説明

車両認証装置

【課題】 意図しないイグニッションスイッチ操作が行われたときにはエンジン始動等を許可しないようにして車両盗難に対する脆弱さを回避する。
【解決手段】 車両に搭載された車載機(1)からの要求に応じて携帯機(2)から返送されたIDを前記車載機(1)で照合して前記車両の認証を行う認証手段(6)と前記車両の電源遷移を指示するための操作スイッチ(9)とを備えた車両認証装置において、前記車載機(1)は、前記操作スイッチ(9)のアクティブ状態の継続時間を計測する計測手段(5)と、前記継続時間が所定時間を超えたか否かを判定する判定手段(5)と、前記判定手段によって前記操作スイッチ(9)のアクティブ状態の継続時間が所定時間を超えたと判定されたことと前記認証手段(6)の認証結果とに基づいて前記車両の電源遷移制御を実行する制御手段(5)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両認証装置に関し、詳細には、携帯機に登録された車両または携帯機固有の識別情報(以下、ID)を、当該車両に搭載された車載機で照合して当該車両のエンジン始動等の許可を行う車両認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械鍵を使用することなく、エンジン始動等の許可を行うことができる車両認証装置が用いられている。たとえば、特許文献1に記載された車両認証装置(以下、従来技術という。)の要旨は、「イグニッションノブがステアリングロック位置から他の位置に回されると、携帯機へリクエスト信号を送信するとともに携帯機から第1IDを受信し、受信した第1IDを予め登録されているIDと照合し、第1IDが登録IDと一致したらステアリングロックを解除するとともに、エンジンの作動を許可するための第2IDを出力する。そして、エンジン制御手段によって、出力された第2IDを予め記憶しているIDと照合し、一致の照合結果が得られたらエンジンの作動を許可する。」というものである。
【0003】
【特許文献1】特開2001−18754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術にあっては、「イグニッションノブがステアリングロック位置から他の位置に回された」ことをきっかけ(契機)にして、ID認証を行い、その認証結果に従ってステアリングロックの解除やエンジンの始動を許可するという構成になっているため、とりわけ、プッシュ方式のイグニッションスイッチを有する車両にあっては、以下のような問題点がある。
【0005】
プッシュ方式のイグニッションスイッチとは、ノブ式のイグニッションスイッチのように“回す動作”が不要で、単に指先でプッシュ(押す)するだけで済む簡便操作のスイッチのことであり、その優れた操作性から、今日、多くの車両に使用されているところである。
【0006】
さて、このようなプッシュ方式のイグニッションスイッチにおいては、その優れた操作性の裏返しで、たとえば、間違って指先が触れるなどして、不本意なイグニッション操作が行われてしまうおそれがある。もちろん、ノブ式のイグニッションスイッチでもそのような不本意な操作はあり得るが、プッシュ方式のイグニッションスイッチに比べて、その可能性は格段に低く、ほとんどないといっても差し支えない。回すという余計な動作が必要だからである。
【0007】
今、プッシュ方式のイグニッションスイッチを有する車両に、前記の従来技術を適用した場合を考える。この場合、意図したイグニッション操作が行われたときには何らの不都合もない。そのイグニッション操作を契機にして、第1IDの照合→ステアリングロック解除→第2IDの照合→エンジン始動の許容の順番を辿り、最終的に、意図したとおりのエンジン始動を行うことができるからである。
【0008】
しかしながら、不本意なイグニッション操作(間違って押してしまった)が行われたときには、不都合を招くことがある。たとえば、不本意なイグニッション操作を行った当人(多くの場合、携帯機を所持する運転者)が操作後に、その場を離れてしまった場合などである。このような場合、不本意であっても、そのイグニッション操作を契機にして、第1IDの照合→ステアリングロック解除→第2IDの照合→エンジン始動の許容という処理が滞りなく行われるため、万が一であるが、運転者が離れている隙に、悪意の第三者に車両を乗っ取られてしまうおそれがある。
【0009】
このように、従来技術にあっては、とりわけプッシュ式のイグニッションスイッチを有する車両において、不本意なスイッチ操作を行った際の車両乗り逃げの可能性を否めず、車両盗難に対して脆弱さがあるという問題点がある。
【0010】
そこで本発明は、意図しないイグニッションスイッチ操作が行われたときにはエンジン始動等を許可しないようにして車両盗難に対する脆弱さを回避した車両認証装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、車両に搭載された車載機からの要求に応じて携帯機か
ら返送されたIDを前記車載機で照合して前記車両の認証を行う認証手段と前記
車両の電源遷移を指示するための操作スイッチとを備えた車両認証装置において
、前記車載機は、前記操作スイッチのアクティブ状態の継続時間を計測する計測
手段と、前記継続時間が所定時間を超えたか否かを判定する判定手段と、前記判
定手段によって前記操作スイッチのアクティブ状態の継続時間が所定時間を超え
たと判定されたことと前記認証手段の認証結果とに基づいて前記車両の電源遷移
制御を実行する制御手段とを備えていることを特徴とする車両認証装置である。
請求項2記載の発明は、前記所定時間は、運転者が、前記電源遷移制御信号を
発生するためのスイッチを意図して操作したものとみなせる時間として設定され
ていることを特徴とする請求項1記載の車両認証装置である。
請求項3記載の発明は、前記制御手段は、さらに、車両のフットブレーキが踏
まれているときに前記車両のエンジン始動を許容することを特徴とする請求項1
記載の車両認証装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、意図しないイグニッションスイッチ操作が行われたときにはエンジン始動等を許可しないようにして車両盗難に対する脆弱さを回避した車両認証装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態に係るシステム概念図である。この図において、車載機1は、一般的にECU(Electoronic Control Unit)またはBCM(Body Control Module)などと呼ばれるものであり、たとえば、エンジンルームや車室内に設置されるものである。携帯機2は、当該車両の正当な運行者(所有者等)によって携帯されるものであり、この携帯機2はリモコンと呼ばれることもある。
【0014】
車載機1は、信号波形整形部3、信号状態判定部4、制御部5、認証部6、通信部7及び電源遷移部8を含む。これらは1つのユニットで構成されていてもよいし、いくつかのユニットに分かれて構成されていてもよい。
【0015】
信号波形整形部3は、運転者によって適宜に操作されるプッシュスイッチ9からのスイッチ信号P1を取り込み、チャッタリング等の波形の乱れを除去して整形した二値化信号(以下、二値化スイッチ信号P2という。)を生成出力する。プッシュスイッチ9はモーメンタリ式の押しボタンスイッチであり、押しボタンが押されている時に接点が導通しまたは非導通になるタイプのものである。また、信号波形整形部3は抵抗器とコンデンサ等の素子を用いて構成することができるが、他の素子を用いて実現しても構わない。
【0016】
信号状態判定部4は、二値化スイッチ信号P2の論理状態を判定して、その判定信号P3を出力する。ここで、二値化スイッチ信号P2は、電圧レベルがハイレベル(論理値1)とローレベル(論理値0)のいずれかの状態を持つ信号であり、いずれか一方の論理値を、プッシュスイッチ9が操作されたこと(押しボタンが押されたこと)を表す論理値としている。説明の便宜上、論理値が0の場合を「プッシュスイッチ9が操作された」とする。つまり、プッシュスイッチ9の押しボタンが押されている間のみ二値化スイッチ信号P2の論理値が0になるものとする。
【0017】
この信号状態判定部4は、二値化スイッチ信号P2の論理値が0である場合に、その判定信号P3を“アクティブ”にして出力し、そうでない場合に、その判定信号P3を“インアクティブ”にして出力する。なお、この判定信号P3も、論理値1と論理値0の二値化信号であり、以下、説明の便宜上、判定信号P3が論理値1のときに“アクティブ”、論理値0のときに“インアクティブ”であるものとする。
【0018】
この信号状態判定部4はプログラム制御方式の制御要素(コンピュータ)によって実現することができる。具体的には、コンピュータの入力ポートから二値化スイッチ信号P2を読み込み、その電圧レベルがハイレベルかローレベルのどちらであるかを判定し、その判定結果に対応した論理値を持つ判定信号P3を出力ポートから取り出せばよい。
【0019】
制御部5は、たとえば、プログラム制御方式の制御要素(コンピュータ)であって、当該コンピュータ内の不揮発性記憶要素(一般的にROMまたはPROM)に組み込まれた制御プログラムに従い、認証部6に対する認証処理の開始指示を行うと共に、認証部6における認証の結果、携帯機2が正当なものであると判断された場合に、電源遷移部8に対する電源遷移制御の指示を行う。また、車両認証制御装置にステアリングロックユニットが含まれている場合は、認証の際に、このステアリングロックユニットに対しても、ロック解除制御の指示を行う。なお、上記の「電源遷移制御」には、プッシュスイッチ9を押す度に行われるOFF→ACC→IG→OFF→ACCの巡回的な電源遷移制御と、この巡回的な電源遷移制御中の特定段階(IG)で行われるエンジン始動とが含まれるが、両者の区分けは、たとえば、フットブレーキスイッチ信号に基づいて行ってもよい。
【0020】
認証部6は、通信部7を介して乗員が携帯する携帯機2から返送されたIDを受け取ってそのIDを照合して認証を行う。通信部7は、LF帯の微弱無線で送信を行う送信部(不図示)及びその送信アンテナ7aと、UHF帯の微弱無線で受信を行う受信部(不図示)及びその受信アンテナ7bとを含み、携帯機2の通信部2aとの間で認証に必要な情報(ID)の要求及びその情報の受信を行う。
【0021】
電源遷移部8は、制御部5からの制御指示に応答して、たとえば、IGリレーやACCリレーの動作信号を発生し、それらのリレーに出力する。
【0022】
ここで、車載機1の認証部6と携帯機2には、それぞれ認証のための照合情報(ID)が格納されている。図中のID記憶部2b、6aは、そのための記憶要素である。ID記憶部2b、6aに格納されている各IDは同じものであってもよいし、何らかの関連付けがなされた異なる情報であってもよい。
【0023】
このような構成において、プッシュスイッチ9が操作されると、信号波形整形部3から出力される二値化スイッチ信号P2が論理値0となり、これにより、信号状態判定部4から出力される判定信号P3の信号状態が“インアクティブ”から“アクティブ”へと変化する。
【0024】
制御部5は、後で詳述するように、判定信号P3のアクティブ変化に応答して、認証部6に対して認証開始を指示し、認証部6は、この指示に従い、通信部7を介して乗員が携帯する携帯機2との間で認証を行い、その認証結果を制御部5に通知する。制御部5は、認証部6から通知された認証結果が、「携帯機2は正当なものである」および「判定信号P3が所定時間(後述のT)を経過してアクティブを継続している」を示していることを条件(以下、特定条件という)として、電源遷移部8に対して電源遷移制御の許容指示を行う。
【0025】
次に、本実施形態の制御プログラムを説明する。
図2は、本実施形態の制御プログラムのフローを示す図である。この制御プログラムは、車載機1の制御部5において定期的に実行されるものである。プログラムを開始すると、まず、判定信号P3の状態(アクティブ/インアクティブ)を判定する(ステップS1)。
【0026】
インアクティブの場合は、次に、所定時間Tのカウントを停止(ステップS2)した後、所定時間Tが経過したか否かを判定し(ステップS3)、経過していなければ、所定時間Tのカウントをクリア(ステップS7)してフローを終了する。一方、ステップS3で所定時間Tの経過が判定された場合は、認証完了か否かを判定し(ステップS4)、認証完了でなければ、そのままフローを終了し、認証完了であれば、その認証結果に基づいて、電源遷移制御許容(ステップS6)後にフローを終了するか、それとも、同許容を行わずに(つまり、電源遷移制御を禁止したまま)フローを終了するかを判定する(ステップS5)。
【0027】
ここで、ステップS5における「認証結果?」は、図示の都合から簡略化した表現である。この表現は、正確には、認証部6における認証の結果が「携帯機2は正当なものである」ことを示しているか否かを判定することを意味する。また、このステップS5の判定は、ステップS3における「所定時間T経過?」の判定結果がYESのときに行われるため、結局、ステップS5で「携帯機2は正当なものである」ことが判定された場合は、所定時間Tの経過も同時に判定されていることとなる。したがって、このステップS3とステップS5は、前記の「特定条件」、すなわち、認証部6から通知された認証結果が、「携帯機2は正当なものである」および「判定信号P3が所定時間Tを経過してアクティブを継続している」を示しているか否かを判定するためのものである。
【0028】
判定信号P3がアクティブの場合は、次に、判定信号P3の状態に変化があったか否かを判定する(ステップS8)。先回のフロー実行時の判定信号P3の状態が「インアクティブ」であった場合は、判定信号P3の状態に変化があったと判定し、そうでなかった場合(先回のフロー実行時の判定信号P3の状態が「アクティブ」であった場合)は、変化なしと判定する。次に、判定信号P3の状態に変化があった場合、すなわち、インアクティブからアクティブへと変化した場合は、所定時間Tのカウントを開始(ステップS9)すると共に、認証完了を判定する(ステップS10)。そして、認証完了であれば、所定時間T経過を判定し(ステップS13)、認証完了でなければ、認証中であるか否かを判定し(ステップS11)、認証中であれば、所定時間T経過を判定(ステップS13)する一方、認証中でなければ、認証部6に対して認証処理の開始指示(ステップS12)を行ってから、所定時間T経過を判定(ステップS13)する。
【0029】
ステップS13で所定時間Tの経過を判定すると、次に、認証完了か否かを判定し(ステップS14)、認証完了でなければ、そのままフローを終了し、認証完了であれば、その認証結果に基づいて、電源遷移制御許容(ステップS16)後にフローを終了するか、それとも、同許容を行わずに(つまり、電源遷移制御を禁止したまま)フローを終了するかを判定する(ステップS15)。
【0030】
ここで、ステップS15における「認証結果?」も、前記のステップS5における「認証結果?」と同様に、認証部6における認証の結果が「携帯機2は正当なものである」ことを示しているか否かを判定することを意味する。また、このステップS15の判定は、ステップS13における「所定時間T経過?」の判定結果がYESのときに行われるため、結局、ステップS15で「携帯機2は正当なものである」ことが判定された場合は、所定時間Tの経過も同時に判定されていることとなる。したがって、このステップS13とステップS15は、前記の「特定条件」、すなわち、認証部6から通知された認証結果が、「携帯機2は正当なものである」および「判定信号P3が所定時間Tを経過してアクティブを継続している」を示しているか否かを判定するためのものである。
【0031】
次に、本実施形態の具体的な動作を説明する。
図3は、判定信号P3の状態と電源遷移制御許容(または禁止)のタイムシーケンスを示す図である。なお、この図でいう「電源遷移制御」には、プッシュスイッチ9を押す度に行われるOFF→ACC→IG→OFF→ACCの巡回的な電源遷移制御と、この巡回的な電源遷移制御中の特定段階(IG)で行われるエンジン始動とが含まれるが、両者の区分けは、たとえば、フットブレーキスイッチ信号(図1参照)に基づいて行うことができる。具体的には、フットブレーキスイッチ信号が「フットブレーキの踏み込み状態」を示していれば、IGからエンジン始動に至る電源遷移制御とし、そうでなければ、プッシュスイッチ9を押す度に、上記の巡回的な電源遷移制御を繰り返すようにすればよい。これは、「フットブレーキの踏み込み状態」で行われるプッシュスイッチ9の操作は、エンジンの始動を意図して行われる操作であると判断して差し支えないからである。または、エンジン始動の際には、「フットブレーキの踏み込み状態」を維持していることが、安全性の確保、つまり、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防止する観点からも重要だからである。
【0032】
まず、意図した押しボタン操作(プッシュスイッチ9の操作)が行われた場合の単純な例(a)で説明する。この(a)において、今、時刻t0で判定信号P3がインアクティブからアクティブに変化し、所定時間Tを越えた時刻t2で判定信号P3がアクティブからインアクティブに変化(復帰)したものとする。所定時間Tは、運転者がプッシュスイッチ9を意図して操作したものとみなせる時間として設定されている。つまり、誤って押しボタンを押したような場合には、判定信号P3がアクティブである時間は所定時間T未満になると想定している。
【0033】
認証結果が前記の「特定条件」、すなわち、「携帯機2は正当なものである」および「判定信号P3が所定時間Tを経過してアクティブを継続している」を示している場合には、この例では、認証結果が得られた時刻t3を以て、電源遷移部8に対して電源遷移制御を許容する。
【0034】
次に、図3の(a)〜(c)において、時刻t0(t00)以前の判定信号P3はインアクティブであるので、同時刻t0(t00)以前においては、ステップS1で「インアクティブ」が判定される。このため、ステップS2の「所定時間Tのカウント停止」からステップS3に進み、このステップS3で「所定時間T経過?」を判定するが、この段階では、まだ、所定時間Tのカウントが行われていないため、ステップS3の判定結果がNOとなり、ステップS7の「所定時間Tのカウントクリア」を経て、フローを終了する。
【0035】
したがって、同時刻t0(t00)以前においては、単に、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS7→終了のループを繰り返すだけである。
【0036】
さて、図3の(a)〜(c)において、時刻t0(t00)の時点で判定信号P3の状態がインアクティブからアクティブに変化すると、ステップS1の判定結果が「アクティブ」になる。このとき、時刻t0(t00)直前の判定信号P3の状態が「インアクティブ」であったので、インアクティブからアクティブへの変化となり、ステップS8の判定結果がYESとなって、ステップS9の「所定時間Tのカウント開始」を実行した後、ステップS10で「認証完了?」を判定する。
【0037】
この段階では、まだ、認証を開始していないので、ステップS10の判定結果がNOとなり、且つ、ステップS11の「認証中?」の判定結果も当然ながらNOとなり、ステップS12に進んで「認証開始指示」を実行する。これにより、図3の(a)〜(c)における認証処理(ハッチング部分)がスタートする。その後、ステップS13で「所定時間T経過?」を判定するが、この段階では、まだ、所定時間Tのカウントを開始(ステップS9)したばかりなので、ステップS13の判定結果はNOとなり、そのままフローを終了する。
【0038】
したがって、同時刻t0(t00)の時点においては、所定時間Tのカウント開始と認証処理の開始指示とが行われる。
【0039】
次に、図3の(a)において、時刻t0から所定時間T経過(t1)直前までの間、ステップS1の判定結果は「アクティブ」のままになる。このため、ステップS8の判定結果がNOとなって、ステップS13で「所定時間T経過?」を判定するが、この段階では、まだ、所定時間Tを経過していないので、そのままフローを終了する。
【0040】
したがって、時刻t0から所定時間T経過(t1)直前までの間においては、単に、所定時間Tをカウントしながら、ステップS1→ステップS8→ステップS13→終了のループを繰り返すだけである。
【0041】
次に、図3の(a)において、時刻t1の時点、つまり、所定時間Tを経過した時点では、ステップS13の判定結果がYESとなり、ステップS14に進んで「認証完了?」を判定するが、この時点(時刻t1)では、まだ、認証中であるので、そのままフローを終了する。
【0042】
したがって、時刻t0から所定時間T経過(t1)までの間においても、単に、所定時間Tをカウントしながら、ステップS1→ステップS8→ステップS13→終了のループを繰り返すだけである。
【0043】
次に、図3の(a)において、時刻t2の時点、つまり、所定時間Tの経過後で且つ認証処理中の時点では、ステップS14の判定結果がNOのままであるため、同様に、そのままフローを終了する。
【0044】
したがって、時刻t0から所定時間T経過(t2)までの間においても、単に、所定時間Tをカウントしながら、ステップS1→ステップS8→ステップS13→ステップS14→終了のループを繰り返すだけである。
【0045】
次に、図3の(a)において、時刻t3の時点、つまり、所定時間Tの経過後で且つ認証処理完了の時点では、ステップS14の判定結果がYESになる。こため、時刻t3では、ステップS15で、認証部6から通知された認証結果が、「携帯機2は正当なものである」であるか否かを判定し、その判定結果がYESであれば、ステップS16で電源遷移制御許容を実行した後、フローを終了する一方、その判定結果がNOであれば、そのままフローを終了する。
【0046】
したがって、所定時間T経過後で且つ認証処理完了の時点(時刻t3)では、認証結果に基づく電源遷移制御の許容/または禁止を行うことができる。
【0047】
次に、意図した押しボタン操作(プッシュスイッチ9の操作)が行われた場合の若干複雑な例(b)を説明する。この(b)において、今、時刻t00で判定信号P3がインアクティブからアクティブに変化し、所定時間Tよりも短い時間Txを経過した時刻t11で判定信号P3がアクティブからインアクティブに変化(復帰)すると共に、再び、この時刻t11の後の時刻t12で判定信号P3がインアクティブからアクティブに変化し、さらに、この時刻t12から所定時間Tを経過した時刻t14で判定信号P3がアクティブからインアクティブに変化(復帰)したものとする。認証結果が前記の「特定条件」、すなわち、「携帯機2は正当なものである」および「判定信号P3が所定時間Tを経過してアクティブを継続している」を示している場合には、所定時間Tを経過した時刻t14を以て、電源遷移部8に対して電源遷移制御を許容する。
【0048】
このタイムシーケンス(b)は、判定信号P3が一時的にインアクティブからアクティブへと変化するいわゆるチャッタリング動作を伴う場合の例である。このようにチャッタリング現象は、二度押しが行われたときや、プッシュスイッチ9の劣化に伴う接触不良が発生したときなどに生じる。ただし、チャッタリング期間を示す時間Txは、所定時間Tよりも遙かに短い時間であり、言い換えれば、所定時間Tは、代表的なチャッタリング期間を確実に上回る適切な時間に設定されていることが肝要である。
【0049】
(b)の時刻t11で、判定信号P3がアクティブからインアクティブに変化すると、その時点で、ステップS1の判定結果が「インアクティブ」となり、ステップS2で所定時間Tのカウントが停止される。上記の通り、Tx<Tに設定されているのであるから、この時点では、まだ、所定時間Tを越えていない。このため、ステップS3の判定結果がNOとなり、ステップS7で所定時間Tのカウントをクリアした後、フローを終了する。
【0050】
したがって、(b)の時刻t11の時点では、認証処理を継続したまま、所定時間Tのカウント停止とカウントクリアが行われる。
【0051】
次に、(b)において、判定信号P3が再びアクティブに変化する時点(時刻t12)では、ステップS1の判定結果が「アクティブ」になると共に、ステップS8の判定結果がYESになる。このため、ステップS9で所定時間Tのカウントを開始すると共に、ステップSで「認証完了?」を判定するが、この時点(時刻t12)では、まだ、認証中であるので、ステップS13に進んで「所定時間T経過?」を判定し、所定時間Tを経過していないので、そのままフローを終了する。
【0052】
したがって、(b)の時刻t12の時点では、認証処理を継続したまま、所定時間Tのカウントを再び開始する。
【0053】
次に、(b)において、認証処理の完了時点(時刻t13)では、ステップS1の判定結果が「アクティブ」になると共に、ステップS8の判定結果がNOになるが、この時刻t13では、所定時間Tを経過していないので、ステップS13の判定結果がNOになり、そのままフローを終了する。
【0054】
したがって、(b)の時刻t13の時点では、認証処理を継続したまま、所定時間Tのカウントを続ける。
【0055】
次に、(b)において、所定時間Tの経過時点(時刻t14)では、ステップS1の判定結果が「アクティブ」になると共に、ステップS8の判定結果がNOになり、さらに、ステップS13とステップS14の判定結果が共にYESになる。
【0056】
したがって、(b)の時刻t14の時点では、ステップS15に進み、認証結果に基づく電源遷移制御の許容/または禁止の判定が行われる。つまり、認証部6から通知された認証結果が、「携帯機2は正当なものである」を示していれば、電源遷移制御を許容し、そうでなければ、そのままフローを終了する(実質的な電源遷移制御の禁止)という判定を行う。
【0057】
以上の二つのタイムシーケンス(a)、(b)は、いずれも携帯機2を所持した運転者等によって行われるプッシュスイッチ9の意図的な操作(正当な操作)に基づくものである。(a)と(b)の違いは、チャッタリング現象の有無しかない。これらのタイムシーケンス(a)、(b)から読み取るべき技術思想は、「プッシュスイッチ9の操作時間(判定信号P3のアクティブ期間)が所定時間Tを越えているときにだけ、認証結果に基づく電源遷移制御の許容を行う」ようにした点にある。
【0058】
すなわち、たとえ、認証処理の結果、電源遷移制御の許容を行うことを判定したとしても、プッシュスイッチ9の操作時間(判定信号P3のアクティブ期間)が所定時間Tを越えていない場合には、その操作が不本意なもの、たとえば、間違って指先が触れたことによって行われたものと判断し、悪意の段三者等による車両の乗り逃げといった盗難を防止するためにも、電源遷移制御の許容を行わないようにした点にある。
【0059】
図3のタイムシーケンス(c)は、不本意なプッシュスイッチ9の操作が行われたときのものである。(a)や(b)との違いは、判定信号P3のアクティブ期間が所定時間Tを越えないことにある。
【0060】
この(c)において、今、時刻t00で判定信号P3がインアクティブからアクティブに変化し、所定時間Tよりも短い時間Txを経過した時刻t21で判定信号P3がアクティブからインアクティブに変化(復帰)したものとする。前記のとおり、所定時間Tは、運転者がプッシュスイッチ9を意図して操作したものとみなせる時間として設定されているので、この所定時間Tよりも短い時間Txを経過した時刻t21で判定信号P3がアクティブからインアクティブに変化(復帰)した場合は、所定時間Tに満たない信号変化であるから、明らかに間違った押しボタン操作であると判断することができる。したがって、この場合は、たとえ、「携帯機2は正当なものである」を示していたとしても、電源遷移部8に対して電源遷移制御を許容しない(電源遷移制御の禁止)。
【0061】
このようにすれば、意図しない押しボタン操作(プッシュスイッチ9の操作)が行われた際に、仮に、その操作者が車両を離れた場合であっても、その隙に、悪意の第三者に車両を乗っ取られることがない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施の形態に係るシステム概念図である。
【図2】本実施形態の制御プログラムのフローを示す図である。
【図3】判定信号P3の状態と認証及びエンジン始動許容のタイムシーケンスを示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 車載機
2 携帯機
5 制御部(計測手段、判定手段、制御手段)
6 認証部(認証手段)
9 プッシュスイッチ(操作スイッチ)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載機からの要求に応じて携帯機から返送されたIDを前記
車載機で照合して前記車両の認証を行う認証手段と前記車両の電源遷移を指示す
るための操作スイッチとを備えた車両認証装置において、
前記車載機は、
前記操作スイッチのアクティブ状態の継続時間を計測する計測手段と、
前記継続時間が所定時間を超えたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記操作スイッチのアクティブ状態の継続時間が所定時
間を超えたと判定されたことと前記認証手段の認証結果とに基づいて前記車両の
電源遷移制御を実行する制御手段と
を備えていることを特徴とする車両認証装置。
【請求項2】
前記所定時間は、運転者が、前記電源遷移制御信号を発生するためのスイッチ
を意図して操作したものとみなせる時間として設定されていることを特徴とする
請求項1記載の車両認証装置。
【請求項3】
前記制御手段は、さらに、車両のフットブレーキが踏まれているときに前記車
両のエンジン始動を許容することを特徴とする請求項1記載の車両認証装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−95126(P2010−95126A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267153(P2008−267153)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)