説明

車両

【課題】エンジンとモータジェネレータとを連結するギヤから生じる音を低減する。
【解決手段】車両には、エンジンと、ギヤを介してエンジンと連結されたモータジェネレータとが搭載される。エンジンのモータリングを伴う減速中に、モータジェネレータの目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、目標エンジン回転数が所定値よりも低いと、エンジン回転数が所定値以上まで増大される、もしくは、モータジェネレータの出力トルクが所定範囲外の値まで変化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に、エンジンと、ギヤを介してエンジンに連結された電動モータとが搭載された車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンに加えて駆動源としての電動モータを搭載したハイブリッド車が販売されている。一部のハイブリッド車は、電気自動車の一種と分類される場合もある。エンジンと電動モータとは、一例としてプラネタリギヤを介して連結される。
【0003】
エンジンと電動モータとがギヤを介して連結された場合、電動モータの出力トルクが零付近にあると、エンジンの出力トルクによりギヤが振動し、ギヤの歯面同士が衝突を繰り返し得る。この場合、ギヤから音が発生し、車両の乗員に不快感を与え得る。
【0004】
このような問題を解決すべく、特開2009−173125号公報(特許文献1)は、第41段落において、エンジンを負荷運転する場合は、ギヤにおける異音の発生を抑制可能な動作ラインに基づいてエンジンの運転点を設定することを開示する。また、特開2009−173125号公報は、自立運転から負荷運転に移行する際のエンジン回転数の変化量を低減すべく、第43段落において、エンジンを自立運転する場合に、ギヤにおける異音の発生を抑制可能な動作ラインの下限回転数で、エンジンを自立運転することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−173125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジンをモータリングする(点火を停止してエンジンの出力軸を回転させる)状態では、エンジンからギヤにトルクを伝達する状態ではないため、エンジンと電動モータとの間のギヤから生じる音は小さい。しかしながら、エンジンをモータリングする状態からエンジンを負荷運転する状態に移行する際、エンジンの出力トルクが一時的に過大になることにより、エンジンと電動モータとを連結するギヤから音が発生し得る。特開2009−173125号公報では、このような課題は何等考慮されていない。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エンジンと電動モータとを連結するギヤから生じる音を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施例において、車両は、エンジンと、ギヤを介してエンジンと連結された電動モータと、エンジンのモータリングを伴う減速中に、電動モータの目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、エンジンの目標回転数が所定値よりも低いと、エンジンの回転数および電動モータの出力トルクのうちの少なくともいずれか一方を制御する制御装置とを備える。制御装置は、エンジンのモータリングを伴う減速中に、電動モータの目標出力トルクが所定範囲内にあり、かつ、エンジンの目標回転数が所定値よりも低いと、エンジンの回転数を所定値以上まで増大する。
【0009】
この構成によると、エンジンを負荷運転する前に、エンジンの回転数が予め増大される。回転数が高いほど、エンジンのトルク変動量が低減される。その結果、エンジンと電動モータとを連結するギヤから音が発生し難くなる。そのため、回転数を予め増大することにより、エンジンをモータリングする状態からエンジンを負荷運転する際にエンジンと電動モータとを連結するギヤから生じる音を低減できる。
【0010】
別の実施例において、制御装置は、エンジンの回転数の増大に伴って、電動モータが発生する制動力を低下させる。
【0011】
この構成によると、エンジンの摩擦抵抗と電動モータのトルクとで実現される制動力を所望の値に維持できる。
【0012】
別の実施例において、車両は、エンジンをモータリングし、エンジンの回転数を変化させる第2の電動モータをさらに備える。
【0013】
この構成によると、第2の電動モータによってエンジンの回転数を任意に制御できる。
さらに別の実施例において、車両は、エンジンと、ギヤを介してエンジンと連結された電動モータと、エンジンのモータリングを伴う減速中に、電動モータの目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、エンジンの目標回転数が所定値よりも低いと、エンジンの回転数および電動モータの出力トルクのうちの少なくともいずれか一方を制御する制御装置とを備える。制御装置は、エンジンのモータリングを伴う減速中に、電動モータの目標出力トルクが所定範囲内にあり、かつ、エンジンの目標回転数が所定値よりも低いと、電動モータの出力トルクを所定範囲外の値まで変化させる。
【0014】
この構成によると、エンジンを負荷運転する前に、電動モータの出力トルクの絶対値を予め増大できる。電動モータの出力トルクの絶対値が大きいほど、エンジンと電動モータとを連結するギヤの歯面同士が離間し難い。その結果、歯面同士が衝突して生じる音が発生し難くなる。そのため、電動モータの出力トルクの絶対値を予め増大することにより、エンジンをモータリングする状態からエンジンを負荷運転する際にエンジンと電動モータとを連結するギヤから生じる音を低減できる。
【0015】
さらに別の実施例において、制御装置は、電動モータの出力トルクの変化により電動モータが発生する制動力が低下する場合、エンジンの回転数を増大する。
【0016】
この構成によると、エンジンの摩擦抵抗と電動モータのトルクとで実現される制動力を所望の値に維持できる。
【0017】
さらに別の実施例において、制御装置は、電動モータの出力トルクの変化により電動モータが発生する制動力が増大する場合、エンジンの回転数を低減する。
【0018】
この構成によると、エンジンの摩擦抵抗と電動モータのトルクとで実現される制動力を所望の値に維持できる。
【0019】
別の実施例において、車両は、エンジンをモータリングし、エンジンの回転数を変化させる第2の電動モータをさらに備える。
【0020】
この構成によると、第2の電動モータによってエンジンの回転数を任意に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ハイブリッド車を示す概略構成図である。
【図2】エンジンを示す概略構成図である。
【図3】動力分割機構の共線図を示す図(その1)である。
【図4】動力分割機構の共線図を示す図(その2)である。
【図5】制動力を設定するために用いられるマップを示す図(その3)である。
【図6】ハイブリッド車の電気システムを示す図である。
【図7】エンジンが駆動する期間および停止する期間を示す図である。
【図8】エンジンの動作線と等パワー線とを示す図である。
【図9】第2動作線を用いられるときの第2モータジェネレータの出力トルクの範囲を示す図である。
【図10】エンジンの動作点の軌跡を示す図(その1)である。
【図11】第1の実施の形態においてECUが実行する処理の制御構造を示すフローチャートである。
【図12】エンジンの動作点の軌跡を示す図(その2)である。
【図13】第2の実施の形態においてECUが実行する処理の制御構造を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1を参照して、ハイブリッド車には、エンジン100と、第1モータジェネレータ110と、第2モータジェネレータ120と、動力分割機構130と、減速機140と、バッテリ150とが搭載される。なお、以下の説明においては一例として外部の電源からの充電機能を有さないハイブリッド車について説明するが、外部の電源からの充電機能を有するプラグインハイブリッド車を用いてもよい。
【0024】
エンジン100、第1モータジェネレータ110、第2モータジェネレータ120、バッテリ150は、ECU(Electronic Control Unit)170により制御される。ECU170は複数のECUに分割するようにしてもよい。
【0025】
ハイブリッド車のパワートレーンは、エンジン100、第1モータジェネレータ110、第2モータジェネレータ120およびこれらを制御するECU170を含む。ハイブリッド車は、エンジン100および第2モータジェネレータ120のうちの少なくともいずれか一方からの駆動力により走行する。すなわち、エンジン100および第2モータジェネレータ120のうちのいずれか一方もしくは両方が、運転状態に応じて駆動源として自動的に選択される。
【0026】
たとえば、運転者がアクセルペダルを操作した結果に応じて、エンジン100および第2モータジェネレータ120が制御される。アクセルペダルの操作量(アクセル開度)は、アクセル開度センサ172により検出される。
【0027】
アクセル開度が小さい場合および車速が低い場合などには、第2モータジェネレータ120のみを駆動源としてハイブリッド車が走行する。この場合、エンジン100が停止される。ただし、発電などのためにエンジン100が駆動する場合がある。
【0028】
また、アクセル開度が大きい場合、車速が高い場合、バッテリ150の残存容量(SOC:State Of Charge)が小さい場合などには、エンジン100が駆動される。この場合、エンジン100のみ、もしくはエンジン100および第2モータジェネレータ120の両方を駆動源としてハイブリッド車が走行する。
【0029】
エンジン100は、内燃機関である。図2に示すように、本実施の形態において、エンジン100は、第1気筒101、第2気筒102、第3気筒103、第4気筒104が設けられた4ストロークエンジンである。なお、気筒の数は4つに限らず、5、6、8、12などの任意の数であってもよい。
【0030】
周知のように、エンジン100においては、吸気弁(図示せず)、排気弁(図示せず)、ピストン105、点火プラグ106およびインジェクタ(図示せず)が各気筒に設けられる。各ピストン105は、出力軸108であるクランクシャフトにコンロッドを介して連結される。したがって、クランクシャフトが回転することにより、各ピストン105が上下に動く。燃料はインジェクタから各気筒に噴射される。
【0031】
吸気弁が開かれ、排気弁が閉じられた状態でピストン105が下降すると、吸気弁から空気が吸入される(吸気行程)。吸気弁および排気弁が閉じられた状態でピストン105が上昇することにより、空気が圧縮される(圧縮行程)。点火プラグ106などを用いて空気と燃料との混合気に点火されると、空気と燃料との混合気が燃焼し、膨張する。その結果、ピストン105が下降する(燃焼行程または膨張行程)。その結果、クランクシャフトが回転せしめられる。その後、排気弁が開き、ピストン105が上昇すると、排気が排出される(排気行程)。各気筒には、予め定められた順序で点火される。たとえば、第1気筒101、第3気筒103、第4気筒104、第2気筒102の順に点火される。なお、点火順序はこれに限らない。
【0032】
エンジン100の回転速度(角速度)は、回転速度センサ(クランクポジションセンサ)174により検出され、検出結果を表す信号がECU170に送信される。周知の通り、エンジン100の回転速度から、エンジン回転数NE、すなわち1分当たりの出力軸108の回転数が算出される。
【0033】
図1に戻って、エンジン100、第1モータジェネレータ110および第2モータジェネレータ120は、動力分割機構130を介してエンジン100の出力軸(クランクシャフト)108に連結されている。エンジン100が発生する動力は、動力分割機構130により、2経路に分割される。一方は減速機140を介して前輪160を駆動する経路である。もう一方は、第1モータジェネレータ110を駆動させて発電する経路である。
【0034】
第1モータジェネレータ110は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。第1モータジェネレータ110は、動力分割機構130により分割されたエンジン100の動力により発電する。第1モータジェネレータ110により発電された電力は、車両の走行状態や、バッテリ150の残存容量の状態に応じて使い分けられる。たとえば、通常走行時では、第1モータジェネレータ110により発電された電力はそのまま第2モータジェネレータ120を駆動させる電力となる。一方、バッテリ150のSOCが予め定められた値よりも低い場合、第1モータジェネレータ110により発電された電力は、後述するインバータにより交流から直流に変換される。その後、後述するコンバータにより電圧が調整されてバッテリ150に蓄えられる。
【0035】
第1モータジェネレータ110が発電機として作用している場合、第1モータジェネレータ110は負のトルクを発生している。ここで、負のトルクとは、エンジン100の負荷となるようなトルクをいう。第1モータジェネレータ110が電力の供給を受けてモータとして作用している場合、第1モータジェネレータ110は正のトルクを発生する。ここで、正のトルクとは、エンジン100の負荷とならないようなトルク、すなわち、エンジン100の回転をアシストするようなトルクをいう。なお、第2モータジェネレータ120についても同様である。
【0036】
第2モータジェネレータ120は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを備える、三相交流回転電機である。第2モータジェネレータ120は、バッテリ150に蓄えられた電力および第1モータジェネレータ110により発電された電力のうちの少なくともいずれかの電力により駆動する。
【0037】
第2モータジェネレータ120の駆動力は、減速機140を介して前輪160に伝えられる。これにより、第2モータジェネレータ120はエンジン100をアシストしたり、第2モータジェネレータ120からの駆動力により車両を走行させたりする。なお、前輪160の代わりにもしくは加えて後輪を駆動するようにしてもよい。
【0038】
ハイブリッド車の回生制動時には、減速機140を介して前輪160により第2モータジェネレータ120が駆動され、第2モータジェネレータ120が発電機として作動する。これにより第2モータジェネレータ120は、制動エネルギを電力に変換する回生ブレーキとして作動する。第2モータジェネレータ120により発電された電力は、バッテリ150に蓄えられる。
【0039】
動力分割機構130は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車から構成される。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤが自転可能であるように支持する。サンギヤは第1モータジェネレータ110の回転軸に連結される。キャリアはエンジン100のクランクシャフトに連結される。リングギヤは第2モータジェネレータ120の回転軸および減速機140に連結される。
【0040】
エンジン100、第1モータジェネレータ110および第2モータジェネレータ120が、遊星歯車からなる動力分割機構130を介して連結されることで、エンジン100、第1モータジェネレータ110および第2モータジェネレータ120の回転数は、図3で示すように、共線図において直線で結ばれる関係になる。
【0041】
一例として、アクセル開度が零である場合、車両の減速中にエンジン100においてフューエルカットを実行するとともに、図4に示すように、第1モータジェネレータ110を駆動してエンジン100をモータリングすることにより、所望の制動力を得ることができる。第2モータジェネレータ120の出力トルクは、目標制動力とエンジン100のモータリングにより得られる制動力との差に応じて適宜制御される。図4中の矢印は、動力分割機構のサンギヤ、キャリアおよびリングギヤにそれぞれ作用するトルクの方向を示す。
【0042】
図5に示すように、目標制動力は、たとえば、少なくとも車速をパラメータとして有するマップから算出される。目標制動力を算出するためのマップは、実験およびシミュレーションの結果に応じて予め開発者により作成される。目標制動力の算出方法はこれに限定されない。制動力を、負の駆動力として表してもよい。
【0043】
本実施の形態において、モータリングとは、エンジン100における点火を停止した状態で、第1モータジェネレータ110からのトルクもしくは駆動輪からのトルクでエンジン100の出力軸108を回転させることを意味する。
【0044】
図1に戻って、バッテリ150は、複数のバッテリセルを一体化したバッテリモジュールを、さらに複数直列に接続して構成された組電池である。バッテリ150の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ150には、第1モータジェネレータ110および第2モータジェネレータ120の他、車両の外部の電源から供給される電力が充電される。なお、バッテリ150の代わりにもしくは加えてキャパシタを用いるようにしてもよい。
【0045】
図6を参照して、ハイブリッド車の電気システムについてさらに説明する。ハイブリッド車には、コンバータ200と、第1インバータ210と、第2インバータ220と、システムメインリレー230とが設けられる。
【0046】
コンバータ200は、リアクトルと、二つのnpn型トランジスタと、二つダイオードとを含む。リアクトルは、各バッテリの正極側に一端が接続され、2つのnpn型トランジスタの接続点に他端が接続される。
【0047】
2つのnpn型トランジスタは、直列に接続される。npn型トランジスタは、ECU170により制御される。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すようにダイオードがそれぞれ接続される。
【0048】
なお、npn型トランジスタとして、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。npn型トランジスタに代えて、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いることができる。
【0049】
バッテリ150から放電された電力を第1モータジェネレータ110もしくは第2モータジェネレータ120に供給する際、電圧がコンバータ200により昇圧される。逆に、第1モータジェネレータ110もしくは第2モータジェネレータ120により発電された電力をバッテリ150に充電する際、電圧がコンバータ200により降圧される。
【0050】
コンバータ200と、各インバータとの間のシステム電圧VHは、電圧センサ180により検出される。電圧センサ180の検出結果は、ECU170に送信される。
【0051】
第1インバータ210は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを含む。U相アーム、V相アームおよびW相アームは並列に接続される。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ、直列に接続された2つのnpn型トランジスタを有する。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードがそれぞれ接続される。そして、各アームにおける各npn型トランジスタの接続点は、第1モータジェネレータ110の各コイルの中性点112とは異なる端部にそれぞれ接続される。
【0052】
第1インバータ210は、バッテリ150から供給される直流電流を交流電流に変換し、第1モータジェネレータ110に供給する。また、第1インバータ210は、第1モータジェネレータ110により発電された交流電流を直流電流に変換する。
【0053】
第2インバータ220は、U相アーム、V相アームおよびW相アームを含む。U相アーム、V相アームおよびW相アームは並列に接続される。U相アーム、V相アームおよびW相アームは、それぞれ、直列に接続された2つのnpn型トランジスタを有する。各npn型トランジスタのコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードがそれぞれ接続される。そして、各アームにおける各npn型トランジスタの接続点は、第2モータジェネレータ120の各コイルの中性点122とは異なる端部にそれぞれ接続される。
【0054】
第2インバータ220は、バッテリ150から供給される直流電流を交流電流に変換し、第2モータジェネレータ120に供給する。また、第2インバータ220は、第2モータジェネレータ120により発電された交流電流を直流電流に変換する。
【0055】
コンバータ200、第1インバータ210および第2インバータ220は、ECU170により制御される。
【0056】
システムメインリレー230は、バッテリ150とコンバータ200との間に設けられる。システムメインリレー230は、バッテリ150と電気システムとを接続した状態および遮断した状態を切換えるリレーである。システムメインリレー230が開いた状態であると、バッテリ150が電気システムから遮断される。システムメインリレー230が閉じた状態であると、バッテリ150が電気システムに接続される。
【0057】
システムメインリレー230の状態は、ECU170により制御される。たとえば、ECU170が起動すると、システムメインリレー230が閉じられる。ECU170が停止する際、システムメインリレー230が開かれる。
【0058】
図7を参照して、エンジン100の制御態様についてさらに説明する。図7に示すように、ハイブリッド車の出力パワーがエンジン始動しきい値より小さいと、第2モータジェネレータ120の駆動力のみを用いてハイブリッド車が走行する。
【0059】
出力パワーは、ハイブリッド車の走行に用いられるパワーとして設定される。出力パワーは、たとえば、アクセル開度および車速などをパラメータに有するマップに従ってECU170により算出される。なお、出力パワーを算出する方法はこれに限らない。なお、出力パワーの代わりに、トルク、加速度、駆動力およびアクセル開度などを用いるようにしてもよい。
【0060】
ハイブリッド車の出力パワーがエンジン始動しきい値以上になると、エンジン100が駆動される。これにより、第2モータジェネレータ120の駆動力に加えて、もしくは代わりに、エンジン100の駆動力を用いてハイブリッド車が走行する。また、エンジン100の駆動力を用いて第1モータジェネレータ110が発電した電力が第2モータジェネレータ120に直接供給される。
【0061】
図8に示すように、エンジン100の負荷運転時におけるエンジン100の動作点、すなわちエンジン回転数NEおよび出力トルクTEは、出力パワーと動作線との交点により定まる。
【0062】
出力パワーは、等パワー線によって示される。動作線は、実験およびシミュレーションの結果に基づいて、開発者により予め定められる。動作線は、燃費が最適(最小)になるようにエンジン100が駆動することができるように設定される。すなわち、動作線に沿ってエンジン100が駆動することにより、最適な燃費が実現される。
【0063】
第2モータジェネレータ120の出力トルクが、零を含む所定範囲外のトルクである場合(出力トルクの絶対値が所定トルクより大きい場合)、図8において実線で示す第1動作線が用いられる。
【0064】
一方、第2モータジェネレータ120の出力トルクが、図9に示す上限値TMU(TMU>0)と下限値TML(TML<0)との間の、零を含む所定範囲内のトルクである場合(出力トルクの絶対値が所定トルク以下である場合)、図8に示す、エンジン回転数NEが所定の第1回転数NE1から第2回転数NE2までの範囲において、破線で示す第2動作線が用いられる。第2動作線は、第2モータジェネレータ120の出力トルクが、零を含む所定範囲内のトルクである場合において動力分割機構130から生じる音を低減するように設定される。
【0065】
すなわち、第2モータジェネレータ120の出力トルクが、零を含む所定範囲内のトルクである場合、動力分割機構130においてギヤの歯面同士が離間し得る。したがって、エンジン100の出力トルクの変動により、動力分割機構130においてギヤの歯面同士が衝突を繰り返して音が発生し得る。特に、図8において斜線で示す領域にエンジン100の動作点があると、エンジン100の出力トルクの変動量が大きく、音が顕著に発生する。このような事項に鑑みて、第1動作線の代わりに第2動作線を用いることにより、エンジン回転数NEが増大される。エンジン回転数NEが高いほど、エンジン100の出力トルクの変動量が小さくなる傾向にあるため、エンジン回転数NEを増大することにより、動力分割機構130においてギヤの歯面同士が衝突する回数を低減できる。その結果、動力分割機構130から生じる音が低減される。
【0066】
一方、エンジン100のモータリングを伴う減速中においては、エンジン100の出力トルクは零以下である。すなわち、エンジン100の出力トルクが第2動作線で定められるトルクよりも低い。したがって、エンジン100のモータリングを伴う減速中においては、動力分割機構130から音は発生しないと考えられる。
【0067】
しかしながら、エンジン回転数NEが第2回転数NE2より低いと、エンジン100をモータリングする状態からエンジン100を負荷運転する状態に移行する際、図10において矢印で示すように、エンジン100の出力トルクが第2動作線上に移動する前に、一時的に第2動作線を通過することがあり得る。このときに動力分割機構130から音が発生し得る。
【0068】
動力分割機構130から発生する音を低減すべく、本実施の形態においては、エンジン100のモータリングを伴う減速中において、第2モータジェネレータ120の出力トルクおよびエンジン回転数NEのうちの少なくともいずれか一方が制御される。
【0069】
一例として、エンジン回転数NEが第2回転数NE2以上まで増大される。さらに、エンジン回転数NEの増大に伴って、第2モータジェネレータ120が発生する制動力が低下される。すなわち、第2モータジェネレータ120の出力トルクが正回転方向(車両を加速させる方向)に増大される。
【0070】
以下、図11を参照して、本実施の形態においてECU170が実行する処理について説明する。以下の処理は、ソフトウェアにより実現されてもよく、ハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現されてもよい。
【0071】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、アクセル開度が零であるか否かが判断される。本実施の形態においては、アクセル開度が零であると、たとえばブレーキブレーキペダルが操作されていない場合において、第1モータジェネレータ110によりエンジン100をモータリングすることにより得た制動力で車両が減速される。したがって、アクセル開度が零であると(S100にてYES)、S102にて、目標制動力が設定される。目標制動力の代わりに目標減速度を設定するようにしてもよい。
【0072】
その後、S104にて、目標制動力または目標減速度を実現し得る目標エンジン回転数が設定される。目標エンジン回転数は、たとえば、少なくとも目標制動力または目標減速度をパラメータとして有するマップに従って設定される。目標エンジン回転数を設定するために用いられるマップは、実験およびシミュレーション等の結果に基づいて予め開発者により定められる。
【0073】
目標エンジン回転数が設定されると、S106にて、エンジン100をモータリングするための第1モータジェネレータ110の目標出力トルクが定められる。さらに、エンジン100をモータリングすることにより得られる制動力が目標駆動力に対して不足する場合などに制動力を補うために、第2モータジェネレータ120の目標出力トルクが定められる。目標出力トルクは、たとえば、目標エンジン回転数および目標制動力(または目標減速度)をパラメータとして有するマップに従って設定される。目標出力トルクを設定するために用いられるマップは、実験およびシミュレーション等の結果に基づいて予め開発者により定められる。
【0074】
目標エンジン回転数および目標出力トルクが定められると、S108にて、第2モータジェネレータ120の目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、目標エンジン回転数が前述した第2回転数NEよりも低いか否かが判断される。第2モータジェネレータ120の目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、目標エンジン回転数が前述した第2回転数NEよりも低いと(S108にてYES)、S110にて、エンジン回転数NEが第2回転数NE2以上まで増大される。すなわち、エンジン100のモータリングを伴う減速中に、第2モータジェネレータ120の目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、目標エンジン回転数が前述した第2回転数NEよりも低いと、エンジン回転数NEが第2回転数NE2以上まで増大される。
【0075】
これにより、図12に示すように、エンジン100の出力トルクが第2動作線を通過せずに、エンジン100をモータリングする状態からエンジン100を負荷運転する状態に移行できる。そのため、動力分割機構130から生じる音を低減できる。
【0076】
図11に戻って、さらに、S112にて、エンジン回転数NEの増大に伴って、第2モータジェネレータ120が発生する制動力が低下される。すなわち、第2モータジェネレータ120の出力トルクが正回転方向(車両を加速させる方向)に増大される。より具体的には、エンジン回転数NEが第2回転数NE2である状態でエンジン100と第2モータジェネレータ120とで実現される制動力が、目標制動力と一致するように、第2モータジェネレータ120の出力トルクが制御される。これにより、エンジン回転数NEの増大に伴う制動力の増大量を低減できる。
【0077】
なお、エンジン100のモータリングを伴う減速中の代わりに、エンジン100のアイドル運転中(自立運転中)に、第2モータジェネレータ120の目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、目標エンジン回転数が前述した第2回転数NEよりも低いと、エンジン回転数NEが第2回転数NE2以上まで増大するようにしてもよい。
【0078】
[第2の実施の形態]
以下、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、エンジン回転数NEを第2回転数NE2以上まで増大する代わりに、第2モータジェネレータ120の出力トルクの絶対値を増大する点で、前述の第1の実施の形態と相違する。さらに、第2モータジェネレータ120の出力トルクの変化により第2モータジェネレータ120が発生する制動力が低下する場合、エンジン回転数NEが増大される。第2モータジェネレータ120の出力トルクの変化により第2モータジェネレータ120が発生する制動力が増大する場合、エンジン回転数NEが低減される。その他の構成および処理については、前述の第1の実施の形態と同様であるため、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
【0079】
図13を参照して、本実施の形態においてECU170が実行する処理について説明する。以下の処理は、ソフトウェアにより実現されてもよく、ハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現されてもよい。S100からS108までの処理については、前述の第1の実施の形態と同じであるため、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
【0080】
第2モータジェネレータ120の目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、目標エンジン回転数が前述した第2回転数NEよりも低いと(S108にてYES)、S114にて、第2モータジェネレータ120の出力トルクが零を含む所定範囲外の値まで変化される。言い換えると、第2モータジェネレータ120の出力トルクの絶対値が、前述した図9に示す上限値TMUの絶対値、または下限値TMLの絶対値以上にされる。すなわち、第2モータジェネレータ120の出力トルクを上限値TMU以上にしてもよく、下限値TML以下にしてもよい。第2モータジェネレータ120の出力トルクを上限値TMU以上にするか、下限値TML以下にするかは、車両の開発時における実験およびシミュレーションの結果に応じて、好ましい方を選択すればよい。
【0081】
さらに、S116にて、第2モータジェネレータ120の出力トルクの変化に応じて、エンジン回転数NEが制御される。一例として、第2モータジェネレータ120の出力トルクの変化により第2モータジェネレータ120が発生する制動力が低下する場合、エンジン回転数NEが増大される。すなわち、第2モータジェネレータ120の出力トルクが上限値TMU以上にされた場合、エンジン回転数NEが増大される。逆に、第2モータジェネレータ120の出力トルクの変化により第2モータジェネレータ120が発生する制動力が増大する場合、エンジン回転数NEが低減される。すなわち、第2モータジェネレータ120の出力トルクが下限値TML以下にされた場合、エンジン回転数NEが低減される。このようにしても、前述の第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
なお、エンジン100のモータリングを伴う減速中の代わりに、エンジン100のアイドル運転中(自立運転中)に、第2モータジェネレータ120の目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、目標エンジン回転数が前述した第2回転数NEよりも低いと、第2モータジェネレータ120の出力トルクが零を含む所定範囲外の値まで変化するようにしてもよい。
【0083】
[その他の実施の形態]
上述した実施の形態においては、第1モータジェネレータ110と第2モータジェネレータ120との2つのモータジェネレータが車両に搭載されていたが、第2モータジェネレータ120だけを車両に搭載してもよい。すなわち、駆動源として車両に搭載されたモータジェネレータまたは電動モータが1つであってもよい。
【0084】
この場合、減速中において、トランスミッションのギヤ比を変更することによりエンジン回転数NEを増大もしくは低減したり、アイドル回転数を増大もしくは低減したりしてもよい。
【0085】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
100 エンジン、108 出力軸、110 第1モータジェネレータ、120 第2モータジェネレータ、130 動力分割機構、170 ECU、172 アクセル開度センサ、174 回転速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
ギヤを介して前記エンジンと連結された電動モータと、
前記エンジンのモータリングを伴う減速中に、前記電動モータの目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、前記エンジンの目標回転数が所定値よりも低いと、前記エンジンの回転数および前記電動モータの出力トルクのうちの少なくともいずれか一方を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記エンジンのモータリングを伴う減速中に、前記電動モータの目標出力トルクが前記所定範囲内にあり、かつ、前記エンジンの目標回転数が前記所定値よりも低いと、前記エンジンの回転数を前記所定値以上まで増大する、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記エンジンの回転数の増大に伴って、前記電動モータが発生する制動力を低下させる、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記エンジンをモータリングし、前記エンジンの回転数を変化させる第2の電動モータをさらに備える、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
エンジンと、
ギヤを介して前記エンジンと連結された電動モータと、
前記エンジンのモータリングを伴う減速中に、前記電動モータの目標出力トルクが零を含む所定範囲内にあり、かつ、前記エンジンの目標回転数が所定値よりも低いと、前記エンジンの回転数および前記電動モータの出力トルクのうちの少なくともいずれか一方を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記エンジンのモータリングを伴う減速中に、前記電動モータの目標出力トルクが前記所定範囲内にあり、かつ、前記エンジンの目標回転数が前記所定値よりも低いと、前記電動モータの出力トルクを前記所定範囲外の値まで変化させる、車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記電動モータの出力トルクの変化により前記電動モータが発生する制動力が低下する場合、前記エンジンの回転数を増大する、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記電動モータの出力トルクの変化により前記電動モータが発生する制動力が増大する場合、前記エンジンの回転数を低減する、請求項4に記載の車両。
【請求項7】
前記エンジンをモータリングし、前記エンジンの回転数を変化させる第2の電動モータをさらに備える、請求項4〜6のいずれかに記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−91346(P2013−91346A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233001(P2011−233001)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】