説明

車両

【課題】 駐車時に自然風を効率的に取り入れる車両を提供する。
【解決手段】 本発明は、車両の走行位置を検出する走行位置検出手段(21)と、検出した走行位置近傍の車両が駐車可能な場所を検出する駐車場所記憶手段(11)と、前記駐車場所内の各駐車スペースの風向きを検出する風向検出手段(S3)と、検出した前記風向きに基づいて駐車時の車両の向きを設定する車両方向設定手段(S5)と、設定した車両の向きを運転者に報知する報知手段(23)を備え、駐車時に前記機能制限手段を設置した場所に自然風を導入するように前記車両の向きを設定した車両である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に使用条件に許容温度が設定される装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両駐停車時に車両内を冷却する技術として、サンシェード等の日射低減手段により車室内への日射量を低減する技術がある(特許文献1参照)。この技術は、駐車時に日射低減手段を作動して、車室内へ注がれる日射を遮り車室内の温度上昇を抑制する技術である。
【0003】
また、特許文献2には、車両走行中の余剰冷却能力により製氷し、この氷を用いて駐車中の車室内に冷気を導入して冷房する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−114900号公報
【特許文献2】特開2004−245486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、駐車後の乗車時に車室内の温度を低下させておき、乗車直後の乗員の快適性を確保することを目的とする技術である。しかしながら、車両、特にエンジンルームに搭載された装置は駐停車中に温度が上昇し、この装置に許容温度が設定されている場合に、駐車中に許容温度を越えることがある。許容温度を越えた場合には装置の機能が制限され、駐車後の再走行時に走行性能が制限されるという課題がある。
【0005】
このような問題点を鑑み、本発明では、許容温度が設定された装置の駐車中の温度上昇を抑制するようにした車両を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両は、車両の走行位置を検出する走行位置検出手段と、検出した走行位置近傍の車両が駐車可能な場所を検出する駐車場所記憶手段と、前記駐車場所内の各駐車スペースの風向きを検出する風向検出手段と、検出した前記風向きに基づいて駐車時の車両の向きを設定する車両方向設定手段と、設定した車両の向きを運転者に報知する報知手段を備え、駐車時に前記機能制限手段を設置した場所に自然風を導入するように前記車両の向きを設定した。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、車両内に機能制限手段が設置される場合でも、駐車中に自然風を機能制限手段に向けて優先的に導入することができるため、機能制限手段の温度上昇を抑制することができる。これにより、機能制限手段の機能が制限されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の第1の実施形態としてのシステム構成図である。図1の構成図は、ハイブリッド型電気自動車の構成を示しているが、本発明はこれに限らず、通常のエンジン車両や電気自動車にも容易に適用できることはいうまでもない。
【0009】
本実施形態の構成では、変速機3を介して図示しない駆動輪に駆動力を伝達する駆動源としてエンジン31とモータ/ジェネレータ(以下、M/Gという)33とを備える。これらエンジン31とM/G33は、図示しないアクセルペダル開度や車両走行状態に応じてCPU11により協調制御され、最適な駆動力制御が行われる。
【0010】
CPU11には、エンジン31とM/G33の運転状態が入力されるとともに、変速機35の変速比、M/G33に電力を受給、供給する2次電池34のSOC、及びM/G33と2次電池34の間に設置されたインバータ32の作動状態が入力される。
【0011】
なお、本実施形態では、エンジン31、インバータ32、M/G33および2次電池34が車両のエンジンルーム内に設置されたものとする。CPU11は、これらの温度がそれぞれ設定された許容温度を越えるような場合に、これらの機能を制限して駆動力制御等を実施する。
【0012】
CPU11には、さらにGPS21から自車の走行場所近傍の地図、地形情報と、運転者の駐車の意思表示手段としての方向指示器レバー25の作動状態と、外部通信手段24から自車走行場所近傍の気象情報や駐車場の空きスペースの情報が入力される。
【0013】
CPU11は、これら入力情報を内部メモリ22の情報と照合して、推奨駐車場やその駐車場内の駐車位置、駐車の向きを車室内に設置したディスプレイ23に表示し、運転者に報知する。
【0014】
CPU11内に内蔵したメモリ22には、駐車場の所在地及び駐車場内の駐車エリアや駐車スペースの向き等の駐車エリア情報、月日及び時間ごとの駐車場内の日陰となる場所、風向きの情報を予め記憶しておく。
【0015】
図2は、CPU11が実施する駐車時制御を説明するフローチャートである。この制御は、車両駐車時に推奨駐車位置を選定すると共に、その駐車位置での車両の駐車の向きを運転者に指示することで、駐車時に、例えばエンジンルーム内に自然風を取り入れて駐車時のエンジンルーム内の温度上昇を抑制する制御である。この制御は、所定間隔で適宜実施される。
【0016】
まずステップS1で、GPS(走行位置検出手段)21からの情報に基づいて走行中の車両が予め記憶した高速道路のサービスエリアや駐車場等の駐車可能場所に近づいたかどうかを判断する(駐車場所記憶手段)。車両が駐車可能場所に近づくまで判断を繰り返す。
【0017】
ステップS1の条件が成立した場合にステップS2に進み、運転者がその駐車可能場所に駐車する意思があるかどうかを、駐車意思検出手段としての方向指示器レバー25の操作の有無により判定する。方向指示器レバー25を操作した場合には駐車する意思有りとしてステップS3に進み、意思表示がない場合には駐車制御を実施する必要がなく、ステップS1の判定に戻る。
【0018】
ステップS3では、外部通信手段24から駐車可能場所付近の天候、気温等の気象情報を入手し、また現在の時刻を確認する。続くステップS4では、GPS21や外部通信手段24から入手した情報や時刻に基づき、メモリ22から駐車可能場所の駐車エリア情報(車両が駐車する駐車スペースの向き等)、日陰の場所、駐車スペース毎の風向きの情報を読み込む(風向検出手段)。なお、日陰の場所は、駐車可能場所毎の建物の位置や太陽の位置から月日や時間ごとの日陰の位置を推定あるいは測定し、予めメモリ22に記憶しておく。または、外部通信手段24から日陰の位置情報を入手するようにしてもよい。また、風向きについても、駐車スペース毎の月日や時間毎の風向きを推定あるいは測定し、予めメモリ22に記憶しておく。
【0019】
ステップS5では、外部通信手段24から駐車可能場所の混み具合や工事情報を入手して、この情報とステップS4で読み込んだ駐車可能場所の駐車エリア情報、日陰の場所、風向きの情報とから推奨駐車位置とその場所での車両の向きを設定する(車両方向設定手段)。
【0020】
ここで駐車時の車両の向きは、自然風がフロントグリル等を通過してエンジンルーム内に入り込み、エンジンルーム内に設置されたエンジン31、インバータ32、M/G33と2次電池34の熱を放熱するように、風上に車両の前面が向くように設定し、この向きに一致、または近い駐車スペースを推奨する。したがって、駐車時でも自然風がエンジンルーム内に導入されて、風によりエンジンルーム内のエンジン31等を冷却することができる。
【0021】
また、推奨駐車位置を設定する際の優先順位は、風向き、日陰、その他の条件の順に優先し、同条件の駐車位置が複数選択された場合には、駐車場所が入口に近い方から推奨するようにする。優先順位を設定することで、制御が煩雑になることを抑制することができる。また、外気温が低い場合、雨天時及び夜間時には、日照の条件を駐車位置の設定時に無視するようにしてもよい。このような場合には駐車の位置による冷却効果の違いが小さく、風向きのみを条件として駐車時の車両の向きを設定し、制御を簡潔にすることができる。
【0022】
ステップS6では、外部通信手段24から読み込んだ駐車エリアの空き情報に基づいて推奨駐車位置に他の車両が駐車しているかどうかを判定する(駐車状態検出手段)。判定の結果、駐車されていない場合にはステップS7に進み、推奨する駐車位置と車両の向きをディスプレイ(報知手段)23に表示する。ディスプレイ23の表示方法の一例を図3に示す。一方、既に駐車済みの場合にはステップS8に進み、ディスプレイ23に次に推奨する駐車位置を表示する。このように推奨する駐車位置に優先順位を設定し、優先順位の高い順に運転者に知らせることで、運転者に無駄な情報を知らせることがない。
【0023】
続くステップS9では、駐車エリア情報が更新されたかどうかを判定し、更新されていればステップS6の判定の戻り、更新されていなければステップS10に進む。
【0024】
ステップS10では、駐車が完了したかどうかを、例えば車速やキー操作から判定し、完了していれば、制御を終了し、完了していなければステップS9に戻る。
【0025】
なお、本実施形態では、まず最適な風向き、日陰となる駐車場所を選定し、その後その推奨駐車位置が空いているかどうかを判定するようにしたが、まず駐車できる位置を選定し、その中から適当な風向き及び日陰となる駐車場所を推奨駐車位置とするようにしてもよい。この場合には、駐車位置をまず確保するので、駐車のために待たされる時間が短縮される。
【0026】
このように、本発明の車両は、車両が駐車可能な場所を記憶した駐車場所記憶手段と、前記車両駐車場所の風向きを検出する風向検出手段と、検出した前記風向きに基づいて車両駐車時の車両の向きを設定する車両方向設定手段と、設定した車両の方向を運転者に報知する報知手段を備え、駐車時に前記機能制限手段の設置箇所に自然風を導入するようにしたため、駐車時にエンジンルーム内に自然風が導入され、エンジンルーム内に設置された、特に使用時の温度制限が設定された部品の温度を抑制して、温度の過上昇による部品の使用制限が生じることを回避することができる。
【0027】
また運転者が駐車をする意思があるかどうかを検出する駐車意思検出手段(方向指示器レバー25)を備え、運転者の駐車意思が検出された場合に、前記車両方向設定手段は前記駐車時の向きを設定し、前記報知手段は設定した車両の向きを報知するので、運転者が要望するときに、適切に駐車情報を提供することができる。
【0028】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態のシステム構成図である。
【図2】CPUが実施する駐車時制御を説明するフローチャートである。
【図3】ディスプレイの表示方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
11 CPU
21 GPS
22 メモリ
23 ディスプレイ
24 外部通信手段
25 方向指示器レバー
31 エンジン
32 インバータ
33 M/G
34 2次電池
35 変速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用温度が許容温度を越えることで機能が制限される機能制限手段を備えた車両において、
車両の走行位置を検出する走行位置検出手段と、
検出した走行位置近傍の駐車可能な場所を検出する駐車場所記憶手段と、
前記駐車場所内の風向きを検出する風向検出手段と、
検出した前記風向きに基づいて駐車時の車両の向きを設定する車両方向設定手段と、
設定した車両の向きを運転者に報知する報知手段を備え、
駐車時に前記機能制限手段を設置した場所に自然風を導入するように前記車両の向きを設定することを特徴とする車両。
【請求項2】
運転者が駐車をする意思があるかどうかを検出する駐車意思検出手段を備え、
運転者の駐車意思が検出された場合に、前記車両方向設定手段は前記駐車時の車両の向きを設定し、前記報知手段は設定した車両の向きを報知することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記風向検出手段は、前記駐車場所内の月日及び時間毎の風向きを記憶しておくことを特徴とする請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記風向検出手段は、前記駐車場所内の各車両が駐車する駐車スペース毎の月日及び時間毎の風向きと日陰の場所を予め記憶し、
前記風向きと前記日陰の場所とに基づいて駐車する駐車位置と車両の向きを設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車両。
【請求項5】
前記風向検出手段は、前記風向きと前記日陰の場所に加えて、前記駐車場所の外気温、天気及び駐車時の時刻のうち少なくとも一つに基づいて前記駐車位置と車両の向きを設定することを特徴とする請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記風向検出手段は、前記風向きを第1優先順位として前記駐車位置と車両の向きを設定することを特徴とする請求項5に記載の車両。
【請求項7】
雨天時及び夜間時には、前記検出された風向きのみにより前記駐車位置と車両の向きを設定することを特徴とする請求項5に記載の車両。
【請求項8】
前記駐車場所の駐車位置に他の車両が駐車しているかどうかを検出する駐車状態検出手段を備え、
設定した駐車位置に他の車両が駐車している場合には、他の駐車位置を設定して、運転者に報知することを特徴とする請求項4に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−57352(P2007−57352A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242398(P2005−242398)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】