説明

車両通行管理システム

【課題】外部から撮像した運転者の赤外線画像からエチルアルコールを検出して酒気帯び運転を防止可能とする。
【解決手段】酒気帯び検出部48はゲート装置に接近した車両の運転者から放射または反射される赤外線の被写体画像に基づいて、運転者の血液中に溶け込んでいるエチルアルコール濃度を測定して酒気帯び状態を検出する。ゲート制御部52は酒気帯び検出部48により酒気帯び状態を検出しない場合は、所定の通行処理に対しゲート装置を開放動作させて車両を通行可能とし、酒気帯び検出部48により酒気帯び状態を検出した場合には、通行処理に対しゲート装置の開放動作を禁止して車両の通行を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の赤外線画像から酒気帯び状態を検出して駐車場ゲートからの退出やETCゲートからの高速道路への侵入を阻止するように車両の通行を管理する車両通行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酒気帯び運転を防止するための装置にあっては、運転者の呼気に含まれるエチルアルコールをガスセンサにより検知し、自動車を始動させないように構成している(特許文献1)。
【0003】
一般に、呼気中に含まれるアルコールの濃度は血液中のアルコール濃度と比例関係にある。法規上定められた酒気帯び運転の基準は、呼気中のアルコール濃度0.15mg/Lであり、これは血中アルコール濃度で0.03%に相当する。このため呼気中のアルコール濃度を測定することで、酒気帯び状態を検知して運転を防止することができる。
【0004】
また近年にあっては自動車メーカーから飲酒運転防止コンセプトカーの開発が公表されており、次の装置が提案されている。
【0005】
シフトレバーに組み込んだアルコール臭気センサーにより、シフトレバーに触れた掌の汗に含まれるアルコールを検知し、音声とカーナビ画面への表示によってドライバーへ警告し、同時にシフトロックする。
【0006】
シート周辺に配置したアルコール臭気センサーにより、シフトレバーに触れた掌の汗に含まれるアルコールを検知し、音声とカーナビ画面への表示によってドライバーへ警告する。
【0007】
メータ内に装備したカメラによって、ドライバーの顔をモニターし、覚醒度を推定し、酒気帯び運転の可能性があると判断した場合、音声とカーナビ画面への表示によってドライバーへ警告し、同時にシートベルトを巻き上げる等して、より強く警報を行う。
【0008】
車両の運転挙動を検出し、ドライバーの運転状態を評価し、飲酒運転の可能性があると判断した場合、音声とカーナビ画面への表示によってドライバーへ警告し、同時にシートベルトを巻き上げる等して、より強く警報を行う。
【特許文献1】特開平8−150853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の酒気帯び防止装置にあっては、酒気帯び防止装置を搭載した車両については充分な酒気帯び運転の防止効果を期待することができるが、コスト面から多くの車両に普及するには時間がかかることが予想される。
【0010】
一方、近年にあっては、有料駐車場の管理には無人化された駐車場ゲート装置が設置されて24時間いつでも利用可能であり、また高速道路のランプや料金所についても、ETC(Electronic Toll Collection System)ゲートの設置による無人化が進み、ETC装置搭載車両の増加に伴い円滑な通行管理が可能となっている。
【0011】
そこで、このような無人化されたゲート装置に酒気帯び防止装置を組み合わせることができれば、酒気帯び状態を自動的に検知し、検知した車両についてはゲートを開かないように制御することで、酒気帯び状態の車両が駐車場から一般道路に出たり、また、酒気帯び状態でETCゲートを通過して高速道路に侵入し、大きな事故を起こしてしまうことを未然に防止できる。
【0012】
しかしながら、従来の車両に搭載する酒気帯び防止装置にあっては、車両の運転者の酒気帯び状態を外部から検出してゲート装置を制御するような使い方はできず、ゲート装置を利用して酒気帯び運転を防止するような装置の構築が解決すべき課題として残されている。
【0013】
本発明は、外部から運転者の赤外線画像を撮像することで、運転者の血中のエチルアルコールによる酒気帯び状態を検出してゲートを制御することにより酒気帯び運転を防止可能とする車両通行管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、車両通行管理システムであって、
遮断機の開閉動作により車両の通行を制御するゲート装置と、
ゲート装置に接近した車両の運転者から放射または反射される赤外線の被写体画像に基づいて、運転者の血液中に溶け込んでいるエチルアルコール濃度を測定して酒気帯び状態を検出する酒気帯び検出部と、
酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出しない場合は、所定の通行処理に対しゲート装置を開放動作させて車両を通行可能とし、酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出した場合には、通行処理に対しゲート装置の開放動作を禁止して車両の通行を阻止するゲート制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
ここで、酒気帯び検出部は、
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被写体像を撮像素子に結像させる光学系と、
被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1フィルタと、
被写体からの前記第1波長帯域の近傍となるエチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2フィルタと、
被写体からの前記エチルアルコールと同じ第1波長体域に吸収波長を持つ外乱物質の他の吸収波長を含む第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3フィルタと、
第1のフィルタを透過して結像された第1被写体画像、第2フィルタを透過して結像された第2被写体画像、及び前記第3フィルタを透過して結像された第3被写体画像を、撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
メモリに格納された第1被写体画像と第2被写体画像に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2被写体画像と第3被写体画像に基づいて前記外乱物質の濃度に対応した外乱度を算出する外乱物質検出部と、
エチルアルコール含有度が所定の閾値以上で外乱度が所定の閾値未満の場合に酒気帯び状態と判定し、エチルアルコール含有度が所定の閾値以上で外乱度も所定の閾値以上の場合に正常状態と判定する判定部と、
を備える。
【0016】
酒気帯び検出部は、
1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被写体像を赤外線受光センサに結像させる光学系と、
被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1フィルタと、
被写体からの第1波長体域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2フィルタと、
被写体からの前記エチルアルコールと同じ第1波長体域に吸収波長を持つ外乱物質の他の吸収波長を含む第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3フィルタと、
赤外線センサにより、第1フィルタを透過して受光された被写体の第1受光信号、第2フィルタを透過して受光された被写体の第2受光信号、及び前記第3フィルタを透過して受光された被写体の第3受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいてエチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて外乱物質の濃度に対応した外乱度を算出する外乱物質検出部と、
エチルアルコール含有度が所定の閾値以上で外乱度が所定の閾値未満の場合に酒気帯び状態と判定し、エチルアルコール含有度が所定の閾値以上で外乱度も所定の閾値以上の場合に正常状態と判定する判定部と、
を備える。
【0017】
第1フィルタは第1波長帯域として2.77μm又は3.37μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第2フィルタは前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
第3フィルタは、外乱物質がメントールの場合、第3波長帯域として3.28μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、外乱物質がステアリン酸の場合、第3波長帯域として5.88μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させる。
【0018】
酒気帯び検出部は、更に、撮像素子の撮像時又は赤外線センサの受光検出時に、運転者に赤外線を照射して反射させる赤外線光源を設ける。
【0019】
光学系は、車両のフロントガラスによる外部からの赤外線の反射光を減衰除去する偏光フィルタを備える。
【0020】
ゲート装置は、有料駐車場に設置された駐車場ゲート装置であり、
駐車場ゲート装置は、
駐車場出口に設置された開閉駆動される遮断機と、
遮断機の手前側に設置され、所定の料金支払い操作に対し遮断機を開放する精算機と、
を備え、
ゲート制御部は、精算機の料金支払い操作に対し酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出した場合には、遮断機の開放動作を禁止して駐車場から道路への車両の通行を阻止し、必要に応じて係員に通報する。
【0021】
ゲート装置は、有料駐車場に設置された駐車場ゲート装置であり、
駐車場ゲート装置は、
駐車場所に設置され、駐車開始時から所定時間後に車輪の通過を許容するアンロック位置から車輪の通過を阻止するロック位置に動作する車輪ロック装置と、
駐車場の出入口などの所望位置に設置され、所定の料金支払い操作に対し車輪ロック装置をアンロック位置に動作する精算機と、
を備え、
ゲート制御部は、精算機の料金支払い操作に対し酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出した場合には、車輪ロック装置のアンロック位置への動作を禁止して駐車場から道路への車両の通行を阻止し、必要に応じて係員に通報する。
【0022】
ゲート装置は、高速道路の入口または出口に設置されたETCゲート装置であり、
ゲート制御部は、所定の料金支払い操作に対し酒気帯び検出部により酒気帯態を検出した場合には、ETCゲート装置の開放動作を禁止して高速道路への車両の侵入または高速道路から一般道路への車両の退出を阻止すると共に係員に通報する。
【0023】
ゲート装置は、高速道路の入口または出口に設置されたETCゲート装置であり、ETCゲート装置は車両侵入側と車両退出側の2箇所に遮断機を配置し、
ゲート制御部は、所定の料金支払い操作に対し酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出した場合には、ETCゲート装置の侵入側及び退出側の2箇所の遮断機を閉鎖位置に制御して車両をゲート内に封じ込めると共に係員に通報する。
【0024】
ゲート制御部は、酒気帯び状態の検出に基づいてゲート装置の開放動作を禁止した状態での車両の強行突破を判定した場合、酒気帯び検出部で取得した運転者の被写体画像を記録すると共に、外部機関に自動通報して対処を要請する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、駐車場ゲートやETCゲート等において運転者の赤外線画像を外部から撮像することによって酒気帯び状態を検出することができ、酒気帯び状態を検出した場合にはゲートの遮断機の開放を禁止することで、酒気帯び状態のまま駐車場から一般道路に出たり、或いは一般道路から高速道路に侵入し、重大な交通事故を招きかねない事態を未然に防止することができる。
【0026】
また酒気帯び状態の検出は、運転者の体温による人体からの赤外線放射光または赤外線反射光、特に、皮膚が露出している顔からの赤外線放射光または赤外線反射光から毛細血管中のエチルアルコールによる特徴的な吸収スペクトルを検知して、血中アルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を得ることができ、このエチルアルコール含有度から運転者の酒気帯び状態を正確に判定してゲート通過を禁止することができる。
【0027】
また化粧品に含まれるメントールは、エチルアルコールと同じ波長にも吸収スペクトルをもつことで外乱要因となるが、エチルアルコールにはないメントール固有波長の吸収スペクトルを外乱度として検知することで、化粧品などによるエチルアルコールの誤検出を確実に防止することができる。
【0028】
またエチルアルコール含有度を、エチルアルコール固有波長の吸収スペクトルの受光量と吸収スペクトルのない別波長の受光量との比率、差分などの値として検出しているため、赤外線放射量または反射量の強弱の影響を受けることなく、高いS/N比により毛細血管中のエチルアルコールを正確に検知することができる。
【0029】
更に、被写体からの赤外光におけるエチルアルコール吸収スペクトルからエチルアルコール含有度を検知しているため、従来のガスセンサによるアルコール検知のような感度調整や清掃点検などのメンテナンスが不要であり、長期間に亘り安定した高い精度で人体のエチルアルコール含有度を検知し、酒気帯び運転を正確に判定することができる。
【0030】
また、駐車場ゲートやETCゲートで酒気帯び状態が検出された場合、ゲート通過を禁止すると共に係員に通報することで、ゲート通過を阻止された車両を近くの駐車スペースに誘導して酔いがさめるまで休息させるなどの適切な対応ができる。
【0031】
また、酒気帯び状態の検出によるゲート閉鎖状態で、閉鎖ゲートを車両が強行突破した場合には、これを判定して撮像している運転者の被写体画像を記録して保存し、同時に警察や道路管理機関に自動的に通報し、酒気帯び運転車両に対し適切に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は駐車場管理を対象とした本発明による車両通行管理システムの第1実施形態を示したブロック図である。図1において、駐車場を対象とした車両通行管理システムは、駐車場の出口側に設置される精算機10、精算機10の近くに精算のために停止した車両の運転者の赤外線画像を撮像する撮像装置12、車両のウィンドウガラスによる赤外線透過率の低下を補うために外部から赤外線を運転者に照射する赤外線光源16、更に精算機10を設置している駐車場の出口側に設けられる遮断機14で構成される。
【0033】
図2は図1の第1実施形態が適用された駐車場を平面で示した説明図である。図2において、駐車場20の出口通路には精算機10が設置され、精算機10の前方に遮断機14が設置されている。
【0034】
撮像装置12は、精算機10に精算処理のために停止した車両18の運転者を撮像できる前方位置に配置される。またウィンドウガラスによる赤外線透過率を補うための補助赤外線を照射させる赤外線光源16も同じく精算機10に停止した車両18の運転者を照射可能な位置に設置されている。
【0035】
再び図1を参照するに、精算機10にはコンピュータのハードウェア環境を代表して示すCPU32が設けられ、CPU32に対しては撮像装置12が設けられている。撮像装置12は赤外線カメラ22、波長可変フィルタ24、偏光フィルタ26、カメラ制御部28及びフィルタ駆動部30を備え、更にカメラ制御部28に対しては外部に設けた赤外線光源16を接続している。
【0036】
図3は図1の第1実施形態で使用する波長可変フィルタを用いた赤外線カメラを示した説明図である。図3において、赤外線カメラ22の対物レンズ66と結像レンズ68を備えた光学系の間には波長可変フィルタ24が設けられ、波長可変フィルタ24の透過波長はフィルタ駆動部30により制御される。
【0037】
赤外線カメラ22内には赤外線波長帯域に感度を持つCCD撮像素子64が配置され、結像レンズ68により結像された波長可変フィルタ24を透過した波長帯域の赤外線画像を撮像する。
【0038】
波長可変フィルタ24はファブリペロー型干渉フィルタとして知られており、例えば200〜300オングストローム程度の厚みを有するAuなどの反射膜となる透過性の金属膜を対向する面に蒸着した一対のガラス基板を有し、一対のガラス基板を間に圧電素子を介して対向配置し、その間に微小間隔を設定している。ガラス基板の間の圧電素子は、フィルタ駆動部30による直流電圧の印加を受けて基板間隔を変化させることができる。
【0039】
波長可変フィルタ24は、一方のガラス基板側からの入射光に対し、透過性を持つ金属膜の間で多重反射によって生ずる干渉作用に起因して複数の透過スペクトルが分布して光を透過する。このような波長可変フィルタ24としては、例えば特開平8−285688号のものが使用できる。
【0040】
赤外線カメラ22における対物レンズ66の入射側には偏光フィルタ26が配置されている。偏光フィルタ26は太陽光や補助的に照射する赤外線光源からの照明光の車両のウィンドウガラスによる反射光を減衰除去し、その影響を防ぐようにしている。
【0041】
図4は赤外線カメラ22に設けた偏光フィルタ26による赤外線反射光の減衰除去を示した説明図である。本実施形態にあっては、赤外線カメラ22により車両18のウィンドウガラスを通して運転者70から放出される赤外線の被写体画像を撮像している。
【0042】
赤外線カメラ22のCCD撮像素子には、太陽光や補助的に赤外線を照射する赤外線光源からの照明光がウィンドウガラスにより反射して入射する。このウィンドウガラスによる赤外線反射光を偏光フィルタ26により減衰除去する。
【0043】
この場合、赤外線カメラ22の前面に設けた偏光フィルタ26による偏光面が、監視対象とする車両18のウィンドウガラスに対し垂直となるように、偏光フィルタ26を配置する。
【0044】
即ち、想定される太陽などの外乱光源からの光は、車両18のウィンドウガラスにより反射した際、入射光74と反射光72の各光軸の作る平面に対し垂直であり、且つウィンドウガラス上に乗る面を偏光面とする平面偏光76が支配的となる。
【0045】
そこで、ウィンドウガラス70からの反射光72による平面偏光76を除去するように、偏光フィルタ26の偏光面をウィンドウガラスに対し垂直となるように配置することで、太陽光や照明用の赤外線のウィンドウガラスによる反射光を減衰除去して、赤外線カメラ22の被写体画像から減衰除去することができる。
【0046】
再び図1を参照するに、精算機10に設けたCPU32に対しては、メモリ34、画像記録部36、表示部38、音声出力部40、金銭処理部42、外部通報部44及び遮断機駆動部46が設けられている。
【0047】
CPU32にはプログラムの実行により実現される機能として、酒気帯び検出部48、精算処理部50及びゲート制御部52が設けられている。
【0048】
精算処理部50は精算機10が持つ本来の処理機能であり、図2に示したように、車両18が駐車場20を出る際に精算機10の位置に停止し、駐車場20に入る際に図示しない発券機から取り出した駐車券を精算機10に入れることで、駐車時間に基づく料金計算が行われ、駐車料金の表示出力に対し運転者が料金支払い処理を行うと、遮断機14を開いて、車両18が駐車場20から出ることができる。
【0049】
この精算処理部50の処理機能に対応して、表示部38、音声出力部40、金銭処理部42及び遮断機駆動部46が動作することになる。
【0050】
このような精算機としての本来の処理機能に加え、本実施形態にあっては、新たに酒気帯び検出部48とゲート制御部52の機能が設けられている。酒気帯び検出部48は、図2のように、精算機10に精算のために停止した車両の運転者から放出または反射される赤外線の被写体画像を撮像装置12により撮像し、この赤外線被写体画像に基づいて、運転者の血液中に溶け込んでいるエチルアルコール濃度を測定して酒気帯び状態を検出する。
【0051】
ゲート制御部52は、酒気帯び状態検出部48で酒気帯び状態を検出しない場合は、精算処理部50による精算処理に基づいて遮断機14を開いて車両を通行可能とするが、酒気帯び検出部48により酒気帯び状態を検出した場合には、精算処理が行われたとしても遮断機14の開放動作を禁止して、車両が駐車場から出ることを阻止し、これによって酒気帯び運転を未然に防止する。
【0052】
酒気帯び検出部48の機能は、詳細には、撮像制御部54、エチルアルコール検出部56、外乱物質検出部58及び判定部60で構成される。
【0053】
本実施形態の酒気帯び検出部48は、運転者の酒気帯び状態を顔面などの皮膚直下の毛細血管に表れる含有エチルアルコールにより検出する。毛細血管中の含有エチルアルコールの検出は、運転者の体温による人体からの赤外線放射光または赤外線反射光におけるエチルアルコールによる特定波長の吸収スペクトルによる減衰を検知することを基本としている。
【0054】
図5は本実施形態で検知するエチルアルコールの波長スペクトル分布を示した説明図である。エチルアルコールC25OHは、その分子構造に由来する吸収スペクトルを2.77μm、3.37μm及び9.5μmなどの特定波長に持っている。例えば波長2.77μmの吸収スペクトルは、エチルアルコール中の−CH3の結合伸縮に伴い、エチルアルコール分子が吸光する波長帯である。
【0055】
そこで運転者からの赤外光のうち、エチルアルコールの吸収波長λ1として、λ1=2.77μmを含む第1波長帯域を選択的に透過させる第1フィルタとしてλ1フィルタに波長可変フィルタ24を制御して赤外光を監視すると、エチルアルコールが毛細血管中に含まれている状態即ち酒気帯び状態では、λ1=2.77μmを含む第1波長帯域の赤外光は毛細血管中のエチルアルコール濃度に応じた吸光度を示し、このときの撮像素子で撮像されたλ1画像における各画素から求められた受光量I1は小さくなる。
【0056】
次に本実施形態にあっては、エチルアルコールの吸収スペクトルを与える波長λ1=2.77μmの近傍にエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2として、例えばλ2=3.0μmを含む第2波長帯域を選択的に透過させる第2フィルタとしてλ2フィルタに波長可変フィルタ24を制御して運転者からの赤外光を監視する。
【0057】
λ2フィルタを透過して得られる運転者からの赤外光の撮像画像であるλ2画像の画素から求められた受光量I2は、エチルアルコールの有無に関係なく、人体よりの赤外線放射量に相当する受光量が得られる。
【0058】
ここで正常状態での人体よりの赤外線放射量をI0とすると、エチルアルコール吸収スペクトルとなる波長λ1=2.77μmを含む第1波長帯域における吸光度aは
a=ln(I1/I0
となる。またエチルアルコールによる吸収率の小さな波長λ2=3.00μmを含む第2波長帯域における吸光度bは
b=ln(I2/I0
となる。
【0059】
そして、第1波長帯域の吸光度aと第2波長帯域の吸光度bとの間には
a<b<0
ln(I1/I0)<ln(I2/I0)<0
の関係が成り立つ。
【0060】
ここでエチルアルコール含有度A1を
A1=b−a=ln(I2/I0)−ln(I1/I0
と表わし、これを変形すると、
A1=ln(I2/I0)−ln(I1/I0
=ln{ln(I2/I0)/ln(I1/I0)}=ln(I2/I1
となる。
【0061】
このため、特性値として(I2/I1)を求めることで、エチルアルコール含有度Aを表わすことができる。即ち本実施形態にあっては、エチルアルコール含有度Aを
A=I2/I1 (1)
として算出する。この(1)式で与えられるエチルアルコール含有度Aが、予め定めた所定の閾値以上であれば、酒気帯びの度合が大きいと判断することができる。このような本実施形態におけるエチルアルコール含有度Aの算出は、図1のCPU32に設けた撮像制御部54及びエチルアルコール検出部56により行われる。
【0062】
撮像制御部54は、精算機10に対し運転者が駐車券を入れて精算処理部50で精算処理が開始された時に動作し、撮像装置12におけるフィルタ駆動部30による波長可変フィルタ24の切替動作で、λ1フィルタ、λ2フィルタ、更に後の説明で明らかにするλ3フィルタとしての波長帯域に切り替えながら、運転者の顔の画像を赤外線カメラ22により撮像し、λ1フィルタを透過して結像された第1被写体画像であるλ1画像62−1、λ2フィルタを透過して結像された第2被写体画像であるλ2画像62−2、更にλ3フィルタを透過して結像された第3被写体画像であるλ3画像62−3のそれぞれをメモリ34に格納する。
【0063】
ここで、赤外線カメラ22による撮像時にカメラ制御部28は赤外線光源16を動作して赤外線照明光を車両のウィンドウガラスを通して運転者に照射する。本実施形態にあっては図4に示したように、赤外線カメラ22により車外からウィンドウガラスを通して運転者を撮像する必要があり、通常のガラスは光の波長が2.5μmを越えると透過率が低下する。そこで、エチルアルコールの特徴スペクトルである波長2.77μmの光がウィンドウガラスを通る際の透過率が低下を補うため、赤外線光源16から補助的に赤外線照明光を運転者に照射している。
【0064】
また、本実施形態にあっては、人体から体温により発せられる赤外線の、血液中エチルアルコールによる吸収スペクトル特性を検知することで、血中アルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を得ているが、CCD撮像素子の信号量が不足する場合には、補助光源として赤外線光源16を用いることができる。
【0065】
CCD撮像素子の信号量が不足する理由としては、赤外線カメラ22と人体との距離が長い、赤外線カメラ22のレンズ径が十分大きくできない等の、カメラ配置上の制限条件が挙げられる。赤外線光源16を用いた場合、酒気帯び検出部48は人体で反射される赤外線の、血液中エチルアルコールによる反射スペクトル特性を検知することにより、血中アルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度Aを得ることができる。
【0066】
エチルアルコール検出部56は、メモリ34に格納されたλ1画像62−1とλ2画像62−2に基づいて、エチルアルコール濃度に対応した前記(1)式で与えられるエチルアルコール含有度Aを算出する。
【0067】
図6は図1のエチルアルコール検出部56でエチルアルコール含有度Aを計算する際に用いられる運転者の特徴領域の画像78を示している。運転者80の毛細血管中のエチルアルコールの濃度を赤外線受光量から検出するためには、運転者の顔の毛細血管が皮膚表面に表われていてエチルアルコールによる吸収スペクトルの減衰が十分に得られる場所を特定して、エチルアルコール含有度Aを算出する必要がある。
【0068】
図6の場合にあっては、エチルアルコールの有無に関係ない人体よりの赤外線放射量に相当する受光量が得られるλ2フィルタを透過して得られたλ2画像62−2を対象に、毛細血管からの体温による赤外線放射が出易い例えば唇などの皮膚の薄い特徴抽出領域82−1や、両目の周囲に設定した特徴抽出領域82−2,82−3を使用して、エチルアルコール含有度Aを算出する。
【0069】
前記(1)式におけるエチルアルコール含有度Aを算出するためのλ1画像62−1の受光量I1及びλ2画像62−2の受光量I2の計算は、特徴抽出領域に含まれる画素値の総和または平均値を求め、これをI1,I2として前記(1)式からエチルアルコール含有度Aを算出する。
【0070】
前記(1)式にあっては、λ1画像62−1の受光量I1とλ2画像62−2の受光量I2の除算値(I2/I1)を計算しているが、この代わりに減算値(I2−I1)を計算しても良いし、二乗除算値(I2/I12や二乗誤差(I2−I12を計算しても良い。
【0071】
また、ログアンプなどを使用することにより直接的に吸光度
ln(I2/I1)=ln(I2)−ln(I1
を計算してもよい。
【0072】
更に本実施形態にあっては、波長可変フィルタ24を更にλ3フィルタとしての波長帯域に切替えて撮像したλ3画像62−3から、外乱物質検出部58により外乱度Bを算出し、エチルアルコール検出部56で算出されたエチルアルコール含有度Aの適否を判定部60で判定するようにしている。
【0073】
これは被写体となる運転者80が例えば女性であった場合には、撮影対象とする顔には化粧が施されており、この化粧品に含まれる物質として例えばメントールC1020Oが存在した場合には、エチルアルコールが存在しないにも関わらず、メントールについてλ1画像62−1にλ1=2.77μmの吸収スペクトルが存在し、エチルアルコール含有度Aを誤検出する場合がある。
【0074】
即ち、化粧品などに含まれるメントールC1020Oはエチルアルコールと同様、2.77μmと3.37μmに吸収スペクトルを持っている。これに加え、メントールのベンゼン殻に由来する波長λ3=3.28μmにも固有の吸収スペクトルを持っている。
【0075】
そこで本実施形態にあっては、化粧品などに含まれるメントールをエチルアルコール検出に対する外乱物質と見なし、エチルアルコールと同じ吸収波長λ1=2.77μm及び3.37μm以外の固有の吸収波長λ3=3.28μmを選択的に透過させる第3フィルタとしてのλ3フィルタの波長帯域に波長可変フィルタ24を切替え、λ3フィルタを透過した赤外線放射光の撮像画像、即ちλ3画像62−3から受光量I3を測定し、人体よりの赤外線放射量に相当する受光量が得られるλ2画像62−2から得られた受光量I2を使用してメントールを判定するための外乱度Bとして
B=I2/I3 ・・・(2)
を設定する。
【0076】
この(2)式で与えられる外乱度Bが予め定めた所定値以上であれば、それはメントールであり、エチルアルコールではないと判断することができる。
【0077】
即ち、図1のCPU32に設けた外乱物質検出部60は、メモリ34に格納されたλ2フィルタを透過して得られたλ2画像62−2の受光量I2と、λ3フィルタを透過して得られたλ3画像62−3から得られた受光量I3に基づき、前記(2)式に従って外乱度Bを算出する。
【0078】
判定部60は、エチルアルコール検出部56で検出されたエチルアルコール含有度Aと、外乱物質検出部58で検出された外乱度Bに基づいて、エチルアルコール検出による酒気帯び状態と、メチルアルコール非検出による正常状態を判定する。
【0079】
具体的には、判定部60はエチルアルコール含有度Aが所定の閾値以上で外乱度Bが所定値以上の場合にエチルアルコール検出ありと判定し、酒気帯び状態を判定する。一方、エチルアルコール含有度Aが所定の閾値以上で外乱度Bも所定の閾値以上の場合には、エチルアルコールではなく、外乱物質である例えば化粧品などに含まれるメントールであることからエチルアルコールの非検出と判定し、正常状態を判定する。
【0080】
本実施形態における外乱物質は、メントール以外に、同じく化粧品などに多く使用されているステアリン酸C1735COOHが対象となる。ステアリン酸はエチルアルコールと同じ波長2.77μmと3.37μmに吸収スペクトルを持つが、エチルアルコールにはない−C00Hに起因した波長5.88μmに吸収スペクトルが表れる。
【0081】
したがって、ステアリン酸については更に波長λ4=5.88μmを選択的に透過するように波長可変フィルタ24を切替えて第3フィルタとしてのλ4フィルタを準備し、この状態で赤外線カメラ12で撮像したλ4画像をメモリ34に格納する。
【0082】
このステアリン酸の吸収スペクトルに対応したλ4画像についての外乱物質検出部58の処理は、λ4画像から受光量I4を算出し、λ3画像の場合と同様、前記(2)式からステアリン酸についての外乱度Bを算出し、判定部60で外乱度Bが所定値以下であればステアリン酸であり、エチルアルコールではないと判断できる。
【0083】
更に、エチルアルコールに対する外乱物質としてグリセリンC35(OH)3の場合には−CH3に由来する吸収スペクトルの波長2.77μmが表れないため、グリセリンについてはλ1フィルタのλ1画像62−1につき、その受光量I1に減衰が起きず、前記(1)式で算出されるアルコール含有度Aが所定の閾値以上となることでエチルアルコールでないことが確認でき、したがってグリセリンについては外乱物質として考慮する必要はない。
【0084】
本実施形態は外乱物質として化粧品などに多く含まれるメントールとステアリン酸を例に取っているが、これ以外のエチルアルコールと同じ波長にスペクトル吸収を持つ物質が存在する場合には、それぞれの物質につきエチルアルコールの吸収波長以外の固有の波長につき、その波長固有のフィルタによる画像を取得して外乱度を求めることで、外乱物質によるエチルアルコールの誤検出を確実に回避することができる。
【0085】
なお、-CH3と−OHをもつ物質は無数にあり、その内、積極的に顔に付着させる可能性がある物質として、化粧品に含まれるメントールとステアリン酸を例示している。他にも、糖尿病患者の体内で生成されるアセト酢酸も、−CH3と−OHを持ち、エタノールと同じスペクトル吸収帯を持つが、エタノールにはない5.83μmの吸収帯を第3波長帯域として測定することにより、外乱物質であることを認識できる。
【0086】
図7は図1の第1実施形態による駐車場ゲート管理処理を示したフローチャートである。図7において、まずステップS1で精算機10のCPU32は利用者による精算に対する待受け処理を行い、ステップS2で駐車券挿入を検知するか否か判別している。
【0087】
ステップS2で駐車券挿入が検知されると、ステップS3に進み、駐車料金精算処理が行われる。この駐車料金精算処理は、挿入された駐車券の入場時刻と現在時刻から駐車時間を求め、駐車時間に時間単価を乗じて駐車料金を求め、表示部38に駐車料金を表示し、音声出力部40により駐車料金の支払いをガイダンスする。
【0088】
続いてステップS4で、撮像装置12を使用して、CPU32に設けた酒気帯び検出部48の撮像制御部54が、精算機10に停車している車両の運転者を、図2に示すように赤外線光源16による照明をしながら撮像装置12の赤外線カメラ22で撮像し、運転者画像を取得する。
【0089】
続いてステップS5で、撮像した運転者画像に基づき、エチルアルコール検出部56でエチルアルコール検出処理を実行する。続いてステップS6で、エチルアルコール検出処理の処理結果から酒気帯び状態の有無が判定され、酒気帯び状態でなかった場合には、ステップS7で駐車料金の表示と音声ガイダンスを行い、駐車料金の支払いが行われると遮断機14を開くゲート開制御を行って一連の処理を終了し、再びステップS1の待受け処理に戻る。
【0090】
一方、ステップS6で酒気帯び状態が判別された場合には、ステップS9に進み、運転者に警告を発信する。例えば音声出力部40により「酒気帯び運転が検知されました。ゲートは開きません」といった音声メッセージを出力する。続いてステップS10で駐車料金の支払いが行われたとしても遮断機14を開くゲート開制御は行わず、ステップS11で運転者に対し対応方法を音声ガイダンスする。
【0091】
この対応方法の音声ガイダンスは「元の駐車場所に車両を戻し、十分な休憩を取って下さい」といった音声ガイダンスや、「代行運転をご希望される場合には係員に連絡をして下さい」といった音声ガイダンスを行う。
【0092】
このような酒気帯びの検出に基づくゲート閉制御の状態で、ステップS12で万一、ゲート強行突破が判別された場合には、ステップS13に進み、メモリ34に記憶している酒気帯び状態が検出された運転者の画像を画像記録部36に記録した後、ステップS14で外部通報部44により警察あるいは駐車場の管理機関などに対処要請を自動通報する。
【0093】
ゲート閉制御状態での酒気帯び運転車両の強行突破の検知は、精算機10に設けている車両の接近を検出する接近センサの検出信号、あるいは遮断機14に設けている衝撃センサなどの検出信号から判定すればよい。
【0094】
また、撮像装置12で精算機10に停車した車両の運転者を撮像する際に、車両のナンバーを同時に撮像しておき、ゲート強行突破の運転者画像の記録に車両ナンバーが残るようにすることが望ましい。
【0095】
またステップS9で酒気帯び状態が検出された際に、運転者に警告を発信すると同時に、駐車場の係員に対し外部通報部44を使用して酒気帯び運転が検出されたことを通知し、必要な対応を係員に取らせるようにしてもよい。
【0096】
図8は図5のステップS4及びS58におけるエルエチルアルコール検出処理の詳細を示したフローチャートである。図8において、エチルアルコール検知処理は、まずステップS15で波長可変フィルタ24をλ1フィルタとしての帯域にセットし、ステップS16で赤外線光源16を点灯して赤外線カメラ22の撮像動作を行い、λ1画像62−1を取得してメモリ34に保存する。
【0097】
次にステップS17で波長可変フィルタ24をλ2フィルタとしての帯域にセットし、ステップS18で赤外線カメラ22によりλ2画像62−2を取得してメモリ34に保存する。更にステップS19で波長可変フィルタ24をλ3フィルタとしての帯域にセットし、ステップS20で撮像動作によりλ3画像62−3をメモリ34に保存する。
【0098】
このステップS16〜S20におけるλ1画像、λ2画像、λ3画像の撮像によるメモリ保存は、1回であってもよいし、必要に応じてn回連続的に撮像保存するようにしてもよい。
【0099】
続いてステップS21で、図6に示したように、エチルアルコールの有無に関係なく、人体よりの赤外線放射量に相当する受光量が得られるλ2画像62−2を対象に、唇及び目などの毛細血管からの熱が表れ易い場所につき特徴抽出領域82−1〜82−3を設定し、この領域の画素につき受光量の算出を行う。
【0100】
まずステップS22でλ1画像から受光量I1を計算し、次にステップS23でλ2画像から受光量I2を計算し、更にステップS24でλ3画像から受光量I3を計算する。
【0101】
次にステップS25で、前記(1)式によりアルコール含有度Aを計算する。続いてステップS26で、算出したアルコール含有度Aは予め定めた所定値以上か否か判断する。この場合の所定値は製造時に設計上定めた値であってもよいし、運転者の正常状態で取得したアルコール含有度Aの初期値を予め登録して使用してもよい。
【0102】
ステップS26でアルコール含有度Aが所定値以上であった場合には毛細血管中にエチルアルコールが含有していると判断されてステップS27に進み、一方、エチルアルコール含有度Aが所定値未満の場合にはエチルアルコールによるスペクトル吸収はないことから、ステップS30に進んでエチルアルコール非検出から正常状態を判定し、図7のメインルーチンに戻る。
【0103】
アルコール含有度Aが所定値以上であった場合に進むステップS27にあっては、外乱度Bを前記(2)式から算出し、算出した外乱度Bが所定値未満であることをステップS28で判定した場合には、これはエチルアルコール以外の外乱物質によるエチルアルコール含有度Aの誤検知と判断し、ステップS30に進んでエチルアルコール非検出から正常状態を判定し、図7のメインルーチンに戻る。
【0104】
一方、ステップS28で外乱度Bが所定値以上の場合には、外乱物質によるエチルアルコールの誤検出はないもとのと判定し、ステップS29に進み、酒気帯び状態と判定し、図7のメインルーチンに戻る。
【0105】
図9は図1の波長可変フィルタに代えて使用する回転円板を用いたフィルタ切替えの赤外線カメラを示した説明図である。赤外線カメラ22には図3と同様に光学系と赤外線波長帯域に感度を持つCCD撮像素子が設けられている。
【0106】
赤外線カメラ22の前には図1の波長可変フィルタ24に代えてフィルタ切替ユニット84が配置され、回転円盤の例えば3箇所に帯域の異なるフィルタとして、本実施形態にあってはλ1フィルタ86−1、λ2フィルタ86−2及びλ3フィルタ86−3を装着し、これらのフィルタをモータを備えた駆動部により順次切り替えながら、運転者の顏の赤外線放射光または赤外線反射光による画像を撮像する。
【0107】
図10は駐車場管理を対象とした本発明による車両通行管理システムの第2実施形態を示したブロック図であり、この第2実施形態にあっては、図1の第1実施形態が駐車場出口の遮断機を開閉制御しているのに対し、駐車場における車両駐車スペースのそれぞれに設置している車輪ロック装置を制御するようにしたことを特徴とする。
【0108】
図10の車両通行システムの第2実施形態にあっては、精算機10に対し、図1の実施形態と同様、撮像装置12及び赤外線光源16を設けているが、遮断機に代えて車輪ロック装置88を設けている。
【0109】
このため、精算機10には車輪ロック駆動部90が設けられることになる。それ以外の撮像装置12及び精算機10の構成は図1の実施形態と同じであることから、同じ符号を付けている。
【0110】
図11は図10の第2実施形態が適用された駐車場を平面で示した説明図である。図11の駐車場20にあっては、白線などで仕切られた駐車スペースのそれぞれに車輪ロック装置88が設置されている。また駐車場20の出入口近傍には精算機10が設置されており、精算機10に撮像装置12及び赤外線光源16が設けられている。
【0111】
図12は図11の駐車場に設置された車輪ロック装置の動作を示した説明図である。図12において、駐車場に車両18を止める際には、駐車スペースに設置している車輪ロック装置88を例えば前輪92が乗り越えるようにして車両を駐車する。車輪ロック装置88を乗り越えて車両18を駐車すると、車輪ロック装置88に設けているセンサが車両18の駐車を検出し、この車両駐車信号を精算機10に送り、精算機10側で駐車から一定時間例えば5分後に車輪ロック装置88を動作し、ロックプレート94を図示のように起立させて、前輪92の後退を止める。
【0112】
車両18を止めた利用者は精算機10に出向き、自分の車両18を止めた駐車スペースに示されている2桁の番号を精算機10に入力することで、駐車券の発行を受けることができる。
【0113】
駐車場を出る際には、まず精算機10に出向き、自分の駐車スペースの番号をボタン操作で入力し、精算ボタンを押すと駐車料金が計算されて表示され、駐車料金を支払うと、図12のように立ち上がって車両の移動を阻止していたロックプレート94が閉じ、車両の通過を可能とする。
【0114】
この駐車場を出る際の精算機10で運転者70が駐車料金を精算する際、本実施形態にあっては撮像装置12により運転者70の赤外線画像の撮像が行われ、この赤外線画像に基づいて酒気帯び状態が検出され、もし酒気帯び状態を判定した場合には、駐車料金の支払いが行われても車輪ロック装置88のロックプレート94を戻すゲート閉動作は行われず、酒気帯び状態が判別された運転者70による車両18の運転を阻止することになる。
【0115】
具体的な処理としては、図1の第1実施形態の駐車場ゲート管理処理を示した図7のフローチャートの処理と基本的に同じであり、ゲート開制御及びゲート閉制御が車輪ロック装置88を対象として行われる点が相違するだけである。
【0116】
図13は駐車場を管理対象とした本発明による車両通行管理システムの第3実施形態を示したブロック図であり、この実施形態にあっては、赤外線カメラに代えて赤外線センサを使用するようにしたことを特徴とする。
【0117】
図13において、精算機10に対しては受光装置96、可視カメラ101、赤外線光源16及び遮断機14が設けられる。即ち、図1の第1実施形態の撮像装置12に代えて受光装置96と可視カメラ101を設けており、それ以外の点は基本的に同じである。
【0118】
受光装置96は、マルチ赤外線センサ98、信号制御部100、偏光フィルタ26を備え、信号制御部100に対しては赤外線光源16を外部接続している。
【0119】
図14は図13のマルチ赤外線センサ98を示している。マルチ赤外線センサ98は、受光側にウィンドウ106を備えたケース104内に、例えば4つの赤外線受光素子108−1〜108−4を配置し、その前方にλ1フィルタ112−1、λ2フィルタ12−2、λ3フィルタ112−3及びλ4フィルタ112−4を配置している。赤外線検出素子108−1〜108−4からは外部にリード110が取り出されている。
【0120】
赤外線検出素子108−1〜108−4としては、焦電素子、サーモパイル、サーミスタ、ボロメータなどの非冷却型素子を使用できる。またMCT、Insbなどの冷却型素子を用いてもよい。
【0121】
λ1フィルタ112−1は、エチルアルコールのスペクトル吸収波長λ1=2.77μmを透過するフィルタである。λ2フィルタ112−2は、エチルアルコールのスペクトル吸収波長の近傍のエチルアルコールの有無の影響を受けない波長λ2=3.00μmを透過するフィルタである。
【0122】
λ3フィルタ112−3は、外乱物質であるメントールに固有な波長λ3=3.28μmを透過するフィルタである。更にλ4フィルタ112−4は、外乱物質であるステアリン酸に固有な波長λ4=5.88μmを透過するフィルタである。
【0123】
このようにフィルタと受光素子を1対1に対応して組み合わせたマルチ赤外線センサ98によれば、マルチ赤外線センサ98自体で固定的に波長λ1,λ2,λ3,λ4に対応した受光量を直接検出できるため、図1の第1実施形態に示した波長可変フィルタ24とフィルタ駆動部30が不要となり、装置構成が簡単に出来ると共に、CPU32による処理も簡略化されて処理負荷が低減できる。
【0124】
一方、CPU32の酒気帯び検出部48には、マルチ赤外線センサ98に対応して受光制御部105の機能が設けられている。受光制御部105は、マルチ赤外線センサ98によりλ1フィルタ112−1を透過して受光された被写体の第1受光信号であるλ1受光量102−1をメモリ34に記憶し、またλ2フィルタ112−2を透過して受光された被写体の第2受光信号であるλ2受光量102−2をメモリ34に記憶し、またλ3フィルタ112−3を透過して受光された被写体の第3受光信号であるλ3受光量102−3をメモリ34に記憶し、更にλ4フィルタ112−4を透過して受光された被写体の第4受光信号であるλ4受光量102−4をメモリ34に格納している。
【0125】
即ちマルチ赤外線センサ98を使用した場合には、受光制御部105による受光制御でメモリ34に直接、λ1受光量102−1としてI1、λ2受光量102−2としてI2、λ3受光量102−3としてI3、更に、λ4受光量102−4としてI4のそれぞれが得られる。
【0126】
このためエチルアルコール検出部56にあっては、メモリ34に格納されているλ1受光量I1とλ2受光量I2から前記(1)式によりエチルアルコール含有度Aを算出する。また外乱物質検出部58はメモリ34に格納されているλ2受光量I2とλ3受光量I3から前記(2)式により外乱度B1を算出し、また、λ2受光量I2とλ4受光量I4から前記(2)式により外乱度B2を算出し、最終的に判定部60でエチルアルコールの検出、非検出を判定する。
【0127】
図13の第3実施形態による駐車場ゲート処理は、図7に示した図1の第1実施形態と基本的に同じであるが、ステップS4,S5の処理がマルチ赤外線センサ98に対応した固有の処理となる。
【0128】
図15は図13の第3実施形態に固有なエチルアルコール検出処理を示したフローチャートである。図15において、ステップS31〜S34ではマルチ赤外線センサ98の赤外線検出素子112−1〜112−4によりλ1受光量I1、λ2受光量I2、λ3受光量I3及びλ4受光量I4を順次検出して、メモリ34に保存する。
【0129】
続いてステップS35でアルコール含有度Aを計算し、ステップS36でアルコール含有度Aが所定値未満であれば、エチルアルコールの非検出と判断し、ステップS42に進んで正常状態を判定して図1と同じメインルーチンにリターンする。
【0130】
ステップS36でアルコール含有度Aが所定値以上であれば、エチルアルコールの検出と判断し、ステップS37で外乱度B1を計算する。外乱度B1はメントールの固有吸収スペクトルλ3=3.28μmから求めた外乱度である。
【0131】
ステップS38で外乱度B1が所定値以上の場合には、外乱物質であるメントールによるエチルアルコール含有度Aではなく、正しいエチルアルコール含有度Aであると判断し、ステップS42に進み、外乱度B2を計算する。
【0132】
外乱度B2は外乱物質としてλ4=5.88μmに吸収スペクトルを持つステアリン酸についての計算である。ステップS40で外乱度B2が所定値以上の場合には、外乱物質であるステアリン酸によるエチルアルコールの含有度Aではなく、正しいエチルアルコール検出度Aであると判断し、ステップS41に進んで酒気帯び運転と判定して、図7と同じメインルーチンにリターンする。
【0133】
図16はETCゲートを対象とした本発明による車両通行管理システムの第4実施形態を示したブロック図である。図16において、ETCゲートを対象とした第4実施形態にあっては、ETCゲート装置114、撮像装置12、赤外線光源16、遮断機14−1,14−2を備えている。
【0134】
撮像装置12は図1の駐車場を対象とした第1実施形態と同じであり、赤外線カメラ22、波長可変フィルタ24、偏光フィルタ26、カメラ制御部28及びフィルタ駆動部30を備えており、カメラ制御部28に対しては赤外線光源16が外部接続されている。
【0135】
ETCゲート装置114には、図1の第1実施形態における精算機10と同様、CPU32が設けられ、CPU32に対してはメモリ34及び画像記録部36が設けられている。
【0136】
CPU32には、プログラムにより実現される機能として、酒気帯び検出部48、ゲート制御部52に加え、ETCゲート管理に固有なETC処理部118を設けている。またCPU32に対しては、ETC処理部118の機能に対応して、アンテナ122を備えたETC通信部120、表示部124、接近検出部126が設けられ、更に図1の第1実施形態と同様、外部通報部44と遮断機駆動部46が設けられている。
【0137】
CPU32に設けた酒気帯び検出部48は、図1の第1実施形態と同様、撮像制御部54、エチルアルコール検出部56、外乱物質検出部58及び判定部60の機能を備えている。
【0138】
図17は図16の第4実施形態が適用された高速道路入口料金所を平面で示した説明図である。図17において、高速道路入口料金所は一般道路から高速道路に進入する進入路に設置されており、例えば係員詰所116を境に二股に分かれて合流する通行路を備えている。
【0139】
係員詰所116には図16に示したETCゲート装置114が設置されている。また係員詰所116を挟んだ通行路115−1,115−2のそれぞれには、遮断機14−11,14−12及び遮断機14−21,12−22が設置されている。
【0140】
更に通行路115−1,115−2の入口側の二股に分かれた分岐部分に対しては、それぞれ撮像装置12と赤外線光源16が設置され、通行路115−1または115−2に進入する車両の運転者を、赤外線光源16から補助的な照明を行いながら、撮像装置12で運転者の赤外線被写体画像を撮像できるようにしている。
【0141】
図17の状態にあっては、通行路115−2に対し車両18−1が進入しようとしている状態であり、撮像装置12側に設置されている接近センサ(図示せず)により車両18−1の接近を検出して、ETCゲート装置114が赤外線光源16を動作して、補助的な赤外線光により照明すると同時に撮像装置12を動作して、車両18−1の運転者から放出される赤外線による被写体画像を撮像し、撮像した被写体画像に基づき、ETCゲート装置114でエチルアルコール検出処理に基づき酒気帯び状態の有無を判定する。
【0142】
また車両18−1が通行路115−2に進入すると、車両18−1に搭載しているETCカードをセットしたETC装置と、係員詰所116に設置しているETCゲート装置114との間で、図16に示したETC通信部120のアンテナ122による無線通信回線を通じてETC計算処理が行われ、ETC処理の正常終了で、通常であれば出口側の遮断機14−12を開いて車両を通過させる。
【0143】
図18は、通行路115−2に進入した車両18−1について撮像装置12で撮像した運転者の赤外線による被写体画像から酒気帯び状態が検出された場合であり、酒気帯び状態が検出された場合には、ETCゲート装置114は車両18−1のETC装置との間で正常なETC計算処理が完了したとしても、出口側の遮断機14−12を開かずに閉鎖状態とし、ETCゲート装置114により車両18−1の運転者に対し酒気帯び状態が検知されたことの警告を行い、高速道路への酒気帯び運転による進入を阻止する。
【0144】
更に本実施形態にあっては、車両18−1に対し酒気帯び運転を警告したときに、車両18−1が一般道路に逆送して戻るような事態を回避するため、図19に示すように、ETCゲート装置114側で車両18−1の酒気帯び運転を判別した際には遮断機14−11を閉鎖し、酒気帯び運転が判別された車両18−1を高速道路側にも一般道路側にも移動できないように封じ込めるゲート制御を行う。
【0145】
しかしながら、酒気帯び状態を検出して警告を行い、更に入口側、出口側の遮断機14−11,14−12を閉鎖状態にしたとしても、悪質な運転者にあっては閉鎖状態としている遮断機14−12を突っ切って高速道路に侵入する強行突破を行う場合がある。
【0146】
このように酒気帯び運転車両18−1の強行突破を判別した際には、ETCゲート装置114から警察や高速道路の管理機関に酒気帯び運転が検知された車両18−1が高速道路に進入したことを自動通報し、その取締りを可能とする。
【0147】
特にETCゲートで使用している遮断機14−11,14−12は、遮断機故障などにより遮断機が開かずに車両が衝突する可能性があり、その場合の車両破損を防止するために、車両が衝突した際に遮断機、具体的には遮断ポールが変形して車両の通過を許容できるようにしている。したがって酒気帯び運転で車両18−1を封じ込めても遮断機14−12を押し退けて強行突破する可能性が高く、この場合には警察や高速道路の管理機関に自動通報して取締りを可能としている。
【0148】
図21は図16の第4実施形態によるETCゲート管理処理を示したフローチャートであり、図16を対象に説明すると次のようになる。
【0149】
ETCゲート管理処理は、まずステップS43で待ち受け処理を行っており、ステップS44で接近検出部126によりETCゲートに対する車両の接近を検出すると、ステップS45に進み、ETC処理部118によりETC計算処理を、ETC通信部120による車両搭載のETC装置のとの間のやり取りを通じて実行する。
【0150】
続いてステップS46で、例えば図22に示すように、ETCゲートに接近する車両18−1に対応して設けられている赤外線光源16を動作して照明すると同時に、撮像装置12に設けている赤外線カメラ22により波長可変フィルタ24で透過波長を変化させながら、λ1画像62−1、λ2画像62−2、λ3画像62−3をそれぞれ撮像してメモリ34に記憶することで、運転者画像を取得する。このステップS46の運転者画像取得処理は、図16の酒気帯び検出部48に設けた撮像制御部54が行う。
【0151】
続いてステップS47で、エチルアルコール検出部56により運転者について撮像したλ1画像62−1、λ2画像62−2、λ3画像62−3に基づき、エチルアルコール検出処理を実行する。
【0152】
ここでステップS46の運転者画像取得処理及びステップS47のエチルアルコール検出処理の詳細は、図8のフローチャートに示した図1の第1実施形態によるエチルアルコール検出処理と同じ処理である。
【0153】
次にステップS48で酒気帯び状態の有無が判別され、酒気帯び状態でない場合には、ステップS49でETC料金信号を発信し、ステップS50で遮断機14−12を開くゲート開制御を行い、進入車両を高速道路に通行可能とする。
【0154】
一方、ステップS48で酒気帯び状態が判別された場合には、ステップS51に進み、運転者に警告発信を行う。この警告発信は、図16のETC通信部120を使用して、車両に搭載したETC装置に警告のための音声メッセージデータを送信し、車両に搭載したETC装置から例えば「酒気帯び運転が検知されました。停車して下さい」といった警告を出力させる。またETCゲートを設置している料金所の詰所に設置している外部用のスピーカなどから同様な警告を発信し、同様に外部に設置している表示部124に「ゲート封鎖」などを表示する。
【0155】
続いてステップS52で、例えば図19に示したように、出口側の遮断機14−12を閉鎖状態に維持すると同時に、入口側の遮断機14−11を閉鎖し、酒気帯び状態と判定された車両18−1をETCゲート内に封じ込める。
【0156】
続いてステップS53で係員に酒気帯び運転の車両が検知されたことを通報し、同時に車両搭載のETC装置を通じて運転者に対応方法を音声ガイダンスにより出力する。この運転者に対する音声ガイダンスとしては、例えば「酒気帯び状態のまま運転することはできませんので係員の指示に従って下さい」といった音声ガイダンスを行う。
【0157】
続いてステップS54で酒気帯び運転が検出された車両のゲート強行突破を万一判別した場合には、ステップS55に進み、ステップS46で取得している運転者画像を画像記録部36に記録すると同時に、ステップS56で、外部通報部44により警察及び高速道路の管理機関などに対し、酒気帯び運転車両が高速道路に進入したことに対する対処要請を自動的に行う。
【0158】
図22〜図24は、図16の第4実施形態が適用される駐車スペースを備えた高速道路入口料金所を平面で示した説明図である。
【0159】
図22の高速道路入口料金所にあっては、ETCゲートの設置場所を過ぎた高速道路側に駐車スペース130が確保されている。このように駐車スペース130がETCゲートの近くにある場合には、ETCゲートに進入した車両18−1につき、撮像装置12による運転者画像からETCゲート装置114で酒気帯び運転が判別された場合には、図23のように、入口側と出口側の遮断機14−11,14−12を閉鎖状態として車両18−1を封じ込めた後、係員の誘導などにより、図24に示すように入口側の遮断機14−12を開いて、酒気帯び状態が判別された車両18−1を駐車スペース130に誘導して停止させ、酒気帯び状態にある運転者に休息を取らせて、酒気帯び運転を未然に防止する。
【0160】
もちろん、駐車スペース130に駐車した後、運転者が希望するようにあれば代行運転サービスなどに通報し、代行運転による酒気帯び運転の防止で対処することも可能である。
【0161】
図25はETCゲートを管理する本発明による車両通行管理システムの第5実施形態を示したブロック図であり、この第5実施形態にあっては、図16の第4実施形態に設けている撮像装置12に代えて受光装置96と可視カメラ101を設けたことを特徴とする。
【0162】
受光装置96は、マルチ赤外線センサ98、信号制御部100及び偏光フィルタ26を備え、信号処理部100に対し赤外線光源16を外部接続している。
【0163】
またETCゲート装置114は図16の第1実施形態と基本的に同じであるが、CPU32に設けている酒気帯び検出部48に、マルチ赤外線センサ98に対応して受光制御部105が設けられる。
【0164】
この第5実施形態における受光装置96及び受光制御部105を備えた酒気帯び検出部48の構成は、図13に示した駐車場を対象とした第3実施形態と同じであり、マルチ赤外線センサ98としては、同様に図14のものが使用される。
【0165】
ETCゲート装置114は図16の第4実施形態と基本的に同じであるが、酒気帯び検出部48による検出処理がマルチ赤外線センサ98により検出されて、メモリ34に記憶されているλ1受光量群102−1、λ2受光量群102−2、λ3受光量群102−3及びλ4受光量群102−4に基づいて処理される点で相違している。
【0166】
この第5実施形態における酒気帯び検出部48によるエチルアルコール検出処理の詳細は、図15に示した第3実施形態におけるエチルアルコール検出処理と同じ処理内容である。
【0167】
なお上記の実施形態にあっては、波長可変フィルタによるフィルタ切替えやフィルタ切替ユニットによる機械的なフィルタ切替えを例に取るものであったが、回折格子などを用いた分光器により、目的とするスペクトル帯域の画像もしくは受光量を測定するようにしてもよい。
【0168】
また図13の第3実施形態及び図25の第5実施形態にあっては、図14に示したマルチ赤外線センサを使用した場合を例に取っているが、センサ自体にλ1、λ2、λ3、λ4フィルタを持たない1または複数の赤外線検出素子を備えた赤外線センサを使用し、この場合には、図1の第1実施形態に示したように波長可変フィルタ24を使用するかあるいは図9のフィルタ切替ユニット64を使用することで、同様に目的とするスペクトル帯域の受光量を測定することができる。
【0169】
また図16〜図25に示したETCゲートを管理する車両通行管理システムの第4実施形態及び図5実施形態については、高速道路入口料金所を例に取るものであったが、同様に高速道路出口料金所についても、まったく同様に第4実施形態及び第5実施形態を適用することができる。
【0170】
更に高速道路入口料金所または出口料金所以外に高速道路の途中に設置されている料金所のETCゲートについても、第4実施形態及び第5実施形態の本発明による車両通行管理システムを適用することができる。
【0171】
また上記の実施形態は駐車場ゲート及びETCゲートを例に取るものであったが、本発明はこれに限定されず、車両の通行を管理するゲート装置であれば適宜のゲート装置につき本発明をそのまま適用することができる。
【0172】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】駐車場を管理する車両通行管理システムの第1実施形態を示したブロック図
【図2】第1実施形態が適用された駐車場を平面で示した説明図
【図3】第1実施形態で使用する波長可変フィルタを用いた赤外線カメラを示した説明図
【図4】第1実施形態の赤外線カメラに設けた偏光フィルタによる赤外線反射光の減衰除去を示した説明図
【図5】エチルアルコールの波長スペクトラム分布を示した説明図
【図6】第1実施形態における被写体画像の特徴領域の抽出を示した説明図
【図7】第1実施形態による駐車場ゲート管理処理を示したフローチャート
【図8】図7のステップS4及びS5におけるエチルアルコール検出処理の詳細を示したフローチャート
【図9】波長可変フィルタに代えて使用するフィルタ切替えの赤外線カメラを示した説明図
【図10】駐車場を管理する車両通行管理システムの第2実施形態を示したブロック図
【図11】第2実施形態が適用された駐車場を平面で示した説明図
【図12】図11の駐車場に設置された車輪ロック装置を示した説明図
【図13】駐車場を管理する車両通行管理システムの第3実施形態を示したブロック図
【図14】図13の第3実施形態で使用するマルチ赤外線センサを示した説明図
【図15】図13の第3実施形態におけるエチルアルコール検出処理を示したフローチャート
【図16】ECTゲートを管理する車両通行管理システムの第4実施形態を示したブロック図
【図17】第4実施形態が適用された高速道路入口料金所を平面で示した説明図
【図18】高速道路入口料金所で酒気帯び運転が検出された状態を示した説明図
【図19】酒気帯び運転の検出により前後の遮断機を閉鎖位置に動作して車両を封じ込めるゲート制御を示した説明図
【図20】酒気帯び運転の検出により閉鎖した遮断機の強行突破を示した説明図
【図21】第4実施形態によるETCゲート管理処理を示したフローチャート
【図22】第4実施形態が適用される駐車スペースを備えた高速道路入口料金所を平面で示した説明図
【図23】酒気帯び運転の検出により前後の遮断機を閉鎖位置に動作して車両を封じ込めるゲート制御を示した説明図
【図24】酒気帯び運転の検出後に係員の指示により駐車スペースに誘導する状態を示した説明図
【図25】ECTゲートを管理する車両通行管理システムの第5実施形態を示したブロック図
【符号の説明】
【0174】
10:精算機
12:撮像装置
14,14−1,14−2:遮断機
16:赤外線光源
18,18−1〜18−3:車両
20:駐車場
22:赤外線カメラ
24:波長可変フィルタ
26:偏光フィルタ
28:カメラ制御部
30:フィルタ駆動部
32:CPU
34:メモリ
36:画像記録部
38:表示部
40:音声出力部
42:金銭処理部
44:外部通報部
46:遮断機駆動部
48:酒気帯び検出部
50:精算処理部
52:ゲート制御部
54:撮像制御部
56:エチルアルコール検出部
58:外乱物質検出部
60:判定部
62−1:λ1画像
62−2:λ2画像
62−3:λ3画像
64:CCD撮像素子
66:対物レンズ
68:結像レンズ
70:運転者
72,74:光軸
76:水平偏光反射成分
78:画像
80:運転者画像
82−1〜82−3:特徴領域
84:フィルタ切替ユニット
86−1:λ1フィルタ
86−2:λ2フィルタ
86−3:λ3フィルタ
88:車輪ロック装置
90:車輪ロック駆動部
92:車輪
94:ロックプレート
96:受光装置
98:マルチ赤外線センサ
100:信号制御部
101:可視カメラ
102−1,112−1:λ1フィルタ
102−2,112−2:λ2フィルタ
102−3,112−3:λ3フィルタ
104:ケース
106:ウィンドウ
108−1〜108−4:受光素子
110:リード
112−4:λ4フィルタ
114:ETCゲート装置
116:係員詰所
118:ETC処理部
120:ETC通信部
122:アンテナ
124:表示部
126:接近検出部
130:駐車スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断機の開閉動作により車両の通行を制御するゲート装置と、
前記ゲート装置に接近した車両の運転者から放射または反射される赤外線の被写体画像に基づいて、前記運転者の血液中に溶け込んでいるエチルアルコール濃度を測定して酒気帯び状態を検出する酒気帯び検出部と、
前記酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出しない場合は、前記ゲート装置を開放動作させて車両を通行可能とし、前記酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出した場合には、前記ゲート装置の開放動作を禁止して車両の通行を阻止するゲート制御部と、
を備えたことを特徴とする車両通行管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両通行管理システムに於いて、前記酒気帯び検出部は、
赤外線波長帯域に感度を有する撮像素子と、
被写体像を前記撮像素子に結像させる光学系と、
前記被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1フィルタと、
前記被写体からの前記第1波長帯域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2フィルタと、
前記被写体からの前記エチルアルコールと同じ前記第1波長体域に吸収波長を持つ外乱物質の他の吸収波長を含む第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3フィルタと、
前記第1のフィルタを透過して結像された第1被写体画像、前記第2フィルタを透過して結像された第2被写体画像、及び前記第3フィルタを透過して結像された第3被写体画像を、前記撮像素子により撮像してメモリに格納する撮像制御部と、
前記メモリに格納された第1被写体画像と第2被写体画像に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2被写体画像と第3被写体画像に基づいて前記外乱物質の濃度に対応した外乱度を算出する外乱物質検出部と、
前記エチルアルコール含有度が所定の閾値未満で前記外乱度が所定の閾値以上の場合に酒気帯び状態と判定し、前記エチルアルコール含有度が所定の閾値以上で前記外乱度も所定の閾値以上の場合に正常状態と判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする車両通行管理システム。
【請求項3】
請求項1記載の車両通行管理システムに於いて、前記酒気帯び検出部は、
1又は複数の赤外線受光素子を備えた赤外線センサと、
被写体像を前記赤外線受光センサに結像させる光学系と、
前記被写体からのエチルアルコールの吸収波長を含む第1波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第1フィルタと、
前記被写体からの前記第1波長体域の近傍となる前記エチルアルコールによる吸収率の小さな波長を含む第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第2フィルタと、
前記被写体からの前記エチルアルコールと同じ前記第1波長体域に吸収波長を持つ外乱物質の他の吸収波長を含む第3波長帯域の赤外光を選択的に透過させる第3フィルタと、
前記赤外線センサにより、前記第1フィルタを透過して受光された被写体の第1受光信号、前記第2フィルタを透過して受光された被写体の第2受光信号、及び前記第3フィルタを透過して受光された被写体の第3受光信号を検出してメモリに格納する受光制御部と、
前記メモリに格納された第1受光信号と第2受光信号に基づいて前記エチルアルコール濃度に対応したエチルアルコール含有度を算出するエチルアルコール検出部と、
前記メモリに格納された第2受光信号と第3受光信号に基づいて前記外乱物質の濃度に対応した外乱度を算出する外乱物質検出部と、
前記エチルアルコール含有度が所定の閾値以上で前記外乱度が所定の閾値未満の場合に酒気帯び状態と判定し、前記エチルアルコール含有度が所定の閾値以上で前記外乱度も所定の閾値以上の場合に正常状態と判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする車両通行管理システム。
【請求項4】
請求項2又は3記載の車両通行管理システムに於いて、
前記第1フィルタは第1波長帯域として2.77μm又は3.37μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第2フィルタは前記第1波長帯域を含まない第2波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、
前記第3フィルタは、前記外乱物質がメントールの場合、前記第3波長帯域として3.28μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させ、前記外乱物質がステアリン酸の場合、前記第3波長帯域として5.88μmを含む波長帯域の赤外光を選択的に透過させることを特徴とする車両通行管理システム。
【請求項5】
請求項2又は3記載の車両通行管理システムに於いて、前記酒気帯び検出部は、更に、前記撮像素子の撮像時又は前記赤外線センサの受光検出時に、前記運転者に赤外線を照射して反射させる赤外線光源を設けたことを特徴とする酒気帯び運転防止装置。
車両通行管理システム。

【請求項6】
請求項2又は3記載の車両通行管理システムに於いて、更に、前記光学系は、車両のフロントガラスによる外部からの赤外線の反射光を減衰除去する偏光フィルタを備えたことを特徴とする車両通行管理システム。
【請求項7】
請求項1記載の車両通行管理システムに於いて、前記ゲート装置は、有料駐車場に設置された駐車場ゲート装置であり、
前記駐車場ゲート装置は、
駐車場出口に設置された開閉駆動される遮断機と、
前記遮断機の手前側に設置され、所定の料金支払い操作に対し前記遮断機を開放する精算機と、
を備え、
前記ゲート制御部は、前記精算機の料金支払い操作に対し前記酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出した場合には、前記遮断機の開放動作を禁止して駐車場から道路への車両の通行を阻止することを特徴とする車両通行管理システム。
【請求項8】
請求項1記載の車両通行管理システムに於いて、前記ゲート装置は、有料駐車場に設置された駐車場ゲート装置であり、
前記駐車場ゲート装置は、
駐車場所に設置され、駐車開始時から所定時間後に車輪の通過を許容するアンロック位置から車輪の通過を阻止するロック位置に動作する車輪ロック装置と、
駐車場の出入口などの所望位置に設置され、所定の料金支払い操作に対し前記車輪ロック装置をアンロック位置に動作する精算機と、
を備え、
前記ゲート制御部は、前記精算機の料金支払い操作に対し前記酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出した場合には、前記車輪ロック装置のアンロック位置への動作を禁止して駐車場から道路への車両の通行を阻止することを特徴とする車両通行管理システム。
【請求項9】
請求項1記載の車両通行管理システムに於いて、
前記ゲート装置は、高速道路の入口または出口に設置されたETCゲート装置であり 、
前記ゲート制御部は、所定の料金支払い操作に対し前記酒気帯び検出部により酒気帯態を検出した場合には、前記ETCゲート装置の開放動作を禁止して高速道路への車両の侵入または高速道路から一般道路への車両の退出を阻止すると共に係員に通報することを特徴とする車両通行管理システム。
【請求項10】
請求項1記載の車両通行管理システムに於いて、
前記ゲート装置は、高速道路の入口または出口に設置されたETCゲート装置であり、前記ETCゲート装置は車両侵入側と車両退出側の2箇所に遮断機を配置し、
前記ゲート制御部は、所定の料金支払い操作に対し前記酒気帯び検出部により酒気帯び状態を検出した場合には、前記ETCゲート装置の侵入側及び退出側の2箇所の遮断機を閉鎖位置に制御して車両をゲート内に封じ込めると共に係員に通報することを特徴とする車両通行管理システム。
【請求項11】
請求項1記載の車両通行管理システムに於いて、前記ゲート制御部は、酒気帯び状態の検出に基づいて前記ゲート装置の開放動作を禁止した状態での車両の強行突破を判定した場合、前記酒気帯び検出部で取得した運転者の被写体画像を記録すると共に、外部機関に自動通報して対処を要請することを特徴とする車両通行管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−187359(P2009−187359A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27604(P2008−27604)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】