車両運動制御装置及びプログラム
【課題】簡単な構成のマップを用いて、設定されたジャークに従って車体合成力を増減させながら所望の位置へ到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する。
【解決手段】所望の横移動距離Ye、速度の方向、現時刻の車体合成力の大きさF0、及び車体合成加速度の大きさの時間変化(ジャーク)KJを設定し、自車両の速度のx成分vx0、y成分vy0、Ye、F0/m、及びKJを用いた各々異なる3つのパラメータを演算し、3つのパラメータと、所望の位置へ到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるための第1の導入パラメータη1の特定仮定下での値η1’との関係、第2の導入パラメータη2の特定仮定下での値η2’との関係、回避時間teの特定仮定下での値te’との関係を定めた3次元マップを用いて、KJに従って車体合成力を増減させながら所望の位置へ到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する。
【解決手段】所望の横移動距離Ye、速度の方向、現時刻の車体合成力の大きさF0、及び車体合成加速度の大きさの時間変化(ジャーク)KJを設定し、自車両の速度のx成分vx0、y成分vy0、Ye、F0/m、及びKJを用いた各々異なる3つのパラメータを演算し、3つのパラメータと、所望の位置へ到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるための第1の導入パラメータη1の特定仮定下での値η1’との関係、第2の導入パラメータη2の特定仮定下での値η2’との関係、回避時間teの特定仮定下での値te’との関係を定めた3次元マップを用いて、KJに従って車体合成力を増減させながら所望の位置へ到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運動制御装置及びプログラムに係り、特に、簡単な構成のマップを用いて、最適軌道に基づく車体合成力及び回避軌道を導出する車両運動制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に加える目標合成力と、各車輪の限界摩擦円の大きさから推定される限界合成力との比をμ利用率として設定し、限界摩擦円の大きさとμ利用率とからタイヤ発生力の大きさ、及び各制御対象車輪で発生するタイヤ発生力の方向を設定し、設定されたタイヤ発生力の大きさ、及び設定されたタイヤ発生力の方向に基づいて、各制御対象車輪の操舵と制動又は操舵と駆動との協調制御を行なう車両制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、車両が走行する道路上に存在する障害物を検出し、検出現時刻から評価終了時刻後の自車両の予測位置及び外部環境に基づいて、自車両の回避後の目標姿勢角を設定し、現時刻の外部環境及び障害物の状態量に基づいてリスクポテンシャル関数を設定し、そのリスクと運転操作量の時間積分値、目標姿勢角と自車両の姿勢角との差などに基づく評価値を算出し、評価値が最小となる軌道を導出する回避操作算出装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、自車両と障害物との間の距離及び自車両の障害物に対する相対速度、そして回避するための横移動距離に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量と自車両の重量及び車体合成力の最大値により最短距離で回避するための車体合成力の向きを導出するマップを予め記憶しておき、直進制動での最短回避距離と単純横移動における最短回避距離と、現時刻の自車両と障害物の状態に基づいてマップより得られる最短回避距離を比較して、最も短くなる回避軌道を選択し、その軌道に基づいて現時刻の車体合成力を算出する車両制御装置が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
また、自車両と障害物との間の距離、自車両の障害物に対する相対速度、及び回避するための目標位置に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量により回避動作時に最大値が最小となる車体合成力の向きと大きさを出力するマップを予め記憶しておき、そのマップより現時刻の車体合成力を求めて車両運動を制御する車両運動制御装置が提案されている(非特許文献1参照)。
【0006】
また、ドライバの操舵角及び車速を検出し、それぞれを二階微分して得られる各々のジャークに基づいて、ドライバの操縦の滑らかさを算出し、その値がある閾値を超えた時にドライバの心理が変化したと推定する運転心理変化推定装置が提案されている。(特許文献4参照)。
【0007】
また、ドライバの操作量から得られるドライバが期待する加速性能の期待値とドライバが体感している加速度とを演算し、その偏差などに基づいて加速感を評価すると共に、その評価値を用いてドライバが期待する加速性能を実現するよう車両を制御する車両制御装置が提案されている(特許文献5参照)。
【0008】
また、車両の加速度をドライバが体で感じる感覚が車両運動の周波数によって異なる性質を考慮して、ドライバが要求している加速度を算出し、その値をドライバの加速度に対する弁別閾値を考慮して補正した目標加速度を算出した後、その値に基づいて車両の駆動トルクを制御する車両制御装置が提案されている(特許文献6参照)。
【0009】
また、車両のカーブへの進入時において、カーブの曲率状態及びドライバの乗り心地に対応する横ジャークに基づいて、乗り心地が良好に保たれるように操舵を制御する車両用自動操舵装置が提案されている(特許文献7参照)。
【0010】
また、車両の加速レスポンス及びショック、そしてジャークが所望の値を満たすようにエンジンの燃料噴射量を制御する自動適合装置が提案されている(特許文献8参照)。
【0011】
また、車線逸脱時に、ある所定値以上の横ジャークを車両に発生させてドライバに警告することで、ドライバの適切で迅速な回避操舵を促す車線逸脱警告装置が提案されている(特許文献9参照)。
【0012】
また、車両の前後ジャークの検出値に基づいて、油圧モータの排出回避リリーフ圧を制御する油圧駆動走行車両において、前後ジャークが所定の閾値以上の時にリリーフ圧を小さく設定する走行制御装置が提案されている(特許文献10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−249971号公報
【特許文献2】特開2007−253745号公報
【特許文献3】特開2006−347236号公報
【特許文献4】特開2009−40184号公報
【特許文献5】特許第4369403号公報
【特許文献6】特開2008−138595号公報
【特許文献7】特許第3201094号公報
【特許文献8】特開2005−248719号公報
【特許文献9】特開2003−58993号公報
【特許文献10】特開2001−248605号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】日本機械学会、第18回交通・物流部門大会講演論文集、障害物回避のための車両の最適軌道制御、pp.145−148(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1の技術では、目標の車体合成力が与えられた場合に、最適な各輪のタイヤ発生力を導出しているが、ある時間区間やある距離を走行する間の最適な目標車体合成力の与え方については記載されていない。
【0016】
また、特許文献2の技術では、所望の位置及び姿勢角に近づく軌道を導出しているものの、一定のジャークにより車体合成力の大きさを増減させながら所望の位置や速度に車両を制御する方法については記載されていない。
【0017】
また、特許文献3の技術では、自車両の障害物に対する相対速度、回避するための横移動距離、車重、及び車体合成力の最大値が設定された場合に、回避距離を最短にする回避軌道を導出しているが、一定のジャークにより車体合成力の大きさを増減させながら所望の位置や速度に車両を制御する方法については記載されていない。
【0018】
また、非特許文献1の技術では、相対的な意味における所望の位置及び速度方向に対して車体合成力の最大値を最小化する軌道を導出し、その軌道に基づいたマップを記憶しておくことで現時刻の車体合成力を導出しているが、一定のジャークにより車体合成力の大きさを増減させながら所望の位置や速度に車両を制御する方法については記載されていない。
【0019】
また、特許文献4の技術では、ジャークに基づいて算出したドライバの操縦の滑らかさを用いて、ドライバの心理状態の変化を推定しているものの、そのジャーク値に基づいて車両運動を制御する方法については記載されていない。
【0020】
また、特許文献5の技術では、ドライバの背中がシートバックに押しつけられ際の押しつけ荷重の変化に基づいてドライバが体感している加速感を算出し、その加速感とドライバ操作に基づくドライバの期待する加速度との偏差に基づいて、ドライバの期待している加速性能を実現するよう車両を制御することを可能にしているが、操舵を伴う車両制御法については記載されていない。
【0021】
また、特許文献6には、車両の加速度の低周波領域ではジャークに基づいてドライバが加速感を知覚していることが記載されているものの、そのジャークに基づいた障害物を回避するための車両制御法については記載されていない。
【0022】
また、特許文献7の技術では、ドライバの乗り心地に対応する横ジャークの閾値に基づいて、乗り心地が良好に保たれる操舵の開始を可能にしているが、ジャークに基づいた障害物を回避するための車両制御法については記載されていない。
【0023】
また、特許文献8の技術では、ジャークに基づくエンジンの燃料噴射量の制御を行っているが、操舵を伴う車両制御法については記載されていない。
【0024】
また、特許文献9の技術では、車線逸脱時に、ある所定値以上の横ジャークを車両に発生させてドライバに警告することで、ドライバの適切で迅速な回避操舵を促すことを可能にしているが、障害物回避のために最適な車両制御法については記載されていない。
【0025】
また、特許文献10の技術では、前後ジャークに基づいてリリーフ圧を制御しているが、操舵を伴う車両の運動制御法については記載されていない。
【0026】
本発明は、簡単な構成のマップを用いて、車体合成力の大きさの時間変化及び所望の横移動距離が設定された場合に、その車体合成力の大きさの時間変化に従って車体合成力を増減させながら所望の位置へ到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び軌道を導出することができる車両運動制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するために、第1の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及び車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータη1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η1’と、の関係を定めた第1のマップ、・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη1と異なる第2の導入パラメータη2の、前記仮定の下での値η2’と、の関係を定めた第2のマップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記位置に到達する時刻teの、前記仮定の下での時刻te’と、の関係を定めた第3のマップからなる3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0028】
また、第2の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及び車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0029】
また、第3の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、該位置に到達した際の車体合成力の大きさ、及び現時刻から該位置に到達するまでの車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、該位置に到達した際の車体合成加速度の大きさF1/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータη1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、前記大きさF1/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η1’と、の関係を定めた第1のマップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη1と異なる第2の導入パラメータη2の、前記仮定の下での値η2’と、の関係を定めた第2のマップからなる3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0030】
また、第4の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、該位置に到達した際の車体合成力の大きさ、及び現時刻から該位置に到達するまでの車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、該位置に到達した際の車体合成加速度の大きさF1/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、前記大きさF1/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0031】
また、前記設定手段は、前記検出手段により検出された状態量に基づいて推定されるドライバが期待する加速感に対応する値を、前記車体合成力の大きさの時間変化として設定することができる。
【0032】
また、前記検出手段は、前記自車両に対する前記位置の相対距離及び相対速度を検出するようにすることができる。
【0033】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含んで構成することができる。
【0034】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含んで構成することができる。
【0035】
また、第5の発明の車両運動制御プログラムは、コンピュータを、第1〜第4の発明の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、検出手段により検出した状態量及び設定手段により設定した設定値をパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、車体合成力の大きさの時間変化及び所望の横移動距離が設定された場合に、その車体合成力の大きさの時間変化に従って車体合成力を増減させながら所望の位置へ到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び軌道を導出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】車両運動制御の概略を示す図である。
【図2】xy座標の設定を説明するための図である。
【図3】第1の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる3次元マップを表す線図である。
【図4】第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】導出された回避軌道の一例を示す線図である。
【図7】第2の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる3次元マップを表す線図である。
【図8】第2の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる3次元マップを表す線図である。
【図10】第3の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる3次元マップを表す線図である。
【図12】第4の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図13】第5の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、車両が走行する道路上の障害物を回避する場合を想定し、所望の位置を障害物の横を通過する位置とし、所望の速度方向を車体前後方向とする場合について説明する。
【0039】
第1の実施の形態の車両運動制御装置における車体合成力及び回避軌道の導出の概略について説明する。
【0040】
図1に示すように、設定したxy座標での時刻t(現時刻をt=0として、現時刻からt秒後)における車体合成加速度のx成分をux(t)、車体合成加速度のy成分をuy(t)、車体合成力の大きさをF(t)、車体合成力の方向をθ0(t)、及び自車両の重量をmとすると、車体合成加速度ux(t)及びuy(t)は、下記(1)式及び(2)式で示される。また、(1)式及び(2)式を積分して、下記(3)式及び(4)式に示すように、自車両の路面に対する速度のx成分vx(t)、及び速度のy成分vy(t)が得られる。また、(3)式及び(4)式を積分して、下記(5)式及び(6)式に示すように、自車両のt秒後のx軸方向の位置X(t)、及びy軸方向の位置Y(t)が得られる。このX(t)及びY(t)により回避軌道が得られる。
【0041】
【数1】
【0042】
なお、xy座標は、t=0における自車両の位置を原点とし、障害物の横を通過する位置における速度方向(車体前後方向)をx軸、x軸に直交する軸(車体横方向)をy軸として設定する(図2参照)。
【0043】
そして、現時刻(t=0)におけるxy座標上の所望の横移動距離Ye、自車両の道路に対する速度をvx(0)=vx0、vy(0)=vy0とした場合に、現時刻の車体合成力の大きさF0、車体合成加速度の大きさの時間変化(以下、「ジャーク」という)KJを設定した場面において、ジャークに基づく車体合成力を発生させて、所望の横移動距離移動した位置及び速度方向に到達する際の縦移動距離Xeを最小化するための3次元マップを用いて、所望の横移動距離に対して縦移動距離を最小化する車体合成加速度ux(t)及びuy(t)((1)式、及び(2)式)を導出する。
【0044】
ここで、図1に示すように、自車両の速度、所望の横移動距離、所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及びジャークが既知の場合において、最適軌道を求める3次元マップの導出例について説明する。
【0045】
まず、x1=X(t)、x2=vx(t)、x3=Y(t)、x4=vy(t)、u1=ux(t)、u2=uy(t)とおくと、(1)式及び(2)式の運動方程式は、下記(7)式及び(8)式のような状態方程式に変形できる。なお、Tはベクトル及び行列の転置記号である。
【0046】
【数2】
【0047】
次に、設定された現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJに従って、所望の横移動距離及び速度方向へ到達する際の縦移動距離を最小化する最適制御問題として考えると、現時刻をt=0とし、回避に要する時間をteとおいて、評価関数Iを下記(9)式で表した場合、下記(10)式で表される座標軸における終端条件、及び下記(11)式で表される車体合成力の大きさに関する入力制約条件の下で、評価関数Iを最小化する制御入力を求めよという制御問題に帰着される。
【0048】
【数3】
【0049】
この最適制御問題を公知の技術(特開2007-283910号公報等)を参考に解いていく。まず、ラグランジュ乗数関数ベクトルΨ(t)、λ(t)、ハミルトン関数Hを下記(12)式のようにおくと、オイラー方程式を用いて最適解xo(t),uo(t)は、下記(13)式及び(14)式を満足する。
【0050】
【数4】
【0051】
また、終端条件に関しては、S(x,t)=x1(t)とおき、定数ベクトルη=(η1,η2)Tを導出することで、下記(15)式及び(16)式のような関係が成り立つ。
【0052】
【数5】
【0053】
ただし、(13)式〜(16)式内の右下添え字x,u,tは偏微分を意味する。
【0054】
ここで、(13)式及び(14)式を変形すると、下記(17)式及び(18)式のような関係が得られる。
【0055】
【数6】
【0056】
また、終端条件より、下記(19)式及び(20)式の関係が得られる。
【0057】
【数7】
【0058】
(18)式及び(11)式より、下記(21)式が得られ、uo(t)は下記(22)式となる。
【0059】
【数8】
【0060】
また(17)式によりΨ(t)を求めると下記(23)式となり、x2(t)の終端は(20)式より下記(24)式の関係を満たすので、下記(25)式の終端条件が新たに出てくる。
【0061】
【数9】
【0062】
このとき、制御問題は下記(26)式のように書き換えられる。
【0063】
【数10】
【0064】
(26)式を(7)式及び(8)式のu(t)に代入して時間積分し、初期条件((7)式の第2式)と終端条件((10)式及び(25)式)とを適用すると、te、η1、η2を導出する非線形方程式(下記(27)式〜(30)式))が求まる。なお、η1、η2は本発明の第1の導入パラメータ、及び第2の導入パラメータに相当する。
【0065】
(26)式において必要となるte、η1、η2は、(27)式〜(30)式の非線形方程式にm、vx0、vy0、Ye、F0及びKJを代入して解くことにより得られる。
【0066】
【数11】
【0067】
従って、上記非線形方程式の解をマップとして持つ場合には、η1及びη2に関して持てばよい。上記非線形方程式は、公知の演算ソフトウエアで十分計算可能である。この方程式の解を求めるために、低次元化したマップを導出する。
【0068】
まず、(27)〜(30)式に対して、任意の正数aを導入して下記(31)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{η1,η2,te}及び{η1’,η2’,te’}は、下記(32)式の関係を満たす。
【0069】
【数12】
【0070】
(31)式の第2〜4式を第1式で割ると下記(33)式のように書き換えられ、(33)式の第4式より、aを下記(34)式のようにおくと、(33)式よりF0’/m’、vy0’及びYe’は下記(35)式のように変形できる。
【0071】
【数13】
【0072】
この関係より、KJ’及びvx0’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってF0’/m’、vy0’及びYe’が求まる。よって、KJ’及びvx0’をある値に設定した場合において、F0’/m’、vy0’及びYe’をパラメータとした3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このKJ’及びvx0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0073】
ここでは、一例として、KJ’=vx0’=1とした場合の、F0’/m’、vy0’及びYe’に関する3次元マップを作成する。図3に示すように、F0’/m’、vy0’及びYe’をパラメータとして(27)式〜(30)式に基づいて得られるη1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、η2’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びte’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。また、例えば、F0’/m’について、F0’/m’=Ga’、F0’/m’=Gb’、F0’/m’=Gc’の3値(Ga’<Gb’<Gc’)を用い、Ga’〜 Gb’間、及びGb’〜 Gc’間は、各々線形近似などで内挿する。
【0074】
そして、これらのマップを用いて{η1,η2,te}を求めるには、KJ’=vx0’=1、既知のm、vx0、vy0、Ye、F0及びKJから(35)式に従ってパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η1’,η2’,te’}を各3次元マップから得て、(32)式及び(34)式に従って{η1’,η2’,te’}を{η1,η2,te}に変換し、これらのパラメータを(26)式に適用して入力の時間関数を得る。また、(30)式に代入して縦移動距離Xeが得られる。
【0075】
なお、この3次元マップは、vy0’及びYe’のどちらかを0以上に限定してもよい。例えば、Ye≧0の3次元マップを作成した場合は、検出値がYe<0であったとしても、vy0→−vy0、Ye→−Yeに変換して、3次元マップより{−η1’、−η2’、te’}を求め、−η1’→η1’、−η2’→η2’の処理を行って{η1,η2,te}を得ればよい。
【0076】
この結果、現時刻の自車両の位置及び速度と、設定された現時刻の車体合成力の大きさ及びジャークとから、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0077】
なお、上記の3次元マップではパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を(35)式のように定め、KJ’=vx0’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、パラメータaの取り方を変更したり、F0’/m’、vx0’、vy0’、Ye’及びKJ’のそれぞれに着目して式を変形したりすれば、上記の場合とは異なる3つのパラメータを選ぶことができる。そして、それぞれのパラメータに応じて残る2つのパラメータに任意の値を設定すれば、新たな3次元マップが作成できる。3次元マップの異なる軸の取り方の例を、下記(36)〜(43)式に示す。
【0078】
【数14】
【0079】
以下、上記の3次元マップを用いた第1の実施の形態について詳細に説明する。図4に示すように、第1の実施の形態の車両運動制御装置には、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段として車両に搭載されたセンサ群、外部環境状態を検出する外部環境検出手段として車両に搭載されたセンサ群、及びこれらのセンサ群からの検出データに基づいて、自車両が運動するように自車両に搭載された車載機器を制御することによって目標位置へ到達するように車両運動を制御する制御装置20、ドライバに車両運動制御状態を報知する表示装置30が設けられている。
【0080】
車両運動制御装置の自車両の走行状態を検出するセンサ群としては、車速を検出する車速センサ10、操舵角を検出する操舵角センサ12、及びスロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ14が設けられている。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0081】
また、外部環境状態を検出するセンサ群としては、自車両の前方を撮影する前方カメラ16、及び自車両の前方の障害物を検出するレーザレーダ18が設けられている。なお、レーザレーダ18に代えて、又はレーザレーダ18と共にミリ波レーダを設けるようにしてもよい。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0082】
前方カメラ16は、車両の前方を撮影するように車両のフロントウインドウ上部等に取り付けられている。前方カメラ16は、小型のCCDカメラ又はCMOSカメラで構成され、自車両の前方の道路状況を含む領域を撮影し、撮影により得られた画像データを出力する。出力された画像データは、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置20に入力される。なお、カメラとして、前方カメラ16に加えて、前方赤外線カメラを設けるのが好ましい。赤外線カメラを用いることにより、歩行者を障害物として確実に検出することができる。なお、上記の赤外線カメラに代えて近赤外線カメラを用いることができ、この場合においても同様に歩行者を確実に検出することができる。
【0083】
レーザレーダ18は、赤外光パルスを照射する半導体レーザからなる発光素子、赤外光パルスを水平方向に走査する走査装置、及び前方の障害物(歩行者、前方車両等)から反射された赤外光パルスを受光する受光素子を含んで構成され、車両の前方グリル又はバンパに取り付けられている。このレーザレーダ18では、発光素子から発光された時点を基準として受光素子で受光されるまでの反射赤外光パルスの到達時間に基づいて、自車両から前方の障害物までの距離を検出することができる。レーザレーダ18で検出された障害物までの距離を示すデータは制御装置20に入力される。制御装置20は、RAM、ROM、及びCPUを含むマイクロコンピュータ等で構成され、ROMには以下で説明する車両運動制御ルーチンのプログラムが記憶されている。
【0084】
また、制御装置20は、自車両の操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも1つを制御することによって、目標位置へ到達するように車両運動を制御するための車両搭載機器に接続されている。この車両搭載機器としては、車輪の操舵角を制御するための電動パワーステアリング等の操舵角制御装置22、ブレーキ油圧を制御することによって制動力を制御する制動力制御装置24、及び駆動力を制御する駆動力制御装置26が設けられている。制動力制御装置24には、制動力を検出する検出センサ24Aが取り付けられている。また、制御装置20には、演算された制御入力の方向θ等を表示することによって車両運動制御情報をドライバに報知する表示装置30が接続されている。なお、車両運動制御を行なっていることを、ドライバだけでなく車両外部の目標位置方向に向かって報知するようにしてもよい。また、最短回避距離が自車両と障害物との距離よりも短い場合には、ドライバに回避の必要性を予め報知するようにしてもよい。
【0085】
操舵角制御装置22としては、ドライバのステアリングホイール操作に重畳して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段、ドライバ操作とは機械的に分離され、ステアリングホイールの操作とは独立して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段(いわゆるステア・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0086】
制動力制御装置24としては、ドライバ操作とは独立して各車輪の制動力を個別に制御する、いわゆるESC(Electronic Stability Control)に用いられる制御装置、ドライバ操作とは機械的に分離され、各車輪の制動力を信号線を介して任意に制御する制御装置(いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0087】
駆動力制御装置26としては、スロットル開度、点火進角の遅角、又は燃料噴射量を制御することによって駆動力を制御する制御装置、変速機の変速位置を制御することによって駆動力を制御する制御装置、トルクトランスファを制御することによって前後方向及び左右方向の少なくとも一方の駆動力を制御する制御装置等を用いることができる。
【0088】
また、制御装置20には、制御入力を求めるための3次元マップを記憶したマップ記憶装置28が接続されている。
【0089】
また、制御装置20には、ドライバに警報を発する図示しない警報装置が接続されている。警報装置としては、音や音声によって警報を発する装置、光や視覚的な表示によって警報を発する装置、振動によって警報を発する装置、又は操舵反力のような物理量をドライバに与えてドライバの操作を誘導する物理量付与装置を用いることができる。また、表示装置30を警報装置として用いるようにしてもよい。
【0090】
以下、図5を参照して第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図3の3次元マップを用いる場合について説明する。
【0091】
ステップ100で、車速センサ10等で検出された自車両の走行状態、及びレーザレーダ18等で検出された外部環境状態に関する検出データを取り込む。次に、ステップ102で、取り込んだ検出データに基づいて、車両が走行している道路上の障害物の位置及び大きさを含む環境マップを作成する。
【0092】
次に、ステップ104で、障害物の横を通過する回避軌道を想定して所望の横移動距離を設定し、また、所望の横移動距離移動した位置における速度方向を環境マップに基づいて設定し、さらに自車両の現時刻の位置を原点に、また設定した速度方向をx軸(車体前後方向)に取り、x軸に直交する方向をy軸とするxy座標を設定する。
【0093】
次に、ステップ106で、上記ステップ100で走行状態として取り込まれた自車両及び障害物の状態量を設定された座標に対応させて変換し、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、及び自車両と障害物との距離のy成分(横移動距離)Yeを演算する。
【0094】
次に、ステップ108で、外部環境及び自車両の構造と状態に基づいて、現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJを設定する。
【0095】
次に、ステップ110で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、及びYe、並びに上記ステップ108で設定した現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJを用いて、(35)式に従ってパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η1’,η2’,te’}を各3次元マップから得て、(32)式及び(34)式に従って{η1’,η2’,te’}を{η1,η2,te}に変換し、これらのパラメータを(26)式に適用して車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する回避軌道を導出する。
【0096】
ここで、図6に、導出された回避軌道の一例として、m=2000、vx0=15、vy0=0、Ye=1、F0=19600、KJ=0.3とした場合の軌道を示す。
【0097】
次に、ステップ112で、上記ステップ110で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するために必要な各車輪のタイヤ発生力を演算し、各車輪のタイヤ発生力が得られるように操舵角制御装置22、制動力制御装置24、及び駆動力制御装置26の少なくとも1つを制御すると共に、車両運動制御情報を表示装置30に表示する。また、障害物を回避するように制御する際には無条件で警報装置から警報を発したり、障害物を回避するための車両運動制御を行っていることを表示装置30に表示したりすることにより警報を行ってもよい。
【0098】
以上説明したように、第1の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Ye、現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0099】
また、人間はジャークに基づいて加速感を知覚する傾向があるため、ジャークを設定して時間変化をコントロールすることで、人間の感覚にあった制御を行うことができる。
【0100】
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{η1’,η2’,te’}を導出する3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、1つのパラメータを出力する3次元マップで導出が可能となる。第2の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第2の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0101】
ここで、第2の実施の形態で用いられる3次元マップについて説明する。
【0102】
まず、第1の実施の形態と同様に、(35)式まで展開する。そして、一例として、KJ’=vx0’=1とした場合のF0’/m’、vy0’及びYe’に関する3次元マップを作成する。図7に示すように、F0’/m’、vy0’及びYe’をパラメータとして、(26)〜(30)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした3次元マップを作成する。
【0103】
そして、この3次元マップを用いて{θ}を求めるには、KJ’=vx0’=1、既知のm、vx0、vy0、Ye、F0及びKJから(35)式に従ってパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を3次元マップから得て、下記(44)式により、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0104】
【数15】
【0105】
なお、この3次元マップは、vy0’及びYe’のどちらかを0以上に限定してもよい。例えば、Ye≧0の3次元マップを作成した場合は、検出値がYe<0であったとしても、vy0→−vy0、Ye→−Yeに変換して、3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→θ’の処理を行って{θ}を得ればよい。
【0106】
また、図7のように{Xe’}も出力する3次元マップを導入して、下記(45)式によりXeに変換して、縦移動距離を求めてもよい。
【0107】
【数16】
【0108】
なお、上記の3次元マップでは、パラメータを(35)式のように定めた場合について説明したが、第1の実施の形態と同様に、(36)〜(43)式の各々に示すパラメータに対応する{θ’}及び{Xe’}を出力する3次元マップを作成してもよい。
【0109】
以下、図8を参照して第2の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図7の3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0110】
ステップ100〜108を経て、次に、ステップ200で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、及びYe、並びに上記ステップ108で設定した現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJを用いて、(35)式に従ってパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を3次元マップから得て、(44)式に適用することにより現時刻の車体合成力の向きを導出する。
【0111】
次に、ステップ112で、上記ステップ200で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0112】
以上説明したように、第2の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Ye、現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出することができる。また、第1の実施の形態の場合の3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0113】
また、人間はジャークに基づいて加速感を知覚する傾向があるため、ジャークを設定して時間変化をコントロールすることで、人間の感覚にあった制御を行うことができる。
【0114】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、現時刻及び回避直後の車体合成力の大きさ、その間のジャークを設定した場合において、ジャークに基づく車体合成力を発生させて、所望の横移動距離移動した位置及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出する場合について説明する。なお、第3の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0115】
ここで、現時刻及び回避直後の車体合成力の大きさ、その間のジャークを設定した場合において、ジャークに基づく車体合成力を発生させて、所望の横移動距離移動した位置及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するための3次元マップについて説明する。
【0116】
現時刻及び回避直後の車体合成力の大きさ、その間のジャークを設定した場合において、ジャークに基づく車体合成力を発生させて、所望の横移動距離移動した位置及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する最適制御問題は、第1の実施の形態と同様に、(7)式〜(11)式で定式化することができる。ただし、この制御問題では、回避直後の車体合成力の大きさをF1とおくと、終端時刻(回避に要する時間)が下記(46)式となり固定値となるところが第1の実施の形態とは異なる。
【0117】
【数17】
【0118】
まず、最適性の条件は(13)式〜(15)式となる。ここでは、終端時刻が(46)式のように固定なため、最適解は(16)式を必ずしも満たす必要はない。そして、同様の手順で制御入力を求めると(26)式となる。
【0119】
また、この制御入力に必要なパラメータ{η1,η2}は、(46)式を代入した(28)式及び(29)式を満たす。よって、(28)式、(29)式、及び(46)式にm、vx0、vy0、Ye、F0、F1、及びKJを代入して、η1及びη2を求め、さらに、(30)式に代入してXeを求める。
【0120】
まず、(28)式及び(29)式に対して、F1=F0+mKJteの関係を適用すると、下記(47)式及び(48)式のように変形できる。
【0121】
【数18】
【0122】
そして、(46)式〜(48)式に対して、任意の正数aを導入して下記(49)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{η1,η2}及び{η1’,η2’}は、下記(50)式の関係を満たす。
【0123】
【数19】
【0124】
ここで、(49)式の第4式より、aを下記(51)式のようにおくと、vy0’、Ye’、及びte’は下記(52)式のように変形できる。
【0125】
【数20】
【0126】
この関係より、F1’/m’及びKJ’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、Ye’、及びte’が求まる。よって、F1’/m’及びKJ’をある値に設定した場合において、vy0’、Ye’、及びte’をパラメータとした3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF1’/m’及びKJ’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0127】
ここでは、一例として、F1’/m’=KJ’=1とした場合のvy0’、Ye’、及びte’に関する3次元マップを作成する。図9に示すように、vy0’、Ye’、及びte’をパラメータとして、(47)式及び(48)式に基づいて得られるη1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、及びη2’の値をマッピングした第2の3次元マップを作成する。
【0128】
そして、これらのマップを用いて{η1,η2}を求めるには、F1’/m’=KJ’=1、既知のm、vy0、Ye、F1及びKJから(52)式に従ってパラメータvy0’、Ye’、及びte’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η1’,η2’}を各3次元マップから得て、(50)式及び(51)式に従って{η1’,η2’}を{η1,η2}に変換し、さらに、(46)式に代入してteを得る。そして、これらのパラメータを(26)式に適用して入力の時間関数を得る。また、(30)式に代入して縦移動距離Xeが得られる。
【0129】
なお、この3次元マップは、vy0’及びYe’のどちらかを0以上に限定してもよい。例えば、Ye≧0の3次元マップを作成した場合は、検出値がYe<0であったとしても、vy0→−vy0、Ye→−Yeに変換して、3次元マップより{−η1’、−η2’}を求め、−η1’→η1’、−η2’→η2’の処理を行って{η1,η2}を得ればよい。
【0130】
この結果、現時刻の自車両の位置及び速度と、設定された現時刻及び回避直後の車体合成力の大きさ、ジャークとから、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0131】
なお、上記の3次元マップではパラメータvy0’、Ye’、及びte’を(52)式のように定め、F1’/m’=KJ’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、パラメータaの取り方を変更したり、F0’/m’、F1’/m’、vx0’、vy0’ 、Ye’及びKJ’のそれぞれに着目して式を変形したりすれば、上記の場合とは異なる3つのパラメータを選ぶことができる。そして、それぞれのパラメータに応じて残る2つのパラメータに任意の値を設定すれば、新たな3次元マップが作成できる。3次元マップの異なる軸の取り方の例を、下記(53)〜(64)式に示す。
【0132】
【数21】
【0133】
以下、図10を参照して第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図9の3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0134】
ステップ100〜106を経て、次にステップ300で、現時刻の車体合成力の大きさF0、回避直後の車体合成力の大きさF1、及びその間のジャークKJを設定する。
【0135】
次に、ステップ302で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vy0及びYe、並びに上記ステップ300で設定したF1及びKJを用いて、(52)式に従ってパラメータvy0’、Ye’、及びte’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η1’,η2’}を各3次元マップから得て、(50)式及び(51)式に従って{η1’,η2’}を{η1,η2}に変換し、さらに、(46)式に代入してteを得る。そして、これらのパラメータを(26)式に適用して車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する回避軌道を導出する。
【0136】
次に、ステップ112で、上記ステップ302で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するように制御する。
【0137】
以上説明したように、第3の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Ye、現時刻の車体合成力の大きさF0、回避直後の車体合成力の大きさF1、及びジャークKJをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0138】
また、人間はジャークに基づいて加速感を知覚する傾向があるため、ジャークを設定して時間変化をコントロールすることで、人間の感覚にあった制御を行うことができる。
【0139】
次に、第4の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{η1’,η2’}を導出する3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、1つのパラメータを出力する3次元マップで導出が可能となる。第4の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第4の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0140】
ここで、第4の実施の形態で用いられる3次元マップについて説明する。
【0141】
まず、第3の実施の形態と同様に、(35)式まで展開する。そして、一例として、F1’/m’=KJ’=1とした場合のvy0’、Ye’、及びte’に関する3次元マップを作成する。図11に示すように、vy0’、Ye’、及びte’をパラメータとして、(26)及び(46)〜(48)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした3次元マップを作成する。
【0142】
そして、この3次元マップを用いて{θ}を求めるには、F1’/m’=KJ’=1、既知のm、vy0、Ye、F1及びKJから(52)式に従ってパラメータvy0’、Ye’、及びte’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を3次元マップから得て、(44)式により、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0143】
なお、この3次元マップは、vy0’及びYe’のどちらかを0以上に限定してもよい。例えば、Ye≧0の3次元マップを作成した場合は、検出値がYe<0であったとしても、vy0→−vy0、Ye→−Yeに変換して、3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→θ’の処理を行って{θ}を得ればよい。
【0144】
また、図11のように{Xe’}も出力する3次元マップを導入して、下記(65)式によりXeに変換して、縦移動距離を求めてもよい。
【0145】
【数22】
【0146】
なお、上記の3次元マップでは、パラメータを(35)式のように定めた場合について説明したが、第3の実施の形態と同様に、(53)〜(64)式の各々に示すパラメータに対応する{θ’}及び{Xe’}を出力する3次元マップを作成してもよい。
【0147】
以下、図12を参照して第4の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図7の低速化3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1及び第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0148】
ステップ100〜300を経て、次に、ステップ400で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vy0、及びYe、並びに上記ステップ300で設定したF1及びKJを用いて、(52)式に従ってパラメータvy0’、Ye’、及びte’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を3次元マップから得て、(44)式に適用することにより現時刻の車体合成力の向きを導出する。
【0149】
次に、ステップ112で、上記ステップ400で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0150】
以上説明したように、第4の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Ye、現時刻の車体合成力の大きさF0、回避直後の車体合成力の大きさF1、及びジャークKJをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出することができる。また、第3の実施の形態の場合の3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0151】
また、人間はジャークに基づいて加速感を知覚する傾向があるため、ジャークを設定して時間変化をコントロールすることで、人間の感覚にあった制御を行うことができる。
【0152】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、設定されるジャークとして、ドライバが期待する加速感に対応するジャークの値を設定する場合について説明する。なお、第5の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0153】
設定されるジャークの値の算出方法は、例えば、特開2008−138595号公報に記載されているように、ドライバのアクセル操作量及び自車両の車速に基づいて、ドライバが期待する加速度を求め、この加速度を微分してジャークを算出することができる。
【0154】
以下、図13を参照して第5の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0155】
ステップ100〜106を経て、次に、ステップ500で、ドライバのアクセル操作量を取り込んで、上記ステップ100で取り込んだ自車両の速度と共に、ドライバの要求加速度を算出する。
【0156】
次に、ステップ502で、現時刻の車体合成力の大きさF0、及び上記ステップ500で算出したドライバの要求加速度に対応したジャークの値を設定する。
【0157】
次に、ステップ110で、設定されたジャークに従って所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する回避軌道を導出する。
【0158】
以上、説明したように、第5の実施の形態の車両運動制御装置によれば、よりドライバの間隔に合致した制御を行うことができる。
【0159】
なお、第1〜第4の実施の形態では、現時刻の道路に対する自車両の速度及び所望の位置を用いる場合について説明したが、自車両と所望の位置との相対距離及び相対速度を用いてもよい。
【符号の説明】
【0160】
10 車速センサ
12 操舵角センサ
14 スロットル開度センサ
16 前方カメラ
18 レーザレーダ
20 制御装置
22 操舵角制御装置
24 制動力制御装置
26 駆動力制御装置
28 マップ記憶装置
30 表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運動制御装置及びプログラムに係り、特に、簡単な構成のマップを用いて、最適軌道に基づく車体合成力及び回避軌道を導出する車両運動制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に加える目標合成力と、各車輪の限界摩擦円の大きさから推定される限界合成力との比をμ利用率として設定し、限界摩擦円の大きさとμ利用率とからタイヤ発生力の大きさ、及び各制御対象車輪で発生するタイヤ発生力の方向を設定し、設定されたタイヤ発生力の大きさ、及び設定されたタイヤ発生力の方向に基づいて、各制御対象車輪の操舵と制動又は操舵と駆動との協調制御を行なう車両制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、車両が走行する道路上に存在する障害物を検出し、検出現時刻から評価終了時刻後の自車両の予測位置及び外部環境に基づいて、自車両の回避後の目標姿勢角を設定し、現時刻の外部環境及び障害物の状態量に基づいてリスクポテンシャル関数を設定し、そのリスクと運転操作量の時間積分値、目標姿勢角と自車両の姿勢角との差などに基づく評価値を算出し、評価値が最小となる軌道を導出する回避操作算出装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、自車両と障害物との間の距離及び自車両の障害物に対する相対速度、そして回避するための横移動距離に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量と自車両の重量及び車体合成力の最大値により最短距離で回避するための車体合成力の向きを導出するマップを予め記憶しておき、直進制動での最短回避距離と単純横移動における最短回避距離と、現時刻の自車両と障害物の状態に基づいてマップより得られる最短回避距離を比較して、最も短くなる回避軌道を選択し、その軌道に基づいて現時刻の車体合成力を算出する車両制御装置が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
また、自車両と障害物との間の距離、自車両の障害物に対する相対速度、及び回避するための目標位置に基づいて定まる物理量を導入し、その物理量により回避動作時に最大値が最小となる車体合成力の向きと大きさを出力するマップを予め記憶しておき、そのマップより現時刻の車体合成力を求めて車両運動を制御する車両運動制御装置が提案されている(非特許文献1参照)。
【0006】
また、ドライバの操舵角及び車速を検出し、それぞれを二階微分して得られる各々のジャークに基づいて、ドライバの操縦の滑らかさを算出し、その値がある閾値を超えた時にドライバの心理が変化したと推定する運転心理変化推定装置が提案されている。(特許文献4参照)。
【0007】
また、ドライバの操作量から得られるドライバが期待する加速性能の期待値とドライバが体感している加速度とを演算し、その偏差などに基づいて加速感を評価すると共に、その評価値を用いてドライバが期待する加速性能を実現するよう車両を制御する車両制御装置が提案されている(特許文献5参照)。
【0008】
また、車両の加速度をドライバが体で感じる感覚が車両運動の周波数によって異なる性質を考慮して、ドライバが要求している加速度を算出し、その値をドライバの加速度に対する弁別閾値を考慮して補正した目標加速度を算出した後、その値に基づいて車両の駆動トルクを制御する車両制御装置が提案されている(特許文献6参照)。
【0009】
また、車両のカーブへの進入時において、カーブの曲率状態及びドライバの乗り心地に対応する横ジャークに基づいて、乗り心地が良好に保たれるように操舵を制御する車両用自動操舵装置が提案されている(特許文献7参照)。
【0010】
また、車両の加速レスポンス及びショック、そしてジャークが所望の値を満たすようにエンジンの燃料噴射量を制御する自動適合装置が提案されている(特許文献8参照)。
【0011】
また、車線逸脱時に、ある所定値以上の横ジャークを車両に発生させてドライバに警告することで、ドライバの適切で迅速な回避操舵を促す車線逸脱警告装置が提案されている(特許文献9参照)。
【0012】
また、車両の前後ジャークの検出値に基づいて、油圧モータの排出回避リリーフ圧を制御する油圧駆動走行車両において、前後ジャークが所定の閾値以上の時にリリーフ圧を小さく設定する走行制御装置が提案されている(特許文献10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−249971号公報
【特許文献2】特開2007−253745号公報
【特許文献3】特開2006−347236号公報
【特許文献4】特開2009−40184号公報
【特許文献5】特許第4369403号公報
【特許文献6】特開2008−138595号公報
【特許文献7】特許第3201094号公報
【特許文献8】特開2005−248719号公報
【特許文献9】特開2003−58993号公報
【特許文献10】特開2001−248605号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】日本機械学会、第18回交通・物流部門大会講演論文集、障害物回避のための車両の最適軌道制御、pp.145−148(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1の技術では、目標の車体合成力が与えられた場合に、最適な各輪のタイヤ発生力を導出しているが、ある時間区間やある距離を走行する間の最適な目標車体合成力の与え方については記載されていない。
【0016】
また、特許文献2の技術では、所望の位置及び姿勢角に近づく軌道を導出しているものの、一定のジャークにより車体合成力の大きさを増減させながら所望の位置や速度に車両を制御する方法については記載されていない。
【0017】
また、特許文献3の技術では、自車両の障害物に対する相対速度、回避するための横移動距離、車重、及び車体合成力の最大値が設定された場合に、回避距離を最短にする回避軌道を導出しているが、一定のジャークにより車体合成力の大きさを増減させながら所望の位置や速度に車両を制御する方法については記載されていない。
【0018】
また、非特許文献1の技術では、相対的な意味における所望の位置及び速度方向に対して車体合成力の最大値を最小化する軌道を導出し、その軌道に基づいたマップを記憶しておくことで現時刻の車体合成力を導出しているが、一定のジャークにより車体合成力の大きさを増減させながら所望の位置や速度に車両を制御する方法については記載されていない。
【0019】
また、特許文献4の技術では、ジャークに基づいて算出したドライバの操縦の滑らかさを用いて、ドライバの心理状態の変化を推定しているものの、そのジャーク値に基づいて車両運動を制御する方法については記載されていない。
【0020】
また、特許文献5の技術では、ドライバの背中がシートバックに押しつけられ際の押しつけ荷重の変化に基づいてドライバが体感している加速感を算出し、その加速感とドライバ操作に基づくドライバの期待する加速度との偏差に基づいて、ドライバの期待している加速性能を実現するよう車両を制御することを可能にしているが、操舵を伴う車両制御法については記載されていない。
【0021】
また、特許文献6には、車両の加速度の低周波領域ではジャークに基づいてドライバが加速感を知覚していることが記載されているものの、そのジャークに基づいた障害物を回避するための車両制御法については記載されていない。
【0022】
また、特許文献7の技術では、ドライバの乗り心地に対応する横ジャークの閾値に基づいて、乗り心地が良好に保たれる操舵の開始を可能にしているが、ジャークに基づいた障害物を回避するための車両制御法については記載されていない。
【0023】
また、特許文献8の技術では、ジャークに基づくエンジンの燃料噴射量の制御を行っているが、操舵を伴う車両制御法については記載されていない。
【0024】
また、特許文献9の技術では、車線逸脱時に、ある所定値以上の横ジャークを車両に発生させてドライバに警告することで、ドライバの適切で迅速な回避操舵を促すことを可能にしているが、障害物回避のために最適な車両制御法については記載されていない。
【0025】
また、特許文献10の技術では、前後ジャークに基づいてリリーフ圧を制御しているが、操舵を伴う車両の運動制御法については記載されていない。
【0026】
本発明は、簡単な構成のマップを用いて、車体合成力の大きさの時間変化及び所望の横移動距離が設定された場合に、その車体合成力の大きさの時間変化に従って車体合成力を増減させながら所望の位置へ到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び軌道を導出することができる車両運動制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するために、第1の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及び車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータη1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η1’と、の関係を定めた第1のマップ、・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη1と異なる第2の導入パラメータη2の、前記仮定の下での値η2’と、の関係を定めた第2のマップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記位置に到達する時刻teの、前記仮定の下での時刻te’と、の関係を定めた第3のマップからなる3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0028】
また、第2の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及び車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0029】
また、第3の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、該位置に到達した際の車体合成力の大きさ、及び現時刻から該位置に到達するまでの車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、該位置に到達した際の車体合成加速度の大きさF1/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータη1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、前記大きさF1/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η1’と、の関係を定めた第1のマップ、並びに・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη1と異なる第2の導入パラメータη2の、前記仮定の下での値η2’と、の関係を定めた第2のマップからなる3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0030】
また、第4の発明の車両運動制御装置は、所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、該位置に到達した際の車体合成力の大きさ、及び現時刻から該位置に到達するまでの車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、該位置に到達した際の車体合成加速度の大きさF1/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、前記大きさF1/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた3次元マップを記憶した記憶手段と、前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、を含んで構成されている。
【0031】
また、前記設定手段は、前記検出手段により検出された状態量に基づいて推定されるドライバが期待する加速感に対応する値を、前記車体合成力の大きさの時間変化として設定することができる。
【0032】
また、前記検出手段は、前記自車両に対する前記位置の相対距離及び相対速度を検出するようにすることができる。
【0033】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含んで構成することができる。
【0034】
また、前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含んで構成することができる。
【0035】
また、第5の発明の車両運動制御プログラムは、コンピュータを、第1〜第4の発明の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、検出手段により検出した状態量及び設定手段により設定した設定値をパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、車体合成力の大きさの時間変化及び所望の横移動距離が設定された場合に、その車体合成力の大きさの時間変化に従って車体合成力を増減させながら所望の位置へ到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び軌道を導出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】車両運動制御の概略を示す図である。
【図2】xy座標の設定を説明するための図である。
【図3】第1の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる3次元マップを表す線図である。
【図4】第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】導出された回避軌道の一例を示す線図である。
【図7】第2の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる3次元マップを表す線図である。
【図8】第2の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる3次元マップを表す線図である。
【図10】第3の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態の車両運動制御装置で用いられる3次元マップを表す線図である。
【図12】第4の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図13】第5の実施の形態の車両運動制御ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、車両が走行する道路上の障害物を回避する場合を想定し、所望の位置を障害物の横を通過する位置とし、所望の速度方向を車体前後方向とする場合について説明する。
【0039】
第1の実施の形態の車両運動制御装置における車体合成力及び回避軌道の導出の概略について説明する。
【0040】
図1に示すように、設定したxy座標での時刻t(現時刻をt=0として、現時刻からt秒後)における車体合成加速度のx成分をux(t)、車体合成加速度のy成分をuy(t)、車体合成力の大きさをF(t)、車体合成力の方向をθ0(t)、及び自車両の重量をmとすると、車体合成加速度ux(t)及びuy(t)は、下記(1)式及び(2)式で示される。また、(1)式及び(2)式を積分して、下記(3)式及び(4)式に示すように、自車両の路面に対する速度のx成分vx(t)、及び速度のy成分vy(t)が得られる。また、(3)式及び(4)式を積分して、下記(5)式及び(6)式に示すように、自車両のt秒後のx軸方向の位置X(t)、及びy軸方向の位置Y(t)が得られる。このX(t)及びY(t)により回避軌道が得られる。
【0041】
【数1】
【0042】
なお、xy座標は、t=0における自車両の位置を原点とし、障害物の横を通過する位置における速度方向(車体前後方向)をx軸、x軸に直交する軸(車体横方向)をy軸として設定する(図2参照)。
【0043】
そして、現時刻(t=0)におけるxy座標上の所望の横移動距離Ye、自車両の道路に対する速度をvx(0)=vx0、vy(0)=vy0とした場合に、現時刻の車体合成力の大きさF0、車体合成加速度の大きさの時間変化(以下、「ジャーク」という)KJを設定した場面において、ジャークに基づく車体合成力を発生させて、所望の横移動距離移動した位置及び速度方向に到達する際の縦移動距離Xeを最小化するための3次元マップを用いて、所望の横移動距離に対して縦移動距離を最小化する車体合成加速度ux(t)及びuy(t)((1)式、及び(2)式)を導出する。
【0044】
ここで、図1に示すように、自車両の速度、所望の横移動距離、所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及びジャークが既知の場合において、最適軌道を求める3次元マップの導出例について説明する。
【0045】
まず、x1=X(t)、x2=vx(t)、x3=Y(t)、x4=vy(t)、u1=ux(t)、u2=uy(t)とおくと、(1)式及び(2)式の運動方程式は、下記(7)式及び(8)式のような状態方程式に変形できる。なお、Tはベクトル及び行列の転置記号である。
【0046】
【数2】
【0047】
次に、設定された現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJに従って、所望の横移動距離及び速度方向へ到達する際の縦移動距離を最小化する最適制御問題として考えると、現時刻をt=0とし、回避に要する時間をteとおいて、評価関数Iを下記(9)式で表した場合、下記(10)式で表される座標軸における終端条件、及び下記(11)式で表される車体合成力の大きさに関する入力制約条件の下で、評価関数Iを最小化する制御入力を求めよという制御問題に帰着される。
【0048】
【数3】
【0049】
この最適制御問題を公知の技術(特開2007-283910号公報等)を参考に解いていく。まず、ラグランジュ乗数関数ベクトルΨ(t)、λ(t)、ハミルトン関数Hを下記(12)式のようにおくと、オイラー方程式を用いて最適解xo(t),uo(t)は、下記(13)式及び(14)式を満足する。
【0050】
【数4】
【0051】
また、終端条件に関しては、S(x,t)=x1(t)とおき、定数ベクトルη=(η1,η2)Tを導出することで、下記(15)式及び(16)式のような関係が成り立つ。
【0052】
【数5】
【0053】
ただし、(13)式〜(16)式内の右下添え字x,u,tは偏微分を意味する。
【0054】
ここで、(13)式及び(14)式を変形すると、下記(17)式及び(18)式のような関係が得られる。
【0055】
【数6】
【0056】
また、終端条件より、下記(19)式及び(20)式の関係が得られる。
【0057】
【数7】
【0058】
(18)式及び(11)式より、下記(21)式が得られ、uo(t)は下記(22)式となる。
【0059】
【数8】
【0060】
また(17)式によりΨ(t)を求めると下記(23)式となり、x2(t)の終端は(20)式より下記(24)式の関係を満たすので、下記(25)式の終端条件が新たに出てくる。
【0061】
【数9】
【0062】
このとき、制御問題は下記(26)式のように書き換えられる。
【0063】
【数10】
【0064】
(26)式を(7)式及び(8)式のu(t)に代入して時間積分し、初期条件((7)式の第2式)と終端条件((10)式及び(25)式)とを適用すると、te、η1、η2を導出する非線形方程式(下記(27)式〜(30)式))が求まる。なお、η1、η2は本発明の第1の導入パラメータ、及び第2の導入パラメータに相当する。
【0065】
(26)式において必要となるte、η1、η2は、(27)式〜(30)式の非線形方程式にm、vx0、vy0、Ye、F0及びKJを代入して解くことにより得られる。
【0066】
【数11】
【0067】
従って、上記非線形方程式の解をマップとして持つ場合には、η1及びη2に関して持てばよい。上記非線形方程式は、公知の演算ソフトウエアで十分計算可能である。この方程式の解を求めるために、低次元化したマップを導出する。
【0068】
まず、(27)〜(30)式に対して、任意の正数aを導入して下記(31)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{η1,η2,te}及び{η1’,η2’,te’}は、下記(32)式の関係を満たす。
【0069】
【数12】
【0070】
(31)式の第2〜4式を第1式で割ると下記(33)式のように書き換えられ、(33)式の第4式より、aを下記(34)式のようにおくと、(33)式よりF0’/m’、vy0’及びYe’は下記(35)式のように変形できる。
【0071】
【数13】
【0072】
この関係より、KJ’及びvx0’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってF0’/m’、vy0’及びYe’が求まる。よって、KJ’及びvx0’をある値に設定した場合において、F0’/m’、vy0’及びYe’をパラメータとした3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このKJ’及びvx0’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0073】
ここでは、一例として、KJ’=vx0’=1とした場合の、F0’/m’、vy0’及びYe’に関する3次元マップを作成する。図3に示すように、F0’/m’、vy0’及びYe’をパラメータとして(27)式〜(30)式に基づいて得られるη1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、η2’の値をマッピングした第2の3次元マップ、及びte’の値をマッピングした第3の3次元マップを作成する。また、例えば、F0’/m’について、F0’/m’=Ga’、F0’/m’=Gb’、F0’/m’=Gc’の3値(Ga’<Gb’<Gc’)を用い、Ga’〜 Gb’間、及びGb’〜 Gc’間は、各々線形近似などで内挿する。
【0074】
そして、これらのマップを用いて{η1,η2,te}を求めるには、KJ’=vx0’=1、既知のm、vx0、vy0、Ye、F0及びKJから(35)式に従ってパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η1’,η2’,te’}を各3次元マップから得て、(32)式及び(34)式に従って{η1’,η2’,te’}を{η1,η2,te}に変換し、これらのパラメータを(26)式に適用して入力の時間関数を得る。また、(30)式に代入して縦移動距離Xeが得られる。
【0075】
なお、この3次元マップは、vy0’及びYe’のどちらかを0以上に限定してもよい。例えば、Ye≧0の3次元マップを作成した場合は、検出値がYe<0であったとしても、vy0→−vy0、Ye→−Yeに変換して、3次元マップより{−η1’、−η2’、te’}を求め、−η1’→η1’、−η2’→η2’の処理を行って{η1,η2,te}を得ればよい。
【0076】
この結果、現時刻の自車両の位置及び速度と、設定された現時刻の車体合成力の大きさ及びジャークとから、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0077】
なお、上記の3次元マップではパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を(35)式のように定め、KJ’=vx0’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、パラメータaの取り方を変更したり、F0’/m’、vx0’、vy0’、Ye’及びKJ’のそれぞれに着目して式を変形したりすれば、上記の場合とは異なる3つのパラメータを選ぶことができる。そして、それぞれのパラメータに応じて残る2つのパラメータに任意の値を設定すれば、新たな3次元マップが作成できる。3次元マップの異なる軸の取り方の例を、下記(36)〜(43)式に示す。
【0078】
【数14】
【0079】
以下、上記の3次元マップを用いた第1の実施の形態について詳細に説明する。図4に示すように、第1の実施の形態の車両運動制御装置には、自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段として車両に搭載されたセンサ群、外部環境状態を検出する外部環境検出手段として車両に搭載されたセンサ群、及びこれらのセンサ群からの検出データに基づいて、自車両が運動するように自車両に搭載された車載機器を制御することによって目標位置へ到達するように車両運動を制御する制御装置20、ドライバに車両運動制御状態を報知する表示装置30が設けられている。
【0080】
車両運動制御装置の自車両の走行状態を検出するセンサ群としては、車速を検出する車速センサ10、操舵角を検出する操舵角センサ12、及びスロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ14が設けられている。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0081】
また、外部環境状態を検出するセンサ群としては、自車両の前方を撮影する前方カメラ16、及び自車両の前方の障害物を検出するレーザレーダ18が設けられている。なお、レーザレーダ18に代えて、又はレーザレーダ18と共にミリ波レーダを設けるようにしてもよい。また、図示しないGPS装置からの情報を加えるようにしてもよい。
【0082】
前方カメラ16は、車両の前方を撮影するように車両のフロントウインドウ上部等に取り付けられている。前方カメラ16は、小型のCCDカメラ又はCMOSカメラで構成され、自車両の前方の道路状況を含む領域を撮影し、撮影により得られた画像データを出力する。出力された画像データは、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置20に入力される。なお、カメラとして、前方カメラ16に加えて、前方赤外線カメラを設けるのが好ましい。赤外線カメラを用いることにより、歩行者を障害物として確実に検出することができる。なお、上記の赤外線カメラに代えて近赤外線カメラを用いることができ、この場合においても同様に歩行者を確実に検出することができる。
【0083】
レーザレーダ18は、赤外光パルスを照射する半導体レーザからなる発光素子、赤外光パルスを水平方向に走査する走査装置、及び前方の障害物(歩行者、前方車両等)から反射された赤外光パルスを受光する受光素子を含んで構成され、車両の前方グリル又はバンパに取り付けられている。このレーザレーダ18では、発光素子から発光された時点を基準として受光素子で受光されるまでの反射赤外光パルスの到達時間に基づいて、自車両から前方の障害物までの距離を検出することができる。レーザレーダ18で検出された障害物までの距離を示すデータは制御装置20に入力される。制御装置20は、RAM、ROM、及びCPUを含むマイクロコンピュータ等で構成され、ROMには以下で説明する車両運動制御ルーチンのプログラムが記憶されている。
【0084】
また、制御装置20は、自車両の操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも1つを制御することによって、目標位置へ到達するように車両運動を制御するための車両搭載機器に接続されている。この車両搭載機器としては、車輪の操舵角を制御するための電動パワーステアリング等の操舵角制御装置22、ブレーキ油圧を制御することによって制動力を制御する制動力制御装置24、及び駆動力を制御する駆動力制御装置26が設けられている。制動力制御装置24には、制動力を検出する検出センサ24Aが取り付けられている。また、制御装置20には、演算された制御入力の方向θ等を表示することによって車両運動制御情報をドライバに報知する表示装置30が接続されている。なお、車両運動制御を行なっていることを、ドライバだけでなく車両外部の目標位置方向に向かって報知するようにしてもよい。また、最短回避距離が自車両と障害物との距離よりも短い場合には、ドライバに回避の必要性を予め報知するようにしてもよい。
【0085】
操舵角制御装置22としては、ドライバのステアリングホイール操作に重畳して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段、ドライバ操作とは機械的に分離され、ステアリングホイールの操作とは独立して前輪及び後輪の少なくとも一方の車輪の操舵角を制御する制御手段(いわゆるステア・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0086】
制動力制御装置24としては、ドライバ操作とは独立して各車輪の制動力を個別に制御する、いわゆるESC(Electronic Stability Control)に用いられる制御装置、ドライバ操作とは機械的に分離され、各車輪の制動力を信号線を介して任意に制御する制御装置(いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ)等を用いることができる。
【0087】
駆動力制御装置26としては、スロットル開度、点火進角の遅角、又は燃料噴射量を制御することによって駆動力を制御する制御装置、変速機の変速位置を制御することによって駆動力を制御する制御装置、トルクトランスファを制御することによって前後方向及び左右方向の少なくとも一方の駆動力を制御する制御装置等を用いることができる。
【0088】
また、制御装置20には、制御入力を求めるための3次元マップを記憶したマップ記憶装置28が接続されている。
【0089】
また、制御装置20には、ドライバに警報を発する図示しない警報装置が接続されている。警報装置としては、音や音声によって警報を発する装置、光や視覚的な表示によって警報を発する装置、振動によって警報を発する装置、又は操舵反力のような物理量をドライバに与えてドライバの操作を誘導する物理量付与装置を用いることができる。また、表示装置30を警報装置として用いるようにしてもよい。
【0090】
以下、図5を参照して第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図3の3次元マップを用いる場合について説明する。
【0091】
ステップ100で、車速センサ10等で検出された自車両の走行状態、及びレーザレーダ18等で検出された外部環境状態に関する検出データを取り込む。次に、ステップ102で、取り込んだ検出データに基づいて、車両が走行している道路上の障害物の位置及び大きさを含む環境マップを作成する。
【0092】
次に、ステップ104で、障害物の横を通過する回避軌道を想定して所望の横移動距離を設定し、また、所望の横移動距離移動した位置における速度方向を環境マップに基づいて設定し、さらに自車両の現時刻の位置を原点に、また設定した速度方向をx軸(車体前後方向)に取り、x軸に直交する方向をy軸とするxy座標を設定する。
【0093】
次に、ステップ106で、上記ステップ100で走行状態として取り込まれた自車両及び障害物の状態量を設定された座標に対応させて変換し、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、及び自車両と障害物との距離のy成分(横移動距離)Yeを演算する。
【0094】
次に、ステップ108で、外部環境及び自車両の構造と状態に基づいて、現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJを設定する。
【0095】
次に、ステップ110で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、及びYe、並びに上記ステップ108で設定した現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJを用いて、(35)式に従ってパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η1’,η2’,te’}を各3次元マップから得て、(32)式及び(34)式に従って{η1’,η2’,te’}を{η1,η2,te}に変換し、これらのパラメータを(26)式に適用して車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する回避軌道を導出する。
【0096】
ここで、図6に、導出された回避軌道の一例として、m=2000、vx0=15、vy0=0、Ye=1、F0=19600、KJ=0.3とした場合の軌道を示す。
【0097】
次に、ステップ112で、上記ステップ110で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するために必要な各車輪のタイヤ発生力を演算し、各車輪のタイヤ発生力が得られるように操舵角制御装置22、制動力制御装置24、及び駆動力制御装置26の少なくとも1つを制御すると共に、車両運動制御情報を表示装置30に表示する。また、障害物を回避するように制御する際には無条件で警報装置から警報を発したり、障害物を回避するための車両運動制御を行っていることを表示装置30に表示したりすることにより警報を行ってもよい。
【0098】
以上説明したように、第1の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Ye、現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0099】
また、人間はジャークに基づいて加速感を知覚する傾向があるため、ジャークを設定して時間変化をコントロールすることで、人間の感覚にあった制御を行うことができる。
【0100】
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{η1’,η2’,te’}を導出する3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、1つのパラメータを出力する3次元マップで導出が可能となる。第2の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第2の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0101】
ここで、第2の実施の形態で用いられる3次元マップについて説明する。
【0102】
まず、第1の実施の形態と同様に、(35)式まで展開する。そして、一例として、KJ’=vx0’=1とした場合のF0’/m’、vy0’及びYe’に関する3次元マップを作成する。図7に示すように、F0’/m’、vy0’及びYe’をパラメータとして、(26)〜(30)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした3次元マップを作成する。
【0103】
そして、この3次元マップを用いて{θ}を求めるには、KJ’=vx0’=1、既知のm、vx0、vy0、Ye、F0及びKJから(35)式に従ってパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を3次元マップから得て、下記(44)式により、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0104】
【数15】
【0105】
なお、この3次元マップは、vy0’及びYe’のどちらかを0以上に限定してもよい。例えば、Ye≧0の3次元マップを作成した場合は、検出値がYe<0であったとしても、vy0→−vy0、Ye→−Yeに変換して、3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→θ’の処理を行って{θ}を得ればよい。
【0106】
また、図7のように{Xe’}も出力する3次元マップを導入して、下記(45)式によりXeに変換して、縦移動距離を求めてもよい。
【0107】
【数16】
【0108】
なお、上記の3次元マップでは、パラメータを(35)式のように定めた場合について説明したが、第1の実施の形態と同様に、(36)〜(43)式の各々に示すパラメータに対応する{θ’}及び{Xe’}を出力する3次元マップを作成してもよい。
【0109】
以下、図8を参照して第2の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図7の3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0110】
ステップ100〜108を経て、次に、ステップ200で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vx0、vy0、及びYe、並びに上記ステップ108で設定した現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJを用いて、(35)式に従ってパラメータF0’/m’、vy0’及びYe’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を3次元マップから得て、(44)式に適用することにより現時刻の車体合成力の向きを導出する。
【0111】
次に、ステップ112で、上記ステップ200で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0112】
以上説明したように、第2の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Ye、現時刻の車体合成力の大きさF0、及びジャークKJをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出することができる。また、第1の実施の形態の場合の3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0113】
また、人間はジャークに基づいて加速感を知覚する傾向があるため、ジャークを設定して時間変化をコントロールすることで、人間の感覚にあった制御を行うことができる。
【0114】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、現時刻及び回避直後の車体合成力の大きさ、その間のジャークを設定した場合において、ジャークに基づく車体合成力を発生させて、所望の横移動距離移動した位置及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出する場合について説明する。なお、第3の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0115】
ここで、現時刻及び回避直後の車体合成力の大きさ、その間のジャークを設定した場合において、ジャークに基づく車体合成力を発生させて、所望の横移動距離移動した位置及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出するための3次元マップについて説明する。
【0116】
現時刻及び回避直後の車体合成力の大きさ、その間のジャークを設定した場合において、ジャークに基づく車体合成力を発生させて、所望の横移動距離移動した位置及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する最適制御問題は、第1の実施の形態と同様に、(7)式〜(11)式で定式化することができる。ただし、この制御問題では、回避直後の車体合成力の大きさをF1とおくと、終端時刻(回避に要する時間)が下記(46)式となり固定値となるところが第1の実施の形態とは異なる。
【0117】
【数17】
【0118】
まず、最適性の条件は(13)式〜(15)式となる。ここでは、終端時刻が(46)式のように固定なため、最適解は(16)式を必ずしも満たす必要はない。そして、同様の手順で制御入力を求めると(26)式となる。
【0119】
また、この制御入力に必要なパラメータ{η1,η2}は、(46)式を代入した(28)式及び(29)式を満たす。よって、(28)式、(29)式、及び(46)式にm、vx0、vy0、Ye、F0、F1、及びKJを代入して、η1及びη2を求め、さらに、(30)式に代入してXeを求める。
【0120】
まず、(28)式及び(29)式に対して、F1=F0+mKJteの関係を適用すると、下記(47)式及び(48)式のように変形できる。
【0121】
【数18】
【0122】
そして、(46)式〜(48)式に対して、任意の正数aを導入して下記(49)式の関係を満足する2組のパラメータP及びP’を考えると、P及びP’に対応する解{η1,η2}及び{η1’,η2’}は、下記(50)式の関係を満たす。
【0123】
【数19】
【0124】
ここで、(49)式の第4式より、aを下記(51)式のようにおくと、vy0’、Ye’、及びte’は下記(52)式のように変形できる。
【0125】
【数20】
【0126】
この関係より、F1’/m’及びKJ’に任意の正数を設定することにより、現時刻のパラメータPによってvy0’、Ye’、及びte’が求まる。よって、F1’/m’及びKJ’をある値に設定した場合において、vy0’、Ye’、及びte’をパラメータとした3次元マップを予め用意しておけばよい。なお、このF1’/m’及びKJ’の値はマップ作成時に設計者が自由に設定できる。
【0127】
ここでは、一例として、F1’/m’=KJ’=1とした場合のvy0’、Ye’、及びte’に関する3次元マップを作成する。図9に示すように、vy0’、Ye’、及びte’をパラメータとして、(47)式及び(48)式に基づいて得られるη1’の値をマッピングした第1の3次元マップ、及びη2’の値をマッピングした第2の3次元マップを作成する。
【0128】
そして、これらのマップを用いて{η1,η2}を求めるには、F1’/m’=KJ’=1、既知のm、vy0、Ye、F1及びKJから(52)式に従ってパラメータvy0’、Ye’、及びte’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η1’,η2’}を各3次元マップから得て、(50)式及び(51)式に従って{η1’,η2’}を{η1,η2}に変換し、さらに、(46)式に代入してteを得る。そして、これらのパラメータを(26)式に適用して入力の時間関数を得る。また、(30)式に代入して縦移動距離Xeが得られる。
【0129】
なお、この3次元マップは、vy0’及びYe’のどちらかを0以上に限定してもよい。例えば、Ye≧0の3次元マップを作成した場合は、検出値がYe<0であったとしても、vy0→−vy0、Ye→−Yeに変換して、3次元マップより{−η1’、−η2’}を求め、−η1’→η1’、−η2’→η2’の処理を行って{η1,η2}を得ればよい。
【0130】
この結果、現時刻の自車両の位置及び速度と、設定された現時刻及び回避直後の車体合成力の大きさ、ジャークとから、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する制御入力関数が得られ、また(1)式〜(6)式の積分計算により回避軌道が導出される。
【0131】
なお、上記の3次元マップではパラメータvy0’、Ye’、及びte’を(52)式のように定め、F1’/m’=KJ’=1とした場合について説明したが、このパラメータの取り方は、上記以外にも複数存在する。例えば、パラメータaの取り方を変更したり、F0’/m’、F1’/m’、vx0’、vy0’ 、Ye’及びKJ’のそれぞれに着目して式を変形したりすれば、上記の場合とは異なる3つのパラメータを選ぶことができる。そして、それぞれのパラメータに応じて残る2つのパラメータに任意の値を設定すれば、新たな3次元マップが作成できる。3次元マップの異なる軸の取り方の例を、下記(53)〜(64)式に示す。
【0132】
【数21】
【0133】
以下、図10を参照して第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図9の3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0134】
ステップ100〜106を経て、次にステップ300で、現時刻の車体合成力の大きさF0、回避直後の車体合成力の大きさF1、及びその間のジャークKJを設定する。
【0135】
次に、ステップ302で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vy0及びYe、並びに上記ステップ300で設定したF1及びKJを用いて、(52)式に従ってパラメータvy0’、Ye’、及びte’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{η1’,η2’}を各3次元マップから得て、(50)式及び(51)式に従って{η1’,η2’}を{η1,η2}に変換し、さらに、(46)式に代入してteを得る。そして、これらのパラメータを(26)式に適用して車体合成力を得る。また、(1)式〜(6)式に従って、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する回避軌道を導出する。
【0136】
次に、ステップ112で、上記ステップ302で導出された車体合成力に従って、回避軌道に沿った走行を実現するように制御する。
【0137】
以上説明したように、第3の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Ye、現時刻の車体合成力の大きさF0、回避直後の車体合成力の大きさF1、及びジャークKJをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力及び回避軌道を導出することができる。
【0138】
また、人間はジャークに基づいて加速感を知覚する傾向があるため、ジャークを設定して時間変化をコントロールすることで、人間の感覚にあった制御を行うことができる。
【0139】
次に、第4の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、車体合成力及び回避軌道を求めるために{η1’,η2’}を導出する3次元マップを用いる場合について説明したが、現時刻の入力(車体合成力の向き)のみを求めたい場合には、1つのパラメータを出力する3次元マップで導出が可能となる。第4の実施の形態ではこの場合について説明する。なお、第4の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0140】
ここで、第4の実施の形態で用いられる3次元マップについて説明する。
【0141】
まず、第3の実施の形態と同様に、(35)式まで展開する。そして、一例として、F1’/m’=KJ’=1とした場合のvy0’、Ye’、及びte’に関する3次元マップを作成する。図11に示すように、vy0’、Ye’、及びte’をパラメータとして、(26)及び(46)〜(48)式に基づいて得られる車体合成加速度の方向θ’の値をマッピングした3次元マップを作成する。
【0142】
そして、この3次元マップを用いて{θ}を求めるには、F1’/m’=KJ’=1、既知のm、vy0、Ye、F1及びKJから(52)式に従ってパラメータvy0’、Ye’、及びte’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を3次元マップから得て、(44)式により、所望の位置及び速度方向に到達したときの車速を最小化する現時刻の車体合成力の大きさ及び向きが得られる。
【0143】
なお、この3次元マップは、vy0’及びYe’のどちらかを0以上に限定してもよい。例えば、Ye≧0の3次元マップを作成した場合は、検出値がYe<0であったとしても、vy0→−vy0、Ye→−Yeに変換して、3次元マップより{−θ’}を求め、−θ’→θ’の処理を行って{θ}を得ればよい。
【0144】
また、図11のように{Xe’}も出力する3次元マップを導入して、下記(65)式によりXeに変換して、縦移動距離を求めてもよい。
【0145】
【数22】
【0146】
なお、上記の3次元マップでは、パラメータを(35)式のように定めた場合について説明したが、第3の実施の形態と同様に、(53)〜(64)式の各々に示すパラメータに対応する{θ’}及び{Xe’}を出力する3次元マップを作成してもよい。
【0147】
以下、図12を参照して第4の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。ここでは、図7の低速化3次元マップを用いる場合について説明する。なお、第1及び第3の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0148】
ステップ100〜300を経て、次に、ステップ400で、上記ステップ106で演算した自車両及び障害物の状態量m、vy0、及びYe、並びに上記ステップ300で設定したF1及びKJを用いて、(52)式に従ってパラメータvy0’、Ye’、及びte’を演算し、演算されたパラメータに対する出力{θ’}を3次元マップから得て、(44)式に適用することにより現時刻の車体合成力の向きを導出する。
【0149】
次に、ステップ112で、上記ステップ400で導出した車体合成力に従って車両運動を制御する。
【0150】
以上説明したように、第4の実施の形態の車両運動制御装置によれば、現在の自車両の速度のx成分vx0、自車両の速度のy成分vy0、横移動距離Ye、現時刻の車体合成力の大きさF0、回避直後の車体合成力の大きさF1、及びジャークKJをパラメータとする簡単な構成の3次元マップを用いて、所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力の向きを導出することができる。また、第3の実施の形態の場合の3次元マップに比べ、用いるマップが少ないため、マップを記憶するための容量を削減できる。
【0151】
また、人間はジャークに基づいて加速感を知覚する傾向があるため、ジャークを設定して時間変化をコントロールすることで、人間の感覚にあった制御を行うことができる。
【0152】
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態では、設定されるジャークとして、ドライバが期待する加速感に対応するジャークの値を設定する場合について説明する。なお、第5の実施の形態の車両運動制御装置の構成は、第1の実施の形態の車両運動制御装置の構成と同一であるので説明を省略する。
【0153】
設定されるジャークの値の算出方法は、例えば、特開2008−138595号公報に記載されているように、ドライバのアクセル操作量及び自車両の車速に基づいて、ドライバが期待する加速度を求め、この加速度を微分してジャークを算出することができる。
【0154】
以下、図13を参照して第5の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置の制御装置20で実行される車両運動制御ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0155】
ステップ100〜106を経て、次に、ステップ500で、ドライバのアクセル操作量を取り込んで、上記ステップ100で取り込んだ自車両の速度と共に、ドライバの要求加速度を算出する。
【0156】
次に、ステップ502で、現時刻の車体合成力の大きさF0、及び上記ステップ500で算出したドライバの要求加速度に対応したジャークの値を設定する。
【0157】
次に、ステップ110で、設定されたジャークに従って所望の横移動距離及び速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する回避軌道を導出する。
【0158】
以上、説明したように、第5の実施の形態の車両運動制御装置によれば、よりドライバの間隔に合致した制御を行うことができる。
【0159】
なお、第1〜第4の実施の形態では、現時刻の道路に対する自車両の速度及び所望の位置を用いる場合について説明したが、自車両と所望の位置との相対距離及び相対速度を用いてもよい。
【符号の説明】
【0160】
10 車速センサ
12 操舵角センサ
14 スロットル開度センサ
16 前方カメラ
18 レーザレーダ
20 制御装置
22 操舵角制御装置
24 制動力制御装置
26 駆動力制御装置
28 マップ記憶装置
30 表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及び車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、
自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータη1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η1’と、の関係を定めた第1のマップ、
・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη1と異なる第2の導入パラメータη2の、前記仮定の下での値η2’と、の関係を定めた第2のマップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記位置に到達する時刻teの、前記仮定の下での時刻te’と、の関係を定めた第3のマップからなる3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項2】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及び車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、
自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項3】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、該位置に到達した際の車体合成力の大きさ、及び現時刻から該位置に到達するまでの車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、
自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、該位置に到達した際の車体合成加速度の大きさF1/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータη1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、前記大きさF1/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η1’と、の関係を定めた第1のマップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη1と異なる第2の導入パラメータη2の、前記仮定の下での値η2’と、の関係を定めた第2のマップからなる3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項4】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、該位置に到達した際の車体合成力の大きさ、及び現時刻から該位置に到達するまでの車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、
自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、該位置に到達した際の車体合成加速度の大きさF1/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、前記大きさF1/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記検出手段により検出された状態量に基づいて推定されるドライバが期待する加速感に対応する値を、前記車体合成力の大きさの時間変化として設定する請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記自車両に対する前記位置の相対距離及び相対速度を検出する請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項7】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含む請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項8】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるための車両運動制御プログラム。
【請求項1】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及び車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、
自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータη1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η1’と、の関係を定めた第1のマップ、
・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη1と異なる第2の導入パラメータη2の、前記仮定の下での値η2’と、の関係を定めた第2のマップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記位置に到達する時刻teの、前記仮定の下での時刻te’と、の関係を定めた第3のマップからなる3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項2】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、及び車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、
自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項3】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、該位置に到達した際の車体合成力の大きさ、及び現時刻から該位置に到達するまでの車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、
自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、該位置に到達した際の車体合成加速度の大きさF1/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した第1の導入パラメータη1の、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、前記大きさF1/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での値η1’と、の関係を定めた第1のマップ、並びに
・前記3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を求めるために導入した前記第1の導入パラメータη1と異なる第2の導入パラメータη2の、前記仮定の下での値η2’と、の関係を定めた第2のマップからなる3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項4】
所望の横移動距離移動した位置、該位置における所望の速度方向、現時刻の車体合成力の大きさ、該位置に到達した際の車体合成力の大きさ、及び現時刻から該位置に到達するまでの車体合成力の大きさの時間変化を設定する設定手段と、
自車両と前記位置との距離、及び自車両の速度を含む状態量を検出する検出手段と、
・前記所望の速度方向を車体前後方向とした場合の前記自車両の速度の車体前後方向の成分vx0、前記自車両の速度の車体横方向の成分vy0、前記距離の車体横方向の成分Ye、現時刻の車体合成加速度の大きさF0/m、該位置に到達した際の車体合成加速度の大きさF1/m、及び車体合成加速度の大きさの時間変化KJを用いた各々異なる3つのパラメータと、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する車体合成加速度の方向θの、前記成分vx0、前記成分vy0、前記成分Ye、前記大きさF0/m、前記大きさF1/m、及び前記時間変化KJのうち前記3つのパラメータに応じた2つが特定値であるとの仮定の下での方向θ’と、の関係を定めた3次元マップを記憶した記憶手段と、
前記検出手段で検出された状態量及び前記設定手段で設定された値に基づいて前記3つのパラメータを演算し、演算された3つのパラメータ及び前記3次元マップを用いて、前記所望の横移動距離移動した位置及び該位置における所望の速度方向に到達する際の縦移動距離を最小化する現時刻の車体合成力を導出する導出手段と、
を含む車両運動制御装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記検出手段により検出された状態量に基づいて推定されるドライバが期待する加速感に対応する値を、前記車体合成力の大きさの時間変化として設定する請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記自車両に対する前記位置の相対距離及び相対速度を検出する請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項7】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、操舵角、制動力、及び駆動力の少なくとも一つを制御する制御手段を更に含む請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項8】
前記導出手段で導出された前記車体合成力に基づいて、ドライバに車両運動状態を報知する報知手段を更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるための車両運動制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図3】
【図7】
【図9】
【図11】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図3】
【図7】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2012−171388(P2012−171388A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32509(P2011−32509)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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