説明

車両電池充電システム

【課題】一般車両、ハイブリッド車両のオルタネータを省略できエンジンにかかる負担を小さくして、燃費の向上が図れる車両電池充電システムを提供する。
【解決手段】車両電池充電システムは、複数の半導体熱電変換素子のモジュールを並列及び直列に接続している熱電変換素子ユニットに固定したヒートシンクに、強制的に冷却水(不凍液)をエンジン1で駆動されるポンプで循環させる冷却パイプを固定した熱電変換器2と、熱電変換素子ユニットと充電制御器4を電気的に切り離すスイッチ機構とチョッパーで構成される回転子を内蔵して、絶縁材のケースの外側に冷却ファンとエンジンの回転を伝えるプーリを有する機械式チョッパー3と、電圧の昇圧と充電する電圧及び電流を制御する充電制御器4と、車両に付属する電池5とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両で化石燃料を使用するエンジンの廃熱を利用した半導体熱電変換素子による車両電池充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を使用するエンジンの廃熱を回収する手段として、半導体熱電変換素子で電力を得る方法(例えば特許文献1、特許文献4、特許文献6参照)はこれまでも提案されている。また車体の振動を利用して圧電素子に電気を発生させ、電池に充電する方法(例えば特許文献2参照)や走行時の流動空気でファンを回転させて発電機を回して電力を得る方法(例えば特許文献3参照)も提案されている。さらに太陽光発電で発電した電力を電池に充電する方法(例えば特許文献5参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開公 平10−309088
【特許文献2】特開公2011−093505
【特許文献3】特開公2010−112367
【特許文献4】特開公2009−133210
【特許文献5】特開公2006−340544
【特許文献6】特開公2001−023666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記で提案されている化石燃料を使用するエンジンの廃熱を利用した半導体熱電変換素子で電力を得る方法では、熱電変換素子の保護や出力電力変動を抑える為に熱源と熱電変換素子の間に空間を作り、熱媒体を流してその流量を調節する(特許文献1)、または熱源の温度を制御(特許文献6)してエンジン冷却と熱電変換素子の発電を最適(特許文献4)にするとされている。また温度によって熱電変換素子と電池の接続を制御する(特許文献4)とされているがいずれの方法も制御手段が高コストになる恐れがあり、また圧電素子を利用する方法(特許文献2)やファンを利用した方法(特許文献3)では車が停止した時は発電できず発電容量が小さくて充電は難しい。太陽光発電(特許文献5)では雨天の日や夜間は発電できないので効率が悪いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係わる車両電池充電システムは、複数の半導体熱電変換素子のモジュールを並列及び直列に接続している一個の熱電変換素子ユニットに固定した一個のヒートシンクに、強制的に冷却水(不凍液)をエンジンで駆動されるポンプで循環させる冷却パイプを固定した一個の熱電変換器と、熱電変換素子ユニットと充電制御器を電気的に切り離すスイッチ機構とチョッパーで構成される回転子を内蔵して、ケースの外側に冷却ファンとエンジン回転を伝えるプーリを有する一個の機械式チョッパーと、電圧の昇圧と充電する電圧及び電流を制御する一個の充電制御器と、車両に付属する電池とで構成されている。
【0006】
前記半導体熱電変換素子のモジュールは、P型半導体とN型半導体のチップを複数個組み合わせたゼーベック効果による熱発電モジュールで、該熱発電モジュールを複数個組み合わせた一個の熱電変換素子ユニットがエンジンの周りに配設されている。ゼーベック効果は温度差が大きいほど効率が高くなるので、冷却の為のヒートシンクと該ヒートシンクに固定する冷却パイプに冷却水(不凍液)を強制循環させ、該冷却パイプの一部に冷却ファンで空気を吹き付けて冷却し熱源側(エンジン)との温度差を生じさせている。前記冷却水はエンジンに使用する不凍液と同等のものであり冷却水を循環させるポンプとファンはベルトを介してエンジンで回転される。
【0007】
前記機械式チョッパーはスイッチング電源のチョッパーの働きを機械式に行うもので、車両の始動時にエンジンの温度が低く熱電変換素子ユニットの出力電圧が低い時に昇圧して充電制御器の動作範囲を広める為に作用させている。熱電変換素子ユニットが短絡による損傷を防ぐ為に電源スイッチの働きをする複数個の摺動子が組み込まれていて、エンジン停止時には熱電変換素子ユニットの出力が開放される。内蔵されている回転子はケース外部に取り付けられたプーリにベルトを介してエンジンで回転される。
【0008】
前記充電制御器は熱電変換素子ユニットの出力電圧を一旦昇圧して平滑した後、DC−DCコンバータで再び電圧の昇圧と、電圧及び電流が制御されて電池に充電電力を供給する。車両が停止している間もエンジンが回転し尚且つ温度が高い時は充電が継続され、エンジンが停止すると熱電変換素子ユニットから電気的に切り離されて充電が停止する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば一般車両、ハイブリッド車両のオルタネータを省略できエンジンにかかる負担を小さくして、燃費の向上が図れる車両電池充電システムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態の車両電池充電システムの外観図である。
【図2】同機械式チョッパーの拡大外観図である。
【図3】同機械式チョッパーの回転停止時の拡大断面図である。
【図4】同機械式チョッパーの回転時の拡大断面図である。
【図5】同熱電変換器の拡大外観図である。
【図6】同機械式チョッパー回転子の拡大外観図である。
【図7】同電気回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
エンジン1のエンジン廃熱が伝わる外周の位置に熱電変換器2を直接または取り付け金具(図示せず)で固定する。固定位置はプーリB73がエンジン1の外側にはみ出す位置でエンジン1からベルト(図示せず)を介して回転を伝えられる位置になっている。またエンジン1の振動を避ける為にポンプ72を車体に取り付ける場合は、ポンプ72と冷却パイプ74の間をゴム管(図示せず)で繋ぐ。
【0012】
機械式チョッパー3は回転子(図6)を内蔵し絶縁材のケースA11とケースB12で覆われて両ケースは密着固定される。前記両ケースはプーリA10がエンジン1の外側にはみ出す位置で車体またはエンジン1に固定されて、エンジン1からベルト(図示せず)を介して回転が伝えられる。ケースA11には端子14a、b、cが一体成型されていて、内部には上下に自由に動けるようにカーボンブラシ30a、b、cがスプリング50a、b、cで常時摺動子A53(30c)と摺動子B54(30a、b)に圧して接触している。カーボンブラシ30a、b、cからは配線する電線(図示せず)が引き出されている。同じようにケースB12には端子14dが一体成型されていて、内部には上下に自由に動けるようにカーボンブラシ30dがスプリング50dで常時摺動子C55に圧して接触している。カーボンブラシ30dからは配線する電線(図示せず)が引き出されている。
【0013】
前記回転子(図6)のシャフト34には絶縁材のチョッパードラム31と錘固定具33と、ケースA11の外側にプーリA10と、ケースB12の外側に冷却ファン13が固定されている。絶縁材のスイッチドラム32はシャフト34を摺動自在に嵌め込まれている。二個の錘51a、bがそれぞれの板バネ52a、bに固定されていて、該板バネ52a、bの一端は錘固定具33に固定され、他端はスイッチドラム32に固定されている。シャフト34はケースA11とケースB12を回転自在に貫通している。
【0014】
絶縁材のチョッパードラム31の外周にはリング状に摺動子A53(銅薄板)と、一部を櫛型に等間隔で切り抜いた摺動子B54(銅薄板)を巻いて固定し、絶縁材のスイッチドラム32の外周にも同じく複数個所を残して切り抜いた摺動子C55(銅薄板)を巻いて固定し、前記残された部分の先端はチョッパードラム31に突き当たらないように曲げ加工されて、移動した時に該チョッパードラム31に接触し乍らせり上がる構造になっている。
【0015】
次に作用について説明する。
エンジン1が停止時は機械式チョッパー3に内蔵する回転子の電源スイッチの働きをするチョッパードラム31の摺動子A53と、スイッチドラム32の摺動子C55は接触せず熱電変換素子ユニット70の出力は開放されている。エンジン1が回転し始めるとチョッパードラム31とスイッチドラム32と錘固定具33は同時に回転を始め、板バネ52a、bに固定された錘51a、bが遠心力で外側に押しやられてスイッチドラム32をシャフト34に沿って引き寄せる。この時スイッチドラム32の摺動子C55の複数個所の一部がチョッパードラム31の摺動子A53にせり上がって接触し電気的に導通する。
【0016】
チョッパードラム31が回転して摺動子B54の櫛型にカットされた部分に接触するカーボンブラシ30aは、等間隔で導通と否導通を繰り返して充電制御器4の内部に配設した一次側コイル(T)に電流を流して二次側コイル(T)の出力電圧を昇圧する。昇圧された電圧は平滑されて前記充電制御器4に内蔵されたDC−DCコンバータに供給されて電池5の充電に適した電圧及び電流に制御される。
【0017】
熱電変換素子ユニット70の出力電圧を昇圧することで半導体熱電変換素子のモジュールの数量を減して該熱電変換器2を小型にすると同時にコストを下げる効果が期待できる。既存の車両でもオルタネータの代替として利用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 エンジン 33 錘固定具
2 熱電変換器 34 シャフト
3 機械式チョッパー 50 スプリング
4 充電制御器 51 錘
5 電池 52 板バネ
10 プーリA 53 摺動子A
11 ケースA 54 摺動子B
12 ケースB 55 摺動子C
13 冷却ファン 70 熱電変換素子ユニット
14 端子 71 ヒートシンク
30 カーボンブラシ 72 ポンプ
31 チョッパードラム 73 プーリB
32 スイッチドラム 74 冷却パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体熱電変換素子のモジュールを並列及び直列に接続している一個の熱電変換素子ユニットに固定した一個のヒートシンクに、強制的に冷却水(不凍液)をエンジンで駆動されるポンプで循環させる冷却パイプを固定した一個の熱電変換器と、熱電変換素子ユニットと充電制御器を電気的に切り離すスイッチ機構とチョッパーで構成される回転子を内蔵して、ケースの外側に冷却ファンとエンジン回転を伝えるプーリを有する一個の機械式チョッパーと、電圧の昇圧と充電する電圧及び電流を制御する一個の充電制御器と、車両に付属する電池とで構成されていることを特徴とする車両電池充電システム。
【請求項2】
前記冷却パイプの一部に冷却ファンで空気を吹き付けて冷却し熱源側(エンジン)との温度差を生じさせて、冷却水はエンジンに使用する不凍液と同等であって冷却ファンはベルトを介してエンジンで回転されることを特徴とする請求項1に記載の車両電池充電システム。
【請求項3】
前記機械式チョッパーに内蔵される回転子のチョッパーの働きで熱電変換素子ユニットの出力電圧を昇圧して前記充電制御器の動作範囲を広くするとともに、熱電変換素子ユニットが短絡による損傷を防ぐ為に電源スイッチの働きをする複数個の摺動子が組み込まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両電池充電システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−99239(P2013−99239A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254379(P2011−254379)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【特許番号】特許第4933681号(P4933681)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(509098663)
【Fターム(参考)】