説明

車両

【課題】劣化により捨ててしまう無駄な燃料を低減することができる車両を提供する。
【解決手段】複数の隔絶された貯留空間を有する燃料タンク14と、燃料タンク14から燃料が供給されるエンジン1と、複数の貯留空間の各々における燃料の劣化状態を判定する劣化状態判定手段を有する制御装置24と、を備えた車両100である。制御装置24は、劣化状態判定手段によって燃料の劣化が判定された貯留空間内の燃料量を増減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外部から充電可能に構成されたハイブリッド自動車において、燃料タンク内の燃料の劣化を検出すると、燃料が劣化した旨を乗員に報知する技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された技術によれば、燃料性状の悪化を乗員に報知することによって、乗員に燃料の交換を促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−302772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、燃料タンク内の燃料の劣化を検出した後に、劣化した燃料を捨てる必要があるため、燃料が無駄になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような技術的課題を鑑みてなされたもので、劣化により捨ててしまう無駄な燃料を低減することができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の隔絶された貯留空間を有する燃料タンクと、燃料タンクから燃料が供給されるエンジンと、複数の貯留空間の各々における燃料の劣化状態を判定する劣化状態判定手段を有する制御装置と、を備えた車両である。制御装置は、劣化状態判定手段によって燃料の劣化が判定された貯留空間内の燃料量を増減させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料が劣化した貯留空間内の燃料量を増減させることで、劣化した燃料が貯留空間内に長期間とどまることを防いでいるので、劣化により捨ててしまう無駄な燃料を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る電動車両を示す全体システム図である。
【図2】本発明の実施形態に係る燃料タンクの周辺構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電動車両において燃料給油時の制御ロジックを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る燃料タンクにおけるアクチュエータの制御動作を説明するための図である。
【図5】図3のS102における給油タンクの選択に係る制御ロジックの第一の例を示すフローチャートである。
【図6】図3のS102における給油タンクの選択に係る制御ロジックの第二の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る電動車両において燃料消費時の制御ロジックを示すフローチャートである。
【図8】図7のS132における使用タンクの選択に係る制御ロジックを説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態に係るタンクの別の構成例を示す図である(その1)。
【図10】本発明の実施形態に係るタンクの別の構成例を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る電動車両100を示す全体システム図である。図1では、電動車両100の一例として、シリーズ方式のプラグイン・ハイブリッド車両を示している。なお、燃料タンク14を有する車両であれば、シリーズ方式のプラグイン・ハイブリッド車両には限らない。例えば、パラレル方式のプラグイン・ハイブリッド車両、内燃機関車両等でもよい。
【0011】
図1に示す電動車両100の駆動系は、エンジン1と、発電モータ2(モータ)と、駆動モータ3と、強電バッテリ4と、減速差動機構5と、駆動輪6と、発電モータ用インバータ7と、駆動モータ用インバータ8と、充電変換器9と、切替器10と、充電ポート11と、燃料タンク14と、を備えている。
【0012】
この車両は、電気自動車走行モード(以下、「EV走行モード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEV走行モード」という。)を有する。EV走行モードとは、強電バッテリ4に蓄えられた電力で駆動モータ3を駆動し、駆動モータ3のみを駆動源として走行しつつ、エンジン1は非稼動のモードである。一方、HEV走行モードとは、駆動モータ3を駆動源として走行しつつも、エンジン1が充電等のために稼動するモードである。
【0013】
エンジン1は、発電要求時、発電モータ2により始動され、完爆後、発電モータ2を駆動して発電する。そして、発電要求有りから発電要求無しに移行すると、エンジン1と発電モータ2は停止する。
【0014】
発電モータ2は、エンジン1に連結され、モータ機能と発電機能を発揮するモータジェネレータである。モータ機能は、エンジン1が停止状態で発電要求があったとき、強電バッテリ4の電力を消費し、エンジン1のクランキングに続いて点火させることによってエンジン1を始動するときに発揮される。発電機能は、エンジン1が駆動状態の場合、エンジン1から回転駆動パワーを受け、これを三相交流の電力に変換し、発電電力を強電バッテリ4に充電するときに発揮される。
【0015】
駆動モータ3は、減速差動機構5を介して車両の駆動輪6に繋がれ、モータ機能と発電機能を発揮するモータジェネレータである。モータ機能は、発進加速時や定速走行時や中間加速時、強電バッテリ4の電力を消費し、車両を駆動するときに発揮される。発電機能は、減速時や制動時等において、駆動輪6から回転駆動パワーを受け、これを三相交流の電力に変換し、発電電力を強電バッテリ4に充電する回生発電を行うときに発揮される。
【0016】
強電バッテリ4は、リチウムイオン二次電池や高容量キャパシタ等が用いられ、発電モータ2で発電された電力や駆動モータ3で回生発電された電力を蓄えると共に、駆動モータ3や発電モータ2に蓄えた電力を供給する。
【0017】
発電モータ用インバータ7は、発電モータ2と強電バッテリ4との間に配置され、三相交流と直流を相互に変換する。三相交流は、発電モータ2の駆動・発電に用いられ、直流は、強電バッテリ4の充放電に用いられる。
【0018】
駆動モータ用インバータ8は、駆動モータ3と強電バッテリ4との間に配置され、三相交流と直流を相互に変換する。三相交流は、駆動モータ3の駆動・発電に用いられ、直流は、強電バッテリ4の充放電に用いられる。
【0019】
充電変換器9は、強電バッテリ4と充電ポート11との間に配置され、プラグイン充電中、充電ポート11から供給される交流の外部電力を、強電バッテリ4に充電可能な直流の電力に変換する。
【0020】
切替器10は、発電モータ2と発電モータ用インバータ7と充電ポート11の間に配置され、発電経路・給電経路を切り替える。発電経路は、充電ポート11を切り離し、発電モータ2と発電モータ用インバータ7を接続するパターンとする。給電経路は、下記の3パターンの何れかを切り替え選択する。
・充電ポート11を切り離し、発電モータ2と発電モータ用インバータ7を接続することで、強電バッテリ4の電力を使用するパターン。
・発電モータ2と発電モータ用インバータ7と充電ポート11を接続することで、充電ポート11と強電バッテリ4の双方の電力を使用するパターン。
・発電モータ用インバータ7を切り離し、発電モータ2と充電ポート11を接続することで、充電ポート11の電力を使用するパターン。
【0021】
充電ポート11は、車体の外周位置に設定され、外部充電器12の設定位置に車両を停車し、この停車状態でリッド等を開けて外部充電器12の給電プラグ13を差し込んで接続すると、充電変換器9を介して強電バッテリ4に充電(プラグイン充電)する。ここで、外部充電器12とは、自宅で深夜電力を用いて低速充電するための家庭用充電システムや、自宅から離れた出先での急速充電が可能な急速充電スタンド、等をいう。
【0022】
燃料タンク14は、エンジン1に供給される燃料を蓄えるための機器である。燃料タンク14の周辺構成については、図2等を用いて詳細に後述する。
【0023】
なお、この燃料タンク14は、フィラーチューブ15を介して給油口16に接続されている。フィラーチューブ15は、燃料タンク14と給油口16とを連通する燃料給油パイプである。給油口16に給油された燃料は、このフィラーチューブ15内の通路を通流し、燃料タンク14に蓄えられる。なお、給油口16は、通常時はフィラーキャップ(不図示)で閉じられ、さらにその上に車体側面と一体となる面を構成するフィラーリッド17が閉じられている。また、この燃料タンク14は、燃料チューブ18を介してエンジン1に接続されている。燃料チューブ18は、燃料タンク14とエンジン1とを連通する燃料給油パイプである。燃料タンク14内の燃料は、この燃料チューブ18内の通路を通流し、エンジン1に供給される。
【0024】
図1に示す電動車両100の制御系は、エンジンコントローラ(ECM)20と、ジェネレータコントローラ(GC)21と、モータコントローラ(MC)22と、バッテリコントローラ(LBC)23と、車両統合コントローラ(VCM)24と、ナビゲーションコントローラ(NAVI/C)25と、イグニッションキースイッチ(IGN−SW)26と、各種センサ類27と、スピーカー28と、を備えている。なお、各コントローラ20、21、22、23、24は、各種データを共有化できるように、情報交換が可能なCAN通信線30により接続されている。また、各コントローラ20、21、22、23、24は、プログラムを実行するプロセッサと、プロセッサによって実行されるプログラムを格納するメモリと、プロセッサに接続されたインターフェースと、を備える。
【0025】
エンジンコントローラ20は、車両統合コントローラ24からの制御指令にしたがって、エンジン1の吸入空気量・点火時期・燃料噴射量を操作することで出力トルクを制御する。
【0026】
ジェネレータコントローラ21は、車両統合コントローラ24からの制御指令にしたがって、発電モータ2の入出力トルクを制御するために発電モータ用インバータ7を操作する。
【0027】
モータコントローラ22は、車両統合コントローラ24からの制御指令にしたがって、駆動モータ3の入出力トルクを制御するために駆動モータ用インバータ8を操作する。
【0028】
バッテリコントローラ23は、強電バッテリ4の充電率(充電容量)や入出力可能パワー等の内部状態量を推定すると共に、強電バッテリ4の保護制御を行う。以下、強電バッテリ4の充電率(充電容量)を、バッテリSOC(SOCは「State Of Charge」の略)という。
【0029】
車両統合コントローラ24は、共有化した各種データに基づき、複数のコントローラ20、21、22、23を協調させながら、運転者の要求に沿ってモータ駆動出力を制御する。また、運転性と燃費(経済性)の両方を考慮しながら発電出力を制御する。この車両統合コントローラ24は、ナビゲーションコントローラ25、イグニッションキースイッチ26、各種センサ類27からの情報を入力し、運転者を含む乗員に通知すべき情報をナビゲーションコントローラ25、スピーカー28に出力する。
【0030】
ナビゲーションコントローラ25は、衛星からのGPS信号を用いて自車位置を検出すると共に、DVD等に記憶された地図データに基づいて、目的地までの経路探索や誘導を行う。ナビゲーションコントローラ25により得られた地図上での自車位置情報は、自宅位置情報や充電スタンド位置情報と共に、車両統合コントローラ24に対して供給される。
【0031】
イグニッションキースイッチ26は、エンジン1の点火装置のスイッチである。このイグニッションキースイッチ26は、スターターモーター(セルモーター)のスイッチも兼ねている。各種センサ類27は、アクセル開度センサや車輪速センサ、フィラーリッド17の開状態検出センサ等の各種センサである。スピーカー28は、音声を出力する装置である。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に係る燃料タンク14の周辺構成例を示す図である。
【0033】
図2に示すように、燃料タンク14は、互いに隔絶されたタンク(貯留空間)14A、14Bからなる。タンク14A、14Bは、いずれも燃料を貯蔵する手段である。タンク14A、14Bのそれぞれには、エンジン1等へ燃料を圧送するための燃料ポンプ19A、19Bが設けられている。これにより、任意のタンク14A、14Bからエンジン1へ燃料を供給又は排出することが可能となる。
【0034】
フィラーチューブ15は、前述のように、給油口16とタンク14A、14Bとを連通する燃料給油パイプである。このフィラーチューブ15は、給油口16からタンク14A、14Bに向かう途中で分岐しており、タンク14Aへの配管の途中には、給油口16からタンク14Aへの燃料の給油を遮断可能なバルブ(流路遮断手段、給油制御バルブ)41が設けられている。一方、タンク14Bへの配管の途中には、給油口16からタンク14Bへの燃料の給油を遮断可能なバルブ(給油制御バルブ)42が設けられている。バルブ41、42の開閉を制御することにより、任意のタンク14A、14Bへの燃料の給油が可能となる。
【0035】
燃料チューブ18は、前述のように、タンク14A、14Bとエンジン1とを連通し、燃料ポンプ19A、19Bによってエンジン1に燃料を供給可能な燃料給油パイプである。この燃料チューブ18は、エンジン1からタンク14A、14Bに向かう途中で分岐しており、タンク14Aからエンジン1への配管の途中には、タンク14Aからエンジン1への燃料の供給を遮断可能なバルブ(燃料供給制御バルブ)43が設けられている。一方、タンク14Bからエンジン1への配管の途中には、タンク14Bからエンジン1への燃料の供給を遮断可能なバルブ(燃料供給制御バルブ)45が設けられている。バルブ43、45の開閉を制御することにより、任意のタンク14A、14Bからエンジン1への燃料の供給が可能となる。
【0036】
また燃料チューブ18は、分岐配管18Aと、分岐配管18Bとを有する。分岐配管18Aは、燃料ポンプ19Aとタンク14Bとを連通し、タンク14A内の燃料をタンク14Bに移送するための配管である。この分岐配管18Aの途中には、タンク14Aからタンク14Bへの燃料の移送を遮断可能なバルブ(移送制御バルブ)44が設けられている。一方、分岐配管18Bは、燃料ポンプ19Bとタンク14Aとを連通し、タンク14B内の燃料をタンク14Aに移送するための配管である。この分岐配管18Bの途中には、タンク14Bからタンク14Aへの燃料の移送を遮断可能なバルブ(移送制御バルブ)46が設けられている。バルブ44、46の開閉を制御することにより、任意のタンク14A、14Bから、任意の他のタンク14B、14Aへの燃料の移送が可能となる。
【0037】
なお、図2では、二個のタンク14A、14Bを示しているが、この場合には限らない。例えば、一個のタンク内に仕切りを設けることによって、二箇所以上の燃料の貯留区画に分けてもよい。また、各バルブ41〜46を図2に示す構成で配置しているが、これら各バルブ41〜46の配置構成は、この場合に限らない。
【0038】
図3は、本発明の実施形態に係る電動車両100において燃料給油時の制御ロジックを示すフローチャートである。なお、以下の説明においては、各コントローラ20、21、22、23、24を総称して、「コントローラ31」という(制御装置に相当)。
【0039】
以下に説明する制御ロジックは、燃料の給油時に実行される。なお、コントローラ31は、フィラーリッド17の操作スイッチの入力、フィラーリッド17の開状態の検出をトリガとして、燃料の給油時に起動する。
【0040】
まずS101において、コントローラ31は、各タンク14A、14Bに貯蔵された燃料の劣化度(劣化の程度)を判定し、又は、各タンク14A、14Bの使用時間、すなわち各タンク14A、14B内の燃料の消費時間を判定する(S101)。
【0041】
燃料の劣化度の判定方法は、既知の技術(例えば特開平07−279739号公報、特開2005−105822号公報等に開示された技術)を用いてよい。すなわち、例えば、タンク14A、14Bに貯蔵された燃料をそれぞれエンジン1で使用した場合において、エンジン1のシリンダ内圧を検出し、検出されたシリンダ内圧に基づいて、各々の燃料の劣化度を判定することができる。なお、各タンク14A、14Bへの燃料給油タイミングをコントローラ31内に記録しておき、新たに給油した側のタンクに貯蔵された燃料の劣化度が小さい、と推定してもよい。一方、各タンク14A、14Bの使用時間は、電動車両100の運転中に、コントローラ31が内蔵されたタイマーを用いて、燃料ポンプ19A、19Bの運転時間をカウントすることによって求めてもよい。
【0042】
次にS102において、コントローラ31は、S101で判定された各タンク14A、14B内の燃料の劣化度、又は各タンク14A、14Bの使用時間に応じて、給油すべきタンクを選択する(S102)。S102の動作については、図5、図6を用いて詳細に後述する。
【0043】
次にS103において、コントローラ31は、S102で選択されたタンクに給油されるよう、バルブ41〜46等を制御・駆動する(S103)。ここでは、例えば図2のタンク14Aに給油する場合、バルブ41を開き、バルブ42を閉じる(図4の「タンク14Aへ給油」の欄を参照)。これにより、給油口16からタンク14Aへの給油が可能となる。一方、図1のタンク14Bに給油する場合、バルブ41を閉じ、バルブ42を開く(図4の「タンク14Bへ給油」の欄を参照)。これにより、給油口16からタンク14Bへの給油が可能となる。
【0044】
図4は、本発明の実施形態に係る燃料タンク14におけるアクチュエータの制御動作を説明するための図である。図4では、各状況に応じた燃料ポンプ19A、19B及びバルブ41〜46の制御動作をまとめて示している。図4の他の欄については、順次説明する。
【0045】
以上に示す処理により、コントローラ31は、S102で選択されたタンク(例えば燃料が劣化したタンク)内の燃料量を、S103によって増量している。これにより、劣化した燃料がタンク内に長期間とどまることを防いでいるので、劣化により捨ててしまう無駄な燃料を低減することができる。
【0046】
なお、コントローラ31は、S102で選択されたタンクが、給油によって満タンの燃料量となった場合、給油先を他のタンクに切り替えずに、以下の制御を実行してもよい。その制御とは、一旦給油を停止させ、ナビゲーションコントローラ25やスピーカー28を用いて、運転者やガソリンスタンドの店員等の給油者に、給油を継続するか否かの確認を促す制御である。これにより、給油者を煩わせることなく、少ない給油量を実現することができる。燃料の劣化を防止するという観点では、給油量は少ない方が好ましいことを考慮している。また、長距離走行を予定している等の場合には、さらに給油量を上乗せさせることも可能となる。
【0047】
図5は、図3のS102における給油タンクの選択に係る制御ロジックの第一の例を示すフローチャートである。
【0048】
まずS111において、コントローラ31は、S101で判定されたタンク14A内の燃料の劣化度と、タンク14B内の燃料の劣化度とを比較する(S111)。
【0049】
タンク14A内の燃料の劣化度が、タンク14B内の燃料の劣化度よりも大きい場合(S111でYES)、コントローラ31は、タンク14Aを、給油タンク(給油すべきタンク)として選択する(S112)。ここでは、給油タンクがタンク14Aである旨を、コントローラ31内の記憶装置等に記憶する。
【0050】
一方、タンク14A内の燃料の劣化度が、タンク14B内の燃料の劣化度よりも小さい場合(S111でNO)、コントローラ31は、タンク14Bを、給油タンクとして選択する(S113)。ここでは、給油タンクがタンク14Bである旨を、コントローラ31内の記憶装置等に記憶する。
【0051】
以上に示す処理により、コントローラ31は、燃料の劣化度の大きい方のタンク内に、他のタンクに優先して新たに燃料を給油する。劣化した燃料に新品の燃料を混合させると、新品の燃料内の酸化防止剤等によって、劣化した燃料の性状を改善(リフレッシュ)することができる。また、劣化した燃料をタンク内に長期間とどめることがないため、劣化により捨ててしまう無駄な燃料の低減を図ることができる。
【0052】
図6は、図3のS102における給油タンクの選択に係る制御ロジックの第二の例を示すフローチャートである。
【0053】
まずS121において、コントローラ31は、S101で判定されたタンク14A内の燃料の劣化度と、タンク14B内の燃料の劣化度とを比較する(S121)。
【0054】
タンク14A内の燃料の劣化度が、タンク14B内の燃料の劣化度よりも大きい場合(S121でYES)、コントローラ31は、タンク14A内の燃料の劣化度が所定の閾値を超えるか否か判定する(S122)。ここでいう閾値とは、軽度の燃料劣化を意味する程度の値である。すなわち、燃料の劣化度がこの閾値より小さい場合、直ちに新品の燃料を混合する必要はないと判定することができる。
【0055】
タンク14A内の燃料の劣化度が、所定の閾値よりも大きいと判定された場合(S122でYES)、タンク14Aに新品の燃料を混合する必要があると判断されるので、S125に進む。一方、タンク14A内の燃料の劣化度が、所定の閾値よりも小さいと判定された場合(S122でNO)、新品の燃料の混合は不要と判断されるので、S124に進む。
【0056】
なお、S121において、タンク14A内の燃料の劣化度が、タンク14B内の燃料の劣化度よりも小さい場合(S121でNO)、コントローラ31は、タンク14B内の燃料の劣化度が所定の閾値を超えるか否か判定する(S123)。ここでいう閾値も、軽度の燃料劣化を意味する程度の値である。
【0057】
タンク14B内の燃料の劣化度が、所定の閾値よりも大きいと判定された場合(S123でYES)、タンク14Bに新品の燃料を混合する必要があると判断されるので、S126に進む。一方、タンク14B内の燃料の劣化度が、所定の閾値よりも小さいと判定された場合(S122でNO)、新品の燃料の混合は不要と判断されるので、S124に進む。
【0058】
S124に進むと、コントローラ31は、S101で判定されたタンク14Aの使用時間と、タンク14Bの使用時間とを比較する(S124)。タンク14Aの使用時間が、タンク14Bの使用時間よりも短い場合(S124でYES)、タンク14Aを給油タンクとすべきであると判断し、S125に進む。一方、タンク14Aの使用時間が、タンク14Bの使用時間よりも長い場合(S124でNO)、タンク14Bを給油タンクとすべきであると判断し、S126に進む。
【0059】
S125に進むと、コントローラ31は、タンク14Aを、給油タンクとして選択する(S125)。ここでは、給油タンクがタンク14Aである旨を、コントローラ31内の記憶装置等に記憶する。一方、S126に進むと、コントローラ31は、タンク14Bを、給油タンクとして選択する(S126)。ここでは、給油タンクがタンク14Bである旨を、コントローラ31内の記憶装置等に記憶する。コントローラ31は、タンク14Bを、給油タンクとして選択する(S113)。ここでは、給油タンクがタンク14Bである旨を、コントローラ31内の記憶装置等に記憶する。
【0060】
以上に示す処理により、コントローラ31は、第一の例(図3参照)と同様に、燃料の劣化度の大きい方のタンク内に、他のタンクに優先して新たに燃料を給油する。また、燃料の劣化度は大きいものの、直ちに新品の燃料を混合する必要が無い場合、使用時間(稼働時間)が短いタンクに燃料を給油している。これにより、燃料ポンプ19A、19B等の使用時間を平準化し、システムとしての耐久寿命性能を向上させることができる。
【0061】
なお、コントローラ31は、燃料の劣化度の大きい方のタンク内の燃料が、使用に適さないほど劣化していると判断される場合、以下の制御を実行してもよい。その制御とは、他のタンクに優先して燃料を給油し、前者のタンク内の燃料の使用を停止するとともに、ナビゲーションコントローラ25やスピーカー28を用いて、運転者に警告を促す制御である。
【0062】
図7は、本発明の実施形態に係る電動車両において燃料消費時の制御ロジックを示すフローチャートである。以下に説明する制御ロジックは、車両の走行時に実行される。
【0063】
まずS131において、コントローラ31は、各タンク14A、14Bに貯蔵された燃料の劣化度(劣化の程度)を判定し、又は、各タンク14A、14Bの使用時間、すなわち各タンク14A、14B内の燃料の消費時間を判定する(S131)。このS131の処理は、図3のS101と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
次にS132において、コントローラ31は、S131で判定された各タンク14A、14B内の燃料の劣化度、又は各タンク14A、14Bの使用時間に応じて、走行に使用すべきタンク(又は、劣化した燃料が貯蔵されており、貯蔵された燃料のリフレッシュを実施すべきタンク)を選択する(S132)。S132の動作については、図8を用いて詳細に後述する。
【0065】
次にS133において、コントローラ31は、S132で選択されたタンク内の燃料が消費されるよう、バルブ41〜46等を制御・駆動する(S133)。ここでは、例えば図2のタンク14A内の燃料を使用する場合、燃料ポンプ19Aを駆動させ、バルブ43を開き、バルブ44、45を閉じる(図4の「タンク14Aを使用」の欄を参照)。これにより、タンク14A内の燃料の消費が可能となる。一方、図2のタンク14B内の燃料を使用する場合、燃料ポンプ19Bを駆動させ、バルブ45を開き、バルブ43、46を閉じる(図4の「タンク14Bへ給油」の欄を参照)。これにより、タンク14B内の燃料の消費が可能となる。
【0066】
以上に示す処理により、コントローラ31は、S132で選択されたタンク(例えば燃料が劣化したタンク)内の燃料量を、S133によって減量している。これにより、劣化した燃料がタンク内に長期間とどまることを防いでいるので、劣化により捨ててしまう無駄な燃料を低減することができる。
【0067】
なお、S133において、コントローラ31は、S132で選択されたタンク内の燃料のリフレッシュを実施すべく、バルブ41〜46等を以下のように制御・駆動してもよい。
【0068】
すなわち、タンク14A内の燃料をタンク14Bに移送し、タンク14B内の燃料をリフレッシュする場合、燃料ポンプ19Aを駆動させ、バルブ44を開き、バルブ43を閉じる(図4の「タンク14Aからタンク14Bへ移送」の欄を参照)。なお、併せてエンジン1への燃料供給が必要な場合、燃料ポンプ19Bを駆動し、バルブ45を開き、バルブ46を閉じる。これにより、タンク14B内の燃料をリフレッシュさせ、且つ、使用することが可能となる。
【0069】
一方、タンク14B内の燃料をタンク14Aに移送し、タンク14A内の燃料をリフレッシュする場合、燃料ポンプ19Bを駆動させ、バルブ46を開き、バルブ45を閉じる(図4の「タンク14Bからタンク14Aへ移送」の欄を参照)。なお、併せてエンジン1への燃料供給が必要な場合、燃料ポンプ19Aを駆動し、バルブ43を開き、バルブ44を閉じる。これにより、タンク14A内の燃料をリフレッシュさせ、且つ、使用することが可能となる。
【0070】
以上のように、劣化していない燃料が貯蔵されたタンクから、劣化した燃料が貯蔵されたタンクに、燃料を移送させる。劣化した燃料に劣化していない燃料を混合させると、劣化していない燃料内の酸化防止剤等によって、劣化した燃料の性状を改善することができる。その後、性状が改善された燃料を使用することが可能となる。
【0071】
図8は、図7のS132における使用タンクの選択に係る制御ロジックを説明するための図である。図8では、図6のS131において判定されるタンク14A、14Bの燃料の劣化度を、それぞれ大中小の3段階に区分した場合における、各タンク14A、14Bの燃料の劣化度の組み合わせと、選択される使用タンク(使用すべきタンク)等との関係を示している。
【0072】
劣化度「大」は、燃料劣化が進んでおり、早目の消費が望まれるレベルを示す。劣化度「中」は、燃料劣化がある程度進んでいるが、特別なアクションは必要ないレベルを示す。劣化度「小」は、燃料劣化はほとんど進行しておらず、むしろ燃料劣化が進んだ燃料に混合することによって、この燃料劣化が進んだ燃料の特性をリフレッシュ可能なレベルを示す。この場合、各タンク14A、14Bの燃料の劣化度の組み合わせは、3×3=9通りの状態に区別することができる。以下に、各々の場合における使用タンクの選択方法について説明する。
【0073】
1.タンク14A、14B内の燃料の劣化度が同レベルである場合
この場合、各タンク14A、14B内の燃料性状は同レベルである。そこで、コントローラ31は、各タンク14A、14Bの使用時間を比較し、使用時間が短い方のタンクから使用する旨を、コントローラ31の記憶装置等に記憶する。これにより、使用時間(稼働時間)が短いタンク内の燃料を優先して使用している。これにより、燃料ポンプ19A、19B等の使用時間を平準化し、システムとしての耐久寿命性能を向上させることができる。
【0074】
2.一方のタンク14A、14B内の燃料の劣化度が「大」で、他方のタンク14B、14A内の燃料の劣化度が「中」である場合
この場合、コントローラ31は、劣化度「大」のタンクを使用タンクとする旨を、コントローラ31の記憶装置等に記憶する。これにより、燃料劣化が進んだタンク内の燃料を優先して使用し、使用できないほどに燃料が劣化(燃料特性が悪化)する前に燃料を消費することが可能となる。また、劣化した燃料をタンク内に長期間とどめることがないため、劣化により捨ててしまう無駄な燃料を低減することができる。
【0075】
3.一方のタンク14A、14B内の燃料の劣化度が「大」で、他方のタンク14B、14A内の燃料の劣化度が「小」である場合
この場合、コントローラ31は、劣化度「小」のタンク内の燃料を、劣化度「大」のタンクに移送することによって、劣化度「大」のタンク内の燃料をリフレッシュし、且つ、リフレッシュ(特性が改善)された劣化度「大」のタンクを使用タンクとする旨を、コントローラ31の記憶装置等に記憶する。これにより、燃料劣化が進んだタンク内の燃料の特性を改善しつつ、同タンク内の燃料を優先して使用し、使用できないほどに燃料が劣化するのを防止することが可能となる。
【0076】
4.一方のタンク14A、14B内の燃料の劣化度が「中」で、他方のタンク14B、14A内の燃料の劣化度が「小」である場合
この場合、コントローラ31は、劣化度「中」のタンクを使用タンクとする旨を、コントローラ31の記憶装置等に記憶する。これにより、燃料特性を改善する必要がない程度の劣化状態である劣化度「中」のタンク内の燃料を優先して使用し、使用できないほどに燃料が劣化する前に燃料を消費することが可能となる。
【0077】
図9は、本発明の実施形態に係るタンク14A、14Bの別の構成例を示す図である(その1)。図9に示すタンク14B−1は、図2に示すタンク14A、14Bの別の構成例である。
【0078】
このタンク14B−1は、図2に示すタンク14Bに比して、容積に対して縦方向の断面積が小さい縦長の構造であることを特徴としている。これにより、タンク14B−1内の燃料がタンク14B−1内の空気と接触する面積が小さくなっている。
【0079】
そのため、図2に示すタンク14Bに比して、タンク14B−1内の燃料の劣化(酸化)の進行を抑制することが可能となる。なお、タンク14B−1の容量を確保することは比較的難しくなるが、燃料性状を良い状態で維持することが容易となる。そのため、劣化していない燃料がタンク14B−1に貯蔵される場合には、タンク14A内の燃料の特性を回復する際のリフレッシュ手段としての機能が向上する。
【0080】
また、タンク14B−1内の燃料の劣化が起こりにくくなる結果、タンク14B−1とタンク14Aとの燃料の劣化の進行度合いを変えることができる。そのため、異なる劣化度合いの燃料を一個の燃料タンク14に貯留することが容易となる。
【0081】
図10は、本発明の実施形態に係るタンク14A、14Bの別の構成例を示す図である(その2)。図10に示すタンク14Cは、図2や図9に示すタンク14A、14B、14B−1の別の構成例である。
【0082】
このタンク14Cは、タンク内部の燃料液面上面において、可動式の仕切り板47を備えた構造であることを特徴としている。つまり、仕切り板47によって、タンク14C内の燃料とタンク14C内の空気との境界面が区切られている。この仕切り板47は、燃料ポンプ19Cと一体化されている。
【0083】
そのため、図9に示すタンク14B−1よりも、タンク14C内の燃料がタンク14C内の空気と接触する面積がさらに小さくなっている。そのため、タンク14C内の燃料の劣化の進行をさらに抑制することが可能となる。特に、図10に示すタンク14Cによれば、タンク14C内の燃料と空気との接触面積を極小化し、タンク14C内の燃料の劣化の抑制効果を高めることができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0085】
例えば、上記説明において、燃料の劣化を抑制するタンクの構造として、図9のタンク14B−1、図10のタンク14Cを例に挙げて説明してきたが、タンクの構造はこれらの例には限らない。例えば、タンクを断熱構造としてもよい。この場合、タンク内部の燃料の温度上昇を抑えることによって、燃料の劣化を抑制することができる。また、1個のタンクを燃料の劣化を抑制する構造とした場合を例に挙げて説明してきたが、複数のタンクを燃料の劣化を抑制する構造としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 エンジン
14 燃料タンク
14A、14B、14B−1、14C タンク
14D 仕切り板
15 フィラーチューブ
16 給油口
17 フィラーリッド
18 燃料チューブ
18A、18B 分岐配管
19A、19B 燃料ポンプ
31 コントローラ
41、42、43、44、45、46 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の隔絶された貯留空間を有する燃料タンクと、
前記燃料タンクから燃料が供給されるエンジンと、
前記複数の貯留空間の各々における燃料の劣化状態を判定する劣化状態判定手段を有する制御装置と、を備えた車両であって、
前記制御装置は、前記劣化状態判定手段によって燃料の劣化が判定された貯留空間内の燃料量を増減させることを特徴とする車両。
【請求項2】
さらに、前記複数の貯留空間の各々に設けられ、前記エンジンに燃料を供給するための燃料ポンプと、
前記各燃料ポンプと前記エンジンとをそれぞれ連通する燃料チューブ内に設けられ、前記燃料チューブ内の通路を開閉する燃料供給制御バルブと、
を備え、
前記制御装置は、前記劣化状態判定手段によって燃料の劣化が判定された貯留空間内の燃料を、他の貯留空間に優先して前記エンジンに供給するよう、前記燃料ポンプ及び前記燃料供給制御バルブを制御することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
さらに、前記複数の貯留空間の各々と給油口とをそれぞれ連通するフィラーチューブ内に設けられ、前記フィラーチューブ内の通路を開閉する給油制御バルブを備え、
前記制御装置は、前記劣化状態判定手段によって燃料の劣化が判定された貯留空間内に、他の貯留空間に優先して燃料を給油するよう、前記給油制御バルブを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
さらに、前記複数の貯留空間のうちの所定の貯留空間内の燃料を、他の貯留空間に移送可能な移送手段を備え、
前記制御装置は、前記劣化状態判定手段によって燃料の非劣化が判定された貯留空間から、前記劣化状態判定手段によって燃料の劣化が判定された貯留空間へ、前記移送手段によって燃料を移送させることを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
少なくとも一つの前記複数の貯留空間は、燃料の劣化を抑制する構造であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−67689(P2012−67689A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213647(P2010−213647)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】