説明

車両走行通報装置

【課題】通行者が音によって複数の車両を個々的に容易に区別して認識することができる環境を実現することのできる「車両走行通報装置」を提供することである。
【解決手段】入力した音信号に対応する音を車両の外方に向けて発するスピーカ18と、前記車両の周囲の音を入力し、該入力音に対応した音信号を出力する音ピックアップ器11と、スピーカ18から音を発する発音期間と、スピーカ18から音を発しない消音期間とが交互に繰り返されるようにスピーカ18の発音タイミングを制御する発音タイミング制御手段17と、消音期間において音ピックアップ器11から出力される音信号に基づいて、音ピックアップ器11への入力音の周波数スペクトルと異なる周波数スペクトルの音を前記発音期間においてスピーカ18から発せさせる発音制御手段12、13、14、15、16とを有する構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車・ハイブリット車等の低騒音車両(QRTV)に搭載され、何らかの音を発して当該低騒音車両の走行を通報する車両走行通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1記載の電気自動車が知られている。この電気自動車は、警報音制御装置及び拡声装置(それら装置にて車両走行通報装置が構成される)を搭載しており、警報音制御装置が警報音、例えば、ガソリン車の走行音を模した音を拡声装置から発せさせるようにしている。また、環境センサを設けてもよく、環境センサにて検出される周囲の騒音に基づいて、その周囲の騒音と異なる音質(音色)の警報音を発生させることもできる。
【0003】
このような電気自動車によれば、走行音が比較的静かなものであっても、確実に、歩行者に対して、当該電気自動車の接近を知らせることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−201001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の電気自動車では、周囲の騒音と異なる音質の警報音を発することが可能ではあるが、比較的近くを走行する複数の電気自動車では、同じような騒音環境となることから、それら複数の電気自動車から同じ音質の音が発せられるようになる。このように比較的近くを走行する複数の電気自動車から同じ音質の音が発せられる場合、それら複数の電気自動車の近くを歩行する通行者は、音によってそれら複数の電気自動車を個々に区別して認識することが難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、通行者が音によって複数の車両を個々的に容易に区別して認識することができる環境を実現することのできる車両走行通報装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両走行通報装置は、入力した音信号に対応する音を車両の外方に向けて発するスピーカと、前記車両の周囲の音を捉えて、その捉えた周囲音に対応した音信号を出力する音ピックアップ器と、前記スピーカが音を発する発音期間と、該スピーカが音を発しない消音期間とが交互に繰り返されるように前記スピーカの発音タイミングを制御する発音タイミング制御手段と、前記消音期間において前記音ピックアップ器から出力される音信号に基づいて、前記音ピックアップ器が捉える周囲音の周波数と異なる周波数の音を前記発音期間において前記スピーカから発せさせる発音制御手段とを有する構成となる。
【0008】
このような構成により、スピーカから音を発する発音期間とスピーカから音を発しない消音期間とが繰り返される過程で、消音期間において音ピックアップ器が捉える周囲音の周波数と異なる周波数の音が発音期間においてスピーカから発せられるので、前記消音期間において周囲音に含まれる他車から発せられる音と異なった音が発音期間において発せられ得るようになる。
【0009】
なお、前記周波数は、単一の周波数だけでなく、音の聞こえ方に主として影響を与える周波数成分を少なくとも含む複数の周波数成分からなるものであってもよい。
【0010】
本発明に係る車両走行通報装置において、前記発音制御手段は、前記音ピックアップ器から出力される音信号の周波数と異なる周波数の発音データを生成する発音データ生成手段を有し、該発音データに基づいた音信号を前記スピーカに供給する構成とすることができる。
【0011】
このような構成により、音ピックアップ器から出力される音信号の周波数と異なる周波数の発音データに基づいた音信号に対応する音がスピーカから発せられるようになるので、当該スピーカから発せられる音は、前記音ピックアップ器にて捉えられる周囲音の周波数と異なる周波数となる。
【0012】
また、本発明に係る車両走行通報装置において、前記発音データ生成手段は、予め定めた原発音データから、前記音ピックアップ器から出力される音信号の周波数と異なる周波数の発音データを生成する構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、1種の原発音データから、当該ピックアップ器で捉えられる周囲音の周波数と異なる周波数の発音データを生成することができる。
【0014】
本発明に係る車両走行通報装置において、前記発音期間が前記消音期間より長く設定された構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、スピーカから発せられる音の中断を極力短くすることができる。
【0016】
また、本発明に係る車両走行通報装置において、前記発音期間と前記消音期間とが一定周期で繰り返す構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、一定周期にてスピーカから音が繰り返し発せられるようになるので、通行者がその音をより認識し易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両走行通報装置によれば、スピーカから音を発する発音期間とスピーカから音を発しない消音期間とが繰り返される過程で、前記消音期間において他車から発せられる音と異なった音が前記発音期間において発せられるようになるので、複数の車両から異なる音を発せさせることができるようになる。従って、通行者がその異なる音によって当該複数の車両を個々的に容易に区別して認識することができる環境を実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の一形態に係る車両走行通報装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す車両走行通報装置におけるスピーカの発音タイミング制御の一例を示すタイミングチャートである。
【図3】原発音データが表す音の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図4】図3に示す原発音データから生成される発音データに基づいてスピーカから発せられる音の周波数スペクトルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態について図面を用いて説明する。
【0021】
本発明の実施の一形態に係る車両走行通報装置は、図1に示すように構成される。
【0022】
図1において、電気自動車等の低騒音車両(QRTV)に搭載される車両走行通報装置100は、当該低騒音車両の外方、具体的には、前方に向けて音を発するように車体に設置されたスピーカ18と、当該低騒音車両の周囲の音を捉えるように車体に設置されたマイクロフォン11(音ピックアップ器)とを備えている。この車両走行通報装置100は、更に、周囲音サンプリング部12、基音周波数分析部13、変調パラメータ決定部14、発音データ変調部15、出力回路16及び発音タイミング発生部17を有している。
【0023】
発音タイミング発生部17(発音タイミング制御手段)は、所定のオン期間と所定のオフ期間とを所定周期Tで交互に繰り返す矩形波状のタイミング信号を出力する。発音タイミング発生部17から出力されるタイミング信号は、出力回路16及び周囲音サンプリング部12に供給される。出力回路16は、前記タイミング信号に同期してスピーカ18を駆動する。具体的には、出力回路16は、前記タイミング信号のオン期間において後述する発音データ変調部15からの発音データに基づいた音声信号をスピーカ18に供給してスピーカ18から前記発音データに基づいた音を発せさせ(発音期間)、前記タイミング信号のオフ期間ではスピーカ18に音信号を供給せずにスピーカ18からの音を止める(消音期間)。従って、図2に示すように、スピーカ18から音を発する発音期間Tとスピーカ18から音を発しない消音期間Tとが所定周期Tで交互に繰り返される。例えば、発音期間Tは、0.5秒程度に設定され、消音期間Tは、発音期間Tより短い0.1秒程度に設定される。
【0024】
周囲音サンプリング部12は、発音タイミング発生部17からのタイミング信号に同期して動作する。具体的には、周囲音サンプリング部12は、タイミング信号のオフ期間(消音期間Tに対応)においてマイクロフォン11から出力される周囲音に対応した音信号をサンプリングする。基音周波数分析部13は、例えば、FFT(高速フーリエ変換)等を利用して、周囲音サンプリング部12にてサンプリングされた音信号の周波数成分を分析し、音の聞こえ方に主として影響を与える周波数成分(基音の周波数成分)を抽出する。変調パラメータ決定部14は、予め用意された、例えば、図3に示すような周波数成分、具体的には、図3に示す破線で囲まれた音の聞こえ方に主として影響を与える周波数成分を有する音を表す原発音データを変調(例えば、周波数シフト)して、前記抽出された周波数成分と異なる周波数成分の発音データを生成するために、周波数のシフト量を変調パラメータとして決定する。前記原発音データは、所定のレジスタ(図示略)に格納されており、発音データ変調部15は、そのレジスタの格納された原発音データから、該原発音データの周波数成分(図3参照)を前記変調パラメータとして決定されたシフト量だけシフトして得られる、例えば、図4に示すような周波数成分の音を表す発音データを生成する。なお、図4において、破線で囲まれた周波数成分は、図3において破線で囲まれた周波数成分がシフトされたものである。そして、発音データ変調部15にて生成(変調)された発音データが出力回路16に供給され、前述したように、発音タイミング発生部17からのタイミング信号で決まる発音期間Tにおいて、出力回路16から前記発音データ(図4参照)に基づいた音信号がスピーカ18に供給され、スピーカ18から前記発音データ(図4参照)に基づいた音が発せられる。
【0025】
なお、車両走行通報装置100の上述したような構成において、周囲音サンプリング部12、基音周波数分析部13、変調パラメータ決定部14、発音データ変調部15及び出力回路16が、消音期間Tにおいてマイクロフォン11(音ピックアップ器)から出力される音信号に基づいて、マイクロフォン11(音ピックアップ器)が捉える周囲音の周波数と異なる周波数の音を発音期間Tにおいてスピーカ18から発せさせる発音制御手段に相当する。
【0026】
前述した車両走行通報装置100では、スピーカ18から音を発する発音期間Tとスピーカ18から音を発しない消音期間Tとが交互に繰り返される過程(図2参照)で、消音期間Tにおいてマイクロフォン11から出力される周囲音に対応した音信号の周波数と異なる周波数の発音データが、単一の原発音データ(例えば、図3に示す周波数成分を有する音を表す)から生成され、その生成された発音データに対応した音(例えば、図4に示す周波数成分を有する音)が発音期間Tにおいてスピーカ18から発せられる。このため、当該低騒音車両の近傍を、同じ車両走行通報装置を搭載して音を発しながら他の低騒音車両が走行している環境において、消音期間Tでの周囲音に含まれる当該他の低騒音車両から発せられる音と異なった音が発音期間Tにおいて発せられるようになる。このように、前述した車両走行通報装置100を搭載した複数の低騒音車両から異なる音が発せられるようになるので、通行者がその異なる音によって当該複数の低騒音車両を個々的に容易に区別して認識することができるようになる。
【0027】
なお、前述した車両走行通報装置100では、周囲音の周波数と異なる周波数の音を表す発音データは、前述したように原発音データを周波数シフトして生成することに限られず、他の方法、例えば、フィルタのフィルタ係数を変調パラメータとして決定し、前記原発音データをその変調パラメータとして決められたフィルタ係数のフィルタにて処理することにより生成することもできる。また、異なった周波数成分を有する複数の発音データから、実際に発すべき音の発音データを選択することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上、説明したように、本発明に係る車両走行通報装置は、通行者が音によって複数の車両を個々的に容易に区別して認識することができる環境を実現することができるという効果を有し、電気自動車・ハイブリット車等の低騒音車両(QRTV)に搭載され、何らかの音を発して当該低騒音車両の走行を通報する車両走行通報装置として有用である。
【符号の説明】
【0029】
11 マイクロフォン(音ピックアップ器)
12 周囲音サンプリング部
13 基音周波数分析部
14 変調パラメータ決定部
15 発音データ変調部
16 出力回路
17 発音タイミング発生部
18 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した音信号に対応する音を車両の外方に向けて発するスピーカと、
前記車両の周囲の音を捉えて、その捉えた周囲音に対応した音信号を出力する音ピックアップ器と、
前記スピーカが音を発する発音期間と、該スピーカが音を発しない消音期間とが交互に繰り返されるように前記スピーカの発音タイミングを制御する発音タイミング制御手段と、
前記消音期間において前記音ピックアップ器から出力される音信号に基づいて、前記音ピックアップ器が捉える周囲音の周波数と異なる周波数の音を前記発音期間において前記スピーカから発せさせる発音制御手段とを有する車両走行通報装置。
【請求項2】
前記発音制御手段は、前記音ピックアップ器から出力される音信号の周波数と異なる周波数の発音データを生成する発音データ生成手段を有し、
該発音データに基づいた音信号を前記スピーカに供給する請求項1記載の車両走行通報装置。
【請求項3】
前記発音データ生成手段は、予め定めた原発音データから、前記音ピックアップ器から出力される音信号の周波数と異なる周波数の発音データを生成する請求項2記載の車両走行通報装置。
【請求項4】
前記発音期間が前記消音期間より長く設定された請求項1乃至3のいずれかに記載の車両走行通報装置。
【請求項5】
前記発音期間と前記消音期間とが一定周期で繰り返す請求項1乃至4のいずれかに記載の車両走行通報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52731(P2013−52731A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191403(P2011−191403)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】