説明

車体のルーフ構造

【課題】本発明は、車体のルーフ部分の強度を確保するとともに、見栄え向上のためのコストを低減させることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車体のルーフ構造では、ルーフパネル部40は、アウタパネル43とインナパネル45から構成されており、アウタパネル43は、ルーフパネル部40の意匠面を構成するパネルであって、その周縁43eが一定幅で裏側に折り返されており、インナパネル45は、アウタパネル43の裏側周縁に重ねられるように枠状に形成されて、そのインナパネル45の周縁部分がアウタパネル43の折り返し部位43eに挟まれて、そのアウタパネル43に接合される構成であり、ルーフパネル部40のインナパネル45がルーフサイド部20の棚状部分Tに接合されて、ルーフパネル部40における意匠面の左右の端縁がルーフサイド部20の棚状部分Tを覆う構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の左右両側で前後方向に延びるルーフサイド部を備えており、左右のルーフサイド部に設けられた棚状部分によってルーフパネル部の左右の端縁が支持される構成の車体のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した車体のルーフ構造に関連する技術が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載された車体のルーフ構造では、図3に示すように、ルーフサイド部100がルーフサイドアウタ102、ルーフサイドインナ104、及びルーフサイドリインフォース105等から構成されている。ルーフサイドアウタ102、ルーフサイドインナ104、ルーフサイドリインフォース105には、それぞれの上端縁、下端縁にフランジ部100f,100dが形成されている。そして、ルーフサイドアウタ102、ルーフサイドインナ104、ルーフサイドリインフォース105がフランジ部100f,100dの位置で相互に接合されることで、ルーフサイド部100は中空閉断面状に形成される。
ルーフサイド部100の上端縁側のフランジ部100fはほぼ水平な棚状に形成されており、このフランジ部100fによってルーフパネル108が支持されている。
ルーフパネル108は一枚の板から構成されており、そのルーフパネル108の左右両側にフランジ部108fが設けられている。そして、ルーフパネル108の左右のフランジ部108が左右のルーフサイド部100のフランジ部100fに重ねられ、接合されることにより、ルーフパネル108が左右のルーフサイド部100に固定される。
【0003】
【特許文献1】特開平2008−062713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した車体のルーフ構造では、ルーフパネル108は一枚の板から形成されているため、ルーフ部の強度が低い。
さらに、ルーフパネル108のフランジ部108fとルーフサイド部100のフランジ部100fとの接合部位は外から見える位置である。このため、前記接合部分の見栄えを向上させるためには、この部分をモール等の装飾部材で覆う必要があり、コスト高となる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車体のルーフ部分の強度を確保するとともに、見栄え向上のためのコストを低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車体の左右両側で前後方向に延びるルーフサイド部を備えており、左右のルーフサイド部に設けられた棚状部分によってルーフパネル部の左右の端縁が支持される構成の車体のルーフ構造であって、前記ルーフパネル部は、アウタパネルとインナパネルから構成されており、前記アウタパネルは、前記ルーフパネル部の意匠面を構成するパネルであって、その周縁が一定幅で裏側に折り返されており、前記インナパネルは、前記アウタパネルの裏側周縁に重ねられるように枠状に形成されて、そのインナパネルの周縁部分が前記アウタパネルの折り返し部位に挟まれて、そのアウタパネルに接合される構成であり、前記ルーフパネル部のインナパネルが前記ルーフサイド部の棚状部分に接合されて、前記ルーフパネル部における意匠面の左右の端縁が前記ルーフサイド部の棚状部分を覆う構成であることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、ルーフパネル部の意匠面を構成するアウタパネルの周縁が一定幅で裏側に折り返されており、そのアウタパネルの折り返し部位に枠状のインナパネルの周縁部分が挟まれて接合されている。即ち、ルーフパネル部の周縁部分は、アウタパネルとインナパネルをヘミング加工により接合することにより構成されている。このため、前記ルーフパネル部を一枚のパネルから構成する場合と比較してルーフパネル部の周縁部分の強度が向上する。したがって、左右のルーフサイド部に対してルーフパネル部を接合した状態における車体のルーフ部分の強度が向上する。
また、ルーフパネル部のインナパネルがルーフサイド部の棚状部分に接合されて、そのルーフパネル部の意匠面の周縁が前記ルーフサイド部の棚状部分を覆うように構成されている。このため、ルーフパネルとルーフサイド部との接合部分が外部から見えなくなり、従来のように、ルーフパネル部とルーフサイド部との接合部分を覆うモール等の装飾材が不要になる。このため、見栄え向上のためのコストを低減させることができる。
【0008】
請求項2の発明によると、ルーフサイド部の棚状部分とアウタパネルの折り返し部位との間には、弾性変形可能なシール材が前記折り返し部位に沿って設けられていることを特徴とする。
このため、ルーフサイド部とルーフパネル部との間のシール性が向上する。
請求項3の発明によると、ルーフパネル部における意匠面の左右の端縁とルーフサイド部の意匠面との間にはスリット状の隙間が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、車体のルーフ部分の強度を向上できるとともに、見栄え向上のためのコストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施形態1]
以下、図1、図2に基づいて本発明の実施形態1に係る車体のルーフ構造について説明する。ここで、図1は本実施形態に係る車体のルーフ構造を表す分解斜視図等であり、図2はルーフサイド部とルーフパネル部との接合部分の構成を表す縦断面図である。
なお、図中の前後左右及び上下は車体の前後左右及び上下に対応している。
【0011】
<車体10のルーフ構造の概要について>
車体10の屋根部分には、図1に示すように、車幅方向両側(左右端)の位置で前後方向に延びるルーフサイド部20が設けられている。ルーフサイド部20は、前端部がフロントピラー31により支持されており、中央部がセンタピラー33、後端部がリヤピラー35により支持されている。また、左右のルーフサイド部20の前端部間には前梁部36が渡されており、前記ルーフサイド部20の後端部間には後梁部37が渡されている。そして、左右のルーフサイド部20の棚状部分T(後記する)と、前梁部36、後梁部37とによって角形のルーフパネル部40が支持されている。
【0012】
<ルーフサイド部20について>
左右のルーフサイド部20は等しい構成で左右対称に形成されている。このため、代表して右側のルーフサイド部20について説明する。
ルーフサイド部20は、図2に示すように、ルーフサイドインナ22とルーフサイドリインフォース24、及びルーフサイドアウタ25を備えている。
ルーフサイドインナ22は、ルーフサイド部20の室内側(内側)を構成する帯板状のパネルである。ルーフサイドインナ22は、断面略逆台形状に成形されたパネル中央部22cと、そのパネル中央部22cの上端側に設けられた上側フランジ部22uと、前記パネル中央部22cの下端側に設けられた下側フランジ部22dとから構成されている。前記上側フランジ部22uはパネル中央部22cに対してほぼ直角に曲げられて水平に保持されており、下側フランジ部22dは斜め下方(右下方)に突出するように構成されている。
ルーフサイドリインフォース24は、ルーフサイド部20を補強する帯板状のパネルである。ルーフサイドリインフォース24は、台形状に成形されたパネル中央部24cと、そのパネル中央部24cの上端部から水平方向に延びる上側フランジ部24uと、前記パネル中央部24cの下端部から斜め下方に突出する下側フランジ部24dとから構成されている。
【0013】
ルーフサイドアウタ25は、ルーフサイド部20の表側を構成する帯板状のパネルである。ルーフサイドアウタ25は、中央の意匠部25cと、その意匠部25cの上端から下方に曲げられた縦壁部25kと、その縦壁部の下端から水平方向に曲げられた上側フランジ部25uとを備えている。さらに、ルーフサイドアウタ25は、中央の意匠部25cの下側で乗降口の開口縁を構成する下面部25hと、その下面部25hの下端に設けられ、斜め下方に突出する下側フランジ部25dとを備えている。
そして、ルーフサイドインナ22、ルーフサイドリインフォース24、ルーフサイドアウタ25とが、各々の上側フランジ部22u,24u,25uの位置で接合され、さらに下側フランジ部22d,24d,25dの位置で接合されることにより、中空閉断面状のルーフサイド部20が構成される。そして、各々の上側フランジ部22u,24u,25uの接合部分がルーフサイド部20の棚状部分Tとして働くようになる。
また、ルーフサイド部20の下側フランジ部22d,24d,25dには、ドアDと乗降口の開口縁間をシールするウエザストリップWが嵌め込まれている。
【0014】
<ルーフパネル部40について>
ルーフパネル部40は、図1(A)(B)に示すように、意匠面を構成する角形平板状のアウタパネル43と、そのアウタパネル43の裏面側(下面側)に合わせられる角枠状のインナパネル45と、前記インナパネル45間に渡されて前記アウタパネル43を裏側から支える複数本の横梁部47とから構成されている。ここで、図1(B)は、図1(A)のB−B矢視拡大断面図を表している。
インナパネル45は、左右の縦辺部45yと前後の横辺部45xとにより角枠状に形成されており、前後の横辺部45xが左右の縦辺部45yよりも幅広に構成されている。インナパネル45の縦辺部45y、横辺部45xは、図1(B)に示すように、断面略扁平U字形に成形されたパネル中央部45mと、そのパネル中央部45mの外周側に設けられた一定幅の外フランジ部45fと、前記パネル中央部45mの内周側に設けられた一定幅の内フランジ部45hとから構成されている。そして、インナパネル45の外フランジ部45fと内フランジ部45hとがアウタパネル43の裏面周縁に合わせられるようになっている。
【0015】
アウタパネル43は、図1(B)に示すように、周縁43eが一定幅で裏側に折り返されており、その折り返し部位43eに前記インナパネル45の外フランジ部45fが挟まれるように構成されている。即ち、ルーフパネル部40の周縁部分は、アウタパネル43とインナパネル45とをヘミング加工により接合させることにより構成されている。また、インナパネル45の内フランジ部45hは、接着剤等によりアウタパネル43の裏面に接合される。
ルーフパネル部40の裏側には、図1(A)に示すように、インナパネル45の横辺部45xの位置に複数本(図1(A)では6本)の位置決めピン49が下方に突出するように形成されている。位置決めピン49は、ルーフサイド部20、前梁部36及び後梁部37に対するルーフパネル部40の位置決めを行うためのピンであり、前梁部36と後梁部37の位置決め穴36h,37hに嵌合可能なように構成されている。
【0016】
<ルーフパネル部40の取付けについて>
ルーフパネル部40を左右のルーフサイド部20、前梁部36、後梁部37上に固定する場合には、先ず、図2に示すように、ゴム製のシール材50をルーフサイド部20の棚状部分T、前梁部36、後梁部37上に固定する。シール材50は、ルーフパネル部40とルーフサイド部20、前梁部36、後梁部37との間をシールする部材であり、そのルーフパネル部40よりも一回り大きな角枠状に形成されている。シール材50は、縦断面が略角筒状に形成されており、図2に示すように、そのシール材50の外周面51と下端面52とがルーフサイド部20の縦壁部25kと棚状部分Tとの角部に面接触するように構成されている。
そして、前記シール材50が固定された後、ルーフパネル部40の位置決めピン49が前梁部36、後梁部37の位置決め穴36h,37hに通され、そのルーフパネル部40のインナパネル45が全周に亘ってルーフサイド部20の棚状部分Tに接着剤Uにより接合される。また、この状態で、ルーフパネル部40の折り返し部位43eがシール材50の上面54に面接触するようになる。
これにより、ルーフサイド部20の棚状部分Tがルーフパネル部40の周縁部分に覆われて接着剤Uの部分が外から見えなくなる。また、ルーフサイド部20の意匠部25cとルーフパネル部40の表面(意匠面)との間にはスリット状の隙間Srが形成される。
【0017】
<本実施形態に係る車体10のルーフ構造の長所について>
本実施形態に係る車体10のルーフ構造によると、ルーフパネル部40の意匠面を構成するアウタパネル43の周縁43eが一定幅で裏側に折り返されており、そのアウタパネル43の折り返し部位43eに枠状のインナパネル45の外フランジ部45f(周縁部分)が挟まれて接合されている。即ち、ルーフパネル部40の周縁部分は、アウタパネル43とインナパネル45をヘミング加工により接合することにより構成されている。このため、ルーフパネル部40を一枚のパネルから構成する場合と比較してルーフパネル部40の周縁部分の強度を向上させることができる。したがって、左右のルーフサイド部20に対してルーフパネル部40を接合した状態における車体10のルーフ部分の強度が向上する。また、ルーフパネル部40の周縁部分の防錆性能も向上する。
さらに、ルーフパネル部40のインナパネル45がルーフサイド部20の棚状部分Tに接合されて、そのルーフパネル部40の意匠面の周縁がルーフサイド部20の棚状部分Tを覆うように構成されている。このため、ルーフパネル部40とルーフサイド部20との接合部分(接着剤Uの部分)が外部から見えなくなり、従来のように、ルーフパネル部40とルーフサイド部20との接合部分を覆うモール等の装飾材が不要になる。このため、見栄え向上のためのコストを低減させることができる。
また、ルーフサイド部20の棚状部分Tとアウタパネル43の折り返し部位43eとの間には、弾性変形可能なシール材50が折り返し部位43eに沿って設けられているため、ルーフサイド部20とルーフパネル部40との間のシール性が向上する。
【0018】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ルーフサイド部20の棚状部分Tとルーフパネル部40のインナパネル45とを接着剤Uにより接合する例を示したが、接着剤Uの代わりに溶接やリベット等により接合することも可能である。
また、本実施形態では、シール材50を断面角筒状に形成する例を示したが、ルーフサイド部20の縦壁部25kの高さ寸法が小さい場合には、シール材50を板枠状に形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の本実施形態1に係る車体のルーフ構造を表す分解斜視図(A図)及びA図のB‐B矢視断面図(B図)である。
【図2】車体のルーフサイド部とルーフパネル部との接合部分の構造を表す縦断面図である。
【図3】従来の車体のルーフ構造を表す縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10・・・車体
20・・・ルーフサイド部
T・・・・棚状部分
40・・・ルーフパネル部
43・・・アウタパネル
43e・・折り返し部位
45・・・インナパネル
45f・・外フランジ部(周縁部分)
50・・・シール材
Sr・・・隙間
U・・・・接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右両側で前後方向に延びるルーフサイド部を備えており、左右のルーフサイド部に設けられた棚状部分によってルーフパネル部の左右の端縁が支持される構成の車体のルーフ構造であって、
前記ルーフパネル部は、アウタパネルとインナパネルから構成されており、
前記アウタパネルは、前記ルーフパネル部の意匠面を構成するパネルであって、その周縁が一定幅で裏側に折り返されており、
前記インナパネルは、前記アウタパネルの裏側周縁に重ねられるように枠状に形成されて、そのインナパネルの周縁部分が前記アウタパネルの折り返し部位に挟まれて、そのアウタパネルに接合される構成であり、
前記ルーフパネル部のインナパネルが前記ルーフサイド部の棚状部分に接合されて、前記ルーフパネル部における意匠面の左右の端縁が前記ルーフサイド部の棚状部分を覆う構成であることを特徴とする車体のルーフ構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車体のルーフ構造であって、
前記ルーフサイド部の棚状部分と前記アウタパネルの折り返し部位との間には、弾性変形可能なシール材が前記折り返し部位に沿って設けられていることを特徴とする車体のルーフ構造。
【請求項3】
請求項2に記載された車体のルーフ構造であって、
前記ルーフパネル部における意匠面の左右の端縁と前記ルーフサイド部の意匠面との間にはスリット状の隙間が形成されていることを特徴とする車体のルーフ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−111346(P2010−111346A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287539(P2008−287539)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】