車体とパワープラントの結合方法および結合設備
【課題】パワープラントを容易に車体に結合可能な車体とパワープラントの結合方法および結合設備を提供する。
【解決手段】車体Wを昇降自在に載置する昇降装置4を有し、フロアレベルの車体搬送ライン上を移動する搬送台車1と、パワープラントPを載置する載置パレット6と、載置パレット6を搬送台車1に移載する移載手段と、を有し、昇降装置4により車体Wを上昇させた状態で、載置パレット6を移載手段により搬送台車1に移載し、次いで、昇降装置4により車体Wを下降させてパワープラントPの上部取付部と車体側の取付穴とを締結して両者を一体にし、次いで、昇降装置4により車体Wを上昇させてパワープラントPの下部取付部と車体側の取付穴とを締結する。
【解決手段】車体Wを昇降自在に載置する昇降装置4を有し、フロアレベルの車体搬送ライン上を移動する搬送台車1と、パワープラントPを載置する載置パレット6と、載置パレット6を搬送台車1に移載する移載手段と、を有し、昇降装置4により車体Wを上昇させた状態で、載置パレット6を移載手段により搬送台車1に移載し、次いで、昇降装置4により車体Wを下降させてパワープラントPの上部取付部と車体側の取付穴とを締結して両者を一体にし、次いで、昇降装置4により車体Wを上昇させてパワープラントPの下部取付部と車体側の取付穴とを締結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における車体とパワープラントの結合方法および結合設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図12に示すように、従来、エンジン等の動力駆動系および補機類等を予めサブフレームF(図10参照)上に組み付けたパワープラントPを車体側のサイドフレームSに搭載する場合、搬送コンベヤC/Vの搬送ハンガーHにより中空に吊り下げられて移動する車体Wに対して、その下方からパワープラントPを載置した台車100を昇降装置101により車体方向へ引き上げている。そして、図6、図8、図9に示すように、車体側のサイドフレームS上に予め配設された左右のブラケットBRの取付穴BR1にパワープラントP側に植設されたスタッドボルトSTを挿通させる。この状態で下方から作業者がサブフレームF(図10)を車体WにボルトB1(図10)により締結し、さらにスタッドボルトSTにナットNを締結することにより車体WとパワープラントPの結合を行っている。
【0003】
前記結合作業は、ブラケットBRの取付穴BR1とスタッドボルトSTの軸芯が一致するようにして、図12に示すように車体Wを載置したハンガーHとパワープラントPを載置した台車100とを予め位置決めした状態で行うが、搬送時のハンガーH上での車体Wの位置ずれ、台車100上でのパワープラントPの位置ずれ、或いは車体W、パワープラントPの製作誤差などにより、図6等に示したブラケットBRの取付穴BR1とスタッドボルトSTの軸芯にずれが生じる場合がある。この軸芯のずれが生じた状態で車体WとパワープラントPを結合させようとすると、スタッドボルトSTと取付穴BR1との間に所謂かじりが発生し、取付穴BR1にスタッドボルトSTをその基端部まで挿通させることが困難となり、サブフレームFをこのサブフレームFの取付穴F1を介して車体WにボルトB1により締結できないという不都合が生じる。
【0004】
このため、従来では、作業者が車体の下方から取付穴BR1とスタッドボルトSTの位置関係を把握し、ハンガーH上の車体Wまたは台車100上のパワープラントPを手で揺動させながら台車100を上昇させることによって、前記かじりを解消して取付穴BR1にスタッドボルトSTをその基端部まで挿通させナットNにより締結するという作業形態が採られている。しかしながら、この作業形態は、下方から取付穴BR1とスタッドボルトSTの位置を見上げながらの作業となるため作業者に難姿勢を強いることになる。また、スタッドボルトSTはパワープラントPの上部側にレイアウトされているため、下方から見上げる作業ではパワープラントPが視界を遮ることになり、かじりの発生箇所を視認することが極めて困難となって、場合によっては何度もかじりを生じさせてしまうという事態も考えられる。
【0005】
この問題に対して、特許文献1には、スタッドボルトのねじ部を本ねじ部と先端側の小径ねじ部とから構成し、小径ねじ部のねじ形状を台形等に形成することにより、ブラケットの取付穴との接触を鈍角部での接触とすることが可能となり、塑性変形による食い込みを抑制し、かじりを防止する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、エンジン単体をチェーン等の持上げ手段によって持ち上げて移動させ、車体のエンジンルームの所定位置に降下させて組み付ける技術が開示されている。エンジンを搭載するときには、エンジンを車体側フレーム上に降下させつつ、エンジン本体の左右側面に突設したブラケットのボルト穴に予め車体側に植設したスタッドボルトを嵌入し、ナットで締め付けてエンジンを車体に結合するようにしている。そして、作業の効率化のため、長さの異なるスタッドボルトを使用し、持ち上げたエンジンを搭載状態の姿勢で降下させたとき、長い方のスタッドボルトを先にブラケットのボルト穴に挿通させることでエンジンの姿勢を変位させ、短い方のスタッドボルトをスムーズにボルト穴に挿通できるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−42848号公報
【特許文献2】特開平8−300954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術においても、位置ずれが大きい場合には依然としてかじりが生ずることとなり、下方から見上げながら作業するという作業者の難姿勢の問題も依然として残る。
【0009】
特許文献2の技術においても、位置ずれによるかじりの問題は解消されず、これを解消するためには作業者がエンジンを揺動させる必要があり手間のかかる作業となる。また、特許文献2に記載の取付方法はエンジン単体を取り付ける場合にのみに採用可能な技術であり、作業姿勢の改善、工数削減および車体組立ライン長を短くする目的でエンジン等の動力駆動系および補機類等を小組ラインで予めサブフレーム上に組み付けてなるパワープラントを、車体側のサイドフレームに搭載する場合については採用できない。
【0010】
また、図6〜図12を用いて説明した従来技術において、スタッドボルトSTへのナットNの締結作業の形態は、サブフレームFを取付穴F1を介して車体WにボルトB1により仮締結した後、図12に示すように作業台D上に作業者が登って本締結するというものであり、高所での作業を伴うこととなって足場が限られやすくなる。ボルトB1を初めから本締結しない理由は、車体WとパワープラントPを正対した状態でそれぞれのスタッドボルトSTにナットNを締結しないと、各ナットNを正確なトルクで締め付けできないからである。各ナットNを正確なトルクで締め付けできないと、駆動系にずれが生じて異常な振動や異音等が発生するおそれがある。よって、従来では、車体WとパワープラントPを正対させるためにパワープラントPを下方から車体Wに9.8m/s2で押圧する押圧装置102が必要であり、コスト高の方法になりやすいという問題がある。さらに、スタッドボルトSTにナットNを締結した後、仮締結してあるボルトB1を本締結する必要があるため、組み付け工数が多くなるという問題もある。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するために創作されたものであり、パワープラントを容易に車体に結合可能な車体とパワープラントの結合方法および結合設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、車体と、サブフレーム上に動力駆動系および補機類が組み付けられてなるパワープラントとを結合する方法であって、フロアレベルに位置したパワープラントに対し、上方から車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結して両者を一体にし、次いで、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、フロアレベルに位置したパワープラントに対して車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することから、フロアレベルに位置する作業者は、パワープラントの上部取付部と車体側の取付穴の位置ずれ等の状態を上方から容易に視認できる。位置ずれの調整作業についても楽な姿勢で車体またはパワープラントを揺動できるため、作業負担が軽減される。そして、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することにより、作業者は容易にパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結することができる。
【0014】
また、本発明は、車体と、サブフレーム上に動力駆動系および補機類が組み付けられてなるパワープラントとを結合する設備であって、車体を昇降自在に載置する昇降手段を有し、フロアレベルの車体搬送ライン上を移動する搬送台車と、パワープラントを載置する載置パレットと、載置パレットを搬送台車に移載する移載手段と、を有することを特徴とする。
さらに、本発明は、昇降手段により車体を上昇させた状態で、載置パレットを移載手段により搬送台車に移載してパワープラントを所定位置に位置させ、次いで、昇降手段により車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結して両者を一体にし、次いで、昇降手段により車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することを特徴とする。
【0015】
これらの発明によれば、搬送台車上に位置したパワープラントに対して車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することから、搬送台車上の作業者は、パワープラントの上部取付部と車体側の取付穴の位置ずれ等の状態を上方から容易に視認できる。位置ずれの調整作業についても楽な姿勢で車体またはパワープラントを揺動できるため、作業負担が軽減される。そして、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することにより、作業者は容易にパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パワープラントを容易に車体に結合でき、結合作業効率の向上と作業者の労力負担の軽減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例を示す側面図である。
【図3】図1の要部拡大図であり、パレット搬入装置周りを示す平面図である。
【図4】図1の要部拡大図であり、パレット搬出装置周りを示す平面図である。
【図5】図2の要部拡大図であり、第2ロッドレスシリンダ周りを示す側面図である。
【図6】車体とパワープラントの結合方法を示す平面図である。
【図7】車体とパワープラントの結合方法を示す底面斜視図である。
【図8】図6におけるA部拡大斜視図である。
【図9】図6におけるB部拡大斜視図である。
【図10】サイドフレームの車体に対する取付孔を示す図である。
【図11】ダンパアッシーの車体に対する取り付け状態を示す図である。
【図12】従来の車体とパワープラントの結合方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、本発明が適用される車体搬送ラインLは、フロアレベルに設けられるフロアコンベア、例えば公知のフリクションコンベア等により構成されており、搬送台車1の搬送方向両側に配設された駆動モータ2(図2)によって回動するフリクションローラ3(3a、3b)により、搬送台車1が走行、停止する。図2に示すように、搬送台車1には車輪1aが軸支されており、この車輪1aが搬送レール1bにガイドされて走行する。各搬送台車1上には昇降装置4が配設され、昇降装置4の上端に形成された平板状の載置部5に車体Wが位置決め載置される。
【0019】
図1において、車体搬送ラインLの適所には、エンジン等の動力駆動系および補機類等を予めサブフレームF(図5)上に組み付けてなるパワープラントPを、載置パレット6上に位置決め載置して搬送台車1上に搬入するためのパレット搬入装置20と、空になった載置パレット6を搬送台車1上から搬出するパレット搬出装置30とが配設されている。図5に示すように、載置パレット6の上面にはパワープラントPを位置決め載置するための載置台8が配設され、下面には走行用のローラ9が軸支され、また下面の2個所に第1係合片10と第2係合片11が突設形成されている。
【0020】
図3に示すパレット搬入装置20および図4に示すパレット搬出装置30は共に、車体搬送ラインLに直交して配設された地下ピット40と、地下ピット40に開設され前記車体搬送ラインLの搬送軸線上に開口形成される昇降路41と、載置パレット6を載置する載置台車42と、地下ピット40内に敷設されたベルトコンベア等からなり、載置台車42を搬送する載置パレット搬送コンベア43と、載置パレット搬送コンベア43の昇降路41に対応する個所に配設され、載置台車42を載置パレット搬送コンベア43の移載位置と搬送台車1の移載位置との間で昇降する昇降装置44と、から構成される。昇降装置44の上面にはローラ44aが敷設されている。
【0021】
図3および図4を参照して、パレット搬入装置20およびパレット搬出装置30の各載置パレット搬送コンベア43は、具体的には、昇降路41を挟んで左右一方の地下ピット40側に配された架台50に敷設される載置パレット搬送コンベア43aと、左右他方の地下ピット40側に配された架台50に敷設される載置パレット搬送コンベア43bとから構成される。各架台50上であって昇降装置44の近傍には、載置台車42を移載するための移載用シリンダ51、52が配設され、それぞれのロッドの先端には第4押圧片51a、第5押圧片52aが取り付けられている。
【0022】
載置台車42の上面中央には第1ロッドレスシリンダ45が車体搬送ラインLの軸線に沿って配設され、この第1ロッドレスシリンダ45を挟んで載置台車42の上面両側には第1搬送路46が車体搬送ラインLに沿って敷設される。第1ロッドレスシリンダ45の第1押圧片47が載置パレット6の下面の第1係合片10を押圧することにより、載置パレット6は第1搬送路46に沿って搬送される。また、載置台車42の下面の左右には第3係合片42aと第4係合片42bとが形成されている。
【0023】
搬送台車1における搬送方向前部には、図1に示すように、車体搬送ラインLの軸線に沿って長孔12が穿設されており、この長孔12内を垂直に貫通するように、図5に示すように第3押圧片13が長孔12に沿って摺動自在に支持されている。第3押圧片13は載置パレット6の下面の第2係合片11を押圧する。この第3押圧片13は、車体搬送ラインLの幅方向を回動軸として回動可能に構成されており、一端側が第2係合片11の一側に位置して第2係合片11を上流側に押圧し、他端側が第2係合片11の他側に位置して第2係合片11を下流側に押圧できるようになっている。また、図3に示すように、搬送台車1における長孔12の両側には、昇降路41に位置した状態の載置台車42の第1搬送路46の延長線上に位置するように、第2搬送路14が敷設されている。
【0024】
パレット搬入装置20およびパレット搬出装置30の各昇降路41の車体搬送ラインLの上流側直近には、図2、図5に示すように、第2ロッドレスシリンダ15が車体搬送ラインLに沿って配設され、この第2ロッドレスシリンダ15の第2押圧片16に前記第3押圧片13が係合する構成となっている。第2ロッドレスシリンダ15は、搬送レール1bの敷設面Gに穿設された凹部G1内から出没自在となるように、凹部G1の下方に鉛直状に配設されたシリンダ60のロッドの上端に取り付けられている。
【0025】
以上の構成のもとに、車体WとパワープラントPの結合方法を説明すると、不図示の小組ラインでエンジン等の動力駆動系および補機類等を予めサブフレームF上に組み付けてパワープラントPとし、このパワープラントPを載置パレット6の載置台8に位置決め載置する。載置パレット6は、載置台車42上に位置決めされた状態でパレット搬入装置20の載置パレット搬送コンベア43aにより地下ピット40内で搬送される。載置パレット6が載置パレット搬送コンベア43aの終端に達すると、移載用シリンダ51の第4押圧片51aにより載置台車42の第3係合片42aが押圧されることにより、載置台車42が昇降装置44のローラ44a上に移載され、この位置で待機する。
【0026】
図2(a)に示すように、搬送台車1の伸張状態にある昇降装置4の載置部5には車体Wが載置されている。車体搬送ラインL上を搬送されてきた搬送台車1はパレット搬入装置20の昇降路41の直前でフリクションローラ3aにより制動されて定位置で停止すると、昇降装置44が上昇し、昇降装置44上の載置台車42の第1搬送路46(図1)と搬送台車1に敷設された第2搬送路14(図1)が面一状に位置する。
【0027】
この状態で第1ロッドレスシリンダ45が作動することにより、第1押圧片47が載置パレット6の第1係合片10を押圧し、これにより図2(a)に矢印で示すように、載置パレット6が載置台車42の第1搬送路46(図1)から搬送台車1の第2搬送路14(図1)に移載される。次いで第2ロッドレスシリンダ15がシリンダ60の作動により凹部G1から上方に突出する。これにより第2ロッドレスシリンダ15の第2押圧片16が搬送台車1側の第3押圧片13を押圧可能な位置に達する。そして第2ロッドレスシリンダ15が作動することにより、第2押圧片16が第3押圧片13を介して載置パレット6の第2係合片11を押圧し、載置パレット6が第2搬送路14に沿って定位置まで移動して位置決め停止する。次いでシリンダ60が縮退することにより、第2ロッドレスシリンダ15は凹部G1内に復動し、これにより第2押圧片16と第3押圧片13の係合が解除される。これと同時に第1ロッドレスシリンダ45が復動するとともに昇降装置44が下降し、載置台車42が昇降路41内に没入する。
【0028】
次いで搬送台車1は駆動モータ2により搬送レール1b上を下流に向けて搬送される。下降した昇降装置44上の載置台車42は、図3において、載置パレット搬送コンベア43bに配設された移載用シリンダ52のロッドの先端の第5押圧片52aと載置台車42の第4係合片42bが係合することにより、昇降装置44のローラ44aから載置パレット搬送コンベア43bに移載され、地下ピット40を介して外部に搬出される。
【0029】
一方、搬送レール1b上を下流に向けて搬送される搬送台車1上では、図2(b)に示すように、昇降装置4が縮退し、載置部5に載置された車体Wが第2搬送路14上の定位置で停止している載置パレット6上のパワープラントPに向けて下降する。このとき、作業者は、図6、図8、図9に示すように、車体側のサイドフレームS上に予め配設されたブラケットBRの取付穴BR1とパワープラントP側に植設されたスタッドボルトSTとの位置関係を、図2(b)に示すとおり、上方から視認することができるため、ブラケットBRの取付穴BR1とスタッドボルトSTの位置ずれが生じていたときには作業者はそのことを容易に把握できる。また、両者の相対的な位置関係の調整作業についても、楽な姿勢で車体WまたはパワープラントPを揺動でき作業負担が軽減される。これにより作業効率が向上する。またこのとき、図11に示すように、パワープラントPのダンパアッシーDの先端の取付ボルトD1が車体Wのダンパ取付穴W1に挿通される。
【0030】
そして、ブラケットBRの取付穴BR1にスタッドボルトSTが正確に挿通されると、スタッドボルトSTおよびダンパアッシーDの取付ボルトD1にナットNが螺合されることにより締結される。このとき車体WはパワープラントPに対して9.8m/s2で押圧した状態にあることから、そのまま所定のトルクで本締め締結することにより、各ナットNの締め付けトルクが保証される。
【0031】
次いで、図2(c)に示すように、搬送台車1の昇降装置4が伸張し、載置部5に載置された車体Wが上昇することによりパワープラントPは車体Wと一体となって上昇する。一方、搬送台車1はパレット搬出装置30の昇降路41の直前でフリクションローラ3bにより制動され、定位置で停止する。次いで昇降装置44が上昇し、昇降装置44上の載置台車42の第1搬送路46(図1)と搬送台車1に敷設された第2搬送路14(図1)が面一状に位置する。
【0032】
次いで第2ロッドレスシリンダ15がシリンダ60の作動により凹部G1から上方に突出する。これにより第2ロッドレスシリンダ15の第2押圧片16が搬送台車1側の第3押圧片13を押圧可能な位置に達する。そして第2ロッドレスシリンダ15が作動することにより、第2押圧片16が第3押圧片13を介して載置パレット6の第2係合片11を押圧し、載置パレット6が搬送台車1の第2搬送路14(図1)から載置台車42の第1搬送路46(図1)に移載される。
【0033】
次いで第1ロッドレスシリンダ45が作動し、載置パレット6が載置台車42の載置位置まで移動する。そして、昇降装置44が下降し、載置台車42が昇降路41内に没入する。次いで搬送台車1は駆動モータ2により搬送レール1b上を下流に向けて搬送される。そして、載置台車42は、図4において、載置パレット搬送コンベア43bに配設された移載用シリンダ52のロッドの先端の第5押圧片52aと載置台車42の第4係合片42bが係合することにより、昇降装置44のローラ44aから載置パレット搬送コンベア43bに移載され、地下ピット40を介して外部に搬出される。
【0034】
一方、搬送台車1上では、図7、図10に示すように、上昇したパワープラントPの下面に配設されたサブフレームFの取付穴F1と車体W側の不図示のねじ孔を一致させてボルトB1により締結する。
以上により車体WとパワープラントPの結合の1サイクル工程が完了する。
【0035】
以上のように、フロアレベルに位置したパワープラントPに対し、上方から車体Wを下降させてパワープラントPの上部取付部(スタッドボルトST等)と車体側、具体的にはブラケットBRの取付穴BR1とを締結手段(ナットN)により締結して両者を一体にし、次いで、車体Wを上昇させてパワープラントPの下部取付部(サブフレームFの取付穴F1)と車体側の取付穴(図示せず)とを締結手段(ボルトB1)により締結する結合方法とすれば、フロアレベルに位置したパワープラントPに対して車体Wを下降させてパワープラントPの上部取付部と車体W側の取付穴とを締結することから、フロアレベルに位置する作業者は、パワープラントPの上部取付部と車体W側の取付穴の位置ずれ等の状態を上方から容易に視認できる。位置ずれの調整作業についても楽な姿勢で車体WまたはパワープラントPを揺動できるため、作業負担が軽減される。そして、車体Wを上昇させてパワープラントPの下部取付部と車体側の取付穴とを締結することにより、作業者は容易にパワープラントPの下部取付部と車体W側の取付穴とを締結できる。
【0036】
また、車体Wを昇降自在に載置する昇降手段(昇降装置4)を有し、フロアレベルの車体搬送ラインL上を移動する搬送台車1と、パワープラントPを載置する載置パレット6と、載置パレット6を搬送台車1に移載する移載手段(第1ロッドレスシリンダ45、第2ロッドレスシリンダ15)と、を有する結合設備、または昇降手段(昇降装置4)により車体Wを上昇させた状態で、載置パレット6を移載手段(第1ロッドレスシリンダ45、第2ロッドレスシリンダ15)により搬送台車1に移載してパワープラントPを所定位置に位置させ、次いで、昇降手段(昇降装置4)により車体Wを下降させてパワープラントPの上部取付部(スタッドボルトST等)と車体側の取付穴BR1とを締結手段(ナットN)により締結して両者を一体にし、次いで、昇降手段(昇降装置4)により車体Wを上昇させてパワープラントPの下部取付部(サブフレームFの取付穴F1)と車体側の取付穴(図示せず)とを締結手段により締結する結合方法とすれば、搬送台車上に位置したパワープラントに対して車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することから、搬送台車上の作業者は、パワープラントの上部取付部と車体側の取付穴の位置ずれ等の状態を上方から容易に視認できる。位置ずれの調整作業についても楽な姿勢で車体またはパワープラントを揺動できるため、作業負担が軽減される。そして、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することにより、作業者は容易にパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 搬送台車
4 昇降装置(昇降手段)
6 載置パレット
15 第2ロッドレスシリンダ(移載手段)
45 第1ロッドレスシリンダ(移載手段)
BR1 (車体側の)取付穴
F1 取付穴(パワープラントの下部取付部)
P パワープラント
ST スタッドボルト(パワープラントの上部取付部)
W 車体
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における車体とパワープラントの結合方法および結合設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図12に示すように、従来、エンジン等の動力駆動系および補機類等を予めサブフレームF(図10参照)上に組み付けたパワープラントPを車体側のサイドフレームSに搭載する場合、搬送コンベヤC/Vの搬送ハンガーHにより中空に吊り下げられて移動する車体Wに対して、その下方からパワープラントPを載置した台車100を昇降装置101により車体方向へ引き上げている。そして、図6、図8、図9に示すように、車体側のサイドフレームS上に予め配設された左右のブラケットBRの取付穴BR1にパワープラントP側に植設されたスタッドボルトSTを挿通させる。この状態で下方から作業者がサブフレームF(図10)を車体WにボルトB1(図10)により締結し、さらにスタッドボルトSTにナットNを締結することにより車体WとパワープラントPの結合を行っている。
【0003】
前記結合作業は、ブラケットBRの取付穴BR1とスタッドボルトSTの軸芯が一致するようにして、図12に示すように車体Wを載置したハンガーHとパワープラントPを載置した台車100とを予め位置決めした状態で行うが、搬送時のハンガーH上での車体Wの位置ずれ、台車100上でのパワープラントPの位置ずれ、或いは車体W、パワープラントPの製作誤差などにより、図6等に示したブラケットBRの取付穴BR1とスタッドボルトSTの軸芯にずれが生じる場合がある。この軸芯のずれが生じた状態で車体WとパワープラントPを結合させようとすると、スタッドボルトSTと取付穴BR1との間に所謂かじりが発生し、取付穴BR1にスタッドボルトSTをその基端部まで挿通させることが困難となり、サブフレームFをこのサブフレームFの取付穴F1を介して車体WにボルトB1により締結できないという不都合が生じる。
【0004】
このため、従来では、作業者が車体の下方から取付穴BR1とスタッドボルトSTの位置関係を把握し、ハンガーH上の車体Wまたは台車100上のパワープラントPを手で揺動させながら台車100を上昇させることによって、前記かじりを解消して取付穴BR1にスタッドボルトSTをその基端部まで挿通させナットNにより締結するという作業形態が採られている。しかしながら、この作業形態は、下方から取付穴BR1とスタッドボルトSTの位置を見上げながらの作業となるため作業者に難姿勢を強いることになる。また、スタッドボルトSTはパワープラントPの上部側にレイアウトされているため、下方から見上げる作業ではパワープラントPが視界を遮ることになり、かじりの発生箇所を視認することが極めて困難となって、場合によっては何度もかじりを生じさせてしまうという事態も考えられる。
【0005】
この問題に対して、特許文献1には、スタッドボルトのねじ部を本ねじ部と先端側の小径ねじ部とから構成し、小径ねじ部のねじ形状を台形等に形成することにより、ブラケットの取付穴との接触を鈍角部での接触とすることが可能となり、塑性変形による食い込みを抑制し、かじりを防止する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、エンジン単体をチェーン等の持上げ手段によって持ち上げて移動させ、車体のエンジンルームの所定位置に降下させて組み付ける技術が開示されている。エンジンを搭載するときには、エンジンを車体側フレーム上に降下させつつ、エンジン本体の左右側面に突設したブラケットのボルト穴に予め車体側に植設したスタッドボルトを嵌入し、ナットで締め付けてエンジンを車体に結合するようにしている。そして、作業の効率化のため、長さの異なるスタッドボルトを使用し、持ち上げたエンジンを搭載状態の姿勢で降下させたとき、長い方のスタッドボルトを先にブラケットのボルト穴に挿通させることでエンジンの姿勢を変位させ、短い方のスタッドボルトをスムーズにボルト穴に挿通できるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−42848号公報
【特許文献2】特開平8−300954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術においても、位置ずれが大きい場合には依然としてかじりが生ずることとなり、下方から見上げながら作業するという作業者の難姿勢の問題も依然として残る。
【0009】
特許文献2の技術においても、位置ずれによるかじりの問題は解消されず、これを解消するためには作業者がエンジンを揺動させる必要があり手間のかかる作業となる。また、特許文献2に記載の取付方法はエンジン単体を取り付ける場合にのみに採用可能な技術であり、作業姿勢の改善、工数削減および車体組立ライン長を短くする目的でエンジン等の動力駆動系および補機類等を小組ラインで予めサブフレーム上に組み付けてなるパワープラントを、車体側のサイドフレームに搭載する場合については採用できない。
【0010】
また、図6〜図12を用いて説明した従来技術において、スタッドボルトSTへのナットNの締結作業の形態は、サブフレームFを取付穴F1を介して車体WにボルトB1により仮締結した後、図12に示すように作業台D上に作業者が登って本締結するというものであり、高所での作業を伴うこととなって足場が限られやすくなる。ボルトB1を初めから本締結しない理由は、車体WとパワープラントPを正対した状態でそれぞれのスタッドボルトSTにナットNを締結しないと、各ナットNを正確なトルクで締め付けできないからである。各ナットNを正確なトルクで締め付けできないと、駆動系にずれが生じて異常な振動や異音等が発生するおそれがある。よって、従来では、車体WとパワープラントPを正対させるためにパワープラントPを下方から車体Wに9.8m/s2で押圧する押圧装置102が必要であり、コスト高の方法になりやすいという問題がある。さらに、スタッドボルトSTにナットNを締結した後、仮締結してあるボルトB1を本締結する必要があるため、組み付け工数が多くなるという問題もある。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するために創作されたものであり、パワープラントを容易に車体に結合可能な車体とパワープラントの結合方法および結合設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、車体と、サブフレーム上に動力駆動系および補機類が組み付けられてなるパワープラントとを結合する方法であって、フロアレベルに位置したパワープラントに対し、上方から車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結して両者を一体にし、次いで、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、フロアレベルに位置したパワープラントに対して車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することから、フロアレベルに位置する作業者は、パワープラントの上部取付部と車体側の取付穴の位置ずれ等の状態を上方から容易に視認できる。位置ずれの調整作業についても楽な姿勢で車体またはパワープラントを揺動できるため、作業負担が軽減される。そして、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することにより、作業者は容易にパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結することができる。
【0014】
また、本発明は、車体と、サブフレーム上に動力駆動系および補機類が組み付けられてなるパワープラントとを結合する設備であって、車体を昇降自在に載置する昇降手段を有し、フロアレベルの車体搬送ライン上を移動する搬送台車と、パワープラントを載置する載置パレットと、載置パレットを搬送台車に移載する移載手段と、を有することを特徴とする。
さらに、本発明は、昇降手段により車体を上昇させた状態で、載置パレットを移載手段により搬送台車に移載してパワープラントを所定位置に位置させ、次いで、昇降手段により車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結して両者を一体にし、次いで、昇降手段により車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することを特徴とする。
【0015】
これらの発明によれば、搬送台車上に位置したパワープラントに対して車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することから、搬送台車上の作業者は、パワープラントの上部取付部と車体側の取付穴の位置ずれ等の状態を上方から容易に視認できる。位置ずれの調整作業についても楽な姿勢で車体またはパワープラントを揺動できるため、作業負担が軽減される。そして、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することにより、作業者は容易にパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パワープラントを容易に車体に結合でき、結合作業効率の向上と作業者の労力負担の軽減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例を示す側面図である。
【図3】図1の要部拡大図であり、パレット搬入装置周りを示す平面図である。
【図4】図1の要部拡大図であり、パレット搬出装置周りを示す平面図である。
【図5】図2の要部拡大図であり、第2ロッドレスシリンダ周りを示す側面図である。
【図6】車体とパワープラントの結合方法を示す平面図である。
【図7】車体とパワープラントの結合方法を示す底面斜視図である。
【図8】図6におけるA部拡大斜視図である。
【図9】図6におけるB部拡大斜視図である。
【図10】サイドフレームの車体に対する取付孔を示す図である。
【図11】ダンパアッシーの車体に対する取り付け状態を示す図である。
【図12】従来の車体とパワープラントの結合方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、本発明が適用される車体搬送ラインLは、フロアレベルに設けられるフロアコンベア、例えば公知のフリクションコンベア等により構成されており、搬送台車1の搬送方向両側に配設された駆動モータ2(図2)によって回動するフリクションローラ3(3a、3b)により、搬送台車1が走行、停止する。図2に示すように、搬送台車1には車輪1aが軸支されており、この車輪1aが搬送レール1bにガイドされて走行する。各搬送台車1上には昇降装置4が配設され、昇降装置4の上端に形成された平板状の載置部5に車体Wが位置決め載置される。
【0019】
図1において、車体搬送ラインLの適所には、エンジン等の動力駆動系および補機類等を予めサブフレームF(図5)上に組み付けてなるパワープラントPを、載置パレット6上に位置決め載置して搬送台車1上に搬入するためのパレット搬入装置20と、空になった載置パレット6を搬送台車1上から搬出するパレット搬出装置30とが配設されている。図5に示すように、載置パレット6の上面にはパワープラントPを位置決め載置するための載置台8が配設され、下面には走行用のローラ9が軸支され、また下面の2個所に第1係合片10と第2係合片11が突設形成されている。
【0020】
図3に示すパレット搬入装置20および図4に示すパレット搬出装置30は共に、車体搬送ラインLに直交して配設された地下ピット40と、地下ピット40に開設され前記車体搬送ラインLの搬送軸線上に開口形成される昇降路41と、載置パレット6を載置する載置台車42と、地下ピット40内に敷設されたベルトコンベア等からなり、載置台車42を搬送する載置パレット搬送コンベア43と、載置パレット搬送コンベア43の昇降路41に対応する個所に配設され、載置台車42を載置パレット搬送コンベア43の移載位置と搬送台車1の移載位置との間で昇降する昇降装置44と、から構成される。昇降装置44の上面にはローラ44aが敷設されている。
【0021】
図3および図4を参照して、パレット搬入装置20およびパレット搬出装置30の各載置パレット搬送コンベア43は、具体的には、昇降路41を挟んで左右一方の地下ピット40側に配された架台50に敷設される載置パレット搬送コンベア43aと、左右他方の地下ピット40側に配された架台50に敷設される載置パレット搬送コンベア43bとから構成される。各架台50上であって昇降装置44の近傍には、載置台車42を移載するための移載用シリンダ51、52が配設され、それぞれのロッドの先端には第4押圧片51a、第5押圧片52aが取り付けられている。
【0022】
載置台車42の上面中央には第1ロッドレスシリンダ45が車体搬送ラインLの軸線に沿って配設され、この第1ロッドレスシリンダ45を挟んで載置台車42の上面両側には第1搬送路46が車体搬送ラインLに沿って敷設される。第1ロッドレスシリンダ45の第1押圧片47が載置パレット6の下面の第1係合片10を押圧することにより、載置パレット6は第1搬送路46に沿って搬送される。また、載置台車42の下面の左右には第3係合片42aと第4係合片42bとが形成されている。
【0023】
搬送台車1における搬送方向前部には、図1に示すように、車体搬送ラインLの軸線に沿って長孔12が穿設されており、この長孔12内を垂直に貫通するように、図5に示すように第3押圧片13が長孔12に沿って摺動自在に支持されている。第3押圧片13は載置パレット6の下面の第2係合片11を押圧する。この第3押圧片13は、車体搬送ラインLの幅方向を回動軸として回動可能に構成されており、一端側が第2係合片11の一側に位置して第2係合片11を上流側に押圧し、他端側が第2係合片11の他側に位置して第2係合片11を下流側に押圧できるようになっている。また、図3に示すように、搬送台車1における長孔12の両側には、昇降路41に位置した状態の載置台車42の第1搬送路46の延長線上に位置するように、第2搬送路14が敷設されている。
【0024】
パレット搬入装置20およびパレット搬出装置30の各昇降路41の車体搬送ラインLの上流側直近には、図2、図5に示すように、第2ロッドレスシリンダ15が車体搬送ラインLに沿って配設され、この第2ロッドレスシリンダ15の第2押圧片16に前記第3押圧片13が係合する構成となっている。第2ロッドレスシリンダ15は、搬送レール1bの敷設面Gに穿設された凹部G1内から出没自在となるように、凹部G1の下方に鉛直状に配設されたシリンダ60のロッドの上端に取り付けられている。
【0025】
以上の構成のもとに、車体WとパワープラントPの結合方法を説明すると、不図示の小組ラインでエンジン等の動力駆動系および補機類等を予めサブフレームF上に組み付けてパワープラントPとし、このパワープラントPを載置パレット6の載置台8に位置決め載置する。載置パレット6は、載置台車42上に位置決めされた状態でパレット搬入装置20の載置パレット搬送コンベア43aにより地下ピット40内で搬送される。載置パレット6が載置パレット搬送コンベア43aの終端に達すると、移載用シリンダ51の第4押圧片51aにより載置台車42の第3係合片42aが押圧されることにより、載置台車42が昇降装置44のローラ44a上に移載され、この位置で待機する。
【0026】
図2(a)に示すように、搬送台車1の伸張状態にある昇降装置4の載置部5には車体Wが載置されている。車体搬送ラインL上を搬送されてきた搬送台車1はパレット搬入装置20の昇降路41の直前でフリクションローラ3aにより制動されて定位置で停止すると、昇降装置44が上昇し、昇降装置44上の載置台車42の第1搬送路46(図1)と搬送台車1に敷設された第2搬送路14(図1)が面一状に位置する。
【0027】
この状態で第1ロッドレスシリンダ45が作動することにより、第1押圧片47が載置パレット6の第1係合片10を押圧し、これにより図2(a)に矢印で示すように、載置パレット6が載置台車42の第1搬送路46(図1)から搬送台車1の第2搬送路14(図1)に移載される。次いで第2ロッドレスシリンダ15がシリンダ60の作動により凹部G1から上方に突出する。これにより第2ロッドレスシリンダ15の第2押圧片16が搬送台車1側の第3押圧片13を押圧可能な位置に達する。そして第2ロッドレスシリンダ15が作動することにより、第2押圧片16が第3押圧片13を介して載置パレット6の第2係合片11を押圧し、載置パレット6が第2搬送路14に沿って定位置まで移動して位置決め停止する。次いでシリンダ60が縮退することにより、第2ロッドレスシリンダ15は凹部G1内に復動し、これにより第2押圧片16と第3押圧片13の係合が解除される。これと同時に第1ロッドレスシリンダ45が復動するとともに昇降装置44が下降し、載置台車42が昇降路41内に没入する。
【0028】
次いで搬送台車1は駆動モータ2により搬送レール1b上を下流に向けて搬送される。下降した昇降装置44上の載置台車42は、図3において、載置パレット搬送コンベア43bに配設された移載用シリンダ52のロッドの先端の第5押圧片52aと載置台車42の第4係合片42bが係合することにより、昇降装置44のローラ44aから載置パレット搬送コンベア43bに移載され、地下ピット40を介して外部に搬出される。
【0029】
一方、搬送レール1b上を下流に向けて搬送される搬送台車1上では、図2(b)に示すように、昇降装置4が縮退し、載置部5に載置された車体Wが第2搬送路14上の定位置で停止している載置パレット6上のパワープラントPに向けて下降する。このとき、作業者は、図6、図8、図9に示すように、車体側のサイドフレームS上に予め配設されたブラケットBRの取付穴BR1とパワープラントP側に植設されたスタッドボルトSTとの位置関係を、図2(b)に示すとおり、上方から視認することができるため、ブラケットBRの取付穴BR1とスタッドボルトSTの位置ずれが生じていたときには作業者はそのことを容易に把握できる。また、両者の相対的な位置関係の調整作業についても、楽な姿勢で車体WまたはパワープラントPを揺動でき作業負担が軽減される。これにより作業効率が向上する。またこのとき、図11に示すように、パワープラントPのダンパアッシーDの先端の取付ボルトD1が車体Wのダンパ取付穴W1に挿通される。
【0030】
そして、ブラケットBRの取付穴BR1にスタッドボルトSTが正確に挿通されると、スタッドボルトSTおよびダンパアッシーDの取付ボルトD1にナットNが螺合されることにより締結される。このとき車体WはパワープラントPに対して9.8m/s2で押圧した状態にあることから、そのまま所定のトルクで本締め締結することにより、各ナットNの締め付けトルクが保証される。
【0031】
次いで、図2(c)に示すように、搬送台車1の昇降装置4が伸張し、載置部5に載置された車体Wが上昇することによりパワープラントPは車体Wと一体となって上昇する。一方、搬送台車1はパレット搬出装置30の昇降路41の直前でフリクションローラ3bにより制動され、定位置で停止する。次いで昇降装置44が上昇し、昇降装置44上の載置台車42の第1搬送路46(図1)と搬送台車1に敷設された第2搬送路14(図1)が面一状に位置する。
【0032】
次いで第2ロッドレスシリンダ15がシリンダ60の作動により凹部G1から上方に突出する。これにより第2ロッドレスシリンダ15の第2押圧片16が搬送台車1側の第3押圧片13を押圧可能な位置に達する。そして第2ロッドレスシリンダ15が作動することにより、第2押圧片16が第3押圧片13を介して載置パレット6の第2係合片11を押圧し、載置パレット6が搬送台車1の第2搬送路14(図1)から載置台車42の第1搬送路46(図1)に移載される。
【0033】
次いで第1ロッドレスシリンダ45が作動し、載置パレット6が載置台車42の載置位置まで移動する。そして、昇降装置44が下降し、載置台車42が昇降路41内に没入する。次いで搬送台車1は駆動モータ2により搬送レール1b上を下流に向けて搬送される。そして、載置台車42は、図4において、載置パレット搬送コンベア43bに配設された移載用シリンダ52のロッドの先端の第5押圧片52aと載置台車42の第4係合片42bが係合することにより、昇降装置44のローラ44aから載置パレット搬送コンベア43bに移載され、地下ピット40を介して外部に搬出される。
【0034】
一方、搬送台車1上では、図7、図10に示すように、上昇したパワープラントPの下面に配設されたサブフレームFの取付穴F1と車体W側の不図示のねじ孔を一致させてボルトB1により締結する。
以上により車体WとパワープラントPの結合の1サイクル工程が完了する。
【0035】
以上のように、フロアレベルに位置したパワープラントPに対し、上方から車体Wを下降させてパワープラントPの上部取付部(スタッドボルトST等)と車体側、具体的にはブラケットBRの取付穴BR1とを締結手段(ナットN)により締結して両者を一体にし、次いで、車体Wを上昇させてパワープラントPの下部取付部(サブフレームFの取付穴F1)と車体側の取付穴(図示せず)とを締結手段(ボルトB1)により締結する結合方法とすれば、フロアレベルに位置したパワープラントPに対して車体Wを下降させてパワープラントPの上部取付部と車体W側の取付穴とを締結することから、フロアレベルに位置する作業者は、パワープラントPの上部取付部と車体W側の取付穴の位置ずれ等の状態を上方から容易に視認できる。位置ずれの調整作業についても楽な姿勢で車体WまたはパワープラントPを揺動できるため、作業負担が軽減される。そして、車体Wを上昇させてパワープラントPの下部取付部と車体側の取付穴とを締結することにより、作業者は容易にパワープラントPの下部取付部と車体W側の取付穴とを締結できる。
【0036】
また、車体Wを昇降自在に載置する昇降手段(昇降装置4)を有し、フロアレベルの車体搬送ラインL上を移動する搬送台車1と、パワープラントPを載置する載置パレット6と、載置パレット6を搬送台車1に移載する移載手段(第1ロッドレスシリンダ45、第2ロッドレスシリンダ15)と、を有する結合設備、または昇降手段(昇降装置4)により車体Wを上昇させた状態で、載置パレット6を移載手段(第1ロッドレスシリンダ45、第2ロッドレスシリンダ15)により搬送台車1に移載してパワープラントPを所定位置に位置させ、次いで、昇降手段(昇降装置4)により車体Wを下降させてパワープラントPの上部取付部(スタッドボルトST等)と車体側の取付穴BR1とを締結手段(ナットN)により締結して両者を一体にし、次いで、昇降手段(昇降装置4)により車体Wを上昇させてパワープラントPの下部取付部(サブフレームFの取付穴F1)と車体側の取付穴(図示せず)とを締結手段により締結する結合方法とすれば、搬送台車上に位置したパワープラントに対して車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することから、搬送台車上の作業者は、パワープラントの上部取付部と車体側の取付穴の位置ずれ等の状態を上方から容易に視認できる。位置ずれの調整作業についても楽な姿勢で車体またはパワープラントを揺動できるため、作業負担が軽減される。そして、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することにより、作業者は容易にパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 搬送台車
4 昇降装置(昇降手段)
6 載置パレット
15 第2ロッドレスシリンダ(移載手段)
45 第1ロッドレスシリンダ(移載手段)
BR1 (車体側の)取付穴
F1 取付穴(パワープラントの下部取付部)
P パワープラント
ST スタッドボルト(パワープラントの上部取付部)
W 車体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、サブフレーム上に動力駆動系および補機類が組み付けられてなるパワープラントとを結合する方法であって、
フロアレベルに位置したパワープラントに対し、上方から車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結して両者を一体にし、
次いで、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することを特徴とする車体とパワープラントの結合方法。
【請求項2】
車体と、サブフレーム上に動力駆動系および補機類が組み付けられてなるパワープラントとを結合する設備であって、
車体を昇降自在に載置する昇降手段を有し、フロアレベルの車体搬送ライン上を移動する搬送台車と、
パワープラントを載置する載置パレットと、
載置パレットを搬送台車に移載する移載手段と、
を有することを特徴とする車体とパワープラントの結合設備。
【請求項3】
請求項2に記載の結合設備を用い、
昇降手段により車体を上昇させた状態で、載置パレットを移載手段により搬送台車に移載してパワープラントを所定位置に位置させ、
次いで、昇降手段により車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結して両者を一体にし、
次いで、昇降手段により車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することを特徴とする車体とパワープラントの結合方法。
【請求項1】
車体と、サブフレーム上に動力駆動系および補機類が組み付けられてなるパワープラントとを結合する方法であって、
フロアレベルに位置したパワープラントに対し、上方から車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結して両者を一体にし、
次いで、車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することを特徴とする車体とパワープラントの結合方法。
【請求項2】
車体と、サブフレーム上に動力駆動系および補機類が組み付けられてなるパワープラントとを結合する設備であって、
車体を昇降自在に載置する昇降手段を有し、フロアレベルの車体搬送ライン上を移動する搬送台車と、
パワープラントを載置する載置パレットと、
載置パレットを搬送台車に移載する移載手段と、
を有することを特徴とする車体とパワープラントの結合設備。
【請求項3】
請求項2に記載の結合設備を用い、
昇降手段により車体を上昇させた状態で、載置パレットを移載手段により搬送台車に移載してパワープラントを所定位置に位置させ、
次いで、昇降手段により車体を下降させてパワープラントの上部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結して両者を一体にし、
次いで、昇降手段により車体を上昇させてパワープラントの下部取付部と車体側の取付穴とを締結手段により締結することを特徴とする車体とパワープラントの結合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−224137(P2012−224137A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91685(P2011−91685)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]