説明

車両遠隔操作装置

【課題】仮にマイクロコンピュータが異常動作をとっても、誤って車両電源がオンされてしまう状況を生じ難くすることができる車両遠隔操作装置を提供する。
【解決手段】コントローラ15のマイクロコンピュータ20に、マイクロコンピュータ20の動作状態(正常動作/異常動作)に応じたパルス波形を有する判定信号Srを出力可能な判定信号出力部35を設ける。また、コントローラ15の内部リレー回路22の最上流にリレー電源スイッチング回路37を接続する。そして、アンテナユニット14に、判定信号Srを監視する監視回路38を設け、監視回路38がマイクロコンピュータ20の異常動作を確認したとき、リレー電源スイッチング回路37をオフして、内部リレー回路22を強制的にオフする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の動作状態を遠隔により操作する車両遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、車両遠隔操作装置の一種としてリモートエンジンスタータ装置が搭載されることがある。リモートエンジンスタータ装置は、リモートキー(通信端末)を用いて遠隔操作にて車両のエンジンを始動/停止させるものである。車両にリモートエンジンスタータ装置を搭載すれば、わざわざ車両に乗車しなくとも家屋内などの離れた位置からエンジンを始動させることが可能となり、暖気運転などに便利である。
【0003】
この場合、車両には、リモートエンジンスタータ装置のコントローラが搭載されるが、コントローラのマイクロコンピュータが異常動作をしてしまったときの対策として、このマイクロコンピュータにウォッチドッグタイマを設ける技術が考案されている(特許文献1等参照)。ウォッチドックタイマは、マイクロコンピュータの異常動作の有無を判定し、異常動作を検出すると、リセット信号を外部のECU(Electronic Control Unit)に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−318306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図6に示すように、車両のキーシステムがメカニカルキーシステム81の場合、同図に示すリモートエンジンスタータ装置82が車両に搭載されるが、このリモートエンジンスタータ装置82におけるコントローラ83内のマイクロコンピュータ84の異常動作対策として、コントローラ83内のリレー回路85を二重構造(リレー二重構造)とすることも検討されている。
【0006】
この場合、リレー回路85は、リレー構造を二重化するために、元々の主リレー86にAMリレー(電源リレー)87が直列接続されている。なお、主リレー86は、車両のイグニッションスイッチ88のACC(Accessory)、IG(Ignition)、ST(Starter)等の各スイッチに対応したリレーを持つ回路である。主リレー86及びAMリレー87の直列回路は、イグニッションスイッチ88に接続されている。なお、イグニッションスイッチ88は、メカニカルキーによるキーシリンダ89の操作によって通電オン/オフが切り換えられる。
【0007】
コントローラ83は、リモートキーからの電波をアンテナユニット90で受信すると、電波の認証をマイクロコンピュータ84にて実行する。マイクロコンピュータ84は、認証成立を確認すると、AM出力ポート84aからAMリレー87にオン信号を出力するとともに、ACC/IG/ST出力ポート84bから主リレー86にオン信号を出力する。このため、イグニッションスイッチ88がオンされたと同等になるので、車両電源が通電状態となり、車両のエンジンが始動する。
【0008】
また、仮にマイクロコンピュータ84の異常動作が原因でACC/IG/ST出力ポート84bが異常動作して、ACC/IG/ST出力ポート84bから誤って主リレー86にオン信号を出力してしまう場合もある。しかし、このときは、AM出力ポート84aからオフ信号が出力されていてAMリレー87がオフされているので、仮に異常動作にて主リレー86がオンされても、車両電源が通電されることはない。つまり、ACC/IG/ST出力ポート84bの異常動作による車両電源の通電が防止される。
【0009】
しかし、AMリレー87の駆動もマイクロコンピュータ84のソフトウェアで行っているので、マイクロコンピュータ84の異常動作が原因で、AM出力ポート84aが異常動作することも想定される。この場合、異常動作によってAM出力ポート84aからオン信号が出力された状態となってしまうと、AMリレー87が異常対策として機能しなくなってしまうので、何らかの対策が必要とされていた。
【0010】
本発明の目的は、仮にマイクロコンピュータが異常動作をとっても、誤って車両電源がオンされてしまう状況を生じ難くすることができる車両遠隔操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記問題点を解決するために、本発明では、車両の電源状態を遠隔操作可能な通信端末から送信された電波を受信可能なアンテナユニットと、車両電源の通電オンオフを切り換え可能なリレー回路を持つコントローラとを備え、前記通信端末からの電波を前記アンテナユニットで受信したとき、当該電波の正当性が確認されれば、前記コントローラ内のマイクロコンピュータが前記リレー回路を通電することにより、前記車両電源をオンする車両遠隔操作装置において、前記マイクロコンピュータの異常動作を検出する検出手段と、前記リレー回路の通電をオンオフ可能なスイッチング手段と、前記コントローラの外部に設けられ、前記検出手段の検出結果を基に前記マイクロコンピュータが異常動作していると判定したとき、前記スイッチング手段をオフして、前記リレー回路の通電を強制的に遮断する電源遮断手段とを備えたことを要旨とする。
【0012】
本発明の構成によれば、コントローラのマイクロコンピュータの異常動作有無を検出手段により検出し、異常動作が検出されたときには、リレー回路に接続されたスイッチング手段を電源遮断手段によりオフして、リレー回路の通電を強制的に遮断する。このため、マイクロコンピュータの異常動作が要因でリレー回路が誤って通電されてしまうことが回避されるので、マイクロコンピュータの異常動作を要因とする誤った車両電源への通電が生じ難くなる。
【0013】
また、コントローラの異常動作有無を判定する電源遮断手段は、コントローラの外部、つまりコントローラとは別のユニットや装置に設けられる。よって、仮にコントローラが異常動作をとったとしても、この異常動作に影響を受けないユニットや装置にて電源遮断手段が動作するので、電源遮断手段の正常動作が確保される。このため、電源遮断手段による異常動作判定の精度が確保されるので、車両電源の誤通電防止に効果が高くなる。
【0014】
本発明では、前記電源遮断手段は、前記コントローラとは別ユニットである前記アンテナユニットに設けられていることを要旨とする。この構成によれば、車両遠隔操作装置の一構成要素であるアンテナユニットに電源遮断手段を設けるので、元々の車両遠隔操作装置のシステム内に本例の機能を組み込むことが可能となる。よって、車両遠隔操作装置を1システム化することが可能となる。
【0015】
本発明では、前記検出手段は、パルス状の検出信号を出力し、前記電源遮断手段は、前記検出信号のパルス波形が正常波形をとるか否かを確認することにより、前記マイクロコンピュータが異常動作しているか否かを判定することを要旨とする。この構成によれば、マイクロコンピュータの異常動作有無を、検出手段から出力される検出信号のパルス波形によって監視する。このため、単にパルスの波形を見るという簡素な方式で異常動作の有無を判定することが可能となる。
【0016】
本発明では、前記スイッチング手段は、前記リレー回路の最上流に配置されていることを要旨とする。この構成によれば、リレー回路の最上流(電源側)にスイッチング手段が配置されるので、スイッチング手段をオフにすれば、リレー回路の全リレーがオフとなる。よって、リレー回路の誤通電防止に効果が高くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、仮にマイクロコンピュータが異常動作をとっても、誤って車両電源がオンされてしまう状況を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態のリモートエンジンスタータ装置の構成図。
【図2】判定信号の波形図であって、(a)が正常信号の波形図、(b)が異常信号の波形図。
【図3】コントローラのマイクロコンピュータが正常動作をとるときの状態図。
【図4】コントローラのマイクロコンピュータが異常動作をとるときの状態図。
【図5】コントローラのマイクロコンピュータが他の異常動作をとるときの状態図。
【図6】従来のリモートエンジンスタータ装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した車両遠隔操作装置の一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、メカニカルキー(図示略)の操作によって車両1の電源状態を機械的に切り換えるメカニカルキーシステム2が設けられている。この場合、車両1には、メカニカルキーの挿し込み先としてキーシリンダ3が設けられている。キーシリンダ3には、ACC(Accessory)、IG(Ignition)、ST(Starter)等の各スイッチの通電オン/オフを切り換えるイグニッションスイッチ4が接続されている。
【0020】
イグニッションスイッチ4には、第1電源配線5、第2電源配線6、ACC配線7、第1IG配線8、第2IG配線9、第1ST配線10、第2ST配線11の計7本の配線が接続されている。第1電源配線5及び第2電源配線6は、車載バッテリ(図示略)に繋がる配線で、イグニッションスイッチ4に電源を供給する。第1IG配線8は、ボディ系の電装品に繋がる配線であり、第2IG配線9は、エンジン始動系の電装品に繋がる配線である。第1ST配線10及び第2ST配線11は、各種スタータ電源に繋がる配線である。
【0021】
キーシリンダ3にメカニカルキーが挿し込まれてキーシリンダ3が回し操作されると、イグニッションスイッチ4がキーシリンダ3の回転位置に応じたスイッチ状態に切り換わる。そして、5本の配線7〜11のうち、イグニッションスイッチ4のスイッチ状態に応じた配線からオン信号が出力され、このオン信号に応じた電装品が通電される。
【0022】
車両1には、リモートキー12による無線の遠隔操作にて車両1のエンジンの始動/停止(車両1の電源状態)を切り換えるリモートエンジンスタータ装置13が設けられている。リモートエンジンスタータ装置13は、後付け可能な用品である。リモートエンジンスタータ装置13には、リモートキー12との間で電波を送受信するアンテナユニット14と、リモートエンジンスタータ装置13の動作を統括制御するコントローラ15とが設けられている。コントローラ15は、電気配線を介してアンテナユニット14に接続されている。アンテナユニット14とコントローラ15は、それぞれ個別の電源入力を有している。なお、リモートキー12が通信端末に相当し、リモートエンジンスタータ装置13が車両遠隔操作装置に相当する。
【0023】
アンテナユニット14には、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を送受信するアンテナ16と、受信電波の増幅復調や送信電波の変調等を行う電波信号送受信回路17と、アンテナユニット14の通信動作を制御するマイクロコンピュータ18とが設けられている。マイクロコンピュータ18は、アンテナユニット14内のシリアル通信回路19を介してコントローラ15に接続されている。マイクロコンピュータ18は、アンテナ16で電波を受信したとき、シリアル通信にてコントローラ15と通信し、一方でコントローラ15からシリアル通信にて信号を取得すると、所定データをアンテナ16から送信する。
【0024】
コントローラ15には、コントローラ15の動作を統括制御するマイクロコンピュータ20が設けられている。マイクロコンピュータ20は、コントローラ15内のシリアル通信回路21と、アンテナユニット14内のシリアル通信回路19とを介して、アンテナユニット14のマイクロコンピュータ18に接続されている。マイクロコンピュータ20は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の複数の素子から構成されている。
【0025】
コントローラ15には、リモートエンジンスタータ装置13において車両1の電源状態を切り換える内部リレー回路22が設けられている。内部リレー回路22は、リモートエンジンスタータ装置13においてイグニッションスイッチ4と同等の働きをする回路であって、複数のリレーを備えている。内部リレー回路22は、イグニッションスイッチ4の入力及び出力の間に並列接続されている。なお、内部リレー回路22がリレー回路に相当する。
【0026】
内部リレー回路22は、ACC/IG/STのスイッチとして機能する主リレー群23に、マイクロコンピュータ20の異常動作対策として、電源リレー群24を接続することにより、二重構造(リレー二重構造)となっている。つまり、内部リレー回路22は、主リレー群23に電源リレー群24を追加することにより、リレー構造が二重化されている。
【0027】
主リレー群23は、ACCリレー25、第1IGリレー26、第2IGリレー27、第1STリレー28、第2STリレー29の5つのリレーを備えている。また、電源リレー群24は、第1電源リレー30及び第2電源リレー31の2つのリレーを備えている。これら7つのリレー25〜31は、スイッチと、スイッチのオン/オフを切り換えるコイルとを有し、コイルが通電されるとスイッチがオンし、コイルが非通電となるとスイッチがオフする。また、第1電源配線5のライン上には、電流逆流防止用のダイオード32が接続されている。
【0028】
第1電源リレー30は、スイッチ30aの入力が第1電源配線5に接続され、スイッチ30aの出力がACCリレー25、第1IGリレー26及び第1STリレー28の各スイッチ25a,26a,28aの入力に接続されている。また、第1電源リレー30は、コイル30bの一端が第1電源配線5に接続され、コイル30bの他端がリレードライバ33を介してマイクロコンピュータ20の第1電源出力ポート20aに接続されている。
【0029】
第2電源リレー31は、スイッチ31aの入力が第2電源配線6に接続され、スイッチ31aの出力が第2IGリレー27及び第2STリレー29の各スイッチ27a,29aの入力に接続されている。また、第2電源リレー31は、コイル31bの一端が第1電源配線5に接続され、コイル31bの他端がリレードライバ33を介してマイクロコンピュータ20の第2電源出力ポート20bに接続されている。
【0030】
ACCリレー25は、スイッチ25aの入力が第1電源リレー30のスイッチ30aの出力に接続され、スイッチ25aの出力がACC配線7に接続されている。また、ACCリレー25は、コイル25bの一端が第1電源配線5に接続されるとともに、コイル25bの他端がリレードライバ33を介してマイクロコンピュータ20のACC出力ポート20cに接続されている。
【0031】
第1IGリレー26は、スイッチ26aの入力がACCリレー25のスイッチ25aと第1電源リレー30のスイッチ30aとの間に接続され、スイッチ26aの出力が第1IG配線8に接続されている。また、第1IGリレー26は、コイル26bの一端が第1電源配線5に接続され、コイル26bの他端がリレードライバ33を介してマイクロコンピュータ20の第1IG出力ポート20dに接続されている。
【0032】
第2IGリレー27は、スイッチ27aの入力が第2電源リレー31のスイッチ31aの出力に接続され、スイッチ27aの出力が第2IG配線9に接続されている。また、第2IGリレー27は、コイル27bの一端が第1電源配線5に接続され、コイル27bの他端がリレードライバ33を介してマイクロコンピュータ20の第2IG出力ポート20eに接続されている。
【0033】
第1STリレー28は、スイッチ28aの入力がACCリレー25のスイッチ25aの入力と第1IGリレー26のスイッチ26aの入力との間に接続され、スイッチ28aの出力が第1ST配線10に接続されている。また、第1STリレー28は、コイル28bの一端が第1電源配線5に接続され、コイル28bの他端がリレードライバ33を介してマイクロコンピュータ20の第1ST出力ポート20fに接続されている。
【0034】
第2STリレー29は、スイッチ29aの入力が第2IGリレー27のスイッチ27aと第2電源リレー31のスイッチ31aとの間に接続され、スイッチ29aの出力が第2IG配線9に接続されている。第2STリレー29は、コイル29bの一端が第1電源配線5に接続され、コイル29bの他端がリレードライバ33を介してマイクロコンピュータ20の第2ST出力ポート20gに接続されている。
【0035】
本例のリモートエンジンスタータ装置13には、マイクロコンピュータ20が異常動作したときに、内部リレー回路22を駆動できなくすることにより、意図せぬ車両電源の通電を防止する通電強制遮断機構34が設けられている。本例の通電強制遮断機構34は、マイクロコンピュータ20の異常動作有無を監視し、異常動作を認識したとき、内部リレー回路22内のコイル電源を遮断することにより、ハード回路にて内部リレー回路22の通電を禁止するものである。
【0036】
この場合、マイクロコンピュータ20には、マイクロコンピュータ20の異常動作有無に応じた波形信号を出力する判定信号出力部35が設けられている。本例の判定信号出力部35は、マイクロコンピュータ20において異常動作が発生しているか否かを検出するためのものであって、出力ポート20a〜20gの少なくともいずれか1つの異常動作を監視する。判定信号出力部35は、異常動作の検出結果に応じた波形を有する判定信号Srを、コントローラ15内の信号出力回路36を介してアンテナユニット14に出力する。信号出力回路36は、判定信号Srを波形整形したり増幅したりする回路である。なお、判定信号出力部35及び信号出力回路36が検出手段を構成する。
【0037】
図2(a),(b)に、判定信号Srの信号波形の例を示す。判定信号出力部35は、マイクロコンピュータ20が正常動作をとるとき、予め決められた信号フォーマットのパルス波形を有する図2(a)の正常信号Sr1を出力する。一方、判定信号出力部35は、マイクロコンピュータ20が異常動作をとるとき、正常信号Sr1とは異なる波形を有する図2(b)の異常信号Sr2を出力する。異常信号Sr2は、例えば電圧がHやLの一方に貼り付いた信号や、或いは正常フォーマットとは異なるパルス幅(パルス周期)を有する信号である。なお、判定信号Sr、正常信号Sr1及び異常信号Sr2が検出信号を構成する。
【0038】
図1に示すように、コントローラ15には、内部リレー回路22の通電オン/オフを切り換え可能なリレー電源スイッチング回路37が設けられている。リレー電源スイッチング回路37は、例えばFET(Field Effect Transistor)が用いられるとともに、エミッタ端子がダイオードに接続され、コレクタ端子が各リレー25〜31のコイル25b〜31bに接続され、ベース端子がアンテナユニット14に接続されている。本例の場合、リレー電源スイッチング回路37がオンすると、内部リレー回路22が有効となり、リレー電源スイッチング回路37がオフすると、内部リレー回路22が無効となる。なお、リレー電源スイッチング回路37がスイッチング手段に相当する。
【0039】
アンテナユニット14には、判定信号出力部35から出力される判定信号Srを基に、内部リレー回路22の電源オン/オフを切り換える監視回路38が設けられている。監視回路38は、判定信号出力部35から入力した判定信号Srが、正常信号Sr1に準ずるパルス波形をとっていれば、マイクロコンピュータ20が正常動作していると認識する。このとき、監視回路38は、リレー電源スイッチング回路37にオン信号を出力してスイッチオンし、内部リレー回路22を通電する。
【0040】
一方、監視回路38は、判定信号出力部35から入力した判定信号Srが、正常信号Sr1に準ずるパルス波形をとっていない場合、つまり異常信号Sr2の波形をとる場合、マイクロコンピュータ20が異常動作していると認識する。このとき、監視回路38は、リレー電源スイッチング回路37にオフ信号を出力してスイッチオフし、内部リレー回路22の通電を遮断、つまり内部リレー回路22を無効化する。なお、監視回路38が電源遮断手段に相当する。
【0041】
次に、本例のリモートエンジンスタータ装置13の動作を、図3及び図4を用いて説明する。
まず、マイクロコンピュータ20が正常動作しているときの状態を図3に示す。同図に示すように、マイクロコンピュータ20が正常動作している場合、監視回路38は、判定信号出力部35から正常信号Sr1を入力する。よって、監視回路38は、リレー電源スイッチング回路37をオンとし、内部リレー回路22を有効とする。つまり、マイクロコンピュータ20が正常動作中の場合、各リレー25〜31のコイル25b〜31bが通電され、内部リレー回路22が駆動可能となっている。
【0042】
このとき、リモートキー12でエンジン始動の遠隔操作が実行されると、リモートキー12からエンジン始動要求信号SaがUHF電波により送信される。エンジン始動要求信号Saには、リモートキー12のIDコードと、エンジン始動を要求する機能コードとが含まれている。
【0043】
アンテナユニット14は、リモートキー12から送信されたエンジン始動要求信号Saを受信すると、マイクロコンピュータ18は、このエンジン始動要求信号Sa内に含まれるIDコードにて認証(正当性の判定)を実行する。そして、マイクロコンピュータ18は、認証成立を確認すると、その旨をコントローラ15に通知する認証成立通知を、シリアル通信回路19,21を介してマイクロコンピュータ20に出力する。マイクロコンピュータ20は、アンテナユニット14から認証成立通知を入力すると、全てのポート20a〜20gからオン信号を出力して、各リレー25〜31をオンする。これにより、車両電源がオンし、エンジンが始動する。
【0044】
マイクロコンピュータ20は、エンジンが始動したことを確認すると、その旨をアンテナユニット14に通知するエンジン始動完了通知を、シリアル通信回路19,21を介してマイクロコンピュータ18に出力する。マイクロコンピュータ18は、コントローラ15からエンジン始動完了通知を入力すると、これをエンジン始動完了通知信号SbとしてUHF電波によりリモートキー12に送信する。リモートキー12は、エンジン始動完了通知信号Sbを受信すると、エンジン始動完了をモニタ等に表示する。
【0045】
続いて、マイクロコンピュータ20が異常動作しているときの状態を図4に示す。マイクロコンピュータ20が異常動作すると、出力ポート20a〜20gの少なくともいずれか1つから、意図せずオン信号が出力されてしまうことが想定される。このとき、仮に内部リレー回路22が駆動可能な状態となっていれば、マイクロコンピュータ20の異常動作で出力されたオン信号にて内部リレー回路22がオンしてしまい、誤ってエンジンが始動してしまう。
【0046】
しかし、本例の場合、マイクロコンピュータ20が異常動作をとると、判定信号出力部35はこの異常動作により異常信号Sr2をアンテナユニット14の監視回路38に出力する動きをとる。異常信号Sr2は、マイクロコンピュータ20が異常動作をとる間、監視回路38に常時出力される。監視回路38は、コントローラ15から異常信号Sr2を入力すると、リレー電源スイッチング回路37をオフに切り換える。
【0047】
このため、マイクロコンピュータ20が異常動作によって各ポート20a〜20gの少なくともいずれか1つからオン信号を出力してしまう状況となっても、内部リレー回路22は駆動できない状態となっているので、内部リレー回路22がオンする動きをとらない。つまり、第1電源出力ポート20aや第2電源出力ポート20bが異常動作によってオン信号を出力する状況となっても、内部リレー回路22をオフのままで維持することが可能となる。よって、マイクロコンピュータ20が異常動作しても、誤って車両電源が通電されてしまう状況を生じ難くすることが可能となる。
【0048】
また、マイクロコンピュータ20の異常動作有無を判定する監視回路38を、コントローラ15とは別ユニットのアンテナユニット14に設けている。つまり、監視回路38をコントローラ15内ではなくコントローラ15の外部に配置し、コントローラ15の外部からマイクロコンピュータ20の異常動作有無を監視する。よって、仮にコントローラ15が異常動作をとったとしても、この異常動作に影響を受けないアンテナユニット14側で異常有無を監視するので、異常動作監視の正常動作が確保される。このため、監視回路38による異常動作判定の精度が確保されるので、車両電源の誤通電防止に効果が高くなる。
【0049】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)コントローラ15のマイクロコンピュータ20に、マイクロコンピュータ20の動作状態(正常動作/異常動作)に応じたパルス波形を有する判定信号Srを出力可能な判定信号出力部35を設ける。また、コントローラ15の内部リレー回路22の最上流にリレー電源スイッチング回路37を接続する。そして、アンテナユニット14に、判定信号Srを監視する監視回路38を設け、監視回路38がマイクロコンピュータ20の異常動作を確認したとき、リレー電源スイッチング回路37をオフして、内部リレー回路22を強制的にオフする。従って、仮にマイクロコンピュータ20が異常動作をとっても、誤って車両電源がオンされてしまう状況を生じ難くすることができる。
【0050】
(2)監視回路38をアンテナユニット14に設けたので、仮にマイクロコンピュータ20のコントローラ15が異常動作をとってしまっても、監視回路38はマイクロコンピュータ20の異常動作に影響を受けない。このため、コントローラ15が異常動作をとっても、監視回路38の正常動作が確保されるので、車両電源の誤通電防止に効果が高くなる。
【0051】
(3)リモートエンジンスタータ装置13の一構成要素であるアンテナユニット14に監視回路38を設けたので、元々のリモートエンジンスタータ装置13のシステム内に本例の通電強制遮断機構34を全て組み込むことができる。よって、本例のリモートエンジンスタータ装置13を1システム化することができる。
【0052】
(4)判定信号Srとしてパルス信号を出力するようにし、このパルス信号の波形によりマイクロコンピュータ20の正常動作/異常動作を判定する。このため、単にパルスの波形を確認するという簡素な方式で、マイクロコンピュータ20の異常動作有無を判定することができる。また、マイクロコンピュータ20が異常動作したとき、パルス信号は異常動作の種類に応じて様々な波形に変化すると想定される。よって、パルス信号が正常波形をとっているか否かを確認することで異常判定を行うようにすれば、パルス信号が正常波形をとっていない場合、これらを全て異常動作として判定することが可能となるので、異常動作を漏れなく検出することができる。
【0053】
(5)内部リレー回路22の最上流(電源側)にリレー電源スイッチング回路37を配置したので、リレー電源スイッチング回路37をオフすれば、内部リレー回路22内の全リレーをオフすることができる。よって、内部リレー回路22の誤通電防止に効果が高くなる。
【0054】
(6)内部リレー回路22に電源リレー30,31を設けることにより、内部リレー回路22を二重構造とした。このため、図5に示すように、出力ポート20c〜20gが異常動作してオン信号を出力してしまったとき、電源出力ポート20a,20bが正常動作していれば、電源リレー30,31がオフに維持される。よって、リレー二重構造によっても車両電源の誤通電が防止されるので、車両電源の誤通電を一層生じ難くすることができる。
【0055】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・リモートキー12は、双方向通信に限定されず、電波送信のみ可能な単方向通信としてもよい。
【0056】
・リモートエンジンスタータ装置13の無線の周波数は、UHFに限らず、他の周波数を使用可能である。
・リモートキー12の認証(IDの正当性判定)は、アンテナユニット14のマイクロコンピュータ18で行うことに限らず、コントローラ15のマイクロコンピュータ20にて行ってもよい。
【0057】
・各リレー25〜31は、コイル通電でスイッチオンオフが切り換わる種類に限定されず、例えばトランジスタ等のスイッチング素子を使用してもよい。
・車両電源の配線の本数は、5〜11の7本に限定されず、電源の種類に応じて適宜変更可能である。
【0058】
・内部リレー回路22は、リレー二重構造をとる必要はなく、電源リレー30,31を省略することにより、単なる一重としてもよい。
・IGリレー26,27は、並列接続されることに限らず、直列接続としてもよい。また、これはSTリレー28,29も同様である。
【0059】
・IGリレー26,27は、2つ設けられることに限らず、1つとしてもよい。これは、電源リレー30,31やSTリレー28,29でも同様に言える。
・車両電源は、電源オフ、ACCオン、IGオン、STオンの4位置をとることに限定されず、例えば電源オフ、IGオン、STオンの3位置をとるものでもよい。
【0060】
・検出手段は、マイクロコンピュータ20の異常動作に応じたパルス信号を出力する判定信号出力部35に限定されない。要は、マイクロコンピュータ20の異常有無を判定できる信号を出力できるものであればよい。
【0061】
・リレー電源スイッチング回路37の接続位置は、内部リレー回路22の最上流に限定されない。例えば、IGリレー26,27とSTリレー28,29との間など、他の位置に適宜変更可能である。
【0062】
・スイッチング手段は、FETからなるリレー電源スイッチング回路37に限定されず、他のスイッチング素子やスイッチに変更してもよい。
・監視回路38は、アンテナユニット14に設けられることに限定されず、コントローラ15とは別のユニットや装置に設けられていればよい。
【0063】
・通信端末は、リモートキー12に限定されず、他の端末が適宜使用可能である。
・車両遠隔操作装置は、リモートエンジンスタータ装置13に限定されず、車両電源のオン/オフを遠隔操作できるものであればよい。
【0064】
・車両電源をオンするとは、車両のACC、IG、STの各電源のいずれか1つをオンに切り換えることを言う。
・異常動作とは、出力ポート20a〜20gから誤ってオン信号が出力されてしまう動作に限定されず、マイクロコンピュータ20が正常に動作していない状況を言う。
【0065】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記車両には、メカニカルキーを用いてキー照合を行うメカニカルキーシステムが設けられ、前記通信端末を用いた遠隔操作によって、前記メカニカルキーを使用することなく前記車両電源をオン可能である。この構成によれば、わざわざメカニカルキーでキー操作を行わなくとも、通信端末による遠隔操作にて例えばエンジンを始動させることが可能となる。
【0066】
(ロ)請求項1〜4、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記リレー回路は、前記車両電源をオンオフ可能な主リレー群と、当該主リレー群の通電をオンオフする保護リレー群との二重構造をとり、前記マイクロコンピュータにおいて主リレー群用ポートが異常動作しても、前記マイクロコンピュータの保護リレー群用ポートで前記保護リレー群をオフに維持することにより、前記車両電源の誤通電を防止する。この構成によれば、車両電源の誤通電の防止に一層効果が高くなる。
【符号の説明】
【0067】
1…車両、12…通信端末としてのリモートキー、13…車両遠隔操作装置としてのリモートエンジンスタータ装置、14…アンテナユニット、15…コントローラ、20…マイクロコンピュータ、22…リレー回路としての内部リレー回路、35…検出手段を構成する判定信号出力部、36…検出手段を構成する信号出力回路、37…スイッチング手段としてのリレー電源スイッチング回路、38…電源遮断手段としての監視回路、Sr…検出信号を構成する判定信号、Sr1…検出信号を構成する正常信号、Sr2…検出信号を構成する異常信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電源状態を遠隔操作可能な通信端末から送信された電波を受信可能なアンテナユニットと、車両電源の通電オンオフを切り換え可能なリレー回路を持つコントローラとを備え、前記通信端末からの電波を前記アンテナユニットで受信したとき、当該電波の正当性が確認されれば、前記コントローラ内のマイクロコンピュータが前記リレー回路を通電することにより、前記車両電源をオンする車両遠隔操作装置において、
前記マイクロコンピュータの異常動作を検出する検出手段と、
前記リレー回路の通電をオンオフ可能なスイッチング手段と、
前記コントローラの外部に設けられ、前記検出手段の検出結果を基に前記マイクロコンピュータが異常動作していると判定したとき、前記スイッチング手段をオフして、前記リレー回路の通電を強制的に遮断する電源遮断手段と
を備えたことを特徴とする車両遠隔操作装置。
【請求項2】
前記電源遮断手段は、前記コントローラとは別ユニットである前記アンテナユニットに設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両遠隔操作装置。
【請求項3】
前記検出手段は、パルス状の検出信号を出力し、前記電源遮断手段は、前記検出信号のパルス波形が正常波形をとるか否かを確認することにより、前記マイクロコンピュータが異常動作しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両遠隔操作装置。
【請求項4】
前記スイッチング手段は、前記リレー回路の最上流に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の車両遠隔操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245821(P2012−245821A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116940(P2011−116940)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)