説明

車両

【課題】車両において、射撃時における車両の揺動を抑制しつつ、走行時には必要な剛性を確保すること。
【解決手段】車両のフレームは、複数の構造部材CB、CBを接続して構成される。構造部材CB、CB同士が接続される構造部材接続部Jには、フレーム剛性調整手段20が設けられる。フレーム剛性調整手段20を構成する固定部材21は、構造部材接続部Jを含んで構造部材CB同士を跨ぐように設けられ、ボルト22によってそれぞれの構造部材CBに締結される。また、構造部材接続部Jにおける構造部材CBの間には、衝撃荷重緩和手段23が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火砲を搭載する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
火砲を搭載し、自走できる車両が知られている。例えば、特許文献1には、ホイールベース間の車体フレームに砲架を取り付ける砲座部を形成した車両が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−36949号公報(0009、0010、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された車両において、火砲の発射時における反力は、車両を構成するフレームに取り付けられる駐鋤に伝達される。そして、前記駐鋤が地面によって支持されることにより、前記反力は、駐鋤と地面との間で受け止められる。このように、車両を構成するフレームの剛性を高くして、駐鋤や車輪に前記反力を伝達する構造とすると、駐鋤や車輪に前記反力が直接伝播し、車両の揺動が増加する。
【0005】
これによって、火砲の射撃能力が低下するおそれがあるとともに、フレームの剛性を高くすると、フレームの補強等が必要になるので、前記フレームの質量増加を招く。一方、火砲の射撃による反力を伝播できる程度までフレームの剛性を高めると、車両の走行時には過剰な剛性となることが多く、無駄が発生する。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両において、射撃時における車両の揺動を抑制しつつ、走行時には必要な剛性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両は、火砲を搭載して自走する車両であり、複数の構造部材から構成される前記車両のフレームと、前記構造部材同士を接続する構造部材接続部と、前記構造部材接続部に設けられて、前記車両の走行時には前記構造部材同士を固定し、前記火砲の射撃時には前記構造部材同士の固定を解除するフレーム剛性調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成により、車両の走行時にはフレームの剛性を確保できる。また、火砲の射撃時には、フレームの剛性を走行時よりも低くして、射撃反力に起因する衝撃荷重をフレームで緩和することにより、車両の揺動を抑制する。これによって、射撃能力の低下を抑制できる。
【0008】
本発明の好ましい態様としては、前記車両において、前記構造部材接続部で接続される前記構造部材同士の間に、前記火砲の射撃時に発生する衝撃荷重を緩和する衝撃荷重緩和手段を設けることが望ましい。衝撃荷重緩和手段を設けることにより、射撃反力によって発生する衝撃荷重をより減衰させて緩和できるので、前記衝撃荷重をより鈍らせて駐鋤や車輪に伝播できる。その結果、車両の揺動をより効果的に抑制できる。
【0009】
本発明の好ましい態様としては、前記車両において、前記フレーム剛性調整手段は、前記構造部材接続部の鉛直方向反対側と鉛直方向側との少なくとも一方に配置されるとともに、前記構造部材接続部を含んで前記構造部材同士に渡される固定部材と、前記固定部材を前記構造部材の少なくとも一方に締結する締結手段と、を有することが望ましい。これによって、車両の走行時と火砲の射撃時とで、車両のフレームの剛性を変更できる。
【0010】
本発明の好ましい態様としては、前記車両において、前記構造部材接続部において、ピンによって一対の前記構造部材同士が接続され、かつ、前記構造部材接続部における一対の前記構造部材は、鉛直方向と直交する方向を中心として回転できるように前記ピンによって接続されることが望ましい。これによって、車両のフレームを構成する構造体の軸力を確実に受けることができるので、フレームの過度の動きや振動等を抑制できる。
【0011】
本発明の好ましい態様としては、前記車両において、前記構造部材接続部には、一対の前記構造部材の間に、互いにピン結合される中間構造部材が設けられ、一対の前記構造部材は、それぞれ前記中間構造部材とピン結合されることが望ましい。これによって、車両のフレームの変形可能な範囲が大きくなるので、射撃反力によって発生する衝撃荷重を緩和する機能がより大きくなり、射撃能力の低下をより効果的に抑制できる。
【0012】
本発明の好ましい態様としては、前記車両において、前記フレーム剛性調整手段は、前記構造部材接続部の鉛直方向反対側と鉛直方向側との少なくとも一方に進出し、又は待避する可動部材と、前記車両の走行時には前記構造部材接続部を含んで前記構造部材同士に前記可動部材を渡し、前記火砲の射撃時には、前記構造部材接続部から前記可動部材を待避させる可動部材駆動手段と、を有することが望ましい。これにより、車両の走行時と火砲の射撃時とで、車両のフレームの剛性を変更する際の作業に要する労力を軽減できる。
【0013】
本発明の好ましい態様としては、前記車両において、前記構造部材接続部は、前記構造部材接続部における一方の前記構造部材の内部に他方の前記構造部材が配置される構造であり、前記フレーム剛性調整手段は、他方の前記構造部材を一方の前記構造部材に押し付けることが望ましい。これにより、車両の走行時と火砲の射撃時とで、車両のフレームの剛性を変更する際の作業に要する労力を軽減できる。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、前記車両において、一方の前記構造部材と他方の前記構造部材との間には、一方の前記構造部材から他方の前記構造部材を引き抜く方向と平行な方向の動きを拘束できる構造部材拘束手段を備えることが望ましい。これによって、車両のフレームを構成する構造体の軸力を確実に受けることができるので、フレームの過度の動きや振動等を抑制できる。
【0015】
本発明の好ましい態様としては、前記車両において、前記フレーム剛性調整手段は、複数の前記構造部材で形成される多角形の対角線をつなぐ構造部材接続部材と、それぞれの前記構造部材接続部材に設けられ、前記構造部材接続部材に張力を発生させるとともに、前記構造部材接続部材に発生させた張力を解除できる張力発生/解除手段を有し、前記多角形を構成する少なくとも一つの前記構造部材が前記構造部材接続部を有することが望ましい。これにより、車両の走行時と火砲の射撃時とで、車両のフレームの剛性を変更する際の作業に要する労力を軽減できる。
【0016】
本発明の好ましい態様としては、前記車両において、前記フレームは、前記車両の前後方向に向かう第1構造体と、前記第1構造体に直交する第2構造体とを連結して構成されており、前記構造部材接続部及びフレーム剛性調整手段は、前記第1構造体と前記第2構造体とのうち少なくとも一方に設けられることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、車両において、射撃時における車両の揺動を抑制しつつ、走行時には必要な剛性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の説明により本発明が限定されるものではない。また、下記の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1に係る車両の全体構成図である。図2、図3は、実施例1に係る車両の火砲が搭載される部分を示す平面図である。図4は、実施例1に係る車両の概略を示す平面図である。本実施例は、火砲を搭載して自走する車両において、車両のフレームを複数の構造部材から構成し、構造部材同士を接続する構造部材接続部に設けられて、車両の走行時には構造部材同士を固定し、火砲の射撃時には構造部材同士の固定を解除するフレーム剛性調整手段を備える点に特徴がある。
【0020】
以下において、車両(車両)1の前あるいは前方とは、車両1の運転台6が配置される側であり、車両1の後あるいは後方とは、運転台6が配置される側とは反対側をいう。車両1は、フレーム10と、フレーム10に搭載される火砲50と、前輪7Fと、後輪7Rとを備える。車両1は、後輪7Rが駆動輪となり、前輪7Fが操舵輪となる。前輪7Fは、前輪用懸架装置8Fを介してフレーム10に支持され、後輪7Rは、後輪用懸架装置8Rを介してフレーム10に支持される。なお、本実施例において、車両1は前輪が2輪、後輪が4輪の計6輪であるが、車輪の数及び配置はこれに限定されるものではない。
【0021】
火砲50は、砲身51と、砲身51を支持する砲架台53とで構成される。砲身51は、砲耳52を介して砲架台53に支持されている。そして、砲身51は、砲耳52を中心として揺動できるように構成される。これによって、砲身51の仰角θを変更できる。ここで、仰角θとは、砲身51の中心軸(以下砲身中心軸という)Xgと水平面HLとのなす角度のうち小さい方の角度をいう。水平面HLは、重力の作用方向(すなわち鉛直方向)と直交する面である。仰角θは、砲身51とターンテーブル55との間に設けられる仰角変更用油圧シリンダ(仰角変更手段)54によって変更される。
【0022】
砲架台53は、ターンテーブル55に搭載される。また、ターンテーブル55は、砲搭載部材である砲座5に搭載される。砲座5は、フレーム10に搭載される。ターンテーブル55は、砲旋回手段である旋回モータ56によって、砲座5の砲座面と直交する砲回転軸Zr(図2、図3参照)を中心としてR方向に旋回する。すなわち、火砲50は、車両1に対して旋回する。これによって、図3に示すように、火砲50は、車両1の前後方向LTと火砲50の砲身51とのなす角度(より具体的には前記角度のうち小さい方の角度)、すなわち、車両1の前後方向LTに対する砲身中心軸Xgの角度(火砲旋回角度)αが変更できる。ここで、火砲50を旋回させる旋回機構は、ターンテーブル55と旋回モータ56とで構成される。
【0023】
車両1の前後方向LTは、車両1の車両中心軸と平行な方向をいう。ここで、車両中心軸とは、車両1の車軸(図4に示す前輪7Fの車軸7FZあるいは後輪7Rの車軸7RZ、以下同様)と直交し、かつ車両1の重心を通る平面と、車両1が水平面に接地している場合において水平面と平行、かつ車両1の重心を通る平面と、が交差して生成される直線をいう。
【0024】
車両1の後方には、駐鋤(以下アウトリガーという)2が取り付けられる。アウトリガー2は、フレーム10にアーム3を介して取り付けられ、フレーム10に対して揺動できるように構成される。また、フレーム10とアウトリガー2との間には、駐鋤昇降手段として、アウトリガー昇降用油圧シリンダ4が設けられる。このように、アウトリガー2は、アーム3及びアウトリガー昇降用油圧シリンダ4を介して、フレーム10に取り付けられる。アーム3のフレーム取付部3F及びアウトリガー昇降用油圧シリンダ4のフレーム取付部4Fが、アウトリガー2がフレーム10へ取り付けられるアウトリガー取付部(駐鋤取付部)2Fとなる。
【0025】
アウトリガー昇降用油圧シリンダ4が縮むことによって、アウトリガー2が地面Bから離れて、車両1が走行可能な状態となる。一方、火砲50の射撃時には、図1に示すように、アウトリガー昇降用油圧シリンダ4が伸びることによりアウトリガー2が地面Bへ接触する。アウトリガー2が地面Bへ接触した状態で、アウトリガー昇降用油圧シリンダ4は伸縮しないようにロックされる。そして、火砲50によって飛翔体を発射した時の反力、すなわち射撃時の反力(すなわち射撃反力)Frは、アーム3及びアウトリガー昇降用油圧シリンダ4を介してアウトリガー2へ伝達されて、アウトリガー2と地面Bとの間で受け止められる。アーム3及びアウトリガー昇降用油圧シリンダ4は、射撃反力Frをアウトリガー2へ伝達する機能を有するので、これらを射撃反力伝達部材2Tという。
【0026】
図4に示すように、車両1のフレーム10は、車両1の前後方向に向かう2本の第1構造体(構造部材)11と、第1構造体11に直交する第2構造体(構造部材)12、13とを連結して構成される。本実施例において、2本の第1構造体11は、それぞれ車両1の前後方向と平行に配置される。なお、第1構造体11の本数は2本に限定されるものではない。第2構造体12は、車両1の後方における2本の第1構造体11の端部同士を連結し、もう一つの第2構造体13は、砲座5と運転台6との間における2本の第1構造体11同士を連結する。
【0027】
仰角θが小さい場合、すなわち、火砲50の砲身51が水平に近い状態で射撃をする場合、射撃反力Frは、まずフレーム10が受けた後、アウトリガー取付部2F、射撃反力伝達部材2Tを介してアウトリガー2へ伝達される。これによって、射撃反力Frをアウトリガー2が受ける結果、車両1にはアウトリガー2を中心としたモーメントが発生し、射撃時には、車両1の前方、すなわち運転台6側が浮上する。その後、浮上した車両1の運転台6側が落下し、主として前輪用懸架装置8Fによって揺動する。
【0028】
仰角θが大きい場合、すなわち、火砲50の砲身51が垂直に近い状態で射撃をする場合、射撃反力Frは、まずフレーム10が受けた後、前輪用懸架装置8F及び後輪用懸架装置8Rを介して前輪7F及び後輪7Rへ伝達されるとともに、アウトリガー取付部2F、射撃反力伝達部材2Tを介してアウトリガー2へ伝達される。これによって、仰角θが大きい場合、射撃反力Frによって車両1全体が地面Bへ押し付けられる。車両1が地面Bに押し付けられると前輪用懸架装置8F及び後輪用懸架装置8Rが縮み、射撃反力Frがなくなった後には、前輪用懸架装置8F及び後輪用懸架装置8Rが伸びる。この前輪用懸架装置8F及び後輪用懸架装置8Rの動きによって車両1が揺動する。
【0029】
上述したように、車両1のフレーム10で射撃反力Frを受ける構造の場合、フレーム10の剛性を高くする必要がある。このような構造では、射撃反力Frによる衝撃的な荷重が、アウトリガー2や前輪7F及び後輪7Rに直接入力されるため、火砲50の射撃時においては、上述したように、車両1が揺動する。
【0030】
本実施形態では、フレーム10を構成する第1構造体11、第2構造体12、13のうち少なくとも一つを分割して複数の構造部材とし、構造部材同士の接続部(構造部材接続部)Jにフレーム剛性調整手段20を設ける。そして、火砲50の射撃時においては、フレーム剛性調整手段20によって構造部材同士の固定を解除して、フレーム10の剛性を車両1の走行時よりも低下させる。これにより、射撃反力Frによって発生する衝撃荷重をフレーム10で鈍らせてアウトリガー2や前輪7F及び後輪7Rに伝播させる。その結果、火砲50の射撃時における車両1の揺動が抑制される。
【0031】
一方、車両1の走行時には、フレーム剛性調整手段20によって構造部材同士を固定して、フレーム10の剛性を火砲50の射撃時よりも増加させる。これにより、走行時に必要なフレーム10の剛性を確保できるので、車両1の走行性能を確保できる。なお、車両1自身の質量に起因する荷重は、フレーム10を介してアウトリガー2や前輪7F及び後輪7Rへ伝達されるので、車両1の転倒等は回避できる。次に、フレーム剛性調整手段20について説明する。
【0032】
図5は、実施例1に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。本実施例において、フレーム剛性調整手段20は、フレーム10を構成する第1構造体11、あるいは第2構造体13を複数の構造部材CBに分割し、構造部材CB同士を接続する部分、すなわち構造部材接続部Jに設けられる。本実施例では、図4に示すように、2本の第1構造体11及び第2構造体13をそれぞれ2個の構造部材CBとし、それぞれの第1構造体11の途中に形成される構造部材接続部J、及び第2構造体13の途中に形成される構造部材接続部Jにフレーム剛性調整手段20を設ける。
【0033】
本実施例において、フレーム剛性調整手段20は、固定部材21と、構造部材接続部Jにおける一対の構造部材CBの少なくとも一方に固定部材21を締結する締結手段であるボルト22とを有する。固定部材21は、構造部材接続部Jの鉛直方向(図5の矢印G方向)反対側に配置されるとともに、構造部材接続部Jを含んで構造部材CB同士(図5に示す例では分割された第1構造体11同士、あるいは分割された第2構造体13同士)に渡される。ボルト22は、固定部材21に設けられるボルト孔21Hに差し込まれ、構造部材CBに形成されるねじ孔HSにねじ込まれる。締結手段であるボルト22は、構造部材接続部Jにおける一対の構造部材CBの少なくとも一方に固定部材21を締結すればよく、両方の構造部材CBに固定部材21を固定してもよい。
【0034】
ボルト22を締め込み、固定部材21を構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CBに締結することにより、両方の構造部材CBが固定され、第1構造体11あるいは第2構造体13として一体化され、その結果としてフレーム10が一体化する。また、少なくとも一方のボルト22を緩めることにより、固定部材21と両方の構造部材CBとの固定が解除されて、フレーム10が一体化されたときよりもフレーム全体の剛性が低下する。
【0035】
なお、固定部材21は、鉛直方向と直交する方向における構造部材CBの側面に設けてもよい(以下同様)。この場合、構造部材接続部Jを含んで構造部材CB同士に固定部材21を渡すとともに、例えば、それぞれの構造部材CBに複数本のボルトで固定部材を取り付ける。前記ボルトを締め込むことにより、構造部材CBと固定部材21とが締結されて両方の構造部材CBが固定され、前記ボルトを緩めることにより、両方の構造部材CBの固定が解除される。
【0036】
本実施例においては、構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CBの間に、さらに衝撃荷重緩和手段23が配置される。衝撃荷重緩和手段23は、火砲50の射撃時に発生し、フレーム10に伝達される衝撃荷重を緩和する機能を有する。衝撃荷重緩和手段23を設けることにより、射撃反力Frによって発生する衝撃荷重をより減衰させて緩和できるので、前記衝撃荷重をより鈍らせてアウトリガー2や前輪7F及び後輪7Rに伝播できる。その結果、火砲50の射撃時における車両1の揺動をより確実に抑制されるので、衝撃荷重緩和手段23を設けるとより好ましい。なお、衝撃荷重緩和手段23は必ずしも設ける必要はなく、衝撃荷重緩和手段23を設けない場合であっても、射撃反力Frによる衝撃荷重の緩和効果は得られる。衝撃荷重緩和手段23を設けない場合、構造が簡単になる他、衝撃荷重緩和手段23の点検や交換も不要になるので、メンテナンスが容易になる。
【0037】
衝撃荷重緩和手段23は、例えば、構造部材CBを構成する材料よりも硬度の低い材料で構成され、例えば、ゴム、防振ゴム、シリコーンゴム、樹脂、ゲル(シリコンを主成分とするゲル状素材)、粘弾性高分子化合物、高密度発泡ウレタン、ハニカム等を用いる。また、例えば、構造部材CBを鋼材で構成する場合、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉛等の、構造部材CBよりも硬度の低い金属材料を用いることもできる。
【0038】
図1、図4に示す車両1の走行時には、ボルト22を締め込んで、固定部材21を構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CBに締結する。これによって、両方の構造部材CBが固定されるので、フレーム10が一体化し、車両1の走行時に必要なフレーム10の剛性が確保されるので、車両1は走行性能を発揮できる。
【0039】
火砲50の射撃時においては、少なくとも一方のボルト22を緩める(本実施例ではいずれか一方のボルトを緩める)ことにより、固定部材21と両方の構造部材CBとの固定を解除する。これによって、フレーム10が一体化された場合、すなわち、車両1の走行時よりもフレーム10全体の剛性が低下する。この状態で火砲50を射撃することにより、射撃反力Frによって発生する衝撃荷重はフレーム10で緩和され、鈍らせられてアウトリガー2や前輪7F及び後輪7Rに伝播される。その結果、火砲50の射撃時における車両1の揺動が抑制される。これによって、連続して火砲50を発射する際に火砲50から発射された飛翔体が目標に衝突する精度低下を抑制でき、また、車両1の揺動が抑制されるので、連続して火砲50を発射する際における射撃間隔が長くなることを抑制できる。すなわち、本実施例によれば、射撃能力の低下を効果的に抑制できる。
【実施例2】
【0040】
図6−1、図6−2は、実施例2に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。図6−2は、図6−1のA−A断面を示す。本実施例は、上述した実施例1と同様であるが、ピン24によって構造部材接続部Jにおける一対の構造部材CB1、CB2同士が接続され、かつ、構造部材接続部Jにおける一対の構造部材CB1、CB2は、鉛直方向と直交する方向を中心として回転できるようにピン24によって接続される点が異なる。他の構成は実施例1と同様であり、図1や図4に示す車両1のフレーム10に適用される。なお、実施例1で開示した構成は、適宜本実施例に対して適用できる。
【0041】
本実施例では、図6−1、図6−2に示すように、2本の第1構造体11、第2構造体13をそれぞれ2個の構造部材CB1、CB2とし、それぞれの第1構造体11の途中に形成される構造部材接続部J、第2構造体13の途中に形成される構造部材接続部Jにフレーム剛性調整手段20aを設ける。フレーム剛性調整手段20aは、固定部材21aと、構造部材接続部Jにおける一対の構造部材CB1、CB2の両方に固定部材21aを締結する締結手段であるボルト22及びナット22Nとを有する。なお、実施例1と同様に、構造部材CB2にボルト22がねじ込まれるボルト孔を設け、ボルト22で固定部材21と構造部材CB1とを締結してもよい(以下同様)。
【0042】
フレーム剛性調整手段20aは、構造部材接続部Jの鉛直方向(図6−1の矢印G方向)反対側に固定部材21aが配置される。そして、固定部材21aは、構造部材接続部Jを含んで構造部材同士CB1、CB2に渡される。本実施例では、一方の構造部材CB1に固定部材21aが設けられる。すなわち、固定部材21aは、構造部材CB1の一部として構成される。固定部材21aは、構造部材CB1に一体で成形されるが、固定部材21aと構造部材CB1とを別々に製造し、溶接等によって両者を一体としてもよい。
【0043】
一方の構造部材CB1と他方の構造部材CB2とは、ピン24によって接続される。ピン24は、鉛直方向(図6−1の矢印G方向)と直交して構造部材CB1と構造部材CB2とに取り付けられて、両者を接続する。固定部材21aには、他方の構造部材CB2と重なる部分に、ボルト22の貫通孔(固定部材側ボルト孔)21Haが形成される。また、他方の構造部材CB2には、固定部材側ボルト孔21Haと重なる部分に、ボルト22の貫通孔(構造部材側ボルト孔)HSaが形成される。ボルト22は、固定部材21aから固定部材側ボルト孔21Ha及び構造部材側ボルト孔HSaに差し込まれ、他方の構造用部材CB2側に配置されたナット22Nにねじ込まれる。これによって、固定部材21aは、構造部材接続部Jを跨いで他方の構造部材CB2に渡されて、締結手段であるボルト22とナット22Nとで他方の構造部材CB2に締結される。
【0044】
固定部材21aは一方の構造部材CB1と一体に構成されているので、ボルト22を締め込み、固定部材21aを構造部材接続部Jにおける他方の構造部材CB2に締結することにより、両方の構造部材CB1、CB2が固定され、図1に示す車両1のフレーム10が一体化する。また、ボルト22を緩めることにより、固定部材21aと他方の構造部材CB2との締結が緩められる結果、両方の構造部材CB1、CB2が固定されて、フレーム10が一体化されたときよりもフレーム全体の剛性が低下する。
【0045】
図1、図4に示す車両1の走行時には、ボルト22を締め込んで、固定部材21aを構造部材接続部Jにおける他方の構造部材CB2に締結する。これによって、両方の構造部材CB1、CB2が固定されるので、フレーム10が一体化して車両1の走行時に必要なフレーム10の剛性が確保される。火砲50の射撃時においては、ボルト22及びナット22Nによる締結を緩めることにより、固定部材21aと他方の構造部材CB2との固定を解除して、両方の構造用部材CB1、CB2の固定を解除する。これによって、フレーム10が一体化された場合よりもフレーム10全体の剛性が低下するので、射撃反力Frによって発生する衝撃荷重はフレーム10で緩和され、鈍らせられてアウトリガー2や前輪7F及び後輪7Rに伝播される。その結果、火砲50の射撃時における車両1の揺動が抑制される。これによって、射撃能力の低下を効果的に抑制できる。
【0046】
また、フレーム剛性調整手段20aは、ピン24によって一方の構造部材CB1と他方の構造部材CB2とを接続するので、構造部材CB1、CB2の軸方向の力(構造部材CB1、CB2で構成される第1構造体11や第2構造体13の長手方向の力)がピン24によって支持される。これによって、第1構造体11や第2構造体13に、これらの長手方向に向かう力が作用した場合には、第1構造体11や第2構造体13の長手方向の動きが抑制されるので、フレーム10の過度の動きや振動等を抑制できる。
【0047】
(第1変形例)
図7は、実施例2の第1変形例に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。本変形例は、上述した実施例2と同様であるが、第1固定部材21bを構造部材接続部Jの鉛直方向(図7の矢印G方向)反対側に配置し、これと対向して、第2固定部材25を構造部材接続部Jの鉛直方向(図7の矢印G方向)側に配置して、第2固定部材25によって構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CB1b、CB2bを接続する点が異なる。他の構成は実施例2と同様である。なお、実施例1、実施例2で開示した構成は、本変形例に対して適宜適用できる。
【0048】
フレーム剛性調整手段20bにおいて、第2固定部材25は、構造部材接続部Jの鉛直方向側に配置されるとともに、構造部材接続部Jを含んで構造部材CB1b、CB2b同士に渡される。締結手段であるボルト22及びナット22Nは、一方の構造部材CB1b、他方の構造部材CB2bに形成される構造部材側ボルト孔HSa、及び第2固定部材25の一方の構造部材CB1b側、他方の構造部材CB2b側に設けられるボルト孔25Hに差し込まれ、ナット22Nにねじ込まれる。本変形例では、一方の構造部材CB1bと他方の構造部材CB2bとの間に衝撃荷重緩和手段23が設けられる。
【0049】
ボルト22を締め込み、第2固定部材25を構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CB1b、CB2bに締結することにより、両方の構造部材CB1b、CB2bが固定され、第1構造体11あるいは第2構造体13として一体化され、その結果としてフレーム10が一体化する。また、少なくとも一方のボルト22を緩めることにより、第2固定部材25と両方の構造部材CB1b、CB2bとの固定が解除されて、フレーム10が一体化されたときよりもフレーム全体の剛性が低下する。
【0050】
図1、図4に示す車両1の走行時には、ボルト22を締め込んで、第2固定部材25を構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CB1b、CB2bに締結する。これによって、両方の構造部材CB1b、CB2bが固定されるので、フレーム10が一体化して車両1の走行時に必要なフレーム10の剛性が確保される。また、本変形例では、一方の構造部材CB1bと一体に構成された第1固定部材21bが、鉛直方向とは反対側に向かう他方の構造部材CB2bの動きを規制する。
【0051】
その結果、車両走行時におけるフレーム10の剛性をより確保しやすくなるので、車両1の走行安定性が向上する。また、第1固定部材21b及び第2固定部材25により、鉛直方向反対側と鉛直方向側との両方からの荷重を受けることができるので、仰角θによらず、射撃反力Frによって発生する衝撃荷重を緩和できる。本変形例の射撃時における他の作用、効果は、上述した実施例2と同様である。
【0052】
(第2変形例)
図8は、実施例2の第2変形例に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。本変形例は、上述した実施例2の第1変形例と同様であるが、構造部材接続部Jにおける一方の構造部材CB1bと他方の構造部材CB2bとの間に中間構造部材CB3を配置し、ピン24を介して一方の構造部材CB1bと他方の構造部材CB2bと中間構造部材CB3とを接続するとともに、一方の構造部材CB1bと他方の構造部材CB2bとの間に、第2固定部材25を構造部材接続部Jの鉛直方向(図8の矢印G方向)側に配置して、第2固定部材25によって構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CB1b、CB2bを接続する点が異なる。他の構成は実施例2の第1変形例と同様である。なお、実施例1、実施例2及びその第1変形例で開示した構成は、本変形例に対して適宜適用できる。
【0053】
フレーム剛性調整手段20cにおいて、一方の構造部材CB1bと他方の構造部材CB2bとの間、すなわち、一対の構造部材CB1b、CB2bの間には、中間構造部材CB3が配置される。本変形例において、中間構造部材CB3は2個であるが、中間構造部材CB3の数はこれに限定されるものではない。一方の構造部材CB1bと中間構造部材CB3とは、ピン24Aによって接続される。2個の中間構造部材CB3同士は、ピン24Bで接続される。また、中間構造部材CB3と他方の構造部材CB2bとは、ピン24Cで接続される。中間構造部材CB3と接続される一方の構造部材CB1bの第1固定部材21bは、中間構造部材CB3との接続部を跨いで、中間構造部材CB3に渡される。
【0054】
中間構造部材CB3は、構造部材接続部Jの鉛直方向(図8の矢印G方向)反対側に中間固定部材21cが設けられる。そして、中間固定部材21cは、隣接して接続される中間構造部材CB3との接続部を跨いで、中間構造部材CB3に渡される。また、他方の構造部材CB2bと接続される中間構造部材CB3の中間固定部材21cは、他方の構造部材CB2bとの接続部を跨いで、他方の構造部材CB2bに渡される。
【0055】
第2固定部材25は、構造部材接続部Jの鉛直方向側に配置されるとともに、構造部材接続部J及び構造部材接続部Jに配置される中間構造部材CB3を含んで、構造部材CB1b、CB2b同士に渡される。締結手段であるボルト22及びナット22Nは、第2固定部材25の一方の構造部材CB1b側、他方の構造部材CB2b側に設けられるボルト孔25Hに差し込まれ、一方の構造部材CB1b、他方の構造部材CB2bに形成されるねじ孔HSaにねじ込まれる。なお、本変形例では、一方の構造部材CB1bと中間構造部材CB3との間、及び中間構造部材CB3同士の間、及び中間構造部材CB3と他方の構造部材CB2bとの間に衝撃荷重緩和手段23が設けられる。
【0056】
ボルト22を締め込み、第2固定部材25を構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CB1b、CB2bに締結することにより、両方の構造部材CB1b、CB2bが固定され、第1構造体11あるいは第2構造体13として一体化され、その結果としてフレーム10が一体化する。また、少なくとも一方のボルト22を緩めることにより、第1固定部材21b及び中間固定部材21cと、第2固定部材25とによる両方の構造部材CB1b、CB2b、中間構造部材CB3の固定が解除されて、フレーム10が一体化されたときよりもフレーム全体の剛性が低下する。
【0057】
図1、図4に示す車両1の走行時には、ボルト22を締め込んで、第2固定部材25を構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CB1b、CB2bに締結する。これによって、両方の構造部材CB1b、CB2b及び中間構造部材CB3が固定されるので、フレーム10が一体化して車両1の走行時に必要なフレーム10の剛性が確保される。また、本変形例では、少なくとも一つの中間構造部材CB3を介して一方の構造部材CB1bと他方の構造部材CB2bとを接続する。これによって、図1、図4に示す車両1のフレーム10の変形可能な範囲(構造部材接続部Jの両側に配置される構造部材CB1bと構造部材CB2bとの間)が上述した実施例1、実施例2及びその第1変形例より大きくなる。その結果、射撃反力Frによって発生する衝撃荷重を緩和する機能が実施例1、実施例2及びその第1変形例よりも大きくなり、射撃能力の低下をより効果的に抑制できる。本変形例の射撃時における他の作用、効果は、上述した実施例2及びその第1変形例と同様である。
【0058】
また、本変形例では、一方の構造部材CB1bと一体に構成された第1固定部材21bが、鉛直方向とは反対側に向かう中間構造部材CB3の動きを規制する。そして、中間構造部材CB3と一体に構成された中間固定部材21cが、鉛直方向とは反対側に向かう、隣接して接続される中間構造部材CB3の動きを規制する。さらに、中間構造部材CB3と一体に構成された中間固定部材21cが、鉛直方向とは反対側に向かう他方の構造部材CB2bの動きを規制する。その結果、車両走行時におけるフレーム10の剛性をより確保しやすくなるので、車両1の走行安定性が向上する。
【0059】
(第3変形例)
図9は、実施例2の第3変形例に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。本変形例は、上述した実施例2の第1変形例と同様であるが、第1固定部材21dと対向して、第2固定部材25dを一方の構造部材CB1dの鉛直方向(図9の矢印G方向)側に配置して、第1固定部材21d及び第2固定部材25d、並びにピン24によって構造部材接続部Jにおける両方の構造部材CB1d、CB2dを接続する点が異なる。なお、実施例1、実施例2及びその第1変形例で開示した構成は、本変形例に対して適宜適用できる。
【0060】
フレーム剛性調整手段20dにおいて、一方の構造部材CB1dには、第1固定部材21dと第2固定部材25dとが設けられる。第1固定部材21dは、鉛直方向反対側に設けられ、第2固定部材25dは、鉛直方向側に設けられる。第1固定部材21d及び第2固定部材25dは、構造部材CB1dと一体で形成されるが、第1固定部材21dと第2固定部材25dと構造部材CB1dとを別々に製造し、溶接等によって両者を一体としてもよい。このような構成により、第1固定部材21dと第2固定部材25dとは対向して配置される。
【0061】
対向して配置された第1固定部材21dと第2固定部材25dとの間に、他方の構造部材CB2dが配置され、一方の構造部材CB1dと他方の構造部材CB2dとがピン24によって接続される。本変形例においては、第1固定部材21dと他方の構造部材CB2dとの間、及び第2固定部材25dと他方の構造部材CB2dとの間に、衝撃荷重緩和手段23が設けられる。
【0062】
第1固定部材21dには、締結手段であるボルト22が貫通する第1ボルト孔21Haが形成され、第2固定部材25dには、ボルト22が貫通する第2ボルト孔25Hdが形成される。また、他方の構造部材CB2dには、構造部材側ボルト孔HSdが形成される。ボルト22は、第1ボルト孔21Ha、構造部材側ボルト孔HSd及び第2ボルト孔25Hdに差し込まれてナット22Nにねじ込まれる。
【0063】
図1、図4に示す車両1の走行時にはボルト22を締め込み、火砲50の射撃時にはボルト22を緩める点は、上述した実施例2と同様である。本変形例では、第1固定部材21d及び第2固定部材25dの両方で他方の構造部材CB2dを支持する。これによって、上述した実施例2の第1変形例と同様の作用、効果が得られる。また、第2固定部材25dを一方の構造部材CB1dと一体に形成するので、実施例2の第1変形例と比較して、ボルト22の数が少なくて済む。これにより、フレーム10の部品点数を削減できる。
【0064】
上述したように、実施例2及びその変形例では、構造部材接続部を含んで構造部材同士に渡される固定部材を、構造部材接続部の鉛直方向反対側に配置した例、及び鉛直方向反対側と鉛直方向側とに配置した例を説明した。前記固定部材は、構造部材接続部の鉛直方向側のみに配置してもよい。すなわち、固定部材は、構造部材接続部の鉛直方向反対側と、鉛直方向側との少なくとも一方に配置すればよい。
【実施例3】
【0065】
図10−1は、実施例3に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。図10−2は、図10−1の矢印B方向から見た図である。本実施例は、車両のフレームを、断面コの字形状の構造部材CB1eと、同じく断面コの字形状の構造部材CB2eとで構成するとともに、構造部材CB1eの開口内に構造部材CB2eが入るように構成して、両者の間に衝撃荷重緩和手段23を設ける点に特徴がある。なお、本実施例は、図1や図4に示す車両1のフレーム10に適用される。
【0066】
このフレーム剛性調整手段20eにおいては、一方の構造部材CB1eの開口部の内部に、他方の構造部材CB2eが配置され、両者の間には、衝撃荷重緩和手段23が配置される。一方の構造部材CB1eと他方の構造部材CB2eとは、締結手段であるボルト22及びナット22Nで固定される。なお、ボルト22は、鉛直方向(図10−1、図10−2の矢印G方向)と平行な方向に貫通する。
【0067】
このような構成により、鉛直方向及び鉛直方向とは反対側に向かう構造部材CB1e、CB2eの動きは、構造部材CB1eに構造部材CB2eが差し込まれる部分で規制される。また、鉛直方向と平行な軸周りに対する構造部材CB1e、CB2eの動きも、構造部材CB1eに構造部材CB2eが差し込まれる部分で規制される。
【0068】
このフレーム剛性調整手段20eにおいて、図1、図4に示す車両1の走行時には両方のボルト22を締め込み、火砲50の射撃時には少なくとも一方のボルト22を緩める点は、上述した実施例2と同様である。このフレーム剛性調整手段20eにおいても、上述した実施例1、2と同様の作用、効果が得られる。
【実施例4】
【0069】
図11は、実施例4に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。本実施例は、構造部材接続部Jにおける一対の構造部材CBが対向する部分に衝撃荷重緩和手段23を設け、構造部材接続部Jの鉛直方向(図11の矢印G方向)反対側に第1固定部材21fを、鉛直方向側に第2固定部材25fを配置して、構造部材接続部Jを跨ぐように両方の構造部材CBに取り付ける点に特徴がある。なお、本実施例は、図1や図4に示す車両1のフレーム10に適用される。
【0070】
このフレーム剛性調整手段20fにおいては、構造部材接続部Jの両側に対向して配置される構造部材CB、CBの間に、衝撃荷重緩和手段23を設ける。そして、構造部材CB、CBの鉛直方向反対側には第1固定部材21fを設け、鉛直方向側には第2固定部材25fを設ける。第1固定部材21f及び第2固定部材25fは、いずれも構造部材CB、CBとは別個の部材である。第1固定部材21f及び第2固定部材25fは、締結手段であるボルト22とナット22Nとで、それぞれ両方の構造部材CB、CBに取り付けられる。
【0071】
このフレーム剛性調整手段20fにおいて、図1、図4に示す車両1の走行時にはボルト22を締め込み、火砲50の射撃時にはボルト22を緩める。このフレーム剛性調整手段20fは、上述した実施例1、2と同様の作用、効果の他、構造部材CB、CB、すなわち、図1、図4に示すフレーム10を構成する第1構造体11や第2構造体13の全方向に対する衝撃荷重を緩和する効果がある。なお、このフレーム剛性調整手段20fでは、衝撃荷重緩和手段23に高強度ゴムやハニカム構造の構造体等、せん断強度の高いものを用いることが好ましい。これによって、構造部材接続部Jにおける鉛直方向と平行な方向のせん断荷重を衝撃荷重緩和手段23によって受けることができる。
【実施例5】
【0072】
図12−1は、実施例5に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。図12−2は、図12−1の矢印C方向から見た図である。本実施例は、構造部材接続部Jにおける一対の構造部材CBgが対向する部分に衝撃荷重緩和手段23を設け、構造部材CBgの軸方向、すなわち、図1、図4に示すフレーム10を構成する第1構造体11や第2構造体13の長手方向に向かって締結手段であるボルト22とナット22Nとで一対の構造部材CBgを締結する点に特徴がある。なお、本実施例は、図1や図4に示す車両1のフレーム10に適用される。
【0073】
このフレーム剛性調整手段20gにおいては、構造部材接続部Jの両側に対向して配置される構造部材CBg、CBgの間に、衝撃荷重緩和手段23を設け、図12−2に示す両方の構造部材CBg、CBgのそれぞれの端面PTで衝撃荷重緩和手段23を挟持する。そして、両方の構造部材CBg、CBgの端面PTに設けたボルト孔Hpt及び衝撃荷重緩和手段23にボルト22を貫通させ、ナット22Nにねじ込み、両方の構造部材CBg、CBgを固定する。
【0074】
このフレーム剛性調整手段20gにおいて、図1、図4に示す車両1の走行時にはボルト22を締め込み、火砲50の射撃時にはボルト22を緩める。このフレーム剛性調整手段20gは、上述した実施例1、2と同様の作用、効果の他、構造部材CBg、CBg、すなわち、図1、図4に示すフレーム10を構成する第1構造体11や第2構造体13の全方向に対する衝撃荷重を緩和する効果がある。
【実施例6】
【0075】
図13は、実施例6に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。本実施例は、実施例5と同様の構成であるが、構造部材接続部Jにおいて、衝撃荷重緩和手段23と、接続部補強部材26とを交互に配置して、一対の構造部材CBgで挟持する点が異なる。他の構成は、実施例5と同様である。なお、本実施例は、図1や図4に示す車両1のフレーム10に適用される。
【0076】
このフレーム剛性調整手段20hにおいては、構造部材接続部Jの両側に対向して配置される構造部材CBg、CBgの間に、衝撃荷重緩和手段23と接続部補強部材26とを交互に設け、両方の構造部材CBg、CBgのそれぞれの端面PTで衝撃荷重緩和手段23及び接続部補強部材26とを挟持する。そして、両方の構造部材CBg、CBgの端面PT及び衝撃荷重緩和手段23及び接続部補強部材26にボルト22を貫通させ、ナット22Nにねじ込み、両方の構造部材CBg、CBgを固定する。
【0077】
本実施例では、構造部材CBg、CBgのそれぞれの端面PTに、衝撃荷重緩和手段23が接触するように構成される。また、接続部補強部材26は、衝撃荷重緩和手段23よりも剛性の高い材料で構成される。本実施例では、接続部補強部材26には、構造部材CBg、CBgを構成する材料と同じ材料が用いられる。
【0078】
このフレーム剛性調整手段20hにおいて、図1、図4に示す車両1の走行時にはボルト22を締め込み、火砲50の射撃時にはボルト22を緩める。このフレーム剛性調整手段20hは、上述した実施例1、2と同様の作用、効果の他、構造部材CBg、CBg、すなわち、図1、図4に示すフレーム10を構成する第1構造体11や第2構造体13の全方向に対する衝撃荷重を緩和する効果がある。
【0079】
さらに、上述した実施例4、5と比較して、フレーム剛性調整手段20hを備えるフレーム10全体の変形で、射撃反力Frによる衝撃荷重を緩和できるという効果も得られる。このように、このフレーム剛性調整手段20hは、実施例4、5よりも大きい衝撃荷重の緩和効果が得られるとともに、構造部材接続部Jにおけるせん断荷重は接続部補強部材26によっても受けられるため、衝撃荷重緩和手段23に作用するせん断荷重を抑制できる。その結果、衝撃荷重緩和手段23は、実施例4、5と比較して、強度の低いものを用いることができる。
【実施例7】
【0080】
図14は、実施例7に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。本実施例は、構造部材接続部Jの鉛直方向(図14の矢印G方向)反対側と鉛直方向側との少なくとも一方に進出し、又は待避する可動部材27と、図1、図4に示す車両1の走行時には構造部材接続部Jを含んで構造部材CB1i、CB2i同士に可動部材27を渡し、火砲50の射撃時には、構造部材接続部Jから可動部材27を待避させる可動部材駆動手段28とを有する点に特徴がある。なお、本実施例は、図1や図4に示す車両1のフレーム10に適用される。
【0081】
このフレーム剛性調整手段20iにおいては、構造部材接続部Jを含んで対向配置される一方の構造部材CB1i及び他方の構造部材CB2iは、図10−2に示す構造部材CB1e、構造部材CB2eと同様に、断面がコの字形状である。そして、一方の構造部材CB1iの開口部の内部に、他方の構造部材CB2iが配置され、両者の間には、衝撃荷重緩和手段23が配置される。また、一方の構造部材CB1iと他方の構造部材CB2iとは、ピン24で接続される。ピン24による接続形態は、上述した実施例2等と同様である。
【0082】
他方の構造部材CB2iの外側には、可動部材駆動手段28が配置される。可動部材駆動手段28は、例えば、油圧シリンダやエアシリンダ、モータ、リニアモータ等である。可動部材駆動手段28にモータを用いる場合、例えば、ねじを利用した回転運動を直線運動に変換する機構を可動部材駆動手段28と可動部材27との間に介在させる。可動部材駆動手段28は、可動部材27を構造部材接続部Jを跨ぐように構造部材CB2iから構造部材CB1iに向かって移動させたり、構造部材接続部Jを跨いでいる可動部材27を、構造部材CB1iから構造部材CB2iに向かって移動させたりする。
【0083】
可動部材27は、一方の構造部材CB1iの鉛直方向反対側と鉛直方向側との少なくとも一方に進出し、又は待避する。本実施例では、可動部材27は、一方の構造部材CB1iの鉛直方向反対側と鉛直方向側との両方に進出し、又は待避する。さらに、可動部材27を、一方の構造部材CB1iの両側面にも進出するようにして、構造部材CB1i、CB2iの全周を可動部材27で覆うようにしてもよい。このようにすれば、可動部材27で、構造部材CB1i、CB2iの全方向に対する荷重を受けることができる。
【0084】
構造部材接続部Jを跨ぐように可動部材27を移動させ、構造部材CB2iと構造部材CB1iとに渡すことにより、構造部材CB2iと構造部材CB1iとが固定される。これによって、鉛直方向及び鉛直方向とは反対側に向かう構造部材CB1i、CB2iの動きが可動部材27で規制される。一方、可動部材27を構造部材接続部Jから待避させると、構造部材CB2iと構造部材CB1iとの固定が解除される。これによって、構造部材CB1i、CB2iは、ピン24によってある程度自由に揺動する。
【0085】
このフレーム剛性調整手段20iにおいて、図1、図4に示す車両1の走行時には、可動部材駆動手段28によって可動部材27を構造部材接続部Jに向かって進出させ、可動部材27を構造部材CB2iと構造部材CB1iとに渡す。これによって、図1、図4に示す車両1のフレーム10の剛性を確保する。また、火砲50の射撃時には、可動部材駆動手段28によって可動部材27を構造部材接続部Jから待避させ、可動部材27が構造部材接続部Jには存在しない状態とする。これによって、図1、図4に示す車両1のフレーム10の剛性を走行時よりも低下させ、射撃反力Frに起因する衝撃荷重をフレーム10で緩和する。
【0086】
このフレーム剛性調整手段20iは、可動部材駆動手段28を用いるので、走行時のボルトの締め付け作業や射撃時におけるボルトの緩め作業の労力が緩和できる。また、可動部材駆動手段28による可動部材27の動作を、アウトリガー2の動作と連動させてもよい。すなわち、アウトリガー2を下降させるときは、火砲50の射撃時なので、アウトリガー2の下降信号をトリガーとして、可動部材駆動手段28が可動部材27を構造部材接続部Jから待避させる。
【0087】
また、アウトリガー2を上昇させるときには、車両1の走行時なので、アウトリガー2の上昇信号をトリガーとして、可動部材駆動手段28が可動部材27を構造部材CB2iと構造部材CB1iとに渡す。このようにすれば、フレーム剛性調整手段の操作(ボルトの締め付け作業や緩め作業)が不十分であることを回避できるので、確実にフレーム剛性調整手段を操作できる。
【0088】
また、可動部材駆動手段28に油圧シリンダを用い、図1に示すアウトリガー昇降用油圧シリンダ4の油圧系統と共通で可動部材駆動手段28を動作させてもよい。このようにすれば、簡易な構成で、アウトリガー2の動作に可動部材27の動作を連動させることができる。
【実施例8】
【0089】
図15−1、図15−2は、実施例8に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。本実施例は、構造部材接続部Jにおける一方の構造部材CB1jの内部に他方の構造部材CB2jが配置される構造であり、フレーム剛性調整手段は、他方の構造部材CB2jを一方の構造部材CB1jに押し付ける点に特徴がある。この場合、構造部材接続部Jにおける一方の構造部材CB1jと他方の構造部材CB2jとの間には、一方の構造部材CB1jから他方の構造部材CB2jを引き抜く方向と平行な方向の動きを拘束できる構造部材拘束手段29が設けられる。なお、本実施例は、図1や図4に示す車両1のフレーム10に適用される。
【0090】
本実施例においては、構造部材接続部Jを含んで対向配置される一方の構造部材CB1j及び他方の構造部材CB2jは、図10−2に示す構造部材CB1e、構造部材CB2eと同様に、断面がコの字形状である。他方の構造部材CB2jは、端面PTに構造部材固定部30が取り付けられて、構造部材CB2jから突出する。一方の構造部材CB1jの開口部の内部には、他方の構造部材CB2jの構造部材固定部30が差し込まれる。構造部材固定部30は、他方の構造部材CB2jの一部を構成する。
【0091】
図15−1において、構造部材固定部30の鉛直方向(図15−1の矢印G方向)側における側面には、固定部拘束歯29Bが設けられる。また、構造部材CB1jの内周面であって、固定部拘束歯29Bと対向する位置には、固定部拘束歯29Bと噛み合う構造部材拘束歯29Aが設けられる。構造部材拘束歯29Aと固定部拘束歯29Bとが噛み合って、一方の構造部材CB1jから他方の構造部材CB2jを引き抜く方向と平行な方向の動きが拘束される。このように、構造部材拘束歯29Aと固定部拘束歯29Bとで構造部材拘束手段29が構成される。
【0092】
構造部材拘束手段29によって、一方の構造部材CB1jに対する他方の構造部材CB2jの位置決めが、ピンを用いる場合と比較して容易になる。また、構造部材拘束手段29によって、構造部材CB1j、CB2jである第1構造体11や第2構造体13に、これらの長手方向に向かう力が作用した場合には、第1構造体11や第2構造体13の長手方向の動きが抑制されるので、フレーム10の過度の動きや振動等を抑制できる。なお、構造部材拘束手段29の構成は、構造部材拘束歯29Aと固定部拘束歯29Bとに限定されるものではない。
【0093】
構造部材拘束歯29Aが設けられる側と反対側における構造部材CB1jの外周部には、フレーム剛性調整手段として、拘束部材押圧手段である油圧シリンダ31が設けられる。油圧シリンダ31は、構造部材固定部30へ押し付けられる押圧部33がピストンロッド32に取り付けられた構成である。そして、油圧シリンダ31に作用させる油圧によってピストンロッド32が伸びることにより、押圧部33によって構造部材固定部30が構造部材拘束手段29側に押し付けられる。これによって、構造部材CB2jを構成する構造部材固定部30が構造部材CB1jの内面に押し付けられるので、構造部材CB1jと構造部材CB2jとが固定される。
【0094】
油圧シリンダ31のピストンロッド32を縮ませることにより、押圧部33による構造部材固定部30の押圧力が低減される。これによって、構造部材CB2jを構成する構造部材固定部30と構造部材CB1jとの固定が解除されるので、構造部材CB1jと構造部材CB2jとの固定が解除される。なお、フレーム剛性調整手段としては、油圧シリンダ31の代わりに、例えばねじ機構を用いてもよい。この場合、手動でねじ機構を操作してもよいし、電動モータや油圧モータ等で前記ねじ機構を操作してもよい。
【0095】
構造部材拘束手段29を構成する構造部材拘束歯29Aと固定部拘束歯29Bとの少なくとも一方は、構造部材CB1j、CB2jを構成する材料よりも硬度の低い材料(例えば、上述したゴム、防振ゴム等)で構成される衝撃緩和手段としてもよい。また、油圧シリンダ31にダンピング機能を設けて、衝撃緩和手段としてもよい。これにより、射撃反力Frによって発生する衝撃荷重を減衰させてより効果的に緩和できる。
【0096】
図15−2に示す構成は、構造部材拘束歯29Aと固定部拘束歯29Bとで構成される構造部材拘束手段29を一対備える。固定部拘束歯29Bは、構造部材固定部30の外周面に180度対向して設けられ、構造部材拘束歯29Aは、それぞれの固定部拘束歯29Bに対向して、構造部材CB1jの内面に設けられる。フレーム剛性調整手段としては、一対の油圧シリンダ31A、31Bが構造部材CB1jの外周部に180度対向して設けられる。油圧シリンダ31Aの押圧部33Aは、鉛直方向(図15−2の矢印G方向)反対側の構造部材固定部30を押圧し、油圧シリンダ31Bの押圧部33Bは、鉛直方向側の構造部材固定部30を押圧する。
【0097】
構造部材CB1jと構造部材CB2jとを固定する場合、油圧シリンダ31A又は31Bのいずれか一方を作動させて、押圧部33A又は33Bによって構造部材固定部30を構造部材拘束手段29側に押し付ける。構造部材CB1jと構造部材CB2jとの固定を解除する場合、油圧シリンダ31A又は31Bのいずれか一方を作動させて、ピストンロッド32A又は32Bを縮ませることにより、押圧部33A又は33Bによる構造部材固定部30の押圧力を低減する。図15−2に示す構成では、フレーム剛性調整手段として、一対の油圧シリンダ31A、31Bを備えるので、一方に動作不良が発生した場合でも、他方によって構造部材CB1jと構造部材CB2jとの固定、あるいは解除を実行できる。これにより、信頼性が向上する。
【0098】
本実施例において、図1、図4に示す車両1の走行時には、油圧シリンダ31、31A等によって構造部材固定部30を構造部材拘束手段29側に押し付けて、構造部材CB2jと構造部材CB1jとを固定する。これによって、図1、図4に示す車両1のフレーム10の剛性を確保する。また、火砲50の射撃時には、油圧シリンダ31、31A等によって構造部材固定部30を構造部材拘束手段29側に押し付ける力を緩和して、構造部材CB2jと構造部材CB1jとの固定を解除する。これによって、図1、図4に示す車両1のフレーム10の剛性を走行時よりも低下させ、射撃反力Frに起因する衝撃荷重をフレーム10で緩和する。
【0099】
本実施例において、フレーム剛性調整手段として、油圧シリンダ31や電動モータ等を用いると、走行時のボルトの締め付け作業や射撃時におけるボルトの緩め作業の労力が緩和できる。また、油圧シリンダ31等の動作を、図1に示すアウトリガー2の動作と連動させてもよい。すなわち、アウトリガー2を下降させるときは、火砲50の射撃時なので、アウトリガー2の下降信号をトリガーとして、油圧シリンダ31等が構造部材固定部30を構造部材拘束手段29側に押し付ける力を緩和して、構造部材CB2jと構造部材CB1jとの固定を解除する。
【0100】
また、アウトリガー2を上昇させるときには、車両1の走行時なので、アウトリガー2の上昇信号をトリガーとして、油圧シリンダ31等が構造部材固定部30を構造部材拘束手段29側に押し付けて、構造部材CB2jと構造部材CB1jとを固定する。このようにすれば、フレーム剛性調整手段の操作(ボルトの締め付け作業や緩め作業)が不十分であることを回避できるので、確実にフレーム剛性調整手段を操作できる。また、フレーム剛性調整手段として、油圧シリンダ31等を用いれば、図1に示すアウトリガー昇降用油圧シリンダ4の油圧系統と共通で油圧シリンダ31等を動作させることもできる。
【実施例9】
【0101】
図16−1は、実施例9に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。図16−2は、実施例9に係る構造部材接続部の構成を示す図である。本実施例は、複数の構造部材CBで形成される多角形の対角線をつなぐ構造部材接続部材35と、それぞれの構造部材接続部材35に設けられ、構造部材接続部材35に張力を発生させるとともに、構造部材接続部材35に発生させた張力を解除できる張力発生/解除手段34を有し、前記多角形を構成する少なくとも一つの構造部材CBが構造部材接続部Jを有する点に特徴がある。なお、張力の解除は、構造部材接続部材35に発生した張力を0にすることの他、構造部材接続部材35の張力を、現時点よりも小さくすることも含まれる。
【0102】
図16−1に示すように、車両1mのフレーム10mは、上述した車両1のフレーム10と同様の構成である。フレーム10mを構成する第2構造体(構造部材)13、14は、第1構造体(構造部材)11に直交する。第2構造体13は、砲座5と運転台6との間における2本の第1構造体11同士を連結する。また、第2構造体13は、第2構造体14と運転台6との間に配置されて2本の第1構造体11同士を連結する。
【0103】
2本の第2構造体13、14と、第2構造体13、14が連結される2本の第1構造体11、11とで、多角形(本実施例では四角形)が形成される。第2構造体13、14及び第1構造体11は、構造部材CBであるので、前記多角形は、複数の構造部材CBで囲まれて形成される。前記多角形は、その対角線が棒状の構造部材接続部材35によってつながれる。本実施例において、前記多角形は四角形なので、構造部材接続部材35は2本である。
【0104】
それぞれの構造部材接続部材35の途中には、張力発生/解除手段34が取り付けられる。張力発生/解除手段34は、構造部材接続部材35に張力を発生させるとともに、構造部材接続部材35に発生させた張力を解除できる機能を有する。張力発生/解除手段34は、例えば、ターンバックルであり、ターンバックルを締めることによって構造部材接続部材35に張力を発生させ、ターンバックルを緩めることによって構造部材接続部材35に発生させた張力を解除する。
【0105】
前記多角形を形成する複数の構造部材CBは、すべてに構造部材接続部Jが設けられるが、少なくとも一つに構造部材接続部Jが設けられていればよい。本実施例において、構造部材接続部Jは、対向して配置される構造部材CB同士の間に衝撃荷重緩和手段23が設けられる。これによって、火砲50の射撃時に発生し、フレーム10mに伝達される衝撃荷重が緩和される。
【0106】
このフレーム剛性調整手段20mにおいて、車両1mの走行時には、張力発生/解除手段34によって構造部材接続部材35に張力を発生させる。これによって、構造部材接続部Jにおける構造部材CB同士が固定されるので、車両1mのフレーム10mの剛性が向上する。また、火砲50の射撃時には、張力発生/解除手段34によって構造部材接続部材35に発生させた張力を緩和して、構造部材CBと構造部材CBとの固定を解除する。これによって、車両1mのフレーム10mの剛性を走行時よりも低下させ、射撃反力Frに起因する衝撃荷重をフレーム10mで緩和する。本実施例は、張力発生/解除手段34で構造部材接続部材35に張力を発生させたり、発生した張力を緩めたりすることで、位置決め等の手間を要さずに、簡単に走行時と射撃時とでフレーム10mの剛性を変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明に係る車両は、車両に搭載される火砲の射撃反力を緩和することに有用であり、特に、射撃反力に起因する車両の揺動を抑制することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】実施例1に係る車両の全体構成図である。
【図2】実施例1に係る車両の火砲が搭載される部分を示す平面図である。
【図3】実施例1に係る車両の概略を示す平面図である。
【図4】実施例1に係る車両の概略を示す平面図である。
【図5】実施例1に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図6−1】実施例2に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図6−2】実施例2に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図7】実施例2の第1変形例に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図8】実施例2の第2変形例に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図9】実施例2の第3変形例に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図10−1】実施例3に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図10−2】図10−1の矢印B方向から見た図である。
【図11】実施例4に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図12−1】実施例5に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図12−2】図12−1の矢印C方向から見た図である。
【図13】実施例6に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図14】実施例7に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図15−1】実施例8に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図15−2】実施例8に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図16−1】実施例9に係るフレーム剛性調整手段の構造を示す説明図である。
【図16−2】実施例9に係る構造部材接続部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
1、1m 車両
2 アウトリガー
2F アウトリガー取付部
2T 射撃反力伝達部材
3 アーム
3F フレーム取付部
4 アウトリガー昇降用油圧シリンダ
4F フレーム取付部
5 砲座
6 運転台
10、10m フレーム
11 第1構造体
12、13、14 第2構造体
20、20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g、20h、20i、20m フレーム剛性調整手段
21、21a 固定部材
21b、21d、21f 第1固定部材
21c 中間固定部材
22 ボルト
22N ナット
23 衝撃荷重緩和手段
24、24A、24B、24C ピン
25H、25Hd ボルト孔
25、25d、25f 第2固定部材
26 接続部補強部材
27 可動部材
28 可動部材駆動手段
29 構造部材拘束手段
29A 構造部材拘束歯
29B 固定部拘束歯
30 構造部材固定部
31、31A、31B 油圧シリンダ
32、32A、32B ピストンロッド
33、33A、33B 押圧部
34 張力発生/解除手段
35 構造部材接続部材
50 火砲
51 砲身
52 砲耳
53 砲架台
CB、CBg、CB1、CB1b、CB1d、CB1e、CB1i、CB1j、CB2、CB2b、CB2d、CB2e、CB2i、CB2j 構造部材
J 構造部材接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火砲を搭載して自走する車両であり、
複数の構造部材から構成される前記車両のフレームと、
前記構造部材同士を接続する構造部材接続部と、
前記構造部材接続部に設けられて、前記車両の走行時には前記構造部材同士を固定し、前記火砲の射撃時には前記構造部材同士の固定を解除するフレーム剛性調整手段と、
を備えることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記構造部材接続部で接続される前記構造部材同士の間に、前記火砲の射撃時に発生する衝撃荷重を緩和する衝撃荷重緩和手段を設けることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記フレーム剛性調整手段は、
前記構造部材接続部の鉛直方向反対側と鉛直方向側との少なくとも一方に配置されるとともに、前記構造部材接続部を含んで前記構造部材同士に渡される固定部材と、
前記固定部材を前記構造部材の少なくとも一方に締結する締結手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記構造部材接続部において、ピンによって一対の前記構造部材同士が接続され、かつ、前記構造部材接続部における一対の前記構造部材は、鉛直方向と直交する方向を中心として回転できるように前記ピンによって接続されることを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記構造部材接続部には、一対の前記構造部材の間に、互いにピン結合される複数の中間構造部材が設けられ、一対の前記構造部材は、それぞれ前記中間構造部材とピン結合されることを特徴とする請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記フレーム剛性調整手段は、
前記構造部材接続部の鉛直方向反対側と鉛直方向側との少なくとも一方に進出し、又は待避する可動部材と、
前記車両の走行時には前記構造部材接続部を含んで前記構造部材同士に前記可動部材を渡し、前記火砲の射撃時には、前記構造部材接続部から前記可動部材を待避させる可動部材駆動手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項7】
前記構造部材接続部は、前記構造部材接続部における一方の前記構造部材の内部に他方の前記構造部材が配置される構造であり、
前記フレーム剛性調整手段は、他方の前記構造部材を一方の前記構造部材に押し付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項8】
一方の前記構造部材と他方の前記構造部材との間には、一方の前記構造部材から他方の前記構造部材を引き抜く方向と平行な方向の動きを拘束できる構造部材拘束手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記フレーム剛性調整手段は、
複数の前記構造部材で形成される多角形の対角線をつなぐ構造部材接続部材と、
それぞれの前記構造部材接続部材に設けられ、前記構造部材接続部材に張力を発生させるとともに、前記構造部材接続部材に発生させた張力を解除できる張力発生/解除手段を有し、
前記多角形を構成する少なくとも一つの前記構造部材が前記構造部材接続部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項10】
前記フレームは、前記車両の前後方向に向かう第1構造体と、前記第1構造体に直交する第2構造体とを連結して構成されており、
前記構造部材接続部及びフレーム剛性調整手段は、前記第1構造体と前記第2構造体とのうち少なくとも一方に設けられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【公開番号】特開2009−287801(P2009−287801A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138571(P2008−138571)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】