説明

車両運転支援システム、運転支援装置、車両及び車両運転支援方法

【課題】危険走行領域を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させる車両運転支援システム、運転支援装置、車両及び車両運転支援方法を提供する。
【解決手段】車載装置は、停止線までの距離、自車両の速度、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間及び所定の標準減速度などに基づいて、自車両が交差点の手前に停止するための停止条件及び交差点に進入するための進入条件により決定される危険走行状態にあるか否かを判定する。車載装置は、危険走行状態にあると判定した場合、危険走行状態を回避するために、例えば、車両を停止線に停止させる場合には、車両を緩やかな減速度で減速するための処理を行い、あるいは、車両を交差点に進入させる場合には、車両を緩やかな加速度で加速するための処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援に関し、特に交差点で安全に車両を停止させ又は通過させる車両運転支援システム、該車両運転支援システムを構成する運転支援装置、該運転支援装置を搭載した車両及び車両運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全運転支援には、走行中の車両を減速させて停止させる停止制御に関する技術、信号の切り替え時間を考慮したジレンマ制御に関する技術、車両の位置を検出する技術など多くの技術が適用されている。
【0003】
例えば、交差点手前の停止線で車両を停止させるために、カメラから得られた画像に基づいて停止線を検出し、車両の速度又は加減速度の情報により車両の走行制御を行って停止線で車両を停止させる技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
また、交差点の上流に設置した通信装置から、その交差点の信号の切り替えタイミング情報及び交差点の停止線までの距離(あるいは停止線の位置情報)を車載装置で取得し、車両がジレンマゾーンに入っている場合に、ジレンマゾーンから脱出させるための限界走行速度を提供する安全速度提供方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
一方、ナビゲーションで広く利用されている車両の位置を検出する方法として、自立航法、衛星航法、地図マッチング法、ハイブリッド航法などがある。自立航法は、距離センサ、方位センサ又は角速度センサなど用い、例えば、経緯度座標系を基にした直交座標系に対する車両の走行の方位角と単位時間当たりの走行距離に基づいて、逐次車両位置を算出するものであるが、道路との整合性は考慮されておらず、走行距離の増加に応じて車両位置の誤差が累積するという問題がある。
【0006】
また、衛星航法は、GPS(Global Positioning System)を用いるものであり、検出される位置には、10〜20m程度の誤差を含む。GPSを用いるため、距離センサ、方位センサ又は角速度センサ等の車載のセンサは不要である。しかし、高架下の道路、建物に挟まれた道路、山道、街路樹等で覆われた道路では、所定数のGPS衛星から電波を受信することができず、検出精度が大きく劣化するという問題がある。
【0007】
また、地図マッチング法は、自立航法による走行軌跡と道路地図との整合性(マッチング)を考慮して車両の位置を検出するものである。すなわち、自立航法による軌跡と、道路地図データとを比較して相関をとりながら、走行していると考えられる複数の道路候補の中から、最も確からしい道路を選定してゆく。そして、候補となる道路が1本に限定された時点で、自立航法により得られた車両の走行軌跡を道路に合致させる。しかし、限定した道路が間違っている場合、それ以降の位置検出が不能になるという問題がある。
【0008】
また、ハイブリッド航法は、衛星航法と地図マッチング法とを組み合わせたものであり、自立航法と衛星航法の誤差を勘案しながら、合理的に車両の位置を推定し、走行している道路を特定するものである。ハイブリッド航法では、例えば、通常時には、地図マッチング法を用いて車両の位置を検出する。地図マッチング法で車両の位置が検出不能に陥った場合、衛星航法により車両の位置、方位を検出して車両の位置を推定し、道路地図データとの整合性を考慮して車両の位置を検出するものである。ハイブリッド航法を用いれば、特殊な場合を除けば、車両が走行している道路を間違う可能性は殆どなく、道路方向の位置精度も、平均的には10m程度の誤差範囲内であり、道路案内目的のナビゲーションという目的であれば、実用上殆ど問題ない精度レベルである。
【特許文献1】特開2002−190100号公報
【特許文献2】特開2006−151014号公報
【特許文献3】特開2006−139707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術では、車両が停止線に接近しない限り停止線を検出することができないため、停止線を検出できた時点では、車両は停止線付近に到達しており、車両を停止線で停止させるための時間的余裕が十分でない。この場合、車両を停止線で停止させるためには、大きな減速度で減速させる必要があり、後続車が存在する場合には、安全上問題がある。
【0010】
また、特許文献3では交差点の十分手前からジレンマ領域又はオプション領域を回避する走行制御又は情報提供を行う方法が開示されているものの、さらに安全かつ確実にジレンマ領域又はオプション領域を回避するように走行制御又は情報提供を行う方法が望まれていた。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、危険走行領域を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させる車両運転支援システム、該車両運転支援システムを構成する運転支援装置、該運転支援装置を搭載した車両及び車両運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る車両運転支援システムは、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報を送信する送信装置と、該送信装置が送信した信号情報を受信して車両の安全運転を支援する運転支援装置とを備える車両運転支援システムにおいて、前記運転支援装置は、自車両の速度情報を取得する速度取得手段と、自車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、前記交差点までの距離、自車両の速度、信号情報及び所定の標準減速度に基づいて、自車両が交差点の手前に停止するための停止条件及び交差点に進入するための進入条件により決定される走行状態にあるか否かを判定する判定手段と、該判定手段で前記走行状態にあると判定した場合、自車両を加減速するための情報を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る車両運転支援システムは、第1発明において、前記出力手段は、自車両を減速するための情報を出力する場合、黄信号開始時点以降、自車両を前記標準減速度で減速するための情報をさらに出力するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る車両運転支援システムは、第1発明又は第2発明において、前記運転支援装置は、所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両が交差点の手前に停止できる停止限界速度を算出する停止限界速度算出手段と、前記所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両が交差点に進入できる進入限界速度を算出する進入限界速度算出手段と、前記判定手段で前記走行状態にあると判定した場合、自車両の速度、及び前記停止限界速度又は進入限界速度に基づいて、自車両の加減速度を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る車両運転支援システムは、第1発明又は第2発明において、前記運転支援装置は、所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両が交差点の手前に停止できる停止限界速度を算出する停止限界速度算出手段と、前記所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両が交差点に進入できる進入限界速度を算出する進入限界速度算出手段と、自車両の速度、及び前記停止限界速度又は進入限界速度に基づいて、前記所定時間経過又は所定距離の移動の都度、目標速度を算出する目標速度算出手段と、前記判定手段で前記走行状態にあると判定した場合、自車両の速度と目標速度との差分に応じて、自車両の加減速度を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る車両運転支援システムは、第1発明乃至第4発明のいずれかにおいて、前記運転支援装置は、道路勾配を含む道路情報を取得する道路情報取得手段と、該道路情報取得手段で取得した道路情報に基づいて、前記標準減速度を決定する決定手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る車両運転支援システムは、第1発明において、前記運転支援装置は、周辺車両の有無を判定する周辺車両判定手段と、前記交差点の交通に関する交通情報を取得する交通情報取得手段とを備え、前記出力手段は、自車両を加速した場合の速度が所定速度以下であることの条件を満たし、かつ前方車両が存在しないこと、後続車両が存在すること、及び前記交差点の交差道路の交通が閑散であることの少なくとも1つの条件を満たす場合、自車両を加速するための情報を出力するように構成してあることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係る車両運転支援システムは、第1発明又は第2発明において、前記出力手段で出力する情報に基づいて、自車両の加減速を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0019】
第8発明に係る車両運転支援システムは、第1発明乃至第7発明のいずれかにおいて、前記出力手段で出力する情報に基づいて、自車両の加減速を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
【0020】
第9発明に係る車両運転支援システムは、第8発明において、前記交差点までの距離、自車両の速度及び信号情報に基づいて、前記走行状態の近傍にあるか否かを判定する近傍判定手段を備え、前記報知手段は、該近傍判定手段で前記走行状態の近傍にあると判定した場合、交差点の手前に停止する旨又は交差点に進入する旨の報知をするように構成してあることを特徴とする。
【0021】
第10発明に係る運転支援装置は、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報を受信して車両の安全運転を支援する運転支援装置において、自車両の速度情報を取得する速度取得手段と、自車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、前記交差点までの距離、自車両の速度、信号情報及び所定の標準減速度に基づいて、自車両が交差点の手前に停止するための停止条件及び交差点に進入するための進入条件により決定される走行状態にあるか否かを判定する判定手段と、該判定手段で前記走行状態にあると判定した場合、自車両を加減速するための情報を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0022】
第11発明に係る車両は、前述の発明に係る運転支援装置を搭載したことを特徴とする。
【0023】
第12発明に係る車両運転支援方法は、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報を運転支援装置で受信して車両の安全運転を支援する車両運転支援方法において、前記運転支援装置は、自車両の速度情報を取得し、自車両と交差点との距離に関する情報を取得し、前記交差点までの距離、自車両の速度、信号情報及び所定の標準減速度に基づいて、自車両が交差点の手前に停止するための停止条件及び交差点に進入するための進入条件により決定される走行状態にあるか否かを判定し、前記走行状態にあると判定した場合、自車両を加減速するための情報を出力することを特徴とする。
【0024】
第1発明、第10発明及び第12発明にあっては、運転支援装置は、自車両の速度情報(速度)及び自車両と交差点との距離に関する情報を取得し、例えば、交差点及び自車両の位置情報に基づいて、交差点までの距離を算出する。この場合、自車両と交差点との距離に関する情報は、自車両と交差点との距離でもよく、あるいは、自車両及び交差点の位置であってもよい。運転支援装置は、交差点までの距離、自車両の速度、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報及び所定の標準減速度に基づいて、自車両が交差点の手前に停止するための停止条件及び交差点に進入するための進入条件により決定される走行状態(例えば、危険走行状態、すなわち、車両の交差点までの距離と速度により決定される危険走行領域)にあるか否かを判定する。危険走行状態は、例えば、ジレンマ状態とオプション状態がある。ジレンマ状態は、自車両が黄信号表示後に停止しようとしても交差点の手前に停止できず、かつ黄信号の終了時点までに交差点に進入できない状態であり、安全に停止又は進入できない状態である。また、オプション状態は、自車両が黄信号表示後に停止しようとして交差点の手前に停止でき、かつ黄信号の終了時点までに交差点に進入できる状態であり、運転者の特性により車両が停止するのか又は進入するのかが異なる不安定な状態である。また、標準減速度は、あくまで車両の速度変化を示すものであり、制動操作の操作内容又は操作のタイミングとは無関係である。標準減速度は、例えば、黄信号に変わって車両の制動を開始する場合など、停止判断時点から反射反応(0.5秒)より十分長い時間(例えば、2秒以上)を経過してから減速操作を行うときにみられる減速度を意味している。つまり、急ブレーキをかけずに余裕のある停止を目的とするときにみられる減速度を意味している。なお、運転支援装置が標準減速度での速度制御を実施するタイミングは、反射反応より十分長い時間、あるいは反射反応の時間に限らない。一般的には、標準減速度は、平地乾燥路面で、およそ2〜3m/s2 である。運転支援装置は、危険走行状態にあると判定した場合、自車両を加減速するための情報を出力する。すなわち、運転支援装置は、危険走行状態を回避するために、例えば、車両を交差点に停止させる場合には、車両を緩やかな減速度で減速するための情報を提供(出力)し、あるいは、車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、車両を緩やかな加速度で加速するための情報を提供(出力)する。これにより、危険走行状態(危険走行領域)を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
【0025】
第2発明にあっては、運転支援装置は、自車両を減速するための情報を出力する場合、黄信号開始時点以降、自車両を標準減速度で減速するための情報をさらに出力する。すなわち、運転支援装置は、一旦危険走行状態を回避した後、黄信号が点灯した以降は、自車両を標準減速度で減速するための情報を提供(出力)する。これにより、急な減速をすることなく車両を安全に交差点に停止させることができる。
【0026】
第3発明にあっては、運転支援装置は、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過又は所定距離の移動の都度、自車両が、例えば、黄信号表示後に停止しようとして交差点の手前に停止できる停止限界速度、及び自車両が、例えば、黄信号の終了時点までに交差点に進入できる進入限界速度を算出する。運転支援装置は、自車両が走行状態(例えば、危険走行状態)にあると判定した場合、自車両の速度及び算出した停止限界速度又は進入限界速度に基づいて、自車両の加減速度を制御する。例えば、運転支援装置は、自車両が危険走行状態(例えば、ジレンマ状態)にあると判定した場合において、自車両を交差点に停止させるときは、所定時間経過又は所定距離の移動の都度算出した停止限界速度を目標速度として現時点の自車両の速度を目標速度に近づけるべく自車両の減速制御を繰り返し行う。また、運転支援装置は、自車両が危険走行状態にあると判定した場合において、自車両を交差点に進入させるときは、所定時間経過又は所定距離の移動の都度算出した進入限界速度を目標速度として現時点の自車両の速度を目標速度に近づけるべく自車両の加速制御を繰り返し行う。これにより、所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両の速度を停止又は進入限界速度に徐々に近づけることができ、急な減速あるいは急な加速を行うことなく緩やかな加減速で安全にかつ確実に危険走行状態を回避することができる。
【0027】
第4発明にあっては、運転支援装置は、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過又は所定距離の移動の都度、自車両が、例えば、黄信号表示後に停止しようとして交差点の手前に停止できる停止限界速度、及び自車両が、例えば、黄信号の終了時点までに交差点に進入できる進入限界速度を算出する。運転支援装置は、自車両の速度、算出した停止限界速度又は進入限界速度に基づいて、所定時間経過又は所定距離の移動の都度、目標速度を算出する。目標速度は、例えば、現時点の自車両の速度と算出した停止限界速度又は進入限界速度との速度差が大きい場合、その速度差よりも小さい値だけ変化させた値とすることができる。これにより、加減速を行う場合の速度変化を小さくする。運転支援装置は、自車両が走行状態(例えば、危険走行状態)にあると判定した場合、自車両の速度と目標速度との差分に応じて、自車両の加減速度を制御する。例えば、差分がなくなるまで繰り返し自車両の加減速度を制御することができる。これにより、所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両の速度を停止限界速度又は進入限界速度に徐々に近づけることができ、急な減速あるいは急な加速を行うことなく緩やかな加減速で安全にかつ確実に危険走行状態を回避することができる。
【0028】
第5発明にあっては、運転支援装置は、道路勾配を含む道路情報を取得し、取得した道路情報に基づいて、標準減速度を決定する。例えば、自車両が下り坂を走行する場合、標準減速度を小さくし、登り坂を走行する場合、標準減速度を大きくすることができる。また、路面状態が乾燥、湿潤、砂地、雪面であるかに応じて、あるいはタイヤの磨耗状態に応じて、標準減速度を変化させることもできる。これにより、一層精度良く車両の停止又は進入を制御することができる。
【0029】
第6発明にあっては、運転支援装置は、自車両を加速した場合の速度が所定速度以下であることを必須条件とし、前方車両が存在しないこと、後続車両が存在すること及び交差点の交差道路の交通が閑散であることを選択条件とし、必須条件を満たし、かつ選択条件の少なくとも1つを満たす場合、自車両を加速するための情報を出力する。なお、前方車両とは、例えば、自車両の速度と超音波センサなどから前方車両との相対速度を所定の周期で検出し、検出した相対速度に基づいて、所定の速度まで加速した場合に衝突する可能性があると判断できる範囲内に存在している車両を対象とする。これにより、自車両を緩やかに加速して交差点に進入(通過)させる場合の安全性を確保することができる。
【0030】
第7発明にあっては、運転支援装置は、加減速するために出力する情報に基づいて、自車両の加減速を制御する。すなわち、運転支援装置は、危険走行状態を回避するために、例えば、自車両を交差点に停止させる場合には、自車両を緩やかな減速度で減速し、あるいは、自車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、自車両を緩やかな加速度で加速する。これにより、危険走行状態(危険走行領域)を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
【0031】
第8発明にあっては、運転支援装置は、加減速するために出力する情報に基づいて、自車両の加減速を報知する。すなわち、運転支援装置は、危険走行状態を回避するために、例えば、自車両を交差点に停止させる場合には、自車両が緩やかな減速度で減速すること又は減速指示を運転者に報知し、あるいは、自車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、自車両が緩やかな加速度で加速すること又は加速指示を運転者に報知する。これにより、運転者に危険走行状態(危険走行領域)を回避することを確実に伝えることができ、運転者が不意な操作を行うことを防止して確実に危険走行状態を回避することができる。また、運転者が指示に基づいて運転操作することで、危険走行状態(危険走行領域)を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
【0032】
第9発明にあっては、運転支援装置は、自車両の交差点までの距離、自車両の速度及び信号情報に基づいて、危険走行状態の近傍にあるか否かを判定する。危険走行状態の近傍にあるか否かの判定は、例えば、黄信号開始時点における交差点までの距離及び速度で特定される自車両の状態と停止条件又は進入条件との近さ度合いにより判定することができる。この場合、近さ度合いは、距離、座標切片の道のり、クラスタ分類などを用いて、停止条件又は進入条件からの乖離度を評価するための指標である。運転支援装置は、自車両が危険走行状態の近傍にあると判定した場合、交差点の手前に停止する旨又は交差点に進入する旨の報知をする。これにより、自車両が危険走行状態にない場合であっても、運転者の操作ミスにより危険走行状態に陥る事態を防止することができる。
【0033】
第11発明にあっては、車両は前述の運転支援装置を備えるため、車両の運転支援を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明にあっては、危険走行状態(危険走行領域)を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る車両運転支援システムの概要を示す模式図である。本発明に係る車両運転支援システムでは、信号機が設置された交差点手前に停止線を設けてあり、停止線から道路に沿って適長の離隔距離(例えば、200m)を有して路上装置21、22を設置してある。また、路上装置21の上流側(例えば、路上装置21から上流300m程度)に、光ビーコン10を設置している。
【0036】
路上装置21、22は、例えば、超音波感知器、ICタグ、磁気ネール、光センサ等であり、電波、音波、光、磁気などをセンシングすることにより交信地点を特定することができるものである。路上装置21、22は、道路上に車載装置(運転支援装置)との交信領域を有する。車両が交信領域を通過する際に、車載装置は、路上装置21、22から交信領域を通過することを示す信号を受信する。なお、路上装置21、22は、車載装置との間で一方向通信を行うものでも双方向通信を行うものでもよい。また、路上装置21、22は、通信を目的としたものでなく、単に計測のための信号を発するだけでもよい。
【0037】
光ビーコン10は、道路上に車載装置との通信領域を有する。車両が通信領域を通過する際に、車載装置は、光ビーコン10から所定の情報を受信する。所定の情報は、例えば、通信地点の位置情報、停止線の位置情報(例えば、停止線までの距離、停止線の絶対位置など)、路上装置21、22の位置情報(例えば、停止線から交信領域までの距離、交信領域の絶対位置など)、信号機の信号情報(例えば、黄信号開始時点及び黄信号時間など)などである。なお、光ビーコン10に代えて、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)などを用いることもできる。
【0038】
車両が交差点に向かって道路を走行する場合、車載装置は、光ビーコン10との通信により、所定の情報を取得する。例えば、車載装置は、この時点で停止線までの距離が、例えば、700mであることを確認することができる。また、車載装置は、車両が交差点に向かって道路をさらに走行し、車載装置が路上装置21と交信することにより、車載装置は、自車両の位置が停止線から400mの地点にあることを確認することができる。すなわち、車載装置は、停止線までの距離を補正することができる。また、車載装置が路上装置22と交信した場合も同様である。これにより、車載装置は、交差点の上流地点で、予め停止線までの距離を精度良く把握しておくことができる。
【0039】
その後、車載装置は、停止線(交差点)までの距離、自車両の速度、交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間及び所定の標準減速度などに基づいて、自車両が黄信号開始時点で交差点の手前に停止する停止条件及び黄信号の終了時点で交差点に進入する進入条件により決定される走行状態(例えば、危険走行状態、すなわち、停止線までの距離と速度により決定される危険走行領域)にあるか否かを判定する。また、標準減速度は、あくまで車両の速度変化を示すものであり、制動操作の操作内容又は操作のタイミングとは無関係である。標準減速度は、例えば、黄信号に変わって車両の制動を開始する場合など、停止判断時点から反射反応(0.5秒)より十分長い時間(例えば、2秒以上)を経過してから減速操作を行うときにみられる減速度を意味している。つまり、急ブレーキをかけずに余裕のある停止を目的とするときにみられる減速度を意味している。なお、運転支援装置が標準減速度での速度制御を実施するタイミングは、反射反応より十分長い時間、あるいは反射反応の時間に限らない。一般的には、標準減速度は、平地乾燥路面で、およそ2〜3m/s2 である。車載装置は、危険走行状態にあると判定した場合、危険走行状態を回避するために、例えば、車両を停止線に停止させる場合には、車両を緩やかな減速度で減速するための処理を行い、あるいは、車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、車両を緩やかな加速度で加速するための処理を行う。
【0040】
図2は車載装置30の構成を示すブロック図である。車載装置30には、車両に搭載されたビデオカメラ40を接続してある。ビデオカメラ40は、例えば、車両のフロントグリル、前部バンパなどに配置され、車両前方の道路を撮像できるようにしてある。また、車載装置30には、車両の走行状態を制御する車両制御部50を接続してある。車載装置30が出力する制御信号に応じて、車両制御部50は、所要の加減速度で車両を加減速させる。また、車載装置30には、自車両の前方、及び後方に他の車両が存在するか否かを検出するための超音波センサ60を接続してある。なお、超音波センサ60に代えて、ミリ波レーダ等他の車載センサを用いることもできる。
【0041】
車載装置30は、各種の演算処理を行うCPUからなり、後述する制御周期を計時するための時計を内蔵する制御部31を備える。なお、制御部31は、専用のハードウエア回路で構成してもよく、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成であってもよい。制御部31には、内部バスを介して通信部32、測位部33、地図データベース34、表示部35、画像処理部36、操作部37、記憶部38、報知部39などが接続されている。測位部33は、GPS(Global Positioning System)331、車速センサ332、ジャイロセンサ333、走行距離を計測する距離計334などを備えている。また、車載装置30は、専用装置のみならず、パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話など、取り外して地上でも別の目的などに利用できる装置に上述の各部の機能を備えるようにして構成することもできる。
【0042】
通信部32は、光ビーコン10との間で路車間通信を行う通信機能を有する。なお、通信部32は、光ビーコン、電波ビーコン、DSRCなどの狭域通信に限定されるものではなく、例えば、中域通信としてUHF帯又はVHF帯等の無線LAN機能を備えるものでもよく、あるいは、広域通信として携帯電話、PHS、多重FM放送、インターネット通信などの通信機能を備えるものでもよい。また、通信部32は、路上装置21、22が送信する信号を受信する受信機能を備えている。
【0043】
測位部33は、複数のGPS衛星からの電波をGPS331で受け取り、自車の位置を時々刻々測位する。また、測位部33は、GPS衛星からの電波が届かない場所、あるいはGPS331により測位される位置の誤差を小さくするため、車速センサ332、ジャイロセンサ333から出力される信号に基づいて自車位置を推定し、地図データベース34の道路データと照合することにより自車の位置をさらに精度良く測位する。なお、GPS331に加えて、DGPS(ディファレンシャルGPS)を搭載することもできる。DGPSは、予め位置が分かっている基準局から発信されるFM放送又は中波を受信し、GPSで算出した位置のずれを補正することができ、自車の位置の精度を向上させることができる。
【0044】
表示部35は、フロントガラスディスプレイ又はヘッドアップディスプレイ、あるいは、カーナビゲーションシステム又は後方監視モニタなどの液晶表示パネルであって、運転者に所要の情報を表示する。
【0045】
画像処理部36は、制御部31から画像処理開始の信号を受け付けた場合、ビデオカメラ40で道路を撮像して得られた撮像画像に基づいて、停止線を検出するための処理を行う。以下、撮像画像に基づいて停止線の位置を検出する方法について説明する。
【0046】
ビデオカメラ40のレンズ中心を原点として、道路座標系を(X、Y、Z)、カメラ座標系を(X’、Y’、Z’)とし、道路座標系は、道路の進行方向をY軸(前方向を正)、道路方向と垂直な道路面上の方向をX軸(前方に向かって右方向を正)、路面と垂直な方向をZ(上方を正)とする。また、カメラ座標系は、カメラレンズの光軸をY’軸、光軸に垂直であって水平方向の軸をX’軸、カメラの上方向をZ’軸とする。さらに、カメラ座標系の各軸の道路座標系の各軸に対する回転角を、それぞれθ(ピッチ角)、φ(ロール角)、ψ(ヨー角)とし、全て右ねじの進む方向を正(θ:水平面より上向きが正、φ:右回りが正、ψ:左回りが正)とする。この場合、道路座標系からカメラ座標系の変換式は、式(1)で表すことができる。
【0047】
【数1】

【0048】
変換行列の係数P11〜P33それぞれは、式(2)で表すことができる。また、撮像画像上の座標(x、y)は、レンズの焦点距離をFとすると、式(3)で表すことができる。
【0049】
停止線の有無の判定は、撮像画像の各画素の画素値に基づいて、エッジ点を抽出し、抽出したエッジ点より得られるエッジ画像と停止線の形状とのパターンマッチングを行うことにより判定することができる。切り出された停止線が撮像画像のy軸と交わる点のy座標を求め(この場合x=0)、求めたy座標を式(3)に代入すれば、停止線までの距離を精度良く算出することができる。
【0050】
操作部37は、各種操作パネルを備え、運転者と車載装置30とのユーザインタフェースとして機能する。例えば、操作部37は、運転者の操作により車載装置30の動作の開始又は停止の操作を受け付ける。
【0051】
報知部39は、スピーカを備え、制御部31の制御のもと、運転者に警告する場合、警告の内容を音声で出力する。例えば、車両が後述する危険走行領域にある場合、危険走行領域を回避すべく自動速度制御を行う(自動速度制御モードに入る)旨を出力する。また、車両を交差点に停止させるために減速させる場合、あるいは交差点に進入(通過)させるため加速させる場合、その旨を出力する。
【0052】
記憶部38は、通信部32を通じて受信された所定の情報を記憶する。
【0053】
図3は危険走行領域の概念を示す説明図である。図中、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。危険走行領域は、車両が危険走行状態であることを車両の速度と停止線までの距離とにより表すことができる領域である。危険走行領域は、ジレンマ領域とオプション領域とを含む。ジレンマ領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとしても停止線(交差点)の手前に停止できず、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できない状態であり安全に停止又は進入できない状態である。また、オプション領域は、車両が黄信号表示後に停止しようとして停止線の手前に停止でき、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できる状態であり、運転者の特性により車両が停止するのか又は進入するのかが異なる不安定な状態である。
【0054】
図3において、停止線を基準とした車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(4)で求められる。式(4)は、現在の車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
【0055】
【数2】

【0056】
一方、車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(5)で求められる。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。すなわち、停止条件Cは、黄信号開始時に車両が標準減速度で減速したならば、車両が停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。
【0057】
車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない進入条件Lは、式(6)で求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。すなわち、進入条件Lは、車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。
【0058】
ジレンマ領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足しない領域であり、オプション領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足する領域である。なお、図中、危険走行領域の下側の領域は交差点停止領域であり、停止線手前に安全に停止することができる領域である。また、危険走行領域の上側の領域は交差点通過領域であり、安全に停止線に進入(通過)することができる領域である。
【0059】
車載装置30は、車両が黄信号開始時点で危険走行領域(ジレンマ領域及びオプション領域)に突入する可能性がある場合、危険走行領域に陥らないように回避すべく、車両を加速又は減速する制御を所定時間(制御周期)の経過の都度繰り返し行う。制御周期の計時は、例えば、制御部31で行うことができる。例えば、判定条件Eにより求められた黄信号開始時点の車両の状態(Xy、Vy)が停止条件Cに近い場合には、現時点の速度が点Pで特定される停止限界速度になるように緩やかな減速度による減速制御を行う。また、判定条件Eにより求められた黄信号開始時点の車両の状態(Xy、Vy)が進入条件Lに近い場合には、現時点の速度が点Qで特定される進入限界速度になるように緩やかな加速度による加速制御を行う。
【0060】
次に車載装置30による危険走行領域回避の自動速度制御について説明する。まず、自車両を停止線で停止させる場合について説明する。図4、図5及び図6は停止線で停止させる場合の処理手順を示すフローチャートである。制御部31は、光ビーコン10との通信の有無を判定し(S11)、通信がない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続け、光ビーコン10との通信があるまで待機する。
【0061】
光ビーコン10との通信があった場合(S11でYES)、制御部31は、光ビーコン10から通信地点、停止線及び路上装置の位置情報、信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を少なくとも含む信号情報を受信する(S12)。なお、停止線から通信地点までの距離、停止線から路上装置までの距離を取得することもできる。
【0062】
制御部31は、停止線までの距離を算出し(S13)、路上装置21、22から信号を受信したか否かを判定し(S14)、信号を受信した場合(S14でYES)、停止線までの距離を修正する(S15)。例えば、停止線から路上装置21、22との交信地点までの距離をLとすると、車両の位置を、停止線から距離Lにあると修正する。これにより、自車両が停止線に向かって走行するにつれて累積する距離誤差をリセットし、停止線までの距離の精度を向上させることができる。信号を受信していない場合(S14でNO)、制御部31は、ステップS15の処理を行うことなく、後述のステップS16の処理を行う。
【0063】
制御部31は、自動運転開始タイミングであるか否かを判定する(S16)。自動運転開始タイミングは、停止線から所定の距離(例えば、200m)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点、最後の路上装置22との交信時点、あるいは光ビーコン10との通信時点など適宜設定できる。自動運転開始タイミングは、自車両の速度に応じて変化させることもできる。
【0064】
自動運転開始タイミングである場合(S16でYES)、制御部31は、危険走行領域を算出し(S17)、自車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する(S18)。自車両が危険走行領域内に突入する場合(S18でYES)、制御部31は、速度制御を減速か加速かいずれで行うか判定し(S19)、減速で行う場合(S19で減速)、自動速度制御モードに入る旨を報知する(S20)。この場合、運転者に対して車両が減速することを報知するが、制御部31による自動速度制御モードに入らずに、運転者に対して減速の指示を与え、運転者がその指示に従って減速するように構成することもできる。
【0065】
制御部31は、目標速度、段階的目標速度を算出する(S21)。目標速度は、自車両を緩やかな減速度で減速させて危険走行領域から回避(脱出)させるために到達させる速度である。目標速度Vsは、以下のとおり算出することができる。まず、自車両がジレンマ領域に突入する可能性があると判定された場合、式(4)、式(5)において、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsを目標速度とする。目標速度Vsは、図3の点Pにおける速度として求められ、式(7)で表される。
【0066】
【数3】

【0067】
また、自車両がオプション領域に突入する可能性があると判定された場合、上述の式(4)及び式(6)において、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsの下限値を目標速度とする。目標速度Vsは、式(8)で表される。
【0068】
段階的目標速度Vrは、自車両の現時点の速度と目標速度Vsとの差が大きい場合、速度変化が大きいため、緩やかな減速を行うことができなくなる事態を防ぐため、自車両の現時点の速度Vと目標速度Vsとの間の暫定目標値であり、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過の都度、算出する。
【0069】
段階的目標速度Vrの算出は、減速を行う場合に、制御周期の間における速度変化を小さくするように求めることができる。例えば、現時点の速度Vが、目標速度Vsに比べて大きい場合、その差分をn分割した値ΔV=(V−Vs)/nだけ減速させ、速度変化が微小になるように目標速度Vsに追従させることができる。この場合、段階的目標速度Vrは、Vr=V−Δv=V−(V−Vs)/nとなる。このようにして、Δvを調整することにより、自車両は、後続車両に対して減速を感じさせないように緩やかな減速度で減速することができるので、後続車両は、急ブレーキを踏み込むような事態を防止でき、安全性が向上する。
【0070】
また、段階的目標速度Vrの算出方法として、所定の閾値β(例えば、β=1km/h)を用いて、V−Vs≧βの場合、Vr=V−βとし、V−Vs<βの場合、Vr=Vsのように求めることもできる。
【0071】
制御部31は、現時点の速度Vを、算出した目標速度Vs又は段階的目標速度Vrに近づけるべく緩やかな減速度で減速制御を行い(S22)、制御周期を経過したか否かを判定し(S23)、制御周期を経過していない場合(S23でNO)、ステップS23の処理を続け、制御周期が経過するまで減速制御を続ける。これにより、後続車両に対し、自車両の減速を感じさせないようにすることができる。
【0072】
制御周期を経過した場合(S23でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達したか否かを判定する(S24)。例えば、危険走行領域がジレンマ領域である場合には、自車両の速度が停止条件Cで示される停止限界速度に到達したか否かにより判定する。危険走行領域の境界に到達していない場合(S24でNO)、制御部31は、ステップS21以降の処理を続ける。これにより、減速制御の処理は、制御周期の経過の都度行われるため、目標速度Vs、段階的目標速度Vrは徐々に変化し、滑らかな減速制御を実現することができる。
【0073】
危険走行領域の境界に到達した場合(S24でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達した時点の速度、すなわち、停止限界速度で速度維持を行う(S25)。これにより、危険走行領域の境界に到達した後は速度を一定にすることにより、自車両の状態を危険走行領域の境界に維持させる走行が可能となる。これにより、後続車両が自車両に追突し、あるいは自車両を無理に追い越すという危険を防止することができる。
【0074】
制御部31は、黄信号開始時点から所定時間経過したか否かを判定する(S26)。この場合、所定時間は、運転者が黄信号に切り替わったのを見てブレーキを踏むまでの時間遅れであり、例えば、0.5秒程度の値である。所定時間経過していない場合(S26でNO)、制御部31は、ステップS25以降の処理を続け、所定時間経過まで一定の速度で走行を続ける。
【0075】
所定時間経過した場合(S26でYES)、制御部31は、標準減速度で減速制御する(S27)。標準減速度gは、例えば、3m/s2 とすることができる。これにより、停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線上を推移して、自車両の速度を減速させることができる。
【0076】
制御部31は、撮像画像に基づいて、停止線を検出したか否かを判定し(S28)、停止線を検出していない場合(S28でNO)、ステップS27以降の処理を続ける。停止線を検出した場合(S28でYES)、制御部31は、停止線までの距離を算出し、停止線までの距離を補正して微調整制御で速度を制御し(S29)、車両を停止させ(S30)、自動速度制御モードを解除し、その旨を報知し(S31)、処理を終了する。微調整制御は、時々刻々停止線の位置を検出して停止線までの距離を算出し、停止線までの距離に基づいて速度を徐々に変更するものである。これにより、車両の速度を微調整することができ、車両を停止線に確実に停止させることができる。
【0077】
車両が危険走行領域内に突入しない場合(S18でNO)、制御部31は、自車両が交差点停止領域にあり、かつ自車両が危険走行領域の近傍領域(危険走行近傍領域)に突入するか否かを判定し(S32)、危険走行近傍領域に突入する場合(S32でYES)、速度制御を減速か加速のいずれで行うか判定し(S33)、減速で行う場合(S33で減速)、停止線で停止すべき旨報知し(S34)、処理を終了する。危険走行近傍領域に突入しない場合(S32でNO)、制御部31は、処理を終了する。
【0078】
加速で制御を行う場合(S33で加速)、制御部31は、加速制御し(S35)、処理を終了する。なお、この場合、加速制御の処理は、後述の図13で示す処理のステップS60以降の処理を行うことができる。
【0079】
加速で制御を行う場合(S19で加速)、制御部31は、加速制御し(S36)、処理を終了する。なお、この場合、加速制御の処理は、後述の図13で示す処理のステップS49以降の処理を行うことができる。
【0080】
自動運転開始タイミングでない場合(S16でNO)、制御部31は、停止線を通過したか否かを判定し(S37)、停止線を通過していない場合(S37でNO)、ステップS13以降の処理を続け、停止線を通過した場合(S37でYES)、ステップS11以降の処理を続ける。
【0081】
図7は危険走行近傍領域の概念を示す説明図である。図中、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。危険走行領域は、図3の場合と同様である。危険走行近傍領域は、交差点停止領域であって危険走行領域に近い距離にある領域、及び交差点通過領域であって、図7では危険走行領域に近い距離にある領域を含む場合の例を示している。
【0082】
すなわち、危険走行近傍領域にあるか否かの判定は、例えば、黄信号開始時点における交差点までの距離及び速度で特定される自車両の状態と停止条件C又は進入条件Lとの近さ度合いにより判定することができる。この場合、近さ度合いは、距離、座標切片の道のり、クラスタ分類などを用いて、停止条件又は進入条件からの乖離度を評価するための指標である。これにより、自車両が危険走行状態にない場合であっても、運転者の操作ミスにより危険走行状態に陥る事態を防止することができる。
【0083】
図8は危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。図中、上段は自車両の停止線までの距離と速度との関係を示し、下段は停止線までの距離と信号変化との関係を示す。停止線から200mの位置までは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。停止線から200mの位置において、車載装置30は、自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。なお、自動運転開始タイミングは、これに限定されるものではない。
【0084】
自車両が危険走行領域にあると判定した場合、この地点からは車載装置30による自動速度制御が行われ、まず危険走行領域を回避するための制御を行う回避制御領域となる。危険走行領域がジレンマ領域である場合、車載装置30は、自車両の速度が停止条件Cを満たす停止限界速度(目標速度)に到達するように緩やかな減速度で減速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、黄信号開始時点まで一定の速度制御を行う。
【0085】
自動速度制御のうち、黄信号開始時点以降は、自車両を標準減速度で減速制御する標準減速度制御領域である。すなわち、車載装置30は、黄信号開始時点(黄信号開始位置)から標準減速度で減速制御を行う。ビデオカメラ40により停止線を検出した場合、それ以降は、停止線までの距離を補正しつつ微調整制御で速度を制御する微調整領域となる。微調整制御は、時々刻々停止線の位置を検出して停止線までの距離を算出し、停止線までの距離に基づいて速度を徐々に変更するものである。これにより、図中曲線pで示すように、停止線で安全かつ確実に自車両を停止させることができる。なお、図中、破線で表示した直線m、曲線nは、回避制御を行わない場合の走行軌跡である。直線mは、交差点をそのまま走行した場合の走行軌跡であり、黄信号の終了時点で停止線に到達しておらず、赤信号で交差点を通過することになる。また、曲線nは、黄信号になってから標準減速度で停止を試みるが、停止線で停止することができない。
【0086】
危険走行領域から脱出するための回避制御は、上述の例に限定されるものではなく、種々の方法を取り得る。例えば、回避制御領域において、現在速度から一定の減速度で減速し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにすることもできる。
【0087】
すなわち、目標速度Vsとしては、図3で示した進入条件Lで示す直線又は停止条件Cで示す曲線上であればよく、例えば、進入条件Lで示す直線と停止条件Cで示す曲線との交点の速度、あるいは、以下のように目標速度Vsを求めることもできる。
【0088】
図9は停止条件Cで示す曲線上の目標速度の例を示す説明図である。図9において、X1yは現在位置Xから速度Vで走行した場合の黄信号開始時点の位置であり、X2yは現在位置Xから速度Vsで走行した場合の黄信号開始時点の位置である。また、Xyは黄信号開始時点で停止条件C上の目標速度Vsに到達した場合の位置である(図中点P’)。ここで、Xy=(X1y+X2y)/2となるようにする。黄信号開始時点で目標速度Vsに到達するための方法について以下に説明する。例えば、現在の速度Vから、一定の減速度βで減速し、黄信号開始までの時間t後に停止条件C上の目標速度Vsに到達させるとすると、式(9)が成立する。
【0089】
【数4】

【0090】
また、この場合、黄信号開始位置Xyは、式(10)を満たす。また、黄信号開始時刻における自車両の状態(Xy、Vs)は、停止条件Cで表される曲線上にある必要があるため、式(11)が成立する。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。
【0091】
X、V、t、α、gが既知であるため、式(9)〜(11)より、βを変数として、式(12)を求め、式(13)によりβを算出することができる。これを式(9)に代入して目標速度Vsを算出し、さらに式(10)よりその時点の位置Xyを算出することができる。算出した目標速度Vs、位置Xyが図8における目標速度Vs、位置Xyである。なお、回避制御の開始タイミングは、減速度βが十分小さい値となるように設定することで、黄信号開始時刻まで緩やかに減速して目標速度Vsに到達するようにできる。
【0092】
図10は危険走行領域を回避して停止制御する場合の走行軌跡の他の例を示す説明図である。図10に示すように、回避制御領域において、車載装置30は、停止線から200mの位置から黄信号開始位置(時刻)までの間、一定の減速度で減速制御を行う。例えば、現在の速度Vから、一定の減速度βで減速し、黄信号開始までの時間t後に停止条件C上の目標速度Vsに到達させることができる。
【0093】
また、この場合、黄信号開始時刻までの時間tのうち、最初の時間t1だけ、所定の減速度βで減速し、残りの時間(t−t1)は、一定速度で制御し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにすることもできる。
【0094】
この場合、式(9)、式(10)に代えて、式(14)、式(15)を用い、これらと式(11)からt1、Xy、Vsを求めることができる。
【0095】
図11は危険走行領域を回避して停止制御する場合の走行軌跡の他の例を示す説明図である。図11に示すように、回避制御領域において、車載装置30は、黄信号開始時刻までの時間tのうち、最初の時間t1だけ速度を変えず一定速度で走行させ、その後、所定の減速度βで減速し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにする。この場合、式(9)、式(10)に代えて、式(16)、式(17)を用いる。
【0096】
【数5】

【0097】
上述の例で、道路勾配を含む道路情報に基づいて標準減速度gを決定することもできる。例えば、道路勾配が0の場合に、式(5)を用いることとし、道路勾配を考慮する場合、式(5)に代えて、式(18)、式(19)を用いればよい。ここで、gは標準減速度、hは車種毎に一意の定数である勾配係数、γは勾配(単位は度、登りが正)である。
【0098】
【数6】

【0099】
また、路面状態、タイヤの状態に基づいて、補正後の標準減速度g’を用いることもできる。ここで、g’=g×(μ+1)、μは摩擦係数である。図12は摩擦係数の一例を示す説明図である。なお、道路情報は、光ビーコン10など外部から取得することもでき、あるいは、地図データベース34から取得するようにしてもよい。なお、図12において、符号「−」はタイヤの状態に依存しないことを示す。
【0100】
これにより、例えば、自車両が下り坂を走行する場合、標準減速度が小さくならないように、下り勾配でかかる力の分だけ減速制御量を増し(h・tan|γ|、γ<0)、登り坂を走行する場合、標準減速度が大きくなり過ぎないように、上り勾配でかかる力の分だけ減速制御量を減少(−h・tan|γ|、γ<0)させる。また、路面状態が乾燥、湿潤、砂地、雪面であるかに応じて、あるいはタイヤの磨耗状態に応じて、標準減速度を変化させることもできる。これにより、一層精度良く車両の停止又は進入を制御することができる。
【0101】
次に、自車両を停止線に進入(通過)させる場合について説明する。図13及び図14は停止線に進入させる場合の処理手順を示すフローチャートである。制御部31は、光ビーコン10との通信の有無を判定し(S41)、通信がない場合(S41でNO)、ステップS41の処理を続け、光ビーコン10との通信があるまで待機する。
【0102】
光ビーコン10との通信があった場合(S41でYES)、制御部31は、光ビーコン10から通信地点、停止線及び路上装置の位置情報、信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を少なくとも含む信号情報を受信する(S42)。なお、停止線から通信地点までの距離、停止線から路上装置までの距離を取得することもできる。
【0103】
制御部31は、停止線までの距離を算出し(S43)、路上装置から信号を受信したか否かを判定し(S44)、信号を受信した場合(S44でYES)、停止線までの距離を修正する(S45)。信号を受信していない場合(S44でNO)、制御部31は、ステップS45の処理を行うことなく、後述のステップS46の処理を行う。
【0104】
制御部31は、自動運転開始タイミングであるか否かを判定する(S46)。自動運転開始タイミングは、停止線から所定の距離(例えば、200m)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点、最後の路上装置22との交信時点、あるいは光ビーコン10との通信時点など適宜設定できる。自動運転開始タイミングは、自車両の速度に応じて変化させることもできる。
【0105】
自動運転開始タイミングでない場合(S46でNO)、制御部31は、ステップS43以降の処理を続ける。自動運転開始タイミングである場合(S46でYES)、制御部31は、危険走行領域を算出し(S47)、自車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する(S48)。自車両が危険走行領域内に突入する場合(S48でYES)、制御部31は、加速制御の可否を判定し、加速制御が可能である場合(S49でYES)、自動速度制御モードに入る旨を報知する(S50)。この場合、運転者に対して車両が加速することを報知するが、制御部31による自動速度制御モードに入らずに、運転者に対して加速の指示を与え、運転者がその指示に従って加速するように構成することもできる。
【0106】
加速制御の可否の判定は、自車両を加速しても安全であるか否かを確認するものである。例えば、自車両を加速した場合の速度が所定速度(例えば、制限速度、制限速度に若干の余裕を上乗せした速度など)以下であることを必須条件とし、自車両の前方に他の車両(前方車両)が存在しないこと、自車両の後方に後続車両が存在すること、及び交差点の交差道路の交通が閑散であることを選択条件とし、必須条件及び少なくとも1つの選択条件を満たす場合に加速可能と判定することができる。なお、前方車両とは、例えば、自車両の速度と超音波センサ60などから前方車両との相対速度を所定の周期で検出し、検出した相対速度に基づいて、所定の速度まで加速した場合に衝突する可能性があると判断できる範囲内に存在している車両を対象とする。交通が閑散であるか否かは、交通量が少ない場合であり、例えば、通常、青時間1分間あたりの交通量が20〜30台の地点の道路で、1分間あたりの交通量が15台より少ない場合など、地点毎の飽和流率も考慮して閑散であると判断する。規制速度は、地図データベース34から取得してもよく、光ビーコン10などの外部から取得してもよい。また、自車両周辺の他の車両の状況は、超音波センサ60から取得することができ、交差点の交通情報は、外部の光ビーコン10又は後述する他の通信装置70などから取得することができる。
【0107】
制御部31は、目標速度、段階的目標速度を算出する(S51)。目標速度は、自車両を緩やかな加速度で加速させて危険走行領域から回避(脱出)させるために到達させる速度である。目標速度の算出は次のように行うことができる。例えば、自車両がジレンマ領域に突入する可能性があると判定された場合、進入条件Lを満たす進入限界速度を目標速度とする。また、自車両がオプション領域に突入する可能性があると判定された場合、停止条件Cを満たす停止限界速度を目標速度とする。
【0108】
段階的目標速度Vrは、自車両の現時点の速度と目標速度Vsとの差が大きい場合、速度変化が大きいため、緩やかな加速を行うことができなくなる事態を防ぐため、自車両の現時点の速度Vと目標速度Vsとの間の暫定目標値であり、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過の都度、算出する。
【0109】
段階的目標速度Vrの算出は、加速を行う場合に、制御周期の間における速度変化を小さくするように求めることができる。例えば、現時点の速度Vが、目標速度Vsに比べて小さい場合、その差分をn分割した値ΔV=(Vs−V)/nだけ加速させ、速度変化が微小になるように目標速度Vsに追従させることができる。この場合、段階的目標速度Vrは、Vr=V+Δv=V+(Vs−V)/nとなる。このようにして、Δvを調整することにより、自車両の加速を感じさせないように緩やかな加速度で自車両を加速することができる。
【0110】
また、段階的目標速度Vrの算出方法として、所定の閾値β(例えば、β=1km/h)を用いて、Vs−V≧βの場合、Vr=V+βとし、Vs−V<βの場合、Vr=Vsのように求めることもできる。
【0111】
制御部31は、現時点の速度Vを算出した目標速度Vs又は段階的目標速度Vrに近づけるべく緩やかな加速度で加速制御を行い(S52)、制御周期を経過したか否かを判定し(S53)、制御周期を経過していない場合(S53でNO)、ステップS53の処理を続け、制御周期が経過するまで加速制御を続ける。
【0112】
制御周期を経過した場合(S53でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達したか否かを判定する(S54)。例えば、危険走行領域がジレンマ領域である場合には、自車両の速度が進入条件Lで示される進入限界速度に到達したか否かにより判定する。危険走行領域の境界に到達していない場合(S54でNO)、制御部31は、ステップS51以降の処理を続ける。これにより、加速制御の処理は、制御周期の経過の都度行われるため、目標速度Vs、段階的目標速度Vrは徐々に変化し、滑らかな加速制御を実現することができる。
【0113】
危険走行領域の境界に到達した場合(S54でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達した時点の速度、すなわち、進入限界速度で速度維持を行う(S55)。これにより、危険走行領域の境界に到達した後は速度を一定にすることにより、自車両の状態を危険走行領域の境界に維持させる走行が可能となる。
【0114】
制御部31は、撮像画像に基づいて、停止線を検出したか否かを判定し(S56)、停止線を検出していない場合(S56でNO)、ステップS55以降の処理を続ける。停止線を検出した場合(S56でYES)、制御部31は、停止線までの距離を補正し、黄信号の終了時点を考慮して速度を微調整し(S57)、停止線を通過したか否かを判定する(S58)。停止線を通過していない場合(S58でNO)、制御部31は、ステップS57以降の処理を続ける。停止線を通過した場合(S58でYES)、制御部31は、自動速度制御モードを解除し、その旨報知し(S59)、処理を終了する。加速制御が不可の場合(S49でNO)、制御部31は、処理を終了する。
【0115】
一方、自車両が危険走行領域内に突入しない場合(S48でNO)、制御部31は、自車両が交差点通過領域にあり、かつ自車両が危険走行領域の近傍領域(危険走行近傍領域)に突入するか否かを判定し(S60)、危険走行近傍領域に突入する場合(S60でYES)、停止線を通過すべき旨報知し(S61)、処理を終了する。危険走行近傍領域に突入しない場合(S60でNO)、制御部31は、処理を終了する。
【0116】
図15は危険走行領域を回避して加速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。図中、上段は自車両の停止線までの距離と速度との関係を示し、下段は停止線までの距離と信号変化との関係を示す。停止線から200mの位置までは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。停止線から200mの位置において、車載装置30は、自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。なお、自動運転開始タイミングは、これに限定されるものではない。
【0117】
自車両が危険走行領域にあると判定した場合、この地点からは車載装置30は、自動速度制御を行い、危険走行領域を回避する制御を行う回避制御領域となる。危険走行領域がジレンマ領域である場合、車載装置30は、自車両の速度が進入条件Lを満たす進入限界速度(目標速度)に到達するように緩やかな加速度で加速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、黄信号開始時点まで一定の速度制御を行う。
【0118】
黄信号開始時点以降も、速度を維持し一定の速度で停止線を通過する。なお、車載装置30は、ビデオカメラ40により停止線を検出した時点以降は、停止線までの距離を補正しつつ速度を微調整し、自車両が黄信号の終了時点で停止線を進入(通過)するように制御する。これにより、図中曲線pで示すように、黄信号の終了時点で安全かつ確実に自車両を、停止線を通過させることができる。なお、破線で表示した直線m、曲線nは、回避制御を行わない場合の走行軌跡である。直線mは、交差点をそのまま走行した場合の走行軌跡であり、黄信号の終了時点で停止線に到達しておらず、赤信号で交差点を通過することになる。また、曲線nは、黄信号になってから標準減速度で停止を試みるが、停止線で停止することができない。
【0119】
図16は本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。図16に示すように、路上装置21、22を設置せずに、光ビーコン10のみを設置することもできる。この場合には、光ビーコン10を、停止線の上流側200m〜1000m程度の位置に設けることができる。また、この場合も、光ビーコン10に代えて、電波ビーコン、DSRCなどを用いることもできる。
【0120】
図17は本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。車両位置検出システムの概要の他の例を示す模式図である。図17に示すように、光ビーコン10、路上装置21、22に加えて、通信装置70を設ける。通信装置70は、例えば、無線LANなどの中域通信機能を備え、信号情報を広い範囲に送信する。なお、通信装置70は、信号制御、交通情報収集、交通情報提供などの処理を行う装置などを利用することも可能である。また、通信装置70は、中域通信に限らず、FM放送、携帯電話、インターネット通信等の広域通信機能を備えた装置でもよい。
【0121】
次に危険走行領域回避のための速度制御の具体的な例について説明する。まず、最初に停止線で停止させる場合の減速制御について説明する。また、自車両が制限速度と同程度の速度で走行しているものとする。また、交差点上流の光ビーコン10の位置は、停止線から1000mの地点であるとする。自車両が光ビーコン10と通信して取得した信号情報により、52秒後に黄信号に切り替わるとする。その後、停止線の手前200mの地点で、自車両の速度は、18m/sであり、黄信号開始時刻まで8秒あるとする。
【0122】
この時点から、自動速度制御を開始するものとする。自車両がこのままの速度で走行すると、黄信号開始時点は、停止線から56mの地点となる。上述の式(4)で、X=200m、V=18m/s、t=8sより算出できる。標準減速度gを3m/s2 、ブレーキの時間遅れαを0.5s、黄信号時間Tyを3sとすると、上述の式(5)及び式(6)は不成立となり、ジレンマ領域に突入すると判定される。
【0123】
このジレンマ領域への突入を回避するため、ここでは減速して交差点の停止線に停止させるものとする。上述の式(7)より、Vs=17.5m/sとなる。さらに、上述のVr=V−Δv=V−(V−Vs)/nという式で、n=1とすると、Vr=17.5m/sとなる。今、制御の単位時間を1秒とし、自車両の速度制御を開始する場合、制御の遅れ等で1秒後に速度が18m/sから17.5m/sに変化し、この間の平均速度が17.75m/sになるとする。1秒後の判定では、X=200−17.75=182.25m、t=7s、V=17.5m/s、Xy=59.75m、V2 =306.25m2 /s2 となり、一方、2g(Xy−αV)=306m2 /s2 となり、自車両の状態がほぼ停止条件Cで表される曲線上にあることが分かる。
【0124】
さらに、次の制御周期で同様の処理を繰り返す。次の制御周期の目標速度として、再度式(7)により目標速度Vsを算出すると、Vs=17.497m/sとなる。この場合には、X=182.25m、t=7sを用いている。さらに、上述のVr=V−Δv=V−(V−Vs)/nという式で、n=1とすると、Vr=17.497m/sとなる。これにより車両の速度制御を行うと、1秒後の判定では、X=182.25−17.497=164.753m、t=6s、V=17.497m/sで、Xy=59.77m、V2 =306.14m2 /s2 となり、一方、2g(Xy−αV)=306.13m2 /s2 となり、完全に停止条件Cの曲線上にあることが分かる。
【0125】
従って、この後は、上述の速度Vを維持し、信号が黄色になった時点から、時間遅れを加味した0.5秒後に、標準減速度で減速制御すれば、自車両を停止線に停止させることができる。このように、停止線の上流の所要の地点で危険走行領域の回避の要否を判定して速度制御することにより、1秒間にわずか0.5m/s、すなわち、1.8km/sという極僅かな速度変化で減速して後続車両に減速を気づかれることなく、自然にジレンマ領域への突入を回避することができる。
【0126】
次に、自車両が制限速度を越える高速度で走行している場合について説明する。安全運転支援で、特に問題となるのは、夜間の閑散時等、車両が高速走している場合であり、このような場合、危険走行領域が広がり、目標速度と自車両の速度との差も大きくなり、本発明のように停止線の上流地点で余裕を持った速度制御が重要となる。
【0127】
自車両の速度が30m/s、位置が停止線の手前200mの地点、黄信号開始時刻までの残り時間が3秒になったとする。自車両がこのままの速度で走行すると、黄信号開始時点は、停止線から110mの位置になる。上述の式(4)で、X=200m、V=30m/s、t=3sより算出できる。標準減速度gを3m/s2 、ブレーキの時間遅れαを0.5s、黄信号時間Tyを3sとすると、上述の式(5)、式(6)は不成立となり、ジレンマ領域に突入すると判定される。
【0128】
このジレンマ領域への突入を回避するため、ここでは減速して交差点の停止線に停止させるものとする。上述の式(7)より、Vs=25.70m/sとなる。さらに、上述のVr=V−Δv=V−(V−Vs)/nという式で、n=1とすると、Vr=25.7m/sとなる。今、制御の単位時間を1秒とし、自車両の速度制御を開始する場合、制御の遅れ等で1秒後に速度が30m/sから25.7m/sに変化(約時速15kmの変化)し、急激な減速となってしまう。又、この速度変化を小さくするため、nを大きくしようとすると、黄信号になるまでの時間が少なく時間切れとなってしまう。従って、自車両の速度が大きい場合には、停止線の200m手前からの制御では遅すぎることになり、速度に応じて、速度制御の開始タイミングを変更する必要がある。
【0129】
以上を考慮し、速度制御の開始位置を停止線の手前300mとし、自車両の速度が30m/sで、黄信号開始時刻までの時間が5秒であるとする。車両がこのままの速度で走行すると、黄信号開始時点は、停止線から150mの位置となる。上述の式(4)で、X=200m、V=30m/s、t=5sより算出できる。標準減速度gを3m/s2 、ブレーキの時間遅れαを0.5s、黄信号時間Tyを3sとすると、上述の式(5)、式(6)は不成立となり、ジレンマ領域に突入すると判定される。
【0130】
このジレンマ領域への突入を回避するため、ここでは減速して交差点の停止線に停止させるものとする。上述の式(7)より、Vs=29.02m/sとなる。さらに、上述のVr=V−Δv=V−(V−Vs)/nという式で、n=1とすると、Vr=29m/sとなる。今、制御の単位時間を1秒とし、自車両の速度制御を開始する場合、制御の遅れ等で1秒後に速度が30m/sから29m/sに変化し、この間の平均速度が29.5m/sになるとする。1秒後の判定では、X=300−29.5=270.5m、t=4s、V=29m/s、Xy=154.5m、V2 =841m2 /s2 となり、一方、2g(Xy−αV)=840m2 /s2 となり、自車両の状態がほぼ停止条件Cで表される曲線上にあることが分かる。
【0131】
さらに、次の制御周期で同様の処理を繰り返す。次の制御周期の目標速度として、再度式(7)により目標速度Vsを算出すると、Vs=28.99m/sとなる。この場合には、X=270.5m、t=4sを用いている。さらに、上述のVr=V−Δv=V−(V−Vs)/nという式で、n=1とすると、Vr=28.99m/sとなる。これにより車両の速度制御を行うと、1秒後の判定では、X=270.5−28.995=241.51m、t=3s、V=28.99m/sで、Xy=154.54m、V2 =840.42m2 /s2 となり、一方、2g(Xy−αV)=840.27m2 /s2 となり、かなり収束していることが分かる。
【0132】
以上より、高速で走行している場合でも、停止線から十分に手前の300mで速度制御することにより、1秒間にわずか1m/s、すなわち、3.6km/hという小さい速度変化で減速させることができ、後続車両に速度低下を気づかれることなく、自然にジレンマ領域への突入を回避することができる。なお、さらに小さい速度変化による減速制御を行うには、信号切り替え時間を考慮して上式でのnを大きくすれば良く、あるいは、停止線の手前300mよりもさらに上流の地点で速度制御を開始すればよい。
【0133】
次に、停止線を通過させる場合について説明する。自車両が制限速度と同程度の速度で走行しているものとする。停止線の手前200mの地点で、自車両の速度は、18m/sであり、黄信号開始時刻まで8秒あるとする。また、ジレンマ領域への突入を回避するため、ここでは加速して交差点の停止線を通過させるものとする。
【0134】
上述の式(8)より、Vs=18.18m/sとなる。さらに、上述のVr=V+Δv=V+(Vs−V)/nという式で、n=1とすると、Vr=18.18m/sとなる。今、制御の単位時間を1秒とし、自車両の速度制御を開始する場合、制御の遅れ等で1秒後に速度が18m/sから18.18m/sに変化し、この間の平均速度が18.09m/sになるとする。1秒後の判定では、X=200−18.09=181.91m、t=7s、V=18.18m/s、Xy=54.65m、vTy=54.54m、Xy=54.65mとなり、自車両の状態がほぼ進入条件Lで表される直線上にあることが分かる。
【0135】
さらに、次の制御周期で同様の処理を繰り返す。次の制御周期の目標速度として、再度式(8)により目標速度Vsを算出すると、Vs=18.19m/sとなる。この場合には、X=181.91m、t=7sを用いている。さらに、上述のVr=V+Δv=V+(Vs−V)/nという式で、n=1とすると、Vr=18.19m/sとなる。これにより車両の速度制御を行うと、制御の遅れ等で1秒後に速度が18.18m/sから18.19m/sに変化し、この間の平均速度が18.185m/sになるとする。1秒後の判定では、X=181.91−18.185=163.73m、t=6s、V=18.19m/sで、Xy=54.59m、vTy=54.57m、Xy=54.59mとなり、完全に進入条件Lの直線上にあることが分かる。
【0136】
従って、この後は、上述の速度Vを維持し、信号が黄色になっても同じ速度で走行すれば、信号が赤に変わる前に交差点の停止線を通過することができる。交差点の十分に手前の時点で判定して速度制御することにより、1秒間にわずか0.18m/s(0.6km/h)という極僅かな速度変化でジレンマ領域への突入を回避することができる。
【0137】
上述の例では、計算を簡単にするために制御周期を1秒としたが、実際は、0.05〜1秒程度に設定することができる。また、制御周期の間に車両が移動する距離に相当する距離を車両が移動する都度、上述の処理を繰り返すこともできる。なお、上述の例では説明を簡単にするために記していないが、回避制御で一旦目標速度に達して危険走行領域から外れた後、何らかの原因で再び、危険走行領域に入った場合には、再度目標速度を設定して回避制御を行う必要がある。また、上述の例では、説明を分かり易くするため、交差点停止と、交差点通過とを別々に述べたが、実際には、回避制御に入る前に、加速条件などを判定して、どちらを選定するかを判断することになる。又、加速条件が満たされない場合には、交差点停止制御を行っても良い。
【0138】
以上説明したように、本発明にあっては、危険走行状態を回避するために、車両を交差点に停止させる場合には、車両を緩やかな減速度で減速することができ、停止線で安全かつ確実に車両を停止させることができる。また、車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、車両を緩やかな加速度で安全に加速することができる。
【0139】
上述の実施の形態において、危険走行領域を回避するため停止条件C、進入条件Lを用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、余裕をもって危険走行領域の回避を行えるように、危険走行領域を予め広めに設定しておくこともできる。例えば、黄信号時間Tyを意図的に小さくすることができる。また、黄信号開始時点又は黄信号の終了時点を見かけ上変更することで、危険走行領域を広く設定することもできる。また、目標速度として、危険走行領域の停止限界速度又は進入限界速度(境界線の速度)そのものを使用する代わりに、これらを基準として、例えば、限界速度に所定の定数を乗じる等して算出した数値を用いることもできる。さらに、上記の危険走行領域は、対象とする速度の範囲を、予め決めておいても良いし、ジレンマ領域だけを対象としたり、オプション領域だけを対象としたりしても良い。
【0140】
上述の実施の形態では、自車両が危険走行領域に突入する可能性があると判断してからは、停止線に停止するまで、あるいは、停止線を通過するまで、自動速度制御モードとしているが、危険走行領域の境界線に到達した時点で自動速度制御モードを終了し、後は運転者による手動運転に切り替えることも可能である。
【0141】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明に係る車両運転支援システムの概要を示す模式図である。
【図2】車載装置の構成を示すブロック図である。
【図3】危険走行領域の概念を示す説明図である。
【図4】停止線で停止させる場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】停止線で停止させる場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】停止線で停止させる場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】危険走行近傍領域の概念を示す説明図である。
【図8】危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。
【図9】停止条件Cで示す曲線上の目標速度の例を示す説明図である。
【図10】危険走行領域を回避して停止制御する場合の走行軌跡の他の例を示す説明図である。
【図11】危険走行領域を回避して停止制御する場合の走行軌跡の他の例を示す説明図である。
【図12】摩擦係数の一例を示す説明図である。
【図13】停止線に進入させる場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】停止線に進入させる場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】危険走行領域を回避して加速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。
【図16】本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。
【図17】本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0143】
10 光ビーコン
21、22 路上装置
30 車載装置
31 制御部
32 通信部
33 測位部
34 地図データベース
35 表示部
36 画像処理部
37 操作部
38 記憶部
39 報知部
40 ビデオカメラ
50 車両制御部
60 超音波センサ
70 通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報を送信する送信装置と、該送信装置が送信した信号情報を受信して車両の安全運転を支援する運転支援装置とを備える車両運転支援システムにおいて、
前記運転支援装置は、
自車両の速度情報を取得する速度取得手段と、
自車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、
前記交差点までの距離、自車両の速度、信号情報及び所定の標準減速度に基づいて、自車両が交差点の手前に停止するための停止条件及び交差点に進入するための進入条件により決定される走行状態にあるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段で前記走行状態にあると判定した場合、自車両を加減速するための情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする車両運転支援システム。
【請求項2】
前記出力手段は、
自車両を減速するための情報を出力する場合、黄信号開始時点以降、自車両を前記標準減速度で減速するための情報をさらに出力するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の車両運転支援システム。
【請求項3】
前記運転支援装置は、
所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両が交差点の手前に停止できる停止限界速度を算出する停止限界速度算出手段と、
前記所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両が交差点に進入できる進入限界速度を算出する進入限界速度算出手段と、
前記判定手段で前記走行状態にあると判定した場合、自車両の速度、及び前記停止限界速度又は進入限界速度に基づいて、自車両の加減速度を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両運転支援システム。
【請求項4】
前記運転支援装置は、
所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両が交差点の手前に停止できる停止限界速度を算出する停止限界速度算出手段と、
前記所定時間経過又は所定距離の移動の都度、自車両が交差点に進入できる進入限界速度を算出する進入限界速度算出手段と、
自車両の速度、及び前記停止限界速度又は進入限界速度に基づいて、前記所定時間経過又は所定距離の移動の都度、目標速度を算出する目標速度算出手段と、
前記判定手段で前記走行状態にあると判定した場合、自車両の速度と目標速度との差分に応じて、自車両の加減速度を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両運転支援システム。
【請求項5】
前記運転支援装置は、
道路勾配を含む道路情報を取得する道路情報取得手段と、
該道路情報取得手段で取得した道路情報に基づいて、前記標準減速度を決定する決定手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両運転支援システム。
【請求項6】
前記運転支援装置は、
周辺車両の有無を判定する周辺車両判定手段と、
前記交差点の交通に関する交通情報を取得する交通情報取得手段と
を備え、
前記出力手段は、
自車両を加速した場合の速度が所定速度以下であることの条件を満たし、かつ前方車両が存在しないこと、後続車両が存在すること、及び前記交差点の交差道路の交通が閑散であることの少なくとも1つの条件を満たす場合、自車両を加速するための情報を出力するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の車両運転支援システム。
【請求項7】
前記出力手段で出力する情報に基づいて、自車両の加減速を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両運転支援システム。
【請求項8】
前記出力手段で出力する情報に基づいて、自車両の加減速を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の車両運転支援システム。
【請求項9】
前記交差点までの距離、自車両の速度及び信号情報に基づいて、前記走行状態の近傍にあるか否かを判定する近傍判定手段を備え、
前記報知手段は、
該近傍判定手段で前記走行状態の近傍にあると判定した場合、交差点の手前に停止する旨又は交差点に進入する旨の報知をするように構成してあることを特徴とする請求項8に記載の車両運転支援システム。
【請求項10】
交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報を受信して車両の安全運転を支援する運転支援装置において、
自車両の速度情報を取得する速度取得手段と、
自車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、
前記交差点までの距離、自車両の速度、信号情報及び所定の標準減速度に基づいて、自車両が交差点の手前に停止するための停止条件及び交差点に進入するための進入条件により決定される走行状態にあるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段で前記走行状態にあると判定した場合、自車両を加減速するための情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項11】
請求項10に記載の運転支援装置を搭載したことを特徴とする車両。
【請求項12】
交差点に設置された信号機の黄信号開始時点及び黄信号時間を含む信号情報を運転支援装置で受信して車両の安全運転を支援する車両運転支援方法において、
前記運転支援装置は、
自車両の速度情報を取得し、
自車両と交差点との距離に関する情報を取得し、
前記交差点までの距離、自車両の速度、信号情報及び所定の標準減速度に基づいて、自車両が交差点の手前に停止するための停止条件及び交差点に進入するための進入条件により決定される走行状態にあるか否かを判定し、
前記走行状態にあると判定した場合、自車両を加減速するための情報を出力することを特徴とする車両運転支援方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−296783(P2008−296783A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146047(P2007−146047)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】