説明

車体のフロア下部構造

【課題】骨格の増加やメンバの補強をすることなく、車両前方からの荷重をフロアサイドメンバ及びフロアパネルの全体で効率的に吸収可能とした車体の荷重吸収構造を提供する。
【解決手段】車両幅方向に間隔を置いて配置され、フロアパネル1の左右両側に接合されるフロアサイドメンバ2を車両前後方向に延在して設けるとともに、フロアパネル1の中央部にフロアトンネル12を車両前後方向に延在して設けた車体のフロア下部構造において、フロアサイドメンバ2の平面形状は、前端部2aの幅方向中心線Cが真っ直ぐに車両前方へ向き、かつ後端部2bの幅方向中心線Cが真っ直ぐに車両後方へ向いており、車両前後方向の中間部分2cの前半部分2c1が、車両幅方向の内側に凸状に湾曲して形成され、車両前後方向の中間部分2cの後半部分2c2が、車両幅方向の外側に凸状に湾曲して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に小型車両等に適用され、車両前方からの外部荷重を吸収する車体のフロア下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車などの車両では、車体の前端部が車両前方からの外部荷重を受ける場合がある。このため、フロアパネルの下面の左右両側には、車体の前端部から後端部に亘って車両前後方向に延びるフロアサイドメンバが設けられており、これら左右両側のフロアサイドメンバによっても、車両前方からの外部荷重を吸収できるように構成されている。
【0003】
車両前方からの外部荷重を吸収するフロアサイドメンバを備えた車体の下部構造の1例として、特許文献1(特開2010―234939号公報)が提案されている。
図7は、特許文献1において、車両の骨格を構成する部材を概略的に説明するために車体の下方から見た平面図である。
図7に示すように、車体の前端部の左右両側には、車両前後方向に延びるフロントサイドメンバ51が設けられ、これらフロントサイドメンバ51の車両後方には、フロアパネル52の下面の左右両側に接合されるフロアサイドメンバ53が設けられている。これらフロアサイドメンバ53は、車両前後方向に沿って延在し、車両前方からの外部荷重を吸収するために設けられる部材であり、前端部がフロントサイドメンバ51の後端部に接合され、前端部から後端部に亘って直線で車両後方へ向かう下面視で「ハの字」状に拡開するように配置されている。そして、フロアサイドメンバ53の後端部は、車両前後方向に沿って延在するリヤサイドメンバ54の前端部に接合されている。
【0004】
なお、フロアサイドメンバ53の車体外側には、図7に示すように、車両前後方向に沿って延在する左右一対のサイドシル55が設けられ、左右両側のフロントサイドメンバ51には、車両幅方向に延びるフロントクロスメンバ56及びフロントサスペンションクロスメンバ57が連結され、リヤサイドフレーム54には、リヤクロスメンバ58,59が連結されている。また、フロアパネル52にはフロアトンネル52aが設けられている。図7において、W1は前輪、W2は後輪である。
【0005】
一方、車両下方から見て「ハの字」状のフロアサイドメンバを備えた車両の後部車体構造の他の例として、特許文献2(特開2010―82656号公報)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010―234939号公報
【特許文献2】特開2010―82656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、小型自動車などの車両では、車両前方からの外部荷重をフロア全体で吸収する必要があり、フロントフロア構造からリヤフロア構造までのフロア構造全体が荷重分散に参加する必要がある。
しかしながら、上述した特許文献1、2に示す従来の構造においては、車両前方からの外部荷重を吸収するフロアサイドメンバ53が前端部から後端部にかけて直線でかつ下面視で「ハの字」状に拡開して設けられているので、車両前方からの外部荷重により、フロアトンネル52aが開くような変形を起こすことになる。この現象は、図8に示すように、車両前方からの荷重Fが、車体骨格のフロアサイドメンバ53に対して力Pのように直角方向に作用することになるからである。
したがって、従来の構造では、車両前方からの荷重Fが車体骨格のフロアサイドメンバ53に直角方向の力Pとして、フロアトンネル52aの側に作用するのみとなるため、車両前方からの荷重Fを吸収する効果を充分得られない場合がある。
【0008】
また、荷重Fによる変形が進んだり、車両前後長が短いためにレイアウト的に「ハの字」状部の前後方向線に対する傾斜角度α(図8参照)が大きくなると、荷重方向と骨格構造の配置方向に角度差が大きくなり、局所的な荷重が掛かるとともに、フロアサイドメンバ53が倒れる変形も起こり、フロアトンネルを圧縮する変形以外の変形が起こるという問題も生じる。
【0009】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、骨格の増加やメンバの補強をすることなく、車両前方からの外部荷重をフロアサイドメンバ及びフロアパネルの全体で効率的に吸収することが可能な車体のフロア下部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車両幅方向に間隔を置いて配置され、フロアパネルの左右両側に接合されるフロアサイドメンバを車両前後方向に延在して設けるとともに、前記フロアパネルの中央部にフロアトンネルを車両前後方向に延在して設けた車体のフロア下部構造において、前記フロアサイドメンバの平面形状は、前端部の幅方向中心線が真っ直ぐに車両前方へ向き、かつ後端部の幅方向中心線が真っ直ぐに車両後方へ向いており、車両前後方向の中間部分の前半部分が、車両幅方向の内側に凸状に湾曲して形成され、車両前後方向の中間部分の後半部分が、車両幅方向の外側に凸状に湾曲して形成されている。
【0011】
また、本発明において、前記フロアサイドメンバの前端部には、車両前後方向に沿って延びるフロントサイドメンバの後端部が接合され、前記フロントサイドメンバの後端部は、車両幅方向に延在するダッシュクロスメンバ及びダッシュロアエクステンションに接合され、この接合部から車両後方に前記フロアサイドメンバが延在しているとともに、前記接合部には、サスペンションフレームの懸架部が設けられている。
さらに、本発明において、前記フロアサイドメンバの後端部は、前記フロアサイドメンバの車両幅方向の外側で車両前後方向に延在するサイドシルと、前記フロアサイドメンバの車両幅方向の内側で車両幅方向に延在するリヤクロスメンバとに合流して接合されている。
【0012】
そして、本発明において、前記フロアパネルには、車両幅方向に延在するフロアクロスメンバが設けられ、前記フロアサイドメンバの車両前後方向の中間部分のうち、車両幅方向の内側に凸状に湾曲する前半部分と、車両幅方向の外側に凸状に湾曲する後半部分との中央の節には、前記フロアクロスメンバが接合されている。
【0013】
また、本発明において、前記フロアサイドメンバの車両前後方向の中間部分のうち、車両幅方向の内側に凸状に湾曲する前半部分と前記フロアトンネルとの間に位置する前記フロアパネルには、車両幅方向に沿って延在するビードもしくはメンバが設けられている。
【0014】
さらに、本発明において、前記フロアサイドメンバの前後端部には、前記フロントサイドメンバと車両前後方向に沿って延びるリヤサイドメンバとが連続して接合され、前記フロントサイドメンバは、車両前方に延びる直線部と、前記フロアサイドメンバに接合する湾曲部とによって構成され、前記リヤサイドメンバは、前記フロアサイドメンバに接合してリヤサスペンションスプリングシートまで延びる湾曲部を有しており、前記フロントサイドメンバの湾曲部と前記リヤサイドメンバの湾曲部は、前記フロアサイドメンバと同様に湾曲し、接合する前記フロアサイドメンバの前後端部で湾曲形状が連続するように形成されている。
【発明の効果】
【0015】
上述の如く、本発明に係る車体のフロア下部構造は、車両幅方向に間隔を置いて配置され、フロアパネルの左右両側に接合されるフロアサイドメンバを車両前後方向に延在して設けるとともに、前記フロアパネルの中央部にフロアトンネルを車両前後方向に延在して設けたものであって、前記フロアサイドメンバの平面形状は、前端部の幅方向中心線が真っ直ぐに車両前方へ向き、かつ後端部の幅方向中心線が真っ直ぐに車両後方へ向いており、車両前後方向の中間部分の前半部分が、車両幅方向の内側に凸状に湾曲して形成され、車両前後方向の中間部分の後半部分が、車両幅方向の外側に凸状に湾曲して形成されているので、車両前方からの外部荷重がフロアサイドメンバに掛かるときに、フロアサイドメンバは湾曲部分が増大するように変形し、フロアサイドメンバの車両前後方向の中間部分のうち、前半部分はより内側に変形し、後半部分はより外側に変形することになる。
このため、本発明のフロア下部構造によれば、フロアパネル及びフロアトンネルの前半部分には、車体の中心線側への変形が起こることになるので、フロアトンネルを閉じる方向に変形させることができる。通常、車両前方からの外部荷重がフロアトンネルに掛かると、該フロアトンネルは開く方向に変形を起こすので、フロアトンネルの剛性が低下する傾向にあり、フロアトンネルを閉じる方向に変形させることは、フロアトンネルの剛性向上あるいは剛性維持に有利である。
【0016】
したがって、本発明のフロア下部構造では、フロアサイドメンバが車両前方からの外部荷重を受けると、フロアトンネルの前部が圧縮して変形をすることとなり、この変形により更にフロアトンネルの剛性を向上させて、車両前方からの外部荷重を効率良く吸収することができる。従来技術のように、フロアサイドメンバが単純な「ハの字」状に配置されている場合、車両前方からの外部荷重を受けても「ハの字」状の傾斜角によるフロアトンネルの方向の力ベクトルが発生するだけで、荷重吸収効果は期待できない。一方、本発明のフロア下部構造においては、フロアサイドメンバのS字状(もしくは、コサイン形状)の変形による湾曲の増大により、フロアサイドメンバを車体の中心線側へ押圧する効果を期待できる。
しかも、本発明のフロア下部構造では、フロアサイドメンバの前後端部の幅方向中心線が真っ直ぐに車両前後方向へ向いているので、フロアサイドメンバをS字状の湾曲に変形する効率を向上させることができる。
【0017】
また、本発明において、前記フロアサイドメンバの前端部には、車両前後方向に沿って延びるフロントサイドメンバの後端部が接合され、前記フロントサイドメンバの後端部は、車両幅方向に延在するダッシュクロスメンバ及びダッシュロアエクステンションに接合され、この接合部から車両後方に前記フロアサイドメンバが延在しているとともに、前記接合部には、サスペンションフレームの懸架部が設けられているので、フロントサイドメンバから車両後方側に伝わる荷重を、車体骨格の剛性部つまり接合部で受けるとともに、真直ぐにフロアサイドメンバの前端部へ伝えることができる。したがって、本発明のフロア下部構造によれば、フロアサイドメンバの湾曲変形を安定して起こすことができ、上記発明の効果をより一層向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記フロアサイドメンバの後端部は、前記フロアサイドメンバの車両幅方向の外側で車両前後方向に延在するサイドシルと、前記フロアサイドメンバの車両幅方向の内側で車両幅方向に延在するリヤクロスメンバとに合流して接合されているので、湾曲形状の終端を3つの部材の集合により確実に固定し、湾曲部の変形を安定させることができる。特に、フロアサイドメンバの後端部の湾曲部が外側に開かないように固定でき、フロアサイドメンバの全体が倒れるのを防ぐことができる。
【0019】
そして、本発明において、前記フロアパネルには、車両幅方向に延在するフロアクロスメンバが設けられ、前記フロアサイドメンバの車両前後方向の中間部分のうち、車両幅方向の内側に凸状に湾曲する前半部分と、車両幅方向の外側に凸状に湾曲する後半部分との中央の節には、前記フロアクロスメンバが接合されているので、節部を中心にして、特にフロアサイドメンバの前半部分における湾曲の変形を促進することができ、フロアサイドメンバの湾曲変形を向上させることができる。
【0020】
また、本発明において、前記フロアサイドメンバの車両前後方向の中間部分のうち、車両幅方向の内側に凸状に湾曲する前半部分と前記フロアトンネルとの間に位置する前記フロアパネルには、車両幅方向に沿って延在するビードもしくはメンバが設けられているので、フロアサイドメンバの前半部分の車両幅方向内側への湾曲変形を効率良くフロアトンネルに伝達することができる。
【0021】
さらに、本発明において、前記フロアサイドメンバの前後端部には、前記フロントサイドメンバと車両前後方向に沿って延びるリヤサイドメンバとが連続して接合され、前記フロントサイドメンバは、車両前方に延びる直線部と、前記フロアサイドメンバに接合する湾曲部とによって構成され、前記リヤサイドメンバは、前記フロアサイドメンバに接合してリヤサスペンションスプリングシートまで延びる湾曲部を有しており、前記フロントサイドメンバの湾曲部と前記リヤサイドメンバの湾曲部は、前記フロアサイドメンバと同様に湾曲し、接合する前記フロアサイドメンバの前後端部で湾曲形状が連続するように形成されているので、車両前方からの外部荷重に対して、フロアサイドメンバの前後のフロントサイドメンバとリヤサイドメンバとが湾曲変形して荷重吸収できるとともに、この前後の湾曲変形がフロアサイドメンバの湾曲変形を促進することができる。したがって、本発明のフロア下部構造によれば、フロアサイドメンバの湾曲変形を安定して起こすことができ、上記発明の効果をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る車体のフロア下部構造が適用されたフロアパネル及びフロアサイドメンバを車両下方から見た平面図である。
【図2】図1のA部拡大平面図である。
【図3】図1のB部拡大平面図である。
【図4】図2のA部におけるサスペンションフレーム締結部近傍を拡大して示す平面図である。
【図5】本実施形態のフロアパネルの後部を車両前方から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施形態のフロア下部構造において、車両前方からの外部荷重によるフロアサイドメンバの湾曲度合いを示す線図である。
【図7】従来技術のフロア下部構造が適用されたフロアパネル及びフロアサイドメンバを車両下方から見た平面図である。
【図8】従来技術のフロア下部構造において、車両前方からの外部荷重によるフロアサイドメンバの湾曲度合いを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は本発明の実施形態に係る車体のフロア下部構造を示すものである。
【0024】
本発明の実施形態に係る車体のフロア下部構造は、車両前方からの外部荷重をフロア全体で吸収する必要がある小型自動車などの車両に適用されるものであり、図1〜図5に示すように、車体下部の骨格は、主として、フロアパネル1、フロアサイドメンバ2、フロントサイドメンバ3、サイドシル4、リヤサイドメンバ5等によって構成されている。
このフロアパネル1の前端部には、車両幅方向に沿って延在する縦壁であって、エンジンルームと車室内とを隔離するためのダッシュパネル11が設けられている。また、フロアパネル1の上面の車両幅方向中央部には、車両前後方向に沿って延在するフロアトンネル12が車体中心線O(図1参照)に沿って設けられており、該フロアトンネル12は、車室内側に突出する断面ハット型形状に形成されている。なお、図1において、矢印X方向は車両前方を示している。
【0025】
本実施形態の特徴部分であるフロアサイドメンバ2は、図1〜図3に示すように、車両幅方向に間隔を置いて配置され、フロアパネル1の下面の左右両側に接合される骨格部材であり、車両前後方向に沿って延在して設けられている。
これらフロアサイドメンバ2の平面形状は、前端部2aの幅方向中心線Cが真っ直ぐに車両前方へ向き、かつ後端部2bの幅方向中心線Cが真っ直ぐに車両後方へ向いており、車両前後方向の中間部分2cの前半部分2c1が、車両幅方向の内側(幅方向中心線C側)に凸状に湾曲して形成され、車両前後方向の中間部分2cの後半部分2c2が、車両幅方向の外側(幅方向中心線Cと反対側)に凸状に湾曲して形成されている。すなわち、フロアサイドメンバ2の全体形状は、後半部分2c2の幅W2が前半部分2c1の幅W2よりも大きく設定された緩やかな連続曲線(S字状もしくはコサイン形状)に形成されている(図1参照)。
【0026】
また、左右両側のフロアサイドメンバ2の前端部2aには、図1、図2及び図4に示すように、フロントサイドメンバ3の後端部がそれぞれ接合されている。これらフロントサイドメンバ3は、車体の前端部において車両幅方向の左右両側に間隔を置いて配置され、車両前後方向に沿って延在して設けられている。フロントサイドメンバ3の後端部は、車両幅方向に延在するダッシュクロスメンバ6及びダッシュロアエクステンション7に接合されており、この接合部D1には、サスペンションフレーム8の懸架部31,32が設けられている。したがって、接合部D1は、車体骨格の剛性部として構成されることになり、フロアサイドメンバ2は、当該接合部D1から車両後方に向かって延在している。
【0027】
さらに、左右両側のフロアサイドメンバ2の車両前後方向の中間部分2cのうち、車両幅方向の内側に凸状に湾曲する前半部分2c1とフロアトンネル12との間に位置するフロアパネル1には、図1、図2及び図4に示すように、車両幅方向に沿って延在するビード(もしくはメンバ)13が設けられている。このため、ビード13の左右両端部は、フロアサイドメンバ2の前半部分2c1とフロアトンネル12とに連結されており、フロアサイドメンバ2の前半部分2c1の変形がビード13を介してフロアトンネル12に伝わりやすくなるように構成されている。
【0028】
また、本実施形態のフロアパネル1には、図1に示すように、車両幅方向に延在するフロアクロスメンバ14が設けられている。そして、フロアサイドメンバ2の車両前後方向の中間部分2cのうち、車両幅方向の内側に凸状に湾曲する前半部分2c1と、車両幅方向の外側に凸状に湾曲する後半部分2c2との中央の節部には、フロアクロスメンバ14が接合されており、当該節部を中心にして、フロアサイドメンバ2(特に前半部分2c1)の湾曲の変形が促進されるように構成されている。
【0029】
一方、本実施形態のフロアサイドメンバ2の後端部2bは、図1、図3及び図5に示すように、サイドシル4の後端部4aとリヤクロスメンバ9の外側端部9aとに合流して接合されており、3部品の接合部D2として構成されている。サイドシル4は、フロアサイドメンバ2の車両幅方向の外側に配置され、車両前後方向に延在して設けられている。また、リヤクロスメンバ9は、フロアサイドメンバ2の車両幅方向の内側に配置され、車両幅方向に延在して設けられており、フロアパネル1の上面に突出して形成した縦壁面1aに接合されている。しかも、接合部D2を構成する部品は、フロアパネル1にも接合されている。
このような3部品の接合部D2によって、フロアサイドメンバ2の車両前後方向の中間部分2cのうちで、後半部分2c2における湾曲形状の終端がしっかりと固定され、湾曲変形が安定化することになり、特に、フロアサイドメンバ2の後端部2bが車両幅方向の外側に開かないようにして固定されることになる。なお、接合部D2における各々の部品接合は、3部品に限られず、2部品間の接合でも良い。
【0030】
また、本実施形態のフロアサイドメンバ2の前後端部2a,2bには、図1及び図3に示すように、フロントサイドメンバ3とリヤサイドメンバ5とが連続して接合されている。このため、フロントサイドメンバ3は、車両前方に延びる前端部側の直線部3aと、該直線部3aの後部から車両後方に延び、フロアサイドメンバ2の前端部2aに接合する後端部側の湾曲部3bとによって構成されている。そして、リヤサイドメンバ5は、車体の後端部において車両幅方向の左右両側に間隔を置いて配置され、車両前後方向に沿って延在して設けられている。しかも、リヤサイドメンバ5は、フロアサイドメンバ2の後端部2bに接合する前端部分からリヤサスペンションスプリングシート33まで延びる湾曲部5aを有しており、該湾曲部5aの車両後方は、直線部5bとなっている。
【0031】
これらフロントサイドメンバ3の湾曲部3bとリヤサイドメンバ5の湾曲部5aは、フロアサイドメンバ2の前半部分2c1及び後半部分2c2の湾曲形状と同様の位相でそれぞれ湾曲しており、接合するフロアサイドメンバ2の前後端部2a,2bで湾曲形状が連続するように形成されている。
このようなフロントサイドメンバ3及びリヤサイドメンバ5が湾曲変形すると、車両前方からの外部荷重が吸収されるのみならず、フロアサイドメンバ2の前後に位置する湾曲部3b,5aの湾曲変形によってフロアサイドメンバ2の前半部分2c1及び後半部分2c2の湾曲変形が促進されるようになっている。
【0032】
以上のように構成されたフロアサイドメンバ2を備えた本実施形態の車体のフロア下部構造における作用について説明する。
図1に示すように、車両前方からの外部荷重Fが車体の前端部に掛かる場合、荷重Fは、フロントサイドメンバ3を経由してフロアサイドメンバ2の幅方向中心線C上に作用することになる。フロアサイドメンバ2では、図6に示すように、車両前方からの外部荷重Fに対して力Pが作用することになり、この力Pにより中間部分2cの前半部分2c1はより内側に湾曲変形し、中間部分2cの後半部分2c2はより外側に湾曲変形する。これに伴って、フロアパネル1及びフロアトンネル12の前端部寄りの部分には車体中心線Oの方向への変形が起こり、フロアトンネル12は閉じる方向に変形する。すなわち、力Pを受けたフロアサイドメンバ2が、フロアトンネル12の前端部寄りの部分を圧縮変形することとなり、この変形により更にフロアトンネル21の剛性を向上して、車両前方からの外部荷重Fを効率的に吸収することが可能となる。
【0033】
このように本発明の実施形態に係る車体のフロア下部構造においては、フロアサイドメンバ2の前後端部2a,2bの幅方向中心線Cが真っ直ぐに車両前後方向へ向き、車両前後方向の中間部分2cの前半部分2c1が車両幅方向の内側に向かって凸状に湾曲し、後半部分2c2が車両幅方向の外側に向かって凸状に湾曲しており、湾曲する凸形状の方向が互いに反対であるため、車両前方からの外部荷重Fがフロアサイドメンバ2に掛かるときに、前半部分2c1はより内側に変形し、後半部分2c2はより外側に変形することになり、フロアサイドメンバ2の湾曲部分を大きく変形させることができる。したがって、本実施形態のフロア下部構造によれば、車両前方からの外部荷重Fが掛かる場合、フロアパネル1及びフロアトンネル12の前半部分を車体中心線O側へ向けて変形させることが可能になるため、フロアトンネル12を閉じる方向に変形させることができる。しかも、フロアサイドメンバ2の前後端部2a,2bの幅方向中心線Cが真っ直ぐに車両前後方向へ向いていることから、車両前方からの外部荷重Fを受けたフロアサイドメンバ2の湾曲変形を効率的にかつ安定して起こすことができる。
【0034】
また、本発明の実施形態のフロア下部構造においては、フロアサイドメンバ2の前端部2aにフロントサイドメンバ3の後端湾曲部3bを接合し、フロントサイドメンバ3の後端湾曲部3bをダッシュクロスメンバ6及びダッシュロアエクステンション7に接合し、この接合部D1から車両後方にフロアサイドメンバ2を延在し、接合部D1にサスペンションフレーム12の懸架部31,32を設けているため、フロントサイドメンバ3から車両後方側に伝わる荷重Fを車体骨格の剛性部の接合部D1で受けることが可能となり、真直ぐにフロアサイドメンバ2の前端部2aへ伝えることができ、フロアサイドメンバ2の湾曲変形をより一層安定して起こすことができる。
さらに、本発明の実施形態のフロア下部構造において、フロアサイドメンバ2の後端部2bをサイドシル4とリヤクロスメンバ9とに合流させて接合した接合部D2に形成しているため、フロアサイドメンバ2の後半部分2c2に位置する湾曲形状の終端を3つの部材の集合により確実に固定でき、かつフロアサイドメンバ2の後端部2bの湾曲部を外側に開かないように保持でき、フロアサイドメンバ2の全体が倒れるのを防止できる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 フロアパネル
2 フロアサイドメンバ
2a 前端部
2b 後端部
2c 中間部分
2c1 前半部分
2c2 後半部分
3 フロントサイドメンバ
3a 直線部
3b 湾曲部
4 サイドシル
5 リヤサイドメンバ
5a 湾曲部
6 ダッシュクロスメンバ
7 ダッシュロアエクステンション
8 サスペンションフレーム
9 リヤクロスメンバ
12 フロアトンネル
13 ビード
14 フロアクロスメンバ
31,32 サスペンションフレームの懸架部
33 リヤサスペンションスプリングシート
C 幅方向中心線
D1,D2 接合部
F 車両前方からの外部荷重
P フロアサイドメンバに掛かる力
O 車体中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に間隔を置いて配置され、フロアパネルの左右両側に接合されるフロアサイドメンバを車両前後方向に延在して設けるとともに、前記フロアパネルの中央部にフロアトンネルを車両前後方向に延在して設けた車体のフロア下部構造において、
前記フロアサイドメンバの平面形状は、前端部の幅方向中心線が真っ直ぐに車両前方へ向き、かつ後端部の幅方向中心線が真っ直ぐに車両後方へ向いており、車両前後方向の中間部分の前半部分が、車両幅方向の内側に凸状に湾曲して形成され、車両前後方向の中間部分の後半部分が、車両幅方向の外側に凸状に湾曲して形成されていることを特徴とする車体のフロア下部構造。
【請求項2】
前記フロアサイドメンバの前端部には、車両前後方向に沿って延びるフロントサイドメンバの後端部が接合され、前記フロントサイドメンバの後端部は、車両幅方向に延在するダッシュクロスメンバ及びダッシュロアエクステンションに接合され、この接合部から車両後方に前記フロアサイドメンバが延在しているとともに、前記接合部には、サスペンションフレームの懸架部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体のフロア下部構造。
【請求項3】
前記フロアサイドメンバの後端部は、前記フロアサイドメンバの車両幅方向の外側で車両前後方向に延在するサイドシルと、前記フロアサイドメンバの車両幅方向の内側で車両幅方向に延在するリヤクロスメンバとに合流して接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体のフロア下部構造。
【請求項4】
前記フロアパネルには、車両幅方向に延在するフロアクロスメンバが設けられ、前記フロアサイドメンバの車両前後方向の中間部分のうち、車両幅方向の内側に凸状に湾曲する前半部分と、車両幅方向の外側に凸状に湾曲する後半部分との中央の節には、前記フロアクロスメンバが接合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の車体のフロア下部構造。
【請求項5】
前記フロアサイドメンバの車両前後方向の中間部分のうち、車両幅方向の内側に凸状に湾曲する前半部分と前記フロアトンネルとの間に位置する前記フロアパネルには、車両幅方向に沿って延在するビードもしくはメンバが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車体のフロア下部構造。
【請求項6】
前記フロアサイドメンバの前後端部には、前記フロントサイドメンバと車両前後方向に沿って延びるリヤサイドメンバとが連続して接合され、前記フロントサイドメンバは、車両前方に延びる直線部と、前記フロアサイドメンバに接合する湾曲部とによって構成され、前記リヤサイドメンバは、前記フロアサイドメンバに接合してリヤサスペンションスプリングシートまで延びる湾曲部を有しており、
前記フロントサイドメンバの湾曲部と前記リヤサイドメンバの湾曲部は、前記フロアサイドメンバと同様に湾曲し、接合する前記フロアサイドメンバの前後端部で湾曲形状が連続するように形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の車体のフロア下部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107582(P2013−107582A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256198(P2011−256198)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】