説明

車両

【課題】通知システム及び減速支援システムの両方を運転者の期待通りに作動させる。
【解決手段】車両(1)は、所定の通知条件が成立したことを条件に、信号機の灯色が赤である期間の残り時間を通知する通知システム(10)と、所定の減速支援条件が成立したことを条件に、車速が低下するように所定の減速制御を行う減速支援システム(20)と、を備える。車両は、所定の減速支援条件が成立した場合に、所定の通知条件を緩和する条件緩和手段(109)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば信号機の灯色が赤である期間の残り時間を通知する通知システムと、例えば信号の灯色に応じて自動減速を実行する減速支援システムとを備える、例えば自動車等の車両の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両が備える通知システムとして、例えば、信号機に設けられたDSRC送信機から発信される信号機の点灯状態及び点灯時間に関する信号機情報に基づいて、信号機の点灯状態及び点灯時間に関する情報を表示装置に表示するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
他方、この種の車両が備える減速支援システムとして、例えば、車両を安全に走行させるために、アクセルオフによる自動減速や自動ブレーキによる減速等を実行するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−171459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通知システム及び減速支援システムを備える車両では、例えば信号機の灯色が赤である交差点に向かって該車両が走行している場合、通知システム及び減速支援システムが同時期に作動する可能性がある。この場合に、通知システム及び減速支援システムが互いに独立していると、通知システム及び減速支援システムの少なくとも一方が期待通りに作動しない可能性があるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、通知システム及び減速支援システムの両方を運転者の期待通りに作動させることができる車両を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の車両は、上記課題を解決するために、所定の通知条件が成立したことを条件に、信号機の灯色が赤である期間の残り時間を通知する通知システムと、所定の減速支援条件が成立したことを条件に、車速が低下するように所定の減速制御を行う減速支援システムと、を備える車両であって、前記所定の減速支援条件が成立した場合に、前記所定の通知条件を緩和する条件緩和手段を備える。
【0008】
本発明の第1の車両によれば、当該車両は、所定の通知条件が成立したことを条件に、信号機の灯色が赤である期間(以降、適宜“赤信号期間”と称する)の残り時間を通知する通知システムと、所定の減速支援条件が成立したことを条件に、車速が低下するように所定の減速制御を行う減速支援システムと、を備えている。
【0009】
通知システムは、例えば、対象信号機に係る情報を光学式車両感知器(所謂、光ビーコン)等の路上に設置された交通インフラストラクチャ(以降、適宜“インフラ”と称する)を介して取得する取得手段、所定の通知条件が成立したか否かを判定する判定手段、取得された情報に基づいて、対象信号機の赤信号期間の残り時間を演算する演算手段、並びに、該演算された残り時間を、所定の時間間隔で更新しつつ、車両の運転者に通知するようにディスプレイ等を制御する制御手段を備えて構成されている。
【0010】
「所定の通知条件」とは、赤信号期間の残り時間を車両の運転者に対して通知するか否かを決定する条件であり、予め定められた固定条件として、又は何らかの物理量若しくはパラメータに応じた可変条件として設定されている。
【0011】
「所定の通知条件」は、例えば、対象信号機の灯色が赤、赤信号期間の残り時間が所定値以上、車両と対象信号機が設置された交差点との間の距離が所定値以内、等である。このような「所定の通知条件」は、例えば、車両の運転者に対して適切に対象信号機の赤信号期間の残り時間を通知できると共に、該通知に起因して安全な運転が妨げられないような条件として設定すればよい。
【0012】
減速支援システムは、例えば、対象信号機に係る情報を交通インフラを介して取得する取得手段、所定の減速支援条件が成立したか否かを判定する判定手段、及び所定の減速制御を行う制御手段を備えて構成されている。
【0013】
「所定の減速支援条件」とは、所定の減速支援を行うか否かを決定する条件であり、予め定められた固定条件として、又は何らかの物理量若しくはパラメータに応じた可変条件として設定されている。
【0014】
「所定の減速支援条件」は、例えば、車両が対象信号機が設置されている交差点に到着するまでの時間が所定時間以下、停止線で車両の速度を所定速度まで減速するために必要な減速加速度が所定値以上、車両と交差点との間の距離が所定距離以下、等である。このような「所定の減速支援条件」は、例えば、車両の運転者に違和感を与えることなく、車両を適切に減速できるような条件として設定すればよい。
【0015】
「所定の減速制御」は、例えば、強制的なアクセル開度の変更、車両に制動力が生じるようなブレーキ装置の制御、エンジンブレーキが増加するような変速機における変速比の変更等の、公知の減速制御を意味する。このような減速制御では、例えば、自車両位置、目的地までの距離、現在の車速及び目標車速等が特定又は決定された後に、制御量、制御タイミング等が決定される。
【0016】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる条件緩和手段は、所定の減速支援条件が成立した場合に、所定の通知条件を緩和する。尚、条件緩和手段は、所定の減速支援条件が成立しない場合は、典型的には、所定の通知条件を緩和しない。
【0017】
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、通知システムは、例えば対象信号機の灯色が赤から青に変わった際の発進遅れを防止するために、赤信号期間の残り時間が所定値以下である場合は、車両の運転者に対し、残り時間を通知しないように構成されていることが多い。通知システム及び減速支援システムを備える車両では、減速支援システムによって所定の減速制御が行われたことに起因して、車両が交差点に到着した時の赤信号期間の残り時間が所定値以下になる場合がある。すると、信号機の灯色が赤であっても、運転者に対し、赤信号期間の残り時間が通知されたり、通知されなかったりする。この結果、運転者が、通知システムに対して不信感を覚えたり、通知システムが故障したと誤解したりする可能性がある。
【0018】
しかるに本発明では、条件緩和手段により、所定の減速支援条件が成立した場合に、所定の通知条件が緩和される。このため、減速支援システムが作動した場合であっても、運転者の期待通りに通知システムを作動させることができる。
【0019】
本発明の第2の車両は、上記課題を解決するために、所定の通知条件が成立したことを条件に、信号機の灯色が赤である期間の残り時間を通知する通知システムと、所定の減速支援条件が成立したことを条件に、車速が低下するように所定の減速制御を行う減速支援システムと、を備える車両であって、前記減速支援システムは、当該車両が交差点に向かって走行している際に、前記所定の減速支援条件が成立した場合、当該車両が前記交差点に到達した時に前記所定の通知条件が成立するように前記所定の減速制御を行う。
【0020】
本発明の第2の車両によれば、減速支援システムは、当該車両が交差点に向かって走行している際に、所定の減速支援条件が成立した場合、当該車両が交差点に到達した時に所定の通知条件が成立するように所定の減速制御を行う。
【0021】
ここで、「当該車両が交差点に到達した時に所定の通知条件が成立するように所定の減速制御を行う」とは、減速支援システムは、当該車両が交差点に到達した時に、例えば赤信号期間の残り時間が所定値より大きい等の所定の通知条件が成立するように、例えば、所定の減速制御を行う際の制御量や制御開始タイミングの変更等を行うことを意味する。
【0022】
この結果、上述した本発明の第1の車両と同様に、減速支援システムが作動した場合であっても、運転者の期待通りに通知システムを作動させることができる。
【0023】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るECUが実行する走行支援制御処理を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係るECUが実行する走行支援制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る車両の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
<第1実施形態>
本発明に係る車両の第1実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0027】
先ず、本実施形態に係る車両の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。尚、図1では、説明の便宜上、本実施形態に直接関係のある部材のみ図示しており、他の部材については図示を省略している。
【0028】
図1において、車両1は、GPS101、車載カメラ102、ミリ波レーダ103、インフラ通信装置104、車速センサ105、ディスプレイ106、ACC(Adaptive Cruise Control)スイッチ107、PCS(Pre−Crash Safety)スイッチ108、ECU(Electronic Control Unit)109、地図情報データベース(DB)110、カーナビゲーション111、ブレーキアクチュエータ112、アクセルアクチュエータ113及びスピーカ114を備えて構成されている。
【0029】
車両1は、更に、後述する、赤信号停止目安時間通知システム10及び減速支援システム20を備えて構成されている。
【0030】
GPS101は、GPS衛星からの信号を受信して、車両1の現在位置を特定し、該特定された現在位置を示す信号をECU109に送信する。車載カメラ102は、主に車両1の前方の画像を撮像し、該撮像された画像を示す信号をECU109に送信する。ECU109は、受信した信号に対応する画像を表示するように、ディスプレイ106を制御する。
【0031】
ミリ波レーダ103は、ミリ波を出射すると共に、対象物(例えば、前方車両等)により反射された電波を受信し、伝播時間やドップラー効果に起因して生じる周波数等を基に、対象物の位置や車両1との相対速度を測定し、該測定された対象物の位置や相対速度を示す信号をECU109に送信する。
【0032】
インフラ通信装置104は、例えば光ビーコン等の路上に設置された交通インフラを介して、例えば、見通しの悪い周辺の状況に係る情報、交通管制情報(例えば信号機や標識等に係る情報)、道路状況に係る情報(例えば交通事故や渋滞等に係る情報)を取得し、該取得された情報を示す信号をECU109に送信する。ECU109は、受信した信号に対応する情報を表示するように、ディスプレイ106を制御する。
【0033】
車速センサ105は、例えば車速に比例する出力軸(図示せず)の回転数を検出し、該検出された回転数を示す信号をECU109に送信する。
【0034】
ACCスイッチ107及びPCSスイッチ108は、運転モードを設定するためのスイッチである。ACCスイッチ107及びPCSスイッチ108は、車両1の運転者により夫々ON状態にされることによって、ACC機能及びPCS機能を有効にする。
【0035】
地図情報データベース110は、地図データファイル、交差点データファイル、道路データファイル等を備えて構成されている。該地図情報データベース110には、車両の走行に必要な情報(例えば地図、直線路、コーナ、登降坂路、高速道路等)が格納されている。
【0036】
カーナビゲーション111は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としている。該カーナビゲーション111は、GPS101、インフラ通信装置104、ディスプレイ106、ECU109、地図情報データベース110及びスピーカ114と協働することによって、運転者に、車両1の現在地周辺の地図情報、車両1の現在位置、目的位置、経路等の情報を提供する。
【0037】
赤信号停止目安時間通知システム10は、GPS101、インフラ通信装置104、車速センサ105、ディスプレイ106、ECU109、地図情報データベース110、カーナビゲーション111及びスピーカ114を備えて構成されている。
【0038】
赤信号停止目安時間通知システム10において、インフラ通信装置104は、交通インフラを介して、信号機に係る情報である信号情報を取得する。ここで、信号情報には、例えば、信号機の位置情報、現在の点灯状態(青、黄、赤、矢印等)、点灯サイクル情報、方向、信号機種別等が含まれる。
【0039】
ECU109は、GPS101、車速センサ105、地図情報データベース110及びカーナビゲーション111と協働することによって、対象とすべき信号機を特定する。続いて、ECU109は、例えば、取得された信号情報のうち該特定された対象信号機に係る信号情報に基づいて、対象信号機の灯色が赤である期間の残り時間を算出する。
【0040】
次に、ECU109は、対象信号機に係る信号情報、車速センサ105から送信された信号、GPS101から送信された信号等により特定された自車両位置、等に基づいて、停止目安時間通知実施可能条件が成立したか否かを判定する。ここで、「停止目安時間通知実施可能条件」は、例えば、赤信号期間の残り時間が一定値以上、車両1が対象信号機が設置された交差点を通過していない、等である。
【0041】
停止目安時間通知実施可能条件が成立したと判定された場合、ECU109は、例えば、赤信号期間の残り時間、自車両位置等に基づいて、停止目安時間通知開始条件が成立したか否かを判定する。ここで、「停止目安時間通知開始条件」は、例えば、対象信号機の灯色が赤、車両1と対象信号機が設置された交差点との間の距離が一定値以内、等である。
【0042】
停止目安時間通知開始条件が成立したと判定された場合、ECU109は、赤信号期間の残り時間を、所定間隔(例えば5秒等)で更新しながら、車両1の運転者に通知するようにディスプレイ106及びスピーカ114の少なくとも一方を制御する。
【0043】
ECU109は、対象信号機の灯色が赤から青に変わる時点よりも所定時間(例えば5秒)前に(即ち、赤信号期間の残り時間がゼロになる所定時間前に)、赤信号期間の残り時間の通知を終了するようにディスプレイ106及びスピーカ114を制御する。
【0044】
尚、本実施形態に係る「停止目安時間通知実施可能条件」及び「停止目安時間通知開始条件」は、本発明に係る「所定の通知条件」の一例である。
【0045】
減速支援システム20は、GPS101、車載カメラ102、ミリ波レーダ103、インフラ通信装置104、車速センサ105、ECU109及び地図情報データベース110を備えて構成されている。
【0046】
減速支援システム20は、車両1が、信号機の灯色が赤である交差点に向かって走行している際に、例えばアクセルオフによる自動減速や自動ブレーキによる減速等を行う。或いは、減速支援システム20は、車両1と該車両1の前方を走行している車両との間の距離が所定距離未満となった場合に、例えばアクセルオフによる自動減速や自動ブレーキによる減速等を行う。
【0047】
本実施形態では、車両1が、信号機の灯色が赤である交差点に向かって走行している際に実行される減速支援処理について、具体的に説明する。
【0048】
減速支援システム10において、ECU109は、GPS101、車載カメラ102及びインフラ通信装置104の各々から送信された信号、並びに地図情報データベース110に格納されている情報に基づいて、車両1が交差点に向かって走行していることを検知すると共に、該交差点に設置された信号機に係る信号情報を取得する。
【0049】
次に、ECU109は、取得された信号情報、GPS101から送信された信号等により特定された自車両位置、等に基づいて、減速支援実施可能条件が成立したか否かを判定する。ここで、「減速支援実施可能条件」は、例えば、車両1の速度が一定値以内、車両1と対象交差点との間の距離が一定値以内、信号サイクル時間が一定値以上、等である。
【0050】
減速支援実施可能条件が成立したと判定された場合、ECU109は、例えば、信号情報、自車両位置、車速センサ105から送信された信号等に基づいて、減速支援開始条件が成立したか否かを判定する。ここで、「減速支援開始条件」は、例えば、車両1の運転者がアクセルペダルを踏下していない、車両1が対象交差点に到着した際の信号機の灯色が赤、車両1が対象交差点の停止線に到着するまでの時間が一定値以上、等である。
【0051】
減速支援開始条件が成立したと判定された場合、ECU109は、本発明に係る「所定の減速制御」の一例として、アクセル開度を変更するようにアクセルアクチュエータ113を制御する、或いは、車両1に制動力が生じるようにブレーキアクチュエータ112を制御する、或いは、車両1の運転者に対して注意を促す警報を出力するようにスピーカ114を制御する。
【0052】
尚、本実施形態に係る「減速支援実施可能条件」及び「減速支援開始条件」は、本発明に係る「所定の減速支援条件」の一例である。
【0053】
例えば、車両1が信号機の灯色が赤である交差点に向かって走行している際に、減速支援開始条件が成立したと判定された場合、車両1の一部としてのECU109は、停止目安時間通知開始条件を緩和する。具体的には例えば、ECU109は、車両1の速度の下限値を引き上げる、或いは、開始タイミングを早める(即ち、例えば車両1と対象信号機が設置された交差点との間の距離を初期値よりも大きくする)。
【0054】
尚、本実施形態に係る「ECU109」は、本発明に係る「条件緩和手段」の一例である。
【0055】
次に、以上のように構成された車両1の走行中に、ECU109が実行する走行支援制御処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。この走行支援制御処理は、主に車両1の走行中に、一定周期で又は不定周期で、或いは連続して実行される。
【0056】
図2において、先ず、ECU109は、インフラ通信装置104を介して、信号機情報を取得する(ステップS101)。次に、ECU109は、減速支援実施可能条件が成立したか否かを判定する(ステップS102)。減速支援実施可能条件が成立しないと判定された場合(ステップS102:No)、ECU109は、後述するステップS106の処理を実行する。
【0057】
減速支援実施可能条件が成立したと判定された場合(ステップS102:Yes)、ECU109は、減速支援開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS103)。減速支援開始条件が成立しないと判定された場合(ステップS103:No)、ECU109は、ステップS102の処理を実行する。
【0058】
減速支援開始条件が成立したと判定された場合(ステップS103:Yes)、ECU109は、例えば、アクセル開度を変更するようにアクセルアクチュエータ113を制御する、或いは、車両1に制動力が生じるようにブレーキアクチュエータ112を制御する、或いは、車両1の運転者に対して注意を促す警報を出力するようにスピーカ114を制御する(ステップS104)。
【0059】
次に、ECU109は、後述する停止目安時間通知開始条件が成立したか否かを判定する際の車両1の速度に係る閾値である閾値Vの値をV+αに変更する(ステップS105)。次に、ECU109は、停止目安時間通知実施可能条件が成立したか否かを判定する(ステップS106)。尚、“α”は、例えば、製造者による実験等により取得されたデータに基づいて予め設定すればよい。
【0060】
停止目安時間通知実施可能条件が成立しないと判定された場合(ステップS106:No)、ECU109は、処理を終了する。他方、停止目安時間通知実施可能条件が成立したと判定された場合(ステップS106:Yes)、ECU109は、車両1の速度が閾値V以下であるか否かを判定する(ステップS107)。ここで、上述したステップS105の処理が実行されている場合、閾値Vの値はV+αとなっており、ステップS105の処理が実行されていない場合、閾値Vの値は予め定められた初期値となっている。
【0061】
車両1の速度が閾値Vよりも大きいと判定された場合(ステップS107:No)、ECU109は、ステップS106の処理を実行する。他方、車両1の速度が閾値V以下であると判定された場合(ステップS107:Yes)、ECU109は、停止目安時間通知開始条件が成立したか否かを判定する(ステップS108)。
【0062】
停止目安時間通知開始条件が成立しないと判定された場合(ステップS108:No)、ECU109は、ステップS106の処理を実行する。他方、停止目安時間通知開始条件が成立したと判定された場合(ステップS108:Yes)、ECU109は、赤信号期間の残り時間を、所定間隔で更新しながら、車両1の運転者に通知するようにディスプレイ106及びスピーカ114の少なくとも一方を制御する(ステップS109)。
【0063】
次に、ECU109は、停止目安時間通知終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS110)。ここで、「停止目安時間通知終了条件」は、例えば、赤信号期間が満了した、車両1の速度が閾値Vより大きくなった、車両1が対象交差点を通過した、等である。
【0064】
停止目安時間通知終了条件が成立していないと判定された場合(ステップS110:No)、ECU109は、ステップS109の処理を実行する。他方、停止目安時間通知終了条件が成立したと判定された場合(ステップS110:Yes)、ECU109は、処理を終了する。
【0065】
尚、ステップS107の処理では、車両1の速度が閾値V以下であるか否かを判定することに加えて又は代えて、車両1の速度が閾値V以下である期間が所定時間以上であるか否かを判定してもよい。この場合、ステップS105の処理では、所定時間の値を変更すればよい。
【0066】
<第2実施形態>
本発明の車両に係る第2実施形態を、図3のフローチャートを参照して説明する。第2実施形態では、ECUが実行する走行支援処理が異なる以外は、第1実施形態の構成と同様である。よって、第2実施形態について、第1実施形態と重複する説明を省略すると共に、図面上における共通箇所には同一符号を付して示し、基本的に異なる点についてのみ、図3を参照して説明する。
【0067】
本実施形態では、例えば、車両1が信号機の灯色が赤である交差点に向かって走行している際に、減速支援実施可能条件が成立したと判定された場合、減速支援システム20の一部としてのECU109は、車両1が対象交差点に到着した時に、停止目安時間通知開始条件が成立するように減速支援処理を行う。
【0068】
具体的には例えば、ECU109は、車両1が対象交差点に到着した時に、停止目安時間通知開始条件が成立するように、減速支援処理において、実際にブレーキアクチュエータ112やアクセルアクチュエータ113等の制御が開始されるタイミングを変更する、或いは、ブレーキアクチュエータ112やアクセルアクチュエータ113等の制御量を変更する。
【0069】
以上のように構成された車両1の走行中に、ECU109が実行する走行支援制御処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0070】
図3において、先ず、ECU109は、インフラ通信装置104を介して、信号機情報を取得する(ステップS201)。次に、ECU109は、減速支援実施可能条件が成立したか否かを判定する(ステップS202)。減速支援実施可能条件が成立しないと判定された場合(ステップS202:No)、ECU109は、後述するステップS210の処理を実行する。
【0071】
減速支援実施可能条件が成立したと判定された場合(ステップS202:Yes)、ECU109は、取得された信号機情報に基づいて、車両1が対象交差点に到着した時の信号機の灯色が赤であるか否かを判定する(ステップS203)。信号機の灯色が赤でないと判定された場合(ステップS203:No)、ECU109は、ステップS202の処理を実行する。
【0072】
信号機の灯色が赤であると判定された場合(ステップS203:Yes)、ECU109は、取得された信号機情報、車速センサ105から送信された信号(即ち、現在の車両1の速度を示す信号)、GPS101から送信された信号等により特定された自車両位置、地図情報データベース110に格納されている情報等に基づいて、車両1が対象交差点に到着した時の赤信号期間の残り時間(Tr)を算出する(ステップS204)。
【0073】
次に、ECU109は、減速支援処理に起因して低下した車両1の速度(推定値)等に基づいて、遅れ時間(t)を算出する(ステップS205)。尚、遅れ時間(t)は、現在の車両1の速度に基づいて算出された、車両1が対象交差点に到着する時刻と、減速支援処理に起因して低下した車両1の速度に基づいて算出された、車両1が対象交差点に到着する時刻と、の差分値である。
【0074】
次に、ECU109は、算出された残り時間(Tr)から算出された遅れ時間(t)を差し引いた値(即ち、Tr−t)が、所定時間β以下であるか否かを判定する(ステップS206)。尚、所定時間βは、赤信号停止目安時間通知システム10の一部としてのECU109が、赤信号期間の残り時間の通知を終了するようにディスプレイ106及びスピーカ114を制御するか否かを決定する値である。
【0075】
このような所定時間βは、実験的若しくは経験的に、又はシミュレーションによって、例えば運転者の注意が残り時間の通知に向くこと起因する発進遅れを防止することが可能な時間を求めて、該求められた時間として設定すればよい。
【0076】
Tr−tが所定時間βより大きいと判定された場合(ステップS206:No)、ECU109は、後述するステップS208の処理を実行する。他方、Tr−tが所定時間β以下であると判定された場合(ステップS206:Yes)、ECU109は、減速支援処理において、実際にブレーキアクチュエータ112やアクセルアクチュエータ113等の制御が開始されるタイミングである開始タイミング(Ta)が遅くなるように変更する(ステップS207)。
【0077】
尚、本実施形態において、開始タイミング(Ta)は、車両1が対象交差点の停止線に到着するまでに要する時間として設定されている。
【0078】
次に、ECU109は、車速センサ105から送信された信号、自車両位置、地図情報データベース110に格納されている情報等に基づいて、車両1が対象交差点の停止線に到着するまでに要する時間を算出し、該算出された時間が開始タイミング(Ta)以下であるか否かを判定する(ステップS208)。
【0079】
算出された時間が開始タイミングより大きいと判定された場合(ステップS208:No)、ECU109は、ステップS208の処理を実行する。他方、算出された時間が開始時間タイミング以下であると判定された場合(ステップS208:Yes)、ECU109は、アクセル開度を変更するようにアクセルアクチュエータ113を制御して、アクセルオフ誘導支援を行う(ステップS209)。
【0080】
次に、ECU109は、車速センサ105から送信された信号に基づいて、車両1の速度が閾値V以下であるか否かを判定する(ステップS210)。車両1の速度が閾値V以下であると判定された場合(ステップS210:Yes)、ECU109は、対象交差点における赤信号期間の残り時間が所定時間β以上であるか否かを判定する(ステップS211)。
【0081】
対象交差点における赤信号期間の残り時間が所定時間βより少ないと判定された場合(ステップS211:No)、ECU109は、処理を終了する。他方、対象交差点における赤信号期間の残り時間が所定時間β以上であると判定された場合(ステップS211:Yes)、ECU109は、赤信号期間の残り時間を、所定間隔で更新しながら、車両1の運転者に通知するようにディスプレイ106及びスピーカ114の少なくとも一方を制御して(ステップS212)、処理を終了する。
【0082】
尚、赤信号期間の残り時間の通知は、上述したステップS110の処理(図2参照)と同様に、停止目安時間通知終了条件が成立したか否かが判定され、該停止目安時間通知終了条件が成立したと判定された場合に、終了される。
【0083】
ステップS210の処理において、車両1の速度が閾値Vより大きいと判定された場合(ステップS210:No)、ECU109は、GPS101から送信された信号、及び地図情報データベース110に格納されている情報に基づいて、車両1が対象交差点を通過したか否かを判定する(ステップS213)。
【0084】
車両1が対象交差点を通過したと判定された場合(ステップS213:Yes)、ECU109は、処理を終了する。他方、車両1が対象交差点を通過していないと判定された場合(ステップS213:No)、ECU109は、ステップS210の処理を実行する。
【0085】
尚、ステップS207の処理において、開始タイミング(Ta)を変更することに加えて又は代えて、例えば、制御量を大きくすること、車両1の停止目標位置を変更すること、車両1と前方を走行している車両との間の距離を広くすること等を行ってよい。
【0086】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
1…車両、10…赤信号停止目安時間通知システム、20…減速支援システム、101…GPS、102…車載カメラ、103…ミリ波レーダ、104…インフラ通信装置、105…車速センサ、106…ディスプレイ、107…ACCスイッチ、108…PCSスイッチ、109…ECU、110…地図情報データベース、111…カーナビゲーション、112…ブレーキアクチュエータ、113…アクセルアクチュエータ、114…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通知条件が成立したことを条件に、信号機の灯色が赤である期間の残り時間を通知する通知システムと、所定の減速支援条件が成立したことを条件に、車速が低下するように所定の減速制御を行う減速支援システムと、を備える車両であって、
前記所定の減速支援条件が成立した場合に、前記所定の通知条件を緩和する条件緩和手段を備える
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
所定の通知条件が成立したことを条件に、信号機の灯色が赤である期間の残り時間を通知する通知システムと、所定の減速支援条件が成立したことを条件に、車速が低下するように所定の減速制御を行う減速支援システムと、を備える車両であって、
前記減速支援システムは、当該車両が交差点に向かって走行している際に、前記所定の減速支援条件が成立した場合、当該車両が前記交差点に到達した時に前記所定の通知条件が成立するように前記所定の減速制御を行う
ことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−141802(P2011−141802A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2864(P2010−2864)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】