説明

車両

【課題】衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更することにより、衝突時に乗員を効果的に保護し、衝突時における歩行者の傷害値を効果的に軽減することを目的とする。
【解決手段】車両の前部に設けられた衝突エネルギ吸収装置2と、被衝突物の種類を判別する判別手段40と、を備え、判別手段40による判別結果に基づいて衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部に設けられた衝突エネルギ吸収装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、フロントサイドメンバ(特許文献1の図5の34)の先端部に、衝突エネルギ吸収装置(特許文献1の図5の20)を装着した車両や、特許文献2に開示されているように、バンパービーム(特許文献2の図1の11)とバンパーフェイス(特許文献2の図1の12)との間に、エネルギ吸収材(特許文献2の図1の13)を装着した車両が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−198039号公報(図1、図5及び段落番号「0017」参照)
【特許文献2】特開2006−44504号公報(図1及び図9参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両では、衝突エネルギ吸収装置におけるエネルギ吸収体(特許文献1の図1の22,24,26)の形状を段付き形状に形成して、この段付き形状に形成したエネルギ吸収体の曲げ変形及び座屈変形により被衝突物から車両に作用するエネルギを吸収するように構成されており、衝突エネルギ吸収装置による吸収エネルギ量を多くできるように衝突エネルギ吸収装置の形状等が設定されている。従って、歩行者の傷害値を軽減する観点から衝突エネルギ吸収装置の形状等が設定されているものではなく、衝突時における歩行者の傷害値を軽減することが困難であった。
【0005】
特許文献2の車両では、エネルギ吸収材に衝突エネルギが作用すると、変形ストロークに対して所定の特性でエネルギ吸収材が弾性変形するように、エネルギ吸収材の形状等が設定されており、歩行者の傷害値を軽減できるようにエネルギ吸収材の形状等が設定されている。従って、乗員を保護する観点からエネルギ吸収材の形状等が設定されているものではなく、衝突時に乗員を効果的に保護することが困難であった。
本発明は、衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更することにより、衝突時に乗員を効果的に保護し、衝突時における歩行者の傷害値を効果的に軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、車両を次のように構成することにある。
車両の前部に設けられた衝突エネルギ吸収装置と、被衝突物の種類を判別する判別手段と、を備え、前記判別手段による判別結果に基づいて前記衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更する。
【0007】
(作用)
本発明の第1特徴によると、例えば判別手段により被衝突物が歩行者以外(例えば車両、壁、電柱、放置自転車等)であると判別される場合には、被衝突物の種類に応じた乗員の保護に適した剛性に、衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更することで、衝突時に乗員に作用する衝撃を低減することができる。具体的には、例えば被衝突物が車両であれば、車両に衝突した場合における乗員の保護に適した剛性に、衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更することで、衝突時に乗員に作用する衝撃を低減することができる。
【0008】
本発明の第1特徴によると、例えば判別手段により被衝突物が歩行者であると判別された場合には、歩行者の傷害値を軽減するのに適した剛性に、衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更することで、衝突時に歩行者に作用する衝撃を低減することができる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、衝突時に乗員を効果的に保護できると共に、衝突時における歩行者の傷害値を効果的に軽減できる。
【0010】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の車両において、次のように構成することにある。
前記衝突エネルギ吸収装置の剛性を、車両が被衝突物に衝突した時点又は車両が被衝突物に衝突すると予測される時点から時間的に変更する。
【0011】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、例えば判別手段により被衝突物が歩行者以外(例えば車両、電柱、放置自転車等)であると判別される場合には、衝突エネルギ吸収装置の剛性を時間的に変更することで、被衝突物の種類に応じた乗員の保護に最適な剛性に、衝突エネルギ吸収装置の剛性を近づけることができる。その結果、衝突時に乗員に作用する衝撃を更に低減することができる。
【0012】
本発明の第2特徴によると、例えば判別手段により被衝突物が歩行者であると判別された場合には、衝突エネルギ吸収装置の剛性を時間的に変更することで、歩行者の傷害値を軽減するのに最適な剛性に、衝突エネルギ吸収装置の剛性を近づけることができる。その結果、衝突時に歩行者に作用する衝撃を更に低減することができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、衝突時に乗員を更に効果的に保護できると共に、衝突時における歩行者の傷害値を更に軽減できる。
【0014】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1又は第2特徴の車両において、次のように構成することにある。
前記衝突エネルギ吸収装置に伸縮体を備えて、前記伸縮体に電気的又は磁気的に粘度を変更可能な粘性流体を封入し、前記粘性流体の粘度を電気的又は磁気的に変更することで、前記衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更する。
【0015】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、例えば衝突エネルギ吸収装置に供給する電流値や電圧値を変更して、粘性流体の粘度を電気的又は磁気的に変更することで、乗員の保護及び歩行者の傷害値の軽減に適した剛性に、衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更できる。これにより、例えば衝突エネルギ吸収装置の形状等を工夫しなくても、粘性流体の粘度を電気的又は磁気的に変更することで、衝突エネルギ吸収装置の剛性を容易に変更できる。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、乗員の保護及び歩行者の傷害値の軽減に適した剛性に、衝突エネルギ吸収装置の剛性を簡易迅速かつ容易に変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[車両の全体構成]
図1及び図2に基づいて衝突エネルギ吸収装置2を装備した車両の全体構成について説明する。図1は、車両の全体側面図であり、図2は、車両前部の縦断側面図である。なお、この実施形態では、車両として軽車両を例に示す。
【0018】
図1及び図2に示すように、車両の前部にエンジンルームRが装備されており、このエンジンルームRにおける後壁1の右側部及び左側部に、右及び左の衝突エネルギ吸収装置2が締め付け固定されている。エンジンルームRの前後中央部で右及び左の衝突エネルギ吸収装置2の間には、車両の駆動源となるエンジンEが搭載されている。
【0019】
右の衝突エネルギ吸収装置2の前部と、左の衝突エネルギ吸収装置2の前部とに亘って、左右に長いバンパーメンバ3が固定されており、このバンパーメンバ3は、板厚の薄い鋼板をプレス成形及びスポット溶接することで、ボックス状に成形されている。
【0020】
バンパーメンバ3の前側には、バンパー4が配設されており、例えば前方から被衝突物がバンパー4に衝突すると、被衝突物からの外的な負荷がバンパー4に作用してバンパー4が弾性変形等し、被衝突物からの外的な負荷がバンパーメンバ3を後方に押す力として作用して、被衝突物からの外的な負荷を右及び左の衝突エネルギ吸収装置2により吸収できるように構成されている。
【0021】
エンジンルームRの後壁1と衝突エネルギ吸収装置2との間には、サイドメンバ等のフレーム部材(図示せず)が装備されていない。これにより、被衝突物からの外的な負荷を専ら右及び左の衝突エネルギ吸収装置2によって吸収できる。
【0022】
[衝突エネルギ吸収装置]
図2〜図5に基づいて衝突エネルギ吸収装置2について説明する。図3は、衝突エネルギ吸収装置2付近の横断平面図であり、図4は、図2のIV−IVの位置での衝突エネルギ吸収装置2の縦断背面図である。図5は、電磁石23による磁場の変更状況を説明する概略縦断背面図である。
【0023】
図2〜図4に示すように、衝突エネルギ吸収装置2は、伸縮体10と、永久磁石21と、電磁石23とを備えて構成されており、伸縮体10は、後壁1側に固定された固定側部材11と、バンパーメンバ3側に固定されたスライド部材15とを備えて構成されている。
【0024】
図3及び図4に示すように、固定側部材11は、フランジ部12と、案内部材13と、外側筒状部材14とを備えて構成されている。フランジ部12には、複数の前後向きの取り付け穴が形成されており、このフランジ部12の後面側を後壁1の前面側に前方から接当させて締め付け固定することで、衝突エネルギ吸収装置2を後壁1に固定できるように構成されている。
【0025】
案内部材13は、フランジ部12の前面側から前方に突出した凸状に成形され、前後に長い角柱状に成形されており、この案内部材13の外周面に後述するスライド部材15が外嵌されている。外側筒状部材14は、フランジ部12の前面側から前方に突出した形状に成形され、正面視での縦断面形状が角筒状に形成されており、この外側筒状部材14の内周面にスライド部材15のピストン部16aが内嵌されている。これにより、スライド部材15が案内部材13及び外側筒状部材14に沿って前後に無理なくスライド移動できるように構成されている。
【0026】
スライド部材15は、スライド部材本体16と、フランジ部17とを備えて構成されている。スライド部材本体16は、正面視での縦断面形状が角筒状に形成されており、スライド部材本体16を案内部材13に外嵌することで、スライド部材本体16が凸状に形成された案内部材13に係合して案内部材13に沿って無理なく前後にスライド移動できるように構成されている。
【0027】
スライド部材本体16の後端部には、フランジ状のピストン部16aが一体形成されており、このピストン部16aの外周面が外側筒状部材14の内周面に内嵌されている。
【0028】
スライド部材本体16の前面側には、フランジ部17が固着されている。フランジ部17には、複数の前後向きの取り付け穴が形成されており、このフランジ部17の前面側にバンパーメンバ3の後面側を接当させて締め付け固定することで、衝突エネルギ吸収装置2にバンパーメンバ3を固定できるように構成されている。
【0029】
スライド部材15は、シール材として兼用される軸受部材18を外嵌した状態で、止め輪19により固定側部材11側に装着されている。
【0030】
なお、図示しないが、伸縮体10の形状や構造として異なる構成を採用してもよく、例えば固定側部材11の案内部材13を円柱状に形成し、固定側部材11の外側筒状部材14及びスライド部材15のスライド部材本体16を円筒状に形成してもよい。
【0031】
案内部材13の外周面と外側筒状部材14の内周面との間で、ピストン部16aの後面側に粘性流体を封入するシリンダー室S1が形成されており、案内部材13の外周面と外側筒状部材14の内周面との間で、ピストン部16aの前面側と軸受部材18との間に補助室S2が形成されている。
【0032】
スライド部材本体16のピストン部16aには、前後向きの単一又は複数の連通流路16bが形成されており、この連通流路16bによりシリンダー室S1と補助室S2が連通されている。連通流路16bには、絞り弁16cが設けられており、この絞り弁16cは、所定の圧力が加えられると連通流路16bを介しての液体の移動が許容され、連通流路16bを介して移動する流体に所定の絞り抵抗を付与できるように構成されている。
【0033】
シリンダー室S1に粘性流体を注入した状態で、固定側部材11にスライド部材15を嵌め込み装着し、軸受部材18を止め輪19で装着することで、シリンダー室S1に粘性流体を封入する。
【0034】
この衝突エネルギ吸収装置2では、粘度を電気的又は磁気的に変更可能な粘性流体として、MR流体(Magnet Rheological Fluid(磁気粘性流体))が封入されており、MR流体に与える磁場を変更することによりその粘度を変更できる。具体的には、MR流体に与える磁場を強く変更すると、MR流体に含有された強磁性金属微粒子同士が強く引き付け合うことで、MR流体の粘度が高くなる。一方、MR流体に与える磁場を弱く変更すると、MR流体に含有された強磁性金属微粒子同士が引き付け合う力が弱くなって、MR流体の粘度が低くなる。
【0035】
外側筒状部材14の右側面と、外側筒状部材14の左側面とに亘って、永久磁石21が固定されている。永久磁石21は、U字形の永久磁石で構成されており、N極が着磁された側が外側筒状部材14の右側に位置し、S極が着磁された側が外側筒状部材14の左側に位置するように、外側筒状部材14の下側から装着され、外側筒状部材14の右及び左の両側面に固定されている。
【0036】
永久磁石21の右側面と左側面とに亘って電磁石23が装備されている。電磁石23は、背面視での縦断面形状が下向きに開口したコ字状の電磁体24と、この電磁体24の上部に設けられたコイル部材25とを備えて構成されている。電磁体24の右側下部24Rは、永久磁石21の右外面側(N極側)に固定されており、電磁体24の左側下部24Lは、永久磁石21の左外面側(S極側)に固定されている。なお、電磁石23の配置、及び電磁石23の永久磁石21に対する位置関係として異なるものを採用してもよい。
【0037】
コイル部材25には、電磁体24に巻き付けられたコイル25aが装備されており、このコイル25aの両端部がコイル部材25の左右両側部に備えられた接続部25bに接続されている。接続部25bは、第1及び第2コントローラ36,37を介して後述する制御装置30に接続されている。
【0038】
上記のように衝突エネルギ吸収装置2を構成することにより、スライド部材15に前方からの力が作用していない場合、及び前方から作用した力が所定値未満の場合には、永久磁石21により粘度が中程度に変更されたMR流体の粘性により、スライド部材15の固定側部材11側への移動が阻止され、図3に示す状態が維持される。一方、前方から作用した力が所定値以上の場合には、スライド部材15の固定側部材11側への移動が許容され、スライド部材15がMR流体の所定の抵抗に抗して後方に移動する。
【0039】
図5(a)に示すように、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力により電磁石23に図5(a)の黒矢印で示す正方向の電流を供給し、電磁体24の右側下部24RがN極に励磁され、電磁体24の左側下部24LがS極に励磁されると、MR流体に与える磁場が電磁石23の磁力により強く変更されて、シリンダー室S1内のMR流体の粘度が高く変更される。従って、連通流路16bを介してMR流体が移動し難くなり、前方から比較的大きな衝突エネルギが加わらないと、連通流路16bを介してのMR流体の移動が許容されない。これにより、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を高く変更できる。
【0040】
図5(b)に示すように、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力により電磁石23に図5(b)の白矢印で示す逆方向の電流を供給し、電磁体24の右側下部24RがS極に励磁され、電磁体24の左側下部24LがN極に励磁されると、MR流体に与える磁場が電磁石23の磁力により弱く変更されて、シリンダー室S1内のMR流体の粘度が低く変更される。従って、連通流路16bを介してMR流体が移動し易くなり、前方からの比較的小さな衝突エネルギにより連通流路16bを介してのMR流体の移動が許容され、連通流路16bに設けられた絞り弁16cによる絞り抵抗に抗してスライド部材15が後方に移動する。これにより、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を低く変更できる。
【0041】
ここで、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力によって電磁石23への出力電流値Iを大きく又は小さく変更することにより、電磁石23の磁力を大きく又は小さく変更調節して、シリンダー室S1内のMR流体の粘度を細かく変更調節できる。これにより、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を細かく変更調節できる。
【0042】
[制御装置のブロック図]
図6に基づいて制御装置30のブロック図について説明する。図6は、車両に搭載された制御装置30のブロック図である。図6に示すように、車両には、車載カメラ31、画像処理装置32、赤外線センサ33、レーダ34、車速センサ35等の検出機器類が実装され、これらの検出機器類が制御装置30に接続されている。
【0043】
車載カメラ31は、例えば車室内のルームミラーのステー等(図示せず)に配設されており、車両前方を撮影できるように構成されている。車載カメラ31によって撮影された映像は画像処理装置32によって画像処理されて、制御装置30に入力されるように構成されている。この実施形態では、車載カメラ31により検出した映像及び画像処理装置31からの処理結果に基づいて、前方からの被衝突物の形状等を判断し、制御装置30に備えられた判別手段40により被衝突物が土地等への定着物(例えば壁、電柱、ガードレール等)、又は、土地等から比較的容易に移動可能な非定着物(例えば路上に放置されている自転車、路上に置かれたゴミ箱等)であるか否か判別する。なお、被衝突物が車両の場合、土地等から移動可能であるが、衝突によって移動し難いものであるので、以下の説明において定着物として取り扱う。
【0044】
赤外線センサ33は、例えば車両前部に配設されており、この赤外線センサ33により、前方からの被衝突物の温度を遠方から非接触で瞬時に測定できる。この実施形態では、赤外線センサ33により前方からの被衝突物の温度を測定し、赤外線センサ33からの検出結果に基づいて、制御装置30に備えられた判別手段40により被衝突物が歩行者か否か判別する。
【0045】
レーダ34は、車両前部の複数箇所に左右に並設されており、このレーダ34によって車両前方にレーザ光を投光し被衝突物に当たって反射したレーザ光を受信して、自車両と被衝突物との実距離、被衝突物の左右方向の位置、及び被衝突物に対する自車両の相対速度を検出する。車速センサ35は、車両に装備されており、自車両の車速を検出する。
【0046】
制御装置30には、右の衝突エネルギ吸収装置2の電磁石23に接続された第1コントローラ36と、左の衝突エネルギ吸収装置2の電磁石23に接続された第2コントローラ37とが接続されており、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力により、右及び左の電磁石23に供給する出力電流値I及び電流の方向(正方向及び逆方向)を任意に変更調節できる。なお、第1及び第2コントローラ36,37は、例えば可変抵抗等により構成される。
【0047】
制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37に別々に出力できるように構成されており、これにより、右及び左の電磁石23をそれぞれ別々に制御して、右及び左の衝突エネルギ吸収装置2の剛性をそれぞれ別々に高く又は低く変更調節できるように構成されている。
【0048】
制御装置30には、車室内に装備された表示警告装置38が接続されており、制御装置30から表示警告装置38への出力により、運転者に視覚的及び聴覚的な情報を提供する。例えば判別手段40により判別された被衝突物の種類や車両の被衝突物への衝突可能性等の情報が表示警告装置38により運転者に提供される。
【0049】
[衝突エネルギ吸収装置における制御の内容]
図7に基づいて衝突エネルギ吸収装置2における制御の内容について説明する。図7は、衝突エネルギ吸収装置2における制御の一例を示すフローチャートである。
【0050】
図7に示すように、レーダ34によって検出された自車両と被衝突物との実距離、被衝突物の左右方向の位置、被衝突物に対する自車両の相対速度、及び車速センサ35によって検出された車速に基づいて、制御装置30において車両が被衝突物に衝突するか否か判断される(ステップ#10)。ここで、例えば車両を駐車する場合等における比較的衝撃の小さい衝突の場合には、車両が被衝突物に衝突しないと判断される。
【0051】
なお、車両が被衝突物に衝突するか否かを判断するための検出手段として異なる構成を採用してもよく、例えば画像処理装置32による処理結果に基づいて車両が被衝突物に衝突するか否か判断してもよい。また、レーダ34、車速センサ35、及び画像処理装置32のいずれか一つで検出手段を構成してもよく、レーダ34、車速センサ35、及び画像処理装置32のいずれか2つ以上の異なる組み合わせで検出手段を構成してもよい。
【0052】
車両が被衝突物に衝突すると判断されると(ステップ#10:YES)、制御装置30に設けられた判別手段40により被衝突物の種類が判別される(ステップ#11)。すなわち、赤外線センサ33からの検出結果に基づいて被衝突物が歩行者であるか否か判断され、車載カメラ31により検出した映像及び画像処理装置32からの処理結果に基づいて被衝突物が定着物又は非定着物であるか否か判断される。
【0053】
被衝突物が定着物(車両、壁、電柱等)であると判別されると(ステップ#11:定着物)、後述する定着物用制御に移行する(ステップ#12)。被衝突物が歩行者であると判別されると(ステップ#11:歩行者)、後述する歩行者用制御に移行し(ステップ#13)、被衝突物が非定着物(放置自転車等)であると判別されると(ステップ#11:非定着物)、後述する非定着物用制御に移行する(ステップ#14)。
【0054】
なお、図7においては、被衝突物の種類を、定着物、歩行者及び非定着物の3つに分類した例を示したが、異なる分類を採用してもよく、例えば定着物、歩行者及び非定着物のいずれか2つに分類してもよく、例えば被衝突物の種類を更に細かく4つ以上に分類してもよい。具体的には、例えば車両と、壁や電柱とを区別して別々に制御するように構成してもよく、車両を走行車両と停止車両に区別して別々に制御するように構成してもよく、歩行者を大人と小人とに区別して別々に制御するように構成してもよい。
【0055】
レーダ34によって検出された自車両と被衝突物との実距離、被衝突物の左右方向の位置、被衝突物に対する自車両の相対速度、及び車速センサ35によって検出された車速に基づいて、制御装置30において車両が被衝突物に衝突する時点を予測できるように構成されており、この衝突すると予測された時点から、定着物用制御、歩行者用制御、及び非定着物用制御が実施されて、衝突エネルギ吸収装置2の剛性が変更されるように構成されている。
【0056】
なお、車両が被衝突物に衝突する時点を予測するための自車両と被衝突物との関係を検出する検出手段として異なる構成を採用してもよく、例えば車載カメラ31により検出した映像及び画像処理装置32からの処理結果に基づいて自車両と被衝突物との関係を検出し、車両が被衝突物に衝突する時点を予測するように構成してもよい。また、バンパー4やバンパーメンバ3等に、車両への被衝突物の実際の衝突を検出する衝突検出手段(図示せず)を備えて、この衝突検出手段の検出結果に基づいて車両が被衝突物に衝突した時点から定着物用制御、歩行者用制御、及び非定着物用制御が実施されて、衝突エネルギ吸収装置2の剛性が変更されるように構成してもよい。
【0057】
[畳み込み積分手法による胸部減速度の算出方法]
図8〜図11に基づいて畳み込み積分手法による胸部減速度の算出方法について説明する。図8は、ダミー人形の胸部減速度を算出する場合の力学モデルである。図9は、単位インパルス応答例を示すグラフであり、図10は、ブロック波形化した車体減速度を示す図であり、図11は、胸部減速度の計算値を示す図である。なお、以下の説明では、シートベルトにより拘束されたダミー人形を1次元のバネマスモデルとし、これに任意の車体減速度が加えられたときのダミー人形の減速度を畳み込み積分手法により解き、これを胸部減速度とする場合を例として説明する。
【0058】
図8は、ダミー人形の胸部を質点とする力学モデルであり、
m:ダミー人形の胸部質量
k:シートベルトのバネ定数
x:質点の変位量
F:質点に作用する任意の外力
である。質点に外力F(t)・Δt=1の単位インパルス関数が加わったときの質点の変位をh(t)とすると、以下のように表すことができる。
【数1】

【0059】
従って、質点に作用する時刻τにおける任意の外力をF(τ)とすると、時刻tでの質点の変位量は、以下のように表すことができる。
【数2】

この式(2)を時間で2回微分することにより、胸部減速度を以下のように表すことができる。
【数3】

【0060】
ここで、ダミー人形として例えばHybridIIIを用いた場合、HybridIIIの胸部質量m、及びスレッド試験により得られる一般的なフォースリミッタ作動領域へ移行前のショルダベルト荷重特性によるバネ定数kとして、夫々m=17.19kg、k=60000N/mが得られる。これを式(1)の単位インパルスに代入することにより、以下の式が得られる。
【数4】

なお、図9には、この単位インパルス応答のグラフが示されている。
【0061】
上記の式(3)を見て分かるように、外力Fが求まれば、胸部減速度を算出することができる。ここでは、車体減速度に起因した外力を用いた場合の例について説明する。なお、車体減速度波形はブロック波形化されている。具体例として、車体が初速度55km/sで衝突時に、車体側動的変形量が450mm近辺となるような範囲内で車体側入力減速度を各種選び、これをブロック波形化する。図10にはそのようなブロック波形として、TypeA、TypeI、TypeMの3種類が例示されている。図10の縦軸は、車体減速度であり、横軸は時間である。なお、車体減速度のブロック波形としては、もちろんこれらに限定されるわけではない。
【0062】
式(3)において、h(t)として式(1’)を代入し、さらにF(τ)として、これらのブロック波形を用いることにより、図11に示すような胸部減速度を算出することができる。この図11において、入力波形がTypeAのように完全矩形波の場合はステップ応答波形となり、胸部減速度の最大値は入力車体減速度250m/sの2倍の500m/sとなる。また、この計算の結果によれば、TypeMのように、胸部減速度の最大値が完全矩形波よりも小さくなる入力波形が存在することがわかる。ここで、式(1’)と図9に着目すると、単位インパルス応答の最初のピークは26.6msであり、53.2msで0に戻り、106.4msまではマイナス値をとることがわかる。
【0063】
従って、胸部減速度が最大値を示す時間に対して26.6ms前近辺での車体減速度を極力下げてやれば、胸部減速度の最大値を示す時間帯における単位インパルスの重ね合わせ量が少なくなり、胸部減速度の最大値低減に効果的であることを示している。また、胸部減速度が最大値を示す時間に対して53.2ms前付近の車体減速度は、これを高くしても胸部減速度の最大値には影響を与えず、更にそれ以前の時間帯においては逆に胸部減速度を低減する方向に寄与する。TypeMは、この両条件を満たしているため、図11に示すように、胸部減速度の最大値を完全矩形波よりも低く抑えることが可能となっている。
【0064】
すなわち、図10(c)におけるTypeMに示すように、衝突初期段階(例えば図10(c)の0ms〜10ms)における車体減速度を大きく設定し、衝突中期段階(例えば図10(c)の10ms〜30ms)における車体減速度を小さく設定し、衝突後期段階(例えば図10(c)の30ms〜60ms)における車体減速度を中程度に設定することで、胸部減速度の最大値を効果的に低減できる。衝突エネルギ吸収装置2の剛性を高く変更すると、車体減速度は大きくなり、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を低く変更すると、車体減速度は小さくなるので、図10(c)に示すような車体減速度に近づくように、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更することで、衝突時に乗員に作用する胸部減速度を効果的に低減できる。
【0065】
なお、この実施形態では、畳み込み積分手法によって胸部減速度を算出し、車体減速度と胸部減速度との関係を導出した例を示したが、車体減速度と胸部減速度との関係を算出する手法として異なる手法を採用してもよい。具体的には、例えば遷移関数を用いた手法やべき級数を用いた手法を採用してもよい。
【0066】
[定着物用制御、歩行者用制御、及び非定着物用制御の内容]
図12に基づいて定着物用制御、歩行者用制御、及び非定着物用制御の内容について説明する。図12は、定着物用制御(図12(a))、歩行者用制御(図12(b))、及び非定着物用制御(図12(c))において、衝突エネルギ吸収装置2の電磁石23に出力する出力電流値Iの一例を示すグラフであり、横軸が時間を示し、縦軸が出力電流値Iの大きさを示す。
【0067】
図12(a)に示すように、被衝突物が定着物(車両、壁、電柱等)であると判別されて定着物用制御に移行すると(図7のステップ#12)、レーダ34及び車速センサ35からの検出結果に基づいて車両が被衝突物に衝突すると予測された時点において(t=0)、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力が開始される。ここで、衝突エネルギ吸収装置2の剛性は、永久磁石21により中程度の剛性に既に変更されているので、制御装置30からの出力により電磁石23に正方向又は逆方向の電流を供給し、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更する。
【0068】
衝突初期段階(図12(a)の0ms〜10ms)では、制御装置30からの出力により電磁石23に正方向の電流を供給して衝突エネルギ吸収装置2の剛性を高く変更する。そして、衝突中期段階(図12(a)の10ms〜30ms)では、制御装置30からの出力により電磁石23に逆方向の電流を供給して衝突エネルギ吸収装置2の剛性を段階的に低く変更し、衝突後期段階(図12(a)の30ms〜60ms)では、制御装置30からの出力により電磁石23に正方向の電流を供給し、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を高く変更する。
【0069】
なお、図12(a)における出力電流値Iは、図10(c)のグラフにおける車両の車体減速度に基づいて設定されたものである。
【0070】
図12(b)に示すように、被衝突物が歩行者であると判別されて歩行者用制御に移行すると(図7のステップ#13)、レーダ34及び車速センサ35からの検出結果に基づいて車両が被衝突物に衝突すると予測された時点において(t=0)、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力が開始される。ここで、衝突エネルギ吸収装置2の剛性は、永久磁石21により中程度の剛性に既に変更されているので、制御装置30からの出力により電磁石23に正方向又は逆方向の電流を供給し、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更する。
【0071】
衝突初期段階(図12(b)の0ms〜10ms)では、制御装置30からの出力により電磁石23に正方向の電流を供給して衝突エネルギ吸収装置2の剛性を高く変更する。そして、衝突中期段階(図12(a)の10ms〜)以降では、制御装置30からの出力により電磁石23に逆方向の電流を供給して衝突エネルギ吸収装置2の剛性を段階的に低く変更する。
【0072】
図12(c)に示すように、被衝突物が非定着物(放置自転車等)であると判別されて非定着物用制御に移行すると(図7のステップ#14)、レーダ34及び車速センサ35からの検出結果に基づいて車両が被衝突物に衝突すると予測された時点において(t=0)、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力が開始される。ここで、衝突エネルギ吸収装置2の剛性は、永久磁石21により中程度の剛性に既に変更されているので、制御装置30からの出力により電磁石23に正方向又は逆方向の電流を供給し、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更する。
【0073】
衝突初期段階(図12(c)の0ms〜10ms)では、制御装置30からの出力により電磁石23に正方向の電流を供給して衝突エネルギ吸収装置2の剛性を高く変更する。そして、衝突中期段階(図12(c)の10ms〜30ms)では、制御装置30からの出力により電磁石23に逆方向の電流を供給して衝突エネルギ吸収装置2の剛性を段階的に低く変更し、衝突後期段階(図12(c)の30ms〜60ms)では、制御装置30からの出力により電磁石23への電流の供給を断って、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を中程度に変更する。
【0074】
ここで、非定着物用制御における出力電流値Iの大きさは、定着物用制御における出力電流値Iの大きさより小さく設定されている。これは、被衝突物が非定着物である場合には、被衝突物が定着物である場合に比べ、衝突時において車両に作用する衝突エネルギが小さいからである。
【0075】
なお、図12において示した出力電流値Iは一例として示したものであり、出力電流値Iの大きさや出力電流値Iを変更するタイミング等として異なるものを採用してもよい。また、出力電流値Iの出力波形として異なるものを採用してもよく、例えば図12に示すような矩形状の出力波形ではなく、曲線状に滑らかに湾曲した出力波形になるように出力電流値Iを変更してもよい。
【0076】
また、車両が被衝突物に衝突すると予測された時点において(t=0)、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力が開始されるように構成した例を示したが、車両が被衝突物に衝突すると判断された後で、車両が被衝突物に衝突すると予測される時点より前に、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を、予め衝突初期段階における剛性に変更するように構成してもよい。これにより、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を迅速に変更でき、車両が被衝突物に衝突すると予測される時点において確実に衝突エネルギ吸収装置2の剛性を、衝突初期段階における剛性に変更できる。
【0077】
[衝突エネルギ吸収装置における制御の効果]
図13に基づいて衝突エネルギ吸収装置における制御の効果について説明する。図13(a)は、定着物を想定した壁に車両を衝突させた場合の車体減速度(m/s)の変化状況の一例を示すグラフであり、図13(a)の実線は、定着物用制御により衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更した場合の車体減速度の変化状況を示す曲線であり、図13(a)の点線は、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を比較的高い所定の剛性に設定した場合の車体減速度の変化状況を示す曲線である。図13(b)は、歩行者を想定した被衝突物に車両を衝突させた場合の被衝突物の変位(mm)と被衝突物に作用する加速度(m/s)との関係の一例を示すグラフである。図13(b)の実線は、歩行者用制御により衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更した場合における被衝突物の変位に対する被衝突物に作用する加速度の変化を示す曲線であり、図13(b)の点線は、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を比較的低い所定の剛性に設定した場合における被衝突物の変位に対する被衝突物に作用する加速度の変化を示す曲線である。
【0078】
図13(a)に示すように、定着物用制御が実施されて、図12(a)に示したグラフに基づいて衝突エネルギ吸収装置2の剛性が時間的に変更されると、図13(a)の実線で示すように車体減速度が変化する。これにより、定着物への衝突時の車体減速度を、図10(c)で示したグラフにおける車体減速度に近づけることができる。その結果、定着物への衝突時において乗員に作用する胸部減速度を効果的に低減できる。
【0079】
図13(b)に示すように、歩行者用制御が実施されて、図12(b)に示したグラフに基づいて衝突エネルギ吸収装置2の剛性が時間的に変更されると、図13(b)の実線で示すように被衝突物に作用する加速度が変化する。これにより、被衝突物に作用する加速度を衝突初期段階に上昇させて、被衝突物に作用する加速度を所定加速度L1以下に低く抑えながら、衝突中期段階から衝突後期段階における被衝突物に作用する加速度を平均化することができる。その結果、衝突により被衝突物としての歩行者に作用する衝撃を軽減でき、歩行者の傷害値を効果的に軽減できる。
【0080】
また、図13(b)に示すように、被衝突物に作用する加速度を衝突初期段階に上昇させることで、被衝突物がバンパー4へ衝突してから、被衝突物に作用する加速度がゼロになるまでの被衝突物の変位Saを短く抑えることができる。これにより、例えば軽車両等において、フロントオーバーハング等が制限され、車両前部の空間を確保し難く、車両側の変位を長く確保することが困難な場合において、短い変位で歩行者の傷害値を効果的に軽減できる。
【0081】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、車両が被衝突物に衝突すると予測された時点から衝突エネルギ吸収装置2の剛性を時間的に変更した例を示したが、例えば図14に示すように、車両が被衝突物に衝突すると予測された時点から衝突エネルギ吸収装置2の剛性を所定の剛性に変更するように構成してもよい。図14は、定着物用制御(図14(a))、歩行者用制御(図14(b))、及び非定着物用制御(図14(c))において衝突エネルギ吸収装置2の電磁石23に出力する出力電流値Iの一例を示すグラフであり、横軸が時間を示し、縦軸が出力電流値Iの大きさを示す。
【0082】
図14(a)に示すように、被衝突物が定着物であると判別されて定着物用制御に移行すると(図7のステップ#12)、レーダ34及び車速センサ35からの検出結果に基づいて車両が被衝突物に衝突すると予測された時点において(t=0)、制御装置30からの出力が開始され、電磁石23に正方向の所定の電流を供給して衝突エネルギ吸収装置2の剛性を所定の剛性に高く変更する。
【0083】
図14(b)に示すように、被衝突物が歩行者であると判別されて歩行者用制御に移行すると(図7のステップ#13)、レーダ34及び車速センサ35からの検出結果に基づいて車両が被衝突物に衝突すると予測された時点において(t=0)、制御装置30からの出力が開始され、電磁石23に逆方向の所定の電流を供給して衝突エネルギ吸収装置2の剛性を所定の剛性に低く変更する。
【0084】
図14(c)に示すように、被衝突物が非定着物であると判別されて非定着物用制御に移行すると(図7のステップ#14)、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37に出力されず、衝突エネルギ吸収装置2の剛性が中程度のままで維持される。
【0085】
なお、図14において示した出力電流値Iは一例として示したものであり、出力電流値Iの大きさや出力電流値Iを変更するタイミング等として異なるものを採用してもよい。また、非定着物用制御に移行した場合(図14(c))において、制御装置30からの出力により電磁石23に正方向又は逆方向の所定の電流を供給して衝突エネルギ吸収装置2の剛性を所定の剛性に高く又は低く変更するように構成してもよい。
【0086】
また、車両が被衝突物に衝突すると予測された時点において(t=0)、制御装置30からの出力が開始されるように構成した例を示したが、車両が被衝突物に衝突すると判断された後で、車両が被衝突物に衝突すると予測される時点より前に、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を、予め所定の剛性に変更するように構成してもよい。これにより、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を迅速に変更でき、車両が被衝突物に衝突すると予測される時点において確実に衝突エネルギ吸収装置2の剛性を、所定の剛性に変更できる。
【0087】
また、図示しないが、前述の[発明を実施するための最良の形態]における衝突エネルギ吸収装置2の剛性を時間的に変更する制御と、この実施形態における衝突エネルギ吸収装置2の剛性を所定の剛性に変更する制御とを組み合わせてもよい。具体的には、例えば、被衝突物の種類によって、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を時間的に変更する制御と、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を所定の剛性に変更する制御とを選択的に実施するように構成してもよい。
【0088】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、永久磁石21をU字形の永久磁石で構成した例を示したが、異なる形状や数量の永久磁石を備えて衝突エネルギ吸収装置2を構成してもよく、具体的には、例えば図15に示すように、板状の第1及び第2永久磁石22R,22Lを備えて衝突エネルギ吸収装置2を構成してもよい。図15は、衝突エネルギ吸収装置2の縦断背面図である。
【0089】
図15に示すように、固定側部材11の右側の外面側には、板状の第1永久磁石22Rが固定されており、固定側部材11の左側の外面側には、板状の第2永久磁石22Lが固定されている。第1永久磁石22Rは、N極が着磁された面が固定側部材11側に位置し、S極が着磁された面が横外側に位置するように配設されており、第2永久磁石22Lは、S極が着磁された面が固定側部材11側に位置し、N極が着磁された面が横外側に位置するように配設されている。
【0090】
第1永久磁石22Rと第2永久磁石22Lとに亘って電磁石23が装備されている。電磁石23は、背面視での縦断面形状が下向きに開口したコ字状の電磁体24と、この電磁体24の上部に設けられたコイル部材25とを備えて構成されている。電磁体24の右側下端部24Rは、第1永久磁石22Rの外面側(S極側)に固定されており、電磁体24の左側下端部24Lは、第2永久磁石22Lの外面側(N極側)に固定されている。
【0091】
図15(a)に示すように、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力により電磁石23に図15(a)の黒矢印で示す正方向の電流を供給し、電磁体24の右側下端部24RがS極に励磁され、電磁体24の左側下端部24LがN極に励磁されると、第1及び第2永久磁石22R,22Lの間の磁力が電磁石23の力により強められて、シリンダー室S1内のMR流体の粘度が高く変更される。
【0092】
図15(b)に示すように、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力により電磁石23に図15(b)の白矢印で示す逆方向の電流を供給し、電磁体24の右側下端部24RがN極に励磁され、電磁体24の左側下端部24LがS極に励磁されると、第1及び第2永久磁石22R,22Lの間の磁力が電磁石23の磁力により弱められて、シリンダー室S1内のMR流体の粘度が低く変更される。
【0093】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]においては、スライド部材15におけるスライド部材本体16にピストン部16aを備えて、衝突エネルギ吸収装置2を構成した例を示したが、図16に示すような衝突エネルギ吸収装置2を採用してもよい。図16は、衝突エネルギ吸収装置2付近の横断平面図である。
【0094】
図16に示すように、スライド部材15は、スライド部材本体16と、フランジ部17とを備えて構成されている。スライド部材本体16には、前述の[発明を実施するための最良の形態]におけるピストン部16aが設けられておらず、スライド部材本体16が案内部材13に外嵌され、軸受部材18を介して装着されている。
【0095】
案内部材13の外周面と外側筒状部材14の内周面との間で、軸受部材18の後側にMRを封入するシリンダー室S1が形成されている。シリンダー室S1は、絞り弁(図示せず)が設けられた連通流路(図示せず)を介して補助室(図示せず)と連通されており、衝突エネルギ吸収装置2の収縮によって、シリンダー室S1のMR流体の一部が連通流路を通って補助室に移動し、シリンダー室S1の容積変化が許容される。なお、MR流体の粘度が変更されることによりMR流体の容積が変更され、このMR流体の容積の変更によりシリンダー室S1内の容積変化が許容される場合には、上述した連通流路及び補助室を省略してもよい。
【0096】
シリンダー室S1にMR流体を注入した状態で、固定側部材11の案内部材13に軸受部材18を介してスライド部材15を外嵌することで、シリンダー室S1にMR流体を封入する。
【0097】
上記のように衝突エネルギ吸収装置2を構成することで、例えば永久磁石21の磁力が大きく、MR流体の粘度によりスライド部材15の移動を十分に阻止できるような場合において、衝突エネルギ吸収装置2の構造を簡素化できる。また、永久磁石21及び電磁石23とスライド部材本体16を近い位置に配設することができるので、永久磁石21及び電磁石23の磁力によりスライド部材15の移動を効果的に阻止できる。
【0098】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]及び[発明の実施の第3別形態]においては、永久磁石21を備えて、衝突エネルギ吸収装置2を構成した例を示したが、図17に示すような衝突エネルギ吸収装置2を採用してもよい。図17は、衝突エネルギ吸収装置2の縦断背面図である。
【0099】
図17に示すように、永久磁石21は設けられておらず、外側筒状部材14の右側面と、外側筒状部材14の左側面とに亘って、電磁石23が装備されている。電磁石23は、背面視での縦断面形状が下向きに開口したコ字状の電磁体24と、この電磁体24の上部に設けられたコイル部材25とを備えて構成されている。
【0100】
制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力を断つと、電磁石23の磁力が無くなって、シリンダー室S1内のMR流体の粘度が低く変更される。一方、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力により電磁石23に電流を出力し、電磁体24の右側及び左側下部24R,24Lの一方がN極に励磁され、電磁体24の右側及び左側下部24R,24Lの他方がS極に励磁されると、電磁石23の磁力によりMR流体に磁場が与えられて、シリンダー室S1内のMR流体の粘度が高く変更される。
【0101】
ここで、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力により、電磁石23に供給する電流の出力電流値Iを大きく又は小さく変更することにより、電磁石23の磁力を大きく又は小さく変更調節することができ、シリンダー室S1内のMR流体の粘度を細かく変更調節できる。その結果、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を細かく変更調節できる。
【0102】
車両が被衝突物に衝突すると判断されると、被衝突物の種類が判別される。被衝突物が定着物であると判別される場合には、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37に出力して、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を高く変更する。被衝突物が非定着物であると判別される場合には、被衝突物が定着物と判別される場合よりも低い出力電流値Iになるように、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37に出力して、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を中程度に変更する。
【0103】
被衝突物が歩行者であると判別される場合には、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37への出力を断って、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を低く変更する。なお、車両が被衝突物に衝突すると判断されない場合には、制御装置30から第1及び第2コントローラ36,37に出力して、衝突エネルギ吸収装置2の剛性が高く変更される。
【0104】
また、図示しないが、永久磁石21と電磁石23との組み合わせによる構成、又は、電磁石23のみの構成に代えて、異なる構成によりシリンダー室S1内のMR流体の粘度を電気的又は磁気的に変更するように構成してもよい。具体的には、例えば永久磁石21又は電磁石23をシリンダー室S1に近づけたり離したりすることで(シリンダー室S1との距離を変更することで)、シリンダー室S1内のMR流体の粘度を変更するように構成してもよい。
【0105】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]及び[発明の実施の第4別形態]においては、粘性流体としてMR流体を採用した例を示したが、粘度を電気的又は磁気的に変更できる粘性流体であれば、異なる粘性流体を採用してもよく、例えば電圧をかけると粘度が変更されるER流体(Electro Rheological Fluid(電気粘性流体))を採用してもよい。ここで、例えばER流体を採用した場合の衝突エネルギ吸収装置2を図18に基づいて説明する。図18は、衝突エネルギ吸収装置2の概略断面図である。
【0106】
図18に示すように、外側筒状部材14の右側の内面には、第1電極体27Rが固定され、外側筒状部材14の左側の内面には、第1電極体27Rと対向するように第2電極体27Lが固定されており、シリンダー室S1内にER流体が封入されて、衝突エネルギ吸収装置2が構成されている。ここで、案内部材13には、左右方向に連通する複数の連通口13aが形成されており、これにより、シリンダー室S1内のER流体に効率よく電圧を付加できる。なお、連通口13aの形状や数量として異なるものを採用してもよい。また、外側筒状部材14の上側及び下側の内面に、第1及び第2電極体27R,27Lを配設してもよい。
【0107】
第1及び第2電極体27R,27Lは、コントローラ28を介して制御装置30に接続されており、制御装置30からコントローラ28への出力により、第1電極体27Rに正(又は負)の電圧(例えば直流電圧)を供給し、第2電極体27Lに負(又は正)の電圧(例えば直流電圧)を供給する。第1及び第2電極体27R,27Lに供給された正及び負の電圧により、ER流体に電圧が付加されて、ER流体の粘度が高く変更される。
【0108】
制御装置30からコントローラ28への出力により、第1及び第2電極体27R,27Lに電圧を供給し、又は、第1及び第2電極体27R,27Lへの電圧の供給を遮断することで、ER流体の粘度を変更することができ、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更できる。また、制御装置30からコントローラ28への出力により、第1及び第2電極体27R,27Lへ供給する電圧の電圧値を変更することで、ER流体の粘度を細かく変更することができ、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を細かく変更できる。
【0109】
[発明の実施の第6別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]及び[発明の実施の第5別形態]においては、赤外線センサ33の検出結果に基づいて、被衝突物が歩行者か否か判別するように、判別手段40を構成した例を示したが、被衝突物が歩行者であることを判別するための検出手段として異なる検出手段を採用してもよい。具体的には、例えば車載カメラ31により撮影した映像及び画像処理装置32により処理された処理結果に基づいて被衝突物が歩行者か否か判別するように構成してもよく、超音波を検出媒体とした非接触の超音波センサ(図示せず)の検出結果に基づいて被衝突物が歩行者か否か判別するように構成してもよい。更には、複数の検出手段の組み合わせを採用してもよい。
【0110】
また、車載カメラ31により撮影した映像及び画像処理装置32により処理された処理結果に基づいて被衝突物が定着物又は非定着物か否か判別するように、判別手段を構成した例を示したが、この場合においても同様に、被衝突物が定着物又は非定着物であること判別するための検出手段として異なる検出手段を採用してもよい。具体的には、例えば赤外線センサ33の検出結果に基づいて被衝突物が定着物、又は非定着物か否か判別するように構成してもよく、超音波を検出媒体とした非接触の超音波センサ(図示せず)の検出結果に基づいて被衝突物が定着物又は非定着物か否か判別するように構成してもよい。更には、複数の検出手段の組み合わせを採用してもよい。
【0111】
また、被衝突物が歩行者であることを判別するための検出手段と、被衝突物が定着物又は非定着物であること判別するための検出手段とを、別々の検出手段で構成した例を示したが、単一の検出手段で被衝突物が定着物、歩行者又は非定着物であることを判別するように構成してもよく、それぞれ別々の検出手段で被衝突物が定着物、歩行者又は非定着物であること判別するように構成してもよい。
【0112】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]及び[発明の実施の第5別形態]においては、右及び左の電磁石23を、第1及び第2コントローラ36,37を介して制御装置30に接続し、右及び左の電磁石23に供給する出力電流値I及び電流の方向を任意に変更調節できるように構成した例を示したが、例えば右及び左の電磁石23をリレー回路等(図示せず)を介して制御装置30に接続し、ON−OFF制御するように構成してもよい。
【0113】
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を永久磁石21により予め中程度の剛性に設定しておいて、車両が被衝突物に衝突すると判断されると、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を高く又は低く変更するように構成し、[発明の実施の第4別形態]においては、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を電磁石23により予め高い剛性に設定しておいて、車両が被衝突物に衝突すると判断されると、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を低く変更するように構成した例を示したが、車両が被衝突物に衝突すると判断される以前の衝突エネルギ吸収装置2の剛性を異なる剛性に設定してもよい。
【0114】
具体的には、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を予め高い剛性に設定しておいて、車両が被衝突物に衝突すると判断されると、被衝突物の種類によって衝突エネルギ吸収装置2の剛性が低くなる方向にのみ変更するように構成してもよく、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を予め低い剛性に設定しておいて、車両が被衝突物に衝突すると判断されると、被衝突物の種類によって衝突エネルギ吸収装置2の剛性が高くなる方向にのみ変更するように構成してもよい。また、定着物、歩行者、又は非定着物のいずれかに衝突した場合に適した剛性に、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を予め設定しておいて、その予め設定した剛性の被衝突物以外の場合には、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更するように構成してもよい。
【0115】
[発明の実施の第7別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]及び[発明の実施の第6別形態]においては、衝突エネルギ吸収装置2をエンジンルームRの後壁1に装備した例を示したが、例えば図19及び図20に示すように、サイドメンバ6とバンパー4との間に衝突エネルギ吸収装置2を装備してもよい。図19は、車両の全体側面図であり、図20は、車両前部の縦断側面図である。
【0116】
図19及び図20に示すように、車両の前部下部の右側及び左側(エンジンルームRの右側及び左側)に、右及び左のサイドメンバ6が車体の前後方向に配置されており、右及び左のサイドメンバ6は、プレス成形及び溶接成形により角パイプ状に構成されている。エンジンルームRの前後中央部で右及び左のサイドメンバ6の間には、車両の駆動源となるエンジンEが搭載されている。
【0117】
右及び左のサイドメンバ6の前部には、縦平板状の右及び左の取り付け板6aが固着されており、この取り付け板6aの前面側に右及び左の衝突エネルギ吸収装置2が締め付け固定されている。
【0118】
バンパーメンバ3の前側には、バンパー4が配設されており、例えば前方から被衝突物がバンパー4に衝突すると、被衝突物からの外的な負荷がバンパー4に作用し、バンパー4の変形等により、被衝突物からの外的な負荷がバンパーメンバ3を後方に押す力として作用して、被衝突物からの外的な負荷を右及び左の衝突エネルギ吸収装置2により吸収できるように構成されている。
【0119】
右のサイドメンバ6の取り付け板6aの下部と、左のサイドメンバ6の取り付け板6aの下部とに亘って、左右に長い補助バンパー5が固定されている。補助バンパー5は、右及び左の取り付け板6aの前面側に固定された右及び左のブラケット5aと、右及び左のブラケット5aに亘って設けられた補助バンパー本体5bとを備えて構成されており、その前端がバンパーメンバ3の前端より前に位置するように配設されている。これにより、例えば前方からの歩行者が車両に衝突した場合において、補助バンパー5が歩行者の脚部を払うように作用して、衝突時における歩行者の脚部への衝撃を軽減できる。
【0120】
なお、図20における補助バンパー5を衝突エネルギ吸収装置2と同様の構造(剛性を変更できる構造)に構成し、被衝突物の種類や衝突状況に応じて、衝突エネルギ吸収装置2及び補助バンパー5の双方の剛性を細かく変更するように構成してもよい。また、衝突エネルギ吸収装置2を廃止し、図20における補助バンパー5のみを衝突エネルギ吸収装置2と同様の構造(剛性を変更できる構造)に構成してもよい。
【0121】
[発明の実施の第8別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]、[発明の実施の第6別形態]及び[発明の実施の第7別形態]においては、粘性流体を封入した伸縮体10により、衝突エネルギ吸収装置2を構成した例を示したが、衝突エネルギ吸収装置2の剛性を変更可能な構成であれば、機械式の伸縮体、電気式の伸縮体等(図示せず)、異なる構成を採用してもよい。具体的には、例えば機械式の伸縮体としては、油圧式ダンパー(図示せず)を採用し、油圧式ダンパーのオリフィス径を可変にすることで、油圧式ダンパーによる減衰力を変更調節し、衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更するように構成してもよい。
【0122】
[発明の実施の第9別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]、[発明の実施の第6別形態]、[発明の実施の第7別形態]及び[発明の実施の第8別形態]においては、前方からの衝突を想定して衝突エネルギ吸収装置2を構成した例を示したが、側方又は後方からの衝突を想定して、車両の側部又は後部に衝突エネルギ吸収装置2と同様の構造(剛性を変更できる構造)の衝突エネルギ吸収装置(図示せず)を装備してもよい。
【0123】
[発明の実施の第10別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]、[発明の実施の第6別形態]、[発明の実施の第7別形態]、[発明の実施の第8別形態]、及び[発明の実施の第9別形態]においては、車両として軽車両を例に示したが、異なる車両においても同様に適用でき、例えばセダンタイプの車両、ワンボックスタイプの車両に限らず、トラック等においても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】車両の全体側面図
【図2】車両前部の縦断側面図
【図3】衝突エネルギ吸収装置付近の横断平面図
【図4】図2のIV−IVの位置での衝突エネルギ吸収装置の縦断背面図
【図5】電磁石による磁場の変更状況を説明する概略縦断背面図
【図6】制御装置のブロック図
【図7】衝突エネルギ吸収装置における制御の一例を示すフローチャート
【図8】ダミー人形の胸部減速度を算出する場合の力学モデル
【図9】単位インパルス応答例を示すグラフ
【図10】ブロック波形化した車体減速度を示す図
【図11】胸部減速度の計算値を示す図
【図12】電磁石に供給する出力電流値の一例を示すグラフ
【図13】衝突エネルギ吸収装置における制御の効果の一例を説明するグラフ
【図14】発明の実施の第1別形態での電磁石に供給する出力電流値の一例を示すグラフ
【図15】発明の実施の第2別形態での衝突エネルギ吸収装置の縦断背面図
【図16】発明の実施の第3別形態での衝突エネルギ吸収装置の横断平面図
【図17】発明の実施の第4別形態での衝突エネルギ吸収装置の縦断背面図
【図18】発明の実施の第5別形態での衝突エネルギ吸収装置の概略断面図
【図19】発明の実施の第7別形態での車両の全体側面図
【図20】発明の実施の第7別形態での車両前部の縦断側面図
【符号の説明】
【0125】
2 衝突エネルギ吸収装置
4 バンパー
10 伸縮体
40 判別手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に設けられた衝突エネルギ吸収装置と、
被衝突物の種類を判別する判別手段と、を備え、
前記判別手段による判別結果に基づいて前記衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更する車両。
【請求項2】
前記衝突エネルギ吸収装置の剛性を、車両が被衝突物に衝突した時点又は車両が被衝突物に衝突すると予測される時点から時間的に変更する請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記衝突エネルギ吸収装置に伸縮体を備えて、前記伸縮体に電気的又は磁気的に粘度を変更可能な粘性流体を封入し、
前記粘性流体の粘度を電気的又は磁気的に変更することで、前記衝突エネルギ吸収装置の剛性を変更する請求項1又は2記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−137489(P2009−137489A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317077(P2007−317077)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】