説明

車体の上部構造

【課題】 車両の側突荷重をセンターピラーから補強部材に対して確実に伝達することができる車両の上部構造を提供する。
【解決手段】 車体には、車幅方向にわたって延在し、車体に取り付けられるルーフを補強するルーフリインホース1が設けられている。また、車体に設けられたセンターピラー2と補強部材1がルーフガセット4によって連結されている。ルーフリインホース1とルーフガセット4とは、車幅方向に離間した複数箇所で複数のボルトB1,B2によって接合されている。また、ルーフリインホース1とルーフガセット4とのそれぞれにおける第1ボルトB1と第2ボルトB2との間に、車体に対して側突荷重が入力された場合に、ルーフリインホース1とルーフガセット4との間で荷重を伝達する上側ビード部11および下側ビード部41が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の上部構造に係り、特に、車両の側突時に、側突荷重をセンターピラーからルーフリインホースに好適に伝達することができる車体の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における車体側部には、一般に、車体の高さ方向に延在するセンターピラーが設けられている。また、車体の天井部には、ルーフが設けられるとともに、ルーフを補強するルーフリインホースが設けられている。このルーフリインホースは、ガセットを介してセンターピラーに連結されている。
【0003】
この車両に側突が生じると、センターピラーに衝突荷重が入力され、センターピラーが変形するとともに、センターピラーに連結されたルーフリインホースやロッカなどの骨格部材に荷重を伝達して衝突荷重を吸収する。また、このうち、ルーフリインホースに対しては、ガセットを介して荷重が伝達される。
【0004】
このような車体の上部構造として、従来、センターピラーとルーフサイドレインフォースおよびルーフサイドレインフォースとルーフボウをそれぞれボルトナットによって連結する自動車のルーフボウ取付構造が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この自動車のルーフボウ取付構造においては、ルーフサイドレインフォースとルーフボウとの間において、ボルトナットを介した荷重伝達を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−167114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された自動車のルーフボウ取付構造においては、センターピラーからルーフボウに対する荷重の伝達について、ルーフリインホースを介したボルトナットの結合に頼ったものとなっている。このため、たとえばルーフボウ(補強部材)がそのセンターピラーとの取付部位の近傍において、車両前後方向に沿って屈曲してしまった場合などに、荷重の伝達を確実に行うことができなくなる可能性があるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、車両の側突荷重をセンターピラーから補強部材に対して確実に伝達することができる車両の上部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明に係る車体の上部構造は、車体における車幅方向にわたって延在し、車体に取り付けられるルーフを補強する補強部材と、車体に設けられたセンターピラーの上部と補強部材とを連結する連結部材と、補強部材および連結部材を車幅方向に離間した複数箇所で、補強部材と連結部材とを接合する複数の接合部が形成されており、補強部材と連結部材とのそれぞれにおける複数の接合部の間に、車体に対して側突荷重が入力された場合に、補強部材と連結部材との間で荷重を伝達する補強部材荷重伝達部および連結部材荷重伝達部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る車体の上部構造においては、補強部材と連結部材とのそれぞれにおける複数の接合部の間に、車体に対して側突荷重が入力された場合に、補強部材と連結部材との間で荷重を伝達する補強部材荷重伝達部および連結部材荷重伝達部が形成されている。このため、車両の側突荷重をセンターピラーから補強部材に対して確実に伝達することができる。
【0010】
また、補強部材荷重伝達部および連結部材荷重伝達部は、それぞれ車体の車幅方向のインナ側とアウタ側とのそれぞれに荷重伝達部が形成されているようにすることができる。
【0011】
このように、補強部材荷重伝達部および連結部材荷重伝達部が、それぞれ車体の車幅方向のインナ側とアウタ側とのそれぞれに荷重伝達部が形成されているため、より確実に車両の側突荷重をセンターピラーから補強部材に対して伝達することができる。
【0012】
さらに、補強部材荷重伝達部が、補強部材に対して、補強部材の延在方向に対して交差する方向に沿って形成された補強部材ビードであり、連結部材荷重伝達部が、連結部材に対して、補強部材に形成された補強部材ビードに重畳する形で形成された連結部材ビードであるようにすることができる。
【0013】
このように、荷重伝達部がビードとすることにより、荷重伝達部を容易に形成することができる。
【0014】
また、補強部材ビードおよび連結部材ビードが、それぞれ下側に凸となる下ビードであるようにすることができる。
【0015】
このように、ビードが下ビードであることにより、車両の天井方向にビードを突出させないようにすることができ、ビードの車体の内側に好適に収めることができる。
【0016】
さらに、複数の接合部では、補強部材と連結部材とがボルト接合されているようにすることができる。
【0017】
このように、補強部材と連結部材とがボルト接合されていることにより、センターピラーから伝達される荷重を、ボルトを介して補強部材に伝達することができる。したがって、さらに確実に車両の側突荷重をセンターピラーから補強部材に対して伝達することができる。
【0018】
そして、複数の接合部のうち、補強部材荷重伝達部よりも車両のインナ側に配置されたインナ側接合部と、補強部材荷重伝達部よりも車両のアウタ側に配置されたアウタ側接合部とが、補強部材荷重伝達部における中心点を中心として、前後に異なる側に配置されているようにすることができる。
【0019】
このように、インナ側接合部とアウタ側接合部とが、補強部材荷重伝達部における中心点を中心として、前後に異なる側に配置されていることにより、少ない部品点数で補強部材と連結部材とを接合することができるとともに、確実に荷重伝達を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車体の上部構造によれば、車両の側突荷重をセンターピラーから補強部材に対して確実に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る車体の上部構造の要部斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車体の上部構造の要部拡大斜視図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】車体の上部構造における車両の側突時の変形状態を示す断面図であり、(a)は、側突前の状態を示し、(b)は側突後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る車体の上部構造の斜視図、図2はその要部拡大斜視図、図3は、図2のIII-III線断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る車体の上部構造は、本発明の補強部材であるルーフリインホース1を備えている。ルーフリインホース1は、長尺状をなし、車両の上部であって、車両の前後方向略中央位置に車両の車幅方向に沿って配設されて、車体における車幅方向にわたって延在している。
【0024】
また、ルーフリインホース1は、車両の天井に設けられる図示しないルーフパネルを支えることによって車体に取り付けられるルーフを補強している。さらに、ルーフリインホース1におけるアウタ側端部には、ルーフリインホース1の延在方向に対して交差する方向である車両前後方向に沿って延在する上側ビード部11が形成されている。上側ビード部11は、下側に凸となる下ビードとして形成されている。
【0025】
また、車体の上部構造は、センターピラー2を備えている。センターピラー2は、長尺状をなし、車両の側方であって、車両の前後方向略中央位置に高さ方向に沿って配設されている。センターピラー2の上部には、ルーフサイドレール3および本発明の連結部材であるルーフガセット4が取り付けられている。
【0026】
ルーフサイドレール3は、長尺状をなしており、車両の側方上部において、車両の前後方向に沿って延在している。その長手方向途中位置において、センターピラー2の上端部が溶接固定されている。また、センターピラー2が溶接固定された位置に対する前後方向に見て同じ位置に、ルーフリインホース1の端部が溶接されて固定されている。
【0027】
また、ルーフガセット4は、車両前方から見て、車両のアウタ側に行くにしたがって下降するように湾曲する湾曲形状をなしている、ルーフガセット4の車幅方向アウタ側端部は、センターピラー2に対して図示しないボルトによって接合されている。一方、ルーフガセット4の車幅方向インナ側端部は、図2および図3に示すように、ルーフリインホース1に対して、車幅方向に離間した複数箇所で、ボルトB1,B2にナットN1,N2がねじ込まれて締結されて接合されている。ボルトB1,B2が設けられた位置が本発明の接合部となる。このうち、インナ側に配置された第1ボルトB1が設けられた位置がインナ側接合部となり、アウタ側似配置された第2ボルト2が設けられた位置がアウタ側接合部となる。こうして、ルーフガセット4は、センターピラー2の上部とルーフリインホース1とを連結している。
【0028】
さらに、ルーフガセット4におけるインナ側端部には、車両の前後方向に沿って形成された下側ビード部41が形成されている。下側ビード部41は、ルーフリインホース1に形成された上側ビード部11と重畳して配置されており、下側ビード部41の上方における凹部に上側ビード部11が挿入された形で配置されている。このように、上下側ビード11,41は、それぞれ下側に凸となる下ビードである。
【0029】
上側ビード部11および下側ビード部41は、車両に側突が生じてセンターピラー2から側突荷重が入力された場合に、車幅方向に潰れて荷重を伝達する。上側ビード部11は、インナ上側ビード部11Aと、アウタ上側ビード部11Bとを備えており、下側ビード部41は、インナ下側ビード部41Aと、アウタ下側ビード部41Bとを備えている。上側ビード部11は本発明の補強部材ビードおよび補強部材荷重伝達部となり、下側ビード部41は本発明の連結部材ビードおよび連結部材荷重伝達部となる。
【0030】
また、ルーフリインホース1とルーフガセット4とは、第1ボルトB1および第2ボルトB2によってボルト接合されている。このうち、第1ボルトB1は、上下側ビード部11,41が形成された位置よりもインナ側に配置され、第2ボルトB2は、上下側ビード部11,41が形成された位置よりもアウタ側に配置されている。
【0031】
こうして、第1ボルトB1および第2ボルトB2は、それぞれ上下側ビード部11,41を挟んで車両のインナ側およびアウタ側に配置されている。さらに、車両のインナ側に配置された第1ボルトB1は、車両のアウタ側に配置された第2ボルトB2よりも車両後方位置に配置されている。したがって、第1ボルトB1と第2ボルトB2とは、上下側ビード部11,41における中心点を中心として、前後に異なる側に配置されている。
【0032】
次に、本実施形態に係る車両の上部構造における作用について説明する。本実施形態に係る車体の上部構造においては、車両に側突が生じた際の側突荷重入力時には、側突荷重がまずセンターピラー2に入力される。続いて、車両の上部においては、ルーフガセット4を介してルーフリインホース1に側突荷重が伝達され、車両下部においては、図示しないロッカに荷重が伝達される。
【0033】
ここで、センターピラー2とルーフリインホース1とは、ルーフガセット4を介して連結されている。また、図4(a)に示すように、ルーフリインホース1とルーフガセット4とには、それぞれ上下側ビード部11,41が重畳した状態で形成されている。このため、センターピラー2からルーフリインホース1に側突荷重が伝達された場合には、図4(b)に示すように、上下側ビード部11,41におけるそれぞれの開口部が閉塞する。
【0034】
上下側ビード部11,41におけるそれぞれの開口部が閉塞すると、センターピラー2から荷重が入力されると、アウタ下側ビード部41Bとアウタ上側ビード部11Bとが接触する。また、アウタ上側ビード部11Bとインナ上側ビード部11Aとが接触し、インナ上側ビード部11Aとインナ下側ビード部41Aとが接触する。こうして、センターピラー2から入力された側突荷重が、上下側ビード部11,41において面接触しながら伝達されるので、側突荷重をルーフリインホース1に対して確実に伝達される。
【0035】
また、ルーフリインホース1とルーフガセット4とを接合するにあたり、上下側ビード部11,41を挟んで車両のインナ側およびアウタ側に第1ボルトB1および第2ボルトB2を配置している。このため、センターピラー2から側突荷重が伝達されると、上下側ビード部11,41が潰れるとともに、上下側ビード部11,41を第1ボルトB1と第2ボルトB2によって挟み込みこととなる。
【0036】
したがって、ルーフガセット4から伝達される側突荷重を第1ボルトB1と第2ボルトB2で上下側ビード部11,41を挟み込んで伝達することになる。よって、上下側ビード部11,41の変形による荷重の伝達漏れを防ぐことができ、ルーフガセット4からルーフリインホース1に対して荷重を効率よく伝達することができるので、車両の側突荷重をセンターピラーから補強部材に対して確実に伝達することができる。
【0037】
さらに、ルーフガセット4からルーフリインホース1に対する荷重の伝達は、第1ボルトB1および第2ボルトB2を介しても行われる。このため、ルーフガセット4からルーフリインホース1に対する荷重の伝達は、上下側ビード11,41の経路と、ボルトB1,B2の経路の2つの経路となる。したがって、その分荷重の伝達を確実に行うことができる。
【0038】
また、ルーフリインホース1とルーフガセット4との間で荷重伝達するための荷重伝達部として上下側ビード部11,41を用いており、上側ビード部11と下側ビード部41とが重畳する形で配置されている。このため、ルーフリインホース1に荷重を伝達する荷重伝達部を容易に形成することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態においては、上下側ビード部11,41を下側が凸となる下ビードとして形成しているが、上側が凸となる上ビードとすることもできる。ただし、下ビードとすることにより、車両のルーフ側にビードを突出させないようにすることができるので、車体に対する収まりがよくなる。また、補強部材荷重伝達部および連結部材荷重伝達部は、上下側ビード部11,41以外の他の態様とすることもできる。
【0040】
また、上記実施形態においては、第1ボルトB1と第2ボルトB2によって上下側ビードを挟んでいるが、さらにボルトの数を増やして固定することもできる。ただし、第1ボルトB1と第2ボルトB2を上下側ビード部11,41における中心点を中心として、前後に異なる側に配置することにより、少ない部品点数でルーフリインホース1とルーフガセット4とを接合することができるとともに、確実に荷重伝達を行うことができる。
【0041】
さらに、側突荷重入力時に、荷重伝達部とボルトとが干渉するように構成することもできる。荷重伝達部とボルトとが干渉することにより、一層荷重伝達効率を向上させることができる。また、接合部としては、ボルト・ナットによるものに限られず、たとえば溶接等とすることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1…ルーフリインホース、2…センターピラー、3…ルーフサイドレール、4…ルーフガセット、11…上側ビード部、11A…インナ上側ビード部、11B…アウタ上側ビード部、41…下側ビード部、41A…インナ下側ビード部、41B…アウタ下側ビード部、B1…第1ボルト、B2…第2ボルト、N1,N2…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体における車幅方向にわたって延在し、前記車体に取り付けられるルーフを補強する補強部材と、
前記車体に設けられたセンターピラーの上部と前記補強部材とを連結する連結部材と、
前記補強部材および前記連結部材を車幅方向に離間した複数箇所で、前記補強部材と前記連結部材とを接合する複数の接合部が形成されており、
前記補強部材と前記連結部材とのそれぞれにおける前記複数の接合部の間に、前記車体に対して側突荷重が入力された場合に、補強部材と前記連結部材との間で荷重を伝達する補強部材荷重伝達部および連結部材荷重伝達部が形成されていることを特徴とする車体の上部構造。
【請求項2】
前記補強部材荷重伝達部および前記連結部材荷重伝達部は、それぞれ前記車体の車幅方向のインナ側とアウタ側とのそれぞれに荷重伝達部が形成されている請求項1に記載の車体の上部構造。
【請求項3】
前記補強部材荷重伝達部が、前記補強部材に対して、前記補強部材の延在方向に対して交差する方向に沿って形成された補強部材ビードであり、
前記連結部材荷重伝達部が、前記連結部材に対して、前記補強部材に形成された補強部材ビードに重畳する形で形成された連結部材ビードである請求項1または請求項2に記載の車体の上部構造。
【請求項4】
前記補強部材ビードおよび前記連結部材ビードが、それぞれ下側に凸となる下ビードである請求項3に記載の車体の上部構造。
【請求項5】
前記複数の接合部では、前記補強部材と前記連結部材とがボルト接合されている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の車体の上部構造。
【請求項6】
前記複数の接合部のうち、前記補強部材荷重伝達部よりも車両のインナ側に配置されたインナ側接合部と、前記補強部材荷重伝達部よりも車両のアウタ側に配置されたアウタ側接合部とが、前記補強部材荷重伝達部における中心点を中心として、前後に異なる側に配置されている請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項に記載の車体の上部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate