説明

車両駆動制御装置

【課題】目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図る。
【解決手段】制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を区間毎に収集して耐久記憶媒体23に蓄積記憶させる。バッテリ残量が下限規格値または上限規格値となった場合、このバッテリ残量が下限規格値または上限規格値となった地点を含む前後の一定区間を計画制御対象候補区間とし、この区間について耐久記憶媒体23に蓄積記憶された走行条件を用いてバッテリ残量が規格範囲内となるように制御指標のスケジュールを計画する。車両が計画制御対象候補区間に進入した場合、この区間の制御指標のスケジュールに従って動力源の駆動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の動力源として内燃機関と電動機を使用する車両に搭載され、走行用の動力源の駆動制御を行う車両駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、出発地から目的地に至る経路について、渋滞区間のようなエンジンの運転効率の低い区間をモータにより走行し、この区間でモータにより消費される電力量を、エンジンよる走行区間で予め発電してバッテリに蓄積する、という充放電スケジュールを立て、この充放電スケジュールに従ってエンジンとモータの駆動制御を行うようにしたハイブリッド車両の駆動制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−333305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された装置は、目的地の設定や経路探索の実行指示など、目的地に至る経路を特定するための操作が必要であり、ユーザに煩わしさを感じさせてしまう。
【0005】
また、上記特許文献1に記載された装置では、出発地から目的地に至る経路の全区間に対して充放電スケジュールを立てるような構成となっているが、実際の走行では、運転者の運転特性や周辺の交通流の影響等により、充放電スケジュールどおりの駆動制御を実施できなくなってしまう場合も多い。このように、充放電スケジュールどおりの駆動制御を実施できない状況が多くなると、かえってエネルギー消費量が増加してしまうといった状況が発生してしまう。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みたもので、目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、走行用の動力源として内燃機関と電動機を使用する車両に搭載され、規定された制御指標のスケジュールに従って動力源の駆動制御を行うことが可能な車両駆動制御装置であって、車両の走行に伴って、制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を予め定められた区間毎に収集し、当該収集した走行条件を記憶手段に蓄積記憶させる処理を実施する走行条件蓄積記憶処理手段と、車両の走行に伴って、車両の電動機に電力を供給するバッテリの残量を表すバッテリ残量が予め定められた上限規格値または下限規格値となったことを判定した場合、バッテリ残量が上限規格値または下限規格値となった地点を基準地点として、当該基準地点を含む手前の一定区間と、基準地点を含む先方の一定区間とを連結した区間を計画制御対象候補区間として特定する計画制御対象候補区間特定処理と、計画制御対象候補区間について、記憶手段に記憶された走行条件を用いてバッテリ残量が規格範囲内に収まるように制御指標のスケジュールを計画するスケジュール計画手段と、を備え、車両が計画制御対象候補区間に進入したことを判定した場合、当該車両が進入した計画制御対象候補区間に対して規定された制御指標のスケジュールに従って動力源の駆動制御を行うことを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、バッテリ残量が予め定められた上限規格値または下限規格値となったことを判定した場合、バッテリ残量が上限規格値または下限規格値となった地点を基準地点として、当該基準地点を含む手前の一定区間と、基準地点を含む先方の一定区間とを連結した区間を計画制御対象候補区間として特定し、この計画制御対象候補区間について、記憶手段に記憶された走行条件を用いてバッテリ残量が規格範囲内に収まるように制御指標のスケジュールを計画し、車両が計画制御対象候補区間に進入したことを判定した場合、当該車両が進入した計画制御対象候補区間に対して規定された制御指標のスケジュールに従って動力源の駆動制御が行われる。すなわち、目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、スケジュール計画手段は、計画制御対象候補区間として予め定められた基準回数以上、記憶手段に記憶された区間について、制御指標のスケジュールを計画することを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、計画制御対象候補区間として予め定められた基準回数以上、記憶手段に記憶された区間について、制御指標のスケジュールが計画されるので、過去に1回だけバッテリ残量が規格範囲外となった地点を含むような計画制御対象候補区間に対しては計画制御を実施せず、計画制御対象候補区間として予め定められた基準回数以上、耐久記憶媒体23に記憶された区間に対して計画制御を実施するといったことが可能である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明では、走行条件蓄積記憶処理手段は、車両の走行に伴って収集した直近の一定距離分の走行条件を予め定められた区間毎に収集し、当該収集した走行条件を記憶手段に蓄積記憶させるとともに、バッテリ残量が上限規格値または下限規格値となったことを判定した場合、車両の走行に伴ってバッテリ残量が上限規格値または下限規格値となった基準地点を含む先方の走行条件を予め定められた区間毎に収集し、当該収集した走行条件を記憶手段に蓄積記憶させることを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、車両の走行に伴って収集した全ての走行条件を記憶手段に蓄積記憶させる必要がなく、走行条件を記憶させるための記憶手段の記憶領域を少なくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置に構成を示す図である。
【図2】ナビゲーションECUの構成を示す図である。
【図3】走行条件記憶処理のフローチャートである。
【図4】耐久記憶媒体に記憶された走行条件の一例を示す図である。
【図5】御目標値記憶処理のフローチャートである。
【図6】計画制御対象候補区間について説明するための図である。
【図7】計画立案処理のフローチャートである。
【図8】目標SOCの推移の予想の一例を示す図である。
【図9】走行時処理のフローチャートである。
【図10】走行時処理について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る車両駆動制御装置を搭載した車両の概略構成を図1に概略的に示す。本実施形態における車両駆動制御装置は、走行用の動力源として内燃機関としてのエンジンおよび電動機としてのモータを用いるハイブリッド車両に搭載され、エンジンおよびモータの駆動制御を行う。ハイブリッド車両には、内燃機関としてのエンジン1、発電機2、モータ3、差動装置4、タイヤ5a、5b、インバータ6、DCリンク7、インバータ8、バッテリ9、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15、表示部17およびナビゲーションECU20が搭載されている。
【0015】
このハイブリッド車両は、エンジン1およびモータ3を走行用の動力源とし、アクセル操作に応じて複数の走行モードを切り替えて走行する。エンジン1を動力源とする場合は、エンジン1の回転力が、図示しないクラッチ機構および差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。また、モータ3を動力源とする場合は、バッテリ9の直流電力がDCリンク7およびインバータ8を介して交流電力に変換され、その交流電力によってモータ3が作動し、このモータ3の回転力が、差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。以下、エンジン1のみを動力源とする走行のモードをエンジン走行モード、モータ3のみを動力源とする走行のモードをモータ走行モード、エンジン1とモータ3を動力源とする走行のモードをハイブリッド走行モードという。ただし、以下、ハイブリッド走行モードとエンジン走行モードを含めてハイブリッド走行モードという。
【0016】
また、エンジン1の回転力は発電機2にも伝えられ、その回転力によって発電機2が交流電力を生成し、生成された交流電力はインバータ6、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。このようなバッテリ9への充電は、燃料を使用したエンジン1の作動による充電である。以下、この種の充電を、内燃充電という。
【0017】
また、図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ3に回転力として加わり、この回転力によってモータ3が交流電力を生成し、生成された交流電力がインバータ8、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。以下、この種の充電を、回生充電という。
【0018】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20からの指令等に応じて、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8、バッテリ9の上述のような作動の実行・非実行等を制御する。HV制御部10は、例えばマイクロコンピュータを用いて実現してもよいし、下記のような機能を実現するための専用の回路構成を有するハードウェアであってもよい。
【0019】
より具体的には、HV制御部10は、現在SOC、基準SOCという2つの値を記憶しており、また、以下の(A)、(B)の処理を行う。
(A)アクセル開度、バッテリ9のバッテリ充電量、バッテリ9の温度等に基づいて、動力源の異なる複数の走行モード(モータ走行モード、ハイブリッド走行モード)の切り替えを繰り返し行うとともに、ナビゲーションECU20から入力される制御目標値(目標SOC)に基づいて、基準SOCの値を変化させ、ハイブリッド車両のバッテリ9の充電量を目標SOCに近づけるように、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8等を制御する。また、内燃充電の実行・非実行、回生充電の実行・非実行の切り替えも繰り返し行う。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。
(B)定期的に現在SOCをナビゲーションECU20に通知する。
【0020】
SOC(State of Charge)とは、バッテリの残量を表す指標であり、その値が高いほど残量が多い。現在SOCは、現在のバッテリ9のSOCを示す。HV制御部10は、この現在SOCの値を、逐次バッテリ9の状態を検出することで、繰り返し更新する。基準SOCは、HV制御部10にて発電/アシストを判断する制御目標値(例えば60パーセント)である。この値はナビゲーションECU20からの制御によって変更可能となっている。
【0021】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20から入力される制御目標値に基づいて、ハイブリッド車両の走行モードの切り替え、また、内燃充電の実行・非実行、回生充電の実行・非実行を切り替える制御を行う。本実施形態における制御目標値は目標SOCである。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。
【0022】
また、ナビゲーションECU20から制御目標値が入力されない場合、HV制御部10は、車速、アクセル開度等に応じた駆動制御を自律的に行う。
【0023】
GPS受信機11、方位センサ12、および車速センサ13は、それぞれハイブリッド車両の位置、進行方向、走行速度を特定する周知のセンサである。
【0024】
地図DB記憶部14は、地図データを記憶する記憶媒体である。地図データは、複数の交差点のそれぞれに対応するノードデータ、および、交差点と交差点を結ぶ道路区間すなわちリンクのそれぞれに対応するリンクデータを有している。1つのノードデータは、当該ノードの識別番号、所在位置情報、種別情報を含む。また、1つのリンクデータは、当該リンクの識別番号(以下、リンクIDという)、位置情報、種別情報等を含んでいる。
【0025】
ここで、リンクの位置情報には、当該リンクが含む形状補完点の所在位置データ、および、当該リンクの両端のノードおよび形状補完点のうち隣り合う2つを繋ぐセグメントのデータを含んでいる。各セグメントのデータは、当該セグメントのセグメントID、当該セグメントの勾配、向き、長さ等の情報を有している。
【0026】
勾配センサ15は、車両のピッチ方向、ヨー方向、ロール方向の方位変化量を検出するジャイロセンサによって構成されている。このジャイロセンサによって検出されるピッチ方向の方位変化量から道路の勾配を算出することが可能となっている。
【0027】
表示部17は、液晶等のディスプレイを有し、このディスプレイにナビゲーションECU20より入力される映像信号に応じた映像を表示させる。
【0028】
図2に示す様に、ナビゲーションECU20は、RAM21、ROM22、データ書き込み可能な耐久記憶媒体23、および制御部24を有している。耐久記憶媒体とは、ナビゲーションECU20の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体をいう。耐久記憶媒体23としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM等の不揮発性記憶媒体、および、バックアップRAMがある。
【0029】
制御部24は、ROM22または耐久記憶媒体23から読み出したプログラムを実行し、その実行の際にはRAM21、ROM22、および耐久記憶媒体23から情報を読み出し、RAM21および耐久記憶媒体23に対して情報の書き込みを行い、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15等と信号の授受を行う。なお、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置を特定する現在位置特定処理等を実施する。
【0030】
また、図2に示すように、制御部24は、マップマッチング処理25、経路算出処理26、ナビゲーション処理27、御目標値記憶処理28、走行時処理29等の処理を、所定のプログラムを実行することで実現する。
【0031】
マップマッチング処理25において、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置が地図DB記憶部14の地図中のどの道路上にいるかを判定する。
【0032】
経路算出処理26において、制御部24は、図示しない操作装置を用いたユーザによる目的地指定に基づいて、指定された目的地までの最適な経路を、地図データを用いて決定する。
【0033】
ナビゲーション処理27において、制御部24は、目的地点までの走行経路に沿ってハイブリッド車両を走行させるためのガイド表示を、表示部17、スピーカ(図示せず)等を用いて、ドライバに対して行う。
【0034】
制御目標値記憶処理28において、制御部24は、車両の走行に伴って制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を収集して耐久記憶媒体23に記憶させる。
【0035】
また、走行時処理29において、車両の現在位置における目標SOCのスケジュールが耐久記憶媒体23に記憶されていることを判定すると、この耐久記憶媒体23に記憶した目標SOCのスケジュールに従ってエンジンとモータの駆動制御を行うようになっている。
【0036】
ところで、車両が停車中にバッテリ残量が下限規格値になると、HV制御部10により非効率な強制充電が開始されたり、車両が回生充電が可能な区間を走行中にバッテリ残量が上限規格値になると、バッテリ保護のためにHV制御部10により回生充電が禁止され、回生電力の取りこぼしが発生するといった問題が生じる。
【0037】
本発明は、道路勾配等の地理的要因、日常的に発生する交通集中による渋滞等により、過去の走行時にバッテリ残量が規格範囲外となった地点の前後の区間では、今後の走行時においてもバッテリ残量が規格範囲外となる可能性が高くなるという点に着目してなされたもので、制御部24は、バッテリ残量が予め定められた規格範囲外となったことを判定した場合、バッテリ残量が規格範囲外となった地点を基準地点として、当該基準地点を含む計画制御対象候補区間を特定し、この計画制御対象候補区間について、記憶手段に記憶された走行条件を用いてバッテリ残量が規格範囲内に収まるように制御指標のスケジュールを計画する制御目標値制御処理を実施する。また、この制御目標値制御処理と並行して、車両が計画制御対象候補区間に進入したことを判定した場合、制御指標のスケジュールに従って動力源の駆動制御を行う走行時処理を実施する。
【0038】
制御部24は、まず、バッテリ残量が規格範囲外となった地点を基準地点とした場合に、この基準地点を含む手前の一定区間の走行条件を収集するため、以下に示す走行条件記憶処理を実施する。
【0039】
図3に、走行条件記憶処理のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、本駆動制御装置は動作状態となり、制御部24は、図に示す処理を周期的に実施する。
【0040】
まず、走行条件を収集する(S102)。本実施形態では、一定距離(例えば、5メートル)毎に、現在SOC、車速(km/h)、道路勾配(%)、モータ3の駆動電力(W)、モータ3による回生電力(W)、区間内の走行時間(秒)、エアコンやナビゲーション装置等の補機で消費される消費電力(W)を走行条件として収集する。
【0041】
次に、走行条件を保存する(S104)。具体的には、自車が位置する道路の道路識別子を特定し、この道路識別子と関連付けて、S102にて収集した走行条件を耐久記憶媒体23に記憶させる。本実施形態では、直近の2キロメートル(km)分の走行条件を記憶し、直近の2キロメートルよりも前の走行条件は自動的に消去されるようになっている。
【0042】
次に、車両のイグニッションスイッチがオフ状態になったか否かに基づいて走行を終了したか否かを判定する(S106)。
【0043】
ここで、車両のイグニッションスイッチのオン状態が継続している場合、S106の判定はYESとなり、S102へ戻る。したがって、直近の2キロメートル(km)分の走行距離分の走行条件を収集して耐久記憶媒体23に記憶させる処理が繰り返し実施される。また、車両のイグニッションスイッチがオフ状態になると、本処理を終了する。
【0044】
図4に、耐久記憶媒体23に記憶された走行条件の一例を示す。なお、この図には、車速およびSOCが示されている。このように、耐久記憶媒体23には、一定時間毎に収集された走行条件が道路識別子と関連付けて記憶される。なお、道路識別子は、道路区間を識別するためのリンクIDあるいはセグメントIDである。
【0045】
上記走行条件記憶処理により、例えば、高速道路の走行であれば、高速道路の走行に応じた走行条件が耐久記憶媒体23に記憶され、一般道路の走行であれば、一般道路の走行に応じた走行条件が耐久記憶媒体23に記憶される。また、一般道路の走行から高速道路の走行となった場合には、一般道路の走行から高速道路の走行となった場合の走行条件が耐久記憶媒体23に記憶される。
【0046】
図5に、御目標値記憶処理28のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、制御部24は、図3に示した処理を並行して図5に示す処理を周期的に実施する。
【0047】
まず、現在のバッテリ残量を監視する(S200)。本ナビゲーションECU20には、モータ3を駆動するバッテリ9の残量(バッテリ充電量)を示す信号が入力されるようになっており、このバッテリの残量を示す信号を用いて現在のバッテリ残量を監視する。
【0048】
次に、現在SOCが規格範囲外となったか否かを判定する。ここで、規格範囲とは、バッテリ残量の適正範囲である。本実施形態では、下限規格値(例えば、40%以下)と上限規格値(例えば、70%以上)との間を規格範囲として現在SOCの判定を行う。
【0049】
ここで、現在SOCが規格範囲内にある場合、S202の判定はNOとなり、S200へ戻り、バッテリ残量の監視を繰り返し実施する。また、現在SOCが規格範囲外となった場合、S202の判定はYESとなり、次に、直近2キロメートル(km)分の走行条件を取得する(S204)。具体的には、上記走行条件記憶処理により耐久記憶媒体23に記憶された直近2キロメートル分の走行条件を読み出す。このように、バッテリ残量が規格範囲外となった基準地点を含む手前の一定距離区間の走行条件を取得する。
【0050】
次に、バッテリ残量が規格範囲外となった基準地点を含む先方の一定距離(本実施形態では、2キロメートル)分の走行条件を、走行しながら収集する(S206)。
【0051】
このようにして、図6に示すように、バッテリ残量が規格範囲外となった基準地点を含む手前の一定距離の区間と、基準地点を含む先方の一定距離の区間とを連結した区間を計画制御対象候補区間における走行条件が収集される。
【0052】
次に、計画立案処理を実施する。図7に、この計画立案処理のフローチャートを示す。この計画立案処理では、まず、計画区間を特定し、この計画区間の走行に必要なエネルギーを算出する(S302)。具体的には、図5に示した処理により特定された計画制御対象候補区間を計画区間として、この計画制御対象候補区間を走行するのに必要なエネルギーを、耐久記憶媒体23に記憶された走行情報に基づいて算出する。
【0053】
次に、道路区間毎に走行方向を決定する(S304)。具体的には、HV制御部10より基準SOCを取得し、この基準SOCと耐久記憶媒体に記憶された計画制御対象候補区間の走行情報に基づいて、この計画制御対象候補区間において、バッテリ残量が規格範囲内に収まるように発電効率およびアシスト効率を算出してエンジン走行を行うかまたはアシスト走行を行うかの選択、内燃充電を行うか否かの選択、および、回生充電を行うか否かの選択といった制御方法を道路区間毎に決定する。
【0054】
次に、耐久記憶媒体23に記憶された走行条件に基づき、計画制御対象候補区間に対して、バッテリ残量が規格範囲内に収まるようにSOC管理計画(制御スケジュールに相当する)を作成し、耐久記憶媒体23に記憶させる。SOC管理計画は、計画区間内における計画SOC(制御目標値)の推移を予想したものである。図8に、目標SOCの推移の予想の一例を示す。本実施形態では、計画区間における道路識別子に対応付けて燃費が向上するように目標SOCを規定したSOC管理計画が作成される。なお、このようなSOC管理計画を作成する手法は周知(特開2001−183150号公報、「新エネルギー自動車の開発123〜124頁」CMC出版等参照)であるので、ここではその詳細についての説明は省略する。
【0055】
次に、走行時処理について説明する。図9に、走行時処理のフローチャートを示す。制御部24は、車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、図3、5、7に示した処理を並行して図9に示す処理を実施する。
【0056】
まず、走行中の道路を特定する(S400)。具体的には、マップマッチング処理25の判定毛かに基づいて自車が走行している道路を特定する。
【0057】
次に、自車が計画制御対象候補区間に進入したか否かを判定する(S402)。具体的には、走行中の道路が、計画制御対象候補区間として耐久記憶媒体23に記憶された各道路になったか否かに基づいて自車が計画制御対象候補区間に進入したか否かを判定する。
【0058】
ここで、自車が計画制御対象候補区間に進入していない場合、S402の判定はNOとなり、S400の判定を繰り返し実施する。この場合、HV制御部10は、車速、アクセル開度等に応じた駆動制御を自律的に行う。
【0059】
そして、図10に示すように、自車が計画制御対象候補区間1に進入すると、S402の判定はYESとなり、次に、制御目標値の読み出しを行う(S404)。具体的には、計画制御対象候補区間1に対した規定された制御指標のスケジュールを参照して自車が位置する地点における制御目標値を耐久記憶媒体23から読み出す。
【0060】
次に、制御目標値をHV制御部10へ通知する(S406)。具体的には、耐久記憶媒体23から読み出した自車が位置する地点における制御目標値をHV制御部10へ通知する。これにより、HV制御部10は、バッテリ9の充電量がこの制御目標値に近づくように駆動制御を行う。
【0061】
次に、計画区間から離脱したか否かを判定する(S408)。具体的には、走行中の道路が、計画制御対象候補区間として耐久記憶媒体23に記憶された各道路でなくなったか否かに基づいて自車が計画区間から離脱したか否かを判定する。
【0062】
ここで、自車が計画制御対象候補区間1を走行中の場合、S408の判定はNOとなり、S404へ戻る。したがって、計画制御対象候補区間1に対した規定された制御目標値に従った駆動制御が実施される。
【0063】
そして、自車が計画制御対象候補区間1の区間外へ進行すると、S408の判定はYESとなり、次に、制御目標値の通知を終了する(S410)。具体的には、HV制御部10に対する制御目標値の通知を停止し、S400へ戻る。これにより、HV制御部10は、車速、アクセル開度等に応じた駆動制御を自律的に行うようになる。
【0064】
更に、車両が走行して図10に示した計画制御候補区間2内に進入すると、計画制御候補区間2に対して規定された制御目標値に従った駆動制御が実施され、車両が計画制御候補区間2の区間外へ進行すると、HV制御部10に対する制御目標値の通知を停止し、HV制御部10は、車速、アクセル開度等に応じた駆動制御を自律的に行うようになる。
【0065】
上記した構成によれば、バッテリ残量が予め定められた上限規格値または下限規格値となったことを判定した場合、バッテリ残量が上限規格値または下限規格値となった地点を基準地点として、当該基準地点を含む手前の一定区間と、基準地点を含む先方の一定区間とを連結した区間を計画制御対象候補区間として特定し、この計画制御対象候補区間について、耐久記憶媒体23に記憶された走行条件を用いてバッテリ残量が規格範囲内に収まるように制御指標のスケジュールを計画し、車両が計画制御対象候補区間に進入したことを判定した場合、当該車両が進入した計画制御対象候補区間に対して規定された制御指標のスケジュールに従って動力源の駆動制御が行われる。すなわち、目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
【0066】
また、車両の走行に伴って収集した直近の一定距離分の走行条件を予め定められた区間毎に収集し、当該収集した走行条件を耐久記憶媒体23に蓄積記憶させるとともに、バッテリ残量が上限規格値または下限規格値となったことを判定した場合、車両の走行に伴ってバッテリ残量が上限規格値または下限規格値となった基準地点を含む先方の走行条件を予め定められた区間毎に収集し、当該収集した走行条件を耐久記憶媒体23に蓄積記憶させるようになっているので、車両の走行に伴って収集した全ての走行条件を耐久記憶媒体23に蓄積記憶させる必要がなく、走行条件を記憶させるための耐久記憶媒体23の記憶領域を少なくすることが可能である。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0068】
例えば、上記実施形態では、車両駆動制御装置の搭載車両として、走行用の動力源としてエンジンおよびモータを用いるハイブリッド車両を例に示したが、例えば、家庭用電源等による充電に対応したプラグインハイブリッド車両としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、バッテリ残量が1回でも予め定められた規格範囲外となったことを判定した場合、バッテリ残量が規格範囲外となった地点を基準地点として計画制御対象候補区間を特定し、この計画制御対象候補区間について制御指標のスケジュールを計画したが、例えば、計画制御対象候補区間として予め定められた基準回数以上、耐久記憶媒体23に記憶された区間について、制御指標のスケジュールを計画するように構成してもよい。このような構成では、例えば、過去に1回だけバッテリ残量が規格範囲外となった地点を含むような計画制御対象候補区間に対しては計画制御を実施せず、計画制御対象候補区間として予め定められた基準回数以上、耐久記憶媒体23に記憶された区間に対して計画制御を実施するといったことが可能である。
【0070】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、耐久記憶媒体23が記憶手段に相当し、S100、S206が走行条件蓄積記憶処理手段に相当し、S302が計画制御対象候補区間特定処理に相当し、S304、S306がスケジュール計画手段に相当する。
【符号の説明】
【0071】
1 エンジン
2 発電機
3 モータ
4 差動装置
5a タイヤ
5b タイヤ
6 インバータ
7 DCリンク
8 インバータ
9 バッテリ
10 HV制御部
11 GPS受信機
12 方位センサ
13 車速センサ
14 地図DB記憶部
15 勾配センサ
16 無線受信機
20 ナビゲーションECU
21 RAM
22 ROM
23 耐久記憶媒体
24 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力源として内燃機関と電動機を使用する車両に搭載され、規定された制御指標のスケジュールに従って前記動力源の駆動制御を行うことが可能な車両駆動制御装置であって、
前記車両の走行に伴って、前記制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を予め定められた区間毎に収集し、当該収集した走行条件を記憶手段に蓄積記憶させる処理を実施する走行条件蓄積記憶処理手段と、
前記車両の走行に伴って、前記車両の電動機に電力を供給するバッテリの残量を表すバッテリ残量が予め定められた上限規格値または下限規格値となったことを判定した場合、前記バッテリ残量が上限規格値または下限規格値となった地点を基準地点として、当該基準地点を含む手前の一定区間と、前記基準地点を含む先方の一定区間とを連結した区間を計画制御対象候補区間として特定する計画制御対象候補区間特定処理と、
前記計画制御対象候補区間について、前記記憶手段に記憶された前記走行条件を用いて前記バッテリ残量が規格範囲内に収まるように前記制御指標のスケジュールを計画するスケジュール計画手段と、を備え、
前記車両が前記計画制御対象候補区間に進入したことを判定した場合、当該車両が進入した計画制御対象候補区間に対して規定された前記制御指標のスケジュールに従って前記動力源の駆動制御を行うことを特徴とする車両駆動制御装置。
【請求項2】
前記スケジュール計画手段は、前記計画制御対象候補区間として予め定められた基準回数以上、前記記憶手段に記憶された区間について、前記制御指標のスケジュールを計画することを特徴とする請求項1に記載の車両駆動制御装置。
【請求項3】
前記走行条件蓄積記憶処理手段は、前記車両の走行に伴って収集した直近の一定距離分の前記走行条件を予め定められた区間毎に収集し、当該収集した走行条件を前記記憶手段に蓄積記憶させるとともに、前記バッテリ残量が上限規格値または下限規格値となったことを判定した場合、前記車両の走行に伴って前記バッテリ残量が上限規格値または下限規格値となった前記基準地点を含む先方の前記走行条件を予め定められた区間毎に収集し、当該収集した走行条件を前記記憶手段に蓄積記憶させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−71756(P2012−71756A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219344(P2010−219344)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】