説明

車両

【課題】エンジンルーム構成体内のエンジンをメンテナンスしやすく、構成が煩雑化しない油圧ショベルを提供する。
【解決手段】機体に設けられたエンジンルーム構成体17を備える。エンジンルーム構成体17に隣接してプラットフォーム19を設ける。エンジンルーム構成体17は、プラットフォーム19より上方にて、上部に開口部33が設けられたエンジンルーム本体28を有する。また、プラットフォーム19より上方に突出して、エンジンルーム構成体17とプラットフォーム19とを遮る隔壁34を開口部33に沿って設ける。この隔壁34の一部に切欠部35を設ける。また、切欠部35に対応して可倒部38を設ける。この可倒部38は、エンジンルーム本体28の内側へ向かって横倒し可能である。また、エンジンルーム本体28の開口部33を開閉可能なエンジンフード36を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンが収容されるエンジンルーム構成体を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械等の車両において、例えば、エンジン、冷却器等の動力装置が収容されるエンジンルーム構成体には、開口部を有するエンジンルーム本体および開口部を開閉可能に覆うエンジンフードが設けられている。また、エンジンルーム内の動力装置をメンテナンスする際には、エンジンフードを回動し、エンジンルームの開口部を開口して、エンジンルーム構成体に隣接して設けられた作業床面部としてのプラットフォームからエンジンルーム内を覗き込むようにしてメンテナンスする。
【0003】
そして、従来、エンジン等のメンテナンスをしやすくする構成として、メンテナンスの際に足場となるステップがエンジンルーム構成体を跨いで設けられた構成(例えば、特許文献1参照。)や、メンテナンスの際に足場となるステッププレートがエンジンルーム構成体を構成する枠体部材間に掛け渡された構成(例えば、特許文献2参照。)等が知られている。
【0004】
また、設備上、動力装置の高さがプラットフォームより高くなる場合があり、このような場合には、従来、図6に示すように、内部に収容空間を形成するため高さのあるエンジンフード1を取り付け、このエンジンフード1は、プラットフォーム2より高い動力装置を覆うように、開口部3を開閉する構成としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−204595号公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】特開2000−257115号公報(第2−4頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようなエンジンルーム構成体内の動力装置の高さがプラットフォームより高い構成では、エンジンフードを高くすることでエンジンフードが大型化して、開閉の際の操作性が悪く、メンテナンスしにくい問題が考えられる。
【0007】
また、上記各引用文献のように、メンテナンス時の足場のためにエンジンルーム構成体とは別部材であるステップやステッププレート等を設けると、構成部品が多くなるので構成が煩雑化してしまう。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、エンジンルーム構成体内のエンジンをメンテナンスしやすく、構成が煩雑化しない車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、車両本体と、車両本体に設けられ、エンジンを収容するエンジンルーム構成体と、エンジンルーム構成体に隣接して設けられた作業床面部とを具備し、エンジンルーム構成体は、作業床面部より上方にて上部に開口部が設けられたエンジンルーム本体と、開口部に沿って作業床面部より上方に突出して設けられかつエンジンルーム構成体と作業床面部とを遮る隔壁と、隔壁の一部に設けられた切欠部と、切欠部に対応して設けられ、エンジンルーム本体の内側へ向かって横倒し可能な可倒部と、エンジンルーム本体の開口部を開閉可能なエンジンフードとを有する車両である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の車両において、倒した状態の可倒部は、略水平に係止されるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、エンジンルーム構成体に隣接して作業床面部が設けられ、エンジンルーム構成体が、開口部に沿って作業床面部より上方に突出して設けられかつエンジンルーム構成体と作業床面部とを遮る隔壁を有することにより、隔壁の作業床面部からの突出にともなってエンジンフードを低くして軽量化でき、エンジンフードの操作性を向上できるので、エンジンルーム構成体内のエンジンをメンテナンスしやすい。
【0012】
隔壁の一部に切欠部が設けられ、この切欠部に対応して、エンジンルーム本体の内側へ向かって横倒し可能な可倒部が設けられることにより、可倒部を横倒しするのみで、作業床面部から切欠部を介して延長された足場として可倒部を利用できるので、エンジンルーム構成体内のエンジンをメンテナンスしやすい。また、可倒部は、隔壁の一部としても利用でき、隔壁の一部および足場を兼ねることができるので、構成部品が増加せず、構成の煩雑化を防止できる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、倒した状態の可倒部が略水平に係止されることにより、足場として安定するので、エンジンルーム構成体内のエンジンをメンテナンスしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る油圧ショベルの一実施の形態を示す部分斜視図である。
【図2】同上油圧ショベルを示す側面図である。
【図3】同上油圧ショベルにおいてエンジンルーム構成体の閉塞状態を示す部分斜視図である。
【図4】同上油圧ショベルにおいてエンジンルーム構成体の可倒部の横倒し状態を示す部分斜視図である。
【図5】同上油圧ショベルの上部旋回体の構成を示す構成図である。
【図6】従来の油圧ショベルの上部旋回体の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図2は、車両としての油圧ショベル11示し、この油圧ショベル11は、下部走行体12と、この下部走行体12の上に旋回可能に設けられた車両本体としての上部旋回体13とにより、機体14が構成されている。
【0017】
上部旋回体13上には、キャブ15、燃料タンク16、エンジンルーム構成体17および作動流体圧としての作動油圧により作動する作業腕体18が設けられている。また、作業腕体18は、油圧シリンダ21,22,23により回動されるブーム24、アーム25、バケット26等を有している。さらに、キャブ15とエンジンルーム構成体17との間には、エンジンルーム構成体17に隣接する作業床面部としてのプラットフォーム19が設けられている。
【0018】
図1に示すように、エンジンルーム構成体17は、エンジンカバー体27aおよびカウンタウェイト27bにて形成されたエンジンルーム本体28を有している。このエンジンルーム本体28にて形成されるエンジンルーム構成体17内には、作業腕体18へ作動油を供給する動力装置29が収容されている。動力装置29は、作動油を供給する図示しない油圧ポンプと、この油圧ポンプを駆動させるエンジン31と、このエンジン31を冷却する冷却器32とを有している。
【0019】
エンジンルーム本体28は、プラットフォーム19より上方にて、上部に開口部33が形成さている。また、エンジンルーム構成体17とプラットフォーム19との境界部分には、開口部33のキャブ15側に沿って、プラットフォーム19より上方へ一部が突出した隔壁34が設けられている。この隔壁34は、エンジンルーム構成体17とプラットフォーム19とを遮るようにプラットフォーム19に略垂直に設けられている。
【0020】
隔壁34の一部には、略矩形状の切欠部35が設けられている。また、この切欠部35に対応して、エンジンルーム構成体17とプラットフォーム19とを遮るように略矩形状の可倒部38が設けられている。さらに、エンジンルーム本体28のキャブ15とは反対側の端部であり、カウンタウェイト27b上には、エンジンフード36が回動可能に取り付けられている。このエンジンフード36を回動することにより、開口部33が開閉され、図1に示すような開口部33が開口された開口状態、または、図3に示すようなエンジンフード36が隔壁34および可倒部38の上端部に接触し、開口部33が閉塞された閉塞状態にされる。
【0021】
可倒部38は、プラットフォーム19と開口部33との境界部分に設けられた枢着部37に枢着されている。また、可倒部38は、枢着部37を中心にエンジンルーム本体28の内側へ向かって回動させて横倒し可能である。すなわち、可倒部38は、図1に示すようにプラットフォーム19に略垂直であり隔壁34に略平行な起立状態と、図4に示すようにエンジンルーム本体28の内側へ向かって倒されて可倒部38が開口部33内に位置し、プラットフォーム19に略平行であり略水平な横倒し状態とに変化可能である。
【0022】
ここで、可倒部38は、枢着部37にて回動範囲が規制されている。すなわち、エンジンルーム本体28の内側へ向かって倒された横倒し状態の可倒部38は、枢着部37によって略水平な状態で係止される。なお、枢着部37により係止される構成だけでなく、係止片等を設けて横倒し状態の可倒部38を係止する構成でもよい。
【0023】
可倒部38は、隔壁34と同じ材料にて形成されている。また、可倒部38は、横倒し状態にて上面となる部分がステップ面39となり、エンジンルーム構成体17内のエンジン31などの動力装置29のメンテナンス時に足場として利用する。なお、このステップ面39には、滑り止め等を設けてもよい。
【0024】
次に上記一実施の形態の作用および効果を説明する。
【0025】
エンジンルーム構成体17内のエンジン31など動力装置29をメンテナンスする際には、エンジンフード36を回動して開口部33を開口する。また、プラットフォーム19に対して略垂直な起立状態になっている可倒部38をエンジンルーム本体28の内側へ向かって回動させて横倒し状態にする。
【0026】
使用者は、プラットフォーム19から横倒し状態の可倒部38上、すなわち、ステップ面39上へ移動し、ステップ面39を足場として利用して、エンジンルーム本体28内の動力装置29をメンテナンスする。
【0027】
使用者は、メンテナンスが完了すると、ステップ面39からプラットフォーム19上へ移動し、可倒部38をプラットフォーム19に対して略垂直な起立状態に起立させ、さらに、エンジンフード36を回動させて、エンジンフード36により隔壁34および可倒部38を覆うようにエンジンルーム本体28の開口部33を閉塞する。
【0028】
このような構成の油圧ショベル11は、エンジンルーム構成体17に隣接してプラットフォーム19が設けられ、エンジンルーム構成体17が、エンジンルーム本体28の開口部33に沿って、プラットフォーム19より上方に突出して設けられた隔壁34を有し、閉塞状態では、エンジンフード36が隔壁34の上端に接触して開口部33を閉塞することにより、図6に示す従来の構成に比べて、図5に示すように、隔壁34におけるプラットフォーム19からの突出長さの分だけエンジンルーム構成体17の収容空間を確保でき、エンジンフード36の高さを低くして軽量化できる。したがって、エンジンフード36の操作性を向上でき、エンジンルーム構成体17内のエンジン31等の動力装置29をメンテナンスしやすい。
【0029】
エンジンルーム構成体17は、隔壁34の一部に切欠部35が設けられ、この切欠部35に対応して、エンジンルーム本体28の内側へ向かって横倒し可能である可倒部38が設けられることにより、可倒部38を横倒しするのみで、横倒し状態の可倒部38がステップ面39となり、プラットフォーム19から切欠部35を介して延長された足場として可倒部38を利用できるので、エンジンルーム構成体17内に収容されたエンジン31等の動力装置29をメンテナンスしやすい。
【0030】
可倒部38は、通常時には、プラットフォーム19に略垂直に起立した状態にて隔壁34の一部として利用でき、メンテナンス時には、エンジンルーム本体28の内側へ向かって倒した横倒し状態にして足場として利用できる。したがって、可倒部38は、隔壁34の一部と足場とを兼ねることができ、メンテナンス時の足場用に構成部品が増加せず、構成の煩雑化を防止できる。
【0031】
また、可倒部38を回動するだけで、足場として利用する横倒し状態と、隔壁34の一部として利用する起立状態とを切り換えられるので操作が容易である。
【0032】
さらに、可倒部38が隔壁34の一部と足場とを兼ねるので、可倒部38を倒すことにより、プラットフォーム19からステップ面39へ移動する際に、エンジンルーム構成体17とプラットフォーム19とを遮るものがないので、プラットフォーム19からステップ面39へ容易に移動でき、また、作業スペースを十分に確保できる。したがって、エンジンルーム構成体17内のエンジン31などの動力装置29をメンテナンスしやすい。
【0033】
横倒し状態の可倒部38は、略水平に係止されることにより、プラットフォーム19からステップ面39へ移動しやすく、足場として安定するので、エンジンルーム構成体17内のエンジン31などの動力装置29をメンテナンスしやすい。
【0034】
また、ステップ面39に滑り止め等を設けることによって、より足場として安定したものとなり、エンジンルーム構成体17内のエンジン31などの動力装置29をメンテナンスしやすい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の車両は、例えば油圧ショベルやローダ等の作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
11 車両としての油圧ショベル
13 車両本体としての上部旋回体
17 エンジンルーム構成体
19 作業床面部としてのプラットフォーム
28 エンジンルーム本体
31 エンジン
33 開口部
34 隔壁
35 切欠部
36 エンジンフード
38 可倒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
車両本体に設けられ、エンジンを収容するエンジンルーム構成体と、
エンジンルーム構成体に隣接して設けられた作業床面部とを具備し、
エンジンルーム構成体は、
作業床面部より上方にて上部に開口部が設けられたエンジンルーム本体と、
開口部に沿って作業床面部より上方に突出して設けられかつエンジンルーム構成体と作業床面部とを遮る隔壁と、
隔壁の一部に設けられた切欠部と、
切欠部に対応して設けられ、エンジンルーム本体の内側へ向かって横倒し可能な可倒部と、
エンジンルーム本体の開口部を開閉可能なエンジンフードとを有する
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
倒した状態の可倒部は、略水平に係止される
ことを特徴とする請求項1記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−174573(P2010−174573A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20908(P2009−20908)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】