説明

車両走行支援システム、コンピュータプログラム、及び、車両走行支援方法

【課題】路面状態が悪い道路から遠く離れた位置を走行している段階であっても、当該道路における路面状態を考慮して車両を安全に走行させるように、走行支援する。
【解決手段】プローブ車両3aの取得部21は、セーフティ装置10が作動したことを意味する作動情報を、道路位置及び日時の情報を含めて取得する。プローブセンタ2において、収集部22は、路面状態に影響を与える環境についての環境情報を、日時の情報を含めて、1又は複数の道路位置について収集し、環境情報と作動情報とが、道路位置及び日時の情報を関連付けの基準として、関連付けられてデータベース26に蓄積される。判定部23は、所定の道路位置についての環境情報が取得されると、この環境情報と関連付けられている作動情報をデータベース26から検索し、関連付けられている作動情報があると、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性があると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に対して、安全に走行させるための走行支援を行う車両走行支援システム、この車両走行支援システムのためのコンピュータプログラム、及び、走行支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に対して走行支援を行うために、例えば特許文献1に記載されている走行経路の検索装置がある。この装置では、アンチロックブレーキシステムやトラクションコントロールシステムなどのセーフティ装置が作動した道路位置、及び、当該道路位置におけるセーフティ装置の作動回数を、自車両において記憶し、この作動回数が所定回数に達していると、自車両(車載ナビゲーションシステム)が実行する経路探索において、その道路位置を含む道路(道路リンク)について優先度を下げている。これにより、セーフティ装置が作動する可能性が高い道路を避けた経路検索が可能となる。
【0003】
しかし、この特許文献1に記載の装置は、車両が過去に何度か同じ道路(道路リンク)を通過しており、当該道路で過去に何度かセーフティ装置が作動したという履歴があってはじめて、その道路を避けるように経路を検索するものであるため、初めて通る道路の場合は、機能させることができない。
【0004】
そこで、初めて通る道路であっても、安全走行のために有効な経路へと車両を誘導することが可能となる装置が、特許文献2に開示されている。この特許文献2に記載の装置では、経路検索を行う時期が例えば冬季である場合に、路面凍結の可能性が判断される。そして、路面凍結の可能性があると判断されると、外気温度が凍結温度以下であって、セーフティ装置の作動過数が所定回数以上となった場合に、危険回避のために有効となる経路を再検索する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−186941号公報
【特許文献2】特開2004−239739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の装置では、車両を走行させている際に、上記のとおり、外気温度が凍結温度以下であり、セーフティ装置の作動過数が所定回数以上になった場合に、危険回避のために有効となる経路を再検索していることから、路面が凍結している道路に到達していないと、安全運転のための走行支援処理が実行されない。すなわち、ある道路の路面が凍結している場合に、その道路から離れた位置を未だ走行している段階では、当該道路の路面状態を考慮できないため、走行先にある路面が凍結している道路を、事前に回避し難いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、路面状態が悪い道路から離れた位置を走行していても、当該道路における路面状態を考慮して車両を安全に走行させることが可能となる車両走行支援システム、コンピュータプログラム、及び、車両走行支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、路面状態が悪い場合に作動する確率が高くなるセーフティ装置を備えた車両から取得される情報を用いて、車両に対して走行支援を行う車両走行支援システムであって、前記セーフティ装置が作動したことを意味する作動情報を、作動した道路位置及び日時の情報を含めて取得する取得部と、路面状態に影響を与える環境についての環境情報を、日時の情報を含めて、1又は複数の道路位置について収集する収集部と、前記環境情報と前記作動情報とを、前記道路位置及び前記日時の情報を関連付けの基準として、関連付けて蓄積するデータベースと、所定の道路位置についての前記環境情報が取得されると、この環境情報と関連付けられている作動情報を前記データベースから検索し、関連付けられている作動情報があると、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性がある又は悪くなる可能性があると判定する判定部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、路面状態に影響を与える環境についての環境情報が、1又は複数の道路位置について収集され、この環境情報と、セーフティ装置が作動したことを意味する作動情報とが、道路位置及び日時の情報を関連付けの基準として、関連付けられてデータベースに蓄積されている。
(1−1)このデータベースにおいて関連付けられている環境情報と作動情報とが、同じ時間帯を関連付けの基準として関連付けられている場合、すなわち、例えば、朝の時間帯における環境情報と当該朝の時間帯における作動情報とがデータベースに関連付けられている場合、ある日の朝に(現時点で)、車両の走行位置から離れた所定の道路位置についての環境情報が取得され、この環境情報に関連付けられている作動情報が前記データベースから見つけられた場合、これは、この所定の道路位置で、朝の時間帯にセーフティ装置が動作した実績があることを意味しており、本発明によれば、この場合、判定部は、現時点において、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性があると判定する(推定する)。
(1−2)また、前記データベースにおいて関連付けられている環境情報と作動情報とが、離れた時間帯を関連付けの基準として関連付けられている場合、すなわち、例えば、ある日の夜の環境情報と翌朝の作動情報とがデータベースに関連付けられている場合、ある日の夜に、所定の道路位置についての環境情報が取得され、この環境情報に関連付けられている作動情報が前記データベースから見つけられた場合、これは、この所定の道路位置で、その翌朝にセーフティ装置が動作した実績があることを意味しており、本発明によれば、この場合、判定部は、将来(翌朝)において、前記所定の道路位置は路面状態が悪くなる可能性があると判定する(予測する)。
【0010】
このように、離れた道路位置についての環境情報が取得されると、上記のように、当該道路位置における、現時点での又は将来の路面状態を判定することができる。したがって、この判定結果に基づく情報を、例えば、当該道路位置を走行する可能性がある車両に送信し、これを活用させれば、当該道路位置から離れた位置を走行していても又は走行する場合であっても、当該道路位置における路面状態を考慮して前記車両を安全に走行させることが可能となる。
【0011】
(2)また、前記セーフティ装置が作動した際の時間帯における環境についての環境情報以外に、前記セーフティ装置が作動した時間帯よりも前の時間帯における環境についての環境情報を、前記作動情報と関連付けて前記データベースは記憶するのが好ましい。
このデータベースによれば、セーフティ装置の作動が、当該セーフティ装置が作動した時間帯の環境以外に、それよりも前の時間帯における環境の影響を受けている場合に、有効となる。例えば当日の朝の時間帯における環境以外に、前夜の環境も考慮して、路面状態の判定が可能となる。すなわち、前記(1−2)のように、将来において、所定の道路位置は路面状態が悪くなる可能性があると予測することが可能となる。
【0012】
(3)また、車両が目的地に到達するまでの経路を探索する経路探索部を更に備え、前記判定部によって、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性があると判定されると、前記経路探索部は、当該所定の道路位置の優先度を下げる。
この場合、路面状態が悪い可能性がある道路位置を通らないような経路探索が、経路探索部によって実行される。
【0013】
(4)また、この(3)の場合において、定常的に路面状態が悪くなる道路位置についての情報を入手する入手部を更に備え、前記判定部によって、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性があると判定されても、当該所定の道路位置が、前記定常的に路面状態が悪くなる道路位置である場合には、前記経路探索部は、当該所定の道路位置の優先度を下げる処理をしないのが好ましい。
例えば降雪量が多い地域では、定常的に路面状態が悪くなる道路位置は多数出現することから、前記経路検索部が、このような道路位置に関して優先度を下げてばかりいると、経路探索に支障をきたすおそれがある。しかし、上記のとおり、優先度を下げる処理をさせないことで、このような降雪量が多い地域では、通常の経路探索を行わせることが可能となる。
【0014】
(5)また、前記車両走行支援システムは、前記判定部による判定結果についての情報を取得し、当該判定結果をドライバに報知させる車載装置を備えていてもよい。
この場合、前記判定部によって、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性があると判定されると、車載装置によって、その判定結果をドライバに報知させることができる。
【0015】
(6)また、この(5)の場合において、定常的に路面状態が悪くなる道路位置についての情報を入手する入手部を更に備え、前記判定部によって、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性があると判定されても、当該所定の道路位置が、前記定常的に路面状態が悪くなる道路位置である場合には、前記車載装置は、前記判定結果のドライバへの報知を制限するのが好ましい。
例えば降雪量が多い地域では、定常的に路面状態が悪くなる道路位置は多数出現することから、前記車載装置は、路面状態が悪い可能性があることを報知する頻度が高くなってしまい、ドライバにとって煩わしくなるおそれがある。しかし、上記のとおり、判定結果のドライバへの報知を制限することにより、これを防ぐことができる。
【0016】
(7)また、本発明のコンピュータプログラムは、前記車両走行支援システムを構成する機能部(取得部、収集部及び判定部)の各機能を実行させるためのものであり、当該車両走行支援システムと同様の作用効果を奏する。なお、このコンピュータプログラムに含まれている各ステップは、複数のコンピュータによって実行されていてもよい。
(8)また、本発明の車両走行支援方法は、前記車両走行支援システムが実行する方法であり、当該車両走行支援システムと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、現在の車両の走行位置から離れた道路位置についての環境情報が取得されると、当該道路位置における路面状態を判定することができ、この判定結果に基づく情報を、例えば、当該道路位置を走行する可能性がある車両に送信し、これを活用させれば、当該道路位置から離れた位置を走行していても、当該道路位置における路面状態を考慮して前記車両を安全に走行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】車両走行支援システムを有するプローブ情報システムを示す全体構成図である。
【図2】(a)は環境情報の説明図であり、(b)は作動情報の説明図である。
【図3】データベースの説明図である。
【図4】データベースの構築方法の説明図である。
【図5】センタコンピュータの機能を説明するフロー図である。
【図6】プローブ車両に対して車両走行支援を行う場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、車両走行支援システムを有するプローブ情報システム1を示す全体構成図である。このプローブ情報システム1は、インフラ(インフラストラクチャー)側の装置であるプローブセンタ2と、道路を走行する多数のプローブ車両3(3a,3b)に搭載されている車載装置4とを備えている。車両走行支援システムは、プローブ車両3(3b)に対して、安全に走行させるための走行支援を行う機能を有している。
【0020】
プローブ車両3は、ドライバの搭乗席(図示せず)を有する車体9を備え、この車体9に、エンジン、ブレーキ装置及び速度検出器等が搭載されている他に、車載装置4、及び、プローブ車両3の各部を制御する電子制御装置(ECU)11が搭載されている。
ECU11は、ドライバのアクセル操作に基づくエンジンの駆動制御や、ブレーキ操作に基づく制動制御等の他、前記セーフティ装置10の動作を監視するなどの制御を行う。
【0021】
車載装置4は、車載コンピュータ17、この車載コンピュータ17の通信インタフェースに接続された通信装置16の他に、ドライバに対するヒューマンインタフェースとしてのディスプレイ19及びスピーカ装置20を備えており、また、GPSやDGPS等よりなる位置検出部15と、時刻修正機能を有する電波時計等よりなる時計装置18とが、車載コンピュータ17のインタフェースに接続されている。
【0022】
また、プローブ車両3(3a)は、例えば路面凍結など路面状態が悪い場合に作動する確率が高くなるセーフティ装置10を備えている。セーフティ装置10は、例えばアンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)などの危険回避手段である。例えば、降雨時の後の濡れた路面や、凍結した路面では、このセーフティ装置10が作動する確率が高くなる。
【0023】
後にも説明するが、プローブ車両3aが、例えば凍結路面を走行している際に、セーフティ装置10が動作すると、当該プローブ車両3aはその情報(作動情報)を取得することができ、この情報がプローブ情報D1としてプローブセンタ2に送信され、プローブセンタ2において、走行支援のための処理が実行される。この走行支援は、本実施形態では、前記プローブ情報D1を送信したプローブ車両3aではなく、その他のプローブ車両3bのために実行される。プローブ車両3a及びプローブ車両3bは、同じ構成であり、これらプローブ車両3a,3bをまとめて説明する際、プローブ車両3としている。
【0024】
各プローブ車両3の車載装置4は、インターネット等のネットワーク5に無線で通信可能な通信インタフェースである前記通信装置16と、通信装置16で受信した各種情報及びプローブ車両3自身において取得された情報(後述の作動情報や環境情報)を処理する前記車載コンピュータ17とを備えている。車載コンピュータ17は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなコンピュータ等よりなる。
【0025】
車載装置4は、プローブ車両3に搭載されているものであればその構造は何ら限定されるものではなく、例えば、プローブ車両3に備え付けであって通信機能を有している専用の車載端末装置であってもよいし、通信装置16が携帯電話機であってこの携帯電話機を車載コンピュータ17に接続して構成したものであってもよい。
【0026】
各プローブ車両3の車載装置4(車載コンピュータ17)は、所定の時間ごと、又は、所定の走行距離ごとにプローブ情報D1を生成し、自身の車両IDをそのプローブ情報D1に含めてネットワーク5に送信する。
プローブ情報D1は、実際に道路を走行するプローブ車両3において得られる情報のことをいい、車両ID、車両位置(位置情報)、車両時刻(日時情報)及び車両速度(速度情報)等がこれに含まれる他、環境についての環境情報も含まれる。この環境情報とは、現在走行している道路における環境を示す情報であり、例えば気温や湿度などである。このために、プローブ車両3は温度計や湿度計を有している。なお、前記車両時刻(日時情報)には時刻の他に、年月日も含まれる。
【0027】
プローブセンタ2は、前記ネットワーク5に接続された通信インタフェースである通信装置6と、この通信装置6で受信した各種情報を処理するセンタコンピュータ7とを備えている。センタコンピュータ7は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなサーバコンピュータ等よりなる。
プローブセンタ2は、ネットワーク5の通信範囲に存在するプローブ車両3の車載装置4との間で双方向通信が可能である。
【0028】
センタコンピュータ7は、ネットワーク5を通じて通信装置6が受信した各プローブ車両3からの前記プローブ情報D1を取得及び収集することができる。そして、センタコンピュータ7は、車両IDごとに収集したプローブ情報D1に基づいて、例えば、渋滞状況及びリンク旅行時間等よりなる交通情報D2を生成することができる。
【0029】
また、センタコンピュータ7は、取得したプローブ情報D1(特に、日時情報、位置情報及び環境情報)に基づいて、センタコンピュータ7に接続されているデータベース26に各種情報を蓄積する処理を行う。そして、情報が多数蓄積されたデータベース26を利用して、所定の道路位置における路面状態を判定(推定・予測)する処理を行う。さらに、判定した結果を判定情報D3として生成し、前記交通情報D2及び前記判定情報D3は、通信装置6によって、ネットワーク5に送信され、各プローブ車両3は、これら情報D2,D3を取得し、車両走行支援に活用することができる。なお、判定情報D3に基づく処理については後に説明する。
【0030】
〔車両走行支援システムの概略構成〕
車両走行支援システムが、各種の処理を実行するために、当該支援システムは、コンピュータプログラムが実行する機能実現手段として、取得部21、収集部22、判定部23、経路探索部24、及び、入手部25を有している。
そこで、本実施形態では、車載装置4が、当該車載装置4(車載コンピュータ17)のコンピュータプログラムによって実行される機能実現手段として、前記取得部21を有しており、センタコンピュータ7が、当該センタコンピュータ7のコンピュータプログラムによって実行される機能実現手段として、前記収集部22、前記判定部23、前記経路探索部24、及び、前記入手部25を有している。なお、これら機能実現手段(機能部)の配置は、これ以外であってもよく、例えば経路探索部24は車載装置4が有していてもよい。
【0031】
〔本実施形態に係る車載装置の構成〕
車載コンピュータ17は、所定の各機能を実行するプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムによって実行される機能部として、前記取得部21を有している。この取得部21は、プローブ車両3に搭載されているセーフティ装置10が作動したことを意味する「作動情報」を、作動した道路位置及び日時の情報を含めて取得する機能を有している。なお、前記道路位置の情報は、セーフティ装置10が作動した道路位置(道路リンク)を意味する情報であり、前記日時の情報は、セーフティ装置10が作動した日時を意味する情報である。
【0032】
例えば、ある道路を走行している際に、路面が凍結しており、セーフティ装置10が作動すると、作動した旨の情報、作動した道路の位置についての位置情報、作動した時刻についての時刻情報が「作動情報」として、取得部21が取得する。
そして、プローブ車両3側において、取得部21により取得された前記「作動情報」を、プローブ情報D1に含ませ、当該プローブ情報D1は、通信装置16によってネットワーク5に送信される。
【0033】
〔本実施形態に係るセンタコンピュータの構成〕
センタコンピュータ7は、所定の各機能を実行するプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムが実行する機能部として、前記収集部22、前記判定部23を有しており、さらに、本実施形態では、前記経路探索部24、及び、前記入手部25を有している。さらに、プローブセンタ2は、前記データベース24を備えており、「環境情報」と「作動情報」とを、道路位置及び時刻の情報を関連付けの基準として、関連付けて蓄積する。
【0034】
前記ネットワーク5から「作動情報」を含むプローブ情報D1を、通信装置6が受信することにより、前記収集部22は「作動情報」を取得収集することができる。さらに、前記収集部22は、路面状態に悪影響を与える環境(気温など)についての「環境情報」を、その環境にある日時の情報を含めて、1又は複数の道路位置について収集する機能を有している。上記のとおり、プローブ車両3から「環境情報」を取得してもよいが、他の装置から取得してもよい。他の装置としては、例えば各地に点在している観測所(地域気象観測所)に設けられている観測装置8であり、この場合、気温の他に、雨・晴れなどの天候、降雨量、降雪量についての情報も収集することができる。観測所からは、これら環境情報と共に、観測所の位置の情報、観測日時についての日時情報も、収集部22によって取得される。なお、ここでは、観測所の位置は、その近くに存在している道路の位置に置き換えられる。
【0035】
前記プローブ情報D1には、位置情報及び時刻情報が含まれていることから、プローブセンタ2側では、「作動情報」に基づいて、セーフティ装置10が作動した道路位置、作動した時刻を認識することができ、また、「環境情報」に基づいて、その環境情報が意味している環境を有していた道路位置、その環境にあった時刻を認識することができる。
【0036】
収集部22は、センタコンピュータ7に接続されているデータベース26に「作動情報」と「環境情報」とを関連付けて蓄積する処理を行う。
前記判定部23は、所定の道路位置についての「環境情報」が取得されると、この「環境情報」と関連付けられている「作動情報」を前記データベース26から検索し、関連付けられている「作動情報」が見つかると、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性がある又は悪くなる可能性があると判定する。前記収集部22及び判定部23による処理、及び、データベース26については後に説明する。
【0037】
前記経路探索部24は、プローブ車両3が目的地に到達するまでの経路を探索する機能を有している。つまり、車両ナビゲーションシステムとしての機能である。経路探索部24は、出発地から目的地までの最適経路を所定の探索ロジックを用いて探索し、探索結果である最適経路を、プローブ車両3のディスプレイ19を介して画像により案内することができる。なお、本実施形態では、経路探索部24をセンタコンピュータ7が備えているので、検索結果(最適経路)を検索結果情報として、ネットワーク5に送信し、この情報をプローブ車両3が取得することで、最適経路を、ディスプレイ19を介して画像により案内することができる。
最適経路の探索方法として、出発地から目的地まで移動する際に必要となるリンクコスト(例えば、時間)が最小となる経路を算出する方法がある。この探索ロジックとしては、従来知られているロジックを採用することができ、例えばダイクストラ法やポテンシャル法がある。
【0038】
前記入手部25は、定常的に路面状態が悪くなる道路位置についての情報を入手する機能を有している。この入手部25は、プローブセンタ2において、管理者が入力してもよく、又は、前記気象観測所からの情報に基づいて入手してもよい。なお、定常的とは、年間を通じて定常的でなくてもよく、季節を通じて定常的であってもよい。例えば、冬季のみ定常的に(慢性的に)路面が凍結する道路(道路リンク)についての情報(位置情報)を、入手部25は入手することができる。
【0039】
このように、センタコンピュータ7と車載コンピュータ17との共同によって、本発明の車両走行支援システムによる走行支援方法を行うためには、その走行支援のためのコンピュータプログラムを、センタコンピュータ7及び車載コンピュータ17それぞれにインストールすればよい。コンピュータプログラムは、CD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体に格納されており、譲渡等することができる。また、このプログラムの譲渡は、ネットワーク経由でダウンロード可能に格納されたサーバから、ダウンロードされることで行われてもよい。
前記の各機能実現手段(機能部)よって実行される走行支援の手順については、後に説明する。
【0040】
〔データベース26について〕
前記プローブ車両3及び前記観測所の観測装置8が「環境情報」を取得すると、その情報が、プローブセンタ2に無線によって(観測装置8からは有線であってもよい)送信される。すると、センタコンピュータ7の収集部22は、この「環境情報」を収集し、データベース26にその情報を蓄積する。
【0041】
例えば、道路位置(道理リンク)Aに関して「環境情報」が取得されたとする。図2(a)に示しているように、この「環境情報」は、気温が”−1℃”であり、天候が”晴れ”を意味する情報である。さらに、この「環境情報」には、この環境を有している位置の情報として”道路位置A”、日時情報として”2月1日AM6:00”が含まれる。また、道路位置Aについて、その他である2月3日、2月4日にも「環境情報」が取得されている。また、他の道路(道路位置B、C・・・)についても、「環境情報」が取得されており、これら情報が、収集部22によって収集される。
【0042】
また、これとは別に、プローブ車両3a(前記車載コンピュータ17の前記取得部21)が「作動情報」を取得すると、この情報は、プローブ情報D1に含まれてプローブセンタ2側に無線によって送信され、センタコンピュータ7の収集部22によって収集される。さらに、収集部22によって、データベース26にその情報が蓄積される。
例えば、道路位置Aを走行しているプローブ車両3−1において、セーフティ装置(ABS)10が作動し、当該プローブ車両3−1の前記取得部21が「作動情報」を取得したとする。この場合、図2(b)に示しているように、この「作動情報」は、セーフティ装置10が作動したことを示す情報(ABS”ON”)であり、さらに、この「作動情報」には、セーフティ装置10が作動した位置の情報として”道路位置A”、及び、作動した日時情報として”2月1日AM6:30”が含まれる。また、他の道路(道路位置B、C・・・)、他のプローブ車両3−2,3−3についても、それぞれ「作動情報」が取得されており、これら情報が、収集部22によって収集される。
【0043】
そして、収集部22は、図2(a)の「環境情報」と、図2(b)の「作動情報」とを、道路位置(位置情報)及び日時の情報を関連付けの基準として、関連付けてデータベース26に蓄積する。すなわち、図2(a)と(b)とに基づくと、道路位置Aに関して、2月1日の同じ時間帯(朝の時間帯)に、気温が−1℃であり、セーフティ装置10(ABS)が作動していることから、収集部22は、図3に示しているように、気温”−1℃”という「環境情報」と、ABS”ON”という「作動情報」とを関連付けて、データベース26に記憶させる(関連付け<1>)。これは、同じ道路位置Aに関して同じ時間帯を関連付けの基準として「環境情報」と「作動情報」とを関連付けたものである。
【0044】
これと同様に、図3に示しているように、道路位置Bに関して、2月4日に「環境情報」及び「作動情報」が同じ時間帯に取得されていることから、「環境情報」と「作動情報」とを関連付けて、データベース26に記憶させている(関連付け<2>)。
なお、関連付け<1>及び<2>では、「作動情報」と「環境情報」とが1対1で関連付けられている。
このデータベース26の情報を用いて、前記判定部23等が行う処理の具体例は後に説明する。
【0045】
さらに、「環境情報」と「作動情報」とを関連付けるために基準となる日時は、上記のとおり、同日の同じ時間帯のみならず、離れた時間帯、例えば異なる日の所定の時間帯であってもよい(関連付け<3>)。すなわち、異なる日の所定の時間帯として、連続する2日の各時間帯であり、図2(a)によれば、道路位置Cに関して、2月3日23:00には「環境情報」として”7℃、雨”が取得されており、図2(b)によれば、その翌日(翌朝)である2月4日6:15に、同じ道路位置Cにおいて、車両3−3でセーフティ装置10が作動している。すなわち、この道路位置Cでは、前夜に雨が降ると、その翌朝は路面状態が悪くなっており(路面が凍結しており)、車両3−3でセーフティ装置10が作動している。
【0046】
そこで、収集部22は、図3に示しているように、位置情報として”道路位置C”、日時情報として、連続する2日の”1日目の夜”と”その翌朝”を関連付けの基準として、”7℃(雨)”という「環境情報」と、ABS”ON”という「作動情報」とを関連付けて、データベース26に記憶させる(関連付け<3>)。
【0047】
このように、データベース26には、セーフティ装置10が作動した際の時間帯(例えば朝の時間帯)における環境についての「環境情報」以外に、セーフティ装置10が作動した時間帯(朝)よりも前の時間帯(その前夜)における環境(降雨)についての「環境情報」が、「作動情報」と関連付けられて記憶されている。このような、異なる日時(離れた時間帯)に基づいて関連付けされているデータベース26によれば、当日(の夜)の環境も考慮して、翌日の路面状態の判定が可能となる。
【0048】
すなわち、次の日の朝に、道路位置Cを通行する経路によってプローブ車両3を運転して目的地まで移動しようとする場合に、その前日(当日)の夜に道路位置Cで雨が降っており、そのことを意味する「環境情報」が取得されると、前記データベース26を検索すれば、当該道路位置Cでは、この「環境情報」に関連付けられている「作動情報」が見つかるので、この道路位置Cは、翌朝、路面状態が悪くなる可能性があると、前記判定部23は判定(予測)することができる。そこで、この場合、後にも説明するが、次の日の運転のために、前記プローブ車両3について、経路検索でこの道路位置Cの優先度を下げたり、道路位置Cは路面状態が悪くなる旨の報知が行われたりする。
【0049】
「環境情報」と「作動情報」と関連付けは、上記のとおり、「ある道路位置に関して、ある日の夜に雨が降っている場合に、その翌朝にセーフティ装置10が作動している実績があれば、その道路位置の路面は翌朝凍結している可能性がある」という知見に基づいて実行されているが、このような知見をセンタコンピュータ7に教示することで、関連付けの処理が自動的に実行される。
【0050】
また、「環境情報」と「作動情報」とを関連付けるために基準となる日時が、離れた時間帯となる場合の、別の例を説明する(関連付け<4>)。図2(a)によれば、道路位置Cに関して、2月3日23:00には「環境情報」として”7℃、雨”が取得されており、図2(b)によれば、その翌日(翌朝)である2月4日6:15に、同じ道路位置Cにおいて、車両3−3でセーフティ装置10が作動している。なお、この2月4日7:00には「環境情報」として”−2℃、晴れ”が取得されている。すなわち、この道路位置Cでは、夜に雨が降り、その翌朝の気温が下がっていると、その朝は路面状態が悪くなっており(路面が凍結しており)、車両3−3でセーフティ装置10が作動している。
【0051】
そこで、収集部22は、図3に示しているように、位置情報として”道路位置C”、日時情報として”連続する2日の1日目の夜と、2日目の朝”を関連付けの基準として、”7℃(雨)””−2℃(晴れ)”という「環境情報」と、ABS”ON”という「作動情報」とを関連付けて、データベース26に記憶させる(関連付け<4>)。
【0052】
このように、データベース26には、セーフティ装置10が作動した際の同じ時間帯(例えば朝の時間帯)における環境についての「環境情報」以外に、セーフティ装置10が作動した時間帯(朝)よりも前の時間帯(その前夜)における環境(降雨)についての「環境情報」が、「作動情報」と関連付けられて記憶されている。このような、異なる日時(離れた時間帯)に基づいて関連付けされているデータベース26によれば、当日の環境以外に、前日の環境も考慮して、路面状態の判定が可能となる。
【0053】
すなわち、ある日の朝に、道路位置Cを通行する経路によってプローブ車両3が目的地まで走行しようとする場合に、その前夜に道路位置Cで雨が降っており、そのことを意味する「環境情報」が既に取得されており、さらに、道路位置Cにおける当日朝の気温が、路面凍結の可能性のある温度であることを意味する「環境情報」が取得されると、前記データベース26を検索すれば、当該道路位置Cでは、この「環境情報」に関連付けられている「作動情報」が見つかるので、この道路位置Cは路面状態が悪い可能性があると、前記判定部23は判定することができる。そこで、この場合、後にも説明するが、前記プローブ車両3について、経路検索でこの道路位置Cの優先度を下げたり、ドライバに道路位置Cは路面状態が悪い旨の報知が行われたりする。
この関連付け<4>のように、「作動情報」と「環境情報」との関連付けが、1対複数であってもよい。つまり、本実施形態では、一つの「作動情報」に2つの「環境情報」が関連付けられている。
【0054】
「環境情報」と「作動情報」と関連付けは、上記のとおり、「ある道路位置に関して、前夜に雨が降っており、その翌朝の気温が、路面凍結の可能性のある温度である場合に、セーフティ装置10が作動している実績があれば、その道路位置の路面は凍結している可能性がある」という知見に基づいて実行されているが、このような知見をセンタコンピュータ7に教示することで、関連付けの処理が自動的に実行される。
なお、上記の各説明では、道路位置A,B,C(複数の道路位置)について着目したシステムであるが、一つのみの道路位置(例えば道路位置Aのみ)について着目するシステムであってもよい。
【0055】
〔車両走行支援方法について〕
上記の構成を備えた車両走行支援システムによって実行される車両走行支援方法では、まず、前記データベース26(図3)の構築が必要であり、その方法について図4に沿って説明する。
【0056】
走行しているプローブ車両3a(図1参照)側において、当該プローブ車両3aに搭載のセーフティ装置10が作動すると、車載コンピュータ7の前記取得部21は、このセーフティ装置10が作動したことを意味する「作動情報」を取得する(ステップS21)。
車載コンピュータ7には、上記のとおり、位置検出部15及び時計装置18が接続されており、現在走行している車両位置についての位置情報、及び、現在時刻(車両時刻)の日時情報を、取得可能である。
【0057】
そこで、取得部21は、セーフティ装置10が動作したタイミングで、位置検出部15及び時計装置18から位置情報及び日時情報を取得する。取得部21は、ECU11を通じてセーフティ装置10が作動したことを意味する信号を受信することにより「作動情報」を取得することができる。取得部21は、「作動情報」に、セーフティ装置10が作動した道路位置(位置情報)及び日時の情報(日時情報)を含めて取得する。
【0058】
この「作動情報」は、各地を走行するプローブ車両3aにおいて取得される。各プローブ車両3aは、取得した「作動情報」をプローブ情報D1に含めて、通信装置16からネットワーク5に送信する(ステップS22)。
【0059】
また、これとは別に、各道路位置(道路リンク)における環境についての「環境情報」を取得する(ステップS31)。「環境情報」は、各地を走行するプローブ車両3aによって取得される。環境情報は、路面状態に影響を与える環境についての情報であり、例えば、気温についての情報が取得される。
そして、各地を走行するプローブ車両3aそれぞれは、「環境情報」をプローブ情報D1に含ませて、ネットワーク5に送信する(ステップS32)。なお、この「環境情報」には、その環境にある日時の日時情報、及び、その環境であった道路位置についての位置情報が含まれている。
【0060】
さらに、各地に設置されている気象地域気象観測所の観測装置8も「環境情報」を取得することができる(ステップS31)。この場合、観測所に隣接する道路位置(道路リンク)における環境についての「環境情報」を取得する。環境情報は、路面状態に影響を与える環境についての情報であり、例えば、気温、天気、降雨量、降雪量についての情報を取得する。これら情報は、路面の凍結に影響を与える情報である。
そして、各観測所の観測装置8からは、無線又は有線により、「環境情報」をプローブセンタ2側へ送信する(ステップS32)。なお、ネットワーク5を介して送信してもよい。この「環境情報」には、その環境にある日時の日時情報、及び、その環境であった観測所(その近傍の道路位置)についての位置情報が含まれている。
【0061】
プローブセンタ2側において、センタコンピュータ7の収集部22は、前記「環境情報」及び前記「作動情報」を収集する(ステップS3)。そして、収集部22は、これら「環境情報」と「作動情報」とを、道路位置及び日時の情報を関連付けの基準として、関連付けてデータベース26に蓄積する(ステップS4)。収集部22は、「環境情報」と「作動情報」との少なくとも一方が収集されるごとに、関連づけの処理を行い、データベース26を更新する。
【0062】
このように、前記プローブ車両3a及び前記観測所の観測装置8から、多数の道路位置に関して「環境情報」が、センタコンピュータ7の収集部22によって収集され(図2(a))、また、多数のプローブ車両3aから、多数の道路位置に関して「作動情報」が、収集部22によって収集される(図2(b))。そして、収集部22によって、前記関連付けの処理がされ、図3に示しているデータベース26が生成される(ステップS4)。
【0063】
図5は、車両走行支援のためのセンタコンピュータ7の機能を説明するフロー図である。上記のとおり、ステップS4でデータベース26が生成されてからも、収集部22では「環境情報」及び「作動情報」を待ち受ける待機状態にある(ステップS5)。
【0064】
図6は、道路位置A(道路リンクA)を走行しているプローブ車両3bに対して車両走行支援を行う場合の説明図である。図6において、別の道路位置B(道路リンクB)を、別のプローブ車両3aが走行することにより、当該プローブ車両3aによって「環境情報M1」が取得された場合を説明する。「環境情報M1」はプローブ情報D1に含まれて、プローブ車両3aからネットワーク5を介してセンタコンピュータ7に送信される。
【0065】
センタコンピュータ7の収集部22は、この「環境情報M1」を取得すると(図5のステップS5のYes)、センタコンピュータ7の判定部23は、この「環境情報M1」と関連付けられている「作動情報」をデータベース26から検索する(ステップS6)。
この「環境情報M1」は、例えば、道路位置B(道路リンクB)において、朝の時間帯である6:50に、気温が1℃であったことを意味するものであるとする。この場合、図3に示しているデータベース26(関連付け<2>)によれば、この「環境情報M1」が意味する内容に対応する「作動情報」が見つけられる(抽出される)。つまり、道路位置Bでは、過去に(2月4日に)同様の環境で、他のプローブ車両でABSが作動している。
【0066】
判定部23は、前記「環境情報M1」に関連付けられている「作動情報」を見つけると(ステップS7のYes)、判定部23は、前記道路位置B(道路リンクB)は路面状態が悪い可能性があると判定する(ステップS8)。つまり、本実施形態では、道路位置B(道路リンクB)では路面凍結の可能性があると判定する。
これに対して、関連付けられている「作動情報」が見つからない場合(ステップS7のNo)、ステップS5へ戻る。
【0067】
道路位置B(道路リンクB)では路面凍結の可能性があると判定されると、その判定結果に応じた処理が、前記経路探索部24と前記車載装置4との少なくとも一方によって実行される(ステップS9)。
【0068】
〔経路探索部24による処理〕
本実施形態(図1)では、センタコンピュータ7は、上記のとおり、プローブ車両3b(図6)が目的地に到達するまでの経路を探索する前記経路探索部24を備えている。そこで、判定部23によって、道路位置B(道路リンクB)は路面状態が悪い可能性があると判定されているので(ステップS7のYes)、経路探索部24は、当該道路位置B(道路リンクB)についての優先度を下げる処理を行って、経路探索を実行する。つまり、最適経路を探索する際、道路位置B(道路リンクB)のリンクコストを大きく増加させ、この道路位置B(道路リンクB)を含む経路がリンクコスト最小とならないようにする。
【0069】
そして、センタコンピュータ7(経路探索部24)は、検索して得た最適経路を検索結果情報としてネットワーク5に送信し、この情報をプローブ車両3bが取得することで、最適経路を、ディスプレイ19を介して画像により案内することができる。
これにより、路面状態が悪い可能性がある道路位置B(道路リンクB)を通る経路R1(図6参照)ではなく、この道路位置B(道路リンクB)を通らないような経路R2(図6参照)が、経路探索部24によって探索され、これに基づいてプローブ車両3bは目的地まで走行することができる。
【0070】
また、本実施形態(図1)では、センタコンピュータ7は、上記のとおり、定常的に路面状態が悪くなる道路位置についての情報を入手する入手部25を備えている。
本実施形態では、プローブセンタ2において、管理者がセンタコンピュータ7に、定常的に路面状態が悪くなる道路位置についての情報を入力することにより、入手部25は、その情報を得ることができ、これを前記データベース26に追加情報として、記憶させる。例えば、前記道路位置B(道路リンクB)を含む地域は、降雪量が多い地域であり、冬季は定常的に路面が凍結している場合、入手部25は、前記道路位置B(道路リンクB)が、定常的に路面状態が悪くなる道路位置(道路リンク)であることを意味する情報を、既に入手している。
【0071】
この場合、前記判定部23によって、道路位置B(道路リンクB)は路面状態が悪い可能性があると判定されても(図5のステップS8)、当該道路位置B(道路リンクB)は、定常的に路面状態が悪くなる道路位置であるため、経路探索部24は、当該道路位置B(道路リンクB)の優先度を下げる処理を実行しない。
これは、降雪量が多い地域では、定常的に路面状態が悪くなる道路位置は多数出現することから、このような道路位置(道路リンク)に関して優先度を下げてばかりいると、経路探索に支障をきたすおそれがあるが、上記のとおり、優先度を下げる処理をさせないことで、このような降雪量が多い地域では、通常の経路探索が行われるようにすることができる。
【0072】
〔車載装置4による処理〕
また、図5のステップS8のように、判定部23によって、道路位置B(道路リンクB)は路面状態が悪い可能性があると判定されると、センタコンピュータ7(判定部23)は、その判定結果の情報を生成し、この情報D4をネットワーク5に送信する。
そして、図6において、プローブ車両3b側において、ネットワーク5から、判定結果の情報D4を取得する。車載装置4の車載コンピュータ7は、この判定結果の情報D4を、ディスプレイ19を介して画像により案内することができる。さらには、スピーカ装置20によって音声により案内することができる。具体的には、目的地までに存在する道路位置Bは、路面状態が悪い可能性があることを、ディスプレイ19及びスピーカ装置20の一方又は双方で、報知する。
これにより、このプローブ車両3bのドライバは、道路位置Bを避けるようにして、目的地へたどり着くことが可能となる。
【0073】
また、この場合においても、本実施形態(図1)では、センタコンピュータ7は、定常的に路面状態が悪くなる道路位置についての情報を入手する入手部25を備えている。上記の場合と同様に、入手部25は、前記道路位置B(道路リンクB)が、定常的に路面状態が悪くなる道路位置(道路リンク)であることを意味する情報を、既に入手している。
そこで、前記判定部23によって、道路位置B(道路リンクB)は路面状態が悪い可能性があると判定されても(ステップS8)、当該道路位置B(道路リンクB)は、定常的に路面状態が悪くなる道路位置であるため、目的地へと向かうプローブ車両3bの車載装置4は、前記判定結果のドライバへの報知を制限する。つまり、報知しない。
これにより、降雪量が多い地域では、定常的に路面状態が悪くなる道路位置は多数出現することから、車載装置4によって、路面状態が悪い可能性があることを報知させる頻度が高くなってしまい、ドライバにとって煩わしくなるおそれがあるが、上記のとおり、判定結果のドライバへの報知を制限することにより、これを防ぐことができる。
【0074】
以上の前記実施形態に係る車両走行支援システムによる車両走行支援方法によれば、図6により説明したように、プローブ車両3bの現在の走行位置(道路リンクA)から遠く離れた所定の道路位置(道路リンクB)についての「環境情報M1」が取得され、この「環境情報M1」に関連付けられている「作動情報」がデータベース26から見つけられた場合、これは、この所定の道路位置(道路リンクB)でセーフティ装置10が動作した実績があることを意味しており、センタコンピュータ7の判定部23は、この所定の道路位置(道路リンクB)は路面状態が悪い可能性があると判定することができる。
【0075】
したがって、この判定の結果に基づく情報(最適な経路検索の結果や、判定の結果など)を、例えば、道路位置(道路リンクB)を走行する可能性があるプローブ車両3bに送信し、これを活用させれば、当該道路位置(道路リンクB)から遠く離れた位置を未だ走行している段階であっても、当該道路位置(道路リンクB)における路面状態を考慮してプローブ車両3bを目的地まで安全に走行させることが可能となる。
【0076】
上記の各実施形態では、環境情報と作動情報とを関連付けて記憶したデータベースに基づいて、インプットとなる環境情報に関連する作動情報を検索した結果、作動情報が存在していなかった場合、路面状態が悪い可能性がある又は悪くなる可能性があると、判定されない。
しかし、この実施形態の応用として、似た環境情報が得られた別の道路において、当該別の道路では作動情報がなくても、路面状態が悪い可能性がある又は悪くなる可能性があると、判定することもできる。すなわち、例えば、前日の深夜に一定以上の降雨があり、かつ、気温が所定以下であった場合に、その日の早朝の路面状態が悪い(セーフティ装置が作動した)といった作動情報を有する道路が複数存在する場合、これと同じ環境になった別の道路について(つまり、当該道路で深夜に一定以上の降雨があり、かつ、気温が所定以下となった別の道路について)、過去に当該別の道路で作動情報が得られていなくても、その日の早朝では、当該別の道路の路面状態は、路面状態が悪い可能性がある又は悪くなる可能性があると判定することができる。
【0077】
上記の実施形態はすべて例示であり本発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での変更が含まれる。
例えば、前記経路探索部24は車載装置4が有していてもよい。また、前記データベース26への環境情報の蓄積を、一時的に情報が収集された場合に実施してもよいが、例えば1日において統計的に収集された場合に実施してもよい。
【符号の説明】
【0078】
3,3a,3b:プローブ車両、 4:車載装置、 10:セーフティ装置、 21:取得部、 22:収集部、 23:判定部、 24:経路探索部、 25:入手部、 26:データベース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面状態が悪い場合に作動する確率が高くなるセーフティ装置を備えた車両から取得される情報を用いて、車両に対して走行支援を行う車両走行支援システムであって、
前記セーフティ装置が作動したことを意味する作動情報を、作動した道路位置及び日時の情報を含めて取得する取得部と、
路面状態に影響を与える環境についての環境情報を、日時の情報を含めて、1又は複数の道路位置について収集する収集部と、
前記環境情報と前記作動情報とを、前記道路位置及び前記日時の情報を関連付けの基準として、関連付けて蓄積するデータベースと、
所定の道路位置についての前記環境情報が取得されると、この環境情報と関連付けられている作動情報を前記データベースから検索し、関連付けられている作動情報があると、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性がある又は悪くなる可能性があると判定する判定部と、
を備えていることを特徴とする車両走行支援システム。
【請求項2】
前記セーフティ装置が作動した際の時間帯における環境についての環境情報以外に、前記セーフティ装置が作動した時間帯よりも前の時間帯における環境についての環境情報を、前記作動情報と関連付けて前記データベースは記憶する請求項1に記載の車両走行支援システム。
【請求項3】
車両が目的地に到達するまでの経路を探索する経路探索部を更に備え、
前記判定部によって、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性があると判定されると、前記経路探索部は、当該所定の道路位置の優先度を下げる請求項1又は2に記載の車両走行支援システム。
【請求項4】
定常的に路面状態が悪くなる道路位置についての情報を入手する入手部を更に備え、
前記判定部によって、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性があると判定されても、当該所定の道路位置が、前記定常的に路面状態が悪くなる道路位置である場合には、前記経路探索部は、当該所定の道路位置の優先度を下げる処理をしない請求項3に記載の車両走行支援システム。
【請求項5】
前記判定部による判定結果についての情報を取得し、当該判定結果をドライバに報知させる車載装置を備えている1から4のいずれか一項に記載の車両走行支援システム。
【請求項6】
定常的に路面状態が悪くなる道路位置についての情報を入手する入手部を更に備え、
前記判定部によって、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性があると判定されても、当該所定の道路位置が、前記定常的に路面状態が悪くなる道路位置である場合には、前記車載装置は、前記判定結果のドライバへの報知を制限する請求項5に記載の車両走行支援システム。
【請求項7】
路面状態が悪い場合に作動する確率が高くなるセーフティ装置を備えた車両から取得される情報を用いて、車両に対して走行支援を行う処理を、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記セーフティ装置が作動したことを意味する作動情報を、作動した道路位置及び日時の情報を含めて取得するステップと、
路面状態に影響を与える環境についての環境情報を、日時の情報を含めて、1又は複数の道路位置について収集するステップと、
前記環境情報と前記作動情報とを、前記道路位置及び前記日時の情報を関連付けの基準として、関連付けてデータベースに蓄積するステップと、
所定の道路位置についての前記環境情報が取得されると、この環境情報と関連付けられている作動情報を前記データベースから検索し、関連付けられている作動情報があると、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性がある又は悪くなる可能性があると判定するステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
路面状態が悪い場合に作動する確率が高くなるセーフティ装置を備えた車両から取得される情報を用いて、車両に対して走行支援を行う車両走行支援方法であって、
前記セーフティ装置が作動したことを意味する作動情報を、作動した道路位置及び日時の情報を含めて取得し、
路面状態に影響を与える環境についての環境情報を、日時の情報を含めて、1又は複数の道路位置について収集し、
前記環境情報と前記作動情報とを、前記道路位置及び前記日時の情報を関連付けの基準として、関連付けてデータベースに蓄積し、
所定の道路位置についての前記環境情報が取得されると、この環境情報と関連付けられている作動情報を前記データベースから検索し、関連付けられている作動情報があると、前記所定の道路位置は路面状態が悪い可能性がある又は悪くなる可能性があると判定する
ことを特徴とする車両走行支援方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−127861(P2012−127861A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280742(P2010−280742)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】