説明

車体の接合方法

【課題】接着剤を介在させた金属板材をスポット溶接する方法において、スポット溶接時の散りが車体外側に飛ぶことを防止することにより溶接部のシール不良を防止する。
【解決手段】位置決め治具にセットされたルーフパネル5がルーフサイドレール1に対して位置決めされる。ルーフパネル5の車体外側には外縁部に立上部5bが形成されると共に、接着剤6に相当する部位には段部5aが形成されている。溶接前の状態としては、ルーフパネル5の立上部5bの底部がキャブサイドアウタ2の車体内側のフランジ部2a上に当接しており、立上部5bより車体内側の段部5aとフランジ部2aとの空間に接着剤6が収容される形となっている。電極17,18を前記段部5aの位置で接近動作させ、ルーフパネル5の段部5aとキャブサイドアウタ2のフランジ部2aとを接着剤6を介在させた状態で加圧し、その後加圧した状態で通電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の接合方法に関し、特に、2枚の金属板材の間に接着剤を介在させて電気抵抗スポット溶接する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体においては、燃費の向上や車両の操作性向上等の観点より車体の軽量化が推進されている。この軽量化の有効な手段として、鋼板からアルミニウム板への置き換えが挙げられる。このアルミニウム板の適用箇所としては、車体に装着されるトランクリットやドアなどの蓋物から、最近ではルーフパネルのように車体本体の剛性に影響する部位まで広がっている。
【0003】
一方で、車体の剛性部位、例えばピラーやルーフレール等では、衝突や側突対策として高張力鋼板や引張り強さ980MPa以上の超高張力鋼板が採用されている。前述のような鋼板からアルミニウム板への置き換えが強度剛性上困難な部位も存在しており、このような部位では鋼材とアルミニウム板とを組合せた異種金属板材の構造体となる。鋼材とアルミニウム板とは融点、熱伝導率、抵抗等の物性値が相互に大きく異なっているため、自動車の組立てで最も多用される電気抵抗スポット溶接、特に既存の鋼板同士のスポット溶接設備では難しいとされている。これは、アルミニウム板が鋼材に比べて電気伝導率及び熱伝導率が高く、大電流を必要とするからである。また、例え溶接部を形成したとしても、鋼材とアルミニウム板とでは電位差が異なることから、水等の電解質によりその溶接部が局部電池を構成し腐食所謂、電食の問題が存在している。
【0004】
電気抵抗溶接の手法として、スポット溶接と接着剤とを併用したウェルドボンド法がある。このウェルドボンド法はスポット溶接だけの接合に比べ、疲労特性、剛性等が改善されると共に溶接部の周囲にシール性が付与され耐食性が向上する利点を有している。特開平6−55277号公報には、アルミニウム合金をコーティングした鋼板とアルミニウム板とをウェルドボンド法で接合することで、接合界面にシール性を有したAl−Feの合金層を形成し高い接合強度を得る技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−55277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10及び図11により、このウェルドボンド法を車体のルーフパネルとルーフサイドレールとの接合に用いる場合の接合方法を説明する。図に示すように、サイドフレームのルーフサイドレール1部分は、最外板となるキャブサイドアウタ2とキャビン側のルーフレールインナ3とで閉断面を構成している。剛性及び強度を向上させることを目的として、この閉断面を2分割するように中央部分にルーフレールレインフォースメント4が配置されている。尚、板材としては、キャブサイドアウタ2は合金化溶融亜鉛めっき軟鋼板、ルーフレールレインフォースメント4は超高張力鋼板が用いられている。
【0007】
ルーフサイドレール1とアルミニウム合金のルーフパネル5とは位置セット工程に搬送され位置決め治具にセットされる。治具へのセット後、キャブサイドアウタ2とルーフレールレインフォースメント4との車体内側重ね合せ部分で且つ、ルーフパネル5が接合される部分に熱硬化性接着剤を塗布する。次に、ルーフサイドレール1とルーフパネル5とは位置決め治具によって図10のように溶接位置に位置決めされた後、電気抵抗スポット溶接機にて加圧通電される。
【0008】
接合された車体ユニットは塗布された接着剤を硬化させる加熱工程に送られ、接着剤の硬化後、塗装工程に進んでいく。尚、ルーフパネル5とキャブサイドアウタ2との接合領域にはシール性確保のため塗装シーラが別途塗布される。前述した溶接後のルーフパネル側溶接部の状態を図12に示す。溶接部周りには接着剤6が存在しているが、全周ではなく溶接位置から外周方向に向けて一部途切れている領域Cがみられる。また、途切れている領域Cの外周縁部分には接着剤6が炭化したと見られる飛散跡Dが観察された。
【0009】
鋼板とアルミニウム板との接合はアルミニウム板の界面部分を溶融し、Al−Fe間の拡散を生じさせることで接合強度を得ることから、アルミニウム板が溶融飛散する所謂、散りが発生する。特に、溶接時の供給電流が大きくなる程散りの発生は多くなる傾向にある。この散りが発生した場合、図12で見られたように溶融したアルミニウムが接着剤を横切る状態で進行するため接合部のシール性が十分に確保できないという問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、接着剤を介在させた金属板材をスポット溶接する方法において、スポット溶接時の散りが車体外側に飛ぶことを防止することにより接着剤による溶接部のシール不良を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の車体の接合方法は、第1金属板材の車体外側に位置する被接合部と第2金属板材の車体内側に位置する被接合部との間に接着剤を介在させて電気抵抗スポット溶接する接合方法において、第1金属板材の被接合部と第2金属板材の被接合部との間に接着剤を介在させ、両被接合部の溶接位置より第1金属板材の被接合部の端部側の重ね合せ力を第1金属板材の被接合部の端部側以外の重ね合せ力より高めて両被接合部の接合位置を溶接することを特徴としている。
【0012】
請求項2の車体の接合方法は、請求項1発明において、重ね合せ力を高める加圧手段を予め設け、溶接時、前記加圧手段により溶接位置の車体外側の重ね合せ力を高めることを特徴としている。
【0013】
請求項3の車体の接合方法は、請求項1又は2の発明において、第1金属板材はアルミニウム合金板であり、第2金属板材は鋼板であることを特徴としている。
【0014】
請求項4の車体の接合方法は、請求項1〜3の発明において、第1金属板材の被接合部の端部側に形成した段部を第2金属板材の被接合部に押圧して第1金属板材の被接合部の端部側の重ね合せ力を第1金属板材の被接合部の端部側以外の重ね合せ力より高めたことを特徴としている。
【0015】
請求項5の車体の接合方法は、請求項3又は4の発明において、第1金属板材は車体のルーフパネルであり、第2金属板材は車体のルーフレールであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、接着剤を介在させた板材をスポット溶接する方法において、被接合部の車体外側に当たる端部側に発生する散りを防止することによりシール不良を防止することが可能となる。つまり、局部的に板材間の重ね合せ力に差異を設けることで、溶融金属の進行方向を電解質である水が進入する端部側を避けて車体内側へ誘導することが可能となり、溶接時に散りが発生したとしても車体外側の接着剤のシール切れを防止でき、溶接部への水の進入を防ぐことができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、重ね合せ力を高める加圧手段を予め設け、溶接時、前記加圧手段により溶接位置の車体外側の重ね合せ力を高めるため、確実に重ね合せ力に差異を設けることが可能となる。
【0018】
請求項3の発明によれば、アルミニウム合金板と鋼板とを接合する場合において、電位差に基づく電食の発生を防止しながら車体の軽量化と剛性確保とを両立することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、第1金属板材の端部側に段部を形成する簡単な構成で溶接位置の車体外側の重ね合せ力を高めることができ、別途重ね合せ力を発生させる設備が不要となる。
【0020】
請求項5の発明によれば、車体のルーフパネルとルーフレールとにおいてシール不良の防止が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施する為の最良の形態について実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の実施例1について図面に基づいて説明する。尚、この接合方法では前記背景技術で説明した部材には同一の符号を付している。
【0023】
図1,図2に示すように、ワゴン系の自動車の車体構造Mは、左右1対のフロントピラー7、左右1対のセンタピラー8、左右1対のリヤピラー9、左右1対のフロントピラー7の上端部を連結するフロントヘッダー10、左右1対のリヤピラー9の上端部を連結するリヤヘッダー11、フロントピラー7の上端部とリヤピラー9の上端部とに渡って延設された左右1対のルーフサイドレール1と、ルーフパネル5とを有している。ルーフパネル5以外の諸部材は鋼板製である。尚、図2はルーフパネル5を省略して図示した自動車の車体構造Mの要部平面図である。
【0024】
6000系アルミニウム合金板からなるルーフパネル5は、左右端部に夫々段部5aと立上部5bとを有している。車体上部前端はルーフパネル5の前端部分とフロントヘッダー10とによる閉断面構造、車体上部後端はルーフパネル5の後端部分とリヤヘッダー11とによる閉断面構造を形成している。また、鋼製の補強板部材12a〜12dが左右1対のルーフサイドレール1に架渡されルーフ強度を補強している。車体上部側端のルーフサイドレール1は、従来と同様に、キャブサイドアウタ2とキャビン側のルーフレールインナ3とで閉断面を構成し、この閉断面を2分割するようにルーフレールレインフォースメント4が配置される構成となっている。ルーフパネル5はフロントヘッダー10、リヤヘッダー11及びルーフサイドレール1に電気抵抗スポット溶接によって車体本体に接合される。
【0025】
前記スポット溶接を行う電気抵抗スポット溶接装置13について、図3に基づいて説明する。スポット溶接装置13は溶接ガン14を装備したロボット15と、溶接ガン14とロボット15とを駆動制御する制御装置16と、溶接ガン14でスポット接合する際、金属板材を重ね合せた状態で位置決め保持する位置決め治具(図示略)とを備えている。ロボット15は汎用の6軸垂直多関節型ロボットであり、そのロボットハンドの先端部に溶接ガン14が装着されている。このロボット15が、溶接ガン14を位置決め治具で保持された金属構成部材の溶接動作位置と、溶接動作位置から退避した待機位置とに移動動作させる。
【0026】
溶接ガン14は、コの字状のフレームになっており、電極支持部21に設置された第1電極17と電極支持部22に設置された第2電極18と駆動機構19とを有する。第1電極17と第2電極18とは対向配置され、駆動機構19が電極を軸上で移動させることで第1電極17と第2電極18との加圧力及びその間隔を制御している。尚、溶接条件としては、通電可能な電流値は8K〜14KA、加圧力は300〜500Kgf及び通電時間は0.05〜0.3秒に設定されている。
【0027】
以下に、ルーフパネル5とルーフサイドレール1とのスポット溶接工程を説明する。
図4〜図6に示すように、キャブサイドアウタ2とルーフレールインナ3とルーフレールレインフォースメント4との車体内側のフランジ部2a,3a,4a及び車体外側フランジ部2b,3b,4bとは車体組立て工程にてスポット溶接等により予め閉断面を構成している。尚、キャブサイドアウタ2は板厚が0.8mmの合金化溶融亜鉛めっき軟鋼板、ルーフレールレインフォースメント4は板厚が1.4mmの980MPa級高張力鋼板を用いている。
このルーフサイドレール1を含む車両構造Mを位置決め治具にセットした後、キャブサイドアウタ2の車体内側のフランジ部2a上に溶接位置を覆う状態で1液性熱硬化型エポキシ系接着剤6を塗布する。尚、接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等他の熱硬化型接着剤であっても良く、電気絶縁性を確保できるものであれば良い。また、接着剤6の厚みは100μm程度である。
【0028】
図5に示すように、別途位置決め治具にセットされたルーフパネル5がルーフサイドレール1に対して位置決めされる。前述したように、ルーフパネル5の車体外側の左右端部には外縁部に立上部5bが形成されると共に、接着剤6に相当する部位には300μm程度の段部5aが車体前後方向全長に渡って形成されている。溶接前の状態としては、ルーフパネル5の立上部5bの底部が接着剤6を介してキャブサイドアウタ2の車体内側のフランジ部2a上に当接しており、立上部5bより車体内側の段部5aとフランジ部2aとの空間に接着剤6が収容される形となっている。尚、ルーフパネル5は板厚が1.2mmの6000系アルミニウム合金板である。
【0029】
前記位置関係に位置決めした後、スポット溶接装置13にて溶接を行う。溶接ガン14を移動させて、電極17,18を前記段部5aの位置で接近動作させ、ルーフパネル5の段部5aとキャブサイドアウタ2のフランジ部2aとを接着剤6を介在させた状態で加圧し、その後加圧した状態で12KAの通電を行う。この際電極17,18の加圧力により予め立上部5bの底部が接着剤6を介してキャブサイドアウタ2のフランジ部2aに押付けられるため、アルミニウム合金の散りが発生しても、車体外側は立上部5bにより密閉された状態となり、散りの進行方向は開放されている車体内側に積極的に誘導される。
【0030】
図6に示すように、電極17,18の加圧力によって段部5aは押し潰された状態になり、ルーフパネル5とキャブサイドアウタ2とは溶接完了となる。
図7の溶接部断面図に示すように、キャブサイドアウタ2とルーフレールレインフォースメント4との間には双方にC領域で示すナゲットが確認され、ルーフレールレインフォースメント4のA領域の組織は粗大化していた。また、ルーフパネル5とキャブサイドアウタ2との接合部分では、ルーフパネル5側のB領域にナゲットが確認され、その界面は拡散接合されていることが観察された。
【実施例2】
【0031】
次に、実施例2に係る車体の接合方法について、図8に基づいて説明する。尚、この接合方法のうち、前記実施例1の接合方法と同様の部材に同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
実施例2に係る車体の接合方法は、実施例1と同様の電気抵抗スポット溶接装置13を用いて行われ、実施例1の接合方法とはルーフパネル5の構造及び溶接手順が一部異なるものである。
このルーフパネル5の左右端部には実施例1の立上部及び段部が存在しておらず、キャブサイドアウタ2のフランジ部2aに対応する平坦形状のルーフパネル側フランジ部5cが設けられている。また、治具として、前記ルーフパネル側フランジ部5cとルーフサイドレール1側のフランジ部2a,3a,4aとを挟み込むクランプ手段20が設けられている。
【0033】
ルーフパネル5及び車両構造Mを位置決め治具にセットした後、キャブサイドアウタ2の車体内側のフランジ部2a上に溶接位置を覆う状態でエポキシ系の接着剤6を塗布する。
次に、溶接ガン14及びクランプ手段20を溶接位置に対応するよう移動する。尚、クランプ手段20はルーフパネル5の溶接位置より車体外側所謂、外縁部をクランプできる位置に配置される。
【0034】
クランプ手段20がルーフパネル側フランジ部5cとキャブサイドアウタ2のフランジ部2aとをクランプして両者が当接した後、電極17,18が加圧動作を開始し、通電する。尚、クランプ手段20のクランプ力は電極17,18の加圧力より高くなるように設定している。
【0035】
クランプ手段20が予めルーフパネル側フランジ部5cとキャブサイドアウタ2のフランジ部2aとをクランプし、電極17,18の加圧力よりも大きな加圧力としているため、アルミニユム合金の散りが発生したとしても、車体外側はクランプ手段20により密閉された状態となり、散りの進行方向は開放されている車体内側に積極的に誘導される。また、クランプ力を加圧力より大きくしておけば、クランプ手段20のクランプ動作と電極17,18の加圧動作とが同時であっても同様の効果を得ることは可能である。
【0036】
実施例2においては、特に、ルーフパネル5側に事前の加工をする必要がないため、既存の車体構造の変更が必要なく、車種展開が容易となる。
【実施例3】
【0037】
次に、実施例3に係る車体の接合方法について、図9に基づいて説明する。実施例3に係る車体の接合方法は、実施例1の接合方法とは溶接ガン14の構造が一部異なるものである。
【0038】
図9に示すように、溶接ガン14には電極支持部21,22に支持される電極17,18と電極17を昇降させる駆動機構19とが設けられている。更に、電極支持部21,22の電極17,18の近傍には把持部23,24が設置されている。把持部23の先端は電極17の先端より若干長く設定され、把持部24の先端は電極18の先端と同長になっている。
【0039】
溶接時、把持部23,24がルーフパネル側フランジ部5cとキャブサイドアウタ2のフランジ部2aとを把持し、その後、電極17,18が溶接位置を加圧、通電することになり、アルミニウム合金の散りが発生したとしても、車体外側は把持部23,24により閉鎖された状態となり、散りの進行方向は開放されている車体内側に積極的に誘導される。
【0040】
実施例3によれば、車体構造の変更を行うことなく、散りの進行方向を車体内側へ誘導する加圧力を溶接装置の加圧力を利用して得る事ができる。また、把持部23,24に把持圧力を可変とする機構を追加することで、溶接形状や板材特性に合った把持力を得ることができる。
【0041】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例1,2,3においては、ワゴン系の自動車の車体構造に本発明の接合方法を適用した場合の例について説明したが、セダン系の自動車の車体構造にも、本発明の接合方法を適用できる。
【0042】
2〕前記実施例1,2,3においては、アルミニウム合金板のルーフパネルと合金化溶融亜鉛めっき軟鋼板のキャブサイドアウタと980MPa級高張力鋼板のルーフレールレインフォースメントの接合技術を例として説明したが、共に他金属板材の組合せ又は同種金属板材の組合せでも本発明を適用できる。また、金属板材は2枚の接合でもよく、特に、融点の低い金属板材の接合では3枚以上を重ね合せて接合することが好ましい。更に、適用部位としてはルーフパネルとキャブサイドアウタとの接合に限られるものではなく、エンジンルーム内のエンジン支持メンバー等腐食対策の必要な箇所に本発明の接合方法を適用可能である。
【0043】
3〕前記実施例1,2,3においては、スポット溶接の電流値を12KAとしたが、金属板材の枚数や材質に応じて変更可能である。特に、8K〜14KAの範囲であれば、既存の鋼板用スポット溶接装置を利用可能である。
【0044】
4〕前記実施例1においては、ルーフパネルに形成した段部を300μmとしたが、接着剤が収容できる範囲で設定可能である。1mm以下であれば、ルーフパネルの延びによる歪を吸収し、端部の剛性を向上させることが可能である。また、段部をルーフパネルの前端から後端にかけて連続して形成したが、溶接位置に対応して段部を複数箇所個別に設けることも可能である。
【0045】
5〕前記実施例2においては、クランプ手段を位置決め治具と一体としても良く、また、溶接位置に対応して複数箇所個別に設けることができる。また、車体構造に合せてクランプ先端形状を形成するものでも良い。
【0046】
6〕前記実施例3においては、電極支持部に電極に併設して把持部を形成したが、駆動機構による電極の加圧力を兼用できる構造であれば良く、電極と一体的に構成することもできる。
【0047】
7〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1の車体構造とルーフパネルとの分解斜視図である。
【図2】ルーフパネルを除いた車体構造の要部平面図である。
【図3】電気抵抗スポット溶接装置の側面図である。
【図4】ルーフパネルとルーフレールとの接合前のルーフレールの断面図である。
【図5】ルーフパネルとルーフレールとの接合時の断面図である。
【図6】ルーフパネルとルーフレールとの接合完了後の断面図である。
【図7】電気抵抗スポット溶接接合した接合箇所の拡大断面図である。
【図8】本発明の実施例2のルーフパネルとルーフレールとの接合時の断面図である。
【図9】本発明の実施例3の電気抵抗スポット溶接装置の溶接ガン周辺の要部拡大側面図である。
【図10】従来のルーフパネルとルーフレールとの接合時の断面図である。
【図11】従来のルーフパネルとルーフレールとの接合完了後の断面図である。
【図12】従来のルーフパネル側溶接部分の状態図である。
【符号の説明】
【0049】
M 車体構造
2 キャブサイドパネル
2a フランジ部
4 ルーフレールレインフォースメント
4a フランジ部
5 ルーフパネル
5a 立上部
5b 段部
6 接着剤
13 スポット溶接装置
14 溶接ガン
17 第1電極
18 第2電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属板材の車体外側に位置する被接合部と第2金属板材の車体内側に位置する被接合部との間に接着剤を介在させて電気抵抗スポット溶接する車体の接合方法において、
前記第1金属板材の被接合部と第2金属板材の被接合部との間に接着剤を介在させ、前記両被接合部の溶接位置より前記第1金属板材の被接合部の端部側の重ね合せ力を前記第1金属板材の被接合部の端部側以外の重ね合せ力より高めて両被接合部の接合位置を溶接することを特徴とする車体の接合方法。
【請求項2】
重ね合せ力を高める加圧手段を予め設け、溶接時、前記加圧手段により溶接位置の車体外側の重ね合せ力を高めることを特徴とする請求項1に記載の車体の接合方法。
【請求項3】
前記第1金属板材はアルミニウム合金板であり、前記第2金属板材は鋼板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体の接合方法。
【請求項4】
前記第1金属板材の被接合部の端部側に形成した段部を前記第2金属板材の被接合部に押圧して前記第1金属板材の被接合部の端部側の重ね合せ力を前記第1金属板材の被接合部の端部側以外の重ね合せ力より高めたことを特徴とする請求項1〜3に記載の車体の接合方法。
【請求項5】
前記第1金属板材は車体のルーフパネルであり、前記第2金属板材は車体のルーフレールであることを特徴とする請求項3又は4に記載の車体の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−190050(P2009−190050A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31607(P2008−31607)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】