説明

車両計測装置

【課題】複数の車輪を有する車両全体が載置可能な載台と、該載台を支持するように配置された複数の荷重検出器とを備える車両計測装置において、車両の重量を計測するとともに、載台上を走行する車両の速度および加速のうちいずれか一方又は両方を計測する。
【解決手段】指示計8は、載台2にかかる荷重を検出する複数のロードセル3a,3b,3c,3d(荷重検出器)からの検出出力を用いて、載台2上の車両4の重量と、速度vおよび加速度aのうちいずれか一方又は両方とを算出するように構成される。複数のロードセル3a,3b,3c,3dは、車両4の進行方向99の前後に分けて配置され、載台2の車両4の進行方向99の前部で検出された荷重と後部で検出された荷重とが指示計8で独立して利用可能となるように、ロードセル3a,3b,3c,3dと指示計8とが接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載台に載せた車両の重量を計測するとともに載台上を走行する車両の速度を計測することができる車両計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に積載した積荷の重量管理を行うために、車両の積荷重量の計測が行われている。車両の積荷重量は、車両重量計測装置を用いて積荷を含めた車両重量を計測し、この計測された車両重量から予め登録されている車両自体の重量を減算して求められる。例えば、特許文献1に示すように、車両の全車輪が同時に乗り込める寸法の載台を有するタイプの車両重量計測装置は、載台上に乗り入れた車両を一旦停止させ、振動などによる計量数値の乱れが収束して安定した状態で得られた計量数値を車両重量として計測する。
【0003】
近年では、車両の車軸の重量(軸重量ともいう)および車両の総重量を計測する車軸重量計測装置も一般的となっている。特許文献2では、車軸重量計測装置において、走行中の車両の軸重量を計測するとともに車両の速度又は加速度を検出するように構成されたものが示されている。特許文献2に示された車軸重量計測装置は、車両の走行方向に並んだ第1および第2の軸重センサを備え、先行車軸(最初にセンサ上を通過した車軸)が第1の軸重センサ上を通過した時刻と、同車軸が第2の軸重センサ上を通過した時刻とにより、これらの軸重センサ間の通過に要した時間(通過時間という)を算出し、該通過時間と軸重センサの配置間隔とに基づいて、先行車軸の速度を車両の速度として算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−81220号公報
【特許文献2】特開2009−216674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような載台を備えた車両重量計測装置は、車両が載台上を走行することにより載台の上面が摩耗するが、これに加えて、載台の下降範囲を規制するストッパーボルトや載台を支持するロードセルおよび基礎が激しく損傷することがある。これらの損傷の程度は、通常は計測回数に比例する。しかし、車両が載台へ乗降する際に急停止や急発進などの乱雑な運転が行われた場合には、これらの損傷の程度の進行が加速する。したがって、載台へ乗降する際の車両の速度が定められた範囲を超える場合や、当該車両の加速度が定められた範囲にない場合に、運転手に定められた走行速度を守るとともに急停止および急発進をしないように勧告するなどの対処を行うことが望ましい。そのためには、車両が載台へ乗降する際の速度および加速度を検出することが必要となる。
【0006】
ところで、特許文献2に記載の車軸重量計測装置は、先行車軸の速度を複数の軸重センサから検出信号が出力されたタイムラグを利用して算出する。つまり、特許文献2に記載されている車両の速度の検出手法は、車両が軸重センサ上を停止することなく走り抜けることを想定したものであって、車両の先行車軸が複数の軸重センサ上を等速で通過する車両の速度しか正しく検出することができない。したがって、特許文献2に記載された技術を、車両の全車軸を載せ得る載台を備えて当該載台上で車両を一旦停止させて重量を計測するタイプの車両重量計測装置に適用させたとしても、車両が載台へ乗降する際の車両の速度や、車両が載台上で停止および発進するときの加速度などを検出することができない。
【0007】
本発明は上記に鑑み、複数の車輪を有する車両全体が載置可能な載台と、該載台を支持するように配置された複数の荷重検出器とを備える車両計測装置において、車両の重量を計測するとともに、載台上を走行する車両の速度および加速のうちいずれか一方又は両方を計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両計測装置は、計測される車両が有する全車輪を載せることができる大きさの載台と、前記載台を支持するように配置されて当該載台に掛かる荷重を検出する複数の荷重検出器と、前記複数の荷重検出器からの検出出力を用いて演算を行う指示計とを備え、前記指示計が、前記複数の荷重検出器で検出された荷重に基づいて前記車両の重量を算出する計量部と、前記複数の荷重検出器で検出された荷重に基づいて前記車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を算出する速度演算部とを含んで成るものである。
【0009】
上記構成の車両計測装置は、複数の荷重検出器で検出した荷重に基づいて、載台上の車両の重量を計測するとともに、載台上を走行する車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を計測することができる。したがって、特別な速度センサ等を備えることなく、車両の重量計測のための構成を利用して載台上を走行する車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を計測することができる。さらに、複数の荷重検出器で検出した荷重を利用するので、載台上にある車両の車軸の数にかかわらず速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を計測することが可能である。よって、車両が載台へ乗降する過程の車両の速度や、車両が載台上で停止および発進するときの加速度なども計測することが可能である。
【0010】
前記車両計測装置において、前記速度演算部は、前記複数の荷重検出器で検出された荷重に基づいて前記車両に付帯する或基準点の位置の変位量を求め、この変位量に基づいて車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を算出することがよい。そして、前記車両計測装置において、前記基準点は、前記車両の最も前の車軸又は最も後の車軸の中心としてよい。
【0011】
前記車両計測装置において、前記複数の荷重検出器は、前記載台において前記車両の進行方向の前後中央より後側に配置された一又は複数の後側荷重検出器と、前記載台において前記進行方向の前後中央より前側に配置された一又は複数の前側荷重検出器とを含み、前記計量部および前記速度演算部が、前記一又は複数の後側荷重検出器で検出された荷重の和と、前記一又は複数の前側荷重検出器で検出された荷重の和とを、それぞれ独立して利用可能なように、前記複数の荷重検出器と前記指示計とが接続されていることがよい。かかる構成により、指示計は、後側荷重検出器で検出された荷重と前側荷重検出器で検出された荷重とをそれぞれ利用して、載台上を走行する車両の基準点の位置を算出することができる。
【0012】
また、前記車両計測装置において、前記複数の荷重検出器の各々はデジタルロードセルであることがよい。これにより、一又は複数の後側荷重検出器で検出された荷重の和と一又は複数の前側荷重検出器で検出された荷重の和とをそれぞれ独立して利用可能な構成を、容易に実現することができる。
【0013】
前記車両計測装置において、前記指示計には、車両の車軸数および前記載台上にある車両の車軸の状況に応じた複数の計算式が記憶されており、前記速度演算部は、前記複数の計算式のうち、前記車両の車軸数および前記載台上にある前記車両の車軸の状況に応じて1つの計算式を選択的に利用して、前記車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を算出するように構成されていてよい。
【0014】
前記車両計測装置において、前記速度演算部は、前記載台の前記車両の進行方向の前後中央より後側にかかる荷重、前記載台の前記進行方向の前後中央より前側にかかる荷重および前記車両の車軸間距離、または、これらに加えて前記載台の前記進行方向の前後中央より後側に配置された前記荷重検出器と前記載台の前記進行方向の前後中央より前側に配置された前記荷重検出器との離間距離を用いて、前記車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を算出するように構成されていてよい。
【0015】
前記車両計測装置において、前記指示計は、前記速度演算部で算出された前記車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方と所定の規制速度又は所定の規制加速度と比較することにより、前記車両の前記載台上での速度超過、急発進および急停止を検出する車両速度監視部を更に含むことがよい。これにより、車両計測装置で計測された速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を有効に利用することができる。例えば、検出された速度超過および急停止を、車両の載台への乗降の過程での乱雑な運転に対して警告を発するために利用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の車輪を有する車両全体が載置可能な載台と、該載台を支持するように配置された複数の荷重検出器とを備える車両計測装置において、車両の重量を計測するとともに、特別な速度センサ等を備えることなく車両の重量を計測するための構成を利用して、載台上を走行する車両の速度および加速のうちいずれか一方又は両方を計測することができる。さらに、複数の荷重検出器で検出した荷重を利用するので、載台上にある車両の車軸の数にかかわらず速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を計測することができる。よって、車両が載台へ乗降する過程の車両の速度や、車両が載台上で停止および発進するときの加速度なども検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両計測装置の構成を概略的に示す側面図である。
【図2】同じく車両計測装置の構成を概略的に示す平面図である。
【図3】指示計の構成を示すブロック図である。
【図4】車両情報データベースに記憶される車両情報のレイアウトの一例を示す概念図である。
【図5】車両計測装置による検出総量の時系列変化の一例を示すグラフである。
【図6】車両計測装置の動作の概略フローを示すフローチャートである。
【図7】車軸数2の車両の第1車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。
【図8】車軸数2の車両の全車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。
【図9】車軸数2の車両の第2車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。
【図10】後側重量と車両の走行距離との関係の一例を示すグラフである。
【図11】車軸数3の車両の全車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。
【図12】車軸数3の車両の第2車軸と第3車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0019】
(車両計測装置10の構成例)
図1は本発明の一実施形態に係る車両計測装置の構成を概略的に示す側面図、図2は同じく車両計測装置の構成を概略的に示す平面図、図3は指示計の構成を示すブロック図である。図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係る車両計測装置10は、重量計1と、その重量計1と有線又は無線の通信手段5で通信可能に接続された指示計8とを備えている。
【0020】
重量計1は、重量を計測する計測対象である車両4を載せるための載台2と、載台2に掛かる荷重を検出するために載台2を支持するように配置された複数のロードセル3a,3b,3c,3dとを備えている。本実施の形態に係る重量計1は、載台2の下方の四隅に配置された4個のロードセル3a,3b,3c,3d(荷重検出器)を備えている。載台2は、車両4全体を載置できるように、車両4が有する全ての車輪41,42,43,44を同時に載せることができる寸法を有する。この載台2は、路面を掘り下げて形成されたピットに、その上面が路面と略面一になるように配設されている。なお、本実施の形態に係る車両4は、第1車軸4fおよび第2車軸4bを有する車軸数2の車両である。但し、車両計測装置10の計測対象である車両4は、車軸数3以上の車両であってもよいことは勿論である。このような車軸数3以上の車両の重量を計測する場合であっても、車両4が備える全車輪を同時に乗せることができるように、載台2の大きさが定められている。
【0021】
4個のロードセル3a,3b,3c,3dは、載台2において車両4の進行方向(図1において矢印99で示す方向)の前後略中央よりも後側の後列Kaと、前側の前列Kbとに分かれて配置されている。後列Kaと前列Kbはいずれも進行方向99と略直交している。後列Kaは、載台2の進行方向99の後端下部に位置し、この後列Kaに2つのロードセル3a,3cが配置されている。前列Kbは、載台2の進行方向99の前端下部に位置し、この前列Kbに2つのロードセル3b,3dが配置されている。
【0022】
各ロードセル3a,3b,3c,3dからの計量信号が独立して指示計8へ出力されるように、ロードセル3a,3b,3c,3dと指示計8とが接続されている。したがって、指示計8では各ロードセル3a,3b,3c,3dで検出された荷重を個別に取得することができる。但し、後列Kaに属するロードセル3a,3cで検出された荷重(又は荷重の和)と、前列Kbに属するロードセル3b,3dで検出された荷重(又は荷重の和)とを、指示計8で独立して演算に利用することができれば、各ロードセル3a,3b,3c,3dから指示計8への出力構成は上記に限定されない。換言すれば、複数のロードセル3a,3b,3c,3dが車両4の進行方向99の前後に分けて配置され、車両4の進行方向99の前部で検出された荷重(ここでは、ロードセル3a,3cで検出された荷重)と後部で検出された荷重(ここでは、ロードセル3b,3dで検出された荷重)とが指示計8で独立して利用可能であれば、重量計1から指示計8への出力構成は本実施例とは異なる構成であってもよい。
【0023】
本実施の形態に係るロードセル3a,3b,3c,3dは、いずれもデジタルロードセルである。各ロードセル3a,3b,3c,3dは、ロードセル自体に増幅部、A/D変換部、および演算部が組み込まれており、検出した荷重をデジタル計量信号として指示計8へ出力する。このようにロードセルとしてデジタルロードセルが用いられることによって、各ロードセルの計量信号を各々独立して指示計8へ伝達できる構成を容易に構築することができる。但し、重量計1が備えるロードセルとして、デジタルロードセルに代えてアナログロードセルを用いてもよい。この場合には、ロードセルからのアナログ出力は、増幅部およびA/D変換部介して指示計8へ伝達されることとなる。
【0024】
指示計8は、図3に示すように、演算装置および制御装置として機能するCPU(中央処理装置:Central Processing Unit)81と、主記憶装置であるメモリ82と、補助記憶装置であるハードディスク83と、通信インターフェース(通信I/F86)とを備え、これらはバス85で接続されている。通信I/F86は、外部の装置と通信するために用いられるインターフェースである。一例として、通信I/F86には、指示計8での処理結果を表示出力するためのディスプレイ装置、車両4の運転手に対して載台2への進入又は退出の可否および警告などの情報を伝達するための信号灯やスピーカなどの出力手段87と、指示計8へ情報や指令を入力するためのキーボードやタッチパネルなどの入力手段88とが接続される。
【0025】
CPU81は、インストールされた所定のプログラムを実行することにより計量制御部81a、計量部81b、速度演算部81cおよび車両速度監視部81dとして機能する。計量制御部81aは、車両計測装置10の計量動作を制御する。計量部81bは、ロードセル3a,3b,3c,3dで検出された荷重に基づいて、載台2上の荷重を計測し、メモリ82へ記録する。速度演算部81cは、計量部81bで計測された荷重に基づいて載台2上の車両4の速度および加速度を算出する。車両速度監視部81dは、速度演算部81c速度演算部速度演算部で算出された車両4の速度および加速度に基づいて車両4の載台2上の走行(具体的には、速度超過、急発進および急停止)を監視する。
【0026】
ハードディスク83には、重量計1に関する情報である重量計情報84が格納されている。重量計情報84には、例えば、重量計1が備えるロードセル3a,3b,3c,3dの特性や、載台2の大きさ、後列Kaと前列Kbの進行方向99の離間距離(以下「検出点間距離Lp」という)などが含まれている。なお、後列Kaまたは前列Kbに属するロードセルの進行方向99の位置にバラツキがある場合は、後列Kaに属するロードセル3a,3cの位置の平均を後列Kaの進行方向99の位置とし、前列Kbに属するロードセル3b,3dの位置の平均を後列Kaの進行方向99の位置とする。
【0027】
さらに、ハードディスク83には、車両情報を記憶する車両情報データベース(車両情報DB50)が設けられる。図4は車両情報データベースに記憶される車両情報のレイアウトの一例を示す概念図である。図4に示すように、車両情報は、車番(車両番号)フィールド51、車軸数フィールド52、軸間距離フィールド53、総量フィールド54、風袋量フィールド55、正味量フィールド56、事業者フィールド57、品種フィールド58、および最大積載量フィールド59、速度超過フィールド60の各フィールドを有している。
【0028】
車番フィールド51には、車両4の識別情報としての車両番号が格納される。車軸数フィールド52には、その車両の車軸数が格納され、軸間距離フィールド53には車軸数に対応して車軸間距離L1が格納される。また、総量フィールド54には、その車両の総重量Wの計測結果が格納される。風袋量フィールド55には、その車両の風袋量が格納される。正味量フィールド56には、車両の総重量Wから風袋量を減ずることによって得られる、積荷の正味量の計測結果が格納される。本実施の形態において、車両情報に含まれる車両番号、車軸数、車軸間距離、車両の総重量、車両の風袋量、および積荷の正味量は、車両属性情報として位置付けられる。この車両属性情報を参照すれば、その車両の属性を知ることができるため、複数の車両群から一の車両を識別すること、すなわち、車両を特定することが可能となる。
【0029】
また、事業者フィールド57には、その車両を管理する事業者の事業者名が、品種フィールド58には、車両に積載された積荷の種別(品種)が、最大積載量フィールド59には、車検証に記載されている最大積載量がそれぞれ格納される。速度超過フィールド60には、その車両について車両速度監視部81cにて走行速度違反(具体的には、速度超過、急発進又は急停止)が検出された場合にその回数等が速度違反情報として格納される。なお、車両番号、車軸数、車両の風袋量、事業者名、積荷の品種、および最大積載量は、予め車両情報DB50に登録されており、他方、車両の総重量および積荷の正味量の計測結果ならびに速度違反情報は、後述する計量動作の終了時に車両情報DB50に登録される。
【0030】
(車両計測装置10の動作例)
次に、車両計測装置10で行われる計量動作の概略について、図6を参照しながら説明する。図6は車両計測装置の動作の概略フローを示すフローチャートである。車両計測装置10で行われる計量動作に係る制御および演算は指示計8の計量制御部81aで行われる。
【0031】
計量対象である車両4の運転手は、車両4を載台2へ進入させ、車両4の全車軸が載台2に乗り込んだ状態で、車両4を載台2上で停止させる。重量計1での計量は、車両4が載台2に進入する前に開始され(ステップS1)、以後継続されている。すなわち、指示計8の計量部81bは、各ロードセル3a,3b,3c,3dで検出された荷重を取得し、後列Kaに配置されたロードセル3a,3cで検出された重量の和(以下「後側重量Wa」という)と、前列Kbに配置されたロードセル3b,3dで検出された重量の和(以下「前側重量Wb」という)と、全ロードセルで検出された重量の和(以下「検出総量W」)とを算出し、これらをメモリ82に逐次記録する。後側重量Wa、前側重量Wbおよび検出総量Wが逐次算出されて蓄積されることによって、これらの履歴が生成される。
【0032】
まず、指示計8は、車両4が載台2上で停止したことを検出する(ステップS2)。車両4が載台2上を移動している間は、後側重量Waと前側重量Wbは変動する。よって、指示計8は、後側重量Waおよび前側重量Wbの変動が収まったことから間接的に車両4が載台2上で停止したことを検出できる。このようにして車両4の停止が検出されたときには、重量計1の検出値の変動は収まり安定している。
【0033】
車両4が載台2上で停止したことが検出されてから、指示計8は計量対象の車両4を特定する(ステップS3)。ここで、オペレータは、指示計8に接続された入力手段88を介して指示計8へ計量対象である車両4の識別情報を入力する。識別情報は、例えば、車両4の車番である。車両4の識別情報を取得した指示計8は、車両情報DB50を参照して該当する車両情報を特定し、この車両情報から計量対象情報を生成する(ステップS4)。計量対象情報には、車両4の識別番号(車番)、車軸数、車軸間距離L1、風袋量、最大積載量などの指示計8での処理に必要な情報が含まれており、メモリ82に一時的に記憶される。
【0034】
続いて、指示計8は、車両4の総重量Wと積荷の正味量とを計量する(ステップS5)。車両4の総重量Wは、車両が載台2上で停止したときに検出された検出総量Wである。また、積荷の正味量は、車両4の総重量Wから計量対象情報に含まれる車両4の風袋量を差し引いた値である。
【0035】
指示計8は、総重量Wの計量のあとで又は同時に、速度演算部81cにより速度算出処理を行い(ステップS6)、車両4が載台2へ進入を開始してから載台2上で停止するまでの速度vおよび加速度aを算出する。さらに、指示計8は速度監視処理を行い(ステップS7)、算出された速度vおよび加速度aを用いて車両4の速度の監視活動を行って速度違反データを生成する。速度算出処理および速度監視処理については、後ほど詳述する。
【0036】
速度監視処理(ステップS7)が終われば、指示計8は車両4の総重量Wおよび積荷の正味量を少なくとも含む計量結果と、速度違反データと、計量対象情報とから計量結果データを生成し(ステップS8)、生成された計量結果データを指示計8に接続されたディスプレイ装置等の出力手段87に出力する(ステップS9)。例えば、計量結果データがディスプレイ装置に出力された場合に、ディスプレイ装置には少なくとも総重量Wと、積荷の正味量と、速度違反データとが表示される。速度違反データに含まれうる情報には、速度超過、急発進、または急停止の走行速度違反と良好とがあり、このように走行速度違反が出力手段87に出力されることにより運転手に速度遵守が促される。速度違反データの出力例として、オペレータに向けてディスプレイ装置に速度又は加速度違反であることを報知する画像として出力されたり、運転手に向けて信号灯の点滅として出力されたり、或いは、運転手に向けてスピーカからの警告音として出力されたりする。
【0037】
続いて、指示計8は退出許可信号を出力する(ステップS10)。退出許可信号は、指示計8に接続された出力手段87へ出力される。この退出許可信号に基づいて、オペレータが車両4の運転手を案内したり、運転手が自ら退出許可を判断したりして、運転手が車両4を載台2から退出させる。
【0038】
指示計8は、載台2から車両4が退出したことを検出して(ステップS11)、重量計1の車両4の計量を終了する(ステップS12)。車両4が載台2から退出したことは、重量計1で検出された荷重から判断することができる。車両4が載台2から退出すると、指示計8は速度算出処理を行い(ステップS13)、車両4が載台2上で停止してから載台2から退出するまでの速度vおよび加速度aを算出する。さらに、指示計8は速度監視処理を行い(ステップS14)、算出された速度vおよび加速度aを用いて車両4の速度の監視活動を行って速度違反データを生成する。速度算出処理および速度監視処理については、後ほど詳述する。
【0039】
最後に、指示計8は、計量結果データに新たに生成された速度違反データを追加し(ステップS15)、この計量結果データを車両情報DB50に格納された車両情報に記録するとともに(ステップS16)、上記ステップS11と同様に、指示計8に接続されたディスプレイ装置やプリンタなどの出力手段87に出力する(ステップS17)。
【0040】
以上、本実施形態に係る車両計測装置10の好適な計量動作の流れを説明したが、上記の各処理は、必要に応じて省略したり、順序を変更したり、同時に実行したりすることが可能である。続いて、上記車両計測装置10の計量動作に含まれる速度算出処理と速度監視処理について説明する。
【0041】
(速度算出処理)
まず、速度演算部81cが行う速度算出処理(ステップS8,ステップS15)について詳細に説明する。指示計8の速度演算部81cは、車両4の速度vおよび加速度aを算出するために、後側重量Waの履歴、前側重量Wbの履歴、総量Wの履歴、計量対象情報および重量計情報84を利用する。特に、計量対象情報のうち車軸数および車軸間距離L1を利用し、重量計情報84のうち検出点間距離Lpを利用する。そして、速度演算部81cは、これらを利用して車両4の基準点の位置(以下「基準位置x」という)を算出し、この基準位置xの単位時間の変位量から車両4の速度vおよび加速度aを算出する。ここでは、後列Kaを原点とし、車両4の第1車軸4f(先行車軸)の進行方向99前後の中心(重心)を基準位置xとし、後列Kaから基準位置xまでの進行方向99の距離を基準位置xの変位量として説明する。
【0042】
図5は車両計測装置による検出総量の時系列変化の一例を示すグラフである。図5に示すグラフでは、縦軸が検出総量Wを表している。検出総量Wは、後側重量Waと前側重量Wbの和である。また、図5に示すグラフでは、横軸が重量計1で計量を開始してからの経過時間を表している。時刻t1に第1車軸4fが載台2へ進入し、時刻t2に第2車軸4bが載台2へ進入し、時刻t3に車両4が停止し、時刻t4に車両4が発進し、時刻t5に第1車軸4fが載台2から退出し、時刻t6に第2車軸4bが載台2から退出する。このグラフに示されるように、検出総量Wは、車両4が載台2上を移動するうちに階段状に変化する。これは載台2上にある車軸の状況(すなわち、どの車軸が載台2にあるか)に対応している。以下では、説明の便宜を図って、載台2上に第1車軸4fのみがある時刻t1から時刻t2までを「第1ステージS1」といい、載台2上に第1車軸4fおよび第2車軸4bがある時刻t2から時刻t5までを「第2ステージS2」といい、載台2上に第2車軸4bのみがある時刻t5から時刻t6までを「第3ステージS3」ということとする。第1ステージS1において、検出総量Wは第1車軸4fの軸重量(第1軸重量W1)を表している。第2ステージS2において、検出総量Wは車両4の総重量Wを表している。第3ステージS3において、検出総量Wは第2車軸4bの軸重量(第2軸重量W2)を表している。
【0043】
速度演算部81cは、車両4の車軸数と、載台2上にある車両4の車軸の状況とに応じて最適な計算式を選択し、選択された計算式を利用して基準位置xを算出する。具体的には、速度演算部81cは、計量対象情報から車両4の車軸数を取得し、続いて、車軸数と検出総量Wの履歴とに基づいて載台2上にある車軸の状況(すなわち、ステージS1,S2,S3)を特定する。なお、各ステージS1,S2,S3の境界で検出される検出総量Wが大きく変動することから、車軸数と検出総量Wの変化量に基づいて載台2上にある車軸の状況を特定できる。車軸数2の場合に検出総量Wの急激な変化は、車両4の第1車軸4fが載台2へ進入したとき(時刻t1)、車両4の第2車軸4bが載台2へ進入したとき(時刻t2)、車両4の第1車軸4fが載台2から退出したとき(時刻t5)、車両4の第2車軸4bが載台2から退出したとき(時刻t6)の順に4回現れる。例えば、検出総量Wの急激な変化が2回のときは第2ステージS2(つまり、載台2上に第1車軸4fおよび第2車軸4bがある状況)である。そして、速度演算部81cは、載台2上にある車軸の状況に対応した計算式を用いて基準位置xを算出する。本実施形態では、速度演算部81cは基準位置xの位置を算出するにあたり、時刻t1から時刻t2までの第1ステージS1では計算式F1を用い、時刻t2から時刻t5までの第2ステージS2では計算式F2を用い、時刻t5から時刻t6までの第3ステージS3では計算式F3を用いる。以下、計算式F1、計算式F2および計算式F3について順に説明する。
【0044】
(計算式F1
計算式F1は、車軸数2の車両が第1ステージS1にあるときの基準位置xを算出する式である。図7は車軸数2の車両の第1車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。図7に示すように、後列Kaから前列Kbまでの進行方向99の距離を検出点間距離Lpとすると、基準位置x、後側重量Wa、前側重量Wbおよび検出点間距離Lpの間に次に示す数式1の関係が成立する。そして、数式1の関係から数式2に示された計算式F1を用いて基準位置xを求めることができる。
【0045】
【数1】

【0046】
【数2】

【0047】
(計算式F2
計算式F2は、車軸数2の車両が第2ステージS2にあるときの基準位置xを算出する式である。図8は車軸数2の車両の全車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。図8に示すように、後列Kaから車両4の重心Gまでの進行方向99の距離をyとし、車両4の重心Gから第1車軸4fの中心までの進行方向99の距離をzとしたときに、第1軸重量W1、第2軸重量W2、検出点間距離Lp、後側重量Wa、前側重量Wb、車軸間距離L1、距離yおよび距離zの間に、次に示す数式3の関係が成立する。基準位置xは距離yと距離zの和であるから、数式4に示された計算式F2を用いて基準位置xを求めることができる。なお、第2ステージS2の検出総量Wは車両の総重量Wであり、総重量Wは第1軸重量W1と第2軸重量W2の和である。よって、第2ステージS2の検出総量W(=W)から第1ステージS1の検出総量W(=W1)を差し引いた値が第2軸重量W2である。
【0048】
【数3】

【0049】
【数4】

【0050】
(計算式F3
計算式F3は、車軸数2の車両が第3ステージS3にあるときの基準位置xを算出する式である。図9は車軸数2の車両の第2車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。図9に示すように、後列Kaから第2車軸4bの中心までの進行方向99の距離をuとすると、検出点間距離Lp、後側重量Wa、前側重量Wbおよび距離uの間に、数式5の関係が成立する。そして、基準位置xは距離uと車軸間距離L1の和であるから、数式6に示された計算式F3を用いて基準位置xを求めることができる。
【0051】
【数5】

【0052】
【数6】

【0053】
なお、車両4の第1車軸4fと第2車軸4bとの車軸間距離L1は、車両情報DB50の軸間距離フィールド53に格納されている車軸間距離の値を用いることができるが、次に示すように重量計1で検出された荷重に基づいて算出することもできる。図10は後側重量と車両の走行距離との関係の一例を示すグラフである。図10に示すグラフでは、縦軸が第1、第2、第3の各ステージにおいて後列Kaに属するロードセル3a,3cで検出された荷重の和である後側重量Waを示しており、横軸が後列から車両4の第1車軸4fまでの進行方向99の距離、即ち、基準位置xを表している。基準位置xがゼロのときの後側重量Waは、第1車軸4fの軸重量である第1軸重量W1を表している。そして、車両4の第2車軸4bが載台2に載る直前の後側重量WaをWa1とし、後列と前列の進行方向99の距離を検出点間距離Lpとすると、次に示す数式7の関係が成立し、ここから数式8に基づいて車軸間距離L1を算出することができる。また、軸数についても、車両情報DB50の車軸数フィールド52に格納されている車軸数を用いることができるが、図5に示された荷重波形の変化に基づいて車軸数を算出することもできる。
【0054】
【数7】

【0055】
【数8】

【0056】
上述の通り、独立して利用可能な後側重量Waと前側重量Wbを用いて車両4の基準位置xを算出できる。さらに、この基準位置xを時間微分して速度vを算出し、速度vを時間微分して加速度aを算出することができる。このように、車両計測装置10は、特別な速度センサ等を備えることなく、車両の重量計測のための構成(即ち、重量計1)を利用して、載台2上を走行する車両の速度vおよび加速度aを計測することができる。また、車両計測装置10では、載台2上にある車両4の車軸数に拘わらず車両4の基準位置xを算出できる。よって、載台2上に車両4の1本の車軸しかないとき(車両4が載台2へ進入するとき又は載台2から退出するとき)や、載台2上に車両4の全ての車軸があるとき(車両4が載台2上で停止および発進するとき)などの、車両4が載台2へ乗降する全過程で車両4の速度vおよび加速度aを計測することが可能である。
【0057】
(車両速度監視処理)
次に、車両速度監視部81dが行う車両速度監視処理(ステップS9,ステップS16)について説明する。車両速度監視処理は、車両速度監視部81dは速度演算部81cで算出された速度vと加速度aとを利用して、車両4の載台2へ進入および退出するときの走行速度違反(具体的には、速度超過、急発進、および急停止)を検出する。車両速度監視部81dは、速度vと予め設定された規制速度(速度の上限値)とを比較し、加速度aと予め設定された規制加速度(加速度の上限値および下限値)とを比較する。速度vが規制速度を超過している場合には、速度超過が検出される。また、加速度aが規制加速度の上限値を上回る場合には、急発進が検出され、下限値を下回る場合には、急停止が検出される。
【0058】
そして、車両速度監視部81dは、速度超過、急発進および急停止の速度違反のうち少なくとも1つを検出した場合に、速度vおよび加速度aならびに速度違反の内容を含む速度違反データを生成する。なお、速度違反データは、前述したように、指示計8に接続された出力手段87を介してオペレータおよび運転手の少なくとも一方に警告を発する態様で出力される。
【0059】
さらに、車両速度監視部81dは、車両情報DB50の該当する車両4の車両情報の速度超過フィールド60へ速度違反情報を追記する。速度超過フィールド60へ追記される速度違反情報には、速度違反を検出した回数、速度違反の内容、速度違反時の速度および加速度、速度違反の検出日時などのうち少なくとも1つが含まれる。車両情報の速度超過フィールド60に蓄積された速度違反情報は、車両4の運転手や事業者への走行速度違反の警告のために利用される。例えば、車両情報の速度超過フィールド60に所定回数以上の速度違反情報が蓄積された車両が車両計測装置10を利用する際に、指示計8が出力手段87を通じて警告を発し、運転手に対して走行速度違反を再発しないように注意を喚起することができる。また、例えば、或車両の車両情報の速度超過フィールド60において所定回数の速度違反情報が蓄積された場合に、当該車両の運転手或いは当該車両の属する事業者に警告状を発送することができる。
【0060】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、次の変形例1〜5に例示されるように、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。
【0061】
[変形例1]
上記実施形態に係る速度演算部81cでは、車両4の速度vおよび加速度aの両方を算出するが、速度vのみを算出してもよい。速度演算部81cで速度vのみが算出される場合には、車両速度監視部81dは、速度vから速度超過を検出するように構成される。このとき、車両速度監視部81dは、連続する速度vの差Δv(すなわち、前回算出された速度と今回算出された速度との差)を算出して、差Δvから急発進および急停止を検出するように構成されてもよい。
【0062】
[変形例2]
また、上記実施形態に係る車両計測装置10の計量動作では、車両4が載台2で停止した後と、車両4が載台2から退出した後とのタイミングで、それぞれ速度算出処理と車両速度監視処理とを行っているが、これらの処理のタイミングは上記に限定されない。例えば、車両4が載台2から退出した後でのみに速度算出処理と車両速度監視処理とを行っても良い。
【0063】
[変形例3]
また、上記実施形態に係る車両計測装置10の計量動作では、車両4を載台2上で一旦停止させて総重量Wを計量するが、車両4を載台2上で停止させることなく走り抜けるうちに総重量Wを計量してもよい。この場合、車両4が載台2から退出して計量が終了した後のタイミングで速度算出処理と車両速度監視処理とを行うことができる。また、車両4が載台2上を走行中に速度算出処理と車両速度監視処理とを行っても良い。
【0064】
[変形例4]
また、速度演算部81cが行う速度算出処理において、車両4の基準点は進行方向99最も前の車軸の重心(第1車軸4fの重心)としているが、車両4の基準点はこれに限定されるものではなく、進行方向99最も後の車軸の重心(第2車軸4bの重心)など他の車軸の重心や、車軸の重心以外の部位を基準点としたりすることができる。例えば、進行方向99最も後の車軸の重心(第2車軸4bの重心)を基準点とした場合に、速度演算部81cは基準位置x(第2車軸4bの重心)の位置を算出するにあたり、図1を参照して、第1ステージS1では計算式F4を用い、第2ステージS2では計算式F5を用い、第3ステージS3では計算式F6を用いる。数式9に示された計算式F4では、計算式F1で求めた基準位置xから車軸間距離L1を引いて基準位置xを求めている。数式10に示された計算式F5では、計算式F2で求めた基準位置xから車軸間距離L1を引いて基準位置xを求めている。数式11に示された計算式F6では、計算式F3で求めた基準位置xから車軸間距離L1を引いて、基準位置xを求めている。
【0065】
【数9】

【0066】
【数10】

【0067】
【数11】

【0068】
[変形例5]
また、上記実施の形態において、計測対象である車両4は前後2軸の車両を想定しているが、計測対象である車両4が前後3軸以上の車両であっても構わない。例えば、車両4が3本の車軸を有する場合には、速度演算部81cは車軸数3の車両に対応付けられた計算式を利用して基準位置xを算出する。具体的には、速度演算部81cは、載台2上にある車軸の状況に応じて、車軸数3の車両に適応する計算式F1、計算式F2、計算式F3、計算式F7および計算式F8の中からいずれか1つを選択的に用いて基準位置xを算出する。
【0069】
車軸数3の車両4の第1車軸のみが載台2上にあるときは、計算式F1を用いて基準位置x(第1軸の重心)を算出する。車軸数3の車両4の第1車軸および第2車軸が載台2上にあるときは、計算式F2を用いて基準位置xを算出する。車軸数3の車両4の第3車軸のみが載台2上にあるときは、計算式F3を用いて基準位置xを算出する。
【0070】
車軸数3の車両4の全車軸が載台2上にあるときは、計算式F7を用いて基準位置x(第1軸の重心)を算出する。図11は車軸数3の車両の全車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。図11に示すように、車軸数3の車両4は、重心Gより進行方向99前側に第1車軸を有し、重心Gより進行方向99後側に第2車軸および第3車軸を有している。ここで、第1車軸から第2車軸までの車軸間距離をL1、第2車軸から第3車軸までの車軸間距離をL2、後列Kaから車両4の重心Gまでの進行方向99の距離をy、車両4の重心Gから第1車軸の中心までの進行方向99の距離をz、第1車軸の軸重量を第1軸重量W1、第2車軸の軸重量を第2軸重量W2、第3車軸の軸重量を第3軸重量W3とする。後側重量Wa、前側重量Wb、第1軸重量W1、第2軸重量W2、第3軸重量W3、車軸間距離L1、車軸間距離L2、検出点間距離Lp、および距離y,zの間に、数式12に関係が成立する。そして、基準位置xは距離y,zの和であるから、数式13に示された計算式F7を用いて基準位置xを求めることができる。
【0071】
【数12】

【0072】
【数13】

【0073】
車軸数3の車両4の第2車軸と第3車軸が載台2上にあるときは、計算式F8を用いて基準位置x(第1軸の重心)を算出する。図12は車軸数3の車両の第2車軸と第3車軸が載台上にあるときの基準位置の算出方法を説明する図である。図12に示すように、第2車軸と第3車軸の重心をG23とし、後列Kaから重心G23までの進行方向99の距離をy、重心G23から第2車軸までの進行方向99の距離をzとする。ここで、後側重量Wa、前側重量Wb、第1軸重量W1、第2軸重量W2、第3軸重量W3、車軸間距離L1,L2、検出点間距離Lp、および距離y,zの間に、数式14に関係が成立する。そして、基準位置xは距離y,zおよび車軸間距離L1の和であるから、数式15に示された計算式F8を用いて基準位置xを求めることができる。
【0074】
【数14】

【0075】
【数15】

【0076】
上述のように、想定しうる車軸数に対応する基準位置xの計算式が指示計8に予め記憶されており、速度演算部81cは車両4の車軸数と、載台2上にある車軸の状況とに基づいて、予め指示計8に記憶されている複数の計算式の中から最適な計算式を選択的に用いて基準位置xを算出する。このようにして、速度演算部81cは車軸数に拘わらず車両4の基準位置xを算出することが可能であり、算出された基準位置xから速度vおよび加速度aを算出することが可能である。また、速度演算部81cは計量動作中に逐次記録される後側重量Waおよび前側重量Wbを利用するので、仮に車両4の速度vが載台2上を走行するうちに変動しても、変動する車両4の速度vおよび加速度aを算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、載台上の荷重の変化に基づいて車両の速度を算出するので、車両の重量を計量するための載台を備えた車両計測装置において、その細部構造に拘わらず広く適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 重量計
2 載台
3 従属
4 車両
4f 第1車軸
4b 第2車軸
41,42,43,44 車輪
8 指示計
81 CPU
81a 計量制御部
81b 計量部
81c 速度演算部
81d 車両速度監視部
82 メモリ
83 ハードディスク
87 出力手段
88 入力手段
10 車両計測装置
50 車両情報DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測される車両が有する全車輪を載せることができる大きさの載台と、前記載台を支持するように配置されて当該載台に掛かる荷重を検出する複数の荷重検出器と、前記複数の荷重検出器からの検出出力を用いて演算を行う指示計とを備え、
前記指示計が、前記複数の荷重検出器で検出された荷重に基づいて前記車両の重量を算出する計量部と、前記複数の荷重検出器で検出された荷重に基づいて前記車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を算出する速度演算部とを含んで成る、車両計測装置。
【請求項2】
前記速度演算部は、前記複数の荷重検出器で検出された荷重に基づいて前記車両に付帯する或基準点の位置の変位量を求め、この変位量に基づいて車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を算出する、請求項1に記載の車両計測装置。
【請求項3】
前記基準点は、前記車両の最も前の車軸又は最も後の車軸の中心である、請求項2に記載の車両計測装置。
【請求項4】
前記複数の荷重検出器は、前記載台において前記車両の進行方向の前後中央より後側に配置された一又は複数の後側荷重検出器と、前記載台において前記進行方向の前後中央より前側に配置された一又は複数の前側荷重検出器とを含み、
前記計量部および前記速度演算部が、前記一又は複数の後側荷重検出器で検出された荷重の和と、前記一又は複数の前側荷重検出器で検出された荷重の和とを、それぞれ独立して利用可能なように、前記複数の荷重検出器と前記指示計とが接続されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両計測装置。
【請求項5】
前記複数の荷重検出器の各々はデジタルロードセルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両計測装置。
【請求項6】
前記指示計には、車両の車軸数および前記載台上にある車両の車軸の状況に応じた複数の計算式が記憶されており、
前記速度演算部は、前記複数の計算式のうち、前記車両の車軸数および前記載台上にある前記車両の車軸の状況に応じて1つの計算式を選択的に利用して、前記車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を算出する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両計測装置。
【請求項7】
前記速度演算部は、前記載台の前記車両の進行方向の前後中央より後側にかかる荷重、前記載台の前記進行方向の前後中央より前側にかかる荷重および前記車両の車軸間距離、または、これらに加えて前記載台の前記進行方向の前後中央より後側に配置された前記荷重検出器と前記載台の前記進行方向の前後中央より前側に配置された前記荷重検出器との離間距離を用いて、前記車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方を算出する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両計測装置。
【請求項8】
前記指示計は、前記速度演算部で算出された前記車両の速度および加速度のうちいずれか一方又は両方と所定の規制速度又は所定の規制加速度と比較することにより、前記車両の前記載台上での速度超過、急発進および急停止を検出する車両速度監視部を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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