説明

車体のサイドパネル構造

【課題】温度変化による一時的な外板のへこみの発生を防止した車両のサイドパネル構造を提供すること。
【解決手段】車体の上下方向に沿って該車体の前後方向に所定の間隔で設けられた複数のピラー部材と外板との間に、前記車体の前後方向に沿った張り出し部材を設け、該張り出し部材と前記ピラー部材との間にばね部材を介在させ、該ばね部材のばね力により前記外板を車両外方に張り出を行い、かつ前記ピラー部材に前記張り出し部材の下方向への移動を阻止するストッパ部を設けるとともに、前記張り出し部材と前記外板との接触部を接着剤にて固着してサイドパネル構造を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスなどの車体の外板を外方に張り出し、外板表面を平滑に保持するためのサイドパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バスの車体の外側面は広く大きいため、平面の維持が難しく、従来は、上下方向に延びるピラー部材と外板との間に車両の前後方向に延びる張り出し部材を介装させ、外板を外側に突出させて、平滑を保持していた。
【0003】
具体的には、例えば、張り出し部材に弾性材を張りつけ、その上に外板を取り付けることにより、外板に外方向への張り出し力を付与し、外板を平滑に保持していた。また、張り出し部材とピラー部材との間に切欠き孔を形成し、切欠き孔に板ばね部材を挿通し、板ばね部材のばね力で張り出し部材を外方に押し出し、外板に張り出し力を付与させていた。
【特許文献1】特開平10−86844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら寒い朝に、車両の片側面に太陽の光が当たると、光が当たった側の外板表面に比較的大きなへこみが生じることがあった。へこみは、張り出し部材と張り出し部材の間に発生し、時間の経過とともに自然と消滅していたが、ユーザーにとっては気になり、商品性を損なうことがあった。特に濃色系に塗装された車両で多く発生し、解決が求められていた。
【0005】
発明者は研究の結果、車両全体が冷えている状態で、太陽の光が当たった外板のみが先に暖められ、骨格構造などとの間で熱膨張の差が生じ、外板にへこみが発生していたことを付き止めた。
【0006】
本発明は上記課題を解決し、温度変化による一時的な外板のへこみの発生を防止した車両のサイドパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため車両の外板構造を次のように構成した。
【0008】
1、 骨格部材の外方に外板を取り付けた車体構造で、該車体の上下方向に沿って該車体の前後方向に所定の間隔で設けられた複数のピラー部材と前記外板との間に、前記車体の前後方向に沿った張り出し部材を設け、該張り出し部材と前記ピラー部材との間にばね部材を介在させ、該ばね部材のばね力により前記外板を車両外方に張り出す車体構造において、前記ピラー部材に前記張り出し部材の下方向への移動を阻止するストッパ部を設けるとともに、前記張り出し部材と前記外板との接触部を接着剤にて固着してサイドパネル構造を構成した。
【0009】
2、 1に記載のサイドパネル構造において、前記張り出し部材は、突状部の両端を外方に延長させたハット形横断面をなし、該ハット型の前記張り出し部材の外方への延長部分と前記外板とを接着剤にて固着した。
【0010】
3、 2に記載のサイドパネル構造において、前記ストッパ部は、前記ピラー部材の前記ばね部材と当接する面を変形させて形成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるサイドパネル構造は、次の効果を有している。
外板が張り出し部材に固着されているため、外板の剛性が向上し、外板が熱膨張しても、歪みが抑えられ、外板表面にへこみを生じさせない。張り出し部材が、ピラー部材に落下しないよう支持され、かつばね部材により外方に付勢されているので、外板を押し出し平滑に保持できる。
【0012】
ハット型断面の張り出し部材の外方への延長部分を外板と接着剤で固着したので、張り出し部材と外板との接着面積が広くなり、外板の歪みの発生をより効果的に防止できる。
【0013】
ストッパー部は、ピラー部材の一部を変形して形成したので、新たな部品の必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明にかかる車両のサイドパネル構造の一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に、バスの車体構造を示す。
【0015】
図1は、バス10の左側面を斜め上方から見た状態である。バス10の前部にはフロントピラー12が設けられ、後部にはリアピラー14が設けられている。またフロントピラー12とリアピラー14の間には、前方から第2ピラー16、第3ピラー18、第4ピラー20、第5ピラー22が順次設けられている。
【0016】
第2ピラー16と第3ピラー18の間には、乗降口が形成される。また第3ピラー18の中間位置には、上部梁部材24がリアピラー14まで、バス10の前後方向に沿って設けられている。上部梁部材24とサイドルーフレール26の間には窓が形成される。
【0017】
上部梁部材24の下方には、床面の高さに位置する下部梁部材28がリアピラー14まで、バス10の前後方向に沿って設けられている。
【0018】
更に第3ピラー18と第4ピラー20の間には、上部梁部材24からバス10の下端に延びる第1の下部ピラー30が設けてあり、同様に第4ピラー20と第5ピラー22の間には第2の下部ピラー32が、第5ピラー22とリアピラー14の間には第3の下部ピラー34が上下方向に設けられている。
【0019】
上記各ピラーと上部梁部材24及び下部梁部材28とは、各交差部分で溶接により互いに強固に接合され、車体の骨格構造の一部を構成している。更に上部梁部材24と下部梁部材28の間には、張り出し部材40が車両前後方向に2本設けられ、その外方にはサイドパネルとしての外板42が取り付けられる。
【0020】
張り出し部材40は、図2に示すようにいわゆるハット型の横断面をなしている。すなわち、中央の突状部41と、突状部41の両端から外方に延びる延長部分43から形成されている。突状部41の中央には、溝部45が張り出し部材40の長手方向に沿って形成されている。張り出し部材40は、全長にわたり同じ断面形状に形成されている。
【0021】
上記各ピラー、具体的には第1の下部ピラー30、第4ピラー20、第2の下部ピラー32、第5ピラー22、第3の下部ピラー34には、張り出し部材40を支持するストッパ部44が上下に2箇所プレス加工により形成されている。上記各ピラーは、ピラー部材を構成する。ストッパ部44は、図3に示すようにピラー部材の外表面をコの字状に打ち抜き、その内側部分を直角に外方に折り曲げて形成されている。
【0022】
張り出し部材40は、図5に示すように上記各ピラーに形成されたストッパ部44に載っている。図5は、第1の下部ピラー30を断面した図である。すなわち、ストッパ部44に載った張り出し部材40に外板42が接着してあり、更に張り出し部材40と第1の下部ピラー30の間に板ばね部材46が介装されている。
【0023】
張り出し部材40は、乗降口を有する左側面では、乗降口の車両後方側の第3ピラー18の直後から、車両後部に設けられているリアピラー14の直前まで設けられている。張り出し部材40は、第3ピラー18及びリアピラー14には直接連結等されていない。
【0024】
板ばね部材46は、長方形の金属板からなり、図4に示すように中央部分47の両側を同一の方向に折曲げた形状で、中央部分47に2箇所の突部49、折り曲げられた折曲げ部分51の先端に三角形状の突部53、55が形成されている。図6に第1の下部ピラー30の全体を示す。
【0025】
次に、サイドパネルの組み付け工程について説明する。
【0026】
外板42を、内側面を上方にして、図示しない取り付け台等の上に載せ、その上に、例えば熱硬化性接着剤を延長部分43に塗布した張り出し部材40を、設定された位置に配置する。そしてその上にバス10の骨格構造を降ろし、各ピラー部材に形成されたストッパ部44に張り出し部材40を合わせる。
【0027】
次に外板42の周囲をバス10の骨格構造にスポット溶接などで溶接する。外板42は、その外周部分がバス10の骨格部材にスポット溶接で固着されるが、それ以外の部分は、基本的に溶接固定されない。次に、塗装工程で外板42に塗装を行い、乾燥炉で加熱を行う。すると張り出し部材40に塗布された熱硬化性接着剤が硬化し、外板42が張り出し部材40に固着される。
【0028】
次に、板ばね部材46を張り出し部材40と各ピラー部材との交差箇所に挟み込む。板ばね部材46は、図7に分解して示すように、曲げ方向を張り出し部材40側にして介装する。板ばね部材46は、中央部分47に裏面側に突出した突部49が各ピラーの左右両側壁に位置する。また、板ばね部材46の折曲げ部分51の先端に形成された突部53が、張り出し部材40の中央に長手方向に沿って形成された溝部45に嵌合し、突部55が張り出し部材40の突状部41の外板42側へ屈曲した上縁に掛かる。
【0029】
このように、外板42は、板ばね部材46により張り出し部材40を介して、バス10の外方側に突出するように付勢されているので、平滑に保持され、かつ、仮に車両全体が冷えた状態で外板42が太陽の光で暖められたとしても、張り出し部材40のハット型の延長部分43に接着剤で接着され、高い剛性を有しているので、熱膨張による歪みを表面に生じさせない。更に、張り出し部材40の延長部分43は、上下に2箇所形成されているので、接着面積が広くより効果的に外板42の歪みを抑えることができる。ストッパ部44が打ち抜き加工で形成されているため、部品点数を増加させず、コストを低減できる。
【0030】
尚、バス10の右側面の外板も同様の構成で組み付けられている。また、上記例では接着剤を熱硬化性接着剤とし、塗装工程で硬化させることとしたが、本発明はこれに限るものではない。また、ストッパ部44、板ばね部材46もかかる構成に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかるサイドパネル構造を有する車両の一実施形態を示す斜視図。
【図2】張り出し部材を示す断面図。
【図3】ストッパ部を示す斜視図。
【図4】板ばね部材を示す斜視図。
【図5】張り出し部材の組み付け状態を示す断面図。
【図6】ピラーを示す側面断面図。
【図7】張り出し部材の組み付け状態を示す分解斜視図。
【符号の説明】
【0032】
10…バス
30…第1の下部ピラー
40…張り出し部材
42…外板
43…延長部分
44…ストッパ部
46…板ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格部材の外方に外板を取り付けた車体構造で、該車体の上下方向に沿って該車体の前後方向に所定の間隔で設けられた複数のピラー部材と前記外板との間に、前記車体の前後方向に沿った張り出し部材を設け、該張り出し部材と前記ピラー部材との間にばね部材を介在させ、該ばね部材のばね力により前記外板を車両外方に張り出す車体構造において、
前記ピラー部材に前記張り出し部材の下方向への移動を阻止するストッパ部を設けるとともに、前記張り出し部材と前記外板との接触部を接着剤にて固着したことを特徴とするサイドパネル構造。
【請求項2】
前記張り出し部材は、突状部の両端を外方に延長させたハット形横断面をなし、該ハット型の前記張り出し部材の外方への延長部分を前記外板と接着剤にて固着したことを特徴とする請求項1に記載のサイドパネル構造。
【請求項3】
前記ストッパ部は、前記ピラー部材の前記ばね部材と当接する面を変形させて形成したことを特徴とする請求項2に記載のサイドパネル構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate