6(a)に例示したような片側複数車線道路の走行時である場合には判定が満たされ、ステップS25に移る。
【0037】
ステップS25では、ナビゲーション装置13からの上記道路関連情報に基づき、現在の自車の走行位置が、交差点であるかどうかを判定する。図5(a)に例示したような、交差点ではない通常の車線である場合には判定が満たされず、ステップS30に移る。
【0038】
ステップS30では、上記ステップS10において検出されたウィンカー操作が右方向への操作であったか左方向への操作であったかを判定する。右方向への操作であった場合、ステップS40に移り、上記注視映像として右後方映像106を選択する。左方向への操作であった場合、ステップS50に移り、上記注視映像として左後方映像105を選択する。ステップS40又はステップS50の後は、後述するステップS110へ移る。
【0039】
一方、上記ステップS20において、図5(a)や図6(a)に例示したような片側複数車線道路の走行時でなく、片側1車線道路の走行時であった場合には判定が満たされず、ステップS60に移る。
【0040】
ステップS60では、上記ステップS25と同様、ナビゲーション装置13からの上記道路関連情報に基づき、現在の自車の走行位置が、交差点であるかどうかを判定する。交差点でない場合には判定が満たされず、このフローを終了する。交差点であった場合には判定が満たされ、ステップS70に移る。
【0041】
一方、上記ステップS25において、現在の自車の走行位置が、図6(a)に例示したような交差点であった場合は判定が満たされ、この場合もステップS70に移る。
【0042】
ステップS70では、上記ステップS30と同様、上記ステップS10において検出されたウィンカー操作が右方向への操作であったか左方向への操作であったかを判定する。右方向への操作であった場合、ステップS80に移り、上記注視映像として右前方映像104を選択する。左方向への操作であった場合、ステップS90に移り、上記注視映像として左前方映像103を選択する。
【0043】
上記ステップS80又はステップS90の後は、後述するステップS110へ移る。
【0044】
ステップS110では、適宜の基点位置(この例では計器画像101の位置)から、上記ステップS40、ステップS50、ステップS80、ステップS90のいずれかにより選択された注視映像の位置まで、マーカ107を動的に移動させて表示する。その後、ステップS120に移る。
【0045】
ステップS120では、上記ステップS110のマーカ107の移動と連動するように、立体音再生スピーカ3により、マーカ107の移動位置を擬似的に立体的に運転者に示すような音を再生する。その後、このフローを終了する。
【0046】
以上のように、上記実施形態の車両表示装置1は、車両Vの周囲の映像を所定の複数の方向でそれぞれ撮像する複数の車載カメラ15〜18(撮像手段に相当)と、前記車両Vの運転席及び助手席の前方に設置されて、当該車両Vの動作状態を示す計器画像101、及び、前記複数の車載カメラ15〜18で撮像した複数の映像103,104,105,106を、所定位置に配置された表示領域で同時に表示可能なインストルメントディスプレイ2(第1表示手段に相当)と、前記複数の映像103〜106のうち前記車両Vの運転者に対して注視させる注視映像を選択する選択部11a(選択手段に相当)と、前記インストルメントディスプレイ2における所定の基点位置(計器画像101の位置に相当)から、前記選択部11aにより選択された注視映像の表示領域へ向かって、運転者の支線を誘導するためのマーカ107を移動させて表示するように、インストルメントディスプレイ2を制御するマーカ表示制御部11b(第1マーカ表示制御手段に相当)と、を有する。
【0047】
この車両表示装置1においては、インストルメントディスプレイ2上で常に同時に表示している4つの車両周囲映像103〜106のうちのどれが注視映像であるかを、流れ星のように移動表示するマーカ107により示すことができる。そしてこのマーカ107の移動表示が運転者の周辺視野22内で行われるため、運転状態にある運転者の集中視野21を遮ることなく、運転の安全を常に確保することができる。さらに、運転者の周辺視野22でありながらマーカ107が流れ星のように移動表示していることで、運転者から見るとそのマーカ107の到着先の映像を注視映像として容易に認識させることができる。言い換えると、運転者に対し、その周辺視野22内において注視させるべき幾何的な位置を直感的に把握させ、容易にその視線を誘導させることができる。この結果、運転上の安全性を確保しつつ、運転者の注視を適切に案内することができる。
【0048】
上記実施形態の車両表示装置1においては、選択部11aは、当該車両Vのウィンカー操作により前記運転者により指示された予定進行方向に対応して注視映像を選択し、前記マーカ表示制御部11bは、前記ウィンカー操作を契機として前記マーカ107の移動表示を行うように、前記インストルメントディスプレイ2を制御する。これにより、車両表示装置1を操作するための特別な装置を新たに設けなくても、注視映像の選択とマーカ107の移動表示を開始するタイミングとを適切に制御することができる。
【0049】
上記実施形態の車両表示装置1においては、現在地から目的地までの経路を探索して誘導するナビゲーション装置13(ナビゲーション手段に相当)を有し、前記選択部11bは、前記ナビゲーション装置13から取得した、前記ウィンカー操作が行われた際に当該車両Vが走行している道路関連情報に対応して前記注視映像を選択する。これにより、道路種別やそのときの周囲の状況等にきめ細かく対応した、最適な注視映像の選択を行うことができる。
【0050】
上記実施形態の車両表示装置1においては、前記マーカ107の移動位置に対応した定位の音を再生可能な立体音再生スピーカ3(再生手段に相当)を備えている。これにより、立体音再生スピーカ3は、運転者に対してマーカ107の移動位置を立体音でリアルタイムに示すことができるので、マーカ107の移動表示と協調して、注視映像の配置を運転者に対して明確に示すことができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0052】
例えば、図8(a)に示す自車Aのように、街頭での四つ角交差点において右折進入する場合、対向車線上の対向する車両B及び車両Cの有無とともに、進入先の横断歩道を通行する通行人Hの存在も確認する必要がある。この場合、運転者が視認すべき範囲が広いため、ピラーなどで遮られることなく右前方カメラ16が撮像した右前方映像104とともに、車両右側のサイドウィンドを通じて右方向外側の状況も併せて確認することは有用である。
【0053】
この際、ナビゲーション装置13は、自車Aが横断歩道のある道路の交差点に位置する(停止している旨の情報を含んでもよい)旨を含む、上記道路関連情報をCPU11に出力する。CPU11は、上記道路関連情報とウィンカーレバーの右方向への操作とに応じて、右前方映像104を注視映像として選択するとともに、運転者に注視させる車両の右外側の方向を選択する。これにより、図8(b)に示すように、インストルメントディスプレイ2上では、計器画像101を基点として中央やや右側に配置された右前方映像104の表示領域までマーカ107が流れ星のように移動させて表示されるとともに、さらに車両の右外側の方向へ向かうような矢印109が併せて表示される。
【0054】
なお、このような、運転者に対し、視線を車外へ向けるように誘導する場合のマーカ107の移動表示は、上記実施形態において説明した、車内の注視映像へ向かうマーカ107の移動表示と区別可能な異なる態様で表示してもよい。また、このようなマーカ107の移動表示や矢印109の表示と併せ、例えば同じ方向に位置する車室外のボディやサイドミラーに設けたランプ等を連動させて点灯することにより、さら車外への視線の誘導を促すようにしてもよい。また、立体音再生スピーカ3で再生する立体音においても、上記実施形態とは異なる態様の音により再生してもよい。
【0055】
図9は、この変形例において、CPU11が実行する制御内容を表すフローチャートである。
【0056】
図9に示すフローでは、図7におけるステップS80及びステップS110に代えてそれぞれステップS80A及びステップS110Aが設けられている。ステップS80Aでは、上記注視映像としての右前方映像104と、車両Vの外部の右外側方向とが選択される。
【0057】
ステップS110Aでは、適宜の基点位置(この例では計器画像101の位置)から、上記ステップS40、ステップS50、ステップS80A、ステップS90のいずれかにより選択された注視映像の位置(又は車両外部の方向を示す位置)まで、マーカ107を動的に移動させて表示する。
【0058】
上記実施形態の車両表示装置1においては、前記選択部11bは、前記運転者に注視させる前記車両Vの外の特定の方向をさらに選択可能であり、前記マーカ表示制御部11bは、前記選択部11bにより選択された前記特定の方向を、前記注視映像と異なる態様で表示するように、前記インストルメントディスプレイ2を制御する。これにより、注視映像と併せて車外の特定方向も運転者に視認させたい場合に、それぞれの視認の必要性と、それぞれの配置と方向を明確に区別して示すことができる。
【0059】
(2)その他
なお、以上において、マーカ107の移動表示は、上記のような流れ星のような流線態様に限られない。例えば、予め固定配置された複数の領域(矢印形状などでもよい)を順次点滅させることにより、全体として一方側から他方側への動的な表示態様を実現するようにしてもよい。その際、ある瞬間に点灯する領域の数は1つでもよいし、複数でもよい。一方側から他方側へ向かって点灯領域数が順次羅列されて増えるような表示態様でもよい。またそのような動的表示を一方側から他方側へ向かって複数回繰り返すようにしてもよい。
【0060】
また、以上において、例えば、上述した各車載カメラ15〜18と併せて、それぞれの視野方向と同じ方向で他の車両や通行人などの近接を検知するセンサを設けてもよい。この場合、上記のように注視映像が選択されるのに合わせ、適宜の画面に例えばアイコン等を用いて上記近接を警告するようにしてもよい。
【0061】
さらに、以上において、立体音再生スピーカ3からは単純な報知音を再生するだけでなく、注視映像の配置を言葉で発音する(「右側に注意しましょう!」「左の端を見てください!」等)案内音声を、その定位を制御しつつ出力してもよい。
【0062】
また、立体音制御部11cの制御により立体音再生スピーカ3から立体音として再生する報知音は、マーカ107の表示位置が注視映像の表示領域に到達した以降も音の定位を移動させるように制御してもよい。例えば、マーカ107と同じ位置、同じ速さで定位を移動させ、当該マーカ107が注視映像の表示領域に到達した以降もインストルメントディスプレイ2の端部若しくはその延長外部までその定位の移動を継続させて再生してもよい。又は、マーカ107より遅い速度で定位を移動させ、当該マーカ107が注視映像の表示領域に到達した以降もそれに追従して同じ注視映像に到達するまで定位の移動を継続させて再生してもよい。
【0063】
この変形例の車両表示装置1は、車両Vの運転者の視線を誘導する視線誘導装置であって、前記運転者に視認可能であって、異なる複数の方向のそれぞれで撮影された前記車両Vの周囲の映像を同時に表示可能な表示領域を有するインストルメントパネル2(第2表示手段に相当)と、前記運転者に対して聴取可能な音を出力する立体音再生スピーカ3(出力手段に相当)と、前記インストルメントパネル2に表示された複数の映像のうち、前記運転者に対して注視させる注視映像の表示領域へ向かってマーカ107を移動させて表示するように、前記インストルメントパネル2を制御するマーカ表示制御部11b(第2マーカ表示制御手段に相当)と、前記マーカ107の表示位置の移動に応じて音の定位を移動させるように、前記立体音再生スピーカ3を制御する 音出力制御手段 と、を備え、前記立体音制御部11c(音出力制御手段に相当)は、前記マーカ表示制御部11bにより前記マーカ107の表示位置が前記注視映像の表示領域に到達した以降も音の定位を移動させるように、前記立体音再生スピーカ3を制御する。
【0064】
これにより、表示と音の両方を使って、運転者への注視映像への視線、並びに当該注視映像が示す実際の風景への目視の誘導を実現できる。
【0065】
また、上記の例では、4台のカメラ15,16,17,18により車両Vの左前方、右前方、左後方、右後方を撮影した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、少なくとも2つ(つまり複数)のカメラを用いて撮影を行い、その映像をインストルメントディスプレイ2に同時に表示し、そのうちいずれを注視すべきかを運転者に指示するようにしてもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0066】
なお、以上において、図7、図9に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0067】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0068】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 車両表示装置(車両表示装置、視線誘導装置に相当)
2 インストルメントディスプレイ(第1、第2表示手段に相当)
3 立体音再生スピーカ(再生手段、出力手段に相当)
11 CPU
11a 選択部(選択手段に相当)
11b マーカ表示制御部(第1、第2マーカ表示制御手段に相当)
11c 立体音制御部(音出力制御手段に相当)
12 記憶装置
13 ナビゲーション装置
14 ウィンカースイッチ
15〜18 車載カメラ(撮像手段に相当)
19 グラフィックコントローラ
21 集中視野
22 周辺視野
101 計器画像
102 ナビゲーション画像
103 左前方映像
104 右前方映像
105 左後方映像
106 右後方映像
107 マーカ
108 移動ライン
109 矢印
V 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周囲の映像を所定の複数の方向でそれぞれ撮像する複数の撮像手段と、
前記車両の運転席及び助手席の前方に設置されて、当該車両の動作状態を示す計器画像、及び、前記複数の撮像手段で撮像した複数の映像を、所定位置に配置された表示領域で同時に表示可能な第1表示手段と、
前記複数の映像のうち前記車両の運転者に対して注視させる映像(以下、注視映像と称する)を選択する選択手段と、
前記第1表示手段における所定の基点位置から、前記選択手段により選択された注視映像の表示領域へ向かって、運転者の視線を誘導するためのマーカを移動させて表示するように、前記第1表示手段を制御する第1マーカ表示制御手段と、
を有することを特徴とする車両表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両表示装置において、
前記選択手段は、
当該車両のウィンカー操作により前記運転者により指示された予定進行方向に対応して前記注視映像を選択し、
前記第1マーカ表示制御手段は、
前記ウィンカー操作を契機として前記マーカの移動表示を行うように、前記第1表示手段を制御する
ことを特徴とする車両表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両表示装置において、
現在地から目的地までの経路を探索して誘導するナビゲーション手段を有し、
前記選択手段は、
前記ナビゲーション手段から取得した、前記ウィンカー操作が行われた際に当該車両が走行している道路関連情報に対応して前記注視映像を選択する
ことを特徴とする車両表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両表示装置において、
前記マーカの移動位置に対応した定位の音を再生可能な再生手段を備えていることを特徴とする車両表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両表示装置において、
前記選択手段は、
前記運転者に注視させる前記車両の外の特定の方向をさらに選択可能であり、
前記第1マーカ表示制御手段は、
前記選択手段により選択された前記特定の方向を、前記注視映像と異なる態様で表示するように、前記第1表示手段を制御する
ことを特徴とする車両表示装置。
【請求項6】
車両の運転者の視線を誘導する視線誘導装置において、
前記運転者に視認可能であって、異なる複数の方向のそれぞれで撮影された前記車両の周囲の映像を同時に表示可能な表示領域を有する第2表示手段と、
前記運転者に対して聴取可能な音を出力する出力手段と、
前記第2表示手段に表示された複数の映像のうち、前記運転者に対して注視させる映像(以下、注視映像と称する)の表示領域へ向かってマーカを移動させて表示するように、前記第2表示手段を制御する第2マーカ表示制御手段と、
前記マーカの表示位置の移動に応じて音の定位を移動させるように、前記出力手段を制御する音出力制御手段と、を備え、
前記音出力制御手段は、前記第2マーカ表示制御手段により前記マーカの表示位置が前記注視映像の表示領域に到達した以降も音の定位を移動させるように、前記出力手段を制御する、
ことを特徴とする視線誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−113672(P2012−113672A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264597(P2010−264597)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】